(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
「ポリエチレン組成物」という表現は、代替例として、単一エチレン重合体およびエチレン重合体組成物、特に好ましくは分子量が異なる2種以上のエチレン重合体成分で構成された組成物の両方を含むことであり、また、このような組成物は関連分野で「バイモーダル(bimodal)」または「マルチモーダル(multimodal)」重合体と指称される。
【0009】
一般的に、本発明のポリエチレン組成物は1種以上のエチレン共重合体からなるか、またはこれを含む。
【0010】
上記の定義された特徴1)〜6)を含む本明細書で定義するすべての特徴は前記エチレン重合体またはエチレン重合体組成物を指すものである。当該技術分野において通常適用される添加剤のような他の成分を添加することにより、前記特徴のうち、1つ以上を変形させることができる。
【0011】
MIF/MIP比は分子量分布の流動学的測定値を提供する。
【0012】
分子量分布の別の測定値はM
w/M
n比によって提供され、ここでM
wは重量平均分子量であり、M
nは数平均分子量であり、両方とも実施例に説明されているようにGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定される。
【0013】
本発明のポリエチレン組成物のM
w/M
n値は好ましくは15〜30、より好ましくは15〜25の範囲である。
【0014】
M
w値は、好ましくは150,000g/mol〜450,000g/mol、特に150,000g/mol〜350,000g/molである。
【0015】
M
z値(M
zがGPCに従って測定された、z−平均分子量である)は、好ましくは1,000,000g/mol以上、特に1,000,000g/mol〜2,500,000g/molである。
【0016】
LCBI値の好ましい範囲は以下の通りである。
−0.55〜0.85;または
−0.60〜0.85;または
−0.55〜0.70;または
−0.60〜0.70。
【0017】
さらに、本発明のポリエチレン組成物は好ましくは以下の付追加の特徴のうち少なくとも1つを有する。
−組成物の総重量を基準にして1.5重量%以下、特に0.1〜1.5重量%の共単量体含量;
−0.5〜5、特に0.5〜3のHMWcopo指数。
【0018】
HMWcopo指数は以下の式にしたがって測定される:
HMWcopo=(η
0.02×t
maxDSC)/(10^5)
前記式において、η
0.02は、0.02rad/sの角振動数印加による動的振動剪断モード(dynamic oscillatory shear mode)で平行板(またはいわゆるプレート−プレート)レオメータで190℃の温度で測定された溶融物の複素粘度(Pa.s)であり;t
maxDSCは示差走査熱量計(differential scanning calorimetry,DSC)装置において等温モードで測定した静止状態下で124℃の温度で結晶化の熱流の最大値(mW)に達するのに必要な時間(分)(結晶化のハーフタイム(t1/2)に該当する最大結晶化速度が達成される時間)であり;LCBIは、1,000,000g/molのモル重量でGPC−MALLSによって測定した測定平均二乗回転半径R
g対、同一の分子量を有する線形PEに対する平均二乗回転半径の比である。
【0019】
エチレン共重合体に存在する共単量体または共単量体らは一般的に式CH
2=CHRを有するオレフィンから選択され、ここでRは1〜10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルラジカルである。
【0020】
具体例としては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1およびデセン−1である。特に好ましい共単量体はヘキセン−1である。
【0021】
特に、好ましい実施形態において、本発明の組成物は下記のA)およびB)を含む:
A) 密度が0.960g/cm
3以上であり、ISO 1133にしたがって2.16kgの荷重下で190℃で測定した溶融流れ指数MIEが40g/10分以上、好ましくは50g/10分以上である30〜70重量%、好ましくは40〜60重量%のエチレン単独重合体または共重合体(単独重合体が好ましい);
B) A)のMIE値より低いMIE値、好ましくは0.5g/10分未満のMIE値を有する30〜70重量%、好ましくは40〜60重量%のエチレン共重合体。
【0022】
上記百分率の量は、A)+B)の総重量に対して与えられる。
【0023】
成分A)の具体的なMIE範囲は、
−40〜150g/10分;または
−50〜150g/10分;または
−40〜100g/10分;または
−50〜100g/10分である。
【0024】
前述のように、本発明のポリエチレン組成物はブロー成形品を製造するのに有利に使用することができる。
【0025】
実際に、好ましくは、以下の特性らを特徴とする。
−FNCT 4MPa/80℃で測定した3時間超過の環境応力亀裂抵抗;
−170%超過のスウェル比;
−3kJ/m
2以上のシャルピーaCN衝撃(T=−30℃)
−700μm超過のゲル直径を有するゲルが実質的に存在しない。
【0026】
試験方法の詳細は実施例に記載されている。
【0027】
ブロー成形工程は一般的に最初に180〜250℃範囲の温度でポリエチレン組成物を押出機で可塑化させた後、それをダイを通してブロー金型に押出し、そこで冷却することによって行われる。
【0028】
用いられる重合工程および触媒の類型において基本的にいかなる必須的制限も存在しないことが知られていない一方、本発明のポリエチレン組成物はチーグラー・ナッタ触媒の存在下で気相重合工程によって製造され得ることが確認された。
【0029】
チーグラー・ナッタ触媒は元素周期表の1、2または13族の有機金属化合物と元素周期表の4〜10族の遷移金属化合物(新表記法)との反応生成物を含む。特に遷移金属化合物はTi、V、Zr、CrおよびHfの化合物から選択することができ、好ましくはMgCl
2上に担持される。
【0030】
特に好ましい触媒は元素周期表の1、2または13族の前記有機金属化合物とMgCl
2上に担持されたTi化合物を含む固体触媒成分との反応生成物を含む。
