(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の飛散防止材としては、スポンジ、フィルター、繊維状素材(東洋クッション社製の化繊ロック(商標))が開示されている(特許文献1の段落0085)が、これでは十分な飛散防止効果を奏しない。これは、いずれも上記飛散防止材の表面に当たったしずくがそのまま反射するからである。かかる反射が生ずると、隣接する処理室へ液が混在するおそれがある。
【0005】
かかる問題を解決するために、処理室間の搬入口の大きさを、搬入される基板とほぼ同じにすることも考えられるが、その場合、少し基板が揺れるだけで搬入口に当たって、搬入が停止してしまう。
【0006】
本発明は、上記問題を解決し、隣接する処理室へ液が混在することなく、かつ、確実に搬入できる掛け流し式の表面処理装置を提供することを目的とする。
【0007】
さらに、空気の流れを受けやすい薄い基板であっても、基板の揺れを防止できる掛け流し式の表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1)本発明にかかる表面処理装置は、シート状の被処理物が鉛直方向に保持された状態で搬入される第1の処理室、前記第1の処理室に設けられ、前記搬入された被処理物の上部から前記鉛直方向に保持された被処理物の表面領域に、第1の処理液を掛け流す第1の処理液掛け流し機構、前記第1の処理室に隣接し、前記被処理物が鉛直方向に保持された状態で搬入される第2の処理室、前記第2の処理室に設けられ、前記搬入された被処理物の上部から前記鉛直方向に保持された被処理物の表面領域に、第2の処理液を掛け流す第2の処理液掛け流し機構、前記第1の処理室と前記第2の処理室との間に設けられた区分け壁であって、前記被処理物が鉛直方向に保持された状態で搬入可能とする搬入可能開口部を有する区分け壁、を備え、前記第1の処理室の第1の処理液掛け流し機構と、前記第2の処理室の第2の処理液掛け流し機構との間に、前記被処理物が搬入される方向に直交する面上を重力方向に沿って薄い層状の液体膜を形成させる膜形成機構を設けている。
【0009】
したがって、隣接する処理室へ液が混在することなく、かつ、小型化が可能な掛け流し式の表面処理装置を提供することができる。
【0010】
2)本発明にかかる表面処理装置においては、前記膜形成機構は、前記搬入可能開口部近傍の前記第1の処理室または前記第2の処理室内に設けられている。したがって、隣接する処理室へ液が混在することなく、かつ、小型化が可能な掛け流し式の表面処理装置を提供することができる。
【0011】
3)本発明にかかる表面処理装置においては、前記シート状の被処理物の2つの平面に沿って、鉛直方向に空気が流れるように制御する空気流量制御機構を有する。前記膜形成機構は、前記鉛直方向への空気の流れと衝突する前記搬入可能開口部から流入する空気を減らす。
【0012】
4)本発明にかかる表面処理装置においては、前記液体膜は、
当該液体膜を形成する膜形成機構が設けられている処理室において前記シート状の被処理物に掛け流すのと同じ液体で構成されている。したがって、同じ処理室内では同じ回収機構を用いて回収が可能となる。
【0013】
5)本発明にかかる表面処理装置においては、前記液体膜は、前記搬入可能開口部よりも狭い膜開口部を有する。したがって、前記鉛直方向への空気の流れと衝突する前記搬入可能開口部から流入する空気を減らすことができる。
【0014】
6)本発明にかかる表面処理装置においては、前記膜開口部は、前記シート状の被処理物を保持する保持部の幅よりも広い。したがって、前記シート状の被処理物を保持する保持部を避けて前記膜形成機構を配置することができる。
【0015】
7)本発明にかかる表面処理装置においては、前記シート状の被処理物の厚みは40μm以下である。このような空気の流れの影響を受けやすい基板でも、安定して搬送することができる。
【0016】
8)本発明にかかる表面処理装置においては、前記膜開口部は、一対の
液体噴射部が離れて配置することで形成されている。したがって、つり下げ方式で前記シート状の被処理物を搬送させる場合に、搬送のための間を空けることができる。
【0017】
9)本発明にかかる表面処理装置においては、前記一対の
液体噴射部が、前記膜開口部に向くようにななめ方向に前記液を排出する。したがって、前記液体膜が表面張力により下方に行くほど、前記液体膜が離れていくことを防止できる。
【0018】
10)本発明にかかる表面処理装置においては、前記搬入可能開口部よりも広く間隔の空いた案内板であって、前記液体膜を案内する案内板を有する。これにより、前記液体膜の形成が容易となる。
【0019】
