(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793728
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】ギヤ調整装置を備えた無段変速装置
(51)【国際特許分類】
F16H 9/12 20060101AFI20201119BHJP
F16H 9/18 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
F16H9/12 B
F16H9/18 A
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-529298(P2018-529298)
(86)(22)【出願日】2016年12月1日
(65)【公表番号】特表2018-536817(P2018-536817A)
(43)【公表日】2018年12月13日
(86)【国際出願番号】IB2016057251
(87)【国際公開番号】WO2017098378
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2019年8月7日
(31)【優先権主張番号】102015000081834
(32)【優先日】2015年12月10日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリオッティ,ワルター
(72)【発明者】
【氏名】フレスキ,ジャコモ
(72)【発明者】
【氏名】ネスティ,パオロ
【審査官】
小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】
特表2015−500966(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/098689(WO,A1)
【文献】
特公昭48−004512(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 9/12
F16H 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸(2)に接続可能な二輪、三輪または四輪のオートバイ用無段変速装置(1)であって、
Vベルト(6)用の駆動プーリ(4)であって、前記Vベルト(6)用の作用面(8a)を担持する可動ブッシュ(9)を備え、前記可動ブッシュ(9)が、係合手段とローギヤとトップギヤとの間の変速を達成するための速度調整機(12)とが設けられた基本ローラおよび特殊ローラ(18)の作用下で軸方向に摺動可能である、駆動プーリ(4)と、
軸方向に摺動可能で、変速中に前記特殊ローラ(18)と係合して前記特殊ローラ(18)を保持するのに適した摺動部(40)を含む変速調整装置とを含み、
前記可動ブッシュ(9)が、前記摺動部(40)に作用して、前記摺動部(40)を特殊ローラ(18)と係合させるために後退位置から前進限界位置まで平行移動させるのに適している、変速装置。
【請求項2】
前記変速調整装置が、前記可動ブッシュ(9)に作用されない場合に前記摺動部(40)が前記後退位置に戻るのを防止する、後退径方向位置と前進径方向位置との間で径方向に平行移動可能な少なくとも1つのキー(32a、32b)を含む係止装置を含む、請求項1に記載の変速装置(1)。
【請求項3】
前記変速調整装置が、前記キー(32a、32b)に作用して前記キー(32a、32b)を前記後退径方向位置から前記前進径方向位置まで平行移動させるために、後退位置と前進位置との間で軸方向に摺動可能な作動ピン(22)を含む作動装置を含む、請求項2に記載の変速装置。
【請求項4】
前記キー(32a、32b)が前記作動ピン(22)に作用されない場合に前記後退径方向位置に戻るのを防止するように、前記キー(32a、32b)が前記摺動部(40)と係合可能である、請求項3に記載の変速装置。
【請求項5】
前記作動装置が、前進位置から前記後退位置に向かって前記摺動部に永久に作用するように構成された当接要素(30)および当接ばね(32)を含む、請求項4に記載の変速装置。
【請求項6】
前記当接要素(30)および前記当接ばね(32)がまた、前記前進位置から前記後退位置まで前記作動ピン(22)に永久に作用するように構成されている、請求項5に記載の変速装置。
【請求項7】