【0031】
好ましい有機金属化合物は有機Al化合物である。
【0032】
したがって、好ましい実施形態において、本発明のポリエチレン組成物はチーグラー・ナッタ重合触媒、より好ましくはMgCl
2上に担持されたチーグラー・ナッタ触媒、さらにより好ましくは下記a)〜c)の反応生成物を含むチーグラー・ナッタ触媒を用いることによって得られる:
a) MgCl
2上に担持されたTi化合物および電子供与体化合物EDを含む固体触媒成分;
b) 有機Al化合物;および選択的に
c) 外部電子供与体化合物ED
ext。
【0033】
好ましくは成分a)でED/Tiのモル比は1.5〜3.5の範囲であり、Mg/Tiのモル比は5.5超過、特に6〜80である。
【0034】
適切なチタニウム化合物はテトラハライドまたは式TiX
n(OR
1)
4−nの化合物であり、式中、0≦n≦3であり、Xはハロゲン、好ましくは塩素であり、R
1はC
1−C
10炭化水素基である。四塩化チタニウムが好ましい化合物である。
【0035】
ED化合物は一般的にアルコール、ケトン、アミン、アミド、ニトリル、アルコキシシラン、脂肪族エーテル、および脂肪族カルボン酸のエステルから選択される。
【0036】
好ましくはED化合物はアミド、エステルおよびアルコキシシランから選択される。
【0037】
エステルを用いることで優れた結果が得られるため、エステルがED化合物として特に好ましい。エステルの具体的な例は、C1−C20脂肪族カルボン酸のアルキルエステル、特に脂肪族モノカルボン酸のC1−C8アルキルエステル、例えばエチルアセテート、メチルホルミエート、エチルホルミエート、メチルアセテート、プロピルアセテート、i−プロピルアセテート、n−ブチルアセテート、i−ブチルアセテートである。さらに、脂肪族エーテル、特にC2−C20脂肪族エーテル、例えばテトラヒドロフラン(THF)またはジオキサンが好ましい。
【0038】
前記固体触媒成分において、追加の担体が最小量で用いられるとしてもMgCl
2が基本的な担持体である。MgCl
2はそのまま用いられるか、ハロゲン化化合物との反応によってMgCl
2に変換され得る前駆体として用いられるMg化合物から得られる。特許文献からチーグラー・ナッタ触媒用担持体として広く知られている活性形MgCl
2の使用が特に好ましい。米国特許第4,298,718号および米国特許第4,495,338号はチーグラー・ナッタ触媒作用におけるこれらの化合物の使用を最初に記述したものである。これらの特許からオレフィン重合用触媒成分に担持体または共担持体として用いられる活性形マグネシウムジハライドはX線スペクトルによって特徴付けられ、このスペクトルにおいて非活性ハライドのスペクトルのASTMカードの参照において表される最も強い回折線は強度が減少しながら広がっていることが知られている。活性形の好ましいマグネシウムジハライドのX線スペクトルにおいて、前記最も強い線は強度が減少して最大強度が最も強い線のものに比べてより低い角度に移動(displace)するハローによって代替される。
【0039】
本発明のポリエチレン組成物の製造に特に適した触媒は固体触媒成分a)が最初に選択的に不活性媒質の存在下でチタニウム化合物をMgCl
2または前駆体Mg化合物と接触させ、MgCl
2上に担持されたチタニウム化合物を含有する中間生成物a′)を製造した後、中間生成物a′)をED化合物と接触させることによって得られる触媒であり、このED化合物は選択的に不活性媒質の存在下で反応混合物に単独で添加されるか、ED化合物が主成分である他の化合物との混合物として添加される。
【0040】
「主成分」という用語について、本発明者は前記ED化合物が接触混合物を取り扱うときに用いられた不活性溶媒または希釈剤が排除された他の可能な混合物に対してモル量の観点で主成分となることを意図する。その後、ED処理された生成物は最終生成物を回収するために適切な溶媒で洗浄することができる。必要に応じ、好ましいED化合物を用いた処理が1回以上繰り返され得る。
【0041】
前述のように、MgCl
2の前駆体は出発必須Mg化合物として用いられ得る。これは例えば、式MgR′
2のMg化合物から選択することができ、ここで、R′基は独立的に、選択的に置換されたC1−C20炭化水素基、OR基、OCOR基、塩素であり得、ここでRは選択的に置換されたC1−C20炭化水素基であり、ただし、R′基は同時に塩素ではない。またMgCl
2と適切なルイス塩基との間のルイス付加物が前駆体として適している。特に好ましいクラスはMgCl
2(R″OH)
m付加物によって構成され、ここでR″基はC1−C20炭化水素基、好ましくはC1−C10アルキル基であり、mは0.1〜6、好ましくは0.5〜3、より好ましくは0.5〜2である。このような類型の付加物は一般的に付加物と非混和性である不活性炭化水素の存在下でアルコールとMgCl
2とを混合し、付加物の溶融点(100〜130℃)にて攪拌条件下で操作することで得られる。次いで、エマルジョンが急速にクエンチングされ、それによって付加物が球状粒子の形態で固化されるようにする。これらの球状付加物を製造する代表的な方法は、例えば米国特許第4,469,648号、米国特許第4,399,054号および国際公開公報WO98/44009号に報告されている。球状化に使用可能な別の方法としては例えば米国特許第5,100,849号および第4,829,034号に記述された噴霧冷却法が挙げられる。
【0042】
MgCl
2・(EtOH)
m付加物が特に興味深く、ここでmは0.15〜1.7であり、これはより高いアルコール含量を有する付加物を、アルコール含量が上記の値に減少するまで50〜150℃の間に含まれる温度で窒素流動中で行われる熱脱アルコール化工程を受けさせることで得られる。このような類型の工程はEP395083に記述されている。
【0043】
また、脱アルコール化は付加物をアルコール基と反応可能な化合物と接触させることで化学的に行うことができる。
【0044】
一般的にこれらの脱アルコール化された付加物はまた半径0.1μm以下の孔による多孔性(水銀法によって測定)が0.15〜2.5cm
3/g、好ましくは0.25〜1.5cm
3/gの範囲であることを特徴とする。
【0045】
これらの付加物は好ましくは四塩化チタニウムである上述のTiX
n(OR
1)
