(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、駆動力伝達装置が、車両用の自動変速機である場合を例に挙げて説明する。
図1は、変速機ケース10を説明する図である。
図1の(a)は、変速機ケース10を、トルクコンバータ(図示せず)側から見た平面図である。
図1の(b)は、変速機ケース10の開口部16を説明する図であって、変速機ケース10を斜め上方から見た斜視図である。なお、
図1の(a)では、変速機ケース10の壁部13における凹部14の領域にクロスハッチングを付することで、凹部14の領域を、他の領域から視覚的に区別できるようにしている。
なお、以下においては、
図1の(a)における変速機ケース10の設置状態を基準として、各構成要素の位置関係を説明する。
以下の説明において「上側」と記載した場合は、自動変速機の設置状態を基準とした上側を意味し、「下側(下部)」と記載した場合は、自動変速機の設置状態を基準とした下側を意味する。
【0010】
図1の(a)に示すように、変速機ケース10の下部には、差動装置の収容部15が設けられている。この収容部15は、図示しないトルクコンバータ側(紙面手前側)に開口している。
収容部15の中央部には、壁部13を厚み方向(軸線X方向)に貫通する貫通孔130と、この貫通孔130を囲むリング状のボス部131が設けられている。
【0011】
このボス部131では、ファイナルギアFが外周に固定されたデフケース(図示せず)が、回転可能に支持される。
ファイナルギアFは、変速機構部(図示せず)から回転駆動力が伝達されて、デフケース(図示せず)と一体に軸線X回りに回転する。
デフケース(図示せず)には、アクスルシャフト(図示せず)が連結されており、変速機構部(図示せず)側から伝達される回転駆動力は、アクスルシャフトを介して駆動輪(図示せず)に伝達される。
【0012】
軸線X方向から見て、変速機ケース10の周壁部11は、ファイナルギアFの近傍領域が、ファイナルギアFの外周を囲む弧状を成している。
周壁部11では、周方向に間隔をあけて複数のボルト孔12が設けられている。周壁部11の紙面手前側の端面11aは、トルクコンバータ(図示せず)を囲むカバーとの接合面となっている。
【0013】
変速機ケース10では、周壁部11の内側に、ファイナルギアFの側面を覆う壁部13が設けられている。壁部13は、ファイナルギアFよりも紙面奥側で、ファイナルギアFの側面に沿う向きで設けられている。
【0014】
壁部13には、前記したボス部131の外周から径方向に延びるリブ132、133、134が設けられている。これらリブ132、133、134の間の領域Rは、壁部13よりも軸線X方向の厚みが薄い薄肉部となっている。
【0015】
壁部13では、ボス部131よりも図中下側の領域に、段差部13aが設けられている。紙面手前側(図示しないトルクコンバータ側)から見て、段差部13aは、後記する支持筒137の外周を所定間隔で囲む略弧状に形成されている。
【0016】
図1の(a)に示すように、変速機ケース10の壁部13では、ボス部131から見て開口部16側(図中、右側)に、壁部13の面よりも紙面奥側に窪んだ凹部14が設けられている。
紙面手前側から見て、この凹部14は、軸線X周りの周方向で、前記したリブ132から、前記した壁部13の段差部13aに及ぶ範囲に設けられている。段差部13aは、壁部13と凹部14との境界を規定する壁部である。
【0017】
凹部14は、軸線Xよりも図中上側の上側領域14aが、リブ132に沿って、前後進切替機構(図示せず)の周壁部18側に延びている。そして、この上側領域14aの下側に連なる下側領域14bは、ボス部131の外周131aの接線L方向(図中、上下方向)に沿って、周壁部11側(図中、下側)に延びている。
下側領域14bと周壁部11との接続部には、ボルトボス部121が位置している。
【0018】
変速機ケース10では、凹部14よりも図中右側の領域が、オイルポンプ(図示せず)が設置される開口部16となっている。この開口部16は、紙面奥側に奥行きを持って形成されている。この開口部16の紙面奥側に、オイルポンプ(図示せず)が設けられるようになっている。
【0019】
変速機ケース10の下部には、開口17(
図1の(b)参照)が設けられている。変速機ケース10の下部に固定されたオイルパン(図示せず)が、この開口17を介して、前記した開口部16に連通している。
ファイナルギアFで掻き上げられたのち、自重により、鉛直線方向における下側に落下したオイルOLは、最終的に開口部16の下部に位置する開口17を通って、オイルパン(図示せず)に戻されるようになっている。
【0020】
凹部14における開口部16側の側縁141では、上側領域14aと下側領域14bの境界部141aが、開口部16の図中上下方向の幅を確保するために、図中上下方向で軸線Xよりも上側に位置している。
【0021】
さらに、この境界部141aは、ファイナルギアFの外周に沿う仮想円Im1よりも軸線X(回転軸)側に位置している。
そのため、変速機ケース10の壁部13では、開口部16が、仮想円Im1の内側のボス部131の近傍まで及んでいる。
これにより、図中左右方向における開口部16の幅が確保されている。さらに、軸線X方向から見て、ファイナルギアFの外周側の一部の領域が、開口部16と重なる位置に配置されている。
