特許第6793726号(P6793726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793726
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】移動式クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/70 20060101AFI20201119BHJP
   B66C 23/42 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   B66C23/70 G
   B66C23/70 B
   B66C23/42 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-523134(P2018-523134)
(86)(22)【出願日】2016年6月17日
(86)【国際出願番号】JP2016068042
(87)【国際公開番号】WO2017216944
(87)【国際公開日】20171221
【審査請求日】2019年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148380
【氏名又は名称】株式会社前田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】徳留 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】渡村 達史
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮介
(72)【発明者】
【氏名】市村 栄治
(72)【発明者】
【氏名】和田 光章
【審査官】 加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−086162(JP,A)
【文献】 実開昭60−100390(JP,U)
【文献】 特開平05−147887(JP,A)
【文献】 特開2002−241081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/70
B66C 23/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライジブと、
前記フライジブを、その後端を支点として起伏可能な状態でブームの先端部に連結するために、前記フライジブの後端に連結されており、かつ、前記ブームの前記先端部に着脱可能に取り付けられるジブ連結部材と、
前記フライジブの前後方向にスライド可能な状態で、前記フライジブの先端側の部位に配置されているシーブと、
前記シーブを、前記前後方向にスライドさせるための起伏シリンダと、
前記ジブ連結部材と前記フライジブにおける前記シーブよりも前記前後方向の後側の部位との間に架け渡され、途中のワイヤー部分が前記シーブに対して前記フライジブの前側から巻き掛けられる起伏ワイヤーと
を有している移動式クレーン。
【請求項2】
請求項1において、
前記フライジブは伸縮式のジブであり、
前記フライジブには、当該フライジブを伸縮させるためのジブ伸縮シリンダが搭載されている移動式クレーン。
【請求項3】
請求項1において、
前記フライジブの動作制御を行うために、当該フライジブに搭載したフライジブ側コントローラを有し、
前記フライジブ側コントローラは、前記ブームが搭載されている上部旋回体あるいは当該上部旋回体が搭載されている下部走行体に配置されている本体側コントローラとの間で、CAN(コントローラ・エリア・ネットワーク)プロトコルによる通信、あるいは、イーサネット(登録商標)による通信を行うようになっている移動式クレーン。
【請求項4】
請求項3において、
前記フライジブ側コントローラは前記本体側コントローラとの間でCANプロトコルによる通信を行うようになっており、
前記ブームに取り付けたコードリールに巻き付けられているCAN通信ライン用の4芯ケーブルと、
前記コードリールから巻き出された前記4芯ケーブルを接続するために、前記フライジブ側コントローラの側に配置したケーブルコネクタと
を有している移動式クレーン。
【請求項5】
請求項4において、
