(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記点火タイミングの進角度合いは、予め測定した前記エンジンの出力と回転速度とをパラメータとして設定したトルクリッチ領域とトルクプア領域の境界である舶用三乗特性線をピークとし、
前記トルクリッチ領域においては前記舶用三乗特性線より進角度合いが減じられることを特徴とする請求項2に記載されたエンジンの制御方法。
前記エンジンの出力は、前記エンジンの出力軸のトルクをトルクセンサで測定したトルク測定値と、前記エンジンの出力軸の回転速度を回転速度センサで測定した回転速度測定値と、から求めた出力軸の出力値であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載されたエンジンの制御方法。
前記吸気弁が閉じるタイミングの進角は、予め測定した複数の出力軸の出力及び回転速度のデータをパラメータとして設定した進角の値から設定されるようにしたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載されたエンジンの制御方法。
【背景技術】
【0002】
可変バルブタイミング機構の具体的構成の例が下記特許文献1〜3に記載されている。
図20及び
図21に示すように、特許文献1に記載の可変バルブタイミング機構100の駆動機構は、リンク機構101とアクチュエータ102とを備えている。リンク機構101では、エンジンの排気バルブのプッシュロッドに連結された排気バルブスイングアーム103がリンクシャフト104に支持され、吸気バルブのプッシュロッドに連結された吸気バルブスイングアーム105がリンクシャフト104から偏心した偏心軸部のタペット軸106に支持されている。
排気バルブスイングアーム103と吸気バルブスイングアーム105はそれぞれカム軸108の偏心カム108aによって進退可能とされている。また、リンクシャフト104はアクチュエータ102に設けたピストンロッド109に連結されている。
図21に示す位置をピストンロッド109の飛び出し動作前とすると、アクチュエータ102によるピストンロッド109の飛び出し動作によって、連結された全てのスイングアーム105,103が一方に回転する。そのため、アクチュエータ102によってリンク機構101を介して全てのスイングアーム105,103の回動角度を制御できる。
【0003】
また、他の例として特許文献2,3に記載された可変バルブタイミング機構が
図22、
図23に記載されている。これらを上記
図20,
図21に示す可変バルブタイミング機構100と同一部分には同一符号を用いて説明する。
図22に示す可変バルブタイミング機構では、アクチュエータ102に連結した扇形ギヤ120の歯部の範囲でリンクシャフト104の回転範囲が規制され、リンクシャフト104に偏心して固定された偏心ディスク123(タペット軸に相当する)が排気バルブスイングアーム103や吸気バルブスイングアーム105の基部に保持されている。
そのため、リンクシャフト104の回転位置に対する各偏心ディスク123の回転角度位置のずれに対して、排気バルブスイングアーム103や吸気バルブスイングアーム105にカム軸108の偏心カム108aが当接して押し上げる位置が変化する。
【0004】
図23に示す例では、ロッカアーム127にプッシュロッド128を介して連結された排気バルブスイングアーム103や吸気バルブスイングアーム105が、クランク状のリンクシャフト104のタペット軸106(スイングアームの支点位置)に接続されている。アクチュエータ102によってクランク状のリンクシャフト104の位相を変更(回動)することによって、吸気バルブスイングアーム105や排気バルブスイングアーム103の支点位置が変わり、その結果、カム軸108への接点位置が変わる。
これにより、カム軸108の偏心カム108aがカム軸108で排気バルブスイングアーム103または吸気バルブスイングアーム105を押圧して進退させるタイミングが可変となるようにしている。
【0005】
特許文献4には、各燃焼室に設けられた第1吸気弁及び第2吸気弁と、吸気ポートに設けられ、第1吸気弁及び第2吸気弁それぞれに向けて燃料を噴射する燃料噴射装置と、第1吸気弁のバルブタイミングと第2吸気弁のバルブタイミングとを相互に異なるバルブタイミングに変更可能な可変動弁機構と、を備えた内燃機関に適用される制御装置が開示されている。この内燃機関は、可変動弁機構を制御して、第1吸気弁の開時期を上死点前に設定し、第2吸気弁の開時期を上死点以降に設定し、第1吸気弁の閉時期及び第2吸気弁の閉時期を下死点以降に設定するバルブタイミング設定手段と、バルブタイミング設定手段によるバルブタイミングの設定状態において、燃料噴射装置による第1吸気弁に向けての燃料噴射の開始タイミングを、第1吸気弁を介して吸気ポート側に吹き返すガス量が多いほど上死点からより遅れた時期に設定する噴射タイミング設定手段と、を備えている。
【0006】
特許文献4は、車両用エンジンの内部EGRにおいて成層燃焼を実現するためのものであり、燃料噴射装置による第1吸気弁に向けて噴射される燃料は、一瞬で噴射を終了できる液体燃料に関するものである。
【0007】
特許文献5には、目標EGR率の負の変化率を所定の閾値と比較し、この負の変化率が上記閾値以上である場合に、EGR弁の開弁期間中にEGR弁の閉じ動作に伴うEGRガスの応答遅れがあることを検知するようにし、EGRガスの応答遅れが検知された場合には、実圧縮比が高くなるように吸気弁の閉じ時期を補正すると共に、圧縮上死点に近づくように燃料噴射時期を補正することが開示されている。
【0008】
特許文献5は、ディーゼル機関の外部EGRにおいて、EGRガスの応答遅れに対処するためのものである。インジェクタを介して各気筒内に噴射される燃料は、一瞬で燃焼室に充填できる液体燃料である。
【0009】
特許文献6は、自着火燃焼形式の予混合圧縮着火エンジンであって、エンジンの設定出力を検出し、設定出力の増加に伴って、予混合気の当量比(燃料の供給量により設定)を増加させると共に、実圧縮比を減少させるとしている。エンジンの設定出力、言い換えれば要求されるエンジンの出力は、手動で、若しくはエンジンのクランク軸にかかる負荷を検出して設定される。この「クランク軸にかかる負荷」は、「設定出力、言換えれば要求されるエンジンの出力」であるので、エンジンが実際にアウトプットする出力軸の出力ではなく、エンジンに対して設定、要求される出力である。
【0010】
特許文献7には、副室式ガスエンジンにおいてガス燃料エンジンの出力は回転数及びトルクによって規定される旨が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のガス燃料エンジンは、急速に出力を上昇させるためにガス燃料の供給量を早い割合で増やしても、過給機が追従できず必要空気量を供給できない。過給機は排気ガスで駆動されるため、ガス燃料エンジンの出力が上がって排気ガスが過給機に充分に供給されないと有効に働かないためである。空気量が足りないと空燃比がガスリッチになってノッキングが発生し、機関の故障につながる。そのノッキング抑制のために、過給機が追従できる速度で出力を上昇させると、出力の上昇(負荷上げ)に10分程度の時間が必要である。なお、本明細書においては、原則としてエンジンが実際にアウトプットする仕事率については「出力」の語を、エンジンに対して設定、要求される仕事率については「負荷」の語を用いるが、多くの場合「出力」=「負荷」であり、慣用的に「出力」の替わりに「負荷」の語を用いる(またはその逆の)ことがある。
