特許第6793771号(P6793771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6793771ばねリングを備える環状回転ベゼルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793771
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】ばねリングを備える環状回転ベゼルシステム
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/28 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   G04B19/28 B
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-44503(P2019-44503)
(22)【出願日】2019年3月12日
(65)【公開番号】特開2019-164129(P2019-164129A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2019年3月12日
(31)【優先権主張番号】18162851.2
(32)【優先日】2018年3月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・シルヴァン
【審査官】 細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−518967(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00216420(EP,A1)
【文献】 特開平06−186355(JP,A)
【文献】 特開2018−031774(JP,A)
【文献】 特表2015−520390(JP,A)
【文献】 特表2015−503738(JP,A)
【文献】 実開平03−063887(JP,U)
【文献】 特開平08−179053(JP,A)
【文献】 スイス国特許発明第00703400(CH,A5)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/28
G04B 37/00
G04B 45/00
G04G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ケース(2)のミドルケース(4)上に回転可能に取り付けることを意図した環状回転ベゼルシステム(6)であって、前記時計ケース(2)内で平面内に延びる計時器ムーブメントが収容され、回転ベゼル(14)と、環状保持リング(16)と、歯付きリング(18)と、半径に沿って弾性的に変形することができる平面内で延びるばねリング(20)とを含み、前記ばねリング(20)は前記歯付きリング(18)と弾性的に協働し、前記歯付きリング(18)及び前記ばねリング(20)は、前記回転ベゼル(14)内で前記環状保持リング(16)によって、前記ムーブメントの平面に垂直な軸線方向に保持され、前記歯付きリング(18)又は前記ばねリング(20)のいずれか一方は前記回転ベゼル(14)に角度的に連結するように配設され、他方は前記ミドルケース(4)に角度的に連結するように配設された、環状回転ベゼルシステム(6)において、
前記ばねリング(20)は、前記ばねリング(20)の平面内で前記ばねリング(20)の柔軟性を増加させるように構成された少なくとも1つの薄肉部(38)を有し、前記薄肉部(38)は前記歯付きリング(18)と弾性的に半径方向に噛み合う少なくとも1つの歯部(40)を有し、
前記回転ベゼル(14)は、前記回転ベゼル(14)の内側面にわたって延びる少なくとも1つの突出部(44)を含むこと、及び、前記ばねリング(20)は縁上に少なくとも1つの窪み(42)を有し、前記窪み(42)内に前記回転ベゼル(14)の前記突出部(44)が係合して、前記ばねリング(20)と前記回転ベゼル(14)との間の回転連結が可能になる、ことを特徴とする、環状回転ベゼルシステム(6)。
【請求項2】
前記薄肉部(38)は半径方向に薄肉になっていることを特徴とする、請求項に記載の環状回転ベゼルシステム(6)。
【請求項3】
前記歯部(40)は前記薄肉部(38)の中間部分に配設されることを特徴とする、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の環状回転ベゼルシステム(6)。
【請求項4】
前記歯付きリング(18)は内縁上に、前記ミドルケース(4)の外部円筒面(8)内に設けられた窪み(36)内に収容されるように意図された少なくとも1つの突出部(34)を有して、前記歯付きリング(18)の前記ミドルケース(4)への角度的な連結を可能にすることを特徴とする、請求項1から請求項のいずれかに記載の環状回転ベゼルシステム(6)。
【請求項5】