【0022】
本実施形態では、凹部14における下側領域14bは、支持筒137を設置可能な左右方向の幅を確保しつつ設けられている。
凹部14では、支持筒137と、壁部13側の段差部13aとの間の領域に、リブ19が設けられている。
【0023】
図2は、変速機ケース10の要部拡大図である。
図2の(a)は、変速機ケース10におけるリブ19周りを拡大した図である。
図2の(b)は、(a)におけるA−A断面図である。
なお、
図2の(a)では、壁部13よりも紙面奥側に窪んだ凹部14(下側領域14b)の部分にクロスハッチングを付して示している。
図2の(b)では、凹部14のトルクコンバータ側の面を覆うバッフルプレート5の流量調整部67周りを仮想線で示している。
【0024】
図2の(a)に示すように、紙面手前側(図示しないトルクコンバータ側:軸線X方向)から見て、リブ19は、後記するファイナルギアFの回転方向と交差する方向に延びている。
【0025】
リブ19は、ファイナルギアFの直径線Lnに沿う向きで形成されている。リブ19の長手方向における内径側の端部191と外径側の端部192は、同一の直径線Ln上に位置している。
リブ19における内径側の端部191と外径側の端部192との間の領域は、ファイナルギアFの回転方向で直径線Lnよりも下流側に位置している。
【0026】
紙面手前側から見て、リブ19は、内径側の端部191と外径側の端部192との中間部193が、最も直径線Lnから離れた位置に設けられている。
リブ19では、中間部193から外径側の端部192までの領域が、支持筒137の外周137aを所定間隔で囲む弧状に形成されている。
【0027】
リブ19における弧状に形成された領域の曲率半径は、以下の条件を満たすように設定されている。
(a)リブ19の外周19bの円弧を延ばした延長線Lm2が、ボルトボス部121の外周121aと交差しない。
(b)リブ19の内周19cに沿って流れるオイルOLが生じた場合に、当該オイルOLが開口部16に誘導される。
【0028】
この曲率半径の条件を満たしたうえで、リブ19の外径側の端部192は、支持筒137と、周壁部11と、段差部13aと、ボルトボス部121の何れにも接触しない位置に配置されている。
【0029】
リブ19では、内径側の端部191側の領域が、ボス部131の外周131aに向けて直線状に延びる形状で形成されている。
リブ19は、内径側の端部191に向かうにつれて、支持筒137の外周137aとの離間距離が大きくなるように設けられている。
この状態において、リブ19の内径側の端部191は、ボス部131と、段差部13aと、支持筒137の何れにも接触しない位置に設けられている。
【0030】
本実施形態のリブ19は、弧状の部分と直線状の部分とが直列に連なって形成されており、軸線X方向から見て線状を成している。
【0031】
ここで、本明細書における用語「線状」は、「直線状」、「曲線状」、「直線状と曲線状の組み合わせ」を含む概念である。さらに、「線状」は、必ずしも連続的である必要はない。
図2の(a)に示したリブ19は、内径側の端部191から外径側の端部192までが連続している。例えば、端部191と端部192の間の領域に、切欠き、溝などを設けて、連続性が途切れる部分が存在するリブとしても良い。
【0032】
本実施形態では、弧状の部分と直線状の部分とが直列に連なっているリブ19を例示した。リブの形状は、この態様のみ限定されるものではない。例えば、長手方向の全長に亘って直線状を成す形状でも良い。長手方向の途中位置に屈曲部を持つ形状でもよい。
【0033】
図2の(b)に示すように、リブ19におけるファイナルギアF側の先端面19xは、ファイナルギアFの回転軸(軸線X)に直交する平坦面となっている。前記した支持筒137の先端面137xもまた、ファイナルギアFの回転軸(軸線X)に直交する平坦面となっている。
【0034】
本実施形態では、リブ19と支持筒137は、凹部14におけるファイナルギアFとの対向面14xから、ファイナルギアF側に突出している。支持筒137には、ボルトBの軸部が螺入されるボルト穴137bが設けられている。
対向面14xからリブ19の先端面19xまでの高さh1は、対向面14xから支持筒137の先端面137xまでの高さh2よりも高くなっている。
【0035】
図1に示すように、変速機ケース10では、リブ19が設けられた凹部14に、前記した支持筒137の他に、さらにひとつの支持筒136が設けられている。
支持筒136は、凹部14における上側領域14aに設けられている。
この支持筒136もまた、支持筒137と同様に、後記するバッフルプレート5を支持させるために設けられている。
【0036】
これら支持筒136、137は、凹部14における仮想円Im1の内側に位置する領域から、紙面手前側に突出している。支持筒136、137は、軸線X周りの周方向に間隔をあけて設けられている。
【0037】
変速機ケース10の壁部13では、当該壁部13と凹部14との境界となる段差部13aが、ファイナルギアFの回転方向において、リブ19の下流側に設けられている。
紙面手前側から見て、段差部13aは、リブ19の外周19bを所定間隔で囲む弧状に形成されている。
【0038】
この段差部13aは、軸線Xの径方向に延びており、ボス部131とボルトボス部121とに跨がる範囲に設けられている。