【0013】
一方で、船舶用機関においても有害排気ガスの排出規制が年々厳しくなっており、燃料由来による有害排気ガスの排出量が少なく排出規制を満足することができるデュアルフューエルエンジンを導入することが要望されている。しかし、このようなデュアルフューエルエンジンの導入のためには、船舶用機関の運転モードを満たすために負荷上げ時間を20秒程度にまで短縮する必要があった。
【0014】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、ガス燃料エンジンの出力を上昇させる際に発生するノッキングを抑制して負荷上げ時間を短縮できると共に、バルブオーバーラップ中の未燃ガス燃料の吹き抜けによる燃費悪化のないエンジンの制御方法とエンジンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明者らは、各VIVT角度で燃料ガス供給弁の開弁(供給開始)タイミングを変更して、THC濃度、燃焼状態から最適値を決定し、VIVT角度に応じて燃料ガス供給弁の開弁タイミングを設定することにより、ガス燃料エンジンの出力を上昇させる際に発生するノッキングを抑制して負荷上げ時間を短縮することができ、更にはトルクリッチ領域、トルクプア領域において燃料ガス供給弁の開弁タイミングに起因していた燃焼変動、回転速度ハンチングを改善できることを見いだし本発明に至った。
【0016】
本発明によるエンジンの制御方法は、ガスを燃料とするエンジンの制御方法であって、エンジンの出力の増加に伴い、吸気弁が閉じるタイミングを吸入下死点からの進角を調整することで燃焼室内における混合気の圧縮比を下げる制御を行うと共に、進角の変化に対応して燃料ガス供給弁の開弁タイミングを進角させ、前記吸気弁が閉じるタイミングの進角が進むほど、前記燃料ガス供給弁の開弁タイミングの進角の度合いが、より大きくなり、前記燃料ガス供給弁の閉弁タイミングは、前記燃料ガス供給弁の開弁タイミングを起点として開弁期間を設定することで決定されることを特徴とする。
【0017】
エンジンのノッキング抑制技術として、可変吸気弁タイミング(Variable Intake Valve Timing;VIVT)機構を用いて有効圧縮比を下げることができる。この点についてノッキング抑制技術を
図19A、19Bより説明する。
図19Aは通常の4ストロークサイクルの工程を示し、
図19Bはミラーサイクルの工程を示している。
例えばガス燃料エンジンにおいて、通常、吸気弁はピストンの下死点に閉まる(
図19A参照)。一方、
図19Bに示すように閉まるタイミングを下死点より早くすると、吸気弁の閉弁後にも混合気の膨張が続くため、筒内温度Tsが
図19Aの場合より下がる(Ts*<Ts)。その分だけ上死点時の最高圧縮温度も低下することより(Tc*<Tc)、自着火を防ぐことができてノッキングが抑制される。
ミラーサイクルの欠点として、圧縮温度が下がって低負荷域の着火性が悪化するため、起動時や低負荷時には
図19Aに示す通常の吸気弁の開弁タイミングに戻し、高負荷時のみ吸気弁の開弁タイミングを早くする必要がある。
【0018】
本発明によるエンジンの制御方法では、ガス燃料の供給量を増やして出力を増大させるガス燃料エンジンにおいて、吸気弁が閉じるタイミングを吸入下死点から進める(進角)ことで、エンジンの燃焼室内における混合気の圧縮比を下げる制御を行う。圧縮比を下げることで圧縮時の燃焼室内の温度が低くなるためノッキングを抑制することができる。
なお、燃焼室内で混合気の圧縮比を下げると、起動時や低出力時では着火性が悪化する上に燃焼効率の点で有利な条件から離れてしまい、燃費が悪化するデメリットが生じる。そこで、本発明では、よりノッキングが生じ易い出力がより高い運転領域において吸気弁が閉じるタイミングをより大きく変更させて、より大きい割合で圧縮比を下げる制御を行う。これにより、出力の変化に応じてノッキングを抑制させ、燃費の悪化を防止しつつ負荷上げ時間を短縮させることができる。しかも、吸気弁の進角の変化に対応して燃料ガス供給弁の開弁タイミングを進角させることで、吸気弁と排気弁のバルブオーバーラップ時に未燃焼燃料ガスの吹き抜けを少なくすることができる。
【0020】
また、燃料ガス供給弁の前記開弁期間は、目標回転速度と実回転速度の偏差に基づいて算出されることが好ましい。
エンジンの目標回転速度と実回転速度の偏差に基づいて例えばPID制御などのフィードバック制御によって燃料ガス供給弁の開弁期間を算出する。燃料ガス供給弁の開弁タイミングを起点としてこの開弁期間を設定することで、燃料ガス供給弁の閉弁タイミングを決定することができる。
【0021】
また、吸気弁が閉じるタイミングの進角に伴って、燃料ガスの供給圧力を高くすることが好ましい。
吸気弁の閉弁タイミングの進角に応じて燃料ガスの供給圧力を高くすることで出力を維持するための適正なガス燃料の量を開弁期間内に供給することができる。
【0022】
また、吸気弁が閉じるタイミングの進角に伴って、エンジンの点火タイミングを進角させることが好ましい。
吸気弁の閉弁タイミングの進角に応じ、NOxが所定値に収まる範囲において点火タイミングを進角することで、熱効率を高くすることができる。
【0023】
また、点火タイミングの進角度合いは、予め測定したエンジンの出力と回転速度とをパラメータとして設定したトルクリッチ領域とトルクプア領域の境界である舶用三乗特性線をピークとし、トルクリッチ領域においては舶用三乗特性線より進角度合いが減じられてもよい。
この場合でも、吸気弁が閉じるタイミングを進角する前よりも舶用三乗特性線をピークとしてトルクリッチ領域とトルクプア領域の前領域内で点火タイミングが進角するため、全体にNOxを規制範囲内に抑えると共に熱効率が高くなるという利点がある。なお、「舶用三乗特性」とは、出力が回転速度の三乗に比例する舶用主機関の特性であるが、実船では正確に三乗に比例するとは限らず、ある程度のずれが生ずる。
【0024】
また、エンジンの出力は、エンジンの出力軸のトルクをトルクセンサで測定したトルク測定値と、エンジンの出力軸の回転速度を回転速度センサで測定した回転速度測定値と、から求めた出力軸の出力値であることが好ましい。
本発明によるエンジンでは、燃料となるガスは弾性体であるため液体燃料に比べて正確な燃料の供給量を得ることが相対的に難しい。そこで、トルクセンサにより実際にトルクの測定を行うことで回転速度との関係で出力を演算するが好ましい。しかも、回転速度センサを備えることで得られる出力軸の回転速度の測定値とトルクセンサによるトルク測定値の積をとることで、エンジンの出力軸の出力(負荷)をリアルタイムに求めることができる。そのため、エンジンの吸気弁の閉じるタイミングの進角と燃料ガス供給弁の開弁タイミングの進角とを精度良く設定できるため、出力が増大しても燃焼効率を向上させて適切にガス燃料エンジンの運転が行える。