前記摺動部(40)が、前記後退位置において前記キー(32a、32b)の前記後退位置から前記前進位置への退出を防止し、したがって、前記作動ピン(22)の平行移動をも阻止し、かつ前記作動ピン(22)に作用する作動ばね(28)に弾性的に負荷をかけて、前記後退位置から前記前進位置まで前記作動ピン(22)に永久に作用するようにする、請求項5または6に記載の変速装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の駆動軸(2)と変速装置(1)とを含むアセンブリであって、前記駆動軸(2)が、前記駆動プーリ(4)と同軸に一体的に回転接続される、アセンブリ。
【請求項9】
変速装置(1)の変速調整装置用の特殊ローラ(18)であって、転動体(51)と、前記変速調整装置の反係合手段によって保持されて一方向で径方向の拘束を実現するのに適した係合手段とを含む、特殊ローラ。
【請求項10】
前記係合手段が、前記転動体(51)から離れて延在するステム部(52)を含み、前記ステム部(52)が、前記変速調整装置の摺動部(40)の把持縁部(50)と係合するのに適した係合部分(54)で終了する、請求項9に記載の特殊ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変速装置に関し、特に、変速曲線の調整装置を備えたオートバイ用無段変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この文書では、「オートバイ」という用語は、出願人が販売しているVespa(登録商標)車、Ape(登録商標)車またはMP3(登録商標)車などの揺動式または非揺動式の二輪、三輪または四輪の車両を意味する。
【0003】
無段変速機(Continuously Variable Transmission,CVT)は、変速比を2つの限界値の間で連続的に変化させることができる車両用の自動変速機の一種である。無段変速機は、エンジンサイズが中小規模の二輪車、特にスクータで広く使用されている。
【0004】
CVT(無段変速機)では、変速比の変化は、2つのプーリ(pulley,ベルト車)上のベルトの巻径を変化させることによって起こり、2つのプーリの一方は駆動プーリ(drive pulley)であり、他方は従動プーリ(driven pulley)であり、これらのプーリの少なくとも1つは、自己を構成する2つの部分またはハーフプーリ(half−pulley)を一緒に引き出し、離間させることができる。
【0005】
典型的には、駆動プーリは、一般的に「ローラ(roller)」と呼ばれる遠心重錘(contrifugal mass)で作られた速度調整機を含み、このローラは、それぞれのハーフプーリを軸方向に一緒に引き出すことを実行し、(ハーフプーリが離間した)ローギヤ状態から(ハーフプーリが並置(juxtapose)された)トップギヤ状態に移行する役割を有している。
【0006】
CVTがローギヤ状態にある場合に、いくつかのローラを抑制することによってローラがハーフプーリの並置に関与しないようにすることが可能な、変速曲線を調整する装置が知られている。したがって、前記ハーフプーリは、より多くのエンジン回転数で所定の軸方向距離に到達し、CVTをよりスポーティな構成にする。
【0007】
反対に、全てのローラがハーフプーリの並置に関与する場合、これらのローラは、より低いエンジン回転数で前記軸方向の距離にあり、CVTをよりツーリングに適した構成にする。変速曲線を調整するこのような装置の実施形態の一例は、本出願人名義の特許文献1に記載されている。
【0008】
しかし、このような調整装置には、ローギヤ条件の存在下でのみ、すなわちローラが駆動軸に隣接する場合にのみ作動および作動停止を可能にして、変速段階におけるローラの急激な解放による衝撃を回避するという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2013/098689号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の必要性を満たすと同時に従来技術の欠点を克服する変速装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、請求項1に記載の変速装置によって達成される。従属請求項は、実施形態の変形を記載する。
【0012】
