特許第6793839号(P6793839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6793839回転可能な転がり接触体を有するプラグコネクタ用の電気コンタクトおよびそのようなコンタクトを備えた電気プラグイン接続部
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793839
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】回転可能な転がり接触体を有するプラグコネクタ用の電気コンタクトおよびそのようなコンタクトを備えた電気プラグイン接続部
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/11 20060101AFI20201119BHJP
   H01R 13/631 20060101ALI20201119BHJP
   H01R 13/20 20060101ALN20201119BHJP
【FI】
   H01R13/11 K
   H01R13/631
   !H01R13/20 D
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-535981(P2019-535981)
(86)(22)【出願日】2017年9月15日
(65)【公表番号】特表2019-526923(P2019-526923A)
(43)【公表日】2019年9月19日
(86)【国際出願番号】EP2017073303
(87)【国際公開番号】WO2018050834
(87)【国際公開日】20180322
【審査請求日】2019年3月13日
(31)【優先権主張番号】102016217673.0
(32)【優先日】2016年9月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100121533
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 まどか
(72)【発明者】
【氏名】ベック,カール
【審査官】 藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−011963(JP,A)
【文献】 実開昭48−088482(JP,U)
【文献】 特開2011−222463(JP,A)
【文献】 特開平07−037636(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0197603(US,A1)
【文献】 特開2000−299172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/00−13/35
13/56−13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相補形コンタクト(8)に接触するための接触面(12)を有する差込み方向(6)に差し込むことができるプラグコネクタ(3)用の電気コンタクト(1)であって、前記接触面(12)が、導電性材料製の回転可能な転がり接触体(20)を有し、
前記電気コンタクト(1)が、開口(26)を備えた転がり体ケージ(24)を有し、前記開口(26)内へ前記転がり接触体(20)が挿入され、
前記転がり体ケージ(24)には、個々の転がり接触体(20)または転がり接触体(20)のグループ(70)間には、前記転がり体ケージ(24)の表裏を貫通する脆弱領域(40)が設けられており、
前記脆弱領域(40)の周囲では、前記転がり体ケージ(24)が、前記脆弱領域(40)の前記周囲を超える範囲より柔軟性を有することを特徴とする電気コンタクト(1)。
【請求項2】
前記転がり体ケージ(24)は、円筒状の形態を有していることを特徴とする、請求項1に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項3】
前記転がり体ケージ(24)は、導電性材料製のスリーブ状のキャリア(51)内に保持され、前記キャリア(51)は前記転がり接触体(20)に接触していることを特徴とする、請求項2に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項4】
前記転がり接触体(20)は、前記転がり体ケージ(24)によって前記キャリア(51)で転がるように保持されていることを特徴とする、請求項3に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項5】
