特許第6793836号(P6793836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イーライ リリー アンド カンパニーの特許一覧

特許6793836変異体IDH1およびIDH2阻害剤としての7−フェニルエチルアミノ−4H−ピリミド[4,5−D][1,3]オキサジン−2−オン化合物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793836
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】変異体IDH1およびIDH2阻害剤としての7−フェニルエチルアミノ−4H−ピリミド[4,5−D][1,3]オキサジン−2−オン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/04 20060101AFI20201119BHJP
   A61K 31/5365 20060101ALI20201119BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20201119BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20201119BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   C07D498/04 112T
   C07D498/04CSP
   A61K31/5365
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P25/00
【請求項の数】11
【全頁数】59
(21)【出願番号】特願2019-532088(P2019-532088)
(86)(22)【出願日】2017年12月8日
(65)【公表番号】特表2020-502157(P2020-502157A)
(43)【公表日】2020年1月23日
(86)【国際出願番号】US2017065246
(87)【国際公開番号】WO2018111707
(87)【国際公開日】20180621
【審査請求日】2019年6月14日
(31)【優先権主張番号】62/435,283
(32)【優先日】2016年12月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】レナート・アレハンドロ・バウアー
(72)【発明者】
【氏名】セルジュ・ルイ・ブレ
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ポール・バークホルダー
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド・ギルモア
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ジェイムズ・ハーン
(72)【発明者】
【氏名】ゾラン・ランコビック
【審査官】 安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−528951(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/171715(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/147586(WO,A1)
【文献】 特表2016−514124(JP,A)
【文献】 特表2018−525369(JP,A)
【文献】 特表2019−517579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
[式中、
は、−CHCH(CH、−CHCH、−CHCHOCH、または−CH−シクロプロピルであり、
は、−CHまたは−CHCHである]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
7−[[(1S)−1−[4−[(1R)−2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン、
7−[[(1S)−1−[4−[(1S)−2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン、
1−エチル−7−[[(1S)−1−[4−[(1S)−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)プロピル]フェニル]エチル]アミノ]−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン、もしくは
1−エチル−7−[[(1S)−1−[4−[(1R)−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)プロピル]フェニル]エチル]アミノ]−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オ
ある請求項1に記載の化合物、またはそれらのいずれかの薬学的に許容される塩。
【請求項3】
7−[[(1S)−1−[4−[(1S)−2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オンである請求項2に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項5】
治療に使用するための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項6】
神経膠腫、膠芽腫、多形性膠芽腫、星細胞腫、乏突起膠腫、傍神経節腫、線維肉腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、骨髄異形成症候群(MDS)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、甲状腺癌、結腸直腸癌、急性骨髄性白血病(AML)、黒色腫、前立腺癌、軟骨肉腫、または肝内胆管癌である、変異体IDH1または変異体IDH2を発現する癌の治療に使用するための、請求項4または5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
変異体IDH1または変異体IDH2を発現する前記癌が、線維肉腫、肝内胆管癌、急性骨髄性白血病、神経膠腫、または膠芽腫である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
神経膠腫、膠芽腫、多形性膠芽腫、星細胞腫、乏突起膠腫、傍神経節腫、線維肉腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、骨髄異形成症候群(MDS)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、甲状腺癌、結腸直腸癌、急性骨髄性白血病(AML)、黒色腫、前立腺癌、軟骨肉腫、または肝内胆管癌である、変異体IDH1または変異体IDH2を発現する癌の治療に使用するための薬剤の製造のための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項9】
変異体IDH1または変異体IDH2を発現する前記癌が、線維肉腫、肝内胆管癌、急性骨髄性白血病、神経膠腫、または膠芽腫である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
変異体IDH1または変異体IDH2を発現する前記癌が、肝内胆管癌または急性骨髄性白血病である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
変異体IDH1または変異体IDH2を発現する前記癌が、肝内胆管癌または急性骨髄性白血病である、請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)タンパク質は、クエン酸(トリカルボン酸またはクレブス)回路において重要な酵素である。クエン酸回路は多くの生化学的経路にとって中心的に重要であり、細胞代謝の最も初期に確立された構成要素の1つである。
【0002】
イソクエン酸デヒドロゲナーゼは、イソクエン酸のα−ケトグルタル酸(2−オキソグルタル酸)への酸化的脱炭酸を触媒する。これらの酵素は2つの異なるサブクラスに属し、そのうちの1つは電子受容体としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD(+))を利用し、もう1つはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP(+))を利用する。3つの哺乳類のイソクエン酸デヒドロゲナーゼが報告されている:1つはミトコンドリアマトリックスに局在するマルチサブユニット酵素である、NAD(+)−依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、そして2つのNADP(+)−依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(そのうちの1つはミトコンドリアであり、もう1つは主に細胞基質である)。各NADP(+)−依存性アイソザイムは二量体である。IDH1遺伝子によってコードされるタンパク質は、細胞質およびペルオキシソームに見られるNADP(+)−依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼである。細胞質酵素は、細胞質NADPH産生において重要な役割を果たす。IDH1は、完全なクエン酸回路を欠く広範囲の種および生物において発現される。
【0003】
最近、IDH1および関連するアイソフォームIDH2における突然変異がいくつかの種類の癌で発見されている。突然変異は、タンパク質配列に沿った特定のアミノ酸で起こり、ヘテロ接合的に発現され、機能の獲得と一致することが見出された。これらの突然変異は機能的に保存された残基で起こり、IDH1およびIDH2の変異型の生化学的研究は、正常機能の喪失、イソクエン酸のα−ケトグルタル酸への可逆的変換を示した。これらの突然変異の結果は、α−ケトグルタル酸(αKG)から2−ヒドロキシグルタル酸(2HG)への新規(または新形態)変換を可能にすることである。結果として、IDH1またはIDH2の変異型を保有する癌細胞は、実質的に高濃度の2HGを形成する。高レベルの2HGは、変異体IDH1またはIDH2阻害によって反転され得る細胞分化の遮断をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PCT出願第US2016/043264号は、変異体IDH1の共有結合阻害剤を開示している。様々な癌の治療のために、変異体IDH1およびIDH2酵素を選択的に阻害する化合物がさらに必要とされている。様々な癌の治療のために、野生型IDH1およびIDH2よりも新形態活性を示す変異体IDH1およびIDH2酵素を選択的に阻害する化合物がさらに必要とされている。本発明は、変異体IDH1およびIDH2の阻害剤である式IまたはIaの化合物を提供する。式IまたはIaの化合物は、変異体IDH1およびIDH2を選択的に阻害する共有結合阻害剤である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、式:
【化1】
(式中、
は、−CHCH(CH、−CHCH、−CHCHOCH、または−CH−シクロプロピルであり、
は、−CHまたは−CHCHであり、
Xは、NまたはCHである)の変異体IDH1およびIDH2酵素阻害剤化合物、または
その薬学的に許容される塩を提供することである。
【0006】
本発明のさらなる態様は、式:
【化2】
(式中、
は、−CHCH(CH、−CHCH、−CHCHOCH、または−CH−シクロプロピルであり、
は、−CHまたは−CHCHである)の変異体IDH1およびIDH2酵素阻害剤化合物、または
その薬学的に許容される塩を提供することである。
【0007】
本発明のさらなる態様は、
7−[[(1S)−1−[4−[(1R)−2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン、
7−[[(1S)−1−[4−[(1S)−2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン、
1−エチル−7−[[(1S)−1−[4−[1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)プロピル]フェニル]エチル]アミノ]−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン(異性体1)、
1−エチル−7−[[(1S)−1−[4−[1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)プロピル]フェニル]エチル]アミノ]−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン(異性体2)である式IもしくはIaの化合物、
またはそれらのいずれかの薬学的に許容される塩を提供する。
【0008】
本発明の別の態様は、7−[[(1S)−1−[4−[(1S)−2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オンである式IもしくはIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0009】
本発明の別の態様は、式IもしくはIaの変異体IDH1阻害剤化合物、またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0010】
本発明のさらなる態様は、治療を必要とする患者に、治療有効量の式IもしくはIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、患者において、神経膠腫、膠芽腫、多形性膠芽腫、星細胞腫、乏突起膠腫、傍神経節腫、線維肉腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、骨髄異形成症候群(MDS)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、甲状腺癌、結腸直腸癌、急性骨髄性白血病(AML)、黒色腫、前立腺癌、軟骨肉腫、または肝内胆管癌である、変異体IDH1または変異体IDH2を発現する癌を治療する方法を提供する。
【0011】
本発明の別の態様は、治療を必要とする患者に、治療有効量の式IもしくはIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、患者において、線維肉腫、急性骨髄性白血病、神経膠腫、または膠芽腫である、変異体IDH1または変異体IDH2を発現する癌を治療する方法を提供する。
【0012】
本発明のさらなる態様は、治療に使用するための、式IもしくはIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0013】
本発明の別の態様は、神経膠腫、膠芽腫、多形性膠芽腫、星細胞腫、乏突起膠腫、傍神経節腫、線維肉腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、骨髄異形成症候群(MDS)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、甲状腺癌、結腸直腸癌、急性骨髄性白血病(AML)、黒色腫、前立腺癌、軟骨肉腫、または肝内胆管癌である、変異体IDH1または変異体IDH2を発現する癌の治療に使用するための、式IもしくはIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0014】
本発明のさらなる態様は、線維肉腫、急性骨髄性白血病、神経膠腫、または膠芽腫である、変異体IDH1または変異体IDH2を発現する癌の治療に使用するための、式IもしくはIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0015】
本発明の別の態様は、神経膠腫、膠芽腫、多形性膠芽腫、星細胞腫、乏突起膠腫、傍神経節腫、線維肉腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、骨髄異形成症候群(MDS)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、甲状腺癌、結腸直腸癌、急性骨髄性白血病(AML)、黒色腫、前立腺癌、軟骨肉腫、または肝内胆管癌である、変異体IDH1または変異体IDH2を発現する癌の治療のための薬剤の製造のための、式IもしくはIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0016】
本発明のさらなる態様は、線維肉腫、急性骨髄性白血病、神経膠腫、または膠芽腫である、変異体IDH1または変異体IDH2を発現する癌の治療のための薬剤の製造のための、式IもしくはIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
「患者」という用語は哺乳動物を意味し、「哺乳動物」はヒトを含むがこれに限定されない。
【0018】