【0025】
また、吸気弁が閉じるタイミングの進角は、予め測定した複数の出力軸の出力値及び回転速度のデータをパラメータとして設定した進角の値から設定されることが好ましい。
吸気弁の閉じるタイミングの進角の好適な値は、出力が大きい場合により大きくなるが、これに加えて回転速度にも依存する。そのため、少なくともこれら二種のパラメータを含むマップを予め作成し、エンジンの出力と回転速度の変化に応じて吸気弁の閉じるタイミングの進角を制御することでノッキングをより抑制できる。
【0026】
本発明によるエンジンシステムは、ガスを燃料とする4ストロークのエンジンを備えたエンジンシステムであって、エンジンの出力軸の出力が増大した場合にエンジンの吸気弁が閉じるタイミングを進角させると共に、その進角の変化に対応して、燃料ガス供給弁の開弁タイミングを進角させる制御部と、制御部で設定された前記吸気弁の閉じるタイミングに応じて吸気弁が閉じるタイミングを変更させる可変吸気弁タイミング機構と、制御部で設定された吸気弁の進角の変化に対応して燃料ガス供給弁の開弁タイミングを進角させる燃料ガス供給弁タイミング機構とを備え、エンジンの出力軸の出力の増大に伴い、可変吸気弁タイミング機構によってエンジン内のガスと空気の混合気の圧縮比をより下げる制御を行い、前記燃料ガス供給弁の閉弁タイミングは、前記燃料ガス供給弁の開弁期間を算出するガス供給時間算出部と、前記燃料ガス供給弁の開弁タイミングを起点として前記開弁期間に基づいて前記燃料ガス供給弁による燃料ガスの閉弁タイミングを指示するガス供給弁制御部と、によって設定されたことを特徴とする。
本発明によるエンジンシステムの制御方法では、ガス燃料の供給量を増やしてエンジンの出力軸の出力が増大した場合に、吸気弁が閉じるタイミングを吸入下死点から進角することで、エンジンの燃焼室内における混合気の圧縮比を下げる制御を行う。圧縮比を下げることで圧縮時の燃焼室内の温度が低くなるためノッキングを抑制することができる。
しかも、本発明では、よりノッキングが生じ易い出力がより高い運転領域において吸気弁が閉じるタイミングをより大きく変更させて、より大きい割合で圧縮比を下げる制御を行う。これにより、出力の変化に応じてノッキングを抑制させ、燃費の悪化を防止しつつ負荷上げ時間を短縮させることができる。しかも、吸気弁の進角の変化に対応して燃料ガス供給弁の開弁タイミングを進角させることで、吸気弁閉じのクランク角度に対して吸気弁と排気弁のバルブオーバーラップ時に未燃焼燃料ガスの吹き抜けを少なくすることができる。
【0027】
また、エンジンの出力軸のトルクを測定するトルクセンサと、エンジンの出力軸の回転速度を測定する回転速度センサとを備え、トルクセンサによるトルク測定値と回転速度センサによる回転速度測定値から出力軸の出力を求めて、制御部における吸気弁の閉じるタイミングの変更を設定することが好ましい。
本発明によるガス燃料エンジンでは、燃料となるガスは弾性体であるため液体燃料に比べて正確な燃料の供給量を得ることが相対的に難しい。そこで、トルクセンサにより実際にトルクの測定を行うことで回転速度との関係で出力を演算するが好ましい。しかも、回転速度センサを備えることで得られる出力軸の回転速度測定値とトルクセンサによるトルク測定値の積をとることで、エンジンの出力軸の出力をリアルタイムに求めることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によるエンジンの制御方法とエンジンシステムによれば、エンジンの出力軸の出力が増大した場合にエンジン内の混合気の圧縮比を下げることができるため、負荷上げ時のノッキングを抑制すると共に負荷上げ時間を短縮できる。
しかも、吸気弁の進角の調整に対応して燃料ガス供給弁の開弁タイミングを進角させるため、燃料ガス供給弁の開弁タイミングに起因していた燃焼変動、回転速度ハンチングを改善し、適切にガス燃料エンジンの運転を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態によるエンジンとして、舶用エンジンとして用いる例えば4ストロークのデュアルフューエルエンジン1について添付図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示す舶用のデュアルフューエルエンジン1(以下、単にエンジン1ということがある)はディーゼルモードDとガスモードGの各機関を備えており、運転中にディーゼルモードDとガスモードGとに切り換え可能な機関である。
図1に示すデュアルフューエルエンジン1は、プロペラ等に連結された出力軸としてクランク軸2の機構を備えており、クランク軸2はシリンダーブロック3内に設置されたピストン4に連結されている。シリンダーブロック3内に設けたピストン4とエンジンヘッド5によって燃焼室6が形成されている。
【0031】
燃焼室6はエンジンヘッド5に装着されている吸気弁8及び排気弁9と、ディーゼルモードDで使用する燃料噴射弁10とによって密閉されている。また、エンジンヘッド5にはガスモードで使用するマイクロパイロット油噴射弁11が設置されている。エンジンヘッド5の吸気弁8を設置した吸気口には吸気管13が接続され、排気弁9を設置した排気口には排気管14が設置されている。吸気管13にはガス噴射を制御する電磁弁からなる燃料ガス供給弁15が設置され、その上流側にはエアクーラ16、排気管14に連通する過給機17が設置されている。
【0032】
ここで、本実施形態によるデュアルフューエルエンジン1は、
図2に示すように、ディーゼルモードDとガスモードGとに切り換えて運転できる。ディーゼルモードDでは、例えばA重油等を燃料油として燃料噴射弁10から燃焼室6内の圧縮空気に機械的に噴射して着火し燃焼させることができる。ガスモードGでは、天然ガス等の燃料ガスを燃料ガス供給弁15で吸気管13に供給して空気流と予混合して混合気を燃焼室6内に供給し、混合気の圧縮状態でマイクロパイロット油噴射弁11からパイロット燃料を噴射して着火し燃焼させる。マイクロパイロット油噴射弁11は例えば電子制御されていて強力な点火源としてパイロット燃料を少量噴射する。燃料ガス供給弁15は、わずかなストロークで大きな開口を形成して短時間で大量のガスを流せる電磁弁である。
【0033】
エンジン1は、燃料噴射弁10より液体燃料を燃焼室6内に噴射するディーゼルモードDで始動を行う。エンジン1に基準値以上のガス圧力が供給されていることが確認された後、燃料ガス供給弁15でガス燃料を吸気管13に供給して空気と混合してから燃焼室6内に流入させ、ガス燃料を燃焼させるガスモードGで運転を行う。
停止の際には再びディーゼルモードDに変更してから停止を行う。始動時と停止時以外はディーゼルモードDとガスモードGを変更可能である。
【0034】
本実施形態によるデュアルフューエルエンジン1はガスモードGにおいて負荷上昇時の出力制御を行うガスエンジンシステムを備えている。このガスエンジンシステムの構造について更に説明する。