前記転がり体ケージ(24)は、前記キャリア(51)に対して可動であることを特徴とする、請求項3または4に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項6】
前記転がり体ケージ(24)は、前記転がり接触体(20)のグループ(70)が前記差込み方向(6)に一列に整列された第一行(72)と、
複数の前記転がり接触体(20)のそれぞれに対応して設けられ、前記差込み方向(6)に一列に整列される複数の前記脆弱領域(40)の第二行(74)と、を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項7】
前記転がり体ケージ(24)は、前記差込み方向(6)に延びる間隙(38)を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項8】
前記転がり体ケージ(24)は、前記キャリア(51)によって外から取り囲まれていることを特徴とする、請求項3から7のいずれか一項に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項9】
前記キャリア(51)は予圧ばねスリーブ(36)であり、前記予圧ばねスリーブ(36)は、前記転がり体ケージ(24)に影響し、前記転がり接触体(20)に作用する接触力(68)を生成することを特徴とする、請求項8に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項10】
前記キャリア(51)と前記転がり体ケージ(24)との間にスペーサ(52)が位置しており、前記転がり接触体(20)は、前記キャリア(51)から隔置されていることを特徴とする、請求項3から9のいずれか一項に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項11】
前記転がり体ケージ(24)は、ピン状の相補形コンタクト(8)を受け取るためのばねスリーブ(36)を形成していることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の電気コンタクト(1)。
【請求項12】
差込み方向(6)に嵌合させることができるプラグコネクタ(3)用の電気コンタクト(1)と相補形コンタクト(8)を備えた電気プラグイン接続部(2)であって、前記電気コンタクト(1)の接触面(12)が、前記電気コンタクト(1)と前記相補形コンタクト(8)の間に電気的なコンタクトを形成する回転可能な転がり接触体(20)を有し、
前記電気コンタクト(1)が、開口(26)を備えた転がり体ケージ(24)を有し、
前記開口(26)内へ前記転がり接触体(20)が挿入され、
前記転がり体ケージ(24)には、個々の前記転がり接触体(20)または前記転がり接触体(20)のグループ(70)間には、前記転がり体ケージ(24)の表裏を貫通する脆弱領域(40)が設けられており、
前記脆弱領域(40)の周囲では、前記転がり体ケージ(24)が、前記脆弱領域(40)の前記周囲を超える範囲より柔軟性を有することを特徴とする電気プラグイン接続部(2)。
【請求項13】
前記電気コンタクト(1)は、請求項2から11のいずれか一項によって構成されていることを特徴とする、請求項12に記載の電気プラグイン接続部(2)。
【請求項14】
前記電気コンタクト(1)は、嵌合状態で、前記相補形コンタクト(8)上を転がる前記転がり接触体(20)を介して、前記相補形コンタクト(8)に対して可動であることを特徴とする、請求項12または13に記載の電気プラグイン接続部(2)。
【請求項15】
前記相補形コンタクト(8)が、前記電気コンタクト(1)内に前記差込み方向(6)周りで回転可能に保持されていることを特徴とする、請求項12から14のいずれか一項に記載の電気プラグイン接続部(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相補形コンタクトに接触するための接触面を有する差込み方向に差し込むことができるプラグコネクタ用の電気コンタクトに関する。加えて、本発明は、差込み方向に嵌合させることができる2つのコンタクトを有する電気プラグイン接続部(an electrical plug−in connection)に関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなコンタクトは、たとえば相互に相補形のブッシングコンタクトおよびピンコンタクトの形で知られており、ピンはペグ形またはタブ形とすることができる。そのようなコンタクトの場合、相互に相補形のコンタクトの安定した接触を行うことが重要であり、特に接触抵抗が安定したままであることが重要である。これは、強い接触力、すなわち相互に相補形のコンタクトを接触面でともに押し付ける力が強いことによって実現される。一方では、非常に抵抗性の高い腐食層および不純物層を貫通するには、接触力によって大きい表面圧が実現されるように、接触面を可能な限り小さくするべきである。他方では、接触面を小さくしすぎてはいけない。そうでなければ、腐食層および不純物層を貫通した場合でも、大きい電流が流れたときに接触抵抗が大きくなりすぎる。