前記本体側コントローラは、前記下部走行体に搭載されている運転席に配置したメインコントローラ、および、前記上部旋回体に配置した旋回体側コントローラを備えており、
前記メインコントローラと前記旋回体側コントローラの間は、スリップリングを介してCAN通信ラインによって接続されており、
前記旋回体側コントローラと前記フライジブ側コントローラの間が、前記CAN通信ライン用の4芯ケーブルを介して接続されるようになっている移動式クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラクレーン、トラッククレーンなどの移動式クレーンに関し、特に、ブームの先端に取り付けて用いるフライジブ(補助ジブ)を備えた移動式クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
移動式クレーンにおいては、ブームによる作業範囲を広げるために、ブームの先端にフライジブを着脱可能に取り付けて使用する構造のものが知られている。フライジブは、例えば、ブームにおける上部旋回体に起伏可能に搭載されたブームの側面、下面等に沿った状態に格納される。
【0003】
フライジブを用いてクレーン作業を行う場合には、フライジブが、ブームの最終段の可動ブームの先端部からブーム前方に延びる状態に取り付けられる。また、フライジブをブーム先端部を支点として起伏させるための起伏ロープが、ブームの側からフライジブ側に架け渡され、あるいは、フライジブ起伏シリンダがブームとフライジブの間に架け渡される。
【0004】
特許文献1には、起伏ワイヤーを用いてフライジブを起伏させる移動式クレーンが提案されている。特許文献2には、起伏シリンダを用いてフライジブを起伏させるクレーンのジブ起伏装置が提案されている。フライジブを格納状態から張り出し状態に切り替える張り出し作業および格納作業においては、ブームとフライジブの間に、起伏ロープあるいは起伏シリンダを架け渡す必要があり、手間が掛かる。
【0005】
一方、フライジブには、傾斜角、作用荷重、長さ、そこから吊り下げられる補助フックの巻き上げ状態などを検出するために各種の計器類が搭載される。フライジブに搭載された計器類には、ブーム側から引き出される信号線・給電線が接続される。フライジブの張り出し・格納作業においては、多数本の配線の引き回し、および接続・切り離し作業が必要になり、煩雑である。また、ブームに比べて小さな断面のフライジブに、多数本の配線を適切に引き回すことができない場合もある。さらに、多数本のケーブルの場合、ケーブルの径が太くなり、リールも大型化してしまう。
【0006】
特許文献3には、伸縮式の多段ブームであるテレスコブームに配置するのに適した多芯の導電ケーブルを用いたケーブル巻取装置が提案されている。特許文献4には、建設機械において、運転室側制御装置と、上部旋回体の左右に配置されるユニット側の制御装置との間がCAN通信ラインによって接続された通信システムが提案されている。しかしながら、従来においては、フライジブの張り出し・格納作業において、フライジブとブームの間に架け渡される多数本の信号線・給電線の接続・切り離し作業を効率よく行うことについては何ら着目されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−131975号公報
【特許文献2】特許第2883860号公報
【特許文献3】特開2015−40107号公報
【特許文献4】特開2014−208525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、フライジブの張り出し・格納作業を効率良く、簡単に行うことのできる移動式クレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の移動式クレーンは、
フライジブと、
前記フライジブを、その後端を支点として起伏可能な状態でブームの先端部に連結するために、前記フライジブの後端に連結されており、かつ、前記ブームの前記先端部に着脱可能に取り付けられるジブ連結部材と、
前記フライジブの前後方向にスライド可能な状態で、前記フライジブの先端側の部位に配置されているシーブと、
前記シーブを、前記前後方向にスライドさせるための起伏シリンダと、