図2の(b)に示すように、変速機ケース10の壁部13では、少なくとも段差部13aに接する領域のファイナルギアFとの対向面13xが、軸線Xに直交する平坦面となっている。
【0039】
前記した凹部14の対向面14xから壁部13の対向面13xまでの高さh3(軸線X方向の高さ)は、対向面14xからリブ19の先端面19xまでの高さh1よりも高くなっている。
【0040】
図3は、変速機ケース10におけるバッフルプレート5の配置を説明する図である。この
図3では、バッフルプレート5と、ファイナルギアFおよびドリブンスプロケット22との位置関係を説明するために、変速機ケース10の周壁部11の内側を簡略的に表記している。
【0041】
前記したように変速機ケース10では、開口部16内にオイルポンプ(図示せず)が設置される。
本実施形態では、駆動源の回転駆動力を、回転伝達機構2のチェーン23を介してオイルポンプに伝達して、オイルポンプを駆動する。
回転伝達機構2は、入力軸と一体に回転するドライブスプロケット21と、オイルポンプの出力軸25と一体に回転するドリブンスプロケット22と、ドライブスプロケット21とドリブンスプロケット22とに巻き掛けられたチェーン23と、を有している。
【0042】
本実施形態では、ドリブンスプロケット22が、図中、時計回り方向に回転する。ファイナルギアFも、図中時計回り方向に回転する。
自動変速機の駆動時には、変速機ケース10内のオイルOLが、回転するファイナルギアFやドリブンスプロケット22により掻き上げられる。
【0043】
例えば、変速機ケース10のオイルOLの油面OL_levelは、ファイナルギアFが回転している際には、ファイナルギアF側が低く、回転伝達機構2側が高くなる(
図3、オイルOLの高さを示す線分参照)。
【0044】
図3に示すように、ファイナルギアFの径方向外側には、回転伝達機構2が位置している。
そのため、ファイナルギアFにより掻き上げられて飛散したオイルOLが、ドライブスプロケット21やドリブンスプロケット22に作用すると、これらドライブスプロケット21やドリブンスプロケット22の回転に対するフリクションとなる。
【0045】
同様に、ドリブンスプロケット22により掻き上げられて飛散したオイルが、ファイナルギアFに作用しても、ファイナルギアFの回転に対するフリクションとなる。
さらに、ファイナルギアFにより掻き上げられて飛散したオイルOLが、ファイナルギアFに作用しても、ファイナルギアFの回転に対するフリクションとなる。
【0046】
そのため、変速機ケース10では、ファイナルギアFとドリブンスプロケット22とが軸線X方向の位置をずらして設けられている。
さらに、ファイナルギアFが掻き上げたオイルOLの回転伝達機構2側への飛散と、ドリブンスプロケット22が掻き上げたオイルOLのファイナルギアF側への飛散を防止するためのバッフルプレート5が設けられている。
【0047】
図4は、バッフルプレート5を説明する図である。
図4の(a)は、軸線X方向から見たバッフルプレート5の平面図であり、
図4の(b)は、バッフルプレート5の斜視図である。
図5は、バッフルプレート5の要部を説明する図である。
図5の(a)は、変速機ケース10に固定された状態のバッフルプレート5の流量調整部67周りを拡大して示した図である。
図5の(b)は、
図5の(a)におけるA−A線に沿って、バッフルプレート5を切断した断面を、変速機ケース10と共に示した図である。
図6は、バッフルプレート5の要部を説明する図である。この
図6は、
図4の(a)におけるA−A線に沿って、バッフルプレート5を切断した断面図であり、変速機ケース10側を仮想線で示している。
図6では、ファイナルギアFの回転方向におけるバッフルプレート5の上流側でのオイルOLの流れが示されている。
【0048】
図3に示すように、バッフルプレート5は、変速機ケース10におけるファイナルギアFが設けられた領域と、ドリブンスプロケット22が設けられた領域とに跨がって設けられている。
図4に示すように、バッフルプレート5は、ファイナルギアFの側面を覆う第1カバー部6と、ドリブンスプロケット22の側面を覆う第2カバー部7とを有している。
第1カバー部6と第2カバー部7は、軸線X方向で位置が異なっており、第2カバー部7のほうが紙面手前側に位置している。
【0049】
平面視において、第1カバー部6は、板状の基部60を有している。
基部60は、変速機ケース10側のボス部131の外周131aに沿って、軸線X周りの周方向に延びている。平面視において基部60は、弧状を成している。
【0050】
基部60の内径側の縁には、紙面手前側に突出する内壁部61が設けられている。
内壁部61は、基部60の内径側を、紙面手前側に曲げ起こして形成したものである。
平面視において内壁部61は、ボス部131の外周131aに沿う弧状を成している。内壁部61は、軸線X周りの周方向の全長に亘って、略同じ突出高さで設けられている。
【0051】
変速機ケース10において、バッフルプレート5は、内壁部61を、ボス部131の外周131aに接触させて設けられている(
図3参照)。バッフルプレート5は、ボス部131の外周131aに接触する内壁部61により、軸線Xの径方向の位置決めがされている。
【0052】