【0003】
接触力が大きいことに関するさらなる欠点は、特に大きいプラグの場合、強い差込み力を加えなければ、2つのコンタクトを嵌合させることができないことである。このときコンタクトが振動負荷のかかる環境で挿入される場合、一般に、ケーブルと嵌合コンタクトとの間の相対運動により、ケーブル断線が生じるリスクがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの両極間において、本発明の課題は、安定した接触抵抗の場合に振動負荷のかかる環境でも高い耐久性で小さい差込み力を使用して用いることができるプラグイン接続部用の電気コンタクトおよび電気プラグイン接続部を作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、上述した電気コンタクトの場合、接触面が、導電性材料製の回転可能な転がり接触体を有することによって解決される。本発明によれば、この課題は、上述した電気プラグイン接続部の場合、コンタクトのうちの1つの接触面が、2つの嵌合コンタクト間に電気コンタクトを形成する回転可能な転がり接触体を有することによって解決される。
【0006】
したがって本発明によれば、電気コンタクトは、回転可能な転がり接触体を介して形成される。転がり運動を実行することが可能になるように、転がり接触体は小さい接触面だけを有し、したがって接触力が小さい場合でも、腐食層および不純物層を貫通することが可能である。転がり接触体が回転可能であるため、転がり運動により相補形コンタクト間の摩擦が小さくなるため、相互に相補形のコンタクトを小さい差込み力だけで嵌合することが可能になる。さらに、転がり接触体が回転可能であることにより、振動中の動きを補償することが可能になり、ケーブル断線が生じるリスクが低減される。転がり接触体は、強い接触圧力でコンタクト間の平滑な動きを可能にする転がり軸受を形成する。
【0007】
本発明は、広範囲のさらなる構成によってさらに改善することができ、これらの構成は個々に有利であり、所望される場合は互いに組み合わせることができる。
【0008】
したがって、差込み力を最小にするために、接触面は好ましくは転がり接触体またはその外周面だけからなる。さらなる構成によれば、転がり接触体が、導電率が少なくとも30S/mの導電性材料からなる場合、接触抵抗を低減させることができる。特に、転がり接触体は、以下の金属、すなわち金、銀、アルミニウム、または銅のうちの少なくとも1つを含むことができる。転がり接触体は、特に球、円錐、円錐台、円筒形、針、および/または円柱である。
【0009】
さらに有利な構成では、電気コンタクトが、特に別個の構成要素として、開口を備えた転がり体ケージを有し、これらの開口内に転がり接触体が挿入されることが想定される。特に転がり体ケージが別個の構成要素として構成される場合、転がり体ケージおよび転がり接触体の事前組立てを、コンタクトの最終組立てとは別個に高い費用効果で実施することができる。
【0010】
転がり体ケージは、プラスチックなどの非導電性または電気絶縁性の材料から製造することができる。プラスチックを用いることによって、転がり接触体の低摩擦の取付けを高い費用効果で実現することができる。非導電性材料製の転がり体ケージが使用される場合、転がり体ケージの接触面とは反対側で、たとえば転がり体ケージのこの側で転がり接触体に接触する導電性材料(上記参照)製のスリーブまたはピンによって、転がり接触体からの電流を接触面から流すことができる。
【0011】
別の構成では、転がり体ケージは、導電性物質、たとえば転がり接触体に対して上記で指定したような物質から製造することができる。この場合、転がり体ケージによって電流を伝達することができる。
【0012】
転がり接触体は、好ましくは少なくとも一方の側、すなわち接触面で、転がり体ケージを越えて突出する。さらなる構成によれば、転がり接触体はまた、両側で転がり体ケージを越えて突出することができる。後者の構成は、転がり体ケージが非導電性材料から製造される場合、および/または転がり軸受による場合など、転がり体ケージがコンタクトにて可動に保持されている場合、特に有用である。したがって転がり体ケージは、導電性材料製のキャリアにて保持することができ、転がり接触体はキャリアに接触する。キャリアは、接触面から転がり接触体によって受け取った電流を伝達する働きをする。キャリア自体は、転がり接触体への電気コンタクトがオスコンタクトであるか、それともメスコンタクトであるかに応じて、スリーブ形またはピン形とすることができる。
