特許第6793719号(P6793719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6793719エタノールからの1,3−ブタジエン製造のための触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793719
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】エタノールからの1,3−ブタジエン製造のための触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/89 20060101AFI20201119BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20201119BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20201119BHJP
   C07C 11/167 20060101ALI20201119BHJP
   C07C 1/24 20060101ALI20201119BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20201119BHJP
【FI】
   B01J23/89 Z
   B01J37/02 101A
   B01J35/10 301J
   C07C11/167
   C07C1/24
   !C07B61/00 300
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-510693(P2018-510693)
(86)(22)【出願日】2016年5月4日
(65)【公表番号】特表2018-515339(P2018-515339A)
(43)【公表日】2018年6月14日
(86)【国際出願番号】TH2016000044
(87)【国際公開番号】WO2016182516
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2019年4月10日
(31)【優先権主張番号】EP15001396
(32)【優先日】2015年5月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501255480
【氏名又は名称】ザ・サイアム・セメント・パブリック・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(74)【代理人】
【識別番号】100205453
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 朝彦
(72)【発明者】
【氏名】サエ−カウ,オルンティーダ
(72)【発明者】
【氏名】ブッサヤジャルン,ナリッサラ
(72)【発明者】
【氏名】トトン,サンサニー
(72)【発明者】
【氏名】ラオシリポジャナ,ナヴァドル
(72)【発明者】
【氏名】トゥリパーティ,アナモル
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/125389(WO,A1)
【文献】 特開2015−034151(JP,A)
【文献】 SUN, J. et al,Recent Advances in Catalytic Conversion of Ethanol to Chemicals,ACS Catalysis,2014年 2月12日,Vol.4, No.4,p.1078-1090,DOI:10.1021/cs4011343
【文献】 TOTONG, S. et al,Hydrogen Production from Dehydrogenation of Ethanol over Ag-Based Catalysts,International Journal of Chemical, Molecular, Nuclear, Materials and Metallurgical Engineering,2014年,[online], Vol.8, No.2,p.99-101,[retrieved on 2016.07.08], Retrieved from the Internet: <URL:http://internationalscienceindex.org/pu
【文献】 MAKSHINA, E.V. et al,Catalytic study of the conversion of ethanol into 1,3-butadiene,Catalysis Today,2012年 6月21日,Vol.198, No.1,p.338-344,DOI:10.1016/j.cattod.2012.05.031
【文献】 ANGELICI, C. et al,Effect of preparation method and CuO promotion in the conversion of ethanol into 1,3-butadiene over,ChemSusChem,2014年 7月14日,Vol.7, No.9,p.2505-2515,DOI:10.1002/cssc.201402361
【文献】 JONES, M. D.,Catalytic transformation of ethanol into 1,3-butadiene,Chemistry Central Journal,2014年 9月10日,Vol.8, No.53,p1-5,DOI:10.1186/s13065-014-0053-4