図1において、クランク軸2には回転速度センサ20とトルクセンサ21とが取付けられており、回転速度センサ20ではクランク軸2の 回転速度(回転数)を計測し、トルクセンサ21ではエンジントルクを計測する。トルクセンサ21として、例えば軸にかかるトルクを歪によって検出するセンサが使用可能である。回転速度センサ20とトルクセンサ21で計測した測定データはエンジン1を制御する制御部22にそれぞれ信号出力する。
制御部22では、回転速度センサ20とトルクセンサ21などからの信号に基づいてエンジン1の運転状態を検出する。即ち、回転速度センサ20で計測したクランク軸2の回転速度(回転数)をnとし、トルクセンサ21で計測したトルクをTとして、下記の式(1)と式(2)でエンジン1の出力(負荷)Aを演算する。但し、Ltはエンジン1の定格出力とする。
出力Lo=2πTn/60 (1)
出力(負荷)A=Lo/Lt×100 (2)
【0035】
なお、エンジン1の出力(負荷)を求める方法として、燃料の供給量その他のエンジン1の運転状態に関する情報から推測する方法と、エンジン1の出力軸の動力伝達系統にトルクセンサ21を備えて、実際にトルクの測定を行って出力を求める方法がある。ガス燃料エンジンでは、燃料となるガスは弾性体であるため液体燃料に比べて正確な燃料の供給量を得ることが相対的に難しい。そこで、トルクセンサ21によって実際にトルクの測定を行うことで出力を演算することが好ましい。
また、回転速度nを一定にした場合には、出力Aとトルク測定値Tは正比例の関係になる。回転速度nが一定の条件においては、出力Aが大きいほど、すなわちトルクデータTが大きいほど、より大きい割合で吸気弁8の閉じるタイミングの進角を設定することが望ましい。
【0036】
制御部22では、予め作成された吸気弁開閉タイミングの第一電気信号を決定する第一マップ24と第一電気信号に対応する開閉タイミングを決定する第二マップ25とが記憶されている。制御部22では、回転速度センサ20とトルクセンサ21によって測定されたエンジン1の出力Aに対応する回転速度データnとトルクデータTに基づいて、上記(1)及び(2)式によりエンジン1の出力Aを演算する。そして、回転速度nと出力Aにより第一マップ24で吸気弁8の開閉タイミングに対応する第一電気信号を選択する。この第一電気信号に基づいて第二マップ25で第一電気信号に対応する吸気弁8の開閉タイミングが決定される。なお、第一マップ24と第二マップ25の作成方法は後述する。
制御部22で設定された開閉タイミングの第二電気信号は電空変換器27に送信され、電空変換器27で開閉タイミングの信号が空気圧力に変換される。この空気圧力はアクチュエータ28に送られて可変吸気弁タイミング機構30の駆動を制御する。アクチュエータ28には第一減圧レギュレータ34と電空変換器27から駆動用と制御用の空気圧力P1,P2が供給される。
【0037】
なお、アクチュエータ28に供給する空気圧力は空気圧縮機32で圧縮されてエアタンク33に貯められる。エアタンク33内の空気圧力は第一減圧レギュレータ34により必要な圧力に減圧される。この際の圧力は第一減圧レギュレータ34のバルブ開度を変更することより調整し、駆動用の空気圧力P1としてアクチュエータ28に供給される。圧力計36で計測された圧力P1が規定値以下の場合には、エンジン1は始動できない。
電空変換器27を駆動するための空気圧力は、第一減圧レギュレータ34から第二減圧レギュレータ37でさらに減圧されて供給される。電空変換器27は入力される開閉タイミングの第二電気信号に対応する空気圧力を、アクチュエータ28の動作を調整するための空気圧力P2としてアクチュエータ28に供給する。これらの空気圧力P1,P2に基づいてアクチュエータ28のロッド28aを動作して可変吸気弁タイミング機構30を作動させる。
【0038】
アクチュエータ28は例えば公知のPシリンダ(ポジショナリ付きシリンダ)であり、第一減圧レギュレータ34と電空変換器27から入力される圧力P1、P2に基づいてロッド28aの進退を制御する。アクチュエータ28のロッド28aの移動長さを変化させることで、可変吸気弁タイミング機構30の駆動を制御して吸気弁8の閉じるタイミングを吸入下死点から進める(進角)か、または遅らせる(遅角)させることで、圧縮比を下げて制御を行う。
吸気弁8の開弁タイミングと閉弁タイミングの間の時間は変わらないので開弁のタイミングが吸入下死点から進むと閉弁のタイミングも吸入上死点から同一時間進む。しかも、本発明ではエンジン1の出力に応じて開弁と閉弁のタイミングを変更することでノッキングを抑制して負荷上げ時間を短縮させるようにした。エンジン1の出力Aと回転速度nに基づいて制御部22内の第一マップ24と第二マップ25により吸気弁8の開閉タイミングを設定し、アクチュエータ28と可変吸気弁タイミング機構30によって吸気弁8の開弁と閉弁のタイミングを、ノッキングを抑制できるように調整している。
【0039】
可変吸気弁タイミング機構30の構成は従来公知のものであり、
図20乃至
図24に示すものと同様な構造を備えている。即ち、可変吸気弁タイミング機構30は例えばアクチュエータ28のロッド28aの移動長さによって扇形ギヤを介して回転角度範囲が設定されるリンクシャフトと偏心カムを備えたカム軸とが平行に配設されている。リンクシャフトには排気用スイングアームが接続され、リンクシャフトの偏心した位置に設けたタペット軸に吸気用スイングアームが接続されている。吸気用スイングアームにはプッシュロッドとロッカアームを介して吸気弁8が接続され、排気用スイングアームにはプッシュロッドとロッカアームを介して排気弁9が接続されている。
【0040】
リンクシャフトの回転に応じたタペット軸の回転角度によってカム軸と吸気用スイングアームとの距離が変化し、カム軸の偏心カムが当たり始めるタイミングが変化する。これによって閉弁タイミングを進角(または遅角)に変更できる。タペット軸からカム軸中心までの距離が離れるほど吸気弁8の閉弁タイミングが早くなる。タペット軸の回転角度は、アクチュエータ28のロッド28aの移動長さによって変更される。ロッド28aの移動長さは、アクチュエータ28に供給される制御用空気の圧力P1,P2によって任意に変更される。
吸気弁8の閉開タイミングである進角の大きさは、リンクシャフトのタペット軸に連結された吸気用スイングアームにカム軸の偏心カムが当たり始めるタイミングで決まる。
【0041】
なお、可変吸気弁タイミング機構30におけるタペット軸の回転装置は、アクチュエータ28に代えて、図示しないサーボモータを使用してもよい。この場合、制御部22の第二マップ25から発信された開閉タイミングの信号をサーボモータに入力させる。サーボモータは受けた信号に対応する量だけリンクシャフトを回転させてタペット軸を旋回させることでカム軸に対して接近離間させ、吸気弁8の開閉タイミングを変更することができる。なお、サーボモータを用いた場合、アクチュエータ28と空気圧縮機32〜圧力計38までの構成は不要である。また、電空変換器27に代えてコントローラでサーボモータを駆動させることになる。
【0042】
また、吸気管13にガス噴射を制御する燃料ガス供給弁15へのガス燃料の供給機構について説明する。
図1において、天然ガス等のガス燃料が貯蔵されたLNGガスタンク40からガス燃料がガス気化器41に供給され、更にガス圧力はガスレギュレータ42により必要なガス圧に減圧される。
