(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793730
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】金属性粉末を圧縮し高密度化して得られる材料
(51)【国際特許分類】
C22C 1/04 20060101AFI20201119BHJP
G04B 37/22 20060101ALI20201119BHJP
C22C 30/06 20060101ALN20201119BHJP
C22C 9/04 20060101ALN20201119BHJP
【FI】
C22C1/04 E
G04B37/22 H
!C22C30/06
!C22C9/04
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-532780(P2018-532780)
(86)(22)【出願日】2016年11月18日
(65)【公表番号】特表2019-508576(P2019-508576A)
(43)【公表日】2019年3月28日
(86)【国際出願番号】EP2016078201
(87)【国際公開番号】WO2017108293
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2018年7月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】アイヘンバーガー,ジャン−クロード
(72)【発明者】
【氏名】トラン,フン・クォク
【審査官】
米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−513233(JP,A)
【文献】
特開昭48−025978(JP,A)
【文献】
特開2008−038160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/04
B22F 1/00〜8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子の凝集体で形成された3相を有する圧縮され高密度化された金属性材料であって、
粒子の間に形成されるブリッジによって当該材料は凝集しており、当該材料は、比重が、理論比重の95%以上であり、
粒子の外表面は、くぼみとピークがある不規則的なランダムな形を有し、さらに、前記複数の相は、
大部分がニッケルによって構成している第1の相と、大部分が青銅によって構成している第2の相と、及び大部分が黄銅によって構成している第3の相との3つの相を有し、
前記第1の相の割合は3〜40重量%であり、第2の相の割合は2〜20重量%であり、第3の相の割合は100重量%までの残りである
ことを特徴とする材料。
【請求項2】
前記粒子は、異なる大きさを有している
ことを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記各相の間の粒度分布に差がある
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の材料を有することを特徴とする部品。
【請求項5】
計時器の部品である
ことを特徴とする請求項4に記載の部品。
【請求項6】
微細機械工学の分野における請求項1〜3のいずれかに記載の材料の使用。
【請求項7】
粉末冶金によって材料を作る方法であって、
くぼみとピークがある不規則的なランダムな形の粒子によって構成する3相の金属性粉末を用意するステップと、
粒子がそれらの粒子のくぼみとピークのからみ合いによって互いに結合しているような圧縮されたアセンブリーを形成し、金属性粉末の粒子のみによって構成している凝集体の形態の中間製品を形成するように、金属性粉末を圧縮するステップと、
最も低い融点を有する粉末の融点よりも下の温度で衝撃によって前記凝集体を高密度化するステップと
を有し、
前記アセンブリーは、前記高密度化の前又は最中に、3〜30分の時間の間、前記温度にされ、さらに、前記複数の相は、
大部分がニッケルによって構成している第1の相と、大部分が青銅によって構成している第2の相と、及び大部分が黄銅によって構成している第3の相との3つの相を有し、
前記第1の相の割合は3〜40重量%であり、第2の相の割合は2〜20重量%であり、第3の相の割合は100重量%までの残りである
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記圧縮の前に、粉末を混合するステップを有する
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記粉末は、異なる大きさの粒子を有する