11)本発明にかかる表面処理装置においては、前記空気流量制御機構は空気吸入口を有しており、前記の空気吸入口と前記被処理物との距離を調整する高さ調整機構を有する。したがって、前記被処理物の大きさに応じて、前記吸入口と前記被処理物との距離を調整することができる。
【0020】
12)本発明にかかる表面処理装置においては、
入口側の搬入可能開口部および出口側の搬入可能開口部を有し、シート状の被処理物が鉛直方向に保持された状態で搬入される処理室が、
前記搬入可能開口部を介して複数、連続して配置されており、前記各処理室では
、前記入口側の搬入可能開口部から搬入された被処理物に対して、前記鉛直方向に保持された被処理物の表面領域の上部から所定の処理液が掛け流され、これにより、前記被処理物の表面に所定の表面処理がなされ
、前記出口側の搬入可能開口部から搬出される表面処理装置において、前記処理室のうち、前記入口側の
搬入可能開口部の内側、および/または前記出口側の搬入可能開口部の内側に、前記被処理物が搬入される方向に直交する面上を重力方向に沿って薄い層状の液体膜を形成させる膜形成機構を設けている。したがって、前記各処理室への空気流入を減らすことができる。これにより、前記シート状の被処理物の姿勢が安定化する。
【0021】
13)本発明にかかる表面処理装置においては、前記各処理室は、前記シート状の被処理物の2つの平面に沿って、鉛直方向に空気が流れるように制御する空気流量制御機構を有する。したがって、前記シート状の被処理物の姿勢が安定化させやすい。
【0022】
本明細書において「上部から下部に掛け流し」とは、結果的に上部から下部に掛け流し状態となればよく、前記被処理物に直接または、前記被処理物を保持する保持部を介して間接に掛け流すことを含む。
【0023】
この発明の特徴、他の目的、用途、効果等は、実施形態および図面を参酌することにより明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(1.第1実施形態)
1.1 表面処理装置300の構成
まず、
図1および
図2を用いて、本発明の表面処理装置300の構成について説明する。なお、
図1は、表面処理装置300を上方から見た配置図である。
図2は、
図1に示す表面処理装置300をα方向から見た側面図である。なお、
図1では、
図2に示す搬送用ハンガー16および搬送機構18は省略している。
【0026】
図1に示すように、表面処理装置300には、被処理物である板状ワーク10(
図2)の搬送方向Xに沿って、ロード部302、第1水洗槽304、デスミア槽306、第2水洗槽308、前処理槽310、第3水洗槽312、無電解銅めっき槽200、水洗槽314、アンロード部316が順に設けられており、その順で、無電解銅めっきに必要な各工程が行われる。各槽には、
図2に示す搬送用ハンガー16の通路を形成するスリット8(
図1)が鉛直方向に延伸して設けられている。なお、各工程の詳細については、後述する。
【0027】
表面処理装置300は、さらに、クランプ15(
図2)で把持し、鉛直方向に保持した板状ワーク10を水平方向に搬送する搬送用ハンガー16と、搬送用ハンガー16を各槽内に搬送する搬送機構18とを備えている。なお、
図2は、板状ワーク10がロード部302で搬送用ハンガー16に取り付けられた状態を示している。
【0028】
ロード部302で板状ワーク10が取り付けられた後、搬送機構18は、水平方向Xへの移動を開始し、それによって、板状ワーク10が各槽内(無電解銅めっき槽200等)を通過する。その後、搬送機構18は、最終的に、アンロード部316において停止し、めっき処理が施された板状ワーク10が搬送用ハンガー16から取り外されることになる。
【0029】
図3は、表面処理装置300の一部を構成する無電解銅めっき槽200(
図1)のβ−β断面図である。
図4は、
図3に示す無電解銅めっき槽200を上方から見た状態を示す図である。なお、
図4では、搬送用ハンガー16および搬送機構18を省略している。
【0030】
図3に示す無電解銅めっき槽200は、フレーム56の上に載置された槽体2と、槽体2内の底部に貯まった処理液Q(無電解銅めっき液)を液噴出部4に供給して循環させるための循環ポンプ50とを備えている。
【0031】
板状ワーク10に対する処理を行うため、無電解銅めっき槽200などの各槽の内部には、噴出口6を有する液噴出部4が設けられている。液噴出部4の噴出口6からは、
図3に示すように、板状ワーク10に向けて、処理液Qが水平面に対して斜め上方に噴出される。これにより、槽体2の内部において、搬送用ハンガー16により把持された板状ワーク10の上部に処理液Q(無電解銅めっき液)が当てられる。その結果、板状ワーク10を伝って処理液Qが移動する間に、板状ワーク10の表面に処理液Qを付着させることができる。なお、液噴出部4の詳細な構造については後述する。