この際のガス圧は燃料ガス圧力計43に表示され、ガスレギュレータ42のバルブ開度を変更することによって調整し、燃焼用のガス燃料として燃料ガス供給弁15から吸気管13内に供給される。吸気管13内ではガス燃料とエアクーラ16で冷却された過給の空気とが混合されて燃焼室6に供給される。負荷上げの際は、燃料ガス供給弁15の動作によりガス燃料の供給量を増加させる。
【0043】
しかも、制御部22で設定された開閉タイミングの第二電気信号は電空変換器27とは別に燃料ガス供給タイミング手段44を介して燃料ガス供給弁15に送信される。燃料ガス供給タイミング手段44は、燃料ガス供給弁15を開弁してガス燃料を吸気管13内に供給する開弁タイミングを吸気弁8の閉じるタイミングの進角に応じて進角させるように制御する。ガス圧を調整するガスレギュレータ42と燃料ガス供給弁15の開弁タイミングを進角させる燃料ガス供給タイミング手段44とは燃料ガス供給弁タイミング機構45に含まれる。
なお、燃料ガス供給タイミング手段44は制御部22の外部に設置されていてもよい。燃料ガス供給弁タイミング機構45は第二マップ25からの第二電気信号を受信して吸気弁8の閉じるタイミングの進角に応じて燃料ガス供給弁15の開弁タイミングを進角させることができればよい。
【0044】
次に制御部22内に記憶する第一マップ24と第二マップ25の作成方法について説明する。
図3はクランク軸2の回転速度とエンジン1の出力(負荷率)により、VIVT指令値(吸気弁閉じクランク角度,Intake Valve Closed timing,IVC)である吸気弁8の閉弁時のクランク角度を決定する第一マップ24の詳細を示す3次元マップである。
図3において、常用的(実用的)に運転される領域Bを破線で示している。これに対して、発電で行われる回転速度を一定にした場合の出力の変化に対するVIVT指令値の変化(進角)を矢印線Cで示し、舶用で行われる回転速度と出力(負荷率)が同時に変化する場合のVIVT指令値の変化(進角)を矢印線Dで示す。矢印線Dは舶用三乗特性を示している。舶用三乗特性は出力が回転速度の3乗に比例する舶用主機関の代表的な特性を示すものであり、機関の定格回転速度、定格出力によって決定する回転速度と出力の特性曲線である。そして、常用的な運転領域Bの領域内で舶用三乗特性線Dよりも出力(負荷率)が高い領域はトルクリッチ領域を示し、出力(負荷率)が低い領域はトルクプア領域を示す。
【0045】
第一マップ24は次の実験手順(1)〜(18)の行程に基づいて作成した。
実験には、実際に使用する同一機種のデュアルフューエルエンジン1を用いた。
(1)エンジン1を始動し、回転速度(回転数)nを400min
-1、出力(負荷)Aを10%、吸気弁8の閉弁タイミングを545deg(構造上、最も遅い閉弁タイミング)に設定する。
(2)そして、エンジン1の駆動時に発生したノッキングと呼ばれる異常燃焼とそのときの排気温度を計測する。
ノッキングは、各エンジンヘッド5に取付けた不図示のノックセンサにより発生を検出する。ノッキング現象発生時は,通常の燃焼波形に高周波の圧力変動が重なった波形となる。
【0046】
また、排気管14に取付けた温度センサによりノッキング測定時の排気温度を測定する。
(3)上記のノッキング測定時の排気温度の測定終了後、吸気弁8の閉弁タイミングを5deg減少させ、再度(2)の計測を行う。閉弁タイミングを500deg(構造上、最も早い閉弁タイミング)まで変更して計測を行う。
(4)上記(3)の計測が終了したら、出力Aを10%ずつ110%になるまで段階的に増加させて、再度(2)と(3)の計測を繰り返して行う。
【0047】
(5)上記(1)〜(4)の計測により、ノッキング強さが基準値以下であり、排気温度が500℃以下である場合を、ノッキングが抑制されてエンジン1が安全に運転可能であると判断する。
(6)上記(5)の計測結果から、X軸が出力A、Y軸が回転速度n、Z軸が開閉タイミングに設定された
図4の3次元グラフにおいて、安全に運転可能な計測点に●(黒丸)、安全ではない計測点に×をプロットする。これによって、出力Aと回転数nと閉弁タイミングとの関係におけるノッキング抑制範囲を選定できる。
(7)上記(1)〜(6)の計測工程を、回転速度nを100min
-1ずつ900min
-1まで上昇して行い、回転速度n毎の安全に運転できる範囲を計測する。
【0048】
(8)そして、上記(7)の計測結果を回転速度n、出力A、閉弁タイミングの3軸で表したグラフが
図4である。
図4で、直線で囲われた範囲はノッキングが抑制されてエンジン1が安全に運転可能な範囲である。
(9)次に上記(1)〜(8)の実験により計測した
図4に示す安全にエンジンを運転できる直線で囲った3次元領域の範囲内で、窒素酸化物(以下、NOxという)が基準値以下であり、熱効率が一番高い設定を探すことを目的に更に実験を行う。
エンジン回転速度nを400min
-1、出力Aを10%、吸気弁8の閉弁タイミングを545degに設定する。
【0049】
(10)次にNOxと熱効率を計測する。NOxは排気管14に取付けた排ガス分析器で計測を行う。熱効率は、燃料配管に取付けた燃料流量計から計測される燃料流量Lとトルクセンサ21の計測結果より計算される出力Aにより下記の(3)式で計算する。
熱効率η=360Lo/H/L (3)
但し、H:燃料ガスの低位発熱量(J/Nm
3)
Lo:現時点の出力
L:燃料流量
【0050】
(11)上記(10)の測定終了後、吸気弁8の閉弁タイミングを5degずつ減少させ、再度(10)の計測を行う。閉弁タイミングは505degまで変更して計測を行う(
図9参照)。
(12)上記(10)と(11)の計測が終了したら出力を10%ずつ110%まで段階的に増加させ、再び(10)及び(11)の計測を繰り返して行う。閉弁タイミングは
図4で示す安全に運転できる範囲内で変更する。
【0051】
(13)上記(9)〜(12)の計測を、回転速度nを100min
-1ずつ段階的に900min
-1まで上昇して行い、各回転速度毎の最も性能の良い計測点を決定する。
(14)そして、NOxが所定値以下であり、熱効率が一番高い、吸気弁8の閉弁タイミングを各回転速度nと出力A毎に設定する。この結果により、
図3に示す第一マップの原案が作成される。
【0052】
(15)さらに、任意の負荷上げパターンで回転速度nと出力Aを上昇させてノッキングを検出する。負荷上げパターンとは出力A(負荷率)と回転速度nの時間あたりの変化状態であり、舶用推進装置のプロペラ仕様(形状、回転数)によって変化する。
(16)上記(15)で検出されたノッキング強さが基準値以上であった計測点の閉弁タイミングを3deg減少させる。
(17)つぎに、ノッキング強さが基準値以下になるまで、(15)(16)の工程を繰り返し、ノッキングが抑制された閉弁タイミングを決定する。閉弁タイミングを減少させると熱効率は悪化する。NOx、ノッキング強さが基準値以下で熱効率が一番高い結果が得られた閉弁タイミングの設定を回転速度n、出力Aの設定値とする。
(18)上記(17)よりノッキングが抑制された閉弁タイミングを各回転速度n、出力Aでそれぞれ計測し、その結果により