図4の(a)に示すように、基部60の外周までの半径Rは、ファイナルギアFの外周までの半径rよりも大きい径に設定されている。
変速機ケース10におけるバッフルプレート5の第1カバー部6が設けられた領域では、ファイナルギアFの壁部13側の側面が、第1カバー部6の基部60で覆われている。
【0053】
基部60の外径側の縁には、紙面手前側に突出する外壁部62が設けられている。
外壁部62は、基部60の外径側を、紙面手前側に曲げ起こして形成されている。
軸線X周りの周方向における外壁部62の途中位置には、切欠部62aが設けられており、外壁部62は、切欠部62aを境にして2つに分かれている。
【0054】
軸線X方向から見て、外壁部62における切欠部62aよりも上側の領域(第1外壁部621)と、下側の領域(第2外壁部622)は、ファイナルギアFの外周に沿う弧状を成している。
ファイナルギアFの回転方向において第1外壁部621は、第2外壁部622よりも上流側に位置している。
【0055】
下流側の第2外壁部622は、基部60から離れる方向に屈曲されており、屈曲した先が第2カバー部7の基部70となっている。
そのため、バッフルプレート5は、第1カバー部6と第2カバー部7とから一体に形成されている。
本実施形態では、1枚の金属板のプレス成形により、バッフルプレート5における後記するセパレータ75を除いた他の部位が作製される。
【0056】
第2カバー部7の板状の基部70は、第1カバー部6から離れる方向に延びている。基部70は、第1カバー部6の基部60に対して略平行に設けられている。
図1、
図3を参照して、第2カバー部7は、変速機ケース10の周壁部11に沿って、開口部16を、図中左右方向に横断する向きで設けられている。
【0057】
変速機ケース10では、第2カバー部7の基部70が、オイルポンプの回転軸Xpを横断して設けられる。基部70における回転軸Xpと交差する領域には、基部70を厚み方向に貫通する貫通孔72が設けられている。
この貫通孔72を貫通した回転軸が、基部70の紙面手前側で、ドリブンスプロケット22に一体回転可能に連結されている。
【0058】
図4(a)に示すように、基部70における第1カバー部6寄りの位置であって、側壁部71側の領域には、ファイナルギアF側の空間と、ドリブンスプロケット22側の空間とを区画するセパレータ75が取り付けられている。
【0059】
セパレータ75は、ファイナルギアFの外周に沿う弧状の壁部751と、ドリブンスプロケット22の外周に沿う形状の壁部752と、これら壁部751、752を両側に有する取付部750と、を有している。
【0060】
図5の(b)に示すように、セパレータ75は、壁部751と、第1カバー部6の第2外壁部622とが略面一となる位置に設けられている。
【0061】
図4に示すように、第1カバー部6では、基部60の幅方向の略中央部に、紙面奥側に窪んだ凹部63、64が設けられている。これら凹部63、64は、ファイナルギアFの回転方向(
図4の(a)における時計回り方向)で間隔を開けて設けられている。
これら凹部63、64は、変速機ケース10側の支持筒136、137に対応して、一対一で設けられている。
【0062】
凹部63、64は、基部60をファイナルギアFから離れる方向に窪ませて形成されている。
平面視において凹部63、64は、ボルトBの頭部を所定間隔で囲む円形を成している。凹部63、64の中央には、ボルトBの貫通孔63a、64aが設けられている。
凹部63、64は、ボルトBの頭部を収容可能な直径方向の幅Wbと、深さLbで形成されている(
図5の(b)、
図6参照)。
【0063】
図4に示すように、バッフルプレート5の第1カバー部6では、基部60の一端部601に、ガイド部65が設けられている。基部60の他端部602に、流量調整部67が設けられている。ファイナルギアFの回転方向において、基部60の一端部601は、他端部602よりも上流側に位置している。
【0064】
図4の(a)に示すように、第1カバー部6の基部60では、内壁部61および外壁部62と、流量調整部67との境界を規定する切欠部602a、602aが、他端部602に設けられている。
流量調整部67は、基部60の他端部602から、ファイナルギアFの回転方向における下流側に向けて延出している。
紙面手前側から見て流量調整部67は、バッフルプレート5を変速機ケース10に固定した状態で、変速機ケース10側のリブ19を、ファイナルギアFの回転方向の上流側から下流側に跨ぐ範囲に設けられている。
流量調整部67の先端67aは、変速機ケース10側の段差部13a沿う弧状を成している。流量調整部67の先端67aは、バッフルプレート5を変速機ケース10に固定した状態で、段差部13aとの間に、ファイナルギアFの回転方向に間隔をあけて対向するようになっている。
【0065】
図5の(b)に示すように、流量調整部67におけるリブ19との対向面67xは、リブ19の先端面19xに対して平行な平坦面となっている。
本実施形態では、バッフルプレート5を変速機ケース10に固定した状態で、流量調整部67の対向面67xと、リブ19の先端面19xとが、所定のクリアランスCLを持って対向するようにしている。
【0066】
このクリアランスCLは、ファイナルギアFが回転している際に、ファイナルギアFの回転方向におけるリブ19の上流側(