「治療有効量」とは、癌患者において変異体IDH1または変異体IDH2を阻害するのに必要な、式IまたはIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはその化合物を含有する医薬組成物、またはその薬学的に許容される塩の投与量を意味し、その結果、腫瘍細胞成長が阻害され、患者における癌の進行が排除または遅延または停止されて、分化の阻止を解放する。式IもしくはIaの化合物またはその薬学的に許容される塩の予想される投与量は、1mg/患者/日〜2000mg/患者/日の範囲内である。好ましい投与量は、5mg/患者/日〜1800mg/患者/日の範囲であると予想される。最も好ましい投与量は、40mg/患者/日〜1600mg/患者/日の範囲であると予想される。患者を治療するために必要とされる正確な投与量および治療時間の長さは、疾患の段階および重症度、ならびに個々の患者の特定の必要性および応答を考慮して医師によって決定されるであろう。1日単位当たりの投与量として表現されるが、投薬投与は、患者により最適な治療上の利益を提供し、あらゆる薬物関連毒性を管理または緩和するように調整され得る。毎日の投薬に加えて、1日2回(B.I.D.)の投薬、1日3回(T.I.D.)の投薬、隔日投薬(Q2D)、5日間にわたって隔日、続いて2日間投薬なし(T.I.W.)、または3日毎(Q3D)が適切であり得る。
【0019】
「治療」、「治療する」、および「治療すること」という用語は、患者が罹患している癌に対する全範囲の介入、例えば、たとえ癌が実際に排除されなくても、症状のうちの1つ以上を軽減する、緩徐する、または反転させるため、および癌の進行を遅延させるための活性化合物の投与を含むことを意味する。
【0020】
−CHCH(CHという用語は、2−メチルプロピルを意味し、−CHCHOCHという用語は、2−メトキシエチルを意味し、−CH−シクロプロピルという用語は、シクロプロピルメチルを意味する。
【0021】
式IもしくはIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される担体を使用して医薬組成物として製剤化され、様々な経路で投与されるのが好ましい。好ましくは、そのような組成物は経口投与用である。そのような医薬組成物およびそれらを調製するためのプロセスは、当該技術分野において周知である。例えば、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY,L.V.Allen,Editor,22nd Edition,Pharmaceutical Press,2012を参照されたい。
【0022】
特定の実施態様において、医薬組成物は、薬学的に許容される担体、および場合によっては、特に一般的に癌または特定の癌の種類の治療のための他の治療成分と一緒に、7−{[(1S)−1−{4−[(1S)−1−(4−アクリロイルピペラジン−1−イル)−2−シクロプロピルエチル]フェニル}エチル]アミノ}−1−エチル−1,4−ジヒドロ−2H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オンまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0023】
式IもしくはIaの化合物、または薬学的に許容される塩は、1つ以上の他の治療薬と同時に、またはその前に、またはその後のいずれかに投与され得る。式IもしくはIaの化合物、または薬学的に許容される塩は、1つ以上の他の治療薬と共に投与される場合、別個に、同じもしくは異なる投与経路によって、または他の治療薬(複数可)と同じ医薬組成物中で一緒に投与され得る。1つ以上の追加の治療薬が投与される場合、各治療薬の投与は同時、別個で、または連続的であり得る。
【0024】
式IまたはIaの化合物は、いくつかの無機酸および有機酸と反応して薬学的に許容される酸付加塩を形成することができる。そのような薬学的に許容される塩およびそれらを調製するための一般的な方法論は、当該技術分野において周知である。例えば、P.Stahl,et al.,HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS:PROPERTIES,SELECTION AND USE,(VCHA/Wiley−VCH,2002)、S.M.Berge,et al.,“Pharmaceutical Salts,“Journal of Pharmaceutical Sciences,Vol.66,No.1,January 1977を参照されたい。
【0025】
式IもしくはIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩は、当該技術分野において既知の様々な手順、ならびに以下に記載される手順によって調製することができる。特定の合成工程を異なる順序で組み合わせて、式IもしくはIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩を調製することができる。
【0026】
さらに、以下の調製法に記載される特定の中間体は、1つ以上の窒素保護基を含み得る。保護基は、当業者によって理解されるように、特定の反応条件および実施される特定の変換に依存して変動し得ることを理解されたい。保護および脱保護の条件は、当業者に周知であり、文献に記載されている(例えば、“Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis”,Fifth Edition,by Peter G.M.Wuts and Theodora W.Greene,John Wiley and Sons,Inc.2014を参照されたい)。
【0027】
式IまたはIaの化合物は、IUPACに従って命名され、またCASに従って命名されてもよく、他の名称は式IもしくはIaの化合物またはその薬学的に許容される塩を明確に特定するために使用され得る。
【0028】
式IまたはIaの化合物は単一の立体異性体として表すことができることが理解されよう。4つのジアステレオマーを生じさせる2つのキラル中心がある。本明細書で使用されるとき、単一の立体異性体への言及は、式IまたはIaの命名または図示された化合物を含む立体異性体混合物も含むことを意味する。本明細書において、(R)−および(S)−のCahn−Ingold−Prelog指定は、特定の立体異性体を指すために使用され得る。特定の立体異性体は、鏡像異性的に純粋なまたは濃縮された出発材料を使用した立体特異的合成によって調製することができる。出発材料、中間体、または式IもしくはIaの化合物を含むラセミ混合物のいずれかの特定の立体異性体は、ジアステレオマー塩など、キラル固定相でのクロマトグラフィー、酵素分割、またはその目的のために形成されたジアステレオマーの分別結晶もしくはクロマトグラフィーを含む、Stereochemistry of Organic Compounds,E.I.Eliel and S.H.Wilen(Wiley 1994)およびEnantiomers,Racemates,and Resolutions,J.,Jacques,A.Collet,and S.H.Wilen(Wiley 1991)に見出されるものなど、当該技術分野で周知の技術によって分割することができる。示される全ての立体中心を有する構成を有する式IまたはIaの化合物に関して、「実質的に鏡像異性的に純粋な」とは、異性体純度が90%超の鏡像異性体過剰であることを意味する。別の実施形態において、式IまたはIaの化合物の異性体純度は、95%超の鏡像体過剰である。さらに別の実施形態において、式IまたはIaの化合物の異性体純度は、98%超の鏡像体過剰である。さらに別の実施形態において、式IまたはIaの化合物の異性体純度は、99%超の鏡像体過剰である。個々にそして式IまたはIaの化合物のジアステレオマー混合物を含む全ての立体異性体は、本発明の範囲内にあると企図される。呼称「異性体1」および「異性体2」ならびに「ジアステレオマー1」および「ジアステレオマー2」は、それぞれキラルクロマトグラフィーから最初に溶出する化合物および2番目に溶出する化合物を指し、キラルクロマトグラフィーが合成において初期に開始される場合、同じ呼称が次の中間体および実施例に適用される。
【0029】
式IまたはIaの化合物の合成において初期出発材料として用いられる化合物は周知であり、市販されていない範囲で、提供される特定の参考文献を使用して、当業者によって一般的に用いられる標準的手順により容易に合成されるか、または一般的な参考書に見出される。
【0030】
既知の手順および方法の例には、Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers Inc,1989;Compendium of Organic Synthetic Methods,Volumes 1−10,1974−2002、Wiley Interscience;Advanced Organic Chemistry,Reactions Mechanisms,and Structure,5th Edition,Michael B.Smith and Jerry March、Wiley Interscience,2001;Advanced Organic Chemistry,4th Edition,Part B,Reactions and Synthesis,Francis A.Carey and RichardJ.Sundberg,Kluwer Academic/Plenum Publishers,2000など、およびそれらに引用されている参考文献などの一般的な参考書に記載されているものが含まれる。
【0031】
ある特定の略語は以下のように定義される。「ACN」はアセトニトリルを意味する。「αKG」は、アルファ−ケトグルタル酸または2−ケトグルタル酸を意味する。「alloc」はアリルオキシカルボニルを意味する。「ATCC」は、American Type Culture collectionを意味する。「BCA」はビシンコニン酸を意味する。「BSA」はウシ血清アルブミンを意味する。「CDI」は1,1’−カルボニルジイミダゾールを意味する。「DCC」は1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドを意味する。「DCM」はジクロロメタンを意味する。「DEAD」はジエチルアゾジカルボキシレートを意味する。「DIAD」はジイソプロピルアゾジカルボキシレートを意味する。「DIC」はジイソプロピルカルボジイミドを意味する。「DIPEA」は、ジイソプロピルエチルアミンまたはN−エチル−N−イソプロピル−プロパン−2−アミンを意味する。「DMAP」はジメチルアミノピリジンを意味する。「DMF」はジメチルホルムアミドを意味する。「DMSO」はジメチルスルホキシドを意味する。「DTT」はジチオトレイトールを意味する。「EDC」は、EDAC、EDCI、または1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩を意味する。「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸を意味する。「EGTA」はエチレングリコール四酢酸を意味する。「EtOAc」は酢酸エチルを意味する。「EtOH」はエタノールまたはエチルアルコールを意味する。「Ex」は実施例を意味する。「HATU」は、(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチル(3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−3−イルオキシ)メタンイミニウムヘキサフルオロホスフェートを意味する。「HBTU」は、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートを意味する。「2HG」は、2−ヒドロキシグルタル酸を意味する。「d−3HG」は、3−ヒドロキシ−1,5−ペンタン二酸−2,2,3,4,4−d酸を意味する。「HILIC」は親水性相互作用液体クロマトグラフィーを意味する。「HOAt」は、1−ヒドロキシ−7−アゾベンゾトリアゾールを意味する。「HOBt」は、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物を意味する。「HPLC」は高速液体クロマトグラフィーを意味する。「IC50」は、その剤について可能な最大阻害応答の50%を生じる剤の濃度を意味する。「mCPBA」はメタ−クロロ過安息香酸を意味する。「MeOH」はメタノールまたはメチルアルコールを意味する。「NADPおよびNADPH」はそれぞれ、酸化型および還元型のニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェートを意味する。「NMP」は、N−メチル−2−ピロリドンを意味する。「PG」は保護基を意味する。「Prep」とは調製を意味する。「PyBOP」はベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートを意味する。「PyBrop」は、ブロモ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェートを意味する。「rpm」は毎分回転数を意味する。「(R)−RUCY(登録商標)−XylBINAP」は、RuCl[(R)−daipena][(R)−xylbinap]を意味する。「SAr」は求核芳香族置換を意味する。「TEA」はトリエチルアミンを意味する。「TFA」はトリフルオロ酢酸を意味する。「THF」はテトラヒドロフランを意味する。「トリス」はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを意味する。
【0032】
式IもしくはIaの化合物、またはその薬学的に許容される塩は、当該技術分野において既知の様々な手順によって調製することができ、それらのうちのいくつかを、以下のスキーム、調製物、および実施例において図示する。記載される経路の各々についての特定の合成工程は、式IまたはIaの化合物またはその薬学的に許容される塩を調製するために、異なる方法で、または他のスキームからの工程と併せて、組み合わせてもよい。以下のスキームにおける各々の工程の生成物は、抽出、蒸発、沈殿、クロマトグラフィー、濾過、磨砕、および結晶化を含む、当該技術分野で周知の従来の方法によって回収することできる。以下のスキームにおいて、全ての置換基は、別途指示のない限り、以前に定義された通りである。試薬および出発物質は、当業者にとって容易に入手可能である。
【化3】
【0033】
スキーム1において、一連の反応は1−置換−7−(メチルスルホニル)−1,4−ジヒドロ−2H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン(4)(工程Cの生成物)をもたらし、式中、Rは、前に定義した通りである。「PG」は、カルバメート、アミド、またはエステル用などのアミノ基または酸素基用に開発された保護基である。例えば、5−ヒドロキシメチル4−アミノ−2−メチルスルファニル−ピリミジンを、標準的なカルバモイル化条件下で、トリホスゲンおよびDIPEAまたはTEAなどの有機塩基を使用して約−30〜−35℃の温度でオキサジン−2−オンに環化して、化合物(2)(工程Aの生成物)を得ることができる。あるいは、カルバモイル化を完了させるために、トリホスゲンの代わりに、CDI、ホスゲン、またはジホスゲンなどのジハライドカルボニルまたは二−擬ハライドカルボニルを使用することができる。オキサジンのアミンを、約50〜65℃の温度でNMPなどの溶媒およびKCOなどの無機塩基中で、ヨード試薬などの適切な置換ハロゲン化アルキルでアルキル化して、化合物(3)(工程Bの生成物)を得ることができる。あるいは、光延反応を実施して、MeOHなどの適切なアルコールを使用してオキサジンのアミンをアルキル化することができる。光延反応は当該技術分野で周知であり、THFなどの溶媒中でトリフェニルホスフィンおよびDIADまたはDEADなどのアゾジカルボキシレートを使用して、ヒドロキシル基をカルバメートなどの多種多様な求核剤によって置換される脱離基に変換して、化合物(3)を得ることができる。ACNまたはDCMなどの溶媒中で、約10〜25℃の温度で、mCPBAまたはペルオキシ一硫酸カリウムなどの当該技術分野で周知の条件下でスルフィドをスルホンに酸化して、化合物(4)(工程Cの生成物)を得ることができる。
【化4】
【0034】