前記ジブ連結部材と前記フライジブにおける前記シーブよりも前記前後方向の後側の部位との間に架け渡され、途中のワイヤー部分が前記シーブに対して前記フライジブの前側から巻き掛けられている起伏ワイヤーと
を有していることを特徴としている。
【0010】
フライジブを用いる場合には、フライジブの後端に連結されているジブ連結部材をブームの先端部に取り付け、フライジブがブームの先端部からブーム前方に延びる状態にする。ジブ起伏ワイヤーを、ジブ連結部材からシーブを介してフライジブまでの間に架け渡して、ジブ起伏シリンダを所定の伸長状態にすると、ジブ起伏ワイヤーによって、フライジブは一定の姿勢に保持される。この状態からジブ起伏シリンダを縮めると、ジブ起伏ワイヤーが架け渡されているシーブがフライジブの後端側に移動し、ジブ起伏ワイヤーが緩む。ジブ起伏ワイヤーに繋がっているフライジブは、自重により、ジブ起伏ワイヤーが緩む分だけ、ジブ連結部材によって規定される支点を中心として下方に旋回した下向き姿勢になる。
【0011】
シーブに架け渡されているジブ起伏ワイヤーの緩み量は、シーブのスライド量のほぼ2倍となる。したがって、フライジブに一端が繋がっているワイヤーを直接に巻き出してフライジブを下向きに傾斜させる場合に比べて、フライジブを同一角度だけ傾斜させるために必要な起伏シリンダのストローク量が、ワイヤー巻き出し量の半分で済む。
【0012】
また、ジブ起伏シリンダはフライジブに取り付けられており、ジブ起伏ワイヤーは、フライジブおよびフライジブの後端に連結されているジブ連結部材の間に架け渡される。したがって、ジブ起伏ワイヤーあるいはジブ起伏シリンダを、フライジブの張り出し時に、フライジブとブームの間に取り付け、格納時には、これらから取り外す場合に比べて、フライジブの張り出し・格納作業を効率よく簡単に行うことができる。
【0013】
ここで、前記フライジブが伸縮式のジブの場合には、前記フライジブには、当該フライジブを伸縮させるためのジブ伸縮シリンダが搭載される。
【0014】
また、前記フライジブには、少なくとも、前記フライジブの傾斜角を検出する傾斜角検出器および前記フライジブに作用する荷重を検出する荷重検出器を含む計器類と、前記起伏シリンダおよび前記伸縮シリンダに対して油圧を供給する油圧配管および当該油圧配管に介在させた油圧の供給先を切り替えるセレクトバルブと、前記傾斜角検出器および前記荷重検出器からの傾斜角および荷重に関する情報の受信、および、前記セレクトバルブの切り替え制御を行うフライジブ側コントローラとが搭載される。
【0015】
この場合には、前記フライジブ側コントローラは、前記ブームが搭載されている上部旋回体あるいは当該上部旋回体が搭載されている下部走行体に配置されている本体側コントローラとの間で、CAN(コントローラ・エリア・ネットワーク)プロトコルによる通信を行うようになっていることが望ましい。また、LANとして一般的に使用されているイーサネット(登録商標)(Ethernet)による通信を行うようにしてもよい。
【0016】
例えば、前記ブームに取り付けたコードリールに巻き付けられているCAN通信ライン用の4芯ケーブルと、前記コードリールから巻き出された前記4芯ケーブルを接続するための前記フライジブ側コントローラの側に配置したケーブルコネクタとを用いる。
【0017】
フライジブ側と本体側との間をCAN通信ラインによって接続することにより、これらの間の配線数を減らすことができる。これにより、フライジブの張り出し・格納作業を効率よく簡単に行うことができる。
【0018】
ここで、前記本体側コントローラが、前記下部走行体に搭載されている運転席に配置したメインコントローラ、および、前記上部旋回体に配置した旋回体側コントローラを備えている場合には、前記メインコントローラと前記旋回体側コントローラの間も、スリップリングを介してCAN通信ラインによって接続することができる。この場合には、前記旋回体側コントローラと前記フライジブ側コントローラの間が、前記CAN通信ライン用の4芯ケーブルを介して接続される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に係るクローラクレーンを示す正面図、側面図および平面図である。
図2】クローラクレーンにおけるフライジブを用いた作業状態の一例を示す正面図である。
図3】ジブ起伏装置・ジブ伸縮装置および油圧回路を示す説明図である。