【文献】 TRIPATHI, A.,Butadiene production from catalytic conversion of ethanol,A Thesis Submitted as a Part of the Requirements for the Degree of Master of Philosophy in Energy Te,Bangkok: King Mongkut's University of Technology T,2014年,[online], [retrieved on 2016.07.08],p.i-ix,1-53,DOI:10.14457/KMUTT.the.2014.19
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
C07B31/00−63/04
C07C1/00−409/44
JSTPlus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体を含む、エタノールを1,3−ブタジエンへ転化するための触媒であって、
銀(Ag)及び銅(Cu)が前記担体上に金属の形態で存在し、
前記担体が第1の金属酸化物を含み、前記担体の前記第1の金属酸化物がシリカであり、
前記担体が前記第1の金属酸化物と異なる第2の金属酸化物をさらに含み、且つ、前記第2の金属酸化物が酸化マグネシウムである
ことを特徴とする触媒。
【請求項2】
前記担体の前記シリカがヒュームドシリカである、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記酸化マグネシウムがナノサイズ酸化マグネシウムである、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記担体中の前記第1の金属酸化物と前記第2の金属酸化物との重量比が、100:1〜1:100の範囲にある、請求項1又は3に記載の触媒。
【請求項5】
前記担体上の銀(Ag)と銅(Cu)との重量比が、10:1〜1:10の範囲にある、請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
前記触媒の粒径が、ASTM規格E986:04に従って電子鏡検法(SEM)によって測定して、1〜100μmの間である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
前記担体上に存在するAg及びCuの組み合わせ重量(金属担持量)が、ASTM規格D4326:04に従って蛍光X線(XRF)法によって測定して、前記触媒の総重量に対して1%〜30%の範囲にある、請求項1〜6のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項8】
前記触媒の比表面積が、ASTM規格D6556:10に従ってブルナウアー−エメット−テラー法(BET)によって測定して、60〜400m/gの範囲にある、請求項1〜7のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項9】
前記触媒の還元温度が、昇温還元法(TPR)によって決定して、200〜280℃である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項10】
前記担体上のAg及びCu金属の分散度が、パルス法水素化学吸着によって測定して、2%〜20%の範囲にある、請求項1〜9のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項11】
エタノールを1,3−ブタジエンに転化するための触媒を調製する方法であって、
a)担体をか焼する工程;
b)前記か焼された担体に銀(Ag)及び銅(Cu)金属の前駆体を含浸する工程;及び
c)金属の形態の銀(Ag)及び銅(Cu)が前記担体上に存在するように、前記含された触媒前駆体を還元して触媒を生じさせる工程
を含み、
前記担体が第1の金属酸化物を含み、前記第1の金属酸化物がシリカであり、前記担体の前記シリカがヒュームドシリカであり、
前記担体が前記第1の金属酸化物とは異なる第2の金属酸化物をさらに含み、そして
前記方法が、担体をか焼する工程a)の前に、
a’)前記第1の金属酸化物及び前記第2の金属酸化物を湿式混練して、中間担体を生じさせる工程、及び
b’)前記中間担体を乾燥させる工程
を含み、
且つ、前記第2の金属酸化物が酸化マグネシウム(MgO)であり、前記酸化マグネシウムがナノサイズ酸化マグネシウムである、
方法。
【請求項12】
前記担体中の前記第1の金属酸化物と前記第2の金属酸化物との重量比が、100:1〜1:100の範囲である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記担体上のAgとCuとの重量比が10:1〜1:10の間である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
工程b)の後で還元工程c)の前に、
a’’)前記含浸された触媒前駆体をろ過する工程;
b’’)前記ろ過された含浸された触媒前駆体を洗浄する工程;
c’’)前記洗浄された触媒前駆体を乾燥させる工程;及び
d’’)前記乾燥された触媒前駆体をか焼する工程
をさらに含む、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程b)の後で還元工程c)の前に、
a’’)前記含浸された触媒前駆体をろ過する工程;
b’’)前記ろ過された含浸された触媒前駆体を洗浄する工程;
c’’’)前記洗浄された触媒前駆体をマイクロ波処理する工程;及び
d’’’)前記マイクロ波処理された触媒前駆体をか焼する工程
をさらに含む、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
Ag及びCu金属の前記前駆体が、Ag及びCuの塩である、請求項11〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
Ag及びCu金属の前記前駆体が、Ag及びCuの塩化物、又はAg及びCuの窒化物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