図3に示す最終的な第一マップ24を作成した。
【0053】
図3には、回転速度と出力に応じたVIVT指令値が、3次元平面のグラフで示されており、図中上側がより閉弁タイミングが進角する方向である。3次元平面上で、破線で示された領域が実際の船舶推進装置の運転で使用される実用的な運転領域であり、良好な負荷上げパターンの1例を舶用三乗特性線Dで示す。実用的な運転領域における負荷上げでは、機関の出力が大きくなるほど閉弁タイミングの進角を大きくする制御を行う。
舶用三乗特性線Dで示した良好な負荷上げパターンの1例では、回転速度と出力の小さい図中右下の位置では進角は最少とされ、回転速度と出力が増すに従って進角を大きくする。進角を大きくする比率は一定ではないが、全体として出力が増すほど進角は大きくされる。なお、出力(負荷率)はトルクと回転速度の積で求められるため、出力軸のトルクが増すほど進角を大きくすると表現することもできる。
【0054】
次に、第二マップ25を下記の実験で作成した。
可変吸気弁タイミング機構30がアクチュエータ28によって回転制御されるとき、次の手順で第二マップ25を作成する。
(1)アクチュエータ28により閉弁タイミングを変更し、各閉弁タイミングに変更する際の圧力を計測する。
(2)電空変換器27の仕様より上記(1)の圧力を供給する為に必要な第二電気信号を調査する。
(3)上記(1)及び(2)の結果から、横軸に上記第一マップ24で選択した第一電気信号、縦軸に閉弁タイミング(第二電気信号)を示す第二マップ25を作成する。
【0055】
なお、上記の説明はアクチュエータ28を用いた場合であり、アクチュエータ28に代えてサーボモータによって可変吸気弁タイミング機構30を回転制御する場合には次のように行う。
(1)サーボモータに基づいて閉弁タイミングを変更し、各閉弁タイミングに変更する際の第二電気信号を計測する。
(2)上記(1)の結果により横軸に第一電気信号、縦軸に閉弁タイミング(第二電気信号)を示す第二マップ25を作成する。
第二マップ25は閉弁タイミング(第二電気信号)と第一電気信号との関係を表すマップである。
【0056】
図3に示す三次元マップにおいて、実線Cで示す発電用の特性線と舶用三乗特性線Dとで、出力によって最適なVIVT指令値が異なる。即ち、
図5に一例として示すように、出力が同一の場合でも回転速度が異なる場合には最適なVIVT指令値の吸気弁閉じクランク角度が異なる。
本実施形態において、VIVT指令値の変化に対応して、即ち、各種の吸気弁閉じクランク角度に対して、吸気弁8と排気弁9のバルブオーバーラップ時による未燃焼燃料ガスの排気管14への吹き抜けが少なくなるように燃料ガスを吸気管13に供給する燃料ガス供給弁15の開弁タイミングを設定する。そのために、先ず回転速度と出力に応じたVIVT指令値を設定する。厳密に言えば、空燃比や点火時期も熱効率やNOxを目安として最適な値に設定しておいた方が好ましいが、ここではエンジン1が安定して運転できているとしてこれらの条件は設定しない。
【0057】
燃料ガス供給弁15の開弁タイミングを設定する一例として、舶用三乗特性線Dにおける最適VIVT指令値に合わせたエンジン運転条件での燃料ガス供給タイミング手段44による燃料ガス供給弁15の開弁タイミングの決め方を以下に説明する。
まず、エンジンの出力(負荷率)を25%、50%、75%、100%とした各運転条件において、吸気弁8の開くタイミングを目安として燃料ガス供給弁15から燃料ガスを供給するが、吸気管13内に燃料ガスを供給することから、燃料ガスは瞬時に吸気弁8に到達しない。そのため、燃料ガス供給弁15から吸気弁8までの距離を考慮した燃料ガス供給弁15の開弁タイミングのクランク角度位置を想定する。そして、燃料ガス供給弁15の開弁タイミングにおけるクランク角度位置をその前後で5deg刻みに変更して、その時の過給機17のガスタービン出口の排ガス中の未燃焼ガスであるトータルハイドロカーボン濃度(THC濃度)を測定する。それぞれの運転条件においてTHC濃度の計測を繰り返して実施する。THC濃度は水素炎イオン化法(JIS B 7956)で測定するのが好ましい。
【0058】
それぞれの条件に応じて燃料ガス供給弁15の開弁タイミングを変更し、各VIVT指令値(吸気弁閉じクランク角度)を例えば40%、65%、85%、100%に設定して、各VIVT指令値における燃料ガス開弁タイミングと測定したTHC濃度との関係を示すと
図6のようなる。
図6に示すように、燃料ガス供給弁15の開弁タイミングは、バルブオーバーラップ時に未燃焼燃料ガスの吹き抜けが少なく、THC濃度が最低になるクランク角度を基準とする。一方、出力変化によって急激に燃料ガス供給弁15の開弁タイミングが変化すると前述した燃焼変動や回転速度変動に繋がる。このため、出力に応じた燃料ガス供給弁15の開弁タイミングの変化量が極力小さい傾きになるように、選定した基準から±5deg.C.Aの範囲内で最適な燃料ガス供給弁15の燃料ガス開弁タイミングとなるクランク角度を選定し、それぞれの条件で最適な燃料ガス供給弁15の開弁タイミングに対応するクランク角度を決定する。
【0059】
このようにして決定した、舶用三乗特性線Dの最適VIVT指令値における最適な燃料ガス供給弁15の開弁タイミングのクランク角度と、出力(負荷率)の関係を、
図7の「回転速度変化」の折れ線で示す。
同様に、
図3の発電用特性線Cで行われる回転速度一定とした出力における最適VIVT指令値における最適な燃料ガス供給弁15の開弁タイミングのクランク角度と、出力(負荷率)との関係を、
図7の「回転速度一定」の折れ線で示す。
図7に示すように、最適な燃料ガス供給弁15の開弁タイミングは、出力が同一であっても回転速度が変化する条件と回転速度一定の条件とでは異なった結果となる。
【0060】
しかしながら、舶用三乗特性線Dの最適VIVT指令値における最適な燃料ガス供給弁15の開弁タイミングのクランク角度と、発電用特性線C(回転速度一定)の最適VIVT指令値における最適な燃料ガス供給弁15の開弁タイミングのクランク角度とは、
図8に示すように、出力に代えて、VIVT指令値を横軸にとって整理すると、一致した一つの線図特性を呈する。すなわち、最適燃料ガス供給弁15の開弁タイミングは出力に依存するものではなく、VIVT指定値(吸気弁閉じクランク角度)に依存することが判る。
【0061】
図8から明らかなように、可変吸気弁タイミング機構30によって吸気弁8の閉弁時期を変更すると、吸気弁8の閉じるタイミングの進角が進むほど、燃料ガス供給弁15の供給開始タイミングの進角の度合いがより大きくなる。
そのため燃料ガス供給タイミング手段44により、各条件において決定した最適な燃料ガス供給弁15の開弁タイミングのクランク角度を、VIVT指令値を基準として設定することで、VIVT指令値による燃料ガス供給弁15の開弁タイミングの最適化を図ることができる。なお、
図8において、計測していないVIVT指令値や燃料ガス供給開始時期等については、測定点前後のデータを結ぶ近似線により決定すればよい。
【0062】
次に、燃料ガス供給弁15による燃料ガス供給終了のタイミング制御について
図9及び
図10により説明する。
図9は
図1に示すエンジン1の要部構成を示すものである。