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記各相の間の粒度分布に差がある
ことを特徴とする請求項7〜9に記載の方法。
【請求項11】
前記第3の相の黄銅粉末のCuとZnの含有量はそれぞれ、60重量%と40重量%であり、前記第2の相の青銅粉末のCuとSnの含有量はそれぞれ、90重量%と10重量%である
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記高密度化するステップは、500℃以上の温度で行われる
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記圧縮するステップの圧縮は、冷間圧縮するステップである
ことを特徴とする請求項7〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記高密度化するステップのときに衝撃が500〜2000Jのエネルギーで、1〜50の回数与えられる
ことを特徴とする請求項7〜13のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料、及び粉末冶金によって材料を製造する方法に関する。この新規な材料の意図された応用分野は、機械工学の分野であり、特に、微細機械工学の分野である。本発明は、例えば、計時器におけるように、許容誤差が厳しく複雑な幾何学的構成を有する部品に特に適している。
【背景技術】
【0002】
粉末冶金によって得られる材料は技術的に非常に重要であり、原子力からバイオ医学にまで及ぶ広範囲の分野において用いられている。
【0003】
例えば、米国特許US5294269と米国特許出願US2004/0231459について、言及することができる。これらはそれぞれ、タングステンベースの合金とサーメットを焼結させる方法を開示している。詳細に立ち入らないが、焼結時の粉末粒子の間の相互作用(表面と体積における拡散)によって、当初の混合された粉末の微細構造と分布が劇的に変わる。結果として、この新規な微細構造に特有の特徴がある製品を得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、最終製品の所望の性質に応じて開始粉末の組成を選択し、粉末の間の相互作用を抑えるように当該方法のパラメーターを適応させて、開始粉末の選択に基づいて期待される特性を得ることを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このために、本発明は、粒子の凝集体で形成された一又は複数の相を有する圧縮され高密度化された金属性材料に関し、粒子の間に形成されるブリッジによって当該材料は凝集しており、当該材料は、比重が、95%以上であり、好ましくは、98%以上であり、粒子の外表面は、くぼみとピークがある不規則的なランダムな形を有する。
【0006】
粒子、特に、粒子の外表面、が不規則的なランダムな形であって、不規則的な形のくぼみとピークを有するために、製造プロセス時に、圧縮された粉末の高密度化ステップの前に、いずれのバインダーをも用いる必要性がなく、互いにからみ合うことによって粒子が結合することが可能になる。
【0007】
好ましいことに、前記粒子は、異なる大きさを有し、粒度分布は、1倍から少なくとも4倍までにわたるように分布しており、特定の実施形態によると、当該材料には、少なくとも2つの相があり、前記少なくとも2つの相の間の粒度分布の差は、少なくとも4倍にわたる。
【0008】
この粒度分布は、くぼみとピークがある不規則的なランダムな形を有する粒子の外表面のトポロジーのおかげで、好ましいことに、粒子の間の接触面を最大化させることを可能にする。これによって、圧縮の際の粒子の結合と凝集を促進して、圧縮された粉末の高密度化ステップの前に、いずれのバインダをも用いる必要性なしで、製造プロセスにおいて、安定した凝集体を形成する。高密度化ステップの間、このような粒度分布は、粒子の外表面のトポロジーのおかげで、数多くの微細溶接を作ることを可能にし、したがって、最終製品の良好な機械的性質に寄与する。
【0009】
本発明は、さらに、粉末冶金によって材料を作る方法に関し、
くぼみとピークがある不規則的なランダムな形の粒子によって構成する一又は複数の金属性粉末を用意するステップと、
粒子がそれらの粒子のくぼみとピークのからみ合いによって互いに結合しているような圧縮されたアセンブリーを形成し、金属性粉末の粒子のみによって構成している凝集体の形態の中間製品を形成するように、金属性粉末を圧縮するステップと、
最も低い融点を有する粉末の融点よりも下の温度で衝撃によって圧縮された前記凝集体のアセンブリーを高密度化するステップと
を有し、
前記アセンブリーは、前記高密度化の前又は最中に、3〜30分、好ましくは、5〜20分の時間の間、前記温度にされる。