エタノールを1,3−ブタジエンへ転化するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の触媒の使用。
【請求項19】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の触媒を利用することを特徴とする、エタノールの1,3−ブタジエンへの接触転化の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2種類の遷移金属元素を含む、エタノールを1,3−ブタジエンへ転化するための触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3−ブタジエンは、化学工業、特に高分子工業にとって重要な出発原料である。1,3−ブタジエンの世界生産量の約60%は、合成ゴムの製造に使用される。1,3−ブタジエンから作られるさらに商業的に重要なポリマーは、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンラテックス、及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンポリマーである。天然ガス化学供給原料は、石油化学生産で使用されるオイル供給原料よりも少ないC−炭化水素を有するので、比較的最近のシェールガス開発が、1,3−ブタジエンの不足をもたらした。
【0003】
新興経済国からのタイヤ及びポリマーの需要の伸び、並びに天然ゴム市場の不安定さは、再生可能なブタジエンにおける取り組みを駆り立て続けるであろう。従って、燃料及び化学物質の代わりにこうした代替可能で再生可能な資源を使用することに、現在多くの注意が払われている。非石油供給原料に基づく持続可能な発展のため、エタノールは今日「バイオ」−炭素の最も適切な潜在的供給源の1つである。
【0004】
エタノールの1,3−ブタジエンへの接触転化は、昔から工業的に実績のある経路である。1920年代から1960年代始めまで、エタノールは400〜450℃において1段階プロセスで、最大で72モル%までの収率で、1,3−ブタジエン、水素及び水に転化された。エタノールを1,3−ブタジエンに変換する仕組みは、非常に複雑であり、いまだに議論の主題である。しかしながら、以下の5つの工程が関与している可能性が最も高い:
(i)エタノールのアセトアルデヒド及び水素への変換;
(ii)アセトアルドールを生じさせるアセトアルデヒドのアルドール縮合;
(iii)クロトンアルデヒドを生じさせるアセトアルドールの脱水;
(iv)クロチルアルコール及びアセトアルデヒドを生じさせるクロトンアルデヒドとエタノールの反応(メールワイン−ポンドルフ−バーレー);
(v)1,3−ブタジエンを生じさせるクロチルアルコールの脱水。
【0005】
触媒存在下でのエタノール又はエタノールとアセトアルデヒドとの混合物からのブタジエンのガス相合成は、従来技術で公知である(国際公開第2012/015340号参照)。しかしながら、これらの触媒は、銀、金又は銅の群から選択される金属、及び酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル又は酸化ニオブの群から選択される金属酸化物を含む。
【0006】
国際公開第2012/015340号は、連続流固定床反応器の条件下での縮合プロセスを利用した方法を開示している。触媒は、1,3−ブタジエンに関して高い収率及び選択率、並びに供給原料の高レベルな転化率に到達するように設計された。これらの触媒の欠点は、それらが反応において中程度の安定性しか示さないことと、使用される金属の高い価格である。
【0007】
先行技術文献の韓国特許出願公開第2014/050531号は、エタノールを1,3−ブタジエンに転化するための触媒の製造方法を開示している。この方法では、III族金属酸化物、IV族金属酸化物及びV族金属酸化物から選択される遷移金属酸化物、好ましくは酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化亜鉛及び酸化ニオブが、メソポーラスシリカ上に担持される。これらの触媒は、シリカのより大きな表面により向上した場合であっても、国際公開第2012/015340号で記述されたものと同様の欠点をこうむっている。
【0008】
エタノールの1,3−ブタジエンへの接触転化は、Makshina、W.Janssens、B.F.Sels、P.A.Jacobs、(2012)「Catalytic study of the conversion of ethanol into 1,3−butadiene」、Catalysis Today、198、338〜344頁で研究されている。この研究では、単一の遷移金属(酸化物)でドープされたマグネシア−シリカ担体を含む触媒が使用された。
【0009】
上で概説したエタノールの1,3−ブタジエンへの転化の一般的な重要性の観点から、従来技術の触媒と比較して、同等又はよりいっそう良好な1,3−ブタジエンの収率、及び1,3−ブタジエンへの選択率において、この反応で使用する触媒の安定性を改善する必要性が依然として存在する。
【0010】
さらに、触媒的に活性な金属の高い価格を考えると、従来技術で言及される触媒より製造が著しく低コストである触媒を見出す必要性も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2012/015340号
【特許文献2】韓国特許出願公開第2014/050531号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Makshina、W.Janssens、B.F.Sels、P.A.Jacobs、(2012)「Catalytic study of the conversion of ethanol into 1,3−butadiene」、Catalysis Today、198、338〜344頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、許容可能な又はよりいっそう優れたターンオーバー数及び1,3−ブタジエン選択率で、触媒作用中の最小の劣化(最大の安定性)を示す、エタノールを1,3−ブタジエンへ転化するための触媒を見出すことである。