【0032】
このように、貯留した処理液Qの中に板状ワーク10を浸漬させずに、循環させた処理液Qを板状ワーク10に伝わせる方式を採用したことで、浸漬式のものと比較して表面処理装置300全体で使用される処理液Qの総量を少なくすることができる。
【0033】
飛散防止部材60は、網材で構成された支持部62によって保持されている。飛散防止部材60の構成については後述する。
【0034】
搬送機構18は、
図3に示すガイドレール12、14、支持部材20および搬送ローラー22、24で構成される。支持部材20の底部には、搬送機構18がガイドレール12、14の上を移動するための搬送ローラー22、24が取り付けられている。搬送ローラー22、24はモーター(図示せず)によって駆動される。なお、ガイドレール12、14は、それぞれフレーム52、54の上に固定されている。このような水平方向に搬送するようにしたため、板状ワークの昇降動作が不要となり、装置の高さを低くできるため省スペース化が図られる。
【0035】
図3に示すように、搬送用ハンガー16は、2本のガイドレール12、14に渡って懸架するように取り付けられた支持部材20の下方に固定されている。これにより、板状ワーク10の振動を低減し、搬送機構18を支える構造体(ガイドレール12、14、フレーム52、54等)の歪みを低減することができる。
【0036】
また、
図4に示すガイドレール12、14上の所定位置には複数の磁石21が埋め込まれている。搬送機構18は、ガイドレール12、14上の磁石21を検知するための磁気センサー19を備える。磁気センサー19は、支持部材20の下方(ガイドレール14側の1カ所)に設けられている。
【0037】
これにより、無電解銅めっき槽200内に移動した搬送用ハンガー16を、所定位置(例えば、
図4に示す無電解銅めっき槽200の中央位置)に停止させることができる。
【0038】
各槽に設けられる循環ポンプ50は、
図3に示すように、槽体2の底部に接続され、槽体2と液噴出部4とは循環ポンプ50を介して連通されている(点線矢印で示す)。これにより、槽体2の底部に溜まった処理液Qが、循環ポンプ50によって、再び液噴出部4に供給される。
【0039】
槽体2は、側壁2a、2bと、底部2cとによって構成されており、これらをPVC(ポリ塩化ビニル)などの素材を加工、接着などして組み立てることにより、一体の部材として成形することができる。槽体2は、板状ワーク10に当てられた処理液を下方の底部2cで受ける。なお、槽体2は、
図1に示す無電解銅めっき槽200以外の各槽にも同じ形状のものが用いられる。すなわち、各槽の構造は同じであり、各槽で用いられる処理液(めっき液、デスミア液、洗浄水など)の種類だけが異なっている。
【0040】
また、
図3に示す槽体2の側壁2bには、鉛直方向に延伸される切り欠きであるスリット8が成形されている。これにより、搬送用ハンガー16が搬送された時に、板状ワーク10がスリット8を通過することができる。なお、スリット8の下端8aを低くし過ぎると、槽体2に溜まった処理液Qが溢れ出し、外部に流出するおそれがある。
【0041】
このため、槽体2に溜まった処理液Qの液面H(
図3)が、常にスリット8の下端8aよりも下に位置するように、処理液Qの供給量を調整する必要がある。この実施形態では、槽体2に溜まった処理液Qの液面H(
図3)がスリット8の下端8aよりも下に位置するように、使用する処理液Qの総量を決定し、かつ、循環ポンプ50を介して槽体2と液噴出部4とを連通させている。
【0042】
[液噴出部4の構造]
図5に、液噴出部4の構造を示す。
図5は、
図3に示す液噴出部4の拡大図である。
【0043】
図5に示すように、液噴出部4は、側壁2aに角パイプ材を固定して設けたベースF1上に、2つのU字型の留め具F2によって締め付けて取り付けられている。なお、この実施形態では、液噴出部4を、手動で回転させることができる適度の強さで締め付けている。
【0044】
液噴出部4は、
図4に示すように、内部に空間を有する管部材である丸パイプで構成されており、長手方向の両端は密閉されている。また、所定間隔を空けて長手方向に配置される複数の孔によって、噴出口6が構成される。また、液噴出部4には、槽体の側壁2aを貫通して連通する可撓性パイプT1および配管T2が連結されている。配管T2はポンプ50の吐出口につながっている。これにより、ポンプ50から受けた処理液Qを、噴出口6から噴出することができる。
【0045】
図6Aに示すように、噴出口6の噴出角度θは、水平面Lに対して斜め上方向(例えば、5°〜85°の範囲)に向けて設置されている。このため、噴出口6から噴出された処理液Qの液流は、放物線上を移動する。頂点Zの位置は、処理液Qの噴出流速Vおよび噴出角度θにより決まる。なお、処理液Qの噴出流速Vは、ポンプ50からの圧力と、噴出口6の大きさに依存する。