【0010】
なお、この方法によると、圧縮ステップの終わりにおいて形成される凝集体は、好ましいことに、いずれのバインダーの使用をも必要とせず、単に粒子のそれぞれの外表面の物理的相互作用を通して粒子が互いに保持される。したがって、結合を解除するステップが必要なくなる。高密度化ステップの終わりにおいて、粒子は、それらの界面にて、微細溶接によって互いに恒久的に結合する。このように得られた固体は、後の焼結又は他の操作を経ずに、様々な部品の製造に用いることができるような十分な機械的性質を有する。
【0011】
図面を参照しながら下記の詳細な説明を読むことで、本発明の特徴及び利点を理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る方法によって得られた3つの相の材料の微細構造を示している。ニッケル、黄銅及び青銅の圧縮された混合物に対して500℃に近い温度で高密度化を行った。
【
図2】同じ微細構造について、画像処理をして異なる相を示している。
【
図3】高密度化が700℃に近い温度で行われるときの同じ3つの相の材料についての微細構造を示している。
【
図4】高密度化が700℃に近い温度で行われるときの同じ3つの相の材料についての微細構造を示している。
【
図5】
図5及び6は、比較のために、粉末冶金によって得られた従来技術の材料の微細構造を示している。
図5においては、二相の焼結された固体である(US5294269)。白色は、主としてタングステンによって作られた重い相を表している。黒い相は、金属バインダー相であって、実質的に、ニッケル、鉄、銅、コバルト及びモリブデンの合金によって構成している。
【
図6】
図6においては、焼結されたサーメット(US2004/0231459)である。バインダーは、347SSステンレス鋼によって構成しているバインダー相である。セラミック相は、TiC(炭化チタン)によって構成している。最後の相は、M
7C
3の凝結によって形成される。ここで、Mは、クロム、鉄及びチタンを含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、粉末冶金によって材料を作る方法及びこの方法によって得られる材料に関する。本方法は、材料の微細構造がその体積全体にわたって完全に均質であるように適応しており、これによって、混合粉末の微細構造及びそれらの混合物における初期分布についての可能性のある最も正確なイメージとなる。本方法によって得られる材料は、最終製品であっても、また、後の機械加工のステップを必要とする半製品であってもよい。
【0014】
当該材料は、以下の3つのステップを有する方法によって得られる金属性材料である。
【0015】
第1のステップは、一又は複数の金属性粉末を選択し、いくつかの粉末が存在する場合にそれらを投入することを伴う。この金属性粉末は、純粋な金属の粉末又は合金粉末であることができる。開始粉末の数、それらの組成、及びそれらそれぞれの割合は、固結される製品の所望の物理的及び機械的性質に依存する。異なる組成に特有の性質を組み合わせるためには、最低2種類の粉末があることが好ましい。その各粉末の種類は、選択された粒径を有する粒子によって形成されており、これによって、材料の品質を確実にする。所望の性質に依存するが、平均径d
50は、1〜100μmの範囲内で選択されることが好ましい。
【0016】
金属性粉末は、チタン、銅、亜鉛、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、コバルト、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、銅、銀、タンタル、タングステン、白金及び金の純金属及び合金を含む非網羅的な群から選ばれる。例えば、混合物は、ニッケル粉末、青銅粉末及び黄銅粉末の3種類の粉末を含む。青銅粉末の割合は、2〜20重量%であり、ニッケル粉末の割合は、3〜40重量%であり、黄銅粉末の割合は、残りの割合(=100%−ニッケルと青銅の割合の合計)である。青銅と黄銅において、Cu、Sn及びCu、Znの割合をそれぞれ変調することができる。例えば、黄銅において、CuとZnの含有量はそれぞれ60%と40%であることができ、青銅において、CuとSnの含有量はそれぞれ90%と10%であることができる。
【0017】
第2のステップにおいて、異なる種類の粉末が混合される。この混合は、標準的な市販されているドライミキサー内にて行われる。ミキサーの設定や混合時間は、このステップの終わりにおいて混合物が完全に均質になるように選択される。一般的には、混合時間は、均質性を確実にするように12時間を超え24時間未満である。なお、開始粉末が1種類のみ存在する場合、混合ステップは随意的である。