変速装置の特性および利点は、添付の図面による非限定的な例として、以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、調整装置が停止され、かつ係合解除された(not engaged)ローギヤでの初期構成における本発明による変速装置の断面図である。
【0014】
【
図2】
図2は、調整装置が停止され、かつ係合解除されたトップギヤ構成における
図1の変速装置を示す図である。
【0015】
【
図3】
図3は、調整装置が作動され、かつ係合された(engaged)ローギヤ構成における
図1の変速装置を示す図である。
【0016】
【
図4】
図4は、調整装置が作動され、かつ係合されたトップギヤ構成における
図1の変速装置を示す図である。
【0017】
【
図5】
図5は、調整装置が作動され、かつ係合解除されたトップギヤ構成における
図1の変速装置を示す図である。
【0018】
【
図6a】
図6aは、本発明による変速装置の特殊ローラ(special roller)を示す図である。
【
図6b】
図6bは、本発明による変速装置の特殊ローラを示す図である。
【0019】
【
図7a】
図7aは、本発明による変速装置の摺動部(slide)を示す図である。
【0020】
【
図8a】
図8aは、本発明による変速装置のキー(key)および復帰ばね(return spring)を含むシステムを示す図である。
【0021】
【
図8b】
図8bは、本発明による変速装置のキーを示す図である。
【
図8c】
図8cは、本発明による変速装置のキーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付の図面を参照すると、符号1は、好ましくは二輪/三輪のオートバイに適用されるように構成された、回転軸線X(axis of rotatioin X)を定義する駆動軸2(drive shaft 2)と係合する無段変速装置を包括的に示している。
【0023】
変速装置1は、Vベルト6によって互いに接続される、駆動軸2によって回転駆動される第1の駆動プーリ4と、第2の従動プーリ(図示せず)とを備えている。
【0024】
駆動プーリ4は、対向する円錐台状(truncated−cone)の作用面8a、10a(active surface8a,10a)をそれぞれ備え、前記回転軸線Xに沿って摺動して作用面8aおよび10aを並置し、かつ離間させ、一体的に回転する第1のハーフプーリ8と第2のハーフプーリ10とからなる。
【0025】
第1のハーフプーリ8は、特に、作用面8aを担持し、かつ駆動軸2と同軸のブッシュ8b(bushing 8b)を提供する可動ブッシュ9(mobile bushing 8b)と、可動ブッシュ9によって支持され、かつ成形された座部16(shaped seat 16)が設けられたコンテナ14、および座部16に収容され、基本ローラ(basic roller)および特殊ローラ18の両方を含む複数のローラを含む速度調整機12とを含む。
【0026】
特殊ローラ18には、変速装置の反係合手段(counter−engagement means)によって保持されるように適合された係合手段が設けられている。
【0027】
ローラは、エンジン回転数が増加するにつれて第1のハーフプーリ8を第2のハーフプーリ10に向けて押圧し、特に可動ブッシュ9を第2のハーフプーリ10に向けて押圧する遠心重錘を実現する。
【0028】
このようにして、駆動プーリ4上のベルト6の巻径が増大し、伸長不可能なベルトが動作して従動プーリの巻径が縮小し、変速比が増大する(トップギヤ)。
【0029】
変速装置1は、特殊ローラ18を保持することができる変速調整装置をさらに含む。
【0030】
調整装置は、調整装置を作動構成にするように適合された作動装置を含む。
【0031】
例えば作動装置は、第1のハーフプーリ8とは反対側の第2のハーフプーリ10の側面から制御端20aと共に突出した、例えば駆動軸2の内側に軸方向に配置された作動ロッド20を含む。
【0032】
作動装置は、制御端20aの反対側の端部に配置され、かつ径方向の凹部24が設けられた、例えば作動ロッド20と一体成形された作動ピン22をさらに含む。
【0033】
作動装置は、例えば作動ロッド20を軸方向に押圧するように、例えば電気的な制御によって回転して作動可能な制御脚部26をさらに含む。
【0034】
さらに、作動装置は、制御脚部26と作動ピン22との間、例えば制御脚部26と作動ロッド20の制御端20aとの間、または作動ロッド20と作動ピン22との間(変形例では、ピンはロッドから離間している)に配置された作動ばね28を含む。