前記ばねリング(20)は、結晶性金属合金又は非晶質金属合金からなる単一の材料片から形成されることを特徴とする、請求項1から請求項のいずれかに記載の環状回転ベゼルシステム(6)。
【請求項6】
前記歯付きリング(18)は、金属合金であるphynox又は鋼鉄からなる単一の材料片から形成されることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれかに記載の環状回転ベゼルシステム(6)。
【請求項7】
前記歯付きリング(18)は、耐熱性のポリエーテルエーテルケトン若しくはポリアリールアミドである耐熱性の半結晶性の熱可塑性材料か、又はジルコニア若しくはアルミナから作製されたセラミック材料からなる、単一の材料片から形成される、ことを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれかに記載の環状回転ベゼルシステム(6)。
【請求項8】
前記ばねリング(20)は360°にわたって分布する3つの薄肉部(38)を備え、前記3つの薄肉部(38)は互いに120°の間隔を開けていることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれかに記載の環状回転ベゼルシステム(6)。
【請求項9】
前記歯付きリング(18)の前記歯部、及び前記ばねリング(20)の前記歯部(40)若しくは前記歯部(40)の各々は、ばねリング(20)によって画定される平面内で非対称の形状を有することを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれかに記載の環状回転ベゼルシステム(6)。
【請求項10】
前記歯付きリングの前記歯部、及び前記ばねリング(20)の前記歯部(40)若しくは前記歯部(40)の各々は、前記ばねリング(20)によって画定される平面内で対称の形状を有することを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれかに記載の環状回転ベゼルシステム(6)。
【請求項11】
前記環状回転ベゼルシステム(6)は独立したモジュールで形成され、前記モジュールは前記ミドルケース(4)上にクリップ式で留められるように構成されていることを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれかに記載の環状回転ベゼルシステム(6)。
【請求項12】
ミドルケース(4)と、前記ミドルケース(4)上に回転可能に取り付けられた請求項1から11のいずれか一項に記載の環状回転ベゼルシステム(6)とを備える時計ケース(2)。
【請求項13】
前記ミドルケース(4)は周縁肩部(12a、12b)を備える外部円筒面(8)を含み、前記周縁肩部(12a、12b)は側面上(12a)に環状突起(13)を備えることと、前記回転ベゼル(14)は内縁上に環状リム(24)を備え、前記環状リム(24)は前記環状突起(13)と一緒にクリップ式で留められることにより協働し、自在引掛けシステムを形成することと、を特徴とする、請求項12に記載の時計ケース(2)。
【請求項14】
時計ケース(2)を備える時計(1)であって、前記時計ケース(2)は請求項12又は請求項13に従うことを特徴とする、時計(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は環状回転ベゼルシステムに関する。
【0002】
本発明はまた、ミドルケースと、ミドルケースに回転可能に取り付けられた環状回転ベゼルシステムとを備える時計ケースに関する。
【0003】
本発明は時計ケースを含む時計に関する。時計は、例えばダイバーズウォッチであるが、本発明との関係において限定するものではない。
【背景技術】
【0004】
既知の環状回転ベゼルシステムは、回転ベゼル、環状保持リング、歯付きリング、及びばねリングを備える。このタイプの回転ベゼルシステムは、例えば欧州特許第2672333A1号に記載されている。ばねリングは平面内に延び、その平面内でばねリングは半径に沿って弾性的に変形可能であり、かつ歯付きリングと弾性的に協働する。これを実現するために、歯付きリングと協働することを意図した弾性アームが、ばねリングを切削することにより、ばねリングの内縁上に配設される。歯付きリング及びばねリングは、回転ベゼル及び環状保持リングによって軸線方向に保持される。ばねリングは回転ベゼルに角度的に連結され、歯付きリングはミドルケースに角度的に連結される。しかし、このタイプの回転ベゼルシステムでは、ばねリングは、ばねリングを画定する平面内における柔軟性が限定される。このことは、ばねリングが変形するための半径方向への十分な空隙を確保するために、システム内に十分な幅を設けなければならず、従ってかなり大きなスペースを必要とすることを意味する。更に、そのようなばねリングの製造は、弾性アームを形成するための切削作業ゆえに比較的複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第2672333A1号