図9において、制御部22には外部に目標回転速度指令部50が設置され、予め設定された目標回転速度が制御部22に入力される。制御部22のガス供給時間算出部51では回転速度センサ20の測定値により演算された実回転速度と目標回転速度との偏差に基づいて燃料ガス供給弁15の開弁期間を直接的にPID制御する。
ガス供給時間算出部51に接続されたガス供給弁制御部52では、燃料ガス供給弁15の開弁タイミングを起点として開弁すべき時間を演算して燃料ガス供給弁15に出力し、開弁すべき時間だけ燃料ガス供給弁15を開弁させるようにフィードバック制御する。
【0063】
燃料ガス供給弁15の閉弁タイミング制御は次のように行われる。即ち、
図10に示すように、制御部22では目標回転速度指令部50で設定された目標回転速度と実回転速度の偏差に基づいて、燃料ガス供給弁15の開弁期間を直接的にPID制御する。具体的には、目標回転速度と実回転速度の偏差に基づき、フィードバック制御により実回転速度が目標回転速度に追従するように各燃料ガス供給弁15が開弁している時間を制御する。
ガス供給弁制御部52では、燃料ガス供給弁15の開弁タイミングを起点として算出された開弁期間に基づいて各燃料ガス供給弁15の閉弁タイミングの制御を行う。制御部22は、供給する燃料ガス量をあらかじめ演算せずに実回転速度が目標回転速度に一致するように、燃料ガス供給弁15の開弁期間を直接的にPID制御している。
【0064】
後述する燃料ガスの供給圧力制御は、エンジン1の出力と回転速度のデータをパラメータとして設定した圧力ΔP値に、吸気管13内に設けた給気圧力計54により検出した給気圧力を加えた値と、燃料ガス圧力計43の値との偏差がなくなるように燃料ガスの圧力調整器55をフィードバック制御する。
【0065】
上述した結果を表示した可変吸気弁タイミング機構30の進角と燃料ガス供給タイミング手段44による燃料ガス供給弁15の供給開始及び終了のタイミングの関係を示すと
図11のようになる。
図11において、エンジン1のクランク角度と吸気弁8及び排気弁9のバルブリフトとの関係を示している。吸気弁8の開閉作動を示す曲線において、実線で示すのはVIVT(可変吸気バルブタイミング)指令値が0%の場合であり、一点鎖線で示すのは進角時(VIVT指令値が100%)の場合の開閉作動イメージを示している。そして、VIVT指令値が0%の場合の燃料ガス供給弁15の開弁期間に対して、進角時(VIVT指令値が100%)の燃料ガス供給弁15の開弁期間がより長くなる。
【0066】
また、吸気弁8の閉弁タイミングが進角するに従って燃料ガスの供給圧力を高くして燃料供給量を増大することが好ましい。そのため、
図9において、吸気管13内への燃料ガスの供給圧力は、吸気管13内に設けた給気圧力計54により検出した給気圧力に圧力ΔP値を加えた大きさに設定する。圧力ΔPは後述のように予め測定した複数のエンジン1の出力と回転速度のデータをパラメータとして設定する。その結果、燃料ガス供給弁15から供給する燃料ガスの供給圧力は、吸気弁8が閉じるタイミングの進角に伴って高くすることになる。
【0067】
燃料ガスの圧力ΔPの設定の仕方について説明する。
図12は出力と燃料ガス供給弁15の開弁期間と圧力ΔPとの関係を示す図である。エンジン1の運転条件を出力(負荷率)と回転速度をパラメータとして変化させて、各条件において圧力ΔPを変更し、各出力における圧力ΔPと燃料ガス供給弁15の開弁期間を得る。出力と回転速度に基づいて圧力ΔPを低く設定すると燃料ガス供給弁15の開弁期間は長くなり、開弁期間が長すぎると吸気弁8が開いている間に適正なガス燃料を供給できなくなる。逆に、圧力ΔPを高く設定すると燃料ガス供給弁15の開弁期間は短くなり、供給量の制御性が悪化してしまう。したがって、圧力ΔPはエンジン1の運転状態に対して悪影響を与えない圧力ΔPに設定する。
【0068】
回転速度をパラメータ化した際も同様の手順を繰り返して、圧力ΔPを決定する。
図12において、燃料ガス供給弁15に関し、圧力ΔPの上限を設定したことで開弁時間の下限値を設定し、圧力ΔPの下限を設定したことで開弁期間の上限値を設定する。これら開弁期間の上限値と下限値の範囲内を変更可能幅として圧力ΔPの設定値を適宜設定するものとし、好ましくは上限値と下限値の中央値を設定値とする。
なお、燃料ガスの供給圧力により混合気の分布は変化するため、燃焼状態にも注意を払う必要がある。
図12において、計測していない条件については計測点前後のデータを結ぶ近似線により決定すればよい。
【0069】
このようにして、出力(負荷率)と回転速度をパラメータとして、設定したΔPをプロットすると
図13のようになる。
図13に示す出力と回転速度と圧力ΔPをパラメータとする三次元マップにおいて、破線で示す範囲が常用的(実用的)な運転領域であり、実線が舶用三乗特性を示している。
なお、燃料ガス供給圧力は圧力ΔPにより決定されるため、給気圧力が変化した場合は燃料ガスの供給圧力も変化する。すなわち、燃料ガス供給弁15の上流と下流の差圧を設定していることを示し、燃料ガスの量は燃料ガス供給弁15の前後の差圧と開弁期間により定まるため、給気圧力が変化した場合であっても、ここで決定した燃料ガス供給圧力と燃料ガス供給弁15の開弁期間の関係に大きな影響はない。
図13から明らかなように、エンジン1の出力(負荷率)が大きくなれば、すなわち吸気弁8が閉じるタイミングの進角に伴って、圧力ΔPを含む燃料ガスの供給圧力も高くなる。
【0070】
次にエンジン1における給気圧力(空燃比)の決定の仕方について説明する。
上述した本実施形態によるVIVT指令値(吸気弁閉じクランク角度)の変化に対応して、吸気管13から吸気弁8に供給される給気圧力は、予め測定したエンジン1の出力と回転速度をパラメータとして設定した目標給気圧力によって、
図9に示す過給機17の例えばコンプレッサ側及びタービン側それぞれにバイパスラインを設けた流量調整弁を制御して、給気圧力を制御するようにした(例えば特願2016−027359号出願に示すもの参照)。なお、給気圧力の制御はこの制御方式に限定されない。従来公知の給気圧力制御方式でもよい。
【0071】
上述した給気圧力(空燃比)の決定方法について以下に説明する。
空燃比のベースとなる燃料の量は、上述した
図12、
図13に示す燃料ガスの供給圧力と燃料ガス供給弁15の開弁期間との関係で決定されるものであり、エンジン1の所定の出力(負荷率)と回転速度で好適な燃料の量が定まる。空燃比は空気量と燃料ガス量の比で決定される。そのため、給気圧力を変更することで、燃焼室6に供給する空気量を変化させる。すなわち、空燃比は給気圧力によって調整する。
空燃比の設定の仕方は、エンジン1の運転条件を出力(負荷率)と回転速度をパラメータとして変化させて、例えば出力(負荷率)を25%、50%、75%、100%などに設定し、各種の空燃比(給気圧力)における熱効率とNOxデータを測定して得る。そして、任意の出力及び回転速度において、空燃比を変更した場合におけるNOxのデータ例を
図14に示す。
【0072】
図14において、空燃比の変化に対応したNOxデータの測定値を「計測データ」として曲線で示す。計測データにおいて、空燃比を小さく(給気圧力を低く)調整することでNOxが増加することを認識できる。