【0018】
第3のステップにおいて、対応する粉末の融点よりも下の温度で前記均質な混合物が成形される。すなわち、圧縮され高密度化される。圧縮及び高密度化は、国際特許出願WO2014/199090に記載されているように、衝撃圧縮技術を用いて行われる。したがって、混合粉末は、ダイに形成された空欠部内に配置され、混合物はポンチを用いて圧縮される。そして、圧縮された混合物は、ポンチに一又は複数回の衝撃を与えることによって高温にて高密度化される。国際特許出願WO2014/199090に記載されている方法とは異なり、圧縮された冷却ステップを省略することができる。
【0019】
当該方法のパラメーターは、様々な粉末の間の相互作用を抑えつつ、比重が95%以上であり、好ましくは、98%以上である、固結された材料体を得るように選択される。目的は、現状の様々な粉末の微細構造を著しく変えずに、粒子の間の微細溶接を形成して材料を固結させることである。詳細には、固結パラメーターは、焼結度合いを、古典的な焼結にて観察されるような体積結合形成ではなく、表面結合形成に制限するように選択される。微細構造に関連して、この粒子の間の結合によって、粒子の間のブリッジが形成される。粒子の間の相互作用を制限することによって、固結材料内の粉末分布が、粉末を混合した後に観察される粉末分布に近いものに維持される。このように、粉末の混合物の衝撃圧縮及び高密度化によって、異なる構成物質の相の間に高いエネルギーの界面がある微細構造を維持しつつ、微粒子粉体が互いに溶接される。すなわち、当該方法によって、異なる粉末の構成要素どうしが混合せず、基礎的な粒子の形態が圧縮と高密度化の後にて保持されるという特徴の材料が得られる。同様に、開始粉末が1種類のみである場合、得られる材料の粒子形態は、初期粉末の粒子形態のイメージであり、このことは、粉末形態の初期の選択に基づく機械的性質を確実にするために有利である。
【0020】
この特定の微細構造を得るために、粉末混合物は、熱い高密度化中に最も低い融点を備えた粉末の融点よりも下の温度にされる。この混合物は、3〜30分、好ましくは、5〜20分の時間、この温度にされる。この混合物は、プレス内への導入の前に、又はプレス内に入ったときに、前記温度にされる。上記の時間は、加熱して所与の温度に達してその温度を維持する時間を含む。高密度化の間に、当該混合物には、500〜2000Jのエネルギーレベルの衝撃を1〜50回与えられる。このエネルギーレベルは、好ましくは、圧縮のときに必要なエネルギーレベルよりも10〜30%大きい。このように得られる製品において、アルキメデスの重量測定原理を用いる伝統的な手法で測定すると、比重が95%以上であり、好ましくは、98%以上である。この高密度化ステップの後に、冶金技術的に切断すると、この材料を成形する方法に起因する非常に固有な微細構造が見える。当該材料には、初期粉末の数に対応する複数の相があり、これは、開始混合物内の粉末の相分布と実質的に同じ相分布を有する。この微細構造の別の非常に特有な特徴は、固結された相の表面エネルギーが高いレベルに維持されることである。粉末粒子の元々の形態は、相の間の界面が、不規則的な形、すなわち、非球状とも記載できる形、であるように、ほとんど完全に保持される。このようにして、固結された相が、高い比表面積を維持する。
【0021】
図1及び2は、例として、表1に記載されているように、ニッケル、青銅及び黄銅の3種類の粉末の混合物から開始して得られた微細構造を示している。この混合物は、500℃に近い温度で圧縮され高密度化された。この微細構造には、3つの別個の相があり、これらはそれぞれほとんどニッケル、青銅及び黄銅によって形成されている。得られた混合物の均質性は、3つの種類の粉末を混合するステップの後に得られるものと同じである。このようにして得られる製品は、95%よりも大きい比重を有する。
図3及び4は、同じ混合物から開始したが高密度化温度を700℃近くにしたものについての3つの別個の相がある同じ微細構造の均質性を示している。しかし、ニッケル/青銅と青銅/黄銅の2つの対の間で相互拡散が観察され、ニッケルリッチな相が青銅リッチな相に囲まれている。この相互拡散によって、比重を98%以上の値に増加させることができる。
【0022】
比較のために、米国特許US5294269(
図5)及び米国特許出願US2004/0231459(
図6)における粉末冶金によって得られる材料と比べると、異なる相の間の界面において明瞭な差が観察された。これらの文献において、界面は滑らか、具体的には、実質的に球状、であり、これは、相の間にて、不規則的な界面を有する、すなわち、界面のエネルギーが高い、本発明に係る材料とは異なる。
【0023】
下記の詳細な例は、本発明に係る方法を示している。
【0024】