キャリアおよび/または転がり体ケージの直径および/または幾何形状は、プラグイン接続部のそれぞれの標準に基づいている。多くの応用例で、その標準を満たすために、キャリアおよび/または転がり体ケージの直径は好ましくは、差込み方向における長手方向の長さより小さい。
【0013】
キャリアおよび/または転がり体ケージの内側または外側の断面は、丸形、円形、および/または多角形とすることができる。
【0014】
嵌合プラグコネクタ間の相対運動を可能にするために、転がり接触体は、転がり体ケージによってキャリアで、特に差込み方向周りで、転がるように保持することができる。さらなる構成では、転がり体ケージは、キャリアに対して可動である。この場合、転がり体ケージは、キャリアに対して並進するように特に差込み方向に沿って摺動可能とすることができ、かつ/またはキャリアに対して共通の長手方向軸周りで、特に差込み方向周りで回転可能とすることができる。一方では、電気コンタクトに取り付けられたケーブルが動いた場合、転がり体ケージとその中に保持される転がり接触体との可動性により、補償運動が可能になる。他方では、特に差込み方向に沿った転がり体ケージの可動性により、電気コンタクトの嵌合および解放が低減される。
好ましくは、すべての転がり軸受ケージの可動性にかかわらず、転がり軸受ケージは、たとえばロッキング接続部などのポジティブ接続部を介して、キャリアにて捕捉嵌合される。
【0015】
さらなる構成によれば、転がり軸受ケージおよび/またはキャリアは、接着により、特に一体的に、導体を圧着するための圧着部に接続することができる。この場合、電気コンタクトは、圧着コンタクトとして構成される。したがって、転がり接触体を用いることによって、確実な接触を保持し、差し込むのが容易であり、ケーブルの動きを補償する電気接続が、これらのタイプのコンタクトに対して可能になり、これらのコンタクトに導体が直接嵌合され、全体的なサイズは小さく、コンタクト直径は5mm未満である。
【0016】
さらなる構成によれば、転がり体ケージは、2つの部分から構成することができ、内側部分および外側部分を有することができ、内側部分と外側部分との間に転がり接触体が保持される。2つの部分のうちの一方は、非導電性物質から製造することができ、他方の部分は導電性物質からなり、したがって転がり接触体によって受け取った電流を伝達する。電流が転がり接触体を介して伝達される場合、当然ながら、両方の部分をプラスチックなどの非導電性物質から製造することができる。
【0017】
一方では接触力を生成するときに変形可能であり、他方では形状公差を補償することができるように、転がり体ケージの可動性を増大させるために、転がり体ケージには、個々の転がり体および/または転がり体のグループ間に脆弱領域が設けられ、脆弱領域内では、脆弱領域の環境に対して転がり体ケージの柔軟性が増大することが想定される。したがって、転がり接触体の領域では剛性がより大きく、転がり体ケージの変形が生じた場合、変形は柔軟性が増大することにより脆弱領域に集中するため、転がり接触体が確実に保持され、それでもなお容易に回転可能である。脆弱領域は、特に材料内に開口を有することができ、特にまた差込み方向において材料内に複数の連続開口を有することができる。
【0018】
転がり体ケージは、径方向にまたは差込み方向に対して横断方向に伸長または圧縮し、したがって接触力を作用させまたは伝達することが可能になるように、差込み方向に延びる間隙を有することができる。間隙は、転がり体ケージ全体を通って連続して延びることができ、または材料ブリッジによって分割することができる。
【0019】
特に電気コンタクトがスリーブ形である場合、転がり体ケージをスリーブによって外から取り囲むことができる。スリーブは、キャリアとして、または転がり接触体および転がり体ケージを保護する外側ハウジングとして働くことができる。スリーブは、導電性材料から製造された場合、転がり接触体によって受け取った電流を伝達する働きをすることができる。そのような場合、スリーブには、電気導体を取り付けることができる取付け部、たとえばはんだ付けまたは圧着部を、接着により、特に一体的に設けることができる。転がり体ケージは、スリーブ内で軸方向に不動に固定することができ、または2つの端位置間で摺動可能にすることができる。