4−n化合物(またはその混合物)と反応することとなる。Ti化合物との反応は付加物をTiCl
4(一般的に冷却された状態)に懸濁することで行うことができる。混合物は80〜130℃の範囲の温度まで加熱され、この温度で0.5〜2時間保持される。チタニウム化合物を用いた処理は1回以上行うことができる。好ましくは、2回以上繰り返される。これはまた前述のような電子供与体化合物の存在下で行われてもよい。工程の終了時、固体は通常の方法(例えば、液体の沈降および除去、濾過、遠心分離)を通じて懸濁液の分離によって回収され、溶媒を用いて洗浄され得る。洗浄は一般的に不活性炭化水素液体で行うが、ハロゲン化炭化水素等のようなより極性の溶媒(例えば、より高い誘電率を有する)を用いることも可能である。
【0046】
次いで、上述のように、中間生成物は有効量の供与体を固体上に固定できる条件下でED化合物と接触させる。この方法の高い汎用性によって、用いられる供与体の量は広く変わり得る。一例として、供与体は中間生成物でTi含量に対して0.5〜20、好ましくは1〜10の範囲のモル比で用いられ得る。厳格に要求されるものではないが、接触は一般的に液体炭化水素のような液体媒質で行われる。接触が行われる温度は試薬の性質によって変わり得る。一般的に、温度は−10〜150℃、好ましくは0〜120℃の範囲に含まれる。任意の特定試薬の分解または劣化を引き起こす温度は、たとえこの温度が一般的に適切な範囲内に含まれるとしても、回避すべきであるのが一般的である。また、処理時間は試薬の性質、温度、濃度などのような他の条件によって変わり得る。一般的に、この接触ステップは10分〜10時間、より頻繁には0.5〜5時間持続できる。必要に応じ、最終供与体の含量をさらに増加させるために、このステップが1回以上繰り返されてもよい。このステップの終了時、固体は通常の方法(例えば、液体の沈降および除去、濾過、遠心分離)を通じて懸濁液の分離によって回収され、溶媒を用いて洗浄され得る。洗浄は一般的に不活性炭化水素液体で行うが、ハロゲン化炭化水素または含酸炭化水素等のようなより極性の溶媒(例えば、より高い誘電率を有する)を用いることも可能である。
【0047】
前述のように、前記固体触媒成分はこれを公知の方法によって元素周期表の1、2または13族の有機金属化合物、特にAl−アルキル化合物と反応させることによって、オレフィン重合用触媒に変換される。
【0048】
アルキル−Al化合物は好ましくは例えばトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム化合物中から選択される。アルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムハイドライドまたはアルキルアルミニウムセスキクロリド、例えばAlEt
2ClおよびA1
2Et
3Cl
3を選択的に前記トリアルキルアルミニウム化合物との混合物において用いることも可能である。
【0049】
前記チーグラー・ナッタ触媒の製造に選択的に用いられる外部電子供与体化合物ED
extは、固体触媒成分a)で用いられるEDと同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、エーテル、エステル、アミン、ケトン、ニトリル、シランおよびこれらの混合物からなる群より選択される。特に有利には、C2−C20脂肪族エーテル、特に環状エーテル、好ましくは炭素数3〜5の環状エーテル、例えばテトラヒドロフランおよびジオキサンから選択できる。
【0050】
触媒は公知の技術にしたがって少量のポリオレフィン、好ましくはポリプロピレンまたはポリエチレンを製造することによって予備重合することができる。予備重合は電子供与体化合物(ED)を添加する前に行われ得るため、中間生成物a′)を予備重合させることによって行われ得る。代替的に、固体触媒成分a)を予備重合させることが可能である。
【0051】
製造される予備重合体の量は中間生成物a′)または成分a)1g当たり最大500gであり得る。好ましくは中間生成物a′)1g当たり0.5〜20gである。
【0052】
予備重合は上述のように外部電子供与体化合物と組み合わせて使用し得る有機アルミニウム化合物のような適切な助触媒を使用して行われる。
【0053】
これは液相または気相で0〜80℃、好ましくは5〜70℃の温度で行うことができる。
【0054】
上記の中間生成物a′)が上述のように予備重合を行う触媒が特に好ましい。
【0055】
前述の重合触媒を使用することによって本発明のポリエチレン組成物は以下のステップを任意の相互順序で含む方法で製造され得ることが明らかになった:
a) 水素の存在下で気相反応器においてエチレンを選択的に1種以上の共単量体とともに重合するステップ;
b) ステップa)より少ない量の水素の存在下で、別の気相反応器においてエチレンを1種以上の共単量体と共重合するステップ;
ここで、前記気相反応器のうち、少なくとも1つにおいて、成長する重合体粒子が高速流動化または輸送条件下で、第1重合ゾーン(上昇管(riser))を通って上方に流れ、前記上昇管を離れた後、第2重合ゾーン(下降管(downcomer))に入り、成長する重合体粒子が前記第2重合ゾーンを通って重力の作用下で下方に流れ、前記下降管を離れた後、上昇管内に再導入されることによって前記2つの重合ゾーンの間に重合体の循環を確立する。
【0056】
第1重合ゾーン(上昇管)において、1つ以上のオレフィン(エチレンおよび共単量体)を含むガス混合物を重合体粒子の輸送速度よりも速い速度で供給することによって、高速流動化条件が確立される。前記反応ガス混合物の速度は、好ましくは0.5〜15m/s、より好ましくは0.8〜5m/sである。用語「輸送速度」及び「高速流動化条件」は、当業界によく知られている。これらの用語の定義については、例えば、「D.Geldart,Gas Fluidization Technology,page 155 et seq.,J.Wiley&Sons Ltd.,1986」を参照する。
【0057】
第2重合ゾーン(下降管)において、重合体粒子は、高密度化形態で重力の作用下で流れ、その結果、固体の密度が高い値(反応器の体積当たりの重合体の質量)に達し、これは重合体のバルク密度に近接する。
【0058】