第1のステップにおいて、粉末は、以下の一連の性質を有する材料を形成するように選択される。
− バリがないチップ除去機械加工プロセスによって半製品を容易に成形することができること。
− 機械加工の後に材料の変形を防ぐために寸法安定性があること。
− 特に、レーザー溶接によって、溶接可能であること。
【0025】
これらの基準を満たすために、当該方法のステップ1)において、下の表1及び2に含まれる3つの金属粉末が選択される。表1に、各粉末の機能を詳細に説明した。表2に、様々な粉末の組成と割合を詳細に説明した。
【0028】
第2のステップにおいて、粉末は、Turbula T10Bタイプのシェーカミキサーにて混合された。混合速度は、平均で、24時間約200rpmである。
【0029】
第3のステップにおいて、成形は、Hydropulsor社によって作られた高速度の高エネルギー型のプレスを用いて行われた。成形は、二相にて行われた。
【0030】
冷間圧縮
粉末は、所与の充填高さまで充填する容積測定の手法によって空欠部に投入された。例において、この充填高さは6mmであり、これによって、約2mmの圧縮された厚みを達成する。このパラメーター、すなわち、充填高さ、は、圧縮された固体の所望の最終厚みに応じて、2mm〜50mmの範囲で変えることができる。投入される粉末の量は、ダイに囲まれた上側ポンチと下側ポンチの間で圧縮されて、所与の直径のディスクを形成する。この圧縮は、この例において、25回の衝撃によって行われる。このステップの目的は、後の高温高密度化のために十分に密度が高い固体を得ることである。また、圧縮は、高温高密度化の間に操作されることができるように、圧縮された固体が十分に堅固であることを確実にするようにもはたらく。このステップで得られる比重は、90%よりも大きい。
【0031】
高温高密度化
圧縮されたディスクは、700℃に近い温度に、この温度に予加熱された炉内にて、される。圧縮されたディスクは、少なくとも5分の間、好ましくは、15分の間、炉内に配置される。加熱されたディスクは、輸送され、直径がディスクの直径よりもわずかに大きい空欠部内に配置される。炉からプレスに、そして、ダイ内の位置に予加熱されたディスクを輸送するためにかかる時間は、2〜5秒である。そして、予加熱されたディスクは、25回の衝撃を与えられて、上側ポンチと下側ポンチの間で高密度化される。加熱手段がないと、衝撃による高密度化の際に温度の低下が観察される。高密度化されたディスクの例において、最終厚みは、約1.8mmである。このディスクの比重は、98%よりも大きい。その微細構造は、
図3にて得られたものと同様である。
【0032】
上記の圧縮と高温高密度化の結果、結果として得られる固体は、異なる機能を有する複数の相がある多相材料である。また、結果として得られる固体は、その体積の全体にわたって均質な微細構造を有する。したがって、固体を通しての内部応力の勾配はない。このことによって、機械加工された部品に幾何学的な安定性を与える。
【0033】
結果として得られる固体の各相、そして、その前の各粉末は、特定の機能を実現するように選択される。相のうちの1つは、例えば、レーザーによって、溶接性を改善するように選ぶことができる。この機能は、この例において、主としてニッケルによって構成している相によって実現される。実際に焼結せずに高温高密度化を促進するように別の相を選ぶことができる。例において、固相のうちの1つは、実質的に青銅によって作られ、これは、3つの構成物質のうち最も低い溶融温度範囲を有する。第3の相は、再び例として、最も多い相であり、固結された黄銅粉末によって構成している。この相は、他の二相と混じり合って、良好なチップ除去の機械加工性を確実にする。
【0034】
本発明に係る方法には、開始粉末が1種類のみである場合にも利点がある。このように、材料内の粒子の形態が開始粉末の粒子形態のイメージであることが観察される。粒度が材料の機械的性質において重要な部分を占めるために、開始粉末の形態の選択に基づいて最終的な性質を予測することができることは特に有利である。
【0035】
本発明に係る方法の結果、比重が95%以上、又はさらに98%以上であると形態が劇的に変わるような既知の焼結方法と異なり、比重が高い製品を得つつ、開始粉末の形態が維持される。
【0036】
本発明の方法は、下にある表3及び4に記載した3つの金属性粉末によって、第2の例に変更すべきところは変更して、適用することができる。表3に、各粉末の機能を詳細に記載した。表4に、様々な粉末の組成と割合を詳細に記載した。
【0039】
なお、この例において、非常に小さな粒度の少量の亜鉛には、高密度化ステップの前に、凝集固結効果を改善させる機能がある。しかし、変種の1つにおいては、これを省略することができる。このとき、2つの種類の黄銅粉末の割合は、実質的に等しい。