さらに、転がり体ケージは、スリーブ内に回転可能に保持することができ、特に差込み方向周りで自由に回転可能に保持することができる。これは特に、コンタクトスリーブが円形の内側断面を有し、ピンコンタクトが円形の外側断面を有し、これらの断面が互いに同軸に位置合わせされている構成によって可能になる。しかしこれらの各構成、特にそれらの組合せにより、差し込まれたプラグイン接続部の可動性が増大し、ケーブル断線が防止される。
【0020】
転がり接触体は、キャリア上を転がることができ、そのためにキャリアは、転がり接触体のうち接触面から離れる方を向いている側に位置する転がり接触体のための滑り面を形成する。
【0021】
さらなる実施形態では、スリーブは予圧ばねスリーブとすることができ、そのばね力は、好ましくは、差込み方向に対して横断方向に、転がり体ケージに作用する。したがって、ブッシング状のコンタクトの場合、対応する相補形の、ほとんどの場合はピン形のコンタクトを挿入したときに、ばねスリーブが伸長することによって、接触力を生成することができる。逆に、ピン形のコンタクトの場合、スリーブを圧縮することができ、弾性圧縮によって接触力を生成することができる。
【0022】
転がり体ケージのキャリアと転がり体ケージとの間の相対運動が所望されない場合、スリーブと転がり体ケージとの間にスペーサが位置することができ、転がり接触体をキャリアから隔置することができる。スペーサは、キャリア、たとえばスリーブおよび/もしくは転がり体ケージ上に成形することができ、または別個の構成要素とすることができる。
【0023】
さらなる構成では、転がり体ケージ自体が、コンタクトスリーブを形成することができ、コンタクトスリーブ内にピンコンタクトが受け取られる。この場合、転がり体ケージは、差込み方向に対して横断方向に、特に差込み方向に対して径方向に、弾性的に伸長可能および/または圧縮可能であるばねスリーブとして構成することができる。この構成の場合、転がり体ケージには、たとえばコンタクトをプラグ内に嵌合するためのはんだ付けまたは圧着領域または圧着部などの取付け部を、接着により直接設けることができる。
【0024】
以下、本発明について、例示的な実施形態を使用して、添付の図面を参照しながら説明する。簡単にするために、個々の例示的な実施形態において、構造上および/または機能上互いに対応する要素に対して、同じ参照番号を使用する。例示的な実施形態において別途指示しない限り、先行する例示的な実施形態からの違いだけを説明する。さらに、先行する言及に従って、それぞれの個々の例示的な実施形態において異なる特徴は、所望される場合、互いに組み合わせることができる。加えて、例示的な実施形態の特徴は、特有の応用例においてその技術的な影響が重要でない場合、省略することができる。逆に、上記その他の例示的な実施形態に記載したような追加の特徴は、特有の応用例においてその特徴に関連する技術的な影響が必要とされる場合、例示的な実施形態に加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】プラグイン接続部を形成する相補形コンタクトに対する本発明によるコンタクトの概略斜視図である。
図2図1のコンタクトに対するプラグイン接続部の概略斜視図である。
図3】本発明によるコンタクトのさらなる例示的な実施形態の概略斜視図である。
図4】転がり体ケージ内の転がり接触体の概略斜視図である。
図5】相補形コンタクトに対する本発明によるさらなるコンタクトの概略斜視図である。
図6】本発明によるコンタクトのさらなる例示的な実施形態の概略斜視図である。
図7図6の線VII−VIIに沿って切り取った断面を示す概略斜視図である。
図8】転がり体ケージの概略斜視図である。
図9】本発明によるコンタクトのさらなる例示的な実施形態の概略斜視図である。
図10図9の線X−Xに沿って切り取った断面を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
第1に、構造および機能について、図1および図2に関連する電気コンタクト1および電気プラグイン接続部2に基づいて説明する。電気コンタクト1は、プラグコネクタ3の一部とすることができる。
【0027】
単なる例として、図示の電気コンタクト1には、スリーブ形の接触領域4が設けられており、接触領域4内へ、相補形コンタクト8、ここではペグ形のピンコンタクト10を差込み方向6に挿入することができる。別の構成では、ピンコンタクト10をタブ形に構成することもでき、その場合、対応する相補形に構成されたスリーブ形の接触領域5が必要である。
【0028】