スキーム2において、(4−(1−アミノエチル)フェニル)メタノール(7)は、当業者に周知の手順を使用して臭化物(5)などのハロゲン化アリールから数工程にわたって生成することができる。アミンはサブ工程1、工程Dで保護することができ、ここで「PG」は、アミドなどのアミノ基のために開発された保護基である。保護された臭化アリール(5)をリチウムカルボニル化条件下でケトンに変換して、サブ工程2、工程Dにおいてアリールケトン(6)を得ることができる。次いで、サブ工程1、工程Eにおいて、MeOHなどの溶媒中、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を使用してケトンを還元することができる。アミンをこの工程(サブ工程2、工程E)または合成の後の時点で脱保護して、化合物(7)を得ることができる。あるいは、化合物(6)を、THFなどの溶媒中で、チタン(IV)イソプロポキシドを使用し、約60℃に加熱し、続いて冷却し、MeOHおよびシアノ水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を添加して、還元アミノ化において化合物(12)に直接変換して、化合物(12)を得ることができる。化合物(7)を、DCMなどの溶媒中、塩化チオニルまたはPOClなどのハロゲン化剤を使用する標準的なハロゲン化条件下で塩化物などのハロゲン化ベンジルに変換して、化合物(10)を得ることができる(工程I)。必要であれば、化合物(10)を保護し、工程Jでアルキル化することができる。例えば、アミン(10)は、トリフルオロアセチルまたはCBZなどの保護基を使用して、工程Jのサブ工程1で保護することができる。そのような保護基は、当該技術分野において周知であり、認識されている。あるいは、化合物10はアルデヒド、化合物(8)から調製することができる。化合物(8)は、DCMなどの溶媒中で、デス−マーチンペルヨージナンなどの条件下で対応するベンジルアルコールを酸化することによって調製して、アルデヒド(8)を得ることができる。アルデヒドで工程Gでグリニャール反応を達成して、化合物(7)を得ることができる。工程Gからの化合物(7)を工程Hで塩素化して、工程Iについて上述したように化合物(10)を得ることができる。化合物(10)の塩化物は、二工程、ワンポット手順においてモノ−保護されたピペラジンで置換することができる。1−フェニルエチルアミンを保護することは必ずしも必要ではないが、保護が選択される場合には、それを選択的に脱保護するために、1−フェニルエチルアミンにピペラジンアミン生成物(11)とは異なる保護基(工程J、サブ工程1)または所望の工程で他のPGを使用することが有利である。例えば、1−フェニルエチルアミンを、約0〜5℃の温度でDCMなどの溶媒中で、TEAなどの有機塩基を使用して無水トリフルオロ酢酸と反応させて、サブ工程1、工程Jの保護されたアミン生成物を得ることができる。当業者は、他の保護基、例えばCBZがアミンに利用され得ることを理解するであろう。次いで、塩化物の置換は当業者に周知の条件下で達成することができる。例えば、ハロゲン化物は、KCOなどの無機塩基を使用し、反応を促進するための求核触媒としてKIまたはNaIを利用して、保護されたまたは保護されていないピペラジンによって置換することができる。混合物をACNなどの溶媒中で約60〜80℃に加熱して、サブ工程2、工程Jの保護された化合物(11)を得ることができる。1−フェニルエチルアミン上の保護基を、水性の水酸化カリウムなどの塩基で除去して、サブ工程3の化合物(11)を得ることができる。
【化5】
【0035】
スキーム3において、化合物(11)を、反応を促進するためのDIPEA、CsFなどの有機塩基、DMSOなどの溶媒、および約70〜80℃の温度を使用して、SAr反応において、化合物(4)と反応させて(スキーム1)、工程Lの生成物を得ることができる。工程M、サブ工程1において、tert−ブトキシ保護されたピペラジンは、ジオキサン中のHClおよびDCM中のMeOHまたはTFAなどの酸を使用して脱保護することができる一方で、alloc保護されたピペラジンは、ジメドンなどのソフト求核剤を使用して、THFなどの溶媒中で触媒テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)などのパラジウム源の存在下で脱保護されて、サブ工程1、工程Mの脱保護されたピペラジンを得ることができる。サブ工程2、工程Mにおいて、アミンがDCMなどの溶媒中の酸性塩である場合、ピペラジンを、TEAなどの有機塩基を用いてまたは用いずに、約−50〜−78℃の温度で塩化アクリロイルでアミド化して、式Iaの化合物を得ることができる。あるいは、アミドカップリングは、DMFなどの溶媒中で、EDCなどのカップリング試薬およびHOBtなどの添加剤を用いて、アクリル酸および適切なアミンで達成することができる。当業者は、カルボン酸とアミンとの反応から生じるアミド形成のためのいくつかの方法および試薬があることを認識するであろう。例えば、DIPEAまたはTEAなどの有機塩基を用いてまたは用いずに、カップリング試薬の存在下で適切なアミンとアクリル酸とを反応させると、式Iaの化合物を得ることができる。他のカップリング試薬としては、DCC、DICなどのカルボジイミド、またはCDIなどのカルボニルジイミダゾールが挙げられる。HOAtなどの他のアミドカップリング添加剤も反応を強化するために使用することができる。加えて、HBTU、HATU、PyBOP、およびPyBrOPなどの非求核性アニオンのウロニウムまたはホスホニウム塩を、より伝統的なカップリング試薬の代わりに使用することができる。DMAPなどの添加剤を使用して所望のアミド化反応を促進することができる。
【化6】
【0036】
あるいは、スキーム4において、スキーム2の化合物(7)の脱保護された生成物のアミンを、SArアルキル化においてスキーム3、工程Lに記載されるように化合物(4)と反応させて、化合物13を得ることができる。ヒドロキシルは、工程I、スキーム2に記載のように塩素化して、化合物14を得ることができる(工程O)。化合物(14)の塩素を、アルキル化においてスキーム2、工程11、サブ工程2に記載のようにピペラジンで置換して、化合物(5)を得ることができる。保護されたピペラジンを脱保護し、次いでピペラジンをスキーム3、工程Mに記載されるようにアミド化して、式Iaの化合物を得ることができる。
【化7】
【0037】
スキーム5において、キラル(4−(1−アミノエチル)フェニル)メタノール(7a)は、当業者に周知の手順を使用して臭化物(5a)などのキラルハロゲン化アリールから数工程にわたって生成することができる。アミンはサブ工程1、工程Dで保護することができ、ここで「PG」は、アミドなどのアミノ基のために開発された保護基である。臭化アリール(5a)を、リチウムカルボニル化条件下でケトンに変換して、サブ工程2、工程Dにおいてアリールケトン(6a)を得ることができる。次いで、サブ工程1、工程Eにおいて、EtOHなどの溶媒中で(R)−RUCY−XylBINAPなどのキラル還元剤を使用して、ケトンを不斉還元して化合物7aを得ることができる。化合物(7a)を、t−ブチルエーテルなどの溶媒中で塩化ベンゾイルなどのハロゲン化剤を使用して、標準的なハロゲン化条件下で塩化物などのキラルハロゲン化ベンジルに変換して、化合物(10a)を得ることができる(工程I)。サブ工程1、工程Jにおいて、アセトニトリルなどの溶媒中で、重炭酸ナトリウムなどの塩基の存在下で、化合物(10a)を保護されたピペラジン(PG−ピペラジン)と最初に反応させて、保護された形態を得る。次いで、保護された形態を、EtOHなどの溶媒中で、水性の水酸化カリウムなどの塩基で脱保護して、化合物(11a)を得る(サブ工程2、工程J)。
【化8】
【0038】
スキーム6において、一連の反応は1−置換−7−クロロ−4H−ピリド[4,3−d][1,3]オキサジン−2−オン(18)(工程Cの生成物)をもたらし、式中、Rは、前に定義した通りである。例えば、アセトニトリルなどの溶媒中で、エチル4,6−ジクロロピリジン−3−カルボキシレート(15)を標準的な条件下でアミンと反応させて、6−クロロ−4−(アミノ)ピリジン−3−カルボキシレート(16)を得ることができる。THFなどの溶媒中で水素化アルミニウムリチウムなどの水素化試薬を使用して、化合物(16)のエステル基を還元して、(4−アミノ−6−クロロ−3−ピリジル)メタノール(17)を得る。17などの化合物は、約−20℃の温度でトリホスゲンおよびDIPEAまたはTEAなどの有機塩基を使用して標準的なカルバモイル化条件下でオキサジン−2−オンに環化して、化合物(18)(工程Cの生成物)を得ることができる。あるいは、カルバモイル化を完了させるために、トリホスゲンの代わりに、CDI、ホスゲン、またはジホスゲンなどのジハライドカルボニルまたは二−擬ハライドカルボニルを使用することができる。スキーム2または5において上記に示したように、またはいずれかのスキームの代わりに記載されるように調製された化合物11は、標準的なアルキル化条件下で化合物18と反応させることができる。次いで、スキーム3または4において上述のように、得られた中間体化合物を脱保護し、アミド化して、XがCHである式Iの化合物を得る。
【0039】
任意の工程において、式IまたはIaの化合物の薬学的に許容される塩は、標準的な条件下で、適切な溶媒中で式IまたはIaの適切な遊離塩基と適切な薬学的に許容される酸との反応によって形成され得る。さらに、そのような塩の形成は、窒素保護基の脱保護時に同時に起こり得る。そのような塩の形成は、当該技術分野で周知であり、また理解されている。例えば、Gould,P.L.,“Salt selection for basic drugs,”International Journal of Pharmaceutics,33:201−217(1986)、Bastin,R.J.,et al.“Salt Selection and Optimization Procedures for Pharmaceutical New Chemical Entities,”Organic Process Research and Development,4:427−435(2000)、およびBerge,S.M.,et al.,“Pharmaceutical Salts,”Journal of Pharmaceutical Sciences,66:1−19,(1977)を参照されたい。当業者は、式IまたはIaの化合物が容易に変換され、薬学的に許容される塩として単離され得ることを理解するであろう。
【実施例】
【0040】
調製物1
7−メチルスルファニル−1,4−ジヒドロピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン
【化9】
トリホスゲン(859g、2.9mol)をTHF(22.5L)中の(4−アミノ−2−メチルスルファニル−ピリミジン−5−イル)メタノール(900g、5.26mol)の溶液に−30℃で15分かけて添加する。反応温度を−35〜−30℃に維持しながら、DIPEA(2.449g、18.92mol)を1時間かけて添加する。次いで反応混合物を氷水(30L)上に注ぎ、2−メチルテトラヒドロフラン(10L)を添加する。有機相を水および食塩水で洗浄する。有機相をNa SO上で乾燥させ、濃縮乾固させる。粗製の生成物を石油エーテル/EtOAc(1:1)でスラリー化し、濾過し、濃縮して黄色固体を得、これをさらに精製することなく続ける(890.5g、1.62mol、純度83%、収率86%)。MS(m/z):198(M+H)。
【0041】
調製物2
1−エチル−7−(メチルチオ)−1,4−ジヒドロ−2H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン
【化10】
NMP(2.24L)中の7−メチルスルファニル−1,4−ジヒドロピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン(280g、1.42mol)の溶液に、KCO(294.2g、2.13mol)およびヨウ化エチル(336.3g、1.99mol)を室温で添加する。混合物を50℃で16時間撹拌し、次いでDCM(3L)および水(6L)で希釈する。有機相を分離し、水および食塩水で洗浄し、濃縮乾固させて、粗製の表題化合物を得る(286g、1.27mol、純度83%、収率91%)。MS(m/z):226(M+H)。
【0042】
調製物3
1−メチル−7−メチルスルファニル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン
【化11】
THF(25mL)中のトリフェニルホスフィン(1.61g、6.08mmol)および7−メチルスルファニル−1,4−ジヒドロピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン(1.00g、5.07mmol)の溶液に、周囲温度でMeOH(0.248mL、6.08mmol)を添加し、続いてDIAD(1.21mL、6.08mmol)を滴加する。一晩撹拌した後、溶媒を真空下で除去し、得られた黄色油状物をシリカゲルクロマトグラフィー(40〜50%EtOAc/ヘキサン)により精製して、表題化合物を白色固体として得る(1.08g、5.11mmol、定量的)。MS(m/z):212(M+H)。
【0043】
調製物4
1−エチル−7−(メチルスルホニル)−1,4−ジヒドロ−2H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン
【化12】
ACN(2.8L)および水(1.4L)中の1−エチル−7−(メチルチオ)−1,4−ジヒドロ−2H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン(286g、1.24mol)の撹拌溶液に、ペルオキシ一硫酸カリウム(1526g、2.48mol)を固体として20分かけて添加し、得られた混合物を10〜20℃で16時間撹拌する。反応混合物を濾過し、得られた濾過ケーキをDCMで洗浄する。合わせた濾液およびDCMを5%NaSO、水、および食塩水で洗浄する。有機相をNaSO上で乾燥させ、濃縮して表題化合物を得る(133.8g、純度93%、収率41%)。MS(m/z):258(M+H)。
【0044】
以下の化合物は本質的に調製物4の方法によって調製される。
【表1】
【0045】
調製物6
N−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)エチル]−2,2,2−トリフルオロ−アセトアミド
【化13】
無水トリフルオロ酢酸(165mL、1.17mol)を、5℃でACN(1.3L)中の(1S)−1−(4−ブロモフェニル)エタンアミン(213g、1.06mol)の溶液に滴加し、続いて1時間かけてTEA(326mL、2.34mol)を滴加する。30分後、水(3L)および食塩水(1L)を添加すると、無色の沈殿物が形成される。スラリーを15分間撹拌し、次いで固体を濾過し、水およびヘキサンで洗浄し、空気流、続いて真空下で40℃で乾燥させて、表題化合物を得る(290g、92%)。H NMR(d−DMSO) δ 1.44(d,3H,J=7.1Hz)、4.98(dddd,1H,J=7.6,7.1,7.1,7.1Hz)、7.30(d,2H,J=8.4Hz)、7.55(d,2H,J=8.4Hz)、9.91(d,1H,J=7.6Hz)。
【0046】
調製物7
N−[(1S)−1−[4−(2−シクロプロピルアセチル)フェニル]エチル]−2,2,2−トリフルオロ−アセトアミド
【化14】
n−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、53mL、130mmol)を、内部温度を−70℃未満に維持するために、−78℃でTHF(600mL)中のN−[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)エチル]−2,2,2−トリフルオロ−アセトアミド(18.00g、60.79mmol)の溶液に滴加する。添加が完了した後、混合物を−78℃で45分間撹拌し、次いで2−シクロプロピル−N−メトキシ−N−メチル−アセトアミド(11.4g、79.6mmol)をTHF(10mL)中の溶液として添加する。混合物を−78℃で45分間撹拌し、飽和水性塩化アンモニウムを添加し、混合物を室温に温める。層を分離し、有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。固体に少量のDCMを添加し、混合物を短時間加熱して固体を溶解させる。混合物を沈殿直前まで濃縮し、次いでヘキサン(150mL)を激しく撹拌しながら滴加して無色固体を得る。固体を濾過により収集し、少量のヘキサンで洗浄し、減圧下で乾燥させて表題化合物(13.82g、76%)を無色固体として得る。MS(m/z):298.3(M−H)。
【0047】
以下の化合物は本質的に調製物7の方法によって調製される。
【表2】
【0048】
調製物9
1‐[4−[(1S)‐1‐アミノエチル]フェニル]‐2‐シクロプロピル−エタノール
【化15】
水素化ホウ素ナトリウム(0.1411g、2当量、3.729mmol)を、氷水浴中で冷却したMeOH(15mL)中のN−[(1S)−1−[4−(2−シクロプロピルアセチル)フェニル]エチル]−2,2,2−トリフルオロ−アセトアミド(558mg、1.86mmol)の溶液に添加する。混合物を約2.5時間撹拌し、次いで水(3mL)中の水酸化カリウム(800mg、14.2mmol)を添加する。混合物を室温で約20時間撹拌する。混合物を濃縮し、DCMと水に分配する。有機層を飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して標記化合物(354mg、1.38mmol、74%)を白色固体として得る。この材料をさらに精製せずに使用する。ES/MS(m/z):189.0(M−OH)。
【0049】
調製物10
2,2,2−トリフルオロ−N−[(1S)−1−(4−ホルミルフェニル)エチル]アセトアミド
【化16】
デス−マーチンペルヨージナン(20.9g、49.3mmol)を、DCM(450mL)中の2,2,2−トリフルオロ−N−[(1S)−1−[4−(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル]アセトアミド(11.1g、44.9mmol)の0℃溶液に添加する。反応混合物を一晩撹拌し、室温に温める。反応混合物を追加のDCMで希釈し、飽和水性NaHCO、飽和水性Na、および食塩水で洗浄する。合わせた有機物を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮して残渣を得て、これを0〜50%EtOAc/ヘキサンの勾配で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物を白色固体として得る(9.5g、39mmol、86%)。ES/MS(m/z):244(M−H)。