【発明の概要】
【0006】
従って本発明の目的は、ばねリングの柔軟性をその平面内で増加させ、しかし製造が容易であり、上述の従来技術の欠点を克服する、環状回転ベゼルシステムを提供することである。
【0007】
この目的のために、本発明は、独立請求項1に記載の特徴を含む環状回転ベゼルシステムに関する。
【0008】
本システムの特定の実施形態は、従属請求項2から12に規定されている。
【0009】
本発明の第1の利点は、本発明が、ばねリングの柔軟性をその平面内で増加させることである。実際、その内部にある薄肉部のおかげで、ばねリングはその平面内で撓み、ベゼルが回転するにつれて、ばねリングが有する歯部が、歯付きリングと噛み合うこと及び外れることが可能になる。これにより、ばねリングがシステム内で動作するのに必要な幅を減らすこと、よってアセンブリの幅に関してスペースを節約することが可能になる。
【0010】
更に、そのような構成は製造が容易であり、直径が小型であり、ばねリング及び歯付きリングに対して正確に制御された寸法を得ることを可能にする。その上、ばねリングのそのような構成では、リングに舌状部又はストリップを追加する必要はない。なぜなら、ばねリングは単一の材料片で形成されるからである。
【0011】
最後に、この構成により、歯付きリングに対して選ばれる材料を、回転ベゼルに使用する材料とは無関係に選択することが可能になる。これにより、例えば、摩耗が早過ぎるというリスクなしに、ベゼルを貴金属材料から作製することが可能になる。なぜなら、歯付きリングはベゼルに一体化されておらず、単にベゼルに固定されているだけだからである。
【0012】
好適には、回転ベゼルは、ベゼルの内側面にわたって延びる少なくとも1つの突出部を含み、ばねリングは外縁上に、その中にベゼル突出部が係合する少なくとも1つの窪みを有する。このことは、ばねリングのベゼル内での位置決めが促進される一方で、ばねリングが回転ベゼルに容易に回転可能に連結できることを意味する。
【0013】
好適には、歯付きリングは内縁上に、ミドルケースの外部円筒面に構成された窪み内に収容されるように意図された、少なくとも1つの突出部を有する。これにより、歯付きリングをミドルケースに角度的に連結することが容易に可能になり、一方で歯付きリングのミドルケース上への位置決めが促進され、ミドルケース上での組み立てのために回転ベゼルシステムをガイドすることが可能になる。
【0014】
本発明の第1の実施形態によると、歯付きリングの歯部、及びばねリングの歯部又は各歯部は、ばねリングによって画定される平面内で非対称の形状を有する。第1の実施形態では、ばねリングは歯付きリングに対して、単一の所定の方向に、すなわち歯部に対して選択された形状に依存して時計回り又は反時計回りに回転することができる。従って本発明の第1の実施形態は一方向性の回転ベゼルに相当する。
【0015】
本発明の第2の実施形態によると、歯付きリングの歯部、及びばねリングの歯部又は各歯部は、ばねリングによって画定される平面内で対称の形状を有する。この第2の実施形態では、ばねリングは歯付きリングに対して、2つの方向のうちの1つの方向又は他の方向、すなわち時計回り又は反時計回りに回転することができる。従って本発明の第2の実施形態は二方向性の回転ベゼルに相当する。
【0016】
好適には、環状回転ベゼルシステムは独立したモジュールから構成され、モジュールはミドルケース上にクリップ式で留められるように構成される。これにより、回転ベゼルシステムをミドルケース上に取り付ける単純で実用的な手段が提供され、かつ容易な分解も可能になる。これにより、時計ケースの製造方法を更に簡略化することが可能になる。使用されるクリップ式取り付けシステムは自在引掛けシステム(free hooking system)を形成する。
【0017】
この目的のため、本発明はまた、上述の環状回転ベゼルシステムを含む時計ケースに関し、従属請求項13に記載の特徴を含む。
【0018】
時計ケースの特定の実施形態は従属請求項14で規定される。
【0019】
この目的のため、本発明はまた、上述の時計ケースを含む時計ケースに関し、従属請求項15に記載の特徴を含む。
【0020】
本発明による環状回転ベゼルシステムの目的、利点、及び特徴は、図面によって表される少なくとも1つの非制限的実施形態に基づき、以下の説明で、より明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による環状回転ベゼルシステムの分解斜視図である。
図2】いったん組み立てた図1の環状回転ベゼルシステムの上面図である。
図3】断平面III−IIIに沿って見た図2のシステムの断面図である。
図4】本発明の第1の実施形態による、図1の環状回転ベゼルシステムの底面図である。