図4】フライジブの起伏動作を示す説明図である。
図5】クローラクレーンの制御系の概略ブロック図である。
図6】フライジブの計器類等の取付位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して本発明を適応した移動式クレーンの実施の形態を説明する。以下の実施の形態は、本発明をクローラクレーンに適用した例である。本発明は、トラッククレーン、ホイールクレーンなどの移動式クレーンにも同様に適用可能である。
【0021】
(全体構成)
図1(a)は本実施の形態に係るクローラクレーンを示す正面図であり、図1(b)はその側面図であり、図1(c)はその平面図である。図2はフライジブを用いた作業状態の一例を示す正面図である。
【0022】
クローラクレーン1は、クローラ式の下部走行体2と、この下部走行体2の前側部分の左側に配置された運転席3と、下部走行体2の後側部分の中央に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4に搭載された多段式のブーム5と、ブーム5の側面に格納されるフライジブ6とを備えている、
【0023】
下部走行体2の四隅には、それぞれアウトリガー7が取り付けられている。4本のアウトリガー7は、図1(c)に想像線で示すように、それらの内側端部を中心として垂直軸線回りに旋回可能である。また、各アウトリガー7は、外側に張り出した状態で、図2に示すように、油圧シリンダ7aによって先端の接地板7bを接地させた状態を形成でき、この状態で、その長さ方向に伸長すると、下部走行体2のクローラが浮き上がった状態を形成できる。4本のアウトリガーによって、クローラクレーン1を所定の作業位置に安定した状態で設置できる。
【0024】
上部旋回体4は垂直軸線回りに旋回可能であり、上部旋回体4とブーム5の第1段の固定ブーム9との間にはブーム起伏シリンダ8が掛け渡されている。固定ブーム9には、複数段の可動ブーム、例えば、3段の可動ブーム10、11、12が収納されており、内蔵のブーム伸縮シリンダあるいはブーム伸縮ワイヤー等の機構によって伸縮可能となっている。
【0025】
フライジブ6はブーム5の側面に沿った状態で格納されている。フライジブ6の後端部は、連結用フランジ13(ジブ連結部材)に取り付けた水平連結ピン14を支点として上下方向に起伏可能に当該連結用フランジ13に連結されている。連結用フランジ13は、ブーム5の最終段の可動ブーム12の先端部12aに対して着脱可能に連結されている。また、連結用フランジ13は、可動ブーム12の先端部12aに対して、垂直連結ピン15を中心として、ブーム5の側面5aから先端面の側を向く位置までの間を旋回可能である。
【0026】
フライジブ6を使用しての荷揚げ作業などにおいては、フライジブ6および連結用フランジ13を、垂直連結ピン15を中心として、ブーム5の側面5aから側方外側に旋回させ、ブーム5の先端からブーム前方に向けてフライジブ6が張り出す状態に切り替える。この状態で、連結用フランジ13は旋回しないように、可動ブーム12の先端部12aに不図示の連結ピンによって連結固定される。
【0027】
フライジブ6は、図2に示すように、可動ブーム12の先端部12aに取り付けた連結用フランジ13の水平連結ピン14を支点として起伏可能な固定側ジブ21と、このジブ21の先端から引き出し可能な状態でジブ21に装着されている可動側ジブ22とを備えている。また、フライジブ6にはジブ起伏装置23およびジブ伸縮装置24が配置されている。ジブ起伏装置23によって、フライジブ6は、ブーム5に対して、その長さ方向に延びる初期姿勢から下方に所定の角度傾斜した傾斜姿勢までの間を起伏可能である。ジブ伸縮装置24によって、フライジブ6の可動側ジブ22は、固定側ジブ21に引き込まれた収納位置から実線で示す伸長位置まで伸ばすことが可能である。
【0028】
(ジブ起伏装置・ジブ伸縮装置)
図3(a)はフライジブ6に取り付けられているジブ起伏装置23およびジブ伸縮装置24を示す説明図であり、図3(b)はその油圧回路を示す説明図である。ジブ起伏装置23は、連結用フランジ13、一対のシーブ25、ジブ起伏シリンダ26およびジブ起伏ワイヤー27を備えている。ジブ伸縮装置24は固定側ジブ21の後側の部分に内蔵されているジブ伸縮シリンダ24aを備えている。