ここで、NOxの値は用途により基準値が異なる。基準値は、例えば舶用では改正MARPOL条約附属書VI規則13に基づくIMO NOx規制に基づき、陸用は大気汚染防止法などにより示されるNOx排出量により上限値と下限値が規制される。
空燃比の下限値は上述したNOx排出量の法規制に基づく上限値により制限される。ただし、NOxデータが上限の規制値に達する前にノッキングなどの異常燃焼が起こる場合には、異常燃焼が起こる直前の空燃比を下限値に設定する。
他方、空燃比を大きくしていくとNOxは低下するものの、失火などによりエンジン1が安定運転できなくなる。そのため、安定運転を継続できる空燃比の上限を上限値に設定する。これらにより設定可能な空燃比の範囲が定まる。
【0073】
ここで、設定可能な空燃比の範囲を決定し、設定可能範囲の中間の空燃比を好適値として、その時の給気圧力を設定する。常用的に運用される範囲内の任意の出力と回転速度で同計測を繰り返す。言い換えると、各出力と回転速度の運転条件において、給気圧力(空燃比)を変更して目標となる性能を満足する好適な給気圧力(空燃比)を得る。
図15は出力と回転速度に対応して設定した吸気圧力をプロットした三次元マップである。図中、破線で示す領域が常用的(実用的)な運転領域のイメージであり、その範囲内に実線で示す舶用三乗特性が設定されている。なお、計測していない条件については、計測点前後のデータを結ぶ近似線により決定すればよい。
図15から明らかなように、エンジン1の出力が大きくなれば、すなわち吸気弁8が閉じるタイミングの進角に伴って、必要な給気圧力も高くなる。
以上述べたように、燃料ガス供給弁15の供給開始及び終了のタイミング制御と燃料ガスの供給圧力制御と給気圧力制御によって、空燃比制御がなされる。
【0074】
なお、吸気弁8が閉じるタイミングを進角した場合、同一給気圧力では空燃比は小さくなる。このため、
図16に示す出力と吸気圧力との関係において、吸気弁8の閉じタイミングが一定である場合と比較すると、吸気弁8が閉じるタイミングの進角に伴って、出力増加に伴う最適な給気圧力の増加割合(増加の勾配)が、大きくなる。
【0075】
次にVIVT指定値(吸気弁閉じタイミングのクランク角)の変化に対応して燃料の点火タイミングを変化させることが必要である。エンジン1の点火タイミングとは例えばマイクロパイロット油噴射弁11による点火用の燃料油噴射タイミングであり、この点火タイミングは予め測定したエンジン1の出力値と回転数とのデータをパラメータとして設定した
図17に示す点火タイミングの値から設定される。
【0076】
この点火タイミングの決定方法について説明する。
エンジン1の運転条件を出力(負荷率)と回転数をパラメータとして変化させて、例えば負荷率25%、50%、75%、100%等の各種の点火タイミングの熱効率、NOxデータを得る。任意の出力、回転速度において、点火タイミングを変更した時の熱効率とNOxのデータ例を示すと
図18のようになる。
図18に実線で示すように、点火タイミングを進角させていくとNOxは増加し、熱効率は向上する関係にある。そのため、熱効率とNOxとはトレードオフの関係にある。
上述したようにNOxは所定の基準値があるため、給気圧力と同様の基準となるNOxを満たす設定範囲内において、熱効率が最も高くなるように進角した点火タイミングを好適なタイミングとして設定する。
【0077】
ただし、NOxデータが所定の基準値に達する前にノッキング等の異常燃焼が始まる場合には、異常燃焼が始まる前の点火タイミングを好適な点火タイミングとする。マイクロパイロット油噴射弁11の点火タイミングについて常用的に運用される範囲内において任意の出力と回転速度で計測を繰り返す。言い換えると、各「出力(負荷率)と回転速度」の運転条件において、点火タイミングを変更して目標となる性能を満足する点火タイミングを得るようにした。常用的に運用される範囲内における任意の回転速度及び出力で同じ調整を繰り返すことで点火タイミングを決定した。なお、計測していない条件については、計測点前後のデータを結ぶ近似線により決定すればよい。
【0078】
図17から明らかなように、破線で示す常用的な運転領域の範囲内において舶用三乗特性のイメージを示す実線よりも出力が低い領域はトルクプア領域を示す。トルクプア領域においては、エンジン1の出力が大きくなれば、すなわち吸気弁8が閉じるタイミングの進角に伴って、エンジン1のマイクロパイロット油噴射弁11の点火タイミングも進角する。
【0079】
他方、実線で示す舶用三乗特性線よりも出力が高い領域はトルクリッチ領域を示す。トルクリッチ領域内では、点火タイミングは常用的な運転領域の破線上をピークとし、その点火タイミングがピーク値に対して最大で30〜50%の範囲で進角度合いが減じられ得る。ただし、トルクプア領域及びトルクリッチ領域内であれば、同一回転速度においてはVIVT指令値を進角していない場合よりも点火タイミングは進角した状態を維持できる。すなわち、VIVT指令値の吸気弁閉じクランク角の進角に伴って、点火タイミングも、舶用三乗特性を示す実線のライン上をピークとして進角される。トルクリッチ領域内で進角の度合いは減じられているものの、VIVT指令値を進角していない場合よりは、全体的にはエンジン1のマイクロパイロット油噴射弁11の燃料噴射タイミング(点火タイミング)も進角する。
【0080】
上述したように、本発明の実施形態によるエンジン1の制御方法及びエンジン1によれば、常用的な運転領域において、排出される未燃ガス燃料を削減できるため、熱効率の向上とともに、温室効果ガスの削減など環境に対しても優位性を得られる。
また、エンジン1は出力が高くなるほど、空燃比に対する運転可能範囲が狭くなるため、安定した運転状態の維持は、特に舶用三乗特性よりも出力が高いトルクリッチ領域の運転範囲拡大に対して効果を得られる。
また、エンジン1の出力軸の出力が増大した場合にエンジン1内の混合気の圧縮比を下げることができるため、負荷上げ時のノッキングを抑制すると共に負荷上げ時間の短縮もできる。
【0081】
なお、本発明によるエンジンは、上述した実施形態によるデュアルフューエルエンジン1に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能である。以下に、本発明の変形例等について説明するが、上述した実施形態で説明した部品や部材等と同一または同様なものについては同一の符号を用いて説明を省略する。
【0082】
本発明によるエンジンは、液体燃料を主な燃料とするディーゼルモードDとガスを主な燃料とするガスモードGの切換が可能なデュアルフューエルエンジン1に限定されることなく、ガスを燃料として使用するガス燃料エンジンにも適用できる。
しかも、舶用エンジンの負荷上げパターンに限定されることなく、車両用や非常用発電機などで活用できる負荷上げパターンにも適用できる。
【0083】
なお、上述した実施形態では、可変吸気弁タイミング機構30は開弁タイミング及び閉弁タイミングの両方を変更し、吸気弁8が開いている時間は変更しなかったが、吸気弁8の閉弁タイミングと開弁タイミングのいずれか一方または両方を選択して変更制御してもよい。