【0046】
この実施形態では、液噴出部4(半径r)を板状ワーク10から所定距離Dだけ離れた位置に配置した条件下において、噴出流速Vで噴出された処理液Qが、放物線の頂点Zで板状ワーク10に当たるように噴出角度θを設計している。
図6Bに示す放物線の頂点Zの位置では、処理液Qの鉛直方向の速度成分Vyが無くなり、噴出されたときの水平方向の速度成分Vxだけが残るため、泡立ちの発生を低減することができるためである。
【0047】
さらに、液流が板状ワーク10の面に対して垂直に当たるので、板状ワーク10に当たった処理液Qが面上を同心円状に均一に拡がる。なお、頂点付近、すなわち、頂点Zよりも所定距離だけ前方または後方で当てるようにしてもよい。
【0048】
処理液Qを水平面Lに対して斜め上方向に噴出せず、水平方向または水平方向より下方向に噴出した場合、処理液Qの鉛直方向の速度成分Vyは増加し続け、合成速度Vもその分増加する。その結果、板状ワーク10に当たった処理液Qがy方向に飛び散って泡立ちが発生し易い。
【0049】
以上のように、水平面Lに対して斜め上方向に向けて処理液を噴出することで、ワークに衝突する際に生じる泡立ちの発生を抑えて、処理液Q中の溶存酸素量が増加するのを防止することが可能になる。
【0050】
さらに、
図7に示すように、噴出口6を覆うように、噴出される処理液Qの流れの向きを変えるための変流部材40を液噴出部4の外周に取り付けるようにしてもよい。なお、変流部材40は、噴出口6から間隔を空けて設けられる。
【0051】
図7は、変流部材40によって噴出された処理液Qの向きを変えた状態を示す拡大図、
図8Aは、噴出された処理液Q(変流部材40に当たる前)のγ1断面図、
図8Bは、変流部材40に当たった後の処理液Qのγ2断面図である。
【0052】
変流部材40を用いると、各噴出口6から出た液流(
図8Aに示す断面積)が変流板に当たって断面積が大きくなる(
図8B)。このため、板状ワーク10に当たったときに、隣接する各噴出口6からの液流が連結し(
図8B)、板状ワーク10の表面に当たる処理液Qの均一化を図ることができる。
【0053】
1.2 表面処理装置300における各工程の内容
図9などを用いて、表面処理装置300において行われる各工程の内容について説明する。なお、この実施形態では、表面処理装置300の各槽内で使用される処理液Qは、各槽の循環ポンプ50によって常時循環されていることとする。
【0054】
図9は、搬送機構18の動作を制御する制御部の接続関係を示す図である。
図9に示すように、磁気センサー19(
図4)は、PLC30に接続されており、ガイドレール14の上に配置された磁石の上部に達したことを検知する。磁気センサー19が検知した信号は、PLC30に与えられる。信号を受けたPLC30は、モーター28をオン/オフして、搬送ローラー22、24の動作(前進、後退、停止など)を制御する。
【0055】
まず、
図1に示すロード部302において、作業者または取付装置(図示せず)によって、めっき処理の対象である板状ワーク10が搬送用ハンガー16に取り付けられる(
図2に示す状態)。
【0056】
その後、作業者が搬送スイッチ(図示せず)を押下すると、搬送用ハンガー16は、ガイドレール12、14に沿って、第1水洗槽304内に移動する。すなわち、PLC30が、モーター28をオンして搬送ローラー22、24を前進駆動させる。
【0057】
つぎに、第1水洗槽304では、板状ワーク10に表裏両面から水を当てることにより、水洗い処理が行われる。搬送用ハンガー16は、第1水洗槽304で所定時間だけ停止し、その後、デスミア槽306内に移動する。
【0058】
例えば、PLC30は、磁気センサー19から第1水洗槽304の中央に到達したことを示す信号を受けてから、モーター28を1分間だけ停止させる。その後、モーター28をオンして搬送ローラー22、24を前進駆動させる。なお、第2水洗槽308、第3水洗槽312、第4水洗槽314でも同様の制御が行われる。
【0059】
デスミア槽306で、搬送用ハンガー16は、所定時間(例えば、5分間)だけ停止し、板状ワーク10に表裏両面からデスミア処理液(膨潤液、レジンエッチング液、中和液等)が当てられる。ここで、デスミア処理とは、板状ワーク10に孔を開ける等の際に残った加工時のスミア(樹脂)を除去する処理である。
【0060】
例えば、PLC30は、磁気センサー19からデスミア槽306の中央に到達したことを示す信号を受けてから、モーター28を5分間だけ停止させる。その後、モーター28をオンして搬送ローラー22、24を前進駆動させる。以下の前処理槽310でも同様の制御が行われる。
【0061】