図5】本発明の第2の実施形態による、図1の環状回転ベゼルシステムの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は時計ケース2を備える時計1を表す。時計ケース2は典型的にはミドルケース4を含む。時計ケース2はまた、環状回転ベゼルシステム6と、平面内に延びる計時器ムーブメントとを含むが、計時器ムーブメントは明瞭化のために図から省略している。環状回転ベゼルシステム6はミドルケース4上に回転可能に取り付けられている。好ましくは、図1から図5に示すように、環状回転ベゼルシステム6は独立したモジュールから構成される。環状回転ベゼルシステム6は、例えば、以下で詳述するように、ミドルケース4上にクリップ式で留められる。
【0023】
図1に図示すように、ミドルケース4は環状の形状をしている。ミドルケース4は外部円筒面8を含む。図3に示すように、外部円筒面8は、側壁12a及び基部12bによって画定される周縁肩部を備える。この周縁肩部は、回転ベゼルシステム6のためのハウジングとして機能する。側壁12aは側壁12aの全周にわたって延びる環状の突起又は出張り13を含み、これにより、回転ベゼルシステム6をクリップ式で留めることよってミドルケース4上に固定することが可能になる。環状回転ベゼルシステム6は基部12b上に載っている。従って、回転ベゼルシステム6は、ミドルケースの上部からミドルケース4上に取り付けられ、それによりシステム6は計時器ムーブメントの平面に垂直な軸線方向にブロックされ、ベゼルはミドルケース4の周りを回転することが可能になる。図1から図5の一例としての時計ケース2では、時計ケースの構成は実質的に円形である。しかし、本発明は、この時計ケースの構成、又はミドルケース4に対して説明した他の構成に限定されない。ミドルケースは金属、典型的には鉄鋼、チタン、金、白金、又は典型的にはアルミナ、ジルコニア、若しくは窒化シリコンから作製されるセラミックで作製されてもよい。
【0024】
環状回転ベゼルシステム6は、回転ベゼル14、環状保持リング16、歯付きリング18、及びばねリング20を含む。好ましくは、システム6は更に、回転ベゼル14上にプレス嵌めされた装飾リング22を含む。装飾リング22は、例えば、目盛りを、典型的にはダイバーズウォッチ1の場合はダイビング用目盛りを有する。装飾リング22は例えばセラミックで作製される。
【0025】
回転ベゼル14は環状形状をしており、利用者に見える上面23a、及び底面23bを含む。図1及び図3に示すように、回転ベゼル14は、例えば内縁上に環状リム24を備える。環状リム24は、ミドルケース4の突起13と一緒にクリップ式で留めることにより係合し、突起と共に自在引掛けシステムを形成する。回転ベゼル14は、例えば金属で作製されるが、任意の他の材料、例えばセラミックで作製され得る。
【0026】
環状リング16は、歯付きリング18及びばねリング20を、ベゼル14内で計時器ムーブメントの平面に垂直な軸線方向に保持する。これにより、回転ベゼル14のミドルケース4への取り付けが促進される。好ましくは、図3に示すように、環状リング16は回転ベゼル14の中に押し込まれ、回転ベゼルに固定される。図に示していない変形形態では、環状リング16はミドルケース4に固定される。
【0027】
環状リング16は、ミドルケース4の基部12b上に載り、従ってミドルケース4の外部円筒面8を取り囲む。ミドルケース4上で回転ベゼル14が回転することが可能なように、環状リング16は外部円筒面8と協働するように構成される。環状保持リング16は、例えば平坦なリングである。
【0028】
図1に示す特定の変形形態によると、環状リング16は、回転ベゼル14を、ミドルケース4の周りを回転させてガイドする手段26と、ミドルケース4の周りでの回転ベゼル14の回転を制動しかつ音を減衰させるように構成された手段28とを含む。図1に示すこの変形形態では、環状リング16は、例えば、プラスチック材料、とりわけPTFE、エチレンテトラフルオロエチレン(Tefzel(登録商標))、及びポリオキシメチレン(Delrin(登録商標))からなる単一の材料片で形成され、必要な場所は、摩擦係数を改善することを意図した層でコーティングされる。環状リング16は、例えば略矩形の断面を有する。
【0029】
好ましくは、図1に示すように、環状リング16は内縁上に、舌状部第1グループの舌状部30aと舌状部第2グループの舌状部30bの交互配置を含む。第1グループの舌状部30aと第2グループの舌状部30bは、ミドルケース4の外部円筒面8と接触している。そのような舌状部30a、30bは、回転ベゼルシステム6の中への汚れの経路を制限する。環状リング16がミドルケース4と一体である、図に示していない変形形態では、第1グループの舌状部30aと第2グループの舌状部30bとが、環状リング16の外側縁上に配設され、回転ベゼル14の内面と接触する。
【0030】
図1の例示的実施形態では、舌状部第1グループ及び舌状部第2グループの各々は、リング16の内縁の360°にわたって分布した6つの舌状部30a、30bを含む。従って同じ舌状部グループの舌状部は、互いに60°の間隔を空け、舌状部第1グループ及び舌状部第2グループの舌状部30a、30bが交互配置されている。