【0014】
さらに、本発明の目的は、低コストの方法で提供できる、上述の目的を達成する触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、銀(Ag)及び銅(Cu)金属を含む、エタノールを1,3−ブタジエンへ転化するための触媒を使用することによって、上記の目的を達成することができるという発見に基づいている。
【0016】
そのため、本発明は、担体を含む、エタノールを1,3−ブタジエンへ転化するための触媒であって、担体上に銀(Ag)及び銅(Cu)が金属の形態で存在することを特徴とする触媒を提供する。
【0017】
驚くべきことに、担体上での銀(Ag)及び銅(Cu)の2つの金属の組み合せが、より安定な触媒、それ故に反応中の触媒のより長い寿命周期をもたらすことを見出した。特に、驚くべきことに、担体上での銀(Ag)及び銅(Cu)金属の組み合せが、相乗作用的な安定化効果を示すことを見出した。
【0018】
同時に、触媒の性能及び選択率は許容できる高いレベルで維持され、最終的に触媒は高コストな元素を含まず、そのため比較的低コストで触媒を製造することができる。
本明細書で使用する「転化率」という用語は、反応に供給されるエタノールの量で割った、反応中に使用されるエタノールの量を意味する。
【0019】
本明細書で使用する「選択率」という用語は、反応の全生成物の総量で割った、反応中に生成した1,3−ブタジエンの量を意味する。
本明細書で使用する「収率」という用語は、反応に供給されるエタノールの量で割った、反応中に生成した1,3−ブタジエンの量を意味する。
【0020】
さらに、「安定化」又は「安定性」という用語は、触媒の失活と関係する。触媒は反応中に自然に失活する。この失活は、失活測定時での触媒の初期収率が低下した割合として計算される。触媒に存在する失活が低いほど、こうした触媒の安定性は良い。
【0021】
「金属の形態」という用語は、Ag及びCuは、少なくとも部分的に、担体上に酸化段階ゼロで存在することを意味する。好ましくは、触媒担体上に存在する全てのAg及び/又はCuは、金属の形態である。
【0022】
本明細書で使用する「か焼」という用語は、熱分解、相転移、又は揮発留分の除去をもたらすために、空気又は酸素の存在で鉱石及び他の固体材料に適用される熱処理プロセスを意味する。このプロセスは、普通は生成材料の融点未満の温度で行われる。
【0023】
本発明による担体は、第1の金属酸化物、好ましくはシリカを含むことが好ましい。
本発明による触媒のさらにより好ましい実施形態では、担体は、第1の金属酸化物とは異なる第2の金属酸化物をさらに含む。最も好ましくは、本発明による触媒の担体の第2の金属酸化物は、酸化マグネシウムである。
【0024】
好ましくは、第1及び第2の金属酸化物は、担体中に100:1〜1:100、好ましくは80:1〜1:80、より好ましくは40:1〜1:40、最も好ましくは10:1〜1:10の範囲の重量比で存在する。
【0025】
さらにより好ましくは、第1及び第2の金属酸化物は、担体中に1:1〜1:5、好ましくは1:1.5〜1:4、最も好ましくは1:1.7〜1:3の範囲の重量比で存在する。
【0026】
好ましい実施形態では、本発明の触媒は、金属の形態のAg及びCuを、10:1〜1:10、より好ましくは5:1〜1:5、最も好ましくは3:1〜1:3の範囲の重量比で含む。
【0027】
さらにより好ましくは、触媒は金属の形態のAg及びCuを、2:1〜1:2、より好ましくは1.5:1〜1:1.5、最も好ましくは1.1:1〜1:1.1の範囲の重量比で含む。
【0028】
さらに、本発明による触媒は、ASTM規格E986:04に従って電子鏡検法(SEM)によって測定して、1〜100μm、好ましくは5〜80μm、最も好ましくは10〜60μmの間の粒径を好ましくは有する。
【0029】
さらにより好ましくは、本発明による触媒は、ASTM規格E986:04に従って電子鏡検法(SEM)によって測定して、15〜40μm、より好ましくは17〜35μm、最も好ましくは20〜30μmの間の粒径を有する。
【0030】
好ましい実施形態では、触媒上の金属の形態のAg及びCuの合わせた重量は、「金属担持量」とも表されるが、ASTM規格D4326:04に従って蛍光X線(XRF)法によって測定して、1%〜30%、好ましくは2%〜25%、最も好ましくは3%〜21%の範囲にある。
【0031】
本発明のさらに好ましい実施形態では、触媒は、ASTM規格D6556:10に従ってブルナウアー−エメット−テラー法(BET)によって測定して、60〜400m/g、好ましくは100〜350m/g、最も好ましくは150〜300m/gの間の表面積を有する。
【0032】
本発明による触媒は、昇温還元法(TPR)によって決定される、好ましくは200〜280℃、より好ましくは210〜270℃、さらにより好ましくは220〜265℃、さらにより好ましくは230〜260℃、最も好ましくは240〜250℃の還元温度を有する。
【0033】
触媒の還元温度は、通常はAg及びCuの塩であるAg及びCuの前駆体が、金属の形態のAg及びCuに変換される温度である。
最終的に、本発明の触媒の金属分散度は、パルス法水素化学吸着によって測定して、好ましくは2%〜20%、より好ましくは4%〜15%、最も好ましくは5%〜12%である。
【0034】
本発明はさらに、エタノールを1,3−ブタジエンに転化するための触媒を調製する方法であって、
a)担体をか焼する工程;
b)か焼した担体に銀(Ag)及び銅(Cu)金属の前駆体を含浸する工程;及び
c)金属の形態の銀(Ag)及び銅(Cu)が担体上に存在するように、含侵された触媒前駆体を還元して触媒を生じさせる工程、