つぎに、第2水洗槽308では、板状ワーク10に表裏両面から水を当てることにより、水洗い処理が行われる。搬送用ハンガー16は、第2水洗槽308で所定時間(例えば、1分間)だけ停止し、その後、前処理槽310内に移動する。
【0062】
前処理槽310で、搬送用ハンガー16は所定時間(例えば、5分間)だけ停止し、板状ワーク10に表裏両面から前処理液が当てられる。
【0063】
つぎに、第3水洗槽312では、板状ワーク10に表裏両面から水を当てることにより、水洗い処理が行われる。搬送用ハンガー16は、第3水洗槽312で所定時間(例えば、1分間)だけ停止する。
【0064】
その後、無電解銅めっき槽200(
図3、
図4)内に移動するまでに、以下に示す往復移動を所定回数だけ行う。板状ワーク10にスルホール等の孔が開けられている場合、そこに空気(気泡)がたまって処理液Qが板状ワーク10に付着しないおそれがあるため、無電解銅めっき処理を行う前に、空気(気泡)を確実に除去する必要があるからである。
【0065】
図10に、第3水洗槽312と無電解銅めっき槽200(
図1)の間におけるガイドレール14の断面図を示す。
図10および
図1に示すように、ガイドレール14には、衝撃発生部である凸部26が1つ設けられている。搬送ローラー24が、この凸部26を乗り越えた衝撃により、処理液Qの水切りをすることができる。
【0066】
例えば、PLC30は、磁気センサー19から
図10に示す磁石21が中央に到達したこと(すなわち、搬送ローラー24が凸部26を乗り越えたこと)を示す信号を受けてから、搬送ローラー22、24を所定距離だけ後退駆動させるようにモーター28を制御する(
図10に示すY1方向)。その後、再び磁石21を検知するまで搬送ローラー22、24を前進駆動させる(
図10に示すY2方向)。上記前後移動を所定回数(例えば、3回往復)だけ繰り返した後、無電解銅めっき槽200内の中央位置(
図4)に停止する。 無電解銅めっき槽200で、搬送用ハンガー16は所定時間だけ停止し、板状ワーク10に表裏両面から無電解銅めっき液が当てられる。
【0067】
例えば、PLC30は、磁気センサー19から無電解銅めっき槽200の中央に到達したことを示す信号を受けてから、モーター28を5分間だけ停止させる。その後、モーター28をオンして搬送ローラー22、24を前進駆動させる。
【0068】
つぎに、第4水洗槽314では、板状ワーク10に表裏両面から水を当てることにより、水洗い処理が行われる。搬送用ハンガー16は、第4水洗槽314で所定時間(例えば、1分間)だけ停止し、その後、アンロード部316に移動する。
【0069】
最後に、アンロード部316に移動した搬送用ハンガー16を停止させる。例えば、PLC30は、磁気センサー19からアンロード部316に到達したことを示す信号を受けてから、モーター28を停止させる。その後、作業者などにより、板状ワーク10が搬送用ハンガーから取り外される。これにより、無電解めっき処理の一連の工程が終了する。
【0070】
なお、上記実施形態では、複数の槽(
図1に示す第1水洗槽304、デスミア槽306、前処理槽310、無電解銅めっき槽200など)を表面処理装置300が備える構成としたが、表面処理装置300がこれらのうち少なくとも1つの槽を備える構成としてもよい。
【0071】
なお、上記実施形態では、表面処理装置300によって、板状ワーク10に無電解銅めっきを行うこととしたが、板状ワーク10にその他の無電解めっき(例えば、無電解ニッケルめっき、無電解スズめっき、無電解金めっきなど)を行うようにしてもよい。
【0072】
また、搬送機構18の構成については限定されない。
【0073】
図11を用いて飛散防止部材60について説明する。飛散防止部材60は、六角形の穴が空いた筒状部材が複数連結されて構成されている。なお、飛散防止部材60の形状についてはこれに限定されず、6角形以外の多角形や円形の筒状部材が、飛散防止部材60のように複数配置されたハニカム類似構造、すなわち、開口部が鉛直方向に向くように縦長の個別筒状部材が複数配置された形状であってもよい。後述するように、滴がスムーズに通過すればよいからである。
【0074】
かかるハニカム部材により、処理液Qの表面で跳ねた滴の反射を低減することができる。これは以下の理由による。飛散防止部材60の貫通穴(図示せず)を通過したしずくは、処理液Qの表面で一部が反射される。その際、反射されたしずくの一部はななめ方向に反射するので、飛散防止部材60の貫通穴の内壁に衝突する。このようなメカニズムにより貫通穴を通過するしずくの量が減少するからである。
【0075】
従来のスポンジまたは繊維状素材等を採用した場合には、飛散防止部材を通過した後の飛散は防止できるが、飛散防止部材表面での飛散が多いという問題があった。上記飛散防止部材60は、かかる表面における飛散を低減させることができる。