図5の(b)における右側)から下流側(
図5の(b)における左側)に向けて移動するオイルOLの量を調節するために設定されている。
このオイルOLの移動は、ファイナルギアFの回転による負圧で生じるものである。
【0067】
図4の(a)および
図6に示すように、ファイナルギアFの回転方向における基部60の上流側には、ガイド部65が設けられている。
【0068】
図4に示すように、ガイド部65は、基部60に設けた切欠溝601aの内径側を、切欠溝601aに交差する仮想線Lm2(ファイナルギアFの直径線)に沿って、紙面手前側(ファイナルギアFに近づく側)に曲げて形成される。
【0069】
図6に示すように、ガイド部65は、基部60に直交する向きの第1ガイド部651と、この第1ガイド部651の先端から延びる第2ガイド部652と、を有している。
第2ガイド部652は、基部60から所定高さha離間した位置にあり、凹部63から離れる方向に延びている。第2ガイド部652は、基部60に対して略平行に設けられている。
【0070】
ガイド部65の先端縁652aは、第1外壁部621の端部621aよりも、ファイナルギアFの回転方向の下流側に位置している。
【0071】
本実施形態では、バッフルプレート5の第1カバー部6は、凹部63、64の部分を支持筒136、137(
図5の(b)、
図6参照)に載置したのち、凹部63、64の貫通孔63a、64aを貫通させたボルトB、Bにより、支持筒136、137に固定される。
【0072】
この状態において、第2ガイド部652が、変速機ケース10側のリブ132(
図3参照)の上面132aとの間に隙間Sをあけて、上面132aに対向配置される(
図6参照)。
そして、この状態において第2ガイド部652の先端縁652aは、ファイナルギアFの回転方向におけるリブ132の幅の略中間となる位置まで及んでいる。
【0073】
さらに、この状態において、第1カバー部6の基部60は、凹部64が設けられた領域(基部60の他端部602側の領域)を、ファイナルギアFの回転時の変速機ケース内のオイルOLの油面(OL_level:
図3参照)よりも下側に配置する。
【0074】
そのため、基部60における凹部64の位置は、ファイナルギアFの回転方向における下流側の位置であって、ファイナルギアFの回転時に、変速機ケース内のオイルOLの油面OL_level(
図3参照)よりも下側となる位置に配置される。
【0075】
さらに、この状態において、基部60の他端部に設けた流量調整部67が、変速機ケース10側のリブ19を、ファイナルギアFの回転方向における上流側から下流側に向けて跨いで配置される。さらに、流量調整部67の対向面67xと、リブ19の先端面19Xとの間に、所定のクリアランスCLが確保されている。
【0076】
以下、実施形態にかかるバッフルプレート5の作用を説明する。
図3に示すように、ファイナルギアFが軸線X回りに回転すると、変速機ケース10内のオイルOLが掻き上げられる。
そうすると、掻き上げられたオイルOLが変速機ケース10内で上方に向けて飛散する。さらに、ファイナルギアF側のオイルOLの量が少なくなる一方で、回転伝達機構2側のオイルOLの量が増加する。これにより、変速機ケース10内のオイルOLの油面OL_levelが、
図3に示すような状態となる。
【0077】
掻き上げられたオイルOLは、軸線X周りの周方向に移動して、バッフルプレート5のガイド部65に、
図3における上側から作用する(図中、矢印参照)。
前記したように、ガイド部65の第2ガイド部652は、リブ132の上面132aとの間に隙間Sを持って設けられている(
図6参照)。そして、ガイド部65に到達したオイルOLのうち、リブ132に沿って流れるオイルOLは、隙間Sからバッフルプレート5の第1カバー部6の内側(凹部14側)に進入する。
そして、第1カバー部6の内側(凹部14側)に進入したオイルOLは、開口部16、開口17を通って、最終的にオイルパン(図示せず)に回収される。
【0078】
よって、第1カバー部6の外側(ファイナルギアF側)へのオイルOLの流入量が、少なくなる。これにより、第1カバー部6の外側に位置するファイナルギアFに作用するオイルOLの量を抑えることができる。
【0079】
さらに、第1カバー部6では、ファイナルギアFの回転方向における下流側に、流量調整部67が設けられている。
変速機ケース10の凹部14に設けた支持筒137は、ファイナルギアFの回転時に、オイルOLに浸かる位置に設けられている。
【0080】
ここで、ファイナルギアFの回転時には、ファイナルギアFの回転方向における支持筒137よりも下流側の領域は、上流側の領域よりもオイルOLの高さが低くなる。
そして、凹部14における支持筒137の周りの領域には、ファイナルギアFの回転による負圧が生じて、段差部13a側に向かうオイルOLの流れが生じる。
【0081】
本実施形態では、支持筒137と段差部13aとの間にリブ19が設けられている。このリブ19は、ファイナルギアFの回転軸(軸線X)の径方向に向けて延びており、凹部14を横切る向きと範囲で設けられている。
【0082】
そのため、ファイナルギアFの回転により生じた負圧により、リブ19をファイナルギアFの回転方向における上流側から下流側に横切る向きのオイルOLの流れが発生する。
【0083】