【0050】
調製物10a
2,2,2−トリフルオロ−N−[(1S)−1−[4−(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル]アセトアミド
【化17】
無水トリフルオロ酢酸(12mL、85.4mmol)を、CHCl(150mL)中の[4−[(1S)−1−アミノエチル]フェニル]メタノール(10.8g、71.4mmol)の0℃溶液に添加する。10分後、CHCl(8mL)中のトリエチルアミン(24mL、172mmol)を30分かけて滴加し、冷却浴を取り外し、反応物を一晩撹拌する。反応混合物を真空下で濃縮し、追加のCHClで希釈し、1N水性HClおよび水で洗浄する。有機相を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮する。粗製の材料を0〜50%EtOAc/ヘキサンの勾配で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物を白色固体として得る(11.1g、44.9mmol、63%)。ES/MS(m/z):246(M−H)。
【0051】
調製物11
2,2,2−トリフルオロ−N−[(1S)−1−[4−(1−ヒドロキシ−3−メチル−ブチル)フェニル]エチル]アセトアミド
【化18】
氷水浴中で冷却したTHF(35mL)中の2,2,2−トリフルオロ−N−[(1S)−1−(4−ホルミルフェニル)エチル]アセトアミド(1.72g、7.01mmol)の溶液に、イソブチルマグネシウムブロミド(ジエチルエーテル中2M、7.0mL、14.0mmol)を添加し、約30分間撹拌した。混合物を飽和水性塩化アンモニウムでクエンチし、EtOAcと水に分配する。有機層を飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して表題化合物を油状物として得(1.40g、4.15mmol、59%)、これをさらに精製することなく使用する。ES/MS(m/z):302.0(M−H)。
【0052】
以下の化合物は本質的に調製物11の方法によって調製される。
【表3】
【0053】
調製物13
tert−ブチル4−[2−シクロプロピル−1−[4−[(1S)−1−[(2,2,2−トリフルオロアセチル)アミノ]エチル]フェニル]エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート
【化19】
THF(80mL)中のN−[(1S)−1−[4−(2−シクロプロピルアセチル)フェニル]エチル]−2,2,2−トリフルオロ−アセトアミド(12.0g、40.1mmol)およびtert−ブチルピペラジン−1−カルボキシレート(17.9g、96.1mmol)の溶液にチタン(IV)イソプロポキシド(60mL、200mmol)を添加し、混合物を60℃で一晩撹拌する。混合物を室温に冷却し、MeOH(80mL)を添加し、続いてシアノ水素化ホウ素ナトリウム(5.3g、80mmol)を少しずつ添加する。混合物を室温で8時間撹拌し、次いで水およびMeOHを添加し、混合物を室温で一晩撹拌する。混合物を濾過して固体を除去し、この固体をMeOHおよび水ですすぐ。濾液を部分的に濃縮してMeOHの大部分を除去し、残渣をEtOAc(2×)で抽出する。合わせた有機抽出物を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗製の材料を溶媒B(溶媒Bは1:1のヘキサン:DCMである)中0%〜30%のEtOAcの勾配で溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物(10.5g、56%)を無色固体として得る。MS(m/z):470.3(M+H)。
【0054】
調製物14
tert−ブチル4−[1−[4−[(1S)−1−アミノエチル]フェニル]−2−シクロプロピル−エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート
【化20】
水性水酸化カリウム(5M、69mL、350mmol)を、EtOH(350mL)中のtert−ブチル4−[2−シクロプロピル−1−[4−[(1S)−1−[(2,2,2−トリフルオロアセチル)アミノ]エチル]フェニル]エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(32.24g、68.67mmol)の溶液に添加し、得られた混合物を室温で4時間撹拌する。EtOHを減圧下で除去し、残渣に飽和水性重炭酸ナトリウムを添加し、混合物をDCMで抽出する。合わせた有機抽出物を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、表題化合物(24.33g、3.5%の残留DCMを含有する96.5%の純度、収率92%)を無色の粘性油状物として得る。MS(m/z):374.3(M+H)。
【0055】
以下の化合物は本質的に調製物14の方法によって調製される。
【表4】
【0056】
代替の調製物14
水(4mL)中の水酸化カリウム(1.28g、22.9mmol)の溶液を、EtOH(23mL)中のtert−ブチル4−[2−シクロプロピル−1−[4−[(1s)−1−[(2,2,2−トリフルオロアセチル)アミノ]エチル]フェニル]エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(2.15g、4.58mmol)の溶液に添加し、混合物を室温で撹拌する。約6時間後、混合物を濃縮する。残渣をDCMと飽和重炭酸ナトリウム溶液に分配する。有機層を水および飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して表題化合物を油状物として得て、それを精製することなく使用する(1.73g、4.49mmol、98%)。ES/MS(m/z):374.2(M+H)。
【0057】
調製物18
tert−ブチル4−[(1R)−1−[4−[(1S)−1−アミノエチル]フェニル]−2−シクロプロピル−エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(ジアステレオマー1)
【化21】
【0058】
調製物19
tert−ブチル4−[(1S)−1−[4−[(1S)−1−アミノエチル]フェニル]−2−シクロプロピル−エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(ジアステレオマー2)
【化22】
tert−ブチル4−[(1R)−1−[4−[(1S)−1−アミノエチル]フェニル]−2−シクロプロピル−エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(ジアステレオマー1)およびtert−ブチル4−[(1S)−1−[4−[(1S)−1−アミノエチル]フェニル]−2−シクロプロピル−エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(ジアステレオマー2)の1:1混合物(3.23g)を、MeOH(40mL)に溶解し、以下の条件を用いて分取キラルHPLCクロマトグラフィーにより個々のジアステレオマーに分離する:カラムChiralpak AD、20μm、(8×33cm);注入量10mL;溶離剤0.2%DMEAを含む100%MeOH;検出波長220nm;流速400mL/分。調製物12、tert−ブチル4−[(1R)−1−[4−[(1S)−1−アミノエチル]フェニル]−2−シクロプロピル−エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(ジアステレオマー1)を最初の溶出ピークから透明な粘性油状物として得る(1.50g、46%、>99%de)。MS(m/z):374.3(M+H)。調製物13、tert−ブチル4−[(1S)−1−[4−[(1S)−1−アミノエチル]フェニル]−2−シクロプロピル−エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(ジアステレオマー2)を第2の溶出ピークから透明な粘性油状物として得る(1.46g、45%、>98.2%de)。MS(m/z):374.3(M+H)。
【0059】
調製物20
N,3−ジメトキシ−N−メチル−プロパンアミド
【化23】
DCM(1200mL)中の3−メトキシプロパン酸(62g、577.7mmol)の溶液を、1,1’−カルボニルジイミダゾール(103g、635.2mmol)で少しずつゆっくり処理し、室温で2時間撹拌する。N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(62g、635.6mmol)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌する。混合物を水(2×)、0.1M水性HCl(2×)、および飽和水性重炭酸ナトリウム(2×)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮乾固させて粗製の材料を得る。粗製の材料を、ヘキサン中20〜40%アセトンの勾配で溶出するシリカゲルのクロマトグラフィーにかける。得られた油状物を真空下で一晩乾燥させて表題化合物を得る(69.5g、81.7%)。H NMR(CDCl) δ 2.72(t,2H)、3.2(s,3H)、3.38(s,3H)、3.7(m,5H)。
【0060】
調製物21
2,2,2−トリフルオロ−N−[(1S)−1−[4−(1−ヒドロキシ−3−メトキシ−プロピル)フェニル]エチル]アセトアミド
【化24】
2,2,2−トリフルオロ−N−[(1S)−1−[4−(3−メトキシプロパノイル)フェニル]エチル]アセトアミド(23.62g、73.98mmol、95質量%)をMeOH(700mL)に溶解し、水素化ホウ素ナトリウム(5.6g、150mmol)で処理する。室温で2時間撹拌した後、混合物を飽和水性塩化アンモニウムで処理し、MeOHを蒸発させる。得られた材料を水とEtOAcに分配し、分離し、合わせた有機物をNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮乾固させる。粗製の材料をヘキサン中40%EtOAcで溶出するシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ、表題化合物を白色固体として得る(17.82g、79%)。MS(m/z):306(M+H)。
【0061】
調製物22
tert−ブチル4−[3−メトキシ−1−[4−[(1S)−1−[(2,2,2−トリフルオロアセチル)アミノ]エチル]フェニル]プロピル]ピペラジン−1−カルボキシレート
【化25】
2,2,2−トリフルオロ−N−[(1S)−1−[4−(1−ヒドロキシ−3−メトキシ−プロピル)フェニル]エチル]アセトアミド(21.76g、71.27mmol)をDCM(350mL)に溶解し、−10℃に冷却する。塩化チオニル(26.12g、16mL、219.6mmol)を滴加し、反応物を2時間撹拌する。混合物を濃縮乾固させ、DCMに再溶解し、再濃縮する。粗製の材料をACN(300mL)に溶解し、t−ブチルピペラジン−1−カルボキシレート(26.55g、142.6mmol)、炭酸カリウム(39.5g、286mmol)、およびヨウ化カリウム(12.0g、72.3mmol)を添加する。混合物を72時間80℃に加熱する。得られた白色固体を濾過し、EtOAcで洗浄する。合わせた濾液を水性塩化アンモニウムで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮する。粗製の材料をヘキサン中40〜80%EtOAcの勾配で溶出するシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ、表題化合物を白色泡状物として得る(29.63g、88%)。MS(m/z):474(M+H)。
【0062】
調製物23
tert−ブチル4−[1−[4−(1S)−1−アミノエチル]フェニル]−3−メトキシ−プロピル]ピペラジン−1−カルボキシレート(ジアステレオマー1)
【化26】
【0063】
調製物24
tert−ブチル4−[1−[4−(1S)−1−アミノエチル]フェニル]−3−メトキシ−プロピル]ピペラジン−1−カルボキシレート(ジアステレオマー2)
【化27】
EtOH(310mL)中のtert−ブチル4−[3−メトキシ−1−[4−[(1S)−1−[(2,2,2−トリフルオロアセチル)アミノ]−エチル]プロピル]ピペラジン−1−カルボキシレート(29.60g、62.5mmol)の溶液に水性水酸化カリウム(63mL、5M)を添加する。溶液を室温で4時間撹拌し、次いで混合物を濃縮乾固させる。粗製の残渣を水および飽和水性重炭酸ナトリウムで処理し、DCM(3×)で抽出する。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して表題化合物(23.6g)を得、これをMeOH(236mL)に溶解し、以下の条件を用いるキラルSFCクロマトグラフィーにより個々のジアステレオマーに分離する:カラム:Lux Cellulose−1、(5×25cm);注入量:2.5分毎に1mL、溶離剤15%MeOH/CO、検出波長230nm;流速300g/分;カラム温度:40℃;BPR設定値:100バール;BPR温度:40℃。調製物28の表題化合物を、最初の溶出ピークから透明な粘性黄色油状物として得る(10.1g、42.8%、96.6%de)。MS(m/z):378(M+H)。調製物29の化合物を、第2の溶出ピークとして透明な粘性黄色油状物として単離する(10.3g、43.6%、95.2%de)。MS(m/z):378(M+H)。
【0064】
調製物25
7−[[(1S)−1−[4−(1−クロロ−2−シクロプロピル−エチル)フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン
【化28】
塩化チオニル(0.23mL、3.219mmol)を、DCM(20mL)中の7−[[(1S)−1−[4−(2−シクロプロピル−1−ヒドロキシ−エチル)フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン(432mg、1.03mmol)および炭酸カリウム(741mg、5.37mmol)の混合物に添加し、混合物を室温で20分間撹拌する。混合物を珪藻土を通して濾過し、濃縮して、表題化合物(518mg、1.07mmol、100%)を白色泡状物として得、それをさらに精製することなく使用する。ES/MS(m/z):401.2/403.2(M+H)。
【0065】
以下の化合物は本質的に調製物25の方法によって調製される。
【表5】
【0066】
調製物29
tert−ブチル4−[(1R)−2−シクロプロピル−1−[4−[(1S)−1−[(1−エチル−2−オキソ−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−7−イル)アミノ]エチル]フェニル]エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート
【化29】
DMSO(15mL)中のtert−ブチル4−[(1R)−1−[4−[(1S)−1−アミノエチル]フェニル]−2−シクロプロピル−エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(864mg、3.35mmol)、および1−エチル−7−(メチルスルホニル)−1,4−ジヒドロ−2H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン(1.14g、3.05mmol)の溶液に、CsF(1.39g、9.15mmol)およびDIPEA(0.80mL、4.6mmol)を添加する。混合物を60℃で1.5時間撹拌する。混合物を室温に冷却し、EtOAcで希釈し、水で洗浄する(2×)。合わせた水性洗浄液をEtOAcで抽出し、合わせた有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮乾固させる。得られた粗製の生成物を、ヘキサン中55%〜95%EtOAcの勾配で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物を無色固体として得る(1.47g、88%)。MS(m/z):551.3(M+H)。
【0067】
以下の化合物は本質的に調製物29の方法によって調製される。
【表6-1】
【表6-2】
【0068】
調製物39
7−[[(1S)−1−[4−[(1R)−2−シクロプロピル−1−ピペラジン−1−イル−エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン
【化30】