【0076】
なお、飛散防止部材60の表面においては多少の飛散が発生する。かかる飛散を防止するために、
図12のように、各処理室の入口側および出口側に膜形成機構110を採用してもよい。なお、
図12にでは、板状ワーク10のつり下げ機構は省略している。
【0077】
膜形成機構110について説明する。膜形成機構110は、
図12Bに示すように、膜形成機構110aと、膜形成機構110bで構成されている。
【0078】
膜形成機構110aについて説明する。
図12Aでは長方形にて現しているが、実際には、
図13(斜視図)に示すように、膜形成機構110aは長手方向に渡るノズル111が凸部として形成されている。かかるノズル111から流量5〜10L/minで、0.01 MPa程度の切れ目のないラミナー状の液体(水または処理液)を噴射する。これにより、
図13に示す液体膜113aが形成される。膜形成機構110bについても同様である。
【0079】
図12Bに示すように、膜形成機構110aと膜形成機構110bとの間は、距離d11だけ離間して配置されている。これは、表面処理装置300では、板状ワーク10はつり下げられた状態で処理室内に搬送されるため、当該機構が通過できる幅が必要なためである。
【0080】
図12Aにおいて、無電解銅めっき槽200ではメッキ液が、水洗槽314では、水が噴射される。本実施形態においては、膜形成機構110aおよび膜形成機構110bとして、株式会社共立合金製作所製のウォーターナイフ WK型ノズルを採用したが、これに限定されない。
【0081】
膜形成機構110aおよび膜形成機構110bから噴射された液体は、飛散防止部材60の表面で反射した滴が跳ねて隣の処理室に入り込むのを防止する。
【0082】
本実施形態においては、各処理室の入口側および出口側にそれぞれ膜形成機構110を採用したが、いずれか一方でもよい。
【0083】
本実施形態においては、距離d11は、スリット8の幅d12よりも小さくできる。これは、仮に板状ワーク10が揺れて、距離d11よりも大きく揺れた場合でも、膜形成機構110によって形成された膜は液体なので、板状ワーク10がぶつかっても、板状ワーク10に沿って流れるからである。これにより、板状ワーク10の揺れを収束させる効用もある。
【0084】
また、前記膜は、各処理室内における搬送方向への空気の流れを低減させる。なぜなら、スリットの幅d12よりも開口部を狭くとれるので、その分、外部から処理室内への空気の流入を阻止できるからである。
【0085】
本実施形態においては、飛散防止部材60の表面における飛散を防止するために、膜形成機構110を採用したが、膜形成機構110は、別の飛散防止部材を設ける場合にはもちろん、飛散防止機構が存在しない表面処理装置にも膜形成機構110を適用することもできる。たとえば、飛散防止機構が存在せず、板状ワーク10に下部に溜めている処理液Qの表面で滴が跳ねるタイプ、また、滴の落下先が床面となっている表面処理装置などである。
【0086】
2.(第2実施形態について)
図14を用いて、処理室内にて、空気を上から下に流す機構を備えた表面処理装置410について説明する。
【0087】
本実施形態においては、飛散防止部材60の下部に、
図14に示すような形状のトレイ80を設け、空気の流れを制御している。
図15は、
図14の矢印γ方向からみた図である。なお、
図15ではわかりやすくするために、フレーム54がないものとして図示している。
【0088】
トレイ80は、
図15に示すように、板状ワーク10の下部で、かつスリット8の近傍に、2カ所設けられている。これは、スリット8の近傍にて隣接する処理室への飛び跳ねを減少するためである。膜形成機構110a,bについては、第1実施形態と同じであるので説明は省略する。
【0089】
トレイ80の形状について、
図16を用いて説明する。
図16では説明を容易にするために、飛散防止部材60は破線で相対位置を示している。枠82の端部には平面82aが連続して形成されている。平面82aの内端部からx方向に斜面84が形成されている。斜面84の端部からはy方向に斜面85が形成されている。また、パイプ81の上面には、溝81 a が形成されるような一対の蓋81bがはめこまれている。
【0090】
本実施形態においては、2つの斜面84における端面間の距離d1は約2mmとした。かかる幅の決定は、パイプ81が単位時間あたりに吸い込むことのできる許容量が、トレイ80が単位時間あたりに収集する液体の量よりも多くなるようにすればよい。ただし、あまりに距離d1を大きくすると吸引空気の流量(Q=AV)一定の状態では、流速が低下するので、5mm以下が望ましい。
【0091】
図17に、