【0031】
第1グループの舌状部30aと第2グループの舌状部30bは、半径方向に異なる寸法を有する。図1の例示的実施形態では、舌状部第1グループの舌状部30aは、舌状部第2グループの舌状部30bの半径方向の寸法よりも小さい半径方向の寸法を有し、回転ガイド手段26を形成する。
【0032】
舌状部第2グループの舌状部30bは、制動及び音減衰手段28を形成する。より正確には、舌状部第2グループの舌状部30bは第1グループの舌状部30aよりも、より柔軟性がある部分で形成される。これらの部分は計時器ムーブメントの平面に垂直な軸線方向に湾曲することができる。これを実現するために、図1に示す特定の例示的実施形態は、第1グループの舌状部30a及び第2グループの舌状部30bが、計時器ムーブメントの平面に垂直な軸線方向に測定した厚さが、異なる厚さを有することからなる。典型的には、第2グループの舌状部30bは第1グループの舌状部30aよりも厚さが小さく、それにより、より大きな柔軟性を有する。第2グループの舌状部30bの軸線方向への柔軟性ゆえに、舌状部は、外部円筒面8との摩擦によって、ミドルケース4の周りでの回転ベゼル14の回転を制動し、かつ発生する音を減衰させることもできる。
【0033】
手段28を介してベゼル14の回転を制動することは、システム内の様々な動きを円滑化してベゼルの利用者がその違いに気付かないようにすること、かつベゼルの回転トルクをソフトにすることによりベゼルの回転トルクを制御する、という利点を有する。更に、制動及び音減衰手段28はベゼルの回転によって発生するノイズを低減させ、よってユーザ経験を改善させる。
【0034】
好ましくは、第1グループ及び第2グループの舌状部30a、30bは窪み32によって互いに分離されている。これにより、特に舌状部第2グループの舌状部30bの柔軟性が改善される。
【0035】
好ましくは、図1に示すように、舌状部第1グループ及び舌状部第2グループの舌状部30a、30bは、実質的に等しい角度区画にわたって角度方向に延びている。
【0036】
明らかに、本発明の他の変形形態では、環状保持リングは、その周囲全体にわたって矩形断面を有し、ベゼル14の中に押し込まれた、単一の環状リングを備えてもよい。
【0037】
歯付きリング18は幾つかの歯部、例えば120個の歯部を含み、同じくその外側縁上に360°にわたって分布している。好ましくは、歯付きリング18はまた、その内縁上に、ミドルケース4の外部円筒面8内に設けられた窪み36内に収容された少なくとも1つの突出部34を有する。図1から図5に示す例示的実施形態では、歯付きリング18は360°にわたって分布し、互いに120°の間隔を開けた3つの突出部34を含む。ミドルケース4の外部円筒面8は3つの対応する窪み36を有する。この突出部34/窪み36のシステムにより、歯付きリング18のミドルケース4への角度的な連結が容易になり、一方で歯付きリング18のミドルケース4上への位置決めが促進される。このシステムにより、ミドルケース4上に取り付けるために回転ベゼルシステム6をガイドすることも可能になる。従って、システム6の頂部から押すことにより、突出部34は窪み36内に係合し、よって要素はシステム6内に係止され、システム6はミドルケース4上にクリップ式で留められる。
【0038】
歯付きリング18は単一の材料片で形成される。歯付きリング18は、例えば、金属合金、とりわけ、商業的にはphynoxとして知られるコバルトベースの合金(40%のCo、20%のCr、16%のNi、及び7%のMo)、又は典型的には316Lスチールなどのステンレス鋼である鉄鋼、で形成される。変形形態では、歯付きリング18は熱可塑性材料、特に例えばポリアリールアミド(Ixef(登録商標))、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの耐熱性の半結晶性の熱可塑性材料で形成されてもよく、又はジルコニア若しくはアルミナなどのセラミック材料から作製されてもよい。
【0039】
図4及び図5で分かるように、歯付きリング18はばねリング20の中に挿入されるように配設されており、すなわち、歯付きリング18はばねリング20内に配置できるように寸法決めされている。歯付きリング18及びばねリング20は同心かつ同一平面上にあり、ベゼル14の底面23bと保持リング16の上面との間に保持される。
【0040】