【0035】
作動装置は、制御脚部26の作動に起因する前方位置への作動ピン22の前進(advancement)とは対照的に作動する、例えばプレートなどの当接要素30(abutment element 30)および当接ばね32(abutment spring 32)をさらに含む。
【0036】
調整装置は、係止装置(rocking device)をさらに含む。
【0037】
係止装置は、回転軸線Xに隣接する後方径方向位置(rearward radial position)と前方径方向位置(forward radial position)との間で径方向に移動可能な一対のキー32a、32bを含み、前記キーは、凹部24内の作動ピン22と係合するように適合される。
【0038】
係止装置はさらに、キー32a、32bに対して作用してキー32a、32bを後方径方向位置に移動させる少なくとも復帰ばね34をさらに含み、前記ばねは、例えば駆動軸の周りに配置され、かつキー32a、32bを凹部24内に押し込むように構成された、単一の環状要素として実現される。
【0039】
さらに、キー32a、32bには、それぞれのキーを前方径方向位置(forward radial position)に係止するのに適した突起部36(protrusion)が設けられている。
【0040】
調整装置は、駆動軸2上を摺動し、作動ピン22の係止装置、速度調整機の特殊ローラ18、第1のハーフプーリ8の可動ブッシュ9、および作動装置の当接要素30と協働するように適合された保持摺動部40(retention slide 40)をさらに含む。
【0041】
特に、摺動部40は、係止端44(locking end 44)と保持端46(retentioin end 46)との間で主に回転軸線Xに沿って延在する管状壁42を含む。
【0042】
係止端44において、管状壁42は、キー32a、32bの突起部36と係合してキー32a、32bを前方径方向位置に係止するように適合された壁厚減少部46(thinning)を呈している。
【0043】
保持端46において、摺動部40は、速度調整機の特殊ローラ18に係合する把持縁部50を有する環状フランジ48を有する。
【0044】
さらに、管状壁42は、作動装置の当接要素30と協働するように適合された環状突起部52を内部に提供している。
【0045】
特殊ローラ18は、コンテナ14の座部16の表面上を転がるように設計された転動体51と、転動体51から離れて延在し、摺動部40の把持縁部50(gripping edge 50)と係合するのに適した係合部分54で終了して、特殊ローラ18の径方向外側への移動を防止するような一方向で径方向の拘束を実現するステム部52とを含む。
【0046】
ステム部52および係合部分54は前記係合手段の一例を実現する一方で、摺動部40の把持縁部50は前記反係合手段の一例を実現する。
【0047】
変速装置1の通常動作中、低エンジン回転数、すなわち所定の閾値未満のエンジン回転数での初期構成または休止構成では、変速装置はローギヤ状態にあり、第1のハーフプーリ8および第2のハーフプーリ10は離間しており、Vベルトの巻径は低減している(
図1)。
【0048】
遠心力が低減されたために、基本ローラおよび特殊ローラ18の両方は後退径方向位置にあり、すなわち回転軸線Xに近接しており、したがって、摺動部40によって係合されるのに適している。
【0049】
このような構成では、調整装置は停止され、制御ロッド20は後方軸方向位置(rearward axial position)にあり、キー32a、32bは、凹部24を塞ぐ作動ピン22と係合する後方径方向位置(rearward radial position)にあり、摺動部40は、キー32a、32bの径方向外側への平行移動を妨げない軸方向位置にある。
【0050】
この構成から始まり、エンジン回転数が増加すると、第1のハーフプーリ8が第2のハーフプーリ10に接近し、これにより、可動ブッシュ9は、摺動部40を当接要素30および復帰ばね32の作用下で後方位置へ自由に移動させるが、この後方位置では、摺動部40は、前方径方向位置へ移動する、すなわち回転軸線X(
図2)から離れて移動する特殊ローラ18と係合することができない。
【0051】
したがって、基本ローラおよび特殊ローラ18の両方を含む全てのローラが変速に関与するので、変速装置のトップギヤへの変速は非常に急である。したがって、変速装置の構成はツーリングに適したものになる。