【0029】
ジブ起伏装置23において、連結用フランジ13は、先に述べたように、固定側ジブ21の後端部21aを、水平連結ピン14を支点として、フライジブ6を起伏可能な状態で支持している。
【0030】
シーブ25は、ジブ起伏シリンダ26の先端に取り付けられており、フライジブ6の先端側の部位において、フライジブ6の前後方向(ジブ長さ方向)にスライド可能である。本例では、フライジブ6に取り付けた左右のブラケット28に形成した前後方向に長い一定幅のスライド溝28aに、スライド可能な状態で、一対のシーブ25の中心軸25aが通されている。
【0031】
ジブ起伏シリンダ26は、固定側ジブ21の上面において、その長さ方向に沿って配置されている。ジブ起伏シリンダ26の後端は固定側ジブ21に固定され、その先端側の伸縮端はシーブ25の中心軸25aに連結されている。ジブ起伏シリンダ26を伸縮させると、そこに連結されているシーブ25はスライド溝28aに沿って、フライジブ6の前後方向に所定のストロークでスライドする。
【0032】
ジブ起伏ワイヤー27は、その一方のワイヤー端が連結用フランジ13の上端部13aに連結固定されており、その他方のワイヤー端が固定側ジブ21の長さ方向の中程の部位に連結固定されている。また、これらのジブ起伏ワイヤー27は、それらの途中において、左右のシーブ25に対してジブ先端側から巻き掛けられ、両側のワイヤー端がシーブ後方に延びている。
【0033】
フライジブ6をブーム5の先端部12aから前方に延びる状態に取り付けて連結用フランジ13の水平連結ピン14を支点として起伏可能な状態に切り替えると、ジブ起伏ワイヤー27によってフライジブ6が保持され、ジブ起伏ワイヤー27は引張状態になる。例えば、ジブ起伏シリンダ26を最も伸長させた状態において、図3(a)に示すように、フライジブ6がブーム5の先端側からその長さ方向に直線状に延びる姿勢となるように、ジブ起伏ワイヤー27の長さが設定される。
【0034】
ここで、ジブ起伏シリンダ26およびジブ伸縮シリンダ24aは油圧シリンダであり、下部走行体2の側に搭載されている油圧源(油圧ポンプ)(図示せず)の側から油圧が供給される。図3(a)、(b)に示すように、作動油圧は、油圧源から、ブーム5の側面5aに取り付けた電磁式のセレクトバルブ31を介して、ブーム伸長シリンダ32およびフライジブ6側に油圧を供給する油圧ホース33、34に供給される。フライジブ6側に向かう油圧ホース35は、ブーム5の後端側の側面に取り付けたホースリール36に巻き取られており、ここから巻き出し可能である。油圧ホース35はブーム5の先端から引き出されて、フライジブ6の後端部の側面に取り付けた電磁式のセレクトバルブ37に接続可能となっている。油圧は、セレクトバルブ37を介してジブ伸縮シリンダ24aに供給され、また、セレクトバルブ37および油圧ホース38を介してジブ起伏シリンダ26に供給される。
【0035】
図4はジブ起伏装置23によるフライジブ6の起伏動作を示す説明図である。図4(a)に示す初期状態では、ジブ起伏シリンダ26は最も伸長した状態にある。この状態では、フライジブ6はブーム5の先端部12aから、その長さ方向に延びる姿勢に保持される。この状態から、ジブ起伏シリンダ26を縮めていくと、それに伴って、左右のシーブ25がスライド溝28aに沿ってフライジブ6の後端側にスライドする。
【0036】
図4(b)に示すように、シーブ25がスライド溝28aの後端までスライドすると、それに伴って、フライジブ6が自重により連結用フランジ13の水平連結ピン14を中心として下方に旋回する。これにより、フライジブ6は、ブーム5に対して下方に傾斜した傾斜姿勢になる(図2参照)。
【0037】
ジブ起伏ワイヤー27は、ジブ起伏シリンダ26の縮み量に対してほぼ2倍の長さ分だけ緩むので、その長さ分だけ、フライジブ6が自重により下方に旋回する。よって、フライジブ6に取り付けたジブ起伏ワイヤーを直接、ウインチなどで巻き出す場合に比べて、少ないストロークでジブ起伏シリンダ26を駆動してフライジブ6を傾斜させることができる。
【0038】