を含む方法を提供する。
【0035】
好ましくは、工程a)で担体をか焼する前に担体は乾燥される。
か焼する工程a)は、好ましくは300℃〜600℃、より好ましくは325℃〜500℃、最も好ましくは350℃〜450℃で実施される。
【0036】
さらに、か焼する工程a)は、好ましくは1〜10時間、より好ましくは2〜7時間、最も好ましくは3〜5時間実施される。
含浸工程b)は、好ましくは初期湿式含浸法によって実施される。
【0037】
さらに、含侵工程b)は、好ましくは30℃〜120℃で、より好ましくは50℃〜100℃で、最も好ましくは60℃〜90℃で実施される。
なおさらには、含侵工程b)は好ましくは、1〜10時間、より好ましくは2〜7時間、最も好ましくは3〜5時間実施される。
【0038】
含浸工程b)では、好ましくは銀(Ag)及び銅(Cu)金属の前駆体は、銀(Ag)及び銅(Cu)の化合物、より好ましくは銀(Ag)及び銅(Cu)の塩、最も好ましくは銀(Ag)及び銅(Cu)の塩化物又は銀(Ag)及び銅(Cu)の窒化物である。
【0039】
好ましい実施形態では、還元工程c)は300℃〜600℃、好ましくは325℃〜500℃、最も好ましくは350℃〜450℃で実施される。
好ましくは、還元工程c)は、水素含有ガスを使用して、より好ましくは水素を使用して実行される。
【0040】
好ましくは、上で記述する方法によって得ることができる触媒の担体は、第1の金属酸化物を含み、より好ましくは第1の金属酸化物はシリカである。
好ましい実施形態では、上で記述する方法によって得ることができる触媒の担体は、第1の金属酸化物例えばシリカとは異なる第2の金属酸化物をさらに含み、第2の金属酸化物は好ましくは酸化マグネシウム(MgO)であり、方法は、担体をか焼する工程a)の前に、
a’)第1及び第2の金属酸化物を湿式混練して、中間担体を生じさせる工程、
b’)中間担体を乾燥させる工程、
を含む。
【0041】
好ましくは、湿式混練する工程a’)は、2〜16時間、より好ましくは4〜14時間、最も好ましくは6〜10時間実施される。
さらに、湿式混練する工程a’)は、好ましくは10℃〜60℃で、より好ましくは15℃〜40℃で、最も好ましくは18℃〜24℃で実施される。
【0042】
好ましい実施形態では、乾燥させる工程b’)は、30℃〜200℃で、より好ましくは40℃〜200℃で、好ましくは50℃〜150℃で、最も好ましくは60℃〜100℃で実行される。
【0043】
好ましくは、乾燥させる工程b’)は、1〜15時間、より好ましくは2〜10時間、最も好ましくは3〜8時間実施される。
第1の好ましい実施形態では、本発明による方法は、含侵工程b)の後、還元工程c)の前に、以下の、
a’’)含浸された触媒前駆体をろ過する工程;
b’’)ろ過された含浸された触媒前駆体を洗浄する工程;
c’’)洗浄された触媒前駆体を乾燥させる工程;及び
d’’)乾燥された触媒前駆体をか焼する工程、
をさらに含む。
【0044】
好ましくは、洗浄する工程b’’)では、含侵された触媒前駆体は、好ましくは3回、脱イオン水又はアルコール、好ましくはエタノールによって洗浄される。
より好ましくは、含浸された触媒前駆体は、脱イオン水によって好ましくは3回、続いてアルコール、好ましくはエタノールによって好ましくは3回洗浄される。
【0045】
さらに、乾燥させる工程c’’)は、好ましくは40℃〜200℃、より好ましくは50℃〜150℃、最も好ましくは60℃〜125℃で実行される。
好ましくは、乾燥させる工程c’’)は1〜15時間、より好ましくは2〜10時間、最も好ましくは3〜8時間実施される。
【0046】
か焼する工程d’’)は、好ましくは1〜10時間、より好ましくは2〜7時間、最も好ましくは3〜5時間実行される。
さらに、か焼する工程d’’)は、好ましくは300℃〜600℃、より好ましくは325℃〜500℃、最も好ましくは350℃〜450℃で実施される。
【0047】
さらに、工程a’’)の前の含侵する工程b)は、好ましくは60℃〜80℃で3〜4時間実施される。
上で記述する第1の好ましい実施形態による方法によって得ることができる触媒の担体上へのAg及びCu金属の金属担持量は、ASTM規格D4326:04に従って蛍光X線(XRF)法によって測定して、好ましくは1%〜10%の間、より好ましくは2%〜8%の間、最も好ましくは3%〜7%の間である。
【0048】
さらに、上で記述する第1の好ましい実施形態の方法によって得ることができる触媒は、ASTM規格D6556:10によるブルナウアー−エメット−テラー法(BET)に従って測定して、好ましくは150〜300m/g、より好ましくは160〜270m/g、最も好ましくは170〜250m/gの表面積を有する。
【0049】
上で記述する第1の好ましい実施形態の方法によって得ることができる触媒は、昇温還元法(TPR)によって決定して、好ましくは200〜280℃、より好ましくは210〜270℃、さらにより好ましくは220〜265℃、さらにより好ましくは230〜260℃、最も好ましくは240〜250℃の還元温度を有する。
【0050】
最終的に、上で記述する第1の好ましい実施形態の方法によって得ることができる触媒の金属分散度は、パルス法水素化学吸着によって測定して、好ましくは5%〜10%、より好ましくは5.5%〜9%、最も好ましくは6%〜8%である。
【0051】
第2の好ましい実施形態では、含侵工程b)の後、還元工程c)の前の本発明による方法は、以下の、
a’’)含浸された触媒前駆体をろ過する工程;
b’’)ろ過された含浸された触媒前駆体を洗浄する工程;
c’’’)洗浄された触媒前駆体をマイクロ波処理するス工程;
d’’’)マイクロ波処理された触媒前駆体をか焼する工程、
を含む。
【0052】
好ましくはマイクロ波処理する工程c’’’)は、1〜60分、より好ましくは2〜30分、最も好ましくは3〜15分実施される。