図14矢印δ1方向からの矢視図を示す。このように上からみると、板状ワーク10の両側に斜面84が位置し、2つの斜面84の端面間で形成される溝の方向が、板状ワーク10と平行となるように、トレイ80が配置されている。
【0092】
斜面85の端部には縦パイプ状部材81が連結されている。縦パイプ状部材81の途中には
図14に示すように、横パイプ状部材88が連通するように接続されている。
【0093】
本実施形態においては、パイプ93の先に設けたポンプ92で、部屋94が負圧状態となるように、吸引している。
【0094】
処理室の上部には空気取り入れ口95が設けられている。したがって、上記吸引により、空気取り入れ口95から取り入れられた空気は、飛散防止部材60の貫通穴61から、斜面84,85を通って、縦パイプ状部材81、横パイプ状部材88へ流れる。また、収集した液も合わせて、横パイプ状部材88から部屋94に排出される。
【0095】
また、
図17に示すように、板状ワーク10の両側に斜面84が位置し、2つの斜面84の端面間で形成される溝の方向が、板状ワーク10と平行となるように、トレイ80が配置されている。したがって、前記ポンプ92によって吸引されると、
図14の矢印δ2方向の空気の流れが生ずる。このように、板状ワーク10の下部にて矢印δ2方向の空気の流れが生ずることにより、薄い板状ワーク10であっても、姿勢が安定するという効果も奏する。
【0096】
本実施形態においては、飛散防止部材60の下部にトレイ80を設けたが、飛散防止部材60以外の部材であってもよい。また、飛散防止部材60なしで、トレイ80を設けてもよい。
【0097】
トレイ80については、板状ワーク10の側面を鉛直方向に空気が流れやすい形状であれば、異なる形状であってもよい。
【0098】
本実施形態においては、一対の蓋81bで溝81 a を形成したが、溝81aの形状のパイプを採用するなど、他のやり方であってもよい。
【0099】
図18Aに空気を吸い込む案内部120を設けた実施形態を示す。
図18AのA-A断面図、B-B断面図を、それぞれ
図18B,Cに示す、案内部120は、蓋121a、bで構成されている。蓋121aの斜視図を
図18Dに示す。蓋121aは側面122、斜面部123および半円部125を有している。側面122には複数の貫通穴122aが設けられている。蓋121bは蓋121aと対称形状である。
【0100】
蓋121a、121bをトレイ80に位置させると、斜面84、85と斜面部123が合わされて保持され、半円部125により縦パイプ状部材81の一部がふさがれる。また、ハニカム部材60を2つに分けて、その間から、側面122ではされまれた距離d1の隙間が縦パイプ部材81上に形成される。これにより、吸込口を基板に近づけることができるので、吸引力を高くすることができる。また、吸入口を狭くすることができるので、板状ワーク10下部の空気の流速を高くすることができる。これにより滴の跳ね返りを低下させることができる。
【0101】
なお、蓋121a、121bにより、トレイ80内に滴がたまるという問題は、貫通穴122aを設けることで解消できる。貫通穴122aの位置および個数については、トレイ80にたまる液体の量に応じて設計すればよい。
【0102】
図18では、側面122を有する蓋121a、bを採用したが、別途保持する機構を設ければ、斜面部123は必須ではない。さらに、側面122を無くしてよい。この場合でも、半円部125だけで構成された蓋で吸入口を狭くすることができるので、板状ワーク10下部の空気の流速を高くすることができる。
【0103】
なお、板状ワーク10の形状によっては、トレイ80との距離が変動することも考えられる。この場合は、
図18Bに示すように、トレイ80を高さ方向にスライド自在に構成すればよい。かかる高さ調整は、トレイ80の下部に縦パイプ部材81の内径とほぼ同じ外径のパイプ部83を設けてもよいし、蛇腹構造のようにしてもよい。トレイ80の高さをスライド自在に保持する機構としては周知の機構を採用すればよい。
【0104】
本実施形態においては、ポンプ92による吸引によって、処理室内の制御風速が0.2〜0.5m/sとなるようにした。この程度とすることにより、板状ワーク10の姿勢を安定させつつ、飛散防止部材60の表面による跳ね返りを低減させることができる。
【0105】
なお、処理室内の制御風速は上記範囲に限定されない。
【0106】
なお、上記空気取り入れ口95およびポンプ92は各処理室に設ければよい。これにより、処理室内で
図15矢印R方向への流れ(開口部8方向への流れ)はほぼなくなり、空気の流れは、ほぼ鉛直方向となるので、薄い板状ワークであっても、姿勢が安定する。
【0107】
また、フレーム52の下端面が処理液Qよりも下側に位置している。したがって、部屋94への空気の連通は縦パイプ状部材81と横パイプ状部材88を介しておこなわれる。