塩酸(95mL、イソプロパノール中5.5M、520mmol)を、40℃でEtOAc(570mL)中のtert−ブチル4−[(1R)−2−シクロプロピル−1−[4−[(1S)−1−[1−エチル−2−オキソ−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−7−イル)アミノ]エチル]フェニル]エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(29.45g、53.48mmol)の溶液に滴加する。混合物を室温で3時間撹拌し、次いで水(300mL)を添加する。層を分離し、有機層を水(2×150mL)で抽出する。合わせた水性抽出物のpHを5N NaOHの添加によりpH10に調整し、無色の固体を形成させる。固体を濾過により収集し、水で洗浄し、風乾して表題化合物(25.18g、99%)を無色固体として得る。MS(m/z):451.2(M+H)。
【0069】
以下の化合物は本質的に調製物39の方法によって調製される。
【表7】
【0070】
調製物41
7−[[(1S)−1−[4−(2−シクロプロピル−1−ピペラジン−1−イル−エチル)フェニル]エチル]アミノ]−1−メチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン(ジアステレオマー1)
【化31】
tert−ブチル4−[2−シクロプロピル−1−[4−[(1S)−1−[(1−メチル−2−オキソ−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−7−イル)アミノ]エチル]フェニル]エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(ジアステレオマー1)(245mg、0.46mmol)をDCM(2.5mL)に溶解する。TFA(0.7mL、9mmol)を添加し、反応物を室温で90分間撹拌する。混合物を20%水性KCOでクエンチし、DCM(3×)で抽出する。合わせた有機抽出物をNaSO上で乾燥させ、濾過し、高真空下で一晩濃縮乾固させて、表題化合物を白色泡状物として得る(196mg、88.5%)。MS(m/z):437(M+H)。
【0071】
以下の化合物は本質的に調製物41の方法によって調製される。
【表8-1】
【表8-2】
【0072】
調製物49
7−[[(1S)−1−[4−(2−シクロプロピル−1−ピペラジン−1−イル−エチル)フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン
【化32】
ACN(3mL)中の7−[[(1S)−1−[4−(1−クロロ−2−シクロプロピル−エチル)フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン(518mg、1.07mmol)、炭酸カリウム(445mg、3.217mmol)、ヨウ化ナトリウム(161mg、1.07mmol)、およびピペラジン(277mg、3.22mmol)の混合物を、密封バイアル中で70℃に加熱する。約8時間後、混合物を室温に冷却し、EtOAcで希釈し、珪藻土を通して濾過し、濃縮する。粗製の材料を、DCM中1%〜7%の3M NH/MeOHの勾配で溶出するシリカゲルで上で精製し、表題化合物(306mg、0.66mmol、62%)を白色固体として得る。ES/MS(m/z):451.2(M+H)。
【0073】
以下の化合物は、適切な保護されたピペラジンを使用して、本質的に調製物49の方法によって調製される。
【表9】
【0074】
調製物53
tert−ブチル4−[1−[4−[(1S)−1−[(2,2,2−トリフルオロアセチル)アミノ]エチル]フェニル]プロピル]ピペラジン−1−カルボキシレート(異性体1)
【化33】
【0075】
調製物54
tert−ブチル4−[1−[4−[(1S)−1−[(2,2,2−トリフルオロアセチル)アミノ]エチル]フェニル]プロピル]ピペラジン−1−カルボキシレート(異性体2)
【化34】
tert−ブチル4−[1−[4−[(1S)−1−[(2,2,2−トリフルオロアセチル)アミノ]エチル]−フェニル]プロピル]ピペラジン−1−カルボキシレート(29.2g、65.8mmol)をMeOH(584mL)に溶解し、以下の条件を用いてキラルSFCクロマトグラフィーにより分割する:カラム:Chiralpak AD−H、5×25cm;溶離剤0.5%ジメチルエチルアミンを含む85/15のCO/MeOH;流速300g/分;検出波長230nm;カラム温度40℃;BPR設定値100バール;溶媒温度40℃。異性体1を最初の溶出ピークとして単離する(14.15g、31.9mmol)。ES/MS(m/z):444(M+H)。異性体2を第2の溶出ピークとして単離する(13.87g、31.3mmol)。ES/MS(m/z):444(M+H)。
【0076】
調製物55
tert−ブチル4−[1−[4−[(1S)−1−[(1−エチル−2−オキソ−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−7−イル)アミノ]エチル]フェニル]−3−メチル−ブチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(異性体1)
【化35】
【0077】
調製物56
tert−ブチル4−[1−[4−[(1S)−1−[(1−エチル−2−オキソ−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−7−イル)アミノ]エチル]フェニル]−3−メチル−ブチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(異性体2)
【化36】
tert−ブチル4−[1−[4−[(1S)−1−[(1−エチル−2−オキソ−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−7−イル)アミノ]エチル]フェニル]−3−メチル−ブチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(2.6g、4.70mmol)を、4:1のイソプロパノール:クロロホルム(50mL)に溶解し、以下の条件を用いてキラルSFCクロマトグラフィーにより分割する:カラム:Chiralpak AD−H、5×25cm;注入量1mL;溶離剤0.5%ジメチルエチルアミンを含む75/25のCO/IPA;流速280g/分;検出波長240nm;カラム温度40℃;BPR設定値100バール;溶媒温度40℃。調製物45を最初の溶出ピークとして単離する(1.02g、1.89mmol)。ES/MS(m/z):553.4(M+H)。調製物46を第2の溶出ピークとして単離する(1.05g、1.90mmol)。ES/MS(m/z):553.4(M+H)。
【0078】
実施例1
7−[[(1S)−1−[4−[(1R)−2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン
【化37】
塩化アクリロイル(305μL、3.75mmol、DCM 2mL中)を、−78℃でDCM中の7−[[(1S)−1−[4−[(1R)−2−シクロプロピル−1−ピペラジン−1−イル−エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン(1.73g、3.26mmol)の溶液に滴加する。−78℃で2分後、数滴のMeOH、続いて飽和水性重炭酸ナトリウムを添加し、混合物を室温に温める。DCMを添加し、層を分離し、水層をDCMで抽出する。合わせた有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮乾固させる。得られた粗製の生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒B中25%〜40%の溶媒A、ここで溶媒Aは10%MeOH/アセトンであり、溶媒Bはヘキサンである)により精製して、表題化合物を無色固体として得る(1.16g、70%)。MS(m/z):505.3(M+H)。
【0079】
以下の化合物は本質的に実施例1の方法によって調製される。
【表10-1】
【表10-2】
【0080】
7−[[(1S)−1−[4−[(1S)−2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オンと複合したIDH1 X線結晶構造の決定。
7−[[(1S)−1−[4−[(1S)−2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オンとの複合体におけるIDH1の結晶構造は、Argonne National Laboratory,Argonne,IL 60439のAdvanced Photon Sourceで操作されるシンクロトロンビームラインAPS 31−IDで収集されたX線回折データから決定される。R132H突然変異を有するIDH1タンパク質は複数の供給元から市販されている。あるいは、IDH1 R132Hタンパク質は、当業者に周知かつ慣用的に使用されている技術によって、突然変異を保有する市販の細胞株から単離することができる。10mM HEPES pH7.5、150mM塩化ナトリウム、10%グリセロール、5mMジチオトレイトール、および2mM 7−[[(1S)−1−[4−[(1S)−2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オンを含有する緩衝液中15mg/mlの濃度の突然変異R132Hを有するIDH1タンパク質を用いて21℃で平衡化し、100mM Bis Tris pH5、5%DMSO、22%PEG 3350、および200mM硫酸アンモニウムを含有する等容量のリザーバー溶液と混合したシッティングドロップトレイから結晶を得る。3mMの7−[[(1S)−1−[4−[(1S)−2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オンを含有する溶液に結晶を一晩浸漬した後に、22%エチレングリコールを補充した溶液に移し、データ収集のために急速冷凍する。2.8Å分解能の回折データは、波長0.9793ÅのX線放射を用いて収集される。結晶は、セルパラメータa=82.74Å、b=82.74Å、c=299.4Å、α=β=γ=90°を有する空間群P42に属する。構造は分子置換によって決定され、1つのIDH1の二量体分子を含有していた。IDH1タンパク質をモデル化した後に計算された差電子密度図は、7−[[(1S)−1−[4−[(1S)−2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オンの2つの結合分子の明確な密度を有する。
【0081】
7−[[(1S)−1−[4−[(1S)−2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オンの立体化学は電子密度から決定され、7−[[(1S)−1−[4−[(1S)−2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オンの両分子がモデル化され、共複合体構造は、Rwork=0.192およびRfree=0.228のRファクタに精密化される。
【化38】
【表11】
【0082】
実施例13
1−エチル−7−[[(1S)−1−[4−[3−メトキシ−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)プロピル]フェニル]エチル]アミノ]−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン(ジアステレオマー1)
【化39】
tert−ブチル4−[(1S)−1−[4−[(1S)−1−[(1−エチル−2−オキソ−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−7−イル)アミノ]エチル]フェニル]−3−メトキシ−プロピル]ピペラジン−1−カルボキシレート(1.372g、2.473mmol)をDCM(15mL)に溶解し、TFA(10mL、15.08g、132.3mmol)を添加する。反応物を1時間撹拌し、次いで濃縮乾固させる。粗製の材料をDCM(12mL)およびDIPEA(1.25mL、7.17mmol)に溶解し、混合物を−78度に冷却する。塩化アクリロイル(0.18mL、0.20g、2.2mmol)を滴加する。10分後、数滴のメタノールを添加して残りの塩化アクリロイルをクエンチし、反応物を濃縮乾固させる(冷)。粗製の材料をヘキサン中50〜70%アセトンの勾配で溶出するシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ、表題化合物を白色泡状物として得る(867mg、73%)。MS(m/z):509(M+H)
【0083】
以下の化合物は本質的に実施例13の方法によって調製される。
【表12】
【0084】
実施例15
7−[[(1S)−1−[4−[(1S)−2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン二硫酸塩
【化40】
7−[[(1S)−1−[4−[(1S)−2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン(188mg)を、1000rpm/60℃で撹拌しながら5mLのアセトン中に入れる。試料は透明な溶液である。45μLの硫酸を滴加する(2mLのアセトン中に希釈)。数滴後に濃厚な白色スラリーが生じる。半分の硫酸を添加した後、スラリーの稠度は変化する。残り半分の硫酸の添加はゆっくり滴下して行われる。スラリーは、明るい白色の流動性のある固体のスラリーに変換する少し前にゴム状になる。30分後にプレートへの熱を遮断し、試料を室温に冷却し、白色固体の濃厚なスラリーを得る。白色固体を真空濾過により単離する。得られたケーキは明るい白色固体である。試料を、フィルター上で空気流下で20分間、次いで70℃の真空オーブン中で一晩乾燥させる。266mgが回収された(収率96.9%)。
【0085】
実施例16
7−[[(1S)−1−[4−[2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン4−ヒドロキシ安息香酸
【化41】
4−ヒドロキシ安息香酸(0.023g、0.165mmol)を、ジクロロメタン(5ml)中の7−[[(1S)−1−[4−[2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン(84mg、0.165mmol)の溶液に添加する。5分間撹拌した後、溶媒を窒素流下でゆっくり蒸発させる。得られた固体をさらに真空下で乾燥させて、7−[[(1S)−1−[4−[2−シクロプロピル−1−(4−プロプ−2−エノイルピペラジン−1−イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]−1−エチル−4H−ピリミド[4,5−d][1,3]オキサジン−2−オン4−ヒドロキシベンゾエート(105mg、0.1617mmol)を白色固体として得る。MS(m/z):423.2(M+H)。
【0086】
調製物57
2−シクロプロピル−N−メトキシ−N−メチルアセトアミド
【化42】
撹拌している500mL丸底フラスコにジクロロメタン(160mL、8容量)および1,1’−カルボニルジイミダゾール(35.63g、1.1当量)を入れる。不均一混合物を15℃に冷却し、混合物に、内部温度を20℃未満に制御する速度で、ジクロロメタン(40mL、2容量)中の2−シクロプロピル酢酸(20.0g、1.0当量)の溶液を入れる。得られた溶液を25℃に温め、2時間撹拌する。次いで、溶液を15℃に冷却し、それにN,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(21.43g、1.1当量)を少しずつ入れ、内部温度を20℃未満に維持する。得られた不均一混合物を25℃に温め、15時間撹拌する。次いで、反応混合物を水(160mL、8容量)で希釈し、15分間撹拌する。撹拌を停止し、下部の水層を分離する。得られた水層をジクロロメタンでさらに2回抽出し(100mL、5容量×2)、有機層を合わせる。合わせた有機層を1.5N HCl(100mL、5容量×2)で2回洗浄する。次いで、有機層を10%水性重炭酸ナトリウム(100mL、5容量×2)で2回洗浄する。次いで、有機層を水(100mL、5容量)、続いて飽和水性塩化ナトリウム(100mL、5容量)で洗浄する。有機層を無水硫酸ナトリウム(1.0%w/w)上で乾燥させる。塊を濾過し、ジクロロメタン(20mL、1容量)で洗浄し、次いで真空下で濃縮する。得られた固体を高真空下で5時間乾燥させて、表題化合物を得る(25.9g、収率90.5%)。ES/MS m/z 144.1(M+H)。
【0087】
調製物6の代替合成
(S)−N−(1−(4−ブロモフェニル)エチル)−2,2,2−トリフルオロアセトアミド
【化43】
撹拌している250mL丸底フラスコにジクロロメタン(100mL、10容量)、続いて(S)−(−)−1−(4−ブロモフェニル)エチルアミン(10.0g、1.0当量)を入れる。溶液を0℃に冷却し、冷却した溶液に、内部温度を5℃未満に保ちながら、無水トリフルオロ酢酸(13.12g、1.25当量)をゆっくり入れる。得られた不均一混合物を0℃で2時間撹拌し、その時点で、内部温度を5℃未満に保ちながらトリメチルアミン(12.64g、2.5当量)をゆっくり入れる。混合物をさらに1時間撹拌し、次いで水(30mL、3容量)を添加することによってクエンチする。二相混合物を25℃に温め、30分間撹拌する。次いで、層を分離し、水層をジクロロメタン(50mL、5容量×2)でさらに2回抽出する。合わせた有機層を飽和水性塩化ナトリウム(50mL、5容量)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム(1重量%)上で乾燥させる。乾燥溶液を濾過し、ジクロロメタン(10mL、1容量)で洗浄し、溶液を真空下で濃縮して粗製の白色固体を得る。粗製の固体を石油エーテル(100mL、10容量)中で25℃で2時間スラリー化し、固体を濾過により収集する。湿った固体を40℃で8時間真空下で乾燥させて、表題化合物を得る(13.3g、収率90%)。ES/MS m/z 295.3(M+H)。