か焼する工程d’’’)は、200℃〜600℃、好ましくは250℃〜550℃、最も好ましくは300℃〜500℃で実施される。
【0053】
さらに、工程a’’’)の前の含浸する工程b)は、好ましくは70℃〜90℃で3〜4時間実施される。
上で記述する第2の好ましい実施形態による方法によって得ることができる触媒の担体上へのAg及びCu金属の金属担持量は、ASTM規格D4326:04に従って蛍光X線(XRF)法によって測定して、好ましくは5%〜20%の間、より好ましくは6%〜18%の間、さらにより好ましくは7%〜16%の間、最も好ましくは8%〜12%の間である。
【0054】
上で記述する第2の好ましい実施形態の方法によって得ることができる触媒は、ASTM規格D6556:10に従ってブルナウアー−エメット−テラー法(BET)によって測定して、好ましくは150〜300m/g、好ましくは160〜270m/g、最も好ましくは170〜250m/gの表面積を有する。
【0055】
さらに、上で記述する第2の好ましい実施形態の方法によって得ることができる触媒は、昇温還元法(TPR)によって決定して、好ましくは200〜250℃、より好ましくは210〜240℃、最も好ましくは215〜230℃の触媒の還元温度を有する。
【0056】
最終的に、第2の好ましい実施形態の方法によって得ることができる触媒の金属分散度は、パルス法水素化学吸着によって測定して、好ましくは5%〜20%、より好ましくは7%〜15%、最も好ましくは8%〜12%である。
【0057】
本明細書で記述するいずれかの実施形態にある本発明による触媒は、上のいずれかの実施形態で記述する本発明の方法によって好ましくは製造される。
さらに、本発明は、本明細書で記述するいずれかの実施形態にある触媒の、エタノールを1,3−ブタジエンへ転化するための使用に関係する。
【0058】
最後に、本発明は、エタノールの1,3−ブタジエンへの接触転化の方法であって、本明細書で記述するいずれかの実施形態にある触媒を利用することを特徴とする方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0059】
測定方法
a)表面積
全表面積は、多層ガス吸着挙動のブルナウアー、エメット、及びテラー(B.E.T)理論に基づく方法により、多点法を使用して決定した。この記述した方法は、ASTM規格D6556:10(カーボンブラックの標準試験方法−窒素吸着による全表面積及び外表面積)に従う。
【0060】
触媒の表面積及び細孔径分布は、それぞれブルナウアー、エメット、及びテラー(B.E.T)法並びにバレット−ジョイナー−ハレンダ(B.J.H.)法を使用して決定した。触媒の窒素吸脱着は、Bel JapanのBelsorp−max装置で、−196℃にて測定した。
【0061】
Bel JapanのMultipoint Static−Volumetric Gas Adsorption Apparatus Belsorp−max装置を、以下のパラメータとともに使用した:天秤:0.1mg感度の化学天秤;液体窒素:純度98%以上;較正マニホールド体積:マニュアルの標準値;較正サンプルセル:マニュアルの標準値;フロー脱気:マニュアルの標準値。測定の前に、150℃で1時間試料を脱気した。
【0062】
特に、以下のガスを使用した:ボンベからの超高純度窒素ガス、又は予め精製された窒素ガスの別の供給源、及び、ボンベからの超高純度ヘリウムガス、又は予め精製されたヘリウムガスの別の供給源。
【0063】
b)還元温度
触媒を還元する温度を、昇温還元法(TPR)によって測定した。この方法の一般的な記述は、「M.Alves Fortunato、D.Aubert、C.Capdeillayre、C.Daniel、A.Hadjar、A.Princivalle、C.Guizard、P.Vernoux、Dispersion measurement of platinum supported on Yttria−Stabilised Zirconia by pulse H chemisorption、Applied Catalysis A:General、Volume403、Issues 1−2、2011、18〜24頁」に見出すことができる。この試験方法は、固体触媒の化学的特性決定のために、及び酸化物触媒前駆体の還元反応速度の解析のために使用される。それは非常に高感度であり、還元性以外の検討中の固体のいずれの特定な性質にも依存しない。この方法は、水素消費量をモニターしながら、水素フロー下で線形の温度勾配で触媒を加熱することにより、実施される。こうして、フィンガープリント特性が得られ、これによって担体及び助触媒の還元性への影響を観察することが可能になる。さらに、触媒中の還元可能な化学種の量、及びその還元の度合いは、統合された水素消費量から導き出すことができ、還元プロセスの適切なモデルが存在すれば、集中速度パラメータを推定することができる。
【0064】
昇温還元法(TPR)は、石英管反応器中で、Ar中5%のHを25mgの触媒試料に、30ml/分の流速で供給することにより実行した。温度を室温から950℃まで上げ、水素消費速度を熱伝導度検出器(TCD)により決定した。この方法に使用する装置は、以下のパラメータを使用するChemBet Pulsar TPR/TPDであった:天秤:0.1mg感度の化学天秤;ボンベからの超高純度ヘリウムガス、又は予め精製されたヘリウムガスの別の供給源、ボンベからのアルゴンガス中5%の高純度水素;ボンベからのヘリウムガス中高純度酸素;ボンベからの高純度二酸化炭素ガス;重量試料セル及び調整流速:マニュアルによる標準値。
【0065】
c)粒径
触媒の粒径は、電子顕微鏡(SEM)による形態画像を測定した。さらに触媒の形態を決定するために、走査電子鏡検法(SEM、JSM−6301F、JEOL)を使用した。試料を金でコーティングした金属のスタブ上に接着剤(カーボンタップ)により取付け、次に顕微鏡で観察した。記述した方法は、ASTM規格E986:04(走査電子顕微鏡ビームサイズ特性決定の標準的実行)に従う。