【0108】
なお、40μmよりも薄い基板だと、処理室内にて上から下方向への空気の流れが存在しても、これに直交する方向の空気の流れがあると基板が揺れることがある。特に、液噴出部4から処理液が当たっていない位置では、かかる問題がある。しかし、本実施形態においては、処理室内の上記直交する方向の流れを減少させられるので、このような薄い基板であっても、安定して搬送することができる。
【0109】
かかる第2実施形態のように、各処理室内でほぼ鉛直方向の空気の流れとなるように制御する場合、膜形成機構110を採用することで、スリット8から流入する基板進行方向に平行な方向における空気の流れを減らすことができる。したがって、薄い板状ワークであっても、各処理室にて安定して搬送することができる。
【0110】
このような一種の液体膜カーテンを設けることで開口部面積は少なくなり、鉛直方法のプッシュプル排気の効果が高まることで、外気を吸い込みにくく、煽られにくい。さらに、処理室内のミストが外部へ漏れにくいという効果もある。
【0111】
3.(第3実施形態について)
上記実施形態では、各処理室内に膜形成機構110を設けた場合について説明したが、第3実施形態では、
図19に示すように、膜形成機構110を表面処理装置400のロード側およびアンロード側にそれぞれ前槽303、後槽315を設け、そこに膜形成機構110を採用している。膜形成機構110については、上記実施形態と同じであるので説明は省略する。なお、この場合は前槽303、後槽315とも、水膜を採用すればよい。
【0112】
前槽303における膜形成機構110の配置位置を
図20A、Bに示す。このように、ロード部302と第1水洗槽304の間の前槽303内に膜形成機構110を設けている。これにより、ロード部側からの外気吸い込みを防止している。
【0113】
後槽315における膜形成機構110の配置位置を
図20C、Dに示す。このように、アンロード部316と第4水洗槽314の間の後槽315内に膜形成機構110を設けている。これにより、アンロード部側からの外気吸い込みを防止している。
【0114】
このように、ロード部302の内側、およびアンロード部316の内側に、板状ワーク10が搬入される方向に直交する面上を重力方向に沿って薄い層状の液体膜を形成することにより、外気の吸い込みを防止することができる。
【0115】
4.(第4実施形態について)
上記各実施形態では、膜形成機構110をほぼ水平に設けたが、この場合、形成された液体膜113a、113bは、自由落下した液体の表面張力の影響によって、下方に進むにすれて中央方向に寄ってしまう(
図21A参照)。かかる問題を解決するために、
図21Bに示すように、中央に向かって膜形成機構110a、110bを、傾けて配置すればよい。これにより、形成された液体膜113a、113bの隙間が少なくなる。
【0116】
この場合、傾けた分だけ隙間が形成されるので、かかる隙間を埋めるための案内板121を設けるようにしてもよい(
図21C、D参照)。かかる案内板121は、隙間を埋めるだけでなく、案内板121の上を伝わるように液体が流れるので、表面張力が働き液体膜が形成されやすいという効果を奏する。
【0117】
5.(その他の実施形態について)
上記第1、第2実施形態においては、膜形成機構110を、各処理室内の入口と出口付近に2カ所配置したが、
図22に示すように各処理室の間に1つ設けるようにしてもよい。これにより、膜形成機構110の数を少なくできるとともに、全ての膜形成機構から水を噴出させればよくなる。また、形成された液体膜により、滴の混入が確実に防止できるので、その分だけ、各処理室の長さを短くすることができる。
【0118】
なお、処理室外に膜形成機構110を設けると水の回収が別途、必要となるが、これはたとえば、全ての膜形成機構から噴出させた水を循環させるようにすればよい。
【0119】
上記各実施形態においては、膜形成機構110をクランプ15とほぼ同じ高さに配置した。しかし、膜形成機構110はクランプ15よりも少し高いほうが好ましいが、これよりも高くても低くてもよい。液噴出部4との関係についても同様である。
【0120】
たとえば、上記各実施形態においては、膜形成機構110を把持したクランプ15が通過できる幅を空けて、一対の膜形成機構110a,bを配置したが、クランプ15の位置を避けて配置する(高く又は低く)ことで、これよりも狭くすることは可能である。
【0121】
上記においては、本発明を好ましい実施形態として説明したが、限定のために用いたのではなく、説明のために用いたものであって、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、添付のクレームの範囲において、変更することができるものである。