【0052】
上述の初期構成から始まり、変速調整装置を作動させるために制御脚部26が作動され、これにより、作動ばね28が作動ロッド20を前方軸方向位置に押圧して、復帰ばね32(
図3)の逆作用を克服する。
【0053】
可動ブッシュ9によって押圧される摺動部40がキー32a、32bの退出を妨げない前方限界位置(forward limit position)にあるので、キー32a、32bは、凹部24から出て駆動軸2から外向きに突出しながら前方径方向位置へ移動する。
【0054】
特殊ローラ18は後方径方向位置にあり、摺動部40によって係合されている。換言すれば、摺動部40のフランジ48の把持縁部50は、特殊ローラ18のステム部52の係合部分54に係合する。
【0055】
(調整装置が作動され、かつ係合されている)このような構成から始まった場合、調整装置は停止され(制御脚部26の制御ロッド20の作用を排除し)、調整装置は残りの構成(
図1)に戻る。
【0056】
調整装置が作動されかつ係合された変速装置のローギヤ状態(
図3)から始まり、エンジン回転数が増加すると、基本ローラがコンテナ14上で作動し、かつ、変速装置がトップギヤ状態に移行する(
図4)が、特殊ローラ18は、摺動部40によって後方位置に保持されているので、この変速には関与しない。
【0057】
したがって、全てのローラが変速に関与する場合よりも、トップギヤへの移行が遅くなる。したがって、変速装置の構成はよりスポーティなものになる。
【0058】
この構成では、可動ブッシュ9が前記摺動部40を前方限界位置に向けてこれ以上押し出さないとしても、摺動部40はキー32a、32bによって前方位置にある。
【0059】
この構成では、調整装置が停止されている場合、摺動部40がキー32a、32bをこのような位置に拘束する(実際には、摺動部40の係止端44はキー32a、32bの突起部36に係合している)ために前方径方向位置に留まっているキー32a、32bによって、摺動部40は前方位置に保持されているため、調整装置は、実際には係合されたままである。代わりに、作動ロッド20が後方位置に移動する。
【0060】
エンジン回転数が減少した際にのみ、可動ブッシュ9は摺動部40を前方限界位置に戻し、作動ピン22の凹部24内の後方位置に戻るキー32a、32bを解放する。
【0061】
したがって、調整装置はこれ以上係合されず、エンジン速度を再び増加させると、変速装置は、ツーリング構成(
図2)においてトップギヤ状態に戻る。
【0062】
調整装置が停止された変速装置のトップギヤ状態(
図2)において、調整装置が作動されると、特殊ローラ18が摺動部から解放されたままである(
図5)という意味で、前記調整装置は作動状態になるが係合されない。
【0063】
実際に、制御脚部26を作動させることにより、作動ばね28が作動ロッド20を押圧して予圧を加えるが、当接要素30および当接ばね32の作用下で可動ブッシュ9の作用を受けない摺動部40は後方限界位置に留まり、この後方限界位置では、摺動部40がキー32a、32bを軸方向に越えて、キー32a、32bが後方位置から前方位置へ移動することを防止する。
【0064】
したがって、作動ピン22は任意の平行移動を被らない(undergo)。
【0065】
エンジン回転数が減少した際にのみ、可動ブッシュ9は摺動部40を前方限界位置に向けて押圧し、こうして、凹部24から出るキー32a、32bを解放し、予圧を加えられた作動ばね28の作用下で、ピン22が前方位置に移動することができるようにする。
【0066】
このようにして、変速装置のローギヤ状態が達成され、調整装置が作動され、かつ係合される(
図3)。
【0067】
革新的に、調整装置はローギヤ状態においてのみ特殊ローラを有効に係合させるので、変速調整装置を含む変速装置は、変速装置のいかなる状態、すなわちローギヤ状態またはトップギヤ状態であっても調整装置を作動させることができる。
【0068】
同時に、有利には、特殊ローラの有効な解放は、変速中の突然の解放による衝撃を回避するローギヤ状態においてのみ実現されるので、調整装置の停止はいかなる状態であっても行うことができる。
【0069】
添付の特許請求の範囲によって定義される保護の範囲内に含まれる不定の要件を満たすように、上述の変速装置を変更することができることは当業者にとって明らかである。