本実施形態では、流量調整部67の対向面67xと、リブ19の先端面19xは、所定のクリアランスCLを持って対向している(
図5の(b)参照)。
このクリアランスCLは、ファイナルギアFの潤滑に必要な量のオイルOLが、クリアランスCLを通ってファイナルギアF側に流入するように、実験などの結果を踏まえて設定されている。
【0084】
そのため、ファイナルギアFの回転により負圧が生じると、リブ19周りのオイルOLは、ファイナルギアFの潤滑に必要な量だけ、クリアランスCLを通って、リブ19よりも下流側に流入できるようになっている。
そして、移動したオイルOLは、段差部13aを通って、壁部13とファイナルギアFとの間に流入して、ファイナルギアFを潤滑する。
【0085】
すなわち、オイルOLは、流量調整部67の対向面67xとリブ19の先端面19xとの間のクリアランスCLを通って、ファイナルギアF側に供給される(
図5の(a)、中線で示すオイルの流れ参照)。
よって、ファイナルギアFの潤滑に必要なオイルの流量を確保しつつ、ファイナルギアF側に流入するオイルOLの総量を抑えることができる。
これにより、ファイナルギアFの回転に対するフリクションとなるオイルOLの総量を抑えることができるので、自動変速機を搭載した車両の燃費の向上が期待できる。
【0086】
図7は、先端面19xを有するリブ19の形成過程を説明する図である。
変速機ケース10は、一対の金型を用いた鋳造により作製される。
前記したように、リブ19の先端面19xは、バッフルプレート5の流量調整部67の対向面67xとのクリアランスCLが、予定されていたクリアランスになるようにするために、精度を持って形成する必要がある。
【0087】
そのため、本実施形態では、
図7に示すように、鋳造により得られた変速機ケースにおいて、最終的にリブ19となる領域19’を、最終的に形成されるリブ19の高さh1よりも高い高さh1’で形成する。
そして、リブ19となる領域19’の先端側を、カッター等により切削することで、平坦な先端面19xを有するリブ19を、所定の高さh1で形成する。
これにより、リブ19の先端面19xと流量調整部67の対向面67xとのクリアランスCLを、予定されていたクリアランスで精度良く形成できるようにしている。
【0088】
本実施形態では、凹部14のファイナルギアFとの対向面14xからリブ19となる領域19’の上端までの高さh1’を、凹部14の対向面14xから壁部13の対向面13xまでの高さh3よりも低くしている。
さらに、高さh1’を、凹部14の対向面14xから支持筒137の先端面137xまでの高さh2よりも高くしている。
そのため、リブ19となる領域19’の上端を切削する際に、壁部13や支持筒137も切削されないようにしている。
【0089】
また、本実施形態では、リブ19が、支持筒137と、周壁部11と、段差部13aと、ボルトボス部121の何れにも接触しない位置に配置されている。
そのため、リブ19となる領域19’の上端を切削する際に、支持筒137と、周壁部11と、段差部13aと、ボルトボス部121が、誤って切削されることが生じにくくなっている。
さらに、リブ19となる領域19’以外の部分が誤って切削された場合には、切削された部分に、切削に起因する応力集中が生じ、耐久性の低下の原因となる場合があるが、かかる事態の発生を好適に防止することができる。
【0090】
以下、本実施形態にかかる自動変速機(駆動力伝達装置)の構成を、効果と共に列挙する。
(1)自動変速機は、ファイナルギアF(ギア)と、変速機ケース10と、ファイナルギアFの側面と変速機ケース10の壁部13との間に位置するバッフルプレート5と、を有する。
変速機ケース10では、ファイナルギアFの回転軸(軸線X)方向で、ファイナルギアFと変速機ケース10の壁部13(凹部14)との間に、バッフルプレート5の第1カバー部6が位置している。
バッフルプレート5の第1カバー部6は、ファイナルギアFの回転方向に沿う弧状の基部60を有している。
軸線X方向から見て、基部60では、ファイナルギアFの回転方向における下流側の端部が、軸線Xに直交する向きで配置された板状の流量調整部67(下流側端部)となっている。
変速機ケース10では、凹部14における流量調整部67に対向する領域に、流量調整部67に向けて突出するリブ19が設けられている。
リブ19の先端面19x(流量調整部67側の表面)と、バッフルプレート5の流量調整部67における凹部14に対応する対向面67x(表面)との間に、クリアランスCLが設けられている。
リブ19は、ファイナルギアFの回転方向と交差する線状部分を有している。
【0091】
バッフルプレート5における流量調整部67(下流側端部)の近傍領域では、ファイナルギアFが回転すると、バッフルプレート5の凹部14側(裏側)から、表側(ファイナルギアF)側に向かうオイルの流れが生じる。
自動変速機では、バッフルプレート5の裏側から表側に向かう油の流れをある程度許容する必要があるために、バッフルプレート5と変速機ケース10との間に、クリアランスが必要である。
しかし、クリアランスの量が大きすぎると、ファイナルギアF側に流入するオイルの量が多くなって、ファイナルギアFの回転に対する抵抗となる。
【0092】
上記のように構成してリブ19を設けることで、クリアランスを詰めることができる。これにより、ファイナルギアF側に流入するオイルの量を減少させることができる。