【0088】
調製物58
(S)−N−(1−(4−(2−シクロプロピルアセチル)フェニル)エチル)−2,2,2−トリフルオロアセトアミド
【化44】
オーバーヘッド撹拌しながら10Lの反応槽にメチルtert−ブチルエーテル(1500mL、15容量)を入れる。撹拌溶液に、(S)−N−(1−(4−ブロモフェニル)エチル)−2,2,2−トリフルオロアセトアミド(100g、1.0当量)を入れる。不均一混合物を25℃で30分間撹拌し、次いでテトラヒドロフラン(500mL、5容量)を入れる。得られた均一溶液を−83℃に冷却する。温度を−78℃未満に維持しながらn−ブチルリチウム(297mL、2.2当量)を溶液にゆっくり添加し、得られた溶液を−83℃で1.5時間撹拌する。冷却した溶液に、メチル−tert−ブチルエーテル(200mL、2容量)中の2−シクロプロピル−N−メトキシ−N−メチルアセトアミド(53.19g、1.1当量)の溶液を添加し、内部温度を−78℃未満に維持する。得られた溶液を−83℃で1.5時間撹拌し、その時点で、溶液を−30℃に温め、飽和水性塩化アンモニウム(5L、5容量)を添加することによってクエンチする。クエンチした反応混合物を25℃に温め、層を分離する。水層をメチルtert−ブチルエーテル(500mL、5容量)で抽出する。合わせた有機層を水(500mL、5容量)、続いて飽和水性塩化ナトリウム(500mL、5容量)で洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウム(50g、0.5%w/w)上で乾燥させる。塊を濾過し、メチルtert−ブチルエーテル(50mL、0.5容量)で洗浄する。得られた溶液を約1容量の溶液が残るまで真空下で濃縮する。石油エーテル(1500mL、15容量)を濃縮混合物に入れ、得られたスラリーを30℃未満で2時間撹拌する。固体を濾過により収集し、40℃で8時間真空下で乾燥させて、表題化合物を得る(65.9g、収率67%)。ES/MS m/z 298.0(M−H)。
【0089】
調製物59
N−((S)−1−(4−((S)−2−シクロプロピル−1−ヒドロキシエチル)フェニル)エチル)−2,2,2−トリフルオロアセトアミド
【化45】
水素化反応器に無水エタノール(7.89kg、10容量)を入れる。撹拌溶液に、(S)−N−(1−(4−(2−シクロプロピルアセチル)フェニル)エチル)−2,2,2−トリフルオロアセトアミド(1.0kg、1.0当量)を入れる。この溶液に、内部温度を30℃未満に維持しながら、カリウムtert−ブトキシド(tBuOH中1.0M、0.41kg、0.5容量)の溶液を入れる。次いで、溶液に(R)−RUCY(登録商標)−XylBINAP(0.0675kg、0.017当量)を入れる。25℃で撹拌しながら、水素化装置を水素ガスで2回パージする。パージ後、溶液を4.5kgの水素圧下で25℃で5時間撹拌する。5時間後、溶液を排出し、次いで42℃の真空で油状物に濃縮する。油状物をメチルtert−ブチルエーテル(11.115kg、15容量)に溶解し、次いで45℃の真空で油状物に濃縮する。油状物をメチルtert−ブチルエーテル(11.115kg、15容量)に溶解し、次いで45℃の真空で油状物に濃縮する。この油状物に、25℃でメチルtert−ブチルエーテル(22.23kg、30容量)を入れる。得られた溶液を水(15.0kg、15容量)、続いて水中のNaCl溶液(15.0Lの水中5.4kgのNaCl)で洗浄する。有機層を無水硫酸ナトリウム(1.5kg、1.5w/w)上で乾燥させ、次いで濾過し、メチルtert−ブチルエーテル(1.112kg、1.5容量)で洗浄する。濾過した溶液に活性炭(0.3kg、0.3w/w)を入れ、混合物を撹拌し、40℃で2時間加熱する。次いで、混合物を濾過し、メチルtert−ブチルエーテル(1.112kg、1.5容量)で洗浄する。濾過した溶液を45℃の真空で油状物に濃縮する。油状物を石油エーテル(9.84kg、15容量)に溶解し、45℃の真空で油状物に濃縮する。油状物を石油エーテル(9.84kg、15容量)に溶解し、45℃の真空で油状物に濃縮する。油状物に石油エーテル(19.68kg、30容量)を入れ、混合物を30℃で3時間撹拌し、得られた固体を濾過により収集し、石油エーテル(9.84kg、15容量)で洗浄する。単離した固体を40℃で5時間真空下で乾燥させて、表題化合物を得る(0.79kg、79%)。ES/MS m/z 300.0(M−H)。
【0090】
調製物60
N−((S)−1−(4−((R)−1−クロロ−2−シクロプロピルエチル)フェニル)エチル)−2,2,2−トリフルオロアセトアミド
【化46】
反応器にメチルtert−ブチルエーテル(4.45kg、6容量)およびN−((S)−1−(4−((S)−2−シクロプロピル−1−ヒドロキシエチル)フェニル)エチル)−2,2,2−トリフルオロアセトアミド(1.0kg、1.0当量)を入れる。溶液を10℃に冷却し、それに、内部温度を13℃未満に維持しながら、1−ホルミルピロリジン(0.066kg、0.2当量)をゆっくり入れる。次いで、溶液に、内部温度を13℃未満に維持しながら、塩化ベンゾイル(0.56kg、1.2当量)をゆっくり入れる。得られた溶液を25℃に温め、最大36時間撹拌する(反応過程中に反応を監視することができ、停止した場合には1−ホルミルピロリジンおよび塩化ベンゾイルを追加して入れることができる)。次いで、完了した反応物を40℃の真空で油状物に濃縮する。油状物を15℃に冷却し、次いで水性の10%重炭酸ナトリウム溶液(22.0kg、20容量)でクエンチし、25℃で3時間撹拌する。二相混合物に石油エーテル(6.56kg、10容量)を入れる。有機層を分離する。水層を石油エーテル(6.56kg、10容量)で抽出する。合わせた有機層を水性の10%重炭酸ナトリウム(5.0L、5容量)で3回洗浄する。次いで、有機層を水(5.0L、5容量)、続いて食塩水(5.0L、5容量)で洗浄する。有機層を無水硫酸ナトリウム(0.5kg、0.5w/w)上で乾燥させる。次いで、混合物を濾過し、石油エーテル(0.33kg、0.5容量)で洗浄する。濾液を40℃の真空で油状物に濃縮する。油状物をアセトニトリル(3.93kg、5容量)に溶解し、40℃の真空で油状物に濃縮する。油状物をアセトニトリル(3.93kg、5容量)に溶解し、40℃の真空で油状物に濃縮する。油状物をアセトニトリル(7.86kg、10容量)に溶解し、得られた表題化合物の溶液を次の工程で粗製のまま使用する。ES/MS m/z 318.0(M−H)。
【0091】
調製物61
tert−ブチル4−((S)−2−シクロプロピル−1−(4−((S)−1−(2,2,2−トリフルオロアセトアミド)エチル)フェニル)エチルピペラジン−1−カルボキシレート
【化47】
先に得たN−((S)−1−(4−((R)−1−クロロ−2−シクロプロピルエチル)フェニル)エチル)−2,2,2−トリフルオロアセトアミドの溶液に、N−Boc−ピペラジン(0.924kg、1.5当量)、続いて重炭酸ナトリウム(1.1kg、4.0当量)を入れる。得られた混合物を60時間85℃に加熱する。注:反応物を24時間毎に試料採取し、各試料を採取した後、反応物に追加量のN−Boc−ピペラジン(0.31kg、0.5当量)を入れる。完了したら、反応物を45℃の真空で濃縮して油状物を得る。油状物を水(10.0kg、10容量)およびメチルtert−ブチルエーテル(7.41kg、10容量)で希釈する。得られた二相混合物を分離し、水層をメチルtert−ブチルエーテル(7.41kg、10容量)で抽出する。合わせた有機層を30%クエン酸(5.0L、5容量)で5回抽出する。合わせた水層を石油エーテル(6.56kg、10容量)で2回洗浄する。15℃で炭酸ナトリウム(約25.0kg、25w/w)を添加して水層をpH9にする。塩基性化した水層をメチルtert−ブチルエーテル(7.41kg、10容量)で抽出する。合わせた有機層を水(5.0L、5容量)および食塩水(5.0L、5容量)で洗浄する。有機層を無水硫酸ナトリウム(0.5kg、50%w/w)上で乾燥させる。混合物を濾過し、メチルtert−ブチルエーテル(0.37kg、0.5容量)で洗浄する。濾液を40℃の真空により油状物に濃縮する。得られた油状物を無水エタノール(3.95kg、5容量)に溶解し、表題化合物の粗製の溶液を次の工程に直接使用する。ES/MS m/z 374.3(M+H−CFCO)。
【0092】
調製物62
tert−ブチル4−((S)−1−(4−((S)−1−アミノエチル)フェニル)−2−シクロプロピルエチル)ピペラジン−1−カルボキシレート
【化48】
先に得たtert−ブチル4−((S)−2−シクロプロピル−1−(4−((S)−1−(2,2,2−トリフルオロアセトアミド)エチル)フェニル)エチルピペラジン−1−カルボキシレートの溶液に無水エタノール(3.7kg、3.7w/w)を入れる。溶液を20℃に冷却し、それに水性の1M水酸化カリウム(3.0kgの水中0.168kgのKOH)を入れる。得られた混合物を25℃で10時間撹拌し、次いで、内部温度を30℃未満に保ちながら30%水性クエン酸(5.0kg、5w/w)をゆっくり添加することによりクエンチする。クエンチした溶液にメチルtert−ブチルエーテル(7.41kg、7.41w/w)を入れる。層を分離し、有機層を30%水性クエン酸(5.0kg、5w/w)で抽出する。15℃で炭酸ナトリウム(約25.0kg、25w/w)を添加して水層をpH8にする。塩基性化した水層を酢酸エチル(7.41kg、7.41w/w)で2回抽出する。合わせた有機層を水(5.0kg、5w/w)、次いで食塩水(5.0kg、5w/w)で洗浄する。有機層を無水硫酸ナトリウム(0.5kg、50重量%)上で乾燥させ、次いで濾過し、酢酸エチル(0.37kg、0.37w/w)で洗浄する。溶液を45℃の真空により油状物に濃縮する。得られた油状物をイソプロピルアルコール(2L、2容量)に溶解し、得られた溶液を45℃の真空により油状物に濃縮する。得られた油状物をイソプロピルアルコール(1.2L、1.2容量)に溶解し、表題化合物の粗製の溶液を次の精製工程に直接使用する。ES/MS m/z 374.2(M+H)。
【0093】
1000mL丸底フラスコに、イソプロピルアルコール(270mL、9容量)中のtert−ブチル4−((S)−1−(4−((S)−1−アミノエチル)フェニル)−2−シクロプロピルエチル)ピペラジン−1−カルボキシレート(30.0g、1.0当量)の溶液を入れる。20〜30℃の撹拌溶液に、L−ジベンゾイル酒石酸(L−DBTA、34.5g、1.2当量)を入れる。溶液を20〜30℃で2〜4時間撹拌する。得られたスラリーを20〜30℃で8〜12時間かけて撹拌する。軽質のスラリーにMTBE(300mL、10容量)を入れる。得られたスラリーを20〜30℃で12〜16時間かけて撹拌し増粘する。次いで、固体を濾過により収集し、MTBE(150mL、5容量)で洗浄する。固体を45〜55℃で12時間減圧下で乾燥させて、tert−ブチル4−((S)−1−(4−((S)−1−アミノエチル)フェニル)−2−シクロプロピルエチル)ピペラジン−1−カルボキシレートL−ジベンゾイル酒石酸塩を白色固体として得る(48.8g、収率83%、>98:2dr)。
【0094】
撹拌している1000mL丸底フラスコに、tert−ブチル4−((S)−1−(4−((S)−1−アミノエチル)フェニル)−2−シクロプロピルエチル)ピペラジン−1−カルボキシレートL−ジベンゾイル酒石酸塩(40.0g、1.0当量)、続いてジクロロメタン(400mL、10容量)を入れる。15〜25℃の撹拌溶液に10%NaCOの水溶液(pHを8〜10にするのに十分な、約6〜8容量)を入れる。二相混合物を15〜25℃で1時間撹拌し、次いで層を分液漏斗に分離する。有機層にDMSO(240mL、6容量)を入れる。溶液を40℃未満の減圧下で濃縮してジクロロメタンを除去する。DMSO中の遊離塩基化されたtert−ブチル4−((S)−1−(4−((S)−1−アミノエチル)フェニル)−2−シクロプロピルエチル)ピペラジン−1−カルボキシレートの溶液を次の工程で直接使用する。
【0095】
調製物63
6−クロロ−4−(メチルアミノ)ピリジン−3−カルボン酸エチル
【化49】
メチルアミン(16mL、水中11.6mol/L、186mmol)を0℃でアセトニトリル(300mL)中の4,6−ジクロロピリジン−3−カルボン酸エチル(20g、92mmol)の溶液に滴加する。反応混合物を2時間かけて室温に温める。反応混合物に水および酢酸エチルを添加し、水層を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機抽出物を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮乾固させる。得られた粗製の材料をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜100%EtOAc/ヘキサン)により精製して、適切な画分を濃縮した後、6−クロロ−4−(メチルアミノ)ピリジン−3−カルボン酸エチルを白色固体として得る(10.46g、52.14mmol、収率57%)。MS(m/z):201(M+H)。
【0096】
調製物64
[6−クロロ−4−(メチルアミノ)−3−ピリジル]メタノール
【化50】
THF(100mL)中の6−クロロ−4−(メチルアミノ)ピリジン−3−カルボン酸エチル(10.46g、52.14mmol)の溶液を、0℃で水素化リチウムアルミニウム(78.2mL、THF中1.0mol/L、78.2mmol)の混合物に滴加する。反応混合物を1.5時間かけて室温に温める。反応混合物に、水(3mL)、15%水性NaOH(3mL)、次いで水(9mL)を順次添加する。撹拌後、反応混合物をセライトパッドを通して濾過する。濾液を水で希釈し、ジクロロメタンで抽出する。合わせた有機抽出物を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮乾固させて、[6−クロロ−4−(メチルアミノ)−3−ピリジル]メタノールを淡黄色固体として得る(2.78g、収率27%)。セライト濾過ケーキをメタノールでさらに洗浄し、濾液を濃縮乾固させる。濾過ケーキからの固体を収集し、ジクロロメタンと共に撹拌し、セライトを通して濾過する。濾液をメタノール洗浄からの残渣と合わせ、その材料を濃縮乾固させて材料を保存する。濾過から収集した固体に4:1のクロロホルム:イソプロピルアルコールを添加し、混合物を一晩撹拌する。混合物をセライトパッドで濾過し、濾液を保存していた残渣と合わせ、濃縮乾固させて、追加量の[6−クロロ−4−(メチルアミノ)−3−ピリジル]メタノールを淡黄色固体として得る(5.07g、収率56%)。[6−クロロ−4−(メチルアミノ)−3−ピリジル]メタノールの全回収量は7.85g、収率83%)である。MS(m/z):173(M+H)。
【0097】
調製物65
7−クロロ−1−メチル−4H−ピリド[4,3−d][1,3]オキサジン−2−オン
【化51】
トリホスゲン(6.04g、20.4mol)を、−20℃でTHF(100mL)中の[6−クロロ−4−(メチルアミノ)−3−ピリジル]メタノール(5.07g、29.1mol)およびDIPEA(51.2mL、291mmol)の溶液に添加する。冷浴を取り外し、混合物を室温に温める。30分後、水を添加し、混合物をジクロロメタンで抽出する。合わせた有機抽出物を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮乾固させる。得られた粗製の材料をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜100%EtOAc/ヘキサン)により精製して、適切な画分を濃縮した後、7−クロロ−1−メチル−4H−ピリド[4,3−d][1,3]オキサジン−2−オンをオレンジ色固体として得る(5.13g、24.5mmol、収率84%)。MS(m/z):199(M+H)。
【0098】
調製物66
tert−ブチル4−[2−シクロプロピル−1−[4−[(1S)−1−[(1−メチル−2−オキソ−4H−ピリド[4,3−d][1,3]オキサジン−7−イル)アミノ]エチル]フェニル]エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(ジアステレオマー1)
【化52】