言い換えれば、重合体がプラグ流れ(充填流れモード)で下降管を通って垂直下向して流れ、その結果、重合体粒子などの間に少量のガスのみが飛沫同伴(entrain)される。
【0059】
このような方法により、ステップb)から得られるエチレン共重合体より分子量が低いエチレン重合体をステップa)から得ることができる。
【0060】
好ましくは、比較的低分子量のエチレン共重合体を製造するためのエチレンの共重合(ステップa)は、比較的高分子量のエチレン共重合体を製造するためのエチレンの共重合(ステップb)の上流で行われる。この目標達成のために、ステップa)からエチレン、水素、共単量体および不活性ガスを含むガス混合物を第1気相反応器、好ましくは気相流動床反応器に供給する。重合は前述のチーグラー・ナッタ触媒の存在下で行われる。
【0061】
水素の供給量は特定の触媒の使用可否によって変化し、いかなる場合でもステップa)で得られたエチレン重合体の溶融流れ指数MIEは40g/10分以上であることが適している。上記範囲のMIEを得るために、ステップa)で水素/エチレンのモル比は直接法で1〜4であり、エチレン単量体の量は重合反応器に存在するガスの総体積を基準にして2〜20体積%、好ましくは5〜15体積%である。供給混合物の残りの部分は、存在する場合、不活性ガスおよび1種以上の共単量体で構成される。重合反応によって発生した熱を消散させるのに必要な不活性ガスは窒素または飽和炭化水素から便利に選択され、最も好ましいものはプロパンである。
【0062】
ステップa)において、反応器内の操作温度は50〜120℃の範囲から選択され、好ましくは65〜100℃の範囲から選択され、操作圧力は0.5〜10MPa、好ましくは2.0〜3.5MPaである。
【0063】
好ましい実施形態において、ステップa)で得られたエチレン重合体は全方法、すなわち直列連結された第1および第2反応器で生成されたエチレン重合体の総重量の30〜70%を占める。
【0064】
次いで、ステップa)から出たエチレン重合体と同伴ガスは第1重合反応器から出たガス混合物がステップb)の反応器(第2気相重合反応器)に導入されることを防止するために固体/ガス分離ステップが行われる。前記ガス混合物は第1重合反応器に再循環され、分離されたエチレン重合体はステップb)の反応器に供給される。第2反応器に重合体を導入する適切な供給点は固体濃度が特に低い下降管と上昇管との連結部位に位置するため、流動条件に悪影響を与えない。
【0065】
ステップb)の操作温度は65〜95℃の範囲であり、圧力は1.5〜4.0MPaの範囲である。第2気相反応器はエチレンと1種以上の共単量体とを共重合して相対的に高分子量のエチレン共重合体を生成することを目的とする。さらに、最終エチレン重合体の分子量分布を広げるために上昇管と下降管内で単量体および水素濃度の異なる条件を確立することによってステップb)の反応器を便利に操作することができる。
【0066】
このような目的のために、ステップb)で重合体粒子を同伴し、かつ上昇管から出たガス混合物が下降管に進入することを部分的にまたは全体的に防止するので、2つの異なるガス組成ゾーンを得る。これは下降管の適切な地点、好ましくはその上部に位置するラインを通じて下降管の内部にガスおよび/または液体混合物を供給することにより達成できる。前記ガス及び/または液体混合物は、上昇管内にあるガス混合物とは異なる適切な組成を有するべきである。前記ガス及び/または液体混合物は、重合体粒子の流れに対して向流のガスの上向き流れが、特にその上部で発生し、上昇管から来る重合体粒子と同伴されるガス混合物に対するバリアとして作用するように調整することができる。特に、水素含有量が低い混合物を供給して下降管内の高分子量重合体画分を生成することが有利である。ステップb)の下降管に1種以上の共単量体を選択的にエチレン、プロパンまたは他の不活性ガスとともに供給してもよい。
【0067】
ステップb)の下降管における水素/エチレンのモル比は0.005〜0.2の範囲であり、前記下降管内に存在するガスの総体積を基準にしたとき、エチレン濃度は0.5〜15体積%、好ましくは0.5〜10体積%であり、共単量体濃度は0.05〜1.5体積%である。残りはプロパンまたは類似の不活性ガスである。下降管内に存在する水素のモル濃度が極めて低いため、本発明の方法を行うことにより相対的に多量の共単量体を高分子量のポリエチレン画分に結合させることが可能になる。
【0068】
下降管から出た重合体粒子はステップb)の上昇管に再導入される。
【0069】
重合体粒子が引き続き反応し、共単量体はそれ以上上昇管に供給されないので、前記共単量体の濃度は前記上昇管に存在するガスの総体積を基準として0.05〜1.2体積%にまで低下する。実際には、最終的なポリエチレンの密度が所望の値になるように共単量体の含有量を調整する。ステップb)の上昇管において、水素/エチレンのモル比は0.01〜0.5の範囲であり、エチレン濃度は上昇管に存在するガスの総体積を基準にして5〜20体積%の範囲である。残りはプロパンまたはそれ以外の不活性ガスである。
【0070】
上述の重合工程に対するさらなる詳細はWO2005/019280で提供される。
【実施例】
【0071】
本明細書において提供されるような様々な実施形態、組成物および方法の実施及び利点は、以下の実施例で説明する。これら実施例は、単に例示的なものに過ぎず、いかなる形においても付属する請求の範囲を限定することを意図しない。
【0072】
以下の分析方法は、重合体組成物を特性化するのに使用される。
【0073】
密度
23℃でISO 1183−1にしたがって測定した。
【0074】
複合剪断粘度η0.02(eta(0.02))
下記のように0.02rad/sの角振動数および190℃で測定した。
検体を200℃および200バール下で4分間1mm厚のプレートに溶融圧縮した。直径25mmのディスク標本がスタンピングされ、190℃で予熱したレオメータに挿入した。市販されている任意の回転型レオメータを用いて測定を行うことができる。ここでプレート−プレートジオメトリが備えられたAnton Paar MCR 300を用いた。いわゆる振動数掃引(frequency−sweep)を5%の一定する歪み振幅下でT=190℃で行い(測定温度で検体を4分間アニーリングした後)、628〜0.02rad/sの励起振動数ωの範囲で物質の応力反応の測定および分析を行った。標準化された基本ソフトウェアを用いて流動学的特性、すなわち貯蔵弾性率G′、損失弾性率G″、位相遅れδ(=arctan(G″/G′))および複素粘度η*を、適用された振動数の関数として計算し、すなわち、η*(ω)=[G′(ω)