このように、フライジブ6の先端側の部位にスライド可能に取り付けたシーブ25に巻き掛けたジブ起伏ワイヤー27によって、連結用フランジ13から吊り下げられている。シーブ25をフライジブ6に取り付けられているジブ起伏シリンダ26によってスライドさせると、連結用フランジ13からジブ起伏ワイヤー27によって吊り下げられているフライジブ6がブーム5に対して傾斜する。フライジブ6の起伏機構がフライジブ側に搭載されているので、フライジブの張り出し・格納作業を簡単に行うことができる。
【0039】
(フライジブCAN通信システム)
次に、図5はクローラクレーン1の制御系を示す概略ブロック図である。この図に示すように、制御系は、下部走行体2の運転席3に配置されているコントローラ41と、上部旋回体4に配置されている旋回体側のIOコントローラ42と、フライジブ6に配置されているフライジブ側のIOコントローラ43とを備えている。本体側のコントローラであるコントローラ41と旋回体側のIOコントローラ42の間は、スリップリング44を介して、CAN通信ライン45によって接続されている。
【0040】
また、旋回体側のIOコントローラ42とフライジブ側のIOコントローラ43との間も、CAN通信ラインである4芯ケーブル46を介して接続され、CAN通信により信号の送受が行われる。4芯ケーブル46は、ブーム5の側に取り付けたコードリール47に巻き付けられており、ここから巻き出されて、フライジブ側のIOコントローラ43の側に配置したケーブルコネクタ48に着脱可能に接続されるようになっている。
【0041】
フライジブ側のIOコントローラ43には、フライジブ6の作業状態を検出するための計器類が接続されている。例えば、フライジブ6からつり下げられる補助ワイヤーの過巻き状態を検出する過巻検出スイッチ51、フライジブ6に作用する荷重を計測するロードセル52、フライジブ6の傾斜角度を検出する角度計53、フライジブ6の長さを計測する長さ計54などが接続されている。また、フライジブ側のIOコントローラ43は信号線を介してセレクトバルブ37に接続されている。
【0042】
フライジブ側のIOコントローラ43は、これらの計器類からの入力値を変換して、CAN通信により旋回体側のIOコントローラ42を介して走行体側のコントローラ41に伝達する。コントローラ41、旋回体側のIOコントローラ42からの制御信号などがCAN通信によりフライジブ側のIOコントローラ43に伝達される。IOコントローラ43は受信した制御信号に基づき、セレクトバルブ37の切り替え制御を行う。
【0043】
図6は、フライジブ6に配置されている計器類などの取付位置の一例を示す説明図である。この図の例では、フライジブ側のIOコントローラ43は、フライジブ6の側面における長さ方向の中程の部分に組み込まれている。ここには、角度計53も組み込まれている。また、ロードセル用アンプ55、信号処理回路、通信回路などが実装されている。
【0044】
フライジブ側のIOコントローラ43に対して、ジブ長さ方向の前側の位置には、長さ計54のコードリール56が取り付けられており、ここから長さ測定用コード56aが巻き出されて可動側ジブ22の先端に繋がっている。また、ジブ起伏シリンダ26の後端におけるフライジブ6の取付位置には、ロードセル52としてピン型ロードセルが組み込まれている。
【0045】
ブーム5の先端側の側面5bには、CAN通信ライン用の4芯ケーブル46が巻き付けられたコードリール47が取り付けられている。フライジブ6を用いた作業時には、ここから巻き出された4芯ケーブル46が、フライジブ側コントローラ43に接続されて、本体側との間の通信ラインが確立するようになっている。1本の配線接続を行うだけでよいので、フライジブ6の張り出し・格納作業を簡単かつ短時間で行うことができる。
【0046】
フライジブ用のIOコントローラ43に対して、ジブ長さ方向の後側の部位には、セレクトバルブ37が取り付けられている。セレクトバルブ37から油圧ホース38などがジブ起伏シリンダ26などに延びている。また、セレクトバルブ37には、上流側であるブーム5の側から引き出されている油圧ホース35が接続されている。油圧ホース35は図3(a)に示すように、ブーム5の反対側の側面に取り付けたホースリール36から巻き出されている。
【0047】
なお、フライジブ6における計器類の配置位置などは一例を示すものであり、本発明は上記の実施の形態の各構造に限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6