さらに、リブ19は、ファイナルギアFの回転方向と交差する線状部分を有する形状で形成されている。軸線X方向から見て、バッフルプレート5とリブ19とのオーバーラップ量を調整できる。
例えば、バッフルプレート5とリブ19とのオーバーラップ量を増やすと、点状のリブを設けた場合と比較して、ファイナルギアF側に流入するオイルの量を減少させることができる。
【0093】
さらに、リブの形状を線状とすることにより、当該線状の長手方向における応力に対する強度を向上することができる。
カッターを用いて切削する場合は、周辺の段差部分(例えば、ボス部131、周壁部11、段差部13aなど)を避けて、カッター切削をすることが可能となる。
これにより、周辺の段差部分が切削されて、切削された部分に応力集中することを防止することができる。
【0094】
さらに、本実施形態にかかる自動変速機は、以下の構成を有している。
(2)変速機ケース10は、バッフルプレート5と重なる位置に、開口17を介してオイルパンと連通する開口部16を有している。
リブ19の線状部分は、自動変速機の設置状態を基準とした鉛直線方向で、上側の端部191(内径側の端部)から下側の端部192(外径側の端部)に向かう途中で、端部192が開口部16へ近づくように傾斜角度(曲率)が変化する形状とされている。
【0095】
リブ19とバッフルプレート5の流量調整部67とのオーバーラップ量が増えるので、オイルパン側からファイナルギアF側に流入するオイルの流入量を抑えることができる。
すなわち、ファイナルギアFの回転軸(軸線X)方向から見て、リブ19とバッフルプレート5とのオーバーラップ量(重なる部分の長さRx:
図5参照)が増えるので、ファイナルギアF側に流入するオイルOLの量を抑える効果(油抑制効果)がある。
また、リブ19の全長が長くなるので、リブ19のみならず、変速機ケース10の剛性を高めることができる。
【0096】
また、自動変速機の設置状態を基準とした鉛直線方向における上側から、バッフルプレート5に到達したオイルOLの一部は、バッフルプレート5が有するガイド部65により、バッフルプレート5の裏側(凹部14側)に導かれる。
そして、バッフルプレート5の裏側(凹部14側)に導かれたオイルOLの一部は、リブ19周りに到達する。このリブ19周りに到達したオイルOLが、リブ19を超えてファイナルギアF側に流入する量を抑えることができる。
【0097】
さらに、本実施形態にかかる自動変速機は、以下の構成を有している。
(3)変速機ケース10の壁部13には、ファイナルギアFの回転方向における流量調整部67よりも下流側に、段差部13aが設けられている。
壁部13における段差部13aが設けられた領域のファイナルギアFとの対向面13xは、リブ19のファイナルギアFとの先端面19x(表面)よりも、ファイナルギアFの近傍に位置している。
【0098】
変速機ケース10におけるバッフルプレート5が設けられていない領域では、ファイナルギアFの回転方向における流量調整部67よりも下流側に、段差部13aを有する壁部13を変速機ケース10に設けることで、壁部13をファイナルギアFに近づけて設けることができる。
これにより、変速機ケース10とファイナルギアFとのクリアランスをつめることができる。そうすると、変速機ケース10におけるバッフルプレート5が設けられていない領域(壁部13の領域)に流入するオイルOLの総量を抑えることができるので、ファイナルギアFの撹拌抵抗を低減させることができる。
【0099】
さらに、本願発明は、以下の構成を有する自動変速機(駆動力伝達装置)の製造方法としても特定できる。すなわち、
(4)自動変速機は、ファイナルギアF(ギア)と、変速機ケース10と、ファイナルギアFの側面と変速機ケース10の壁部13との間に位置するバッフルプレート5と、を有する。
変速機ケース10では、ファイナルギアFの回転軸(軸線X)方向で、ファイナルギアFと変速機ケース10の壁部13(凹部14)との間に、バッフルプレート5の第1カバー部6が位置している。
バッフルプレート5の第1カバー部6は、ファイナルギアFの回転方向に沿う弧状の基部60を有している。
軸線X方向から見て、基部60では、ファイナルギアFの回転方向における下流側の端部が、軸線Xに直交する向きで配置された板状の流量調整部67(下流側端部)となっている。
変速機ケース10では、凹部14における板状の流量調整部67に対向する領域に、板状の流量調整部67に向けて突出するリブ19が設けられている。
リブ19の先端面19X(流量調整部67側の表面)と、バッフルプレート5の板状の流量調整部67における凹部14に対応する対向面67x(表面)との間に、クリアランスCLが設けられている。
リブ19は、ファイナルギアFの回転方向と交差する線状部分を有している。
かかる構成の自動変速機の製造方法では、
鋳造により変速機ケース10に、最終的にリブ19となる領域19’(凸部)を、最終的に形成されるリブ19の高さh1よりも高い高さh1’で形成する。
最終的にリブ19となる領域19’を形成したのちに、当該領域19’の上端を、カッター等により切削することで、平坦な先端面19xを有するリブ19を、所定の高さh1で形成する。
【0100】
鋳造により形成したリブ19となる領域19’は、高さのばらつきが大きい。