【0066】
一般に、帯電を無くすために、試料表面に導電性の層(炭素又は金)を塗布する必要がある。この場合、金スパッタコーティング機を使用して、試料を金でコーティングする。続いて、試料を金でコーティングした金属のスタブ上に接着剤(炭素タップ)により取付け、次に走査電子顕微鏡(SEM)の下で観察した。
【0067】
走査電子鏡検法用の試料が準備できたら、分析を実施する際に試料を探すのを支援するために、SEM取付け台上の試料位置を識別する地図を作成することができる。
以下のパラメータを使用した:ビーム電圧:20〜30KeV;約30パーセントのX線検出器デッドタイムを生じるようにビーム電流を調整すべき;ライブタイム:100〜200秒。
【0068】
d)金属担持量
触媒中の主要な及び副次的な元素の組成分析を、蛍光X線(XRF)法により決定した。この記述した方法は、ASTM規格D4326:04(蛍光X線による石炭及びコークスの灰中の主要な及び副次的な元素の標準的な試験方法)に従う。
【0069】
触媒を粉砕し、圧縮した粉末試験片としてペレットにプレスする。次にペレットに短波長(高エネルギー)のX線ビームを照射する。一次X線又は入射X線が吸収されると放射される又は蛍光を発する原子の固有X線が分散し、選択された波長において高感度検知器により強度を測定する。検出器の出力は、較正曲線によって、又はコンピュータ化されたデータ処理装置によって、濃度に関連付けられる。
【0070】
この手順によって決定する全ての元素に、Kスペクトル線を使用する。全ての元素を元素として決定し、酸化物として報告する。
この方法では以下の装置を使用する:再現可能な圧力を可能にするゲージを装備したプレスである圧縮機;安定した電力供給及び高強度、短波長X線能を備える励起源、真空試料室を装備した波長又はエネルギー分散システムである分光計;決定中にスペクトル干渉を起こさない結合剤。
【0071】
較正の基準は、標準対照物質又は合成的に混合された純粋な化合物から調製することができる。基準によって表される濃度の範囲は、未知の濃度の範囲を超える必要がある。
元素濃度の計算は、経験的基本パラメータ又は線形回帰によって遂行することができる。
【0072】
e)金属分散度
担持された金属触媒の金属分散の度合いは、パルス法水素化学吸着によって決定される。この方法の一般的な記述は、「M.Alves Fortunato、D.Aubert、C.Capdeillayre、C.Daniel、A.Hadjar、A.Princivalle、C.Guizard、P.Vernoux、Dispersion measurement of platinum supported on Yttria−Stabilised Zirconia by pulse H chemisorption(パルス法水素化学吸着による、イットリアで安定化されたジルコニア上に担持された白金の分散度測定)、Applied Catalysis A:General、Volume403、Issues 1−2、2011、18〜24頁」に見出すことができる。
【0073】
化学吸着法は、遊離金属の比表面積及び金属分散の度合いを評価するための非常によく確立された分析方法である。これらの方法中に、反応性ガスと触媒との間の化学反応が実施される。実際の前処理に先行する通常の手順は、触媒表面を清浄化することである。清浄化は、最終的に表面に吸着された水又は他の蒸気を除去するために、適当な温度で試料を脱気することによって一般に実施される。担持された金属触媒の金属分散の度合いは、室温での水素吸着量を測定することによって評価される。
【0074】
測定中に、全水素摂取量(水素の体積[cm]、触媒の重量[g])を決定する。このデータから、担持された金属触媒の金属分散度パーセントを計算する。
測定のために、化学吸着分析計ChemBet Pulsar TPR/TPDを、以下のパラメータとともに使用した:天秤:0.1mg感度の化学天秤;ボンベからの高純度水素ガス、又は予め精製された水素ガスの別の供給源;重量試料セル:マニュアルによる標準値;流速:マニュアルによる標準値;脱気条件:マニュアルによる標準値;温度:室温。
【0075】
単分子層として触媒表面を覆う吸着された水素の量は、吸着された水素の量を水素の吸着平衡圧と関係付ける曲線を、ゼロに外挿することによって得られる。
金属の面積は式1により計算される:
【0076】
【数1】
【0077】
[式中、Nmは圧力ゼロまでの逆外挿法により決定される金属の重量当たりの表面原子で表わされる圧力ゼロでの単層被覆量であり、Mは結晶表面の単位面積当たりの金属原子の数であり、Xmは化学吸着化学量論量である]。
【0078】
金属分散の割合Dは、表面原子の数と試料中に存在する金属原子の総数の比として定義される。金属分散の割合は、触媒の組成及び金属の表面積から式2によって計算することができる:
【0079】
【数2】
【0080】
[式中、Wは金属の分子量、Nはアボガドロ数、aは表面金属原子当りの面積、及びXは金属の質量分率である]。
f)重量比Ag:Cu及びMgO:SiO
これらの重量比は、ASTM D4326:04による蛍光X線(XRF)法によって決定されるそれぞれの金属担持量から計算される。
【実施例】
【0081】
a)触媒の調製(含浸)
シリカ(SiO)及び酸化マグネシウム(MgO)を室温にて1:2の重量比で8時間湿式混練することによって、シリカ(SiO)と酸化マグネシウム(MgO)との混合物を調製した。1つの酸化物だけ使用する場合は、湿式混練は適用しなかった。
【0082】
得られた混合物を80℃で6時間乾燥させ、400℃で4時間か焼した。70℃で3時間、適当な量の金属塩化物水溶液による、得られた酸化マグネシウム(MgO)及びシリカ(SiO)担体の初期湿式含浸によって、銀(Ag)及び銅(Cu)を塩化銀及び塩化銅として塗布した(表1参照)。
【0083】