電気コンタクト1および相補形コンタクト8が差込み方向6に嵌合される場合、それらの接触面12が接触する。ピンコンタクト10の場合、接触面12は外向きの外面14であり、スリーブ形のコンタクト1の場合、接触面12は内向きの内面16である。本発明によれば、接触面12、14、16のうちの少なくとも1つは、導電性材料、特に導電率が少なくとも30S/mの導電性材料から製造された回転可能な転がり接触体20を有する。転がり接触体は、好ましくは、以下の金属、すなわち金、銀、アルミニウム、および/または銅のうちの少なくとも1つを含む。
【0029】
差込み状態で、コンタクト1および8は、差込み方向6に対して同軸に位置合わせされる。
【0030】
図1および図2では、単なる例として、転がり接触体は球形である。別法または追加として、円錐形、円錐台形、円筒形、針形、および/または円柱形の転がり接触体を使用することができる。転がり接触体の直径は、0.5mm〜2mmである。
【0031】
また単なる例として、転がり接触体20を備えた接触面12は、スリーブ形のコンタクトに形成される。接触面12はまた、ピンコンタクト10に形成することもできる。
【0032】
転がり接触体20を有するコンタクト1、8の接触面12は、好ましくは、転がり接触体の表面22だけからなる。この目的で、転がり接触体20は、スリーブ形のコンタクト1の場合は内向きに、ピン形のコンタクト8が転がり接触体20を備えた場合(図示せず)は外向きに、各コンタクトからやや突出している。
【0033】
転がり接触体20は、転がり体ケージ24によって回転可能に保持される。この目的で、転がり体ケージは開口26を有し、開口26内に転がり接触体20が挿入される。これを図4に概略的に示す。転がり接触体20の一部分が、転がり体ケージ24内にしっかりと保持されており、図示の球形の転がり接触体20の場合、矢印28によって示すようにあらゆる方向に回転可能である。しかし、円錐形、円錐台形、円筒形、針形、および/または円柱形の転がり接触体は、1つの個々の回転軸周りのみで回転可能になるはずである。図4でさらにわかるように、転がり接触体20は、少なくとも一方の側に、好ましくは両側に、転がり体ケージ24を越えて突出する。
【0034】
図1および図2の例示的な実施形態の場合、転がり体ケージ24は、取付け部30を一体形成しており、取付け部30には、たとえばケーブル34の導体32を取り付けることができる。取付け部30は、圧着部とすることができ、かつ/またはたとえばはんだ付けなどによる接着接続のための区間を有することができる。取付け部30はまた、プラグハウジング内の電気コンタクトをさらなる電気コンタクトに取り付ける働きをすることができる。
【0035】
図1および図2の例示的な実施形態の場合、転がり体ケージ24は、ばねスリーブ36として構成されており、ばねスリーブ36は、差込み方向6を横断する方向に、弾性的に伸長可能または圧縮可能である。この目的で、転がり体ケージ24には、間隙38を設けることができ、間隙38は、差込み方向6に、転がり体ケージ24全体を通過することができ、または材料ブリッジ(図示せず)によって分割することができる。
【0036】
転がり体ケージ24は、1つまたは複数の脆弱領域40を有することができ、脆弱領域40内では、脆弱領域の環境に対して柔軟性が増大する。脆弱領域40は、個々の転がり接触体20間または転がり接触体20のグループ間に配置することができる。特に、脆弱領域40は、凹部42を有することができる。スリーブ形の転がり体ケージ24は、脆弱領域40によって形状公差に適合することができ、その変形は脆弱領域40に集中し、その結果、転がり接触体20の周りの領域を剛性に構成することができる。転がり接触体20の周りで剛性を増大させることで、転がり体ケージ24の変形が生じた場合に転がり接触体20が開口26内につかえる可能性を防止する。加えて、転がり体ケージ24の可撓性の構成により、転がり接触体20上への接触力の均一の分布が可能になる。
【0037】
2つのコンタクト1、8が嵌合するとき、一方のコンタクト1の転がり接触体20が、他方のコンタクト10の接触面12上を転がる。ばねスリーブ36、したがって転がり体ケージ24は、嵌合状態で弾性変形し、ここでは伸長しており、したがって転がり接触体20に接触力がかかる。個々の転がり接触体20によって供給される接触面が小さいため、大きい表面圧が生じて腐食層または不純物層を貫通し、コンタクト1、8間に確実な電気接触がもたらされる。接触圧力が高いにもかかわらず、転がり接触体が他方の接触面を摺動しないで転がるため、プラグイン接続部2は、わずかな力を加えるだけで差し込むことができる。
【0038】