そのため、鋳造により、最終的にリブ19となる領域19’を形成したのちに、当該領域19’の上端を、カッター等により切削してリブ19を形成することで、リブ19の先端面19x(表面)と、バッフルプレート5の流量調整部67の対向面67x(表面)との間のクリアランスCLが、製品毎に大きくばらつくことを好適に防止できる。
これにより、リブ19を超えてファイナルギアF側に流入するオイルの量が、製品毎に大きくばらつくことを好適に防止できる。
【0101】
(5)変速機ケース10の凹部14には、ファイナルギアFに向かって突出するボス部131(環状突起部)が設けられている。
リブ19は、ボス部131と接触していない。
【0102】
最終的にリブ19となる領域19’(凸部)を鋳造により形成したのち、領域19’の上端を切削する際に、切削に用いられるカッターの大きさには制約がある。
リブ19が、ボス部131(環状突起部)に接して設けられていると、領域19’(凸部)を削ってリブ19を形成する際に、ボス部131もまた削られることがある。
かかる場合、ボス部131は、カッターと接した部分が凹状に削られることになるが、凹状に削られた部分に、切削に起因する応力集中が生じやすくなる。
【0103】
特に、変速機ケース10においてリブ19が、自動変速機の設置状態を基準とした鉛直線方向で、ファイナルギアFの回転軸(軸線X)の下方に位置している場合には、リブ19周りに作用する負荷が高くなる。かかる場合、ボス部131を含むリブ19周りに作用する応力集中の影響は、非常に大きくなる。
ボス部131(環状突起部)に直接接触しないようにリブ19を設けることで、最終的にリブ19となる領域19’(凸部)を切削する際に、カッターがボス部131に接触する可能性を低減させることができる。
これにより、ボス部131にカッターが接触した際に、ボス部131がカッターにより凹状に削れることを好適に防止でき、凹状に削れることに起因する応力集中を緩和できる。
【0104】
(6)変速機ケース10は、ファイナルギアFの外周歯面と対向する周壁部11(壁部)を有している。
リブ19は、周壁部11と接触していない。
【0105】
リブ19が、変速機ケース10側の周壁部11に接して設けられていると、最終的にリブ19となる領域19’(凸部)を削ってリブ19を形成する際に、変速機ケース10側の周壁部11もまた削られることがある。
上記のように構成して、最終的にリブ19となる領域19’(凸部)をカッターにより切削する際に、カッターが周壁部11に接触する可能性を低減させることができる。
これにより、周壁部11にカッターが接触した際に、周壁部11がカッターにより凹状に削れることを好適に防止でき、凹状に削れることに起因する応力集中を緩和できる。
【0106】
(7)変速機ケース10の壁部13には、ファイナルギアFの回転方向における流量調整部67よりも下流側に、凹部14と壁部13との境界となる段差部13aが設けられている。
リブ19は、段差部13aと接触していない。
【0107】
リブ19が、変速機ケース10側の段差部13aに接して設けられていると、最終的にリブ19となる領域19’(凸部)を削ってリブ19を形成する際に、変速機ケース10側の段差部13aもまた削られることがある。
上記のように構成して、最終的にリブ19となる領域19’(凸部)をカッターにより切削する際に、カッターが段差部13aに接触する可能性を低減させることができる。
これにより、段差部13aにカッターが接触した際に、段差部13aがカッターにより凹状に削れることを好適に防止でき、凹状に削れることに起因する応力集中を緩和できる。
【0108】
(8)変速機ケース10の凹部14(下側領域14b)には、バッフルプレート5を変速機ケース10に固定するための支持筒137が設けられている。
支持筒137には、バッフルプレート5を変速機ケース10に固定する際に、ボルトBの軸部が螺入されるボルト穴137b(ネジ止めに用いられるネジ穴)が設けられている。
変速機ケース10には、ファイナルギアFの回転方向における流量調整部67よりも下流側に、段差部13aが設けられている。
リブ19は、支持筒137および段差部13aと接触していない。
リブ19は、支持筒137および段差部13aとの間を通るように配置されている。
【0109】
リブ19が、変速機ケース10側の段差部13aや支持筒137に接して設けられていると、最終的にリブ19となる領域19’(凸部)を削ってリブ19を形成する際に、カッターが段差部13aや支持筒137に接触する可能性を低減させることができる。
これにより、段差部13aや支持筒137にカッターが接触した際に、段差部13aや支持筒137がカッターにより凹状に削れることを好適に防止でき、凹状に削れることに起因する応力集中を緩和できる。
【0110】
前記した実施形態では、駆動力伝達装置が、車両用の自動変速機である場合を例示した。本願発明の駆動力伝達装置は、車両用の自動変速機のみに限定されない。
複数のギアから構成されるギア列であって、少なくとも1つのギアが、ギア列の収容ケース内のオイルを掻き上げ得るように構成された装置にも適用可能である。このような装置として、入力された回転を減速して出力する減速装置が例示される。
【0111】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。