【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、銀(Ag)及び銅(Cu)金属を含む、エタノールを1,3−ブタジエンへ転化するための触媒を使用することによって、上記の目的を達成することができるという発見に基づいている。
【0016】
そのため、本発明は、担体を含む、エタノールを1,3−ブタジエンへ転化するための触媒であって、担体上に銀(Ag)及び銅(Cu)が金属の形態で存在することを特徴とする触媒を提供する。
【0017】
驚くべきことに、担体上での銀(Ag)及び銅(Cu)の2つの金属の組み合せが、より安定な触媒、それ故に反応中の触媒のより長い寿命周期をもたらすことを見出した。特に、驚くべきことに、担体上での銀(Ag)及び銅(Cu)金属の組み合せが、相乗作用的な安定化効果を示すことを見出した。
【0018】
同時に、触媒の性能及び選択率は許容できる高いレベルで維持され、最終的に触媒は高コストな元素を含まず、そのため比較的低コストで触媒を製造することができる。
本明細書で使用する「転化率」という用語は、反応に供給されるエタノールの量で割った、反応中に使用されるエタノールの量を意味する。
【0019】
本明細書で使用する「選択率」という用語は、反応の全生成物の総量で割った、反応中に生成した1,3−ブタジエンの量を意味する。
本明細書で使用する「収率」という用語は、反応に供給されるエタノールの量で割った、反応中に生成した1,3−ブタジエンの量を意味する。
【0020】
さらに、「安定化」又は「安定性」という用語は、触媒の失活と関係する。触媒は反応中に自然に失活する。この失活は、失活測定時での触媒の初期収率が低下した割合として計算される。触媒に存在する失活が低いほど、こうした触媒の安定性は良い。
【0021】
「金属の形態」という用語は、Ag及びCuは、少なくとも部分的に、担体上に酸化段階ゼロで存在することを意味する。好ましくは、触媒担体上に存在する全てのAg及び/又はCuは、金属の形態である。
【0022】
本明細書で使用する「か焼」という用語は、熱分解、相転移、又は揮発留分の除去をもたらすために、空気又は酸素の存在で鉱石及び他の固体材料に適用される熱処理プロセスを意味する。このプロセスは、普通は生成材料の融点未満の温度で行われる。
【0023】
本発明による担体は、第1の金属酸化物、好ましくはシリカを含むことが好ましい。
本発明による触媒のさらにより好ましい実施形態では、担体は、第1の金属酸化物とは異なる第2の金属酸化物をさらに含む。最も好ましくは、本発明による触媒の担体の第2の金属酸化物は、酸化マグネシウムである。
【0024】
好ましくは、第1及び第2の金属酸化物は、担体中に100:1〜1:100、好ましくは80:1〜1:80、より好ましくは40:1〜1:40、最も好ましくは10:1〜1:10の範囲の重量比で存在する。
【0025】
さらにより好ましくは、第1及び第2の金属酸化物は、担体中に1:1〜1:5、好ましくは1:1.5〜1:4、最も好ましくは1:1.7〜1:3の範囲の重量比で存在する。
【0026】
好ましい実施形態では、本発明の触媒は、金属の形態のAg及びCuを、10:1〜1:10、より好ましくは5:1〜1:5、最も好ましくは3:1〜1:3の範囲の重量比で含む。
【0027】
さらにより好ましくは、触媒は金属の形態のAg及びCuを、2:1〜1:2、より好ましくは1.5:1〜1:1.5、最も好ましくは1.1:1〜1:1.1の範囲の重量比で含む。
【0028】
さらに、本発明による触媒は、ASTM規格E986:04に従って電子鏡検法(SEM)によって測定して、1〜100μm、好ましくは5〜80μm、最も好ましくは10〜60μmの間の
粒径を好ましくは有する。
【0029】
さらにより好ましくは、本発明による触媒は、ASTM規格E986:04に従って電子鏡検法(SEM)によって測定して、15〜40μm、より好ましくは17〜35μm、最も好ましくは20〜30μmの間の
粒径を有する。
【0030】
好ましい実施形態では、触媒上の金属の形態のAg及びCuの合わせた重量は、「金属担持量」とも表されるが、ASTM規格D4326:04に従って蛍光X線(XRF)法によって測定して、1%〜30%、好ましくは2%〜25%、最も好ましくは3%〜21%の範囲にある。
【0031】
本発明のさらに好ましい実施形態では、触媒は、ASTM規格D6556:10に従ってブルナウアー−エメット−テラー法(BET)によって測定して、60〜400m
2/g、好ましくは100〜350m