溶液をろ過し、ろ液を脱イオン水で3回、エタノールで別の3回洗浄した。続いて、洗浄したろ液を100〜150℃で乾燥させ、300〜500℃で4時間か焼した。最後に、か焼したろ液を300〜500℃で水素ガスを使用して還元した。
【0084】
b)触媒の調製(マイクロ波)
シリカ(SiO)及び酸化マグネシウム(MgO)を室温にて1:2の重量比で8時間湿式混練することによって、シリカ(SiO)及び酸化マグネシウム(MgO)混合物を調製した。得られた混合物を80℃で6時間乾燥させ、400℃で4時間か焼した。70℃で3時間、適当な量の金属塩化物水溶液による、得られた酸化マグネシウム(MgO)及びシリカ(SiO)担体の初期湿式含浸によって、銀(Ag)及び銅(Cu)を塩化銀及び塩化銅として塗布した。
【0085】
溶液をろ過し、ろ液を脱イオン水で3回、エタノールで別の3回洗浄した。続いて、溶液を5分間マイクロ波処理し、300〜500℃で4時間か焼した。最後に、か焼したろ液を300〜500℃で水素ガスを使用して還元した。
【0086】
c)含浸によって調製した触媒の特性決定
【0087】
【表1】
【0088】
マイクロシリカとしても知られるヒュームドシリカ(CAS番号112945−52−5)は、二酸化ケイ素(シリカ)の非晶質(非結晶)多形である。これは、ケイ素及びフェロシリコン合金製造の副生成物として集められ、球状粒子からなる超微細粉末である。ヒュームドシリカは、約7nmの粒径、及び約370〜420m/gの表面積を有する。ナノサイズ酸化マグネシウム(CAS番号1309−48−4)は、粒径が50nm以下であるナノ粉末である。
【0089】
Ag−Cu触媒の金属担持量が5%から10%、15%、又は20%へ増加すると、表面積の低下をもたらす。しかしながら、還元された触媒の温度は、担体の表面上の金属銀(Ag)及び銅(Cu)の凝集のために、高く維持される(表1、IE1、IE6〜8)。
【0090】
担体の種類及びその粒径の影響を比較するために、例えば従来の酸化マグネシウム(MgO、IE11)及び従来のシリカ(SiO、IE9)、並びにヒュームドシリカ(IE10)及びナノサイズ酸化マグネシウム(IE12)などの、異なる担体を備えた触媒も調製した。後者はもともと小さい粒径を示すが、その表面積は混合されたMgO/SiO担体に匹敵する(161m/g及び173m/g)(表1、IE10及びIE12)。従来のMgOのみ、及び従来のSiOのみの担体(IE9及びIE11)は、82〜71m/gの範囲の著しく小さい粒径を示す。
【0091】
d)マイクロ波によって調製した触媒の特性決定
【0092】
【表2】
【0093】
e)一般的な触媒の試験手順
エタノールの1,3−ブタジエンへの接触転化を、固定床ステンレス鋼反応器中で実行した。反応は、大気圧下350〜400℃で実施した。典型的には、1gの触媒を使用した。反応器内でのエタノールの熱分解を回避するために、以下の手順を適用した:石英ウールの層を反応管の底に配置した。続いて、触媒を1:2の重量比を使用して炭化ケイ素(SiC、Aldrich製200〜450メッシュ粒径)と混合した。反応温度で、触媒の無い空試験を行った。これらの試験中に有意なレベルの転化は検出されなかった(エタノールの熱分解による少量のアセトアルデヒドが観察された)。一定温度に維持したエバポレーター中にエタノールを保持し、キャリアガスとしての窒素とともに反応器に導入した。生成物を、Sigma Aldrich(登録商標)製Porapak(商標)Qカラム、並びに水素炎イオン化検出器(FID)及び熱伝導度検出器(TCD)を使用するメタネーターを装備した、オンラインのガスクロマトグラフ(GC)によって20分毎に分析した。1,3−ブタジエンに加えて、いくらかの量のエチレン、アセトアルデヒド、及び他のC〜C含酸素化合物が副生物として見出された。添加した炭素の総量で割った、分析した生成物中の総炭素量として、炭素収支を計算した。炭素収支は、概して9
5%より良好であった。
【0094】
f)担持金属の種類による触媒活性/失活
【0095】
【表3】
【0096】
銀(Ag)及び銅(Cu)を含んだ本発明による触媒(IE1)は、いずれも銀(Ag)だけ又は銅(Cu)だけを含むCE1及びCE2と比較して、高い1,3−ブタジエン収率を示している(表3)。
【0097】
g)触媒担体の粒径による触媒活性/失活
【0098】
【表4】
【0099】
ヒュームドシリカ(IE10)及びナノサイズ酸化マグネシウム(IE12)などの、より小さな粒径の触媒担体は、触媒のより良好な性能及び安定性をもたらす。シリカ(SiO)及び酸化マグネシウム(MgO)の混合物は、これらの性質をさらに向上させる(IE1)。
【0100】
h)触媒の調製方法による触媒活性/失活
【0101】
【表5】
【0102】
マイクロ波による調製(表5、IE13)は、含侵法(IE1)に比較して、より高い1,3−ブタジエンの収率及びより良好な安定性をもたらす。
i)Ag:Cu重量比による触媒活性/失活
【0103】
【表6】
【0104】
含侵によって調製した触媒(IE1〜5)に対して、銀(Ag)の含量を増加すると、1,3−ブタジエンの収率を向上させるが、触媒のより低い安定性をもたらす。他方、銅(Cu)の含量を増加すると、低い1,3−ブタジエンの収率をもたらすが、含侵により調製した触媒は安定する。同じ傾向は、マイクロ波法によって調製した触媒に対して認識することができる(IE13〜17)。しかしながら、含浸によって調製した触媒に比較して、活性及び安定性の両方とも向上している。
【0105】
j)金属担持量による触媒活性/失活
【0106】
【表7】
【0107】
金属担持量が5%より高いと、含浸法によって調製した触媒のより低い1,3−ブタジエンの収率、従ってより速い失活をもたらす(IE1、IE6〜8)。マイクロ波で調製した触媒の場合(IE18〜21)、10%の金属担持量は最も高い1,3−ブタジエンの収率をもたらす。15%から始めて金属担持量を増加させると、1,3−ブタジエンの収率及び安定性の低下を示した。