プラグイン接続部の固定は、たとえばコンタクト1、8間の可動性を維持するコンタクト1、10間のロッキング接続部44によって実施することができる。回転可能であるが軸方向に固定されたロッキング接続部は、たとえば、相補形コンタクト8内に位置する差込み方向に対して円周方向の溝46によって供給することができ、2つのコンタクト1、8が完全な差込みを実現するとき、溝46内に1つまたは複数の転がり接触体が係合する。
【0039】
球形の転がり接触体を使用するとき、嵌合プラグイン接続部2により、差込み方向6周りで嵌合コンタクト1、10の相対回転48が可能になる。これにより、たとえば振動負荷のかかる環境で、ケーブル34の断線が回避される。
【0040】
図3に、電気コンタクト1の一実施形態が示されており、この場合、転がり体ケージ24は、導体32(図示せず)を圧着するように取付け部30と一体的に構成されている。したがって、電気コンタクト1は、圧着コンタクト47とすることができる。図1および図2の実施形態とは対照的に、転がり体ケージ24は脆弱領域40を有していないが、それにもかかわらずばねスリーブ36として作用する。
【0041】
図1〜3の例示的な実施形態の電気コンタクト1またはそれらの転がり体ケージ24は、打抜いた曲げ部分から製造され、好ましくは単体である。複数の部分からなる電気コンタクトが図5に示されており、この場合、ハウジング50として構成された転がり体ケージ24が、キャリア51によって受け取られている。転がり接触体20を備えた電気コンタクト1は、ここでは例として、コンタクトスリーブとしてのみ示されている。転がり体ケージ24はまた、キャリアとして、やはり図5に示されているピンコンタクト10に取り付けることができる。
【0042】
ハウジング50は、スリーブ形として外から転がり体ケージ24を取り囲んでおり、上述した構成のうちの1つにおいて、取付け部30を一体形成することができる。図5で、転がり体ケージ24は、たとえばプラスチックなどの非導電性材料から形成される。転がり体ケージ24は、特に射出成形することができる。その構成は特に、図1〜3の設計のうちの1つによる転がり体ケージ24の構成に対応することができる。
【0043】
キャリア51と転がり体ケージ24との間に、スペーサ52を配置することができる。スペーサ52は、キャリア51および/もしくは転がり体ケージ24に形成することができ、または別個の部分として形成することができる。図5で、スペーサ52は、転がり体ケージ24の一体構成要素である。転がり接触体20は、スペーサ52によってキャリア51から隔置されて保持される。それによって転がり接触体20は、ハウジング50、特にその内面54を転がることなく、自由に回転することができる。それによって、転がり体ケージ24は、相補形コンタクト8がコンタクト1に挿入されるとき、ハウジング50内に静止し続けることができる。
【0044】
スペーサ52は、差込み方向6に対して横断方向に圧縮可能とすることができ、したがって相補形コンタクト8を挿入するとき、転がり体ケージ24は、弾性的に伸長し、転がり接触体20に接触力をかけることができる。
【0045】
別法または追加として、転がり体ケージ24は、差込み方向6周りで円周方向56に互いから隔置されたキャリア51上の支持点56で支えることができ、中間領域58内でハウジングから隔置することができ、領域58内にスペーサ52を配置することができる。このようにして、相補形コンタクト8を挿入するとき、転がり体ケージ24は、スペーサ52がキャリア51に当接するまで伸長することができる。
【0046】
転がり体ケージ24は、複数の部分から構成することができる。これについて、内側部分60および外側部分62を有する2つの部分からなる転がり軸受ケージ24に基づいて、図6および図7を参照して説明する。転がり接触体20は、内側部分60と外側部分62との間で回転可能に保持される。この場合、転がり接触体20は、接触面12の側のみで転がり体ケージ24を越えて突出する。
【0047】
内側部分60ならびに外側部分62の両方に開口26が存在することができ、開口26は、転がり接触体20に対して位置合わせされ、好ましくはそれぞれ互いに同一平面で位置合わせされる。転がり接触体20のうち直径が最大の区間64は、内側部分60と外側部分62との間に位置し、この直径は、いずれの場合も、内側部分60および外側部分62における開口26の内側幅より大きい。したがって、転がり接触体20は、内側部分60と外側部分62との間にしっかりと保持される。
【0048】
先行する例示的な実施形態と同様に、相補形コンタクトを挿入するとき、転がり体ケージ24は弾性変形し、ここでは伸長している。これにより接触力68が生じ、接触力68は、差込み方向6に対して横断方向に、各転がり接触体20に作用する。