2+G″(ω)
2]
1/2/ωである。0.02rad/sの適用された振動数ωでの後者の値はη
0.02である。
【0075】
HMWcopo指数
重合体の結晶化ポテンシャルおよび加工性ポテンシャルを定量化するためにHMWcopo(高分子量共重合体)指数が使用され、以下の式によって定義される:
HMWcopo=(η
0.02×t
maxDSC)/(10^5)
【0076】
この指数は重合体の容易な加工(低い溶融粘度)ポテンシャルと急速結晶化ポテンシャルが増加するにつれて減少する。これはまた上述のように測定された0.02rad/sの振動数で溶融複合剪断粘度(η
0.02)と関連のある高分子量画分の量と、静止結晶化(quiescent crystallization)に関する最大熱流時間(t
maxDSC)によって定量化される、結晶化を遅延させる共単量体の導入量に対する説明であり、定量法である。
【0077】
t
maxDSCは示差走査熱量計(TA Instruments Q2000)装置を使用して124℃の一定温度で等温条件下で測定される。サンプル5〜6mgを秤量してアルミニウムDSCパン(pans)に移す。熱履歴を除去するためにサンプルを20K/分で最大200℃まで加熱し、また20K/分で試験温度まで冷却させる。冷却直後、等温試験を直ちに開始して結晶化が起こるまでの時間を記録する。結晶化熱流最大(ピーク)、t
maxDSCまでの時間間隔を供給者ソフトウェア(TA Instruments)を使用して測定する。測定を3回繰り返した後、平均値(分単位)を計算する。120分以上これらの条件下で結晶化が観察されなければ、t
maxDSC=120分の値をHMWcopo指数のさらなる計算に使用する。
【0078】
溶融粘度η
0.02値にt
maxDSC値を掛けて算出された値を因数100000(10^5)で標準化する。
【0079】
分子量分布の測定
モル質量分布およびそれに由来する平均Mn、Mw、MzおよびMw/Mnの測定は、2003年発行のISO 16014−1、−2、−4に記載された方法を使用して高温ゲル浸透クロマトグラフィーにより実行した。言及されたISO標準による説明は下記の通りである:溶媒1、2、4−卜リクロロベンゼン(TCB)、装置および溶液の温度135℃および濃度検出器としてTCBとともに使用可能なPolymerChar(Valencia, Paterna 46980, Spain)IR−4赤外線検出器、直列で連結された以下の予備カラムSHODEX UT−Gおよび分離カラムSHODEX UT 806 M(3x)およびSHODEX UT 807(Showa Denko Europe GmbH, Konrad−Zuse−Platz 4,81829 Muenchen, Germany)が備えられたウォーターズアライアンス(WATERS Alliance)2000を使用した。
【0080】
溶媒を窒素下で真空蒸溜して2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.025重量%を使用して安定化した。使用された流速は1ml/分であり、注入量は500μlあり、重合体濃度は0.01%<濃度<0.05%(w/w)の範囲であった。分子量の較正は、Polymer Laboratories(現在Agilent Technologies, Herrenberger Str. 130, 71034 Boeblingen, Germany)の単分散ポリスチレン(PS)の標準を580g/mol〜11600000g/molの範囲で使用し、付加的にヘキサデカンとともに使用して確立された。
【0081】
次に較正曲線を汎用較正(Universal Calibration)方法(Benoit H., Rempp P. and Grubisic Z., & in J. Polymer Sci., Phys. Ed., 5, 753(1967))でポリエチレン(PE)に適合させた。したがって、使用されたマルク−ホウインク(Mark−Houwink)パラメータはPSの場合、k
PS=0.000121dl/g、α
PS=0.706であり、PEの場合、k
PE=0.000406dl/g、α
PE=0.725であり、135℃でTCBにおいて有効であった。データの記録、較正および計算はそれぞれNTGPC_Control_V6.02.03およびNTGPC_V6.4.24(hs GmbH、Hauptstrasse36、D−55437 Ober−Hilbersheim、Germany)を使用して実行した。
【0082】
溶融流れ指数
特定の荷重下で190℃でISO 1133にしたがって測定した。
【0083】
長鎖分岐指数(LCBI)
LCB指数は10
6g/molの分子量に対して測定された分岐因子g′に相応する。高いMwで長鎖分岐を測定できるようにする分岐因子g′を多角度レーザー光散乱法(MALLS)と結合されたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した。GPCから溶出したそれぞれの画分に対する回転半径(前記記載のとおりであるが、0.6ml/分の流速および30μm粒子で充填されたカラムを使用)はMALLS(検出器Wyatt Dawn EOS, Wyatt Technology, カリフォルニア、サンタバーバラ)を使用して様々な角度から光散乱を分析することによって測定する。波長658nmの120mWのレーザー光源を使用した。比屈折率(specific index of refraction)が0.104ml/gで得られた。データ評価はWyatt ASTRA 4.7.3およびCORONA 1.4ソフトウェアで実行した。LCB指数は下記のように測定する。
【0084】
パラメータg′は同一の分子量を有する線形重合体の測定平均二乗回転半径に対する測定平均二乗回転半径の比である。線形分子は1のg′を示すが、LCBの存在下では1未満の値を示す。分子量Mの関数としてのg′の値は、下記の式から計算した:
g′(M)=<Rg
2>
サンプル、M/<Rg
2>
線形参照、M
ここで、<Rg