2/g、最も好ましくは150〜300m
2/gの間の
比表面積を有する。
【0032】
本発明による触媒は、昇温還元法(TPR)によって決定される、好ましくは200〜280℃、より好ましくは210〜270℃、さらにより好ましくは220〜265℃、さらにより好ましくは230〜260℃、最も好ましくは240〜250℃の還元温度を有する。
【0033】
触媒の還元温度は、通常はAg及びCuの塩であるAg及びCuの前駆体が、金属の形態のAg及びCuに変換される温度である。
最終的に、本発明の触媒の金属分散度は、
パルス法水素化学吸着によって測定して、好ましくは2%〜20%、より好ましくは4%〜15%、最も好ましくは5%〜12%である。
【0034】
本発明はさらに、エタノールを1,3−ブタジエンに転化するための触媒を調製する方法であって、
a)担体をか焼する工程;
b)か焼した担体に銀(Ag)及び銅(Cu)金属の前駆体を含浸する工程;及び
c)金属の形態の銀(Ag)及び銅(Cu)が担体上に存在するように、含侵された触媒前駆体を還元して触媒を生じさせる工程、
を含む方法を提供する。
【0035】
好ましくは、工程a)で担体をか焼する前に担体は乾燥される。
か焼する工程a)は、好ましくは300℃〜600℃、より好ましくは325℃〜500℃、最も好ましくは350℃〜450℃で実施される。
【0036】
さらに、か焼する工程a)は、好ましくは1〜10時間、より好ましくは2〜7時間、最も好ましくは3〜5時間実施される。
含浸工程b)は、好ましくは初期湿式含浸法によって実施される。
【0037】
さらに、含侵工程b)は、好ましくは30℃〜120℃で、より好ましくは50℃〜100℃で、最も好ましくは60℃〜90℃で実施される。
なおさらには、含侵工程b)は好ましくは、1〜10時間、より好ましくは2〜7時間、最も好ましくは3〜5時間実施される。
【0038】
含浸工程b)では、好ましくは銀(Ag)及び銅(Cu)金属の前駆体は、銀(Ag)及び銅(Cu)の化合物、より好ましくは銀(Ag)及び銅(Cu)の塩、最も好ましくは銀(Ag)及び銅(Cu)の塩化物又は銀(Ag)及び銅(Cu)の窒化物である。
【0039】
好ましい実施形態では、還元工程c)は300℃〜600℃、好ましくは325℃〜500℃、最も好ましくは350℃〜450℃で実施される。
好ましくは、還元工程c)は、水素含有ガスを使用して、より好ましくは水素を使用して実行される。
【0040】
好ましくは、上で記述する方法によって得ることができる触媒の担体は、第1の金属酸化物を含み、より好ましくは第1の金属酸化物はシリカである。
好ましい実施形態では、上で記述する方法によって得ることができる触媒の担体は、第1の金属酸化物例えばシリカとは異なる第2の金属酸化物をさらに含み、第2の金属酸化物は好ましくは酸化マグネシウム(MgO)であり、方法は、担体をか焼する工程a)の前に、
a’)第1及び第2の金属酸化物を湿式混練して、中間担体を生じさせる工程、
b’)中間担体を乾燥させる工程、
を含む。
【0041】
好ましくは、湿式混練する工程a’)は、2〜16時間、より好ましくは4〜14時間、最も好ましくは6〜10時間実施される。
さらに、湿式混練する工程a’)は、好ましくは10℃〜60℃で、より好ましくは15℃〜40℃で、最も好ましくは18℃〜24℃で実施される。
【0042】
好ましい実施形態では、乾燥させる工程b’)は、30℃〜200℃で、より好ましくは40℃〜200℃で、好ましくは50℃〜150℃で、最も好ましくは60℃〜100℃で実行される。
【0043】
好ましくは、乾燥させる工程b’)は、1〜15時間、より好ましくは2〜10時間、最も好ましくは3〜8時間実施される。
第1の好ましい実施形態では、本発明による方法は、含侵工程b)の後、還元工程c)の前に、以下の、
a’’)含浸された触媒前駆体をろ過する工程;
b’’)ろ過された含浸された触媒前駆体を洗浄する工程;
c’’)洗浄された触媒前駆体を乾燥させる工程;及び
d’’)乾燥された触媒前駆体をか焼する工程、
をさらに含む。
【0044】
好ましくは、洗浄する工程b’’)では、含侵された触媒前駆体は、好ましくは3回、脱イオン水又はアルコール、好ましくはエタノールによって洗浄される。
より好ましくは、含浸された触媒前駆体は、脱イオン水によって好ましくは3回、続いてアルコール、好ましくはエタノールによって好ましくは3回洗浄される。
【0045】
さらに、乾燥させる工程c’’)は、好ましくは40℃〜200℃、より好ましくは50℃〜150℃、最も好ましくは60℃〜125℃で実行される。