【0049】
内側部分60および/または外側部分62は、導電性材料から製造される。したがって、電流路66が、1つのコンタクト8から、転がり接触体20を通り、導電性の内側部分60および/または外側部分62を介して、図6および図7には示されていない電気導体へ進む。内側部分60は、好ましくはプラスチック製である。両部分60、62は、上述したように間隙38を備えることができ、かつ/またはやはり上述した構成における脆弱領域40を有することができる。2つの部分60、62の間隙38は、重なることができる。図6および図7の転がり体ケージ24は、先行する例示的な実施形態の転がり体ケージの代わりに使用することができる。
【0050】
先行する例示的な実施形態では、転がり接触体のグループ70、ここでは方形のベースに配置された2×2の転がり接触体のグループ70(図6参照)が、差込み方向6および差込み方向6周りの方向の両方で、隣接するグループ70からそれぞれ分離される。
【0051】
図8は、転がり接触体20のグループ70が差込み方向6に位置合わせされた行72を形成する転がり体ケージ24の構成を示す。個々の行72はそれぞれ、差込み方向6に延びる脆弱領域40によって分離されており、脆弱領域40は、差込み方向6に延びる凹部42の行74を有する。
【0052】
この構成で、行72は、脆弱領域40を介して差込み方向6周りの方向に互いに可動に接続された剛性部分を形成する。これにより、すべての転がり接触体が相補形プラグ8(図8には図示せず)に接触することができることが確実になる。
【0053】
図9および図10に、転がり体ケージ24がコンタクト1内に可動に受け取られた例示的な実施形態が示されている。この可動性は、転がり接触体20がキャリア51に接触し、キャリア51上を転がることが可能であることによって実現される。転がり体ケージ24の動きは、回転軸である差込み方向6周りで、かつ/または差込み方向6に沿って、並進するように可能である。
【0054】
差込み方向6周りで相補形プラグ8の回転運動48が生じた場合、転がり接触体20は、相補形プラグ8の外面14上を転がる。加えて、転がり接触体20は、キャリア51の内面16上を転がる。相補形コンタクト8の回転48が生じたときの転がり接触体20の転がり運動を、図10に矢印76によって示す。転がり接触体20が外面14および内面16上を転がることで、図10に矢印78によって示す転がり体ケージ24の回転が生じ、2つの回転方向(78、48)は同じである。平滑な転がり運動76を保証する十分な接触力68を生じさせるために、ばねスリーブ36が設けられる。図9および図10の構成で、ばねスリーブ36は別個の部分であり、キャリア51の上に組み立てられている。
【0055】
転がり体ケージ24が差込み方向6に沿って並進するようにキャリア51によって保持されており、2つの端位置間を可動である場合、相補形コンタクト8を後退させるとき、転がり軸受ケージ24は相補形プラグ8とともに、転がり接触体20の転がり運動によって同じ方向に動かされる。相補形コンタクト8を導入するとき、転がり体ケージ24は、相補形コンタクト8と同じ方向に動く。その結果、2つのコンタクト1、8間の相対運動によって、差込み方向における2つの端位置間の振動運動も補償することができる。
【0056】
転がり接触体20は転がり体ケージ24とともに、転がり軸受80を形成する。ハウジング50またはキャリア51は、転がり接触体20のための内側または外側の滑り面を、相補形コンタクト8の接触面12に形成することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 電気コンタクト
2 電気プラグイン接続部
3 プラグコネクタ
4 接触領域
6 差込み方向
8 相補形コンタクト
10 ピンコンタクト
12 接触面
14 外面
16 内面
18 スリーブ
20 転がり接触体
22 転がり接触体の表面
24 転がり体ケージ
26 開口
28 矢印
30 取付け部
32 導体
34 ケーブル
36 ばねスリーブ
38 間隙
40 脆弱領域
42 凹部
44 ロッキング接続部
46 溝
47 圧着コンタクト
48 長手方向軸周りの回転
50 ハウジング
51 キャリア
52 スペーサ
54 ハウジングの内面
56 支持点
58 支持点間の領域
60 内側部分
62 外側部分
64 直径が最大の区間
66 電流路
68 接触力
70 転がり体のグループ
72 転がり体の行
74 凹部の行
76 転がり接触体の転がり運動
78 転がり体ケージの回転
80 転がり軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10