2>、Mは分子量Mの画分に対する平均二乗根回転半径である。
【0085】
GPCから溶出されたそれぞれの画分に対する回転半径(上述のとおりであるが、0.6ml/分の流速および30μm粒子で充填されたカラムを使用)は様々な角度から光散乱を分析することによって測定される。したがって、このようなMALLS構成から分子量Mおよび<Rg
2>
サンプル、Mを測定し、測定されたM=10
6g/molからg′を定義することが可能である。<Rg
2>
線形参照、Mは溶液中の線形重合体に対する回転半径と分子量との間の確立された関係によって計算され(Zimm and Stockmayer WH 1949)、記載された同一の装置および方法論を使用して線形PEの参照を測定することによって確認される。
【0086】
同一のプロトコルが以下の文献に記載されている。
Zimm BH, Stockmayer WH (1949) The dimensions of chain molecules containing branches and rings. J Chem Phys 17
Rubinstein M., Colby RH. (2003), Polymer Physics, Oxford University Press
【0087】
共単量体含量
共単量体含有量はBrukerのFT−IR分光光度計Tensor27を使用してASTM D 6248 98にしたがってIRで測定して共単量体としてのブテンまたはヘキセンそれぞれに対してPE内のエチル−またはブチル−測鎖を測定するためのケモメトリックモデルを使用して較正する。結果は重合工程のマスバランス(mass−balance)から由来した予測された共単量体含有量と比較して一致することが確認された。
【0088】
スウェル比
研究対象重合体のスウェル比は市販の30/2/2/20ダイ(全長30mm、有効長さ2mm、半径2mm、L/D=2/2、入口角20°)と押出ストランドの厚さを測定する光学装置(Gottfert社のレーザーダイオード)を備えた毛細管レオメータであるGottfert Rheotester2000およびRheograph25を用いて温度190℃で測定する。サンプルを毛細管バレル内で温度190℃で6分間溶解し、1440s
−1のダイで得られた剪断速度に対応するピストン速度で押出する。
【0089】
ピストンがダイ入口から96mmの位置に到逹した瞬間に、押出物をダイ出口から150mmの距離で(Gottfertの自動切断装置により)切断する。押出物の半径を時間の関数としてダイ出口から78mm離れた位置からレーザーダイオードで測定する。最大値はD
extrudateに対応する。スウェル比を下記の式により決定する。
SR=(D
extrudate−D
die)100%/D
die
【0090】
上記式でD
dieはレーザーダイオードで測定したダイ出口における対応半径である。
【0091】
ノッチ引張衝撃試験AZK
引張衝撃強度を方法Aによって類型1の二重ノッチ標本でISO 8256:2004を用いて測定した。試験片(4×10×80mm)をISO 1872−2要件(平均冷却速度15K/分および冷却ステップの間の高圧)にしたがって製造した圧縮成形シートから切り取る。試験片を45°のV字状ノッチで2つの面にノッチした。深さは2±0.1mmであり、ノッチディップ(notch dip)での曲率半径は1.0±0.05mmである。
【0092】
グリップ間の自由長さは30±2mmである。測定の前に、試験片をすべて−30℃の一定の温度で2〜3時間コンディショニングする。方法Aによるエネルギー補正を含む引張衝撃強度の測定手順はISO 8256に記述されている。
【0093】
ESCRベルテスト
環境応力亀裂抵抗(ESCRベル電話テスト)はASTM D1693:2013(方法B)およびDIN EN ISO 22088−3:2006にしたがって測定される。10個の長方形試験片(38×13×2mm)はISO 1872−2要件(平均冷却速度15K/分および冷却ステップの間の高圧)にしたがって製造した圧縮成形シートから切り取る。それらには広い面の1つを中心として縦軸に平行した0.4mmの深さまで剃刀でノッチが形成される。その後、それらはノッチのある面が上に向くようにして特殊な曲げ装置でU字形に曲げられる。曲げから10分以内にU字形試験片をガラス管に入れ、50℃で10%vol.4−ノニルフェニル−ポリエチレングリコール(Arkopal N100)水溶液で満たした後、ゴム栓で密封する。試験片は初日には1時間ごとに亀裂有無を肉眼で検査した後、毎日そして毎週7日後(168時間ごと)検査する。得られた最終値はガラス管内の10個の試験片の50%破壊点(F
50)である。
【0094】
全面ノッチクリープ試験(FNCT)による環境応力亀裂抵抗
重合体サンプルの環境応力亀裂抵抗は水性界面活性剤溶液内で国際標準ISO 16770(FNCT)によって決定する。重合体サンプルから厚さ10mmの圧縮成形シートを製造する。正方形断面(10×10×100mm)を有するバー(bar)は、応力方向に対して垂直に4つの側面にかみそりの刃を使用してノッチを入れる。M.Fleissner in Kunststoffe 77(1987),pp.45に記載されているようなノッチ装置は、深さ1.6mmの鋭いノッチのために使用する。
【0095】
加えられた荷重は、初期靱帯面積で割った引張力から計算する。靭帯面積は、残りの面積=試料の総断面積からノッチ面積を引いたものである。FNCT試料の場合:10×10mm
2−台形ノッチ面積の4倍=46.24mm
2(破損プロセス/亀裂伝播のための残りの断面積)。試験片にISO 16770が提示する標準条件によって非イオン性界面活性剤ARKOPAL N100の2重量%の水溶液内で80℃で4MPaまたは50℃で6MPaの一定の負荷を加える。試験片が破裂するまでに要する時間を検出する。
【0096】
シャルピーaCN
厚さ10mmの圧縮成形シートから切り出した10×10×80mmの試験用棒に内部法で測定した破壊靱性を決定する。6つの上記試験用棒の中央部に上述のFNCTに関して言及したノッチ装置のレーザーブレードを用いてノッチを形成する。ノッチの深さは1.6mmとした。測定は実質的にISO 179−1にしたがうシャルピー測定法にしたがって行ったが、試験片および衝撃面積(担持体間距離)は変更して実施した。