好ましくは、乾燥させる工程c’’)は1〜15時間、より好ましくは2〜10時間、最も好ましくは3〜8時間実施される。
【0046】
か焼する工程d’’)は、好ましくは1〜10時間、より好ましくは2〜7時間、最も好ましくは3〜5時間実行される。
さらに、か焼する工程d’’)は、好ましくは300℃〜600℃、より好ましくは325℃〜500℃、最も好ましくは350℃〜450℃で実施される。
【0047】
さらに、工程a’’)の前の含侵する工程b)は、好ましくは60℃〜80℃で3〜4時間実施される。
上で記述する第1の好ましい実施形態による方法によって得ることができる触媒の担体上へのAg及びCu金属の金属担持量は、ASTM規格D4326:04に従って蛍光X線(XRF)法によって測定して、好ましくは1%〜10%の間、より好ましくは2%〜8%の間、最も好ましくは3%〜7%の間である。
【0048】
さらに、上で記述する第1の好ましい実施形態の方法によって得ることができる触媒は、ASTM規格D6556:10によるブルナウアー−エメット−テラー法(BET)に従って測定して、好ましくは150〜300m
2/g、より好ましくは160〜270m
2/g、最も好ましくは170〜250m
2/gの
比表面積を有する。
【0049】
上で記述する第1の好ましい実施形態の方法によって得ることができる触媒は、昇温還元法(TPR)によって決定して、好ましくは200〜280℃、より好ましくは210〜270℃、さらにより好ましくは220〜265℃、さらにより好ましくは230〜260℃、最も好ましくは240〜250℃の還元温度を有する。
【0050】
最終的に、上で記述する第1の好ましい実施形態の方法によって得ることができる触媒の金属分散度は、
パルス法水素化学吸着によって測定して、好ましくは5%〜10%、より好ましくは5.5%〜9%、最も好ましくは6%〜8%である。
【0051】
第2の好ましい実施形態では、含侵工程b)の後、還元工程c)の前の本発明による方法は、以下の、
a’’)含浸された触媒前駆体をろ過する工程;
b’’)ろ過された含浸された触媒前駆体を洗浄する工程;
c’’’)洗浄された触媒前駆体をマイクロ波処理するス工程;
d’’’)マイクロ波処理された触媒前駆体をか焼する工程、
を含む。
【0052】
好ましくはマイクロ波処理する工程c’’’)は、1〜60分、より好ましくは2〜30分、最も好ましくは3〜15分実施される。
か焼する工程d’’’)は、200℃〜600℃、好ましくは250℃〜550℃、最も好ましくは300℃〜500℃で実施される。
【0053】
さらに、工程a’’’)の前の含浸する工程b)は、好ましくは70℃〜90℃で3〜4時間実施される。
上で記述する第2の好ましい実施形態による方法によって得ることができる触媒の担体上へのAg及びCu金属の金属担持量は、ASTM規格D4326:04に従って蛍光X線(XRF)法によって測定して、好ましくは5%〜20%の間、より好ましくは6%〜18%の間、さらにより好ましくは7%〜16%の間、最も好ましくは8%〜12%の間である。
【0054】
上で記述する第2の好ましい実施形態の方法によって得ることができる触媒は、ASTM規格D6556:10に従ってブルナウアー−エメット−テラー法(BET)によって測定して、好ましくは150〜300m
2/g、好ましくは160〜270m
2/g、最も好ましくは170〜250m
2/gの
比表面積を有する。
【0055】
さらに、上で記述する第2の好ましい実施形態の方法によって得ることができる触媒は、昇温還元法(TPR)によって決定して、好ましくは200〜250℃、より好ましくは210〜240℃、最も好ましくは215〜230℃の触媒の還元温度を有する。
【0056】
最終的に、第2の好ましい実施形態の方法によって得ることができる触媒の金属分散度は、
パルス法水素化学吸着によって測定して、好ましくは5%〜20%、より好ましくは7%〜15%、最も好ましくは8%〜12%である。
【0057】
本明細書で記述するいずれかの実施形態にある本発明による触媒は、上のいずれかの実施形態で記述する本発明の方法によって好ましくは製造される。
さらに、本発明は、本明細書で記述するいずれかの実施形態にある触媒の、エタノールを1,3−ブタジエンへ転化するための使用に関係する。
【0058】
最後に、本発明は、エタノールの1,3−ブタジエンへの接触転化の方法であって、本明細書で記述するいずれかの実施形態にある触媒を利用することを特徴とする方法を提供する。