窒素下で、トルエン(17.4mL)中のtert−ブチル4−[1−[4−[(1S)−1−アミノエチル]フェニル]−2−シクロプロピル−エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(1.30g、3.48mmol)、7−クロロ−1−メチル−4H−ピリド[4,3−d][1,3]オキサジン−2−オン(864mg、4.35mmol)、および炭酸セシウム(2.27g、6.96mmol)の溶液に、ジクロロ[1,3−ビス(2,6−ジ−3−ペンチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン](3−クロロピリジル)パラジウム(II)(291mg、0.348mmol)を添加し、混合物を75℃で一晩加熱する。室温に冷却した後、混合物をシリカゲルのプラグを通して濾過し、酢酸エチルで溶出する。濾液を減圧下で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(20〜100%EtOAc/ヘキサン)により精製する。混合画分をシリカゲルクロマトグラフィー(50〜100%メチルtert−ブチルエーテル/ヘキサン)により再精製し、両方のカラムからの合わせた純粋な画分を濃縮して、tert−ブチル4−[2−シクロプロピル−1−[4−[(1S)−1−[(1−メチル−2−オキソ−4H−ピリド[4,3−d][1,3]オキサジン−7−イル)アミノ]エチル]フェニル]エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(ジアステレオマー1)をオフホワイト色泡状物として得る(1.312g、2.400mmol、収率69%)。MS(m/z):536(M+)。
【0099】
癌は、その開始および進行が、DNA修復、ゲノム安定性、細胞増殖、細胞死、接着、血管新生、浸潤、ならびに細胞および組織微小環境内転移を調節する1つ以上の遺伝子の異常機能によって誘導される疾患の不均一な集合としてますます認識されている。「癌」遺伝子の変異型または異常機能は、天然に存在するDNA多型、ゲノムコピー数の変化(増幅、欠失、染色体喪失、または複製による)、遺伝子および染色体構造の変化(染色体転座、逆位、または調節解除された遺伝子発現をもたらす他の再配列)、および点突然変異に起因し得る。癌性新生物は、1つの異常な遺伝子機能によって誘導され、同じ異常な遺伝子機能によって、またはさらなる異常な遺伝子機能によって悪化する維持および進行によって維持され得る。
【0100】
上述の遺伝的染色体異常を超えて、癌のそれぞれはまた、DNAメチル化、ゲノムインプリンティング、およびアセチル化、メチル化、またはリン酸化によるヒストン修飾を含むゲノムのエピジェネティックな修飾も含み得る。エピジェネティックな修飾は、悪性腫瘍の誘導および/または維持において役割を果たす可能性がある。
【0101】
ヒトの癌における細胞遺伝学的異常の広範なカタログが編集され、オンラインで維持され定期的に更新されている(US National Cancer Institute(NCI)Cancer Genome Anatomy Project(CGAP)ウェブサイトのThe Mitelman Database of Chromosome Aberrations in Cancerを参照されたい)。Wellcome Trust Sanger Institute Cancer Genome Projectは、腫瘍形成と因果関係がある全てのヒト遺伝子の詳細なオンライン「Cancer Gene Census」、ならびにヒト癌における体細胞突然変異のCOSMIC(Catalogue of Somatic Mutations in Cancer)データベースを維持している。様々な癌と因果関係がある細胞遺伝学的変化の豊富な情報を含むさらなる情報源は、Atlas of Genetics and Cytogenetics in Oncology and Haematologyである。
【0102】
生検、免疫表現型試験、および他の試験による癌性悪性腫瘍の診断は既知であり、慣用的に使用されている。高解像度の染色体バンドおよび高度な染色体画像技術に加えて、癌の疑いのある症例における染色体異常は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、核型分析、スペクトル核型分析(SKY)、多重FISH(M−FISH)、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、一塩基多型アレイ(SNPチップ)、ならびに当業者に既知でありかつ使用される他の診断および分析試験などの細胞遺伝学的分析を通じて決定することができる。
【0103】
IDH1およびIDH2の突然変異は、神経膠腫、多形性膠芽腫、星細胞腫、乏突起膠腫、傍神経節腫、骨髄異形成症候群(MDS)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)、甲状腺、結腸直腸、急性骨髄性白血病(AML)(Dang et al.,Trends Mol.Med.,2010,16:387−397、Ward et al.,Oncogene,2012,31(19):2491−2498)、黒色腫(Shibata et al.,Am.J.Pathol.,2010,178(3):1395−1402)、前立腺(Flaherty et al.,J.Clin.Oncol.,2014,32(suppl.4;Abstract 213)、Cairns et al.,Cancer Discovery,2013,3:730−741)、軟骨肉腫および肝内胆管癌(Balss et al.,Acta Neuropathol.,2012,124:883−891、Cairns et al.,Cancer Discovery,2013,3:730−741)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)(Cairns et al.Blood,2012.119(8):1901−1903)を含むが、これらに限定されない複数の癌腫瘍の種類において特定されている。突然変異は、活性部位の特定の残基またはその付近において見出されている:IDH1についてはG97D、R100、R132H、R132C、R132S、R132V、R132G、V71I、R132L、およびG123R(Dang et al.,Trends Mol.Med.,2010,16:387−397、Ward et al.,2012 and Supplementary Table 2)。
【0104】
IDH1およびIDH2の変異型は、α−ケトグルタル酸を2−ヒドロキシグルタル酸に還元する新形態活性(機能獲得)を有することが示されている。2−ヒドロキシグルタル酸の内因性産生はエナンチオ特異的であり、その結果D−エナンチオマー((R)エナンチオマーとも呼ばれる)が生成される。通常、細胞は低レベルの2−ヒドロキシグルタル酸を有するが、IDH1またはIDH2突然変異を保有する細胞は有意に上昇したレベルの2−ヒドロキシグルタル酸を示す。有意に上昇したレベルの2−ヒドロキシグルタル酸が、突然変異を保有する腫瘍および変異体IDH1またはIDH2を有する患者の血漿中に検出される。高レベルの2−ヒドロキシグルタル酸は、高メチル化表現型と関連しており、分化の阻止をもたらし、それが腫瘍形成の増強につながる。
【0105】
特定の不可逆的な共有結合阻害剤の活性は、Kによって定義される標的(IDH1またはIDH2)への結合、およびkinactによって定義される共有結合形成の潜在的な最大速度によって定義される。これら2つの要因は別個の実体ではなく、むしろ共有結合形成の望ましい効果を生み出すために一緒に働く。これは次の3点により図示される。
【0106】
第1に、求電子剤、例えばアクリルアミドが、求核剤、例えばシステインに対して適切に配置されなければならないという事実は、有機化学における共有結合形成の基本的構成要素である。求核剤が共有結合を形成するために求電子剤に接近しなければならない正確な角度および距離がある。求核剤の近くに求電子剤を単純に配置することは、共有結合形成には十分ではない。
【0107】
第2に、阻害剤の酵素への結合を安定化するために水素結合部分を含有するコア上の反応性基、例えば定位コアを組み込む場合、当業者は、定位コアがどのように標的に結合し、上述の最適な角度および距離を考慮して求核剤に対して求電子剤を配置するかを考慮しなければならない。同様に、求核剤の近くに求電子剤を単純に配置することは、共有結合形成には十分ではない。定位コアの変化は、阻害剤化合物が共有結合を形成する能力に影響を及ぼし得る。
【0108】
第3に、上記の2つの点が一緒に考慮されるとき、定位コア上の求電子部分の単なる存在は、共有結合が形成されることを示唆するのに十分ではない。
【0109】
以下のインビトロおよびインビボ研究は、様々な特定の癌細胞株に対する式IまたはIaの試験化合物の変異体IDH1およびIDH2タンパク質阻害活性および有効性を示す。これらのアッセイは一般に、ヒトの臨床治療活性を示すものとして当業者によって認識されている。開示された研究における変異体IDH1またはIDH2新形態タンパク質の阻害は、さらなる変異体IDH1およびIDH2新形態タンパク質に対して有効であると考えられる。変異体IDH1またはIDH2の阻害活性および有効性を示すアッセイは、実質的に以下のように、または同様のデータをもたらす同様のアッセイによって行うことができる。
【0110】
以下のアッセイの結果は、例示され試験された化合物がIDH1およびIDH2変異阻害剤として有用であり、変異体IDH1またはIDH2を発現する癌を治療するのに有用であり得ることを示す。
【0111】
IDH1およびIDH2変異酵素の生化学的アッセイ
IDH1−R132H、IDH1−R132C、IDH2−R172K、およびIDH2−R140Q変異酵素は、αKGの2HGへの変換を触媒する。2HGは、インライン固相抽出および質量分析を用いて分析される。この分析は、6460トリプル四重極質量分析計(G6460A Agilent)に接続されたRapidFire(登録商標)機器で行われる。
【0112】
N末端Hisタグを含有するIDH1変異体(R132HおよびR132C)およびIDH2変異体(R140QおよびR172K)タンパク質をE.coliで発現させ、ニッケルアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製する。酵素アッセイは、100mM Tris−HCl緩衝液、1mM DTT、0.005%TRITON(商標)X−100、120mM NaClを含有するV字底96ウェルポリプロピレンプレート中で行われる。IDH1 R132Hについては、α−ケトグルタル酸、NADPH、およびMnClがそれぞれ300μM、2.5μM、および300μMの最終濃度で含まれる。IDH1 R132Cについては、α−ケトグルタル酸、NADPH、およびMnClがそれぞれ100μM、10μM、および100μMの最終濃度で含まれる。IDH2 R172Kについては、α−ケトグルタル酸、NADPH、およびMnClがそれぞれ150μM、10μM、および150μMの最終濃度で含まれる。IDH2 R140Qについては、α−ケトグルタル酸、NADPH、およびMnClがそれぞれ3000μM、10μMおよび100μMの最終濃度で含まれる。最終pH=7.0。DMSOストックに溶解した試験化合物を4%の最終DMSO濃度で反応ミックスに希釈する。化合物を用量応答形式で試験する。アッセイは酵素の添加により開始される。酵素は、以下の最終濃度で使用される:IDH1 R132H、2nM;IDH1 R132C、0.5nM;IDH2 R172K、1.2nM;IDH2 R140Q、1.2nM。90分後、質量分析および反応生成物の定量化のための内部標準として3−ヒドロキシ−1,5−ペンタン二酸−2,2,3,4,4−d酸(5d−3HG)を含有するACN(50:50)を添加することにより、反応をクエンチする。クエンチした試料中の2−ヒドロキシグルタル酸(2HG)を、強アニオン交換カラムクロマトグラフィー(Phenomenex Strata−X−A SecurityGuard)を使用して分離し、6460トリプル四重極質量分析計(G6460A Agilent)において質量分析によって分析する。検出された2HGシグナルは、既知の2HG濃度を使用して生成された較正曲線を使用して分析物濃度に変換される。試験した各化合物について、阻害0%としてDMSO対照試料および阻害100%として無酵素対照を使用して阻害%を計算する。IC50値は、4パラメーター方程式を使用して、異なる化合物濃度における個々の阻害%値から得られる。これらの計算はActivity Base(IDBS)またはScreener(Genedata)データ分析プログラムを使用して行われる。
【0113】
このアッセイの結果は、例示され試験された化合物が、IDH1/R132HおよびIDH1/R132Cに対する変異体IDH1活性、ならびにIDH2/R140QおよびIDH2/R172Kに対する変異体IDH2活性を阻害することを示す。
【0114】
以下の実施例は本質的に上述のように試験され、以下の表14に示されるように、変異体IDH1および変異体IDH2に対して活性を示す。
【表13】
【0115】
野生型IDH1およびIDH2酵素の生化学的アッセイ
IDH1およびIDH2酵素は、イソクエン酸のαKGへの変換を触媒する。
N末端Hisタグを含有する野生型IDH1(National Center for Biotechnology Information、Accession:NP_001269316.1)およびIDH2(National Center for Biotechnology Information、Accession:EAX02082.1)タンパク質をE.coliで発現させ、ニッケルアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製する。酵素アッセイは、100mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)、1mM DTT、0.005%TRITON(商標)X−100、120mM NaClを含有するV字底96ウェルポリプロピレンプレート中で行われる。IDH1野生型アッセイについては、イソクエン酸、NADP、およびMnClがそれぞれ85μM、50μM、および20μMの濃度で含まれる。IDH2野生型アッセイについては、イソクエン酸、NADP、およびMnClがそれぞれ30μM、50μM、および10μMの濃度で含まれる。DMSOストック溶液に溶解した阻害剤を4%の最終DMSO濃度で反応混合物に希釈する。質量分析のための内部標準としてd6−2−ケトペンタン二酸(d6−αKG)を含有するACN(50:50)を添加することによって酵素アッセイを終了(クエンチ)する。10マイクロリットルの反応混合物を、100μLの水、ピリジン緩衝液(8.6%ピリジン、pH5)中の50μLの1M O−ベンジルヒドロキシルアミン、およびピリジン緩衝液中の50μLの1M N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)と合わせる。室温で1時間誘導体化した後、試料を600μLのEtOAcで抽出する。400μLの上層を取り出し、加熱窒素下で乾燥させ、100μLのMeOH/水(1:1)で再構成する。10μLの誘導体化試料を、Shimadzu Prominence 20A HPLCシステムおよびThe Thermo Quantum Ultra(商標)トリプル四重極質量分析計からなるLC−MSシステム上に注入する。分析物を、0.6mL/分の流速でWaters XBridge(商標)C18カラム(2.1×50mm、3.5μm)で分離する。移動相Aは水中0.1%ギ酸であり、移動相BはMeOHである。検出されたαKGシグナルは、既知のαKG濃度を使用して生成された較正曲線を使用して分析物濃度に変換される。試験した各化合物について、阻害0%としてDMSO対照試料および阻害100%として無酵素対照を使用して%阻害を計算する。IC50値は、4パラメーター方程式を使用して、異なる化合物濃度における個々の阻害%値から得られる。これらの計算はActivity Base(IDBS)またはScreener(Genedata)データ分析プログラムを使用して行われる。
【0116】
このアッセイの結果は、例示され試験された化合物が、IDH1 R132HまたはR132C変異酵素と比較してIDH1野生型酵素の阻害において活性が低く、IDH2 R140QまたはR172K変異酵素と比較してIDH2野生型酵素の阻害において活性が低いことを示す。
【0117】
表15の以下の実施例は本質的に上述のように試験され、変異酵素と比較して野生型酵素の阻害において活性が低い。
【表14】
【0118】
IDH1(R132H)生化学ジャンプ希釈アッセイ
凍結乾燥した実施例化合物を100%DMSOで10mMまたは100mMに再構成し、試験するまで室温に保つ。IDH1(R132H)−Hisタンパク質は、当業者に周知でありかつ一般的に使用されている方法によって発現および精製される。アッセイ試薬は以下のものを含んでいた:α−ケトグルタル酸(Sigmaカタログ番号K1875)、MnCl−Fisher Scientificカタログ番号M87−100、NADPH−Sigma−Aldrichカタログ番号N7505、Tris−HCl(Invitrogen、カタログ番号15567−027)、NaCl(Sigma、S3014)、ジチオトレイトール(Sigma、D5545)、およびTRITON(商標)X100(Peirce、28314)。PromegaからのNAD(P)H−Glo(商標)キット(G9061)。
【0119】