【0097】
試験片をすべて−30℃の測定温度で2〜3時間コンディショニングする。そして試験用試料を迅速にISO 179−1に従う振子式衝撃試験装置の担持体上に載置する。担持体間の距離は60mmである。2Jのハンマーを160°の角度で落下させ、振子の長さは225mm、衝撃速度は2.93m/sであった。破壊靱性値はkJ/m
2単位で表記し、消耗された衝撃エネルギーとノッチaCNの初期断面積の比率で計算した。本明細書では一般的な意味を基準として完全破壊とヒンジ破壊に対する値のみを用いた(ISO 179−1参照)。
【0098】
キャストフィルム測定
ゲルのフィルム測定は150mmのスリットダイ幅とともに20mmのスクリュー直径および25Dのスクリュー長さを有するOCS押出機類型ME 202008−V3上で実施した。キャストラインには冷却ロールおよびワインダー(モデルOCS CR−9)が装備される。光学機器は26μm×26μmの解像度を有するOSCフィルム表面分析カメラ、モデルFTA−100(フラッシュカメラシステム)で構成される。押出条件を安定化させるために最初に樹脂を1時間パージングした後、検査および値記録を30分間行う。樹脂を220℃で約2.7m/分の引取速度で押出し、厚さ50μmのフィルムを生成させる。冷却ロール温度は70℃であった。
【0099】
表面分析カメラによる前記検査は表1に報告されているように、700μmを超過する直径を有するゲルの総含量およびゲルの含量を提供した。
【0100】
−
プロセス設定
重合工程は
図1に示すように直列に連結された2つの気相反応器を含むプラントで連続条件下で行われた。
【0101】
重合触媒は下記のように製造する。
【0102】
触媒成分の製造手順
米国特許第4,399,054号の実施例2に記載されている方法にしたがうが、10000RPMの代わりに2000RPMで操作して約3モルのアルコールを含む塩化マグネシウムとアルコール付加物を製造した。付加物を窒素流下で50〜150℃の温度範囲にわたって25%のアルコールの重量含量に達するまで熱処理にかけた。
【0103】
窒素でパージした2Lの4つ口丸底フラスコ中に1LのTiCl
4を0℃において導入した。次に、同一の温度において上記のように調製した25重量%のエタノールを含む70gの球状MgCl
2/EtOH付加物を撹拌下で加えた。温度を2時間で140℃に昇温し、120分間保持した。その後、撹拌を停止して固体生成物を沈降させて上澄液を吸い出した。次に、固体残渣を80℃においてヘプタンで1回、25℃においてヘキサンで5回洗浄し、真空下で30℃において乾燥した。
【0104】
攪拌機が備えられた260cm
3のガラス反応器に、20℃で351.5cm
3のヘキサンを添加し、上記のように製造した7gの触媒成分を20℃で攪拌しながら導入した。内部温度を一定に保持しながら、ヘキサン中5.6cm
3のトリ−n−オクチルアルミニウム(TNOA)(約370g/l)および例えばTNOA/CMMSモル比が50になる量のシクロヘキシルメチル−ジメトキシシラン(CMMS)を反応器に徐々に導入し、温度を10℃にした。10分間攪拌した後、4時間にかけて同一の温度で10gのプロピレンを注意深く反応器に導入した。反応器でプロピレンの消費をモニタリングし、触媒1g当たり重合体1gの理論的転換率に達したと考えられるときに重合を停止した。その後、内容物全体を濾過し、30℃(50g/l)の温度でヘキサンで3回洗浄した。乾燥後、得られた予備重合触媒(A)を分析して、初期触媒1g当たり1.05gのポリプロピレン、2.7%のTi、8.94%のMgおよび0.1%のAlを含有することが明らかになった。
【0105】
予備重合触媒上の内部電子供与体担持
上記のように製造された約42gの固体予備重合触媒を窒素でパージングしたガラス反応器に入れ、50℃で0.8Lのヘキサンでスラリー化した。
【0106】
その後、エチルアセテートを予備重合触媒のMgと有機ルイス塩基との間に1.7のモル比を有するようにする量で注意深く(10分)滴下した。
【0107】
スラリーを内部温度として50℃を有するようにしながら2時間攪拌下に保持させた。
【0108】
その後攪拌を止めて固体を沈降させた。最終触媒を回収して乾燥させる前に室温で1回のヘキサン洗浄を行った。
【0109】
実施例1
重合
前述したように製造された電子供与体/Tiのモル供給比が8である13.8g/hの固体触媒を、5kg/hの液体プロパンを使用して第1攪拌予備接触容器に供給し、ここにトリイソブチルアルミニウム(TIBA)、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)および電子供与体テトラヒドロフラン(THF)を投入した。トリイソブチルアルミニウムおよびジエチルアルミニウムクロリドの重量比は7:1であった。アルミニウムアルキル(TIBA+DEAC)対固体触媒の比は5:1であった。アルキル対THFの重量比は70であった。第1の予備接触容器を50℃で平均滞留時間30分に維持させた。第1の予備接触容器の触媒懸濁液を第2の撹拌予備接触容器に連続的に移し、これを平均滞留時間30分で操作し、また50℃に維持させた。触媒懸濁液を、ライン10を介して流動床反応器(FBR)1に連続的に移した。
【0110】
第1反応器で分子量調節剤としてH
2を使用し、不活性希釈剤としてプロパンの存在下でエチレンを重合した。エチレン50kg/h及び水素200g/hを、ライン9を介して第1の反応器に供給した。第1反応器にはいかなる共単量体も供給しなかった。
【0111】
重合温度80℃において、かつ圧力2.9MPaにおいて重合を実施した。第1反応器で得られた重合体をライン11を介して不連続的に排出し、ガス/固体分離器12でガスから分離し、ライン14を介して第2気相反応器に再導入した。
【0112】
第1反応器で生成された重合体の溶融指数MIEは約73g/10分、密度は0.969kg/dm
3であった。
【0113】