ばねリング20は歯付きリング18と弾性的に係合する。より具体的には、ばねリング20は、少なくとも1つの歯部40を有し、歯付きリング18と弾性的に半径方向に噛み合う少なくとも1つの薄肉部38を備える。図1から図5に示す例示的実施形態では、ばねリング20は360°にわたって分布する3つの薄肉部38を備え、各薄肉部38は薄肉部38の中間部分に配設された1つの歯部40を有する。3つの薄肉部38は互いに120°の間隔を開けている。ばねリング20は、1つの半径に沿って弾性的に変形できるような平面内に延びている。薄肉部38はその平面内でばねリング20の柔軟性を増加させるように配設されている。この構成は、歯付きリング18がばねリング20内に挿入されたとき、歯部40が歯付きリング18の歯部と協働することを意味する。この構成では、各歯部40は歯付きリングと接触しているので、各歯部40が歯付きリング18の2つの歯部の間の窪み内にある静止位置が存在する。利用者がベゼル14を掴み回転させると、薄肉部38によってもたらされるばねリング20の柔軟性によって、ばねリング20はその平面内で弾性的に変形し、歯部40が歯付きリング18の窪みから開放され、歯付きリング18の隣接する歯部内に再び係合することが可能になる。その時、ベゼル14は対応する角度区画だけ実際に回転して新しい位置に入る。
【0041】
好ましくは、図1図4、及び図5に示すように、薄肉部38は半径方向に薄肉になっている。
【0042】
重ねて好ましくは、ばねリング20はその外縁上に少なくとも1つの窪み42を有し、窪み42内にはベゼル14の突出部44が係合して、これら2つの要素を回転連結する。図1から図5に示す例示的実施形態では、ばねリング20は360°にわたって分布し、互いに120°の間隔を開けた3つの窪み42を含み、回転ベゼル14は3つの対応する突出部44を内側面上に有する。窪み42は、ばねリング20の、薄肉部38よりも厚い部分46内で、これら部分46の中間部分に配設される。従って、歯部40及び窪み42は、ばねリング20上で交互配置され、360°にわたって規則的に分布している。この突出部44/窪み42のシステムにより、ばねリング20を回転ベゼル14に回転可能に連結することが容易になり、一方でばねリング20の回転ベゼル14内への位置決めが促進される。
【0043】
ばねリング20は単一の材料片で形成される。ばねリング20は、例えば、ばね特性が良好な、すなわち容易に弾性的に変形するが、一方で塑性変形を受けることなく十分に変形することができる金属合金、とりわけphynox(登録商標)又は非晶質金属合金から形成される。もちろん、変形形態では、ばねリング20を合成材料から作製することもできる。
【0044】
ここで本発明の第1の実施形態を図4を参照して説明する。この第1の実施形態によると、歯付きリング18の歯部及びばねリング20の歯部40は、ばねリング20によって画定される平面内で非対称の形状を有する。非対称の形状は、例えば「小臼歯」型であり、すなわち歯部は実質的に直角三角形の形状である。歯部が噛み合った位置において、ばねリングの各歯部40によって形成される三角形の斜辺が、歯付きリング18の歯部のうちの1つによって形成される三角形の斜辺に沿って延びる。
【0045】
薄肉部38の中間部分に各々が配設された歯部40は、360°にわたって規則的に分布している。従って、ばねリング20が3つの歯部40を有する図4に示す実施例では、歯部40は互いに120°の間隔を空けている。
【0046】
この第1の実施形態では、ばねリング20は歯付きリング18に対して、単一の所定の方向に、すなわち歯部に対して選択された形状に依存して時計回り又は反時計回りに回転することができる。従って本発明の第1の実施形態は一方向性の回転ベゼル14に相当する。
【0047】
ここで本発明の第2の実施形態を図5を参照して説明する。この第2の実施形態によると、歯付きリング18の歯部及びばねリング20の歯部40は、ばねリング20によって画定される平面内で対称の形状を有する。対称の形状は、例えば二等辺三角形又は正三角形である。
【0048】
この第2の実施形態では、ばねリング20は歯付きリング18に対して、2つの方向のうちの1つの方向又は他の方向、すなわち時計回り又は反時計回りに回転することができる。従って本発明の第2の実施形態は二方向性の回転ベゼル14に相当する。
【0049】
好ましくは、この第2の実施形態によると、ばねリング20は、360°にわたって規則的に分布した3つの薄肉部38を含む。各薄肉部38は1つの歯部40を有する。
【0050】
環状回転ベゼルシステムの前記説明は、ミドルケースに角度的に連結した歯付きリング、及び回転ベゼルに角度的に連結したばねリングを参照してなされた。しかし、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく反対の構成が可能であること、すなわち、歯付きリングが回転ベゼルに角度的に連結し、ばねリングがミドルケースに角度的に連結してもよいことを理解するであろう。
【符号の説明】
【0051】
1 時計
2 時計ケース
4 ミドルケース
6 環状回転ベゼルシステム
8 外部円筒面
12a 側壁
12b 基部
13 突起
13 出張り
14 回転ベゼル
16 環状リング
18 歯付きリング
20 ばねリング
22 装飾リング
23a 上面
23b 底面
24 環状リム
26 回転ガイド手段
28 音減衰手段
30a 舌状部
30b 舌状部
32 窪み
34 突出部
36 窪み
38 薄肉部
40 歯部
42 窪み
44 突出部
46 部分
図1
図2
図3
図4
図5