全体を通して使用されるアッセイ緩衝液は、100mM Tris−HCl(pH7.0)、120mM NaCl、1mM DTT、0.005%TRITON(商標)X−100、および2%DMSO(試験化合物の添加から)を含有する。各化合物のIC50は、Echo555で調製した化合物の用量応答を、アッセイ緩衝液中1.5nM IDH 1(R132H)、1mM α−ケトグルタル酸、1mM MnCl、および15μM NADPHと共にインキュベートすることによって決定する。反応物を室温で2時間インキュベートし、次いで6−シクロプロピル−5−(イソキノリン−5−イル)−2−[(3R)−4−(3−メトキシプロパノイル)−3−メチルピペラジン−1−イル]ピリジン−3−カルボニトリル(10μM)を使用して停止させる。NADPH濃度は、NAD(P)H−Glo(商標)キットを使用して、製造業者によって指定されるように測定される。発光シグナルをEnvision(Perkin Elmer;0.1秒/Luminescense Mirror/Lum700 WL400〜700フィルター)で読み取る。後続のジャンプ希釈実験において、IC50の10×に相当する化合物濃度を100nM IDH1(R132H)と共にプレインキュベートする。化合物の濃度は常に酵素濃度以上である。室温で2時間後、この混合物をα−ケトグルタル酸(10mM)、MnCl(10mM)、およびNADPH(15μM)を含有する溶液に1:100に希釈する。この最終酵素反応物は1nM IDH1(R132H)および0.1×[IC50]を含有する。室温で2時間インキュベートした後、NADPH濃度を6−シクロプロピル−5−(イソキノリン−5−イル)−2−[(3R)−4−(3−メトキシプロパノイル)−3−メチルピペラジン−1−イル]ピリジン−3−カルボニトリルおよびNAD(P)H−Glo(商標)キットを使用して上記に指定されるように測定する。3つの対照が含まれる:1)1mM α−ケトグルタル酸、1mM MnCl、および15μM NADPHを酵素活性を測定する最終アッセイに使用することを除いて、プレインキュベーションおよび酵素アッセイにおいて10×IC50化合物を含有する「10×対照」、2)プレインキュベーションおよび酵素アッセイの両方において化合物の代わりにDMSOを含有する「最大活性対照」、ならびに3)プレインキュベーションにおいて化合物の代わりにDMSO、および酵素アッセイにおいて0.1×IC50化合物を含有する「0.1×対照」。酵素を欠くがそれ以外は「最大活性制御」と同等の「最小活性対照」が含まれる。1mM α−ケトグルタル酸、1mM MnCl、および15μM NADPHを使用して、第2組の最大および最小活性対照を実施する。各アッセイ条件を三つ組で試験し、最大活性対照(10mM)および最小活性対照(10mM)について32の複製を実施し、同時に最大活性対照(1mM)および最小活性対照(1mM)について16の複製を実施する。
【0120】
各実験/対照において生成されたNADP(生成物)の濃度は、15μM NADPHを含有する最小活性対照に対する観察されたシグナルの減少パーセントを使用して決定される。最小活性対照(1mMおよび10mM)および最大活性対照(1mMおよび10mM)を平均し、それぞれについて標準偏差を計算する。各ジャンプ希釈および0.1×対照のシグナルに15を掛け、次いで最小活性対照(10mM)ウェルの平均計数で割る。この数を15から引いてNADP(μM積)を計算する。同じ計算を10×対照に使用するが、最小活性対照(1mM)を使用する。最大活性対照(1mMおよび10mM)の生成物のμモルを、平均計数に15を掛け、次いでそれぞれの最小活性対照(1mMおよび10mM)で割ることによって計算する。各ウェルのμM NADPを平均最大活性対照(1mMまたは10mM)で割り、次いで100を掛けて、化合物ジャンプ希釈、10×対照、および0.1×対照の%IDH活性を決定する。合格化合物は、10×対照に対して<30%の活性を示さなければならず、プレインキュベーション濃度が酵素を化合物で飽和させるのに十分であることを示す。加えて、化合物は0.1×対照に対して>70〜80%の活性を示さなければならず、これは0.1×/希釈化合物濃度では阻害がないことを確認する。
【0121】
実施例化合物は本質的に上述のように試験され、このアッセイにおけるIDH1/R132Hの回収%データを示す。本発明の例示され試験された化合物は、回収%で希釈2時間後に酵素を阻害しなかった従来の化合物に反して、希釈2時間後に酵素を阻害する。このアッセイからのデータは、阻害剤の希釈が酵素活性の回復をもたらさないため、本発明の試験化合物が変異体IDH1の共有結合的阻害と一致する様式で作用することを示す。
【0122】
IDH1変異阻害剤の細胞ベースのアッセイ
IDH1変異体R132Cの細胞阻害を試験するために、線維肉腫細胞株HT1080(ATCCから購入)を使用する。R132H突然変異の細胞ベースの阻害を試験するために、U87MG神経膠腫細胞株(ATCC)を、当業者に周知でありかつ慣用的に使用されている方法により、R132H変異酵素を発現するDNA構築物で安定にトランスフェクトした。
【0123】
HT1080細胞アッセイ:
化合物で処理する18〜24時間前に、15,000個の細胞をポリ−D−lys被覆96ウェルプレート(15,000細胞/ウェル)に平板培養する。化合物処理の4時間前に、通常の培地を除去し、無グルタミン培地と交換することによって細胞をグルタミン飢餓状態にする。飢餓状態にした後、次いで、細胞を、最終濃度0.2%でDMSOを含有する無グルタミン培地に溶解した異なる濃度の試験化合物(20μM〜1nM;または0.2μM〜0.01nM)で処理する。初期の化合物のインキュベーションは37℃/5%COで1時間である。1時間後、グルタミンを最終2mM濃度まで添加し、次いで処理細胞を37℃/5%COでさらに18時間インキュベートする。18時間のインキュベーション後、細胞溶解物中の細胞内2HGおよびαKGを分析する。溶解物は、培地を除去し、25mM Tris−HCl pH7.5、150mM NaCl、1mM EDTA、1mM EGTA/1%TRITON(商標)−X 100を含有する緩衝液を細胞に添加した後に調製される。溶解物のアリコートを内部標準としてd−αKGおよびd−3HGのミックスに添加し、混合物をN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)およびピリジンの存在下でO−ベンジルヒドロキシルアミンで処理する。次いで、分析物誘導体をEtOAcで抽出し、乾燥し、次いでHO中50%MeOHで再構成する。記載されるように調製した試料をHPLCに注入し、C18カラムにおいて逆相クロマトグラフィーを使用して2HGおよびαKG誘導体(および対応する内部標準)を分離する。試料の分析は、6460トリプル四重極質量分析計(G6460A Agilent)を使用して行う。検出された2HGおよびαKGシグナルは、αKG/d−αKGの比率および較正曲線内で外挿される2HG/d−3HGの比率を使用して分析物濃度に変換される。計算された2HGまたはαKG濃度を、化合物による細胞処理中にグルタミンの存在下および不在下で得られた最大および最小基準に対して正規化した後、各個々の試料についての阻害パーセントが得られる。IC50値は、シグモイド用量応答4パラメーター方程式を使用して個々の阻害%から得られる。これらの計算は、Activity Base(IDBS)またはScreener(Genedata)データ分析プログラムを使用して自動的に行われる。
【0124】
このアッセイの結果は、表15の試験された実施例が2−ヒドロキシグルタル酸の産生を阻害することを示し、このアッセイにおいて細胞における変異体IDH1 R132Cの阻害を示す。野生型IDH1によって生成される代謝物であるαKGは阻害剤による影響を受けず、このアッセイにおいて、化合物が細胞において野生型IDH1よりも変異体IDH1に対して選択的であることを示す。以下の実施例について得られたIC50値を表16に示す。阻害曲線が50%に達しなかったアッセイについては、試験した最高濃度が示される(例えばIC50>20μMまたは>0.2μM)。
【表15】
【0125】
U87MG/IDH1R132H細胞アッセイ
化合物で処理する18〜24時間前に、細胞をポリ−D−lys被覆96ウェルプレート(12,000細胞/ウェル)に平板培養する。化合物処理の4時間前に、通常の培地を除去し、無グルタミン培地と交換することによって細胞をグルタミン飢餓状態にする。飢餓状態にした後、次いで、細胞を、最終濃度0.2%でDMSOを含有する無グルタミン培地に溶解した異なる濃度の試験化合物(20μM〜1nM)で処理する。初期の化合物のインキュベーションは37℃/5%COで1時間である。1時間後、グルタミンを最終2mM濃度まで添加し、次いで処理細胞を37℃/5%COでさらに18時間インキュベートする。細胞内2HGを、培地除去および溶解緩衝液(25mM Tris−HCl pH7.5、150mM NaCl、1mM EDTA、1mM EGTA/1%TRITON(商標)−X100)での処理後に得られる細胞溶解物において分析する。細胞溶解物は処理するまで−80℃で保存する。分析物抽出のために、解凍した溶解物のアリコートを深型96ウェルプレートに移し、内部標準としてd−3HGを含有する冷MeOH、続いてクロロホルムおよびHO(1:4:3:2)で処理する。分離後に上相を収集し、6460トリプル四重極質量分析計においてMS/MS検出と組み合わせた親水性相互作用(HILIC)クロマトグラフィーを使用して2HG(および内部標準)を分離するためにHPLCに注入する。計算された2HG濃度を、化合物による細胞処理中にグルタミンの存在下および不在下で得られた最大および最小基準に対して正規化した後、各個々の試料についての阻害パーセントが得られる。IC50値は、シグモイド用量応答4パラメーター方程式を使用して個々の%阻害から得られる。これらの計算は、Activity Base(IDBS)またはScreener(Genedata)データ分析プログラムを使用して自動的に行われる。
【0126】
以下の実施例は本質的に上述のように試験され、以下の表17に示されるように、このアッセイにおいてU87MG細胞中の変異体IDH1/R132Hに対して阻害活性を示す。
【表16】
【0127】
インビボ2−ヒドロキシグルタル酸アッセイ
IDH1阻害剤のインビボ試験のために、HT1080細胞(R132C変異体IDH1を担持する線維肉腫)またはTB08細胞(R132H変異体IDH1を担持する二次膠芽腫)のいずれかの移植後、無胸腺ヌードマウス(20〜22g、Harlan Laboratories)において皮下異種移植腫瘍を成長させる。マウスに自由に給餌および給水させ、細胞移植の1週間前に馴化させる。腫瘍細胞(HT1080)または腫瘍断片(TB08)を右後腹部に移植する。HT1080の場合、5.0×10個の細胞を、最終容量0.2mlでマトリゲルとの1:1の混合物において移植する。TB08の場合、外植された腫瘍試料から生成された腫瘍断片を後側腹部に直接移植する。腫瘍体積を週2回キャリパにより測定し、腫瘍体積を0.536×L×W (L=長さ、およびW=幅である)を使用して計算する。腫瘍体積が150〜400mmに達したら、動物を無作為化し、群に分け(1群当たりn=3〜6匹)、IDH1阻害剤またはビヒクル対照を投与する。IDH1阻害剤については、化合物を、1%ヒドロキシエチルセルロース/0.25%Tween(商標)80/0.05%の消泡剤または1.1mol当量のHClを有する10%アカシアのいずれかを含有するビヒクルに配合する。化合物を浴槽超音波処理(bath sonicated)して懸濁液を得る。化合物を、最終容量0.2mlで強制経口によりミリグラム/キログラム(mpk)単位で投与する。2HGの阻害を測定するために、化合物を3日間1日2回(BID)投与する(全投与数=6)。化合物処置後、マウスをイソフルオラン麻酔および頸椎脱臼で安楽死させる。腫瘍を切除し、ラベル付きチューブに入れ、直ちに液体窒素で凍結する。腫瘍は処理のために−80℃で保存する。
【0128】
腫瘍溶解物の調製
XY Lite緩衝液は分子グレードの水中で調製され、以下の構成要素を含有する:25mM Tris、pH7.5、150mM NaCl、1%TRITON(商標)X−100、1mM EDTA、1mM EGTA。XY Lite(40ml)に、800μlのHaltプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤カクテル(Halt(商標)プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤カクテル、EDTA不含Thermo Scientific、カタログ番号78441)を添加する。試料をボルテックスしてから氷上で冷却する。オレンジキャップ溶解−Aチューブにラベルを付け、氷上のラックに設置する。セラミックの乳鉢と乳棒をドライアイスに設置して冷却する。乳鉢の底部に2×2インチ四方のアルミニウム箔を設置する。腫瘍試料を箔の正方形上の予め冷却した乳鉢に移す。液体窒素(約5ml)を添加して蒸発させ、腫瘍を超凍結する。別の箔片を腫瘍の上に置き、腫瘍をセラミックの乳棒で小片に粉砕する。粉砕した腫瘍を速やかに溶解チューブに移す。氷冷XY Lite(500μL)を各チューブに添加して蓋をする。次いで、FastPrep−24 MP Biomedical上で、スピード設定5で35秒間ずつ2回回転させることによって腫瘍を処理する。次いで、試料を14,000 rpmで4℃で30分間、Beckman Microfuge Rで遠心分離する。上清を予め冷却した96深型ウェルプレートに移す。ペレットは廃棄する。
【0129】
タンパク質アッセイ
タンパク質アッセイ希釈プレートは、最初に、XY緩衝液(145μl)を非無菌の96ウェル丸底Corningプレートに添加することによって生成される。これに、腫瘍溶解物(5μL)を添加して穏やかに混合する。プレートを氷上に保つ。BSA標準(Thermo Scientific カタログ23209 2mg/mL)の系列希釈を以下のように設定する:5つの0.5mLチューブをラックに設置し、XY緩衝液(60μL)をそれぞれに添加する。ストックBSA(60μl)を最初のチューブに添加し、ボルテックスする。以下のように希釈系列が完成するまで、最初のチューブからの60μlを次の試験管に移し、ボルテックス等する:チューブ1=ストックBSA、チューブ2〜5は1:2系列希釈、チューブ6=XY緩衝液単独。Thermo BCAタンパク質アッセイ試薬は製造業者の指示に従って混合する。混合BCA試薬(200μl)を各試料に添加し、15分間インキュベートする。タンパク質アッセイの結果はSOFTmax Pro Plate Readerで読み取る。タンパク質アッセイの結果に基づいて、適切な量のXY緩衝液を各腫瘍溶解物に添加して、5mg/mLの最終タンパク質濃度を生成する。全ての試料にラベルを付けて−80℃で保存する。
【0130】
腫瘍溶解物の代謝物分析
全2HGおよびαKGの濃度に対するIDH1阻害のインビボ効果は、腫瘍異種移植片の液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)分析によって決定される。この方法は、LC−MSによる分析前にO−ベンジルヒドロキシルアミンによる誘導体化を利用する。10マイクロリットルの各腫瘍溶解物を深型ウェル96ウェルプレートに入れ、10μM d−3HGおよび10μM d6−αKGを含有する100μLの内部標準溶液と合わせる。ピリジン緩衝液(8.6%ピリジン、pH5)中の50μLの1M O−ベンジルヒドロキシルアミンおよびピリジン緩衝液中の50μLの1M N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を各試料に添加する。誘導体化反応は室温で1時間進行する。Beckman Biomek FXリキッドハンドラーを使用して、600μLのEtOAcを各試料に添加する。プレートを密封し、5分間ボルテックスし、次いでそれらをEppendorf 5810R遠心分離機において4000rpmで5分間遠心分離する。400μLの上層を新しい96ウェルプレートに移す。試料を50℃で加熱窒素下で乾燥させ、100μLのMeOH/水(1:1)で再構成する。1マイクロリットルの誘導体化試料を、Shimadzu Prominence 20A HPLCシステムおよびThermo Quantum Ultra(商標)トリプル四重極質量分析計からなるLC−MSシステム上に注入する。分析物を、0.6mL/分の流速でWater XBridge(商標)C18カラム(2.1×50mm、3.5μm)で分離する。移動相Aは水中0.1%ギ酸であり、移動相BはMeOHである。勾配プロファイルは、0分、5%B;3分、100%B;4.00分、100%B;4.1分、5%B;5.50分、停止である。質量分析計は、陽イオン選択反応モニタリングモードで操作されるHESI−IIプローブを利用する。較正曲線は、分析物濃度対分析物/内部標準ピーク面積比をプロットし、Xcalibur(商標)ソフトウェアを用いて1/濃度重み付けを使用してデータの二次適合を行うことによって構築する。未知の分析物濃度は、較正曲線から逆算される。LC−MSアッセイからの代謝物データは、nmol/mgタンパク質で表される。ビヒクル処置群における平均2HGレベルは阻害0%対照を決定するために使用される。次いで、各阻害剤処置動物における阻害%はビヒクル対照に対して決定される。データをJMPソフトウェアで分析して、各用量群における平均阻害%、標準偏差、および標準誤差を決定する。
【0131】
例示され試験された化合物によるIDH1変異体異種移植片マウスにおける2−ヒドロキシグルタル酸のインビボ阻害を示すデータを以下の表18に示す。
【表17-1】
【表17-2】