第2反応器を約80℃、圧力2.5MPaの重合条件下で操作した。上昇管は内径200mm、長さ19mであった。下降管は全長18m、内径300mmを有する上部5m及び内径150mmを有する下部13mを有する。最終エチレン重合体の分子量分布を広げるために、上昇管32と下降管33内で単量体および水素濃度の異なる条件が確立されるように第2反応器を操作した。これはライン52を介して下降管33の上部に330kg/hの液体流れ(液体バリア)を供給することによって達成される。前記液体流れは上昇管に存在するガス混合物の組成とは異なる組成を有する。第2反応器の上昇管と下降管内の単量体および水素の前記異なる濃度、さらに液体バリアの組成を表1に示した。ライン52の液体流れは49℃で2.5MPaの作動条件下で行われた凝縮器49の凝縮ステップから得られ、凝縮器では再循環流れの一部が冷却および部分的に凝縮される。図に示されたように、分離容器とポンプは凝縮器49の下流側に順に位置する。3つの位置(ライン46)で下降管に単量体を供給した。バリアの真下に位置した投入地点1で14kg/hのエチレンおよび0.90kg/hの1−ヘキセンを導入した。投入地点1から2.3メートルの下に位置した投入地点2で、3kg/hのエチレンを導入した。投入地点2から4メートルの下に位置した投入地点3で、3kg/hのエチレンを導入した。3つの投入地点それぞれにおいて、流れ52から得られた液体を1:1のエチレンに対する比率でさらに供給した。5kg/hのプロパン、30.0kg/hのエチレンおよび30g/hの水素をライン45を通して再循環システムに供給した。
【0114】
最終重合体はライン54を介して不連続的に排出された。
【0115】
第2反応器での重合工程は比較的高分子量のポリエチレン画分を生成した。表1において最終生成物等の性質が明示される。最終生成物の溶融指数は第1反応器で製造されたエチレン樹脂と比較して減少し、第2反応器で高分子量画分の形成を示していることが分かる。
【0116】
第1反応器は第1および第2反応器の両方によって製造された最終ポリエチレン樹脂の総量の約49重量%(スプリット重量%)を製造した。
【0117】
共単量体(ヘキセン−1)の量は約0.8重量%であった。
【0118】
実施例2
重合
前述したように製造された電子供与体/Tiのモル供給比が8である13.7g/hの固体触媒を、5kg/hの液体プロパンを使用して第1攪拌予備接触容器に供給し、ここにトリイソブチルアルミニウム(TIBA)、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)および電子供与体テトラヒドロフラン(THF)を投入した。トリイソブチルアルミニウムおよびジエチルアルミニウムクロリドの重量比は7:1であった。アルミニウムアルキル(TIBA+DEAC)対固体触媒の比は5:1であった。アルキル対THFの重量比は70であった。第1の予備接触容器を50℃で平均滞留時間30分に維持させた。第1の予備接触容器の触媒懸濁液を第2の撹拌予備接触容器に連続的に移し、これを平均滞留時間30分で操作し、また50℃に維持させた。触媒懸濁液を、ライン10を介して流動床反応器(FBR)1に連続的に移した。
【0119】
第1反応器で分子量調節剤としてH
2を使用し、不活性希釈剤としてプロパンの存在下でエチレンを重合した。エチレン50kg/h及び水素200g/hを、ライン9を介して第1の反応器に供給した。第1反応器にはいかなる共単量体も供給しなかった。
【0120】
重合温度80℃において、かつ圧力2.9MPaにおいて重合を実施した。第1反応器で得られた重合体をライン11を介して不連続的に排出し、ガス/固体分離器12でガスから分離し、ライン14を介して第2気相反応器に再導入した。
【0121】
第1反応器で生成された重合体の溶融指数MIEは約77g/10分、密度は0.969kg/dm
3であった。
【0122】
第2反応器を約80℃、圧力2.5MPaの重合条件下で操作した。上昇管は内径200mm、長さ19mであった。下降管は全長18m、内径300mmを有する上部5m及び内径150mmを有する下部13mを有する。最終エチレン重合体の分子量分布を広げるために、上昇管32と下降管33内で単量体および水素濃度の異なる条件が確立されるように第2反応器を操作した。これはライン52を介して下降管33の上部に330kg/hの液体流れ(液体バリア)を供給することによって達成される。前記液体流れは上昇管に存在するガス混合物の組成とは異なる組成を有する。第2反応器の上昇管と下降管内の単量体および水素の前記異なる濃度、さらに液体バリアの組成を表1に示した。ライン52の液体流れは47℃で2.5MPaの作動条件下で行われた凝縮器49の凝縮ステップから得られ、凝縮器では再循環流れの一部が冷却および部分的に凝縮される。図に示されたように、分離容器とポンプは凝縮器49の下流側に順に位置する。3つの位置(ライン46)で下降管に単量体を供給した。バリアの真下に位置した投入地点1で10kg/hのエチレンおよび0.50kg/hの1−ヘキセンを導入した。投入地点1から2.3メートルの下に位置した投入地点2で、4kg/hのエチレンを導入した。投入地点2から4メートルの下に位置した投入地点3で、4kg/hのエチレンを導入した。3つの投入地点それぞれにおいて、流れ52から得られた液体を1:1のエチレンに対する比率でさらに供給した。5kg/hのプロパン、32.5kg/hのエチレンおよび31g/hの水素をライン45を通して再循環システムに供給した。
【0123】
最終重合体はライン54を介して不連続的に排出された。
【0124】
第2反応器での重合工程は比較的高分子量のポリエチレン画分を生成した。表1において最終生成物等の性質が明示される。最終生成物の溶融指数は第1反応器で製造されたエチレン樹脂と比較して減少し、第2反応器で高分子量画分の形成を示していることが分かる。
【0125】
第1反応器は第1および第2反応器の両方によって製造された最終ポリエチレン樹脂の総量の約49重量%(スプリット重量%)を製造した。
【0126】
共単量体(ヘキセン−1)の量は約0.4重量%であった。
【0127】
比較例1
この比較例の重合体は、Chevron Phillipsによって商標名HHM 5502で販売されている共単量体として1%未満のヘキセンでループ反応器にてのクロム触媒を使用して製造されたポリエチレン組成物である。
【0128】
比較例2
この比較例の重合体は、LyondellBasellによって商標名HS ACP 5831 Dで販売されている共単量体として0.5%未満のブテンでHostalen ACPスラリー工程にて製造されたポリエチレン組成物である。
【0129】
【表1】