【実施例1】
【0020】
以下、実施例1に係る熱処理炉10について説明する。本実施例の熱処理炉10は、ワークW(被処理物の一例)に含まれる水分を除去する乾燥炉(脱水装置)である。ワークWは、長手方向に連続して伸びるシート体であり、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL、電池などに用いられるフィルムが該当する。このようなフィルム(シート体)は、フィルム自体に水分が含まれる場合や、あるいは、フィルムに被覆層が被覆されている場合は当該被覆層に水分が含まれていることがある。このため、まずはフィルムに含まれる水分が除去され、その後、水分が除去されたフィルムを所望の大きさに切断して、最終製品が製造される。本実施例の熱処理炉10は、このようなシート体から水分を除去するために用いることができる。
【0021】
以下、図面を参照して、熱処理炉10の構成を説明する。
図1,2に示すように、熱処理炉10は、直方体形状の炉体12と、炉体12へのワークWの搬入と搬出を行う搬送装置20と、ワークWを加熱する加熱装置(26,28)と、ワークWの表面に冷却ガスを供給する給気装置(38等)を備えている。
【0022】
炉体12は、下壁13と、下壁13に対向する上壁14と、下壁13に一端が接続されると共に上壁14に他端が接続される側壁17,18(
図2参照)と、これらの壁13,14,17,18によって取囲まれる処理室(19a,19b)の端部を閉じる搬入側壁15及び搬出側壁16を備える。
下壁13は、平面視すると矩形状の板材であり、処理室(19a,19b)の下方に配置されている。
図1に示すように、下壁13には、x方向に略一定の間隔を空けて複数の排気口13aが設けられている。複数の排気口13aのうち中央に配置される5個の排気口13aは、後述する案内ローラ24と対向する位置に配置されている。複数の排気口13aのうちx方向の一端に配置される排気口13aは、搬入側壁15に近接する位置に配置されている。複数の排気口13aのうちx方向の他端に配置される排気口13aは、搬出側壁15に近接する位置に配置されている。複数の排気口13aのそれぞれは、排気ファン13bに接続されている。排気ファン13bが運転すると、処理室(19a,19b)内の雰囲気ガスが処理室(19a,19b)外に排気されるようになっている。
上壁14は、下壁13と同一形状の板材であり、処理室(19a,19b)の上方に配置されている。上壁14にも、下壁13と同様に、x方向に略一定の間隔を空けて複数の排気口14aが設けられている。複数の排気口14aのそれぞれは、複数の排気口13aのそれぞれと対向する位置に配置されている。複数の排気口14aのそれぞれは、排気ファン14bに接続されている。排気ファン14bが運転すると、処理室(19a,19b)内の雰囲気ガスが処理室(19a,19b)外に排気されるようになっている。
搬入側壁15には搬入口15aが設けられており、搬出側壁16には搬出口15bが形成されている。搬入口15aと搬出口15bの高さ方向の位置は同一の位置となっており、搬入口15aと搬出口15bは互いに対向している。
図1から明らかなように、処理室(19a,19b)は、搬入口15aと搬出口15bとの間に配置されている。
なお、炉体12を構成する各壁13,14,15,16,17,18の内面(すなわち、処理室(19a,19b)側の面)には、鏡面加工が施されている。その結果、これらの面の赤外領域の電磁波(詳細には、後述するヒータ26,28が放射する電磁波)の反射率は50%以上となっている。これによって、ヒータ26,28が放射する電磁波をワークWへ効率的に照射できるようになっている。
【0023】
搬送装置20は、炉体12の外側であって搬入口15aの近傍に配置される搬入口ローラ21と、炉体12の外側であって搬出口16aの近傍に配置される搬出口ローラ25と、処理室(19a,19b)内に配置される複数の案内ローラ(22a,22b,22c,24)を備えている。
搬入口ローラ21にはワークWが巻回されている。搬入口ローラ21に券回されたワークWは、搬入口15aから処理室(19a,19b)を通って搬出口16aまで架け渡されている。具体的には、ワークWは、搬入口ローラ21から搬入口15aを通って案内ローラ(22a,22b,22c,24)に架け渡され、さらに案内ローラ(22a,22b,22c,24)から搬出口16aを介して搬出口ローラ25に架け渡されている。
搬出口ローラ25は、処理室(19a,19b)から搬出されるワークWを巻き取るローラである。搬出口ローラ25には図示しない駆動装置が接続されており、駆動装置により搬出口ローラ25が回転駆動される。搬出口ローラ25が回転すると、搬入口ローラ21に券回されたワークWが処理室(19a,19b)に送り出される。搬入口ローラ21から送り出されたワークWは、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に案内されて処理室(19a,19b)内の所定の搬送経路を移動し、搬出口16aから処理室(19a,19b)外に送り出されて搬出口ローラ25に巻き取られる。すなわち、案内ローラ(22a,22b,22c,24)は、処理室(19a,19b)内のワークWの搬送経路を規定している。
【0024】
案内ローラ(22a,22b,22c,24)は、上壁14の近傍に配置される複数の上部案内ローラ(22a,22b,22c)と、下壁13の近傍に配置される複数の下部案内ローラ24を備えている。なお、本実施例において、案内ローラ(22a,22b,22c,24)には、ワークWと接触する接触式ローラを用いたが、ワークWを非接触で案内する非接触式ローラを用いることもできる。
上部案内ローラ(22a,22b,22c)は、x方向に一定の間隔を空けて配置されている。具体的には、上部案内ローラ22a(請求項でいう第1の搬送ローラの一例)は搬入口15aに隣接して配置され、上部案内ローラ22c(請求項でいう第3の搬送ローラの一例)は搬出口16aに隣接して配置されている。複数の案内ローラ22bは、上部案内ローラ22aと上部案内ローラ22cの間に等間隔で配置されている。上部案内ローラ(22a,22b,22c)のそれぞれの高さ方向の位置は同一となっている。
複数の下部案内ローラ24(請求項でいう第2の搬送ローラの一例)のそれぞれは、上部案内ローラ(22a,22b,22c)と同様、x方向に一定の間隔を空けて配置されている。隣接する下部案内ローラ24のx方向の間隔は、上部案内ローラ(22a,22b,22c)のx方向の間隔と同一となっている。複数の下部案内ローラ24のx方向の位置は、隣接する上部案内(22a,22b,22c)の中央位置となっている。複数の下部案内ローラ24の高さ方向の位置は同一となっている。
【0025】
上述したように上部案内ローラ(22a,22b,22c)と下部案内ローラ24が配置されているため、搬入口15aからx方向に搬送されるワークWは、上部案内ローラ22aによって下方に向かって搬送され、次いで、下部案内ローラ24によって上方に向かって搬送され、以下、上部搬送ローラ22bと下部搬送ローラ24によって上下方向に繰り返し搬送される。そして、最も搬出口16a側に配置された下部搬送ローラ24から上方に向かって搬送されるワークWは、上部案内ローラ22cによって搬出口16aに向かって搬送される。このように、処理室(19a,19b)内を上下方向に繰り返し搬送することで、処理室(19a,19b)内のスペースを有効に活用でき、ワークWを乾燥させるための処理時間を確保している。なお、
図1から明らかなように、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に架け渡されたワークWによって、処理室(19a,19b)は、上壁14側に設けられる上部処理室19aと、下壁13側に設けられる下部処理室19bとに区分されている。
【0026】
加熱装置は、処理室(19a、19b)内に配置され、搬送装置20によって搬送されるワークWを加熱する。加熱装置は、案内ローラ(22a,22b,22c,24)の近傍に配置された第1ヒータ(26a,26b)と、上部案内ローラ(22a,22b,22c)と下部案内ローラ24の間の高さに配置された第2ヒータ28を備えている。
図2に示すように、第1ヒータ(26a,26b)と第2ヒータ28は、案内ローラ(22a,22b,22c,24)の軸線方向に伸びており、ワークWの幅方向(y方向)の全体を加熱可能となっている。
【0027】
図1に示すように、第1ヒータ(26a,26b)は、上部案内ローラ(22a,22b,22c)の上方に配置される複数の第1上部ヒータ26aと、下部案内ローラ24の下方に配置される複数の第1下部ヒータ26bを備えている。第1上部ヒータ26aのそれぞれは、対応する上部案内ローラ(22a,22b,22c)と対向して配置されており、第1下部ヒータ26bのそれぞれは対応する下部案内ローラ24と対向して配置されている。このため、第1上部ヒータ26aと上部案内ローラ(22a,22b,22c)の間にワークWが位置し、ワークWは第1上部ヒータ26aによって直接加熱される。同様に、第1下部ヒータ26bと下部案内ローラ24の間にワークWが位置し、ワークWは第1下部ヒータ26bによって直接加熱される。
【0028】
第2ヒータ28は、上部案内ローラ(22a,22b,22c)のそれぞれの下方に、z方向に間隔を空けて2個配置されている。また、第2ヒータ28は、下部案内ローラ24のそれぞれの上方に、z方向に間隔を空けて2個配置されている。このため、x方向に間隔を空けて11個の第2ヒータ28が並ぶと共に、y方向に間隔を空けて2個の第2ヒータ28が並んで配置されている。図から明らかなように、第2ヒータ28は、上部案内ローラ(22a,22b,22c)と下部案内ローラ24に架け渡されたワークWと対向する位置(すなわち、ワークWの搬送方向に隣接する案内ローラ間の中間位置の近傍)に配置されている。第2ヒータ28が案内ローラ(22a,22b,22c,24)の軸線方向に伸びているため、上部案内ローラ(22a,22b,22c)と下部案内ローラ24に架け渡されたワークWの幅方向の全体が第2ヒータ28によって加熱される。
【0029】
第1ヒータ(26a,26b)は、赤外領域の電磁波を放射する公知の波長制御可能なヒータであり、第1ヒータ(26a,26b)と第2ヒータ28は同一構造を有している。このため、ここでは第2ヒータ28の構造について簡単に説明する。
図3に示すように、第2ヒータ28は、フィラメント30と、フィラメント30を収容する内管32と、内管32を収容する外管34を備えている。フィラメント30は、例えば、タングステン製の発熱体であり、図示しない外部電源から電力が供給されるようになっている。フィラメント30に電力が供給されて所定温度(例えば、1200〜1700℃)となると、フィラメント30から赤外線を含む電磁波が放射される。内管32は、フィラメント30から放射される電磁波のうち特定の波長領域(本実施例では、赤外領域)の電磁波のみを透過する赤外線透過材料によって形成されている。内管32を形成する赤外線透過材料を適宜選択することで、フィラメント30から内管32の外部に放射される電磁波の波長を所望の波長に調整することができる。外管34も、内管32と同一の赤外線透過材料によって形成されている。したがって、内管32を透過した電磁波は、外管34を透過して外部に放射される。内管32と外管34の間の空間36は、冷媒(例えば、空気)が流れる冷媒流路となっている。空間36(すなわち、冷媒流路)に冷媒が供給されることで、外管34の温度が高温となり過ぎることが防止されている。これによって、ワークWの過熱が防止される。なお、赤外領域の電磁波を放射する波長制御可能なヒータについては、例えば、特許4790092号に詳細に開示されている。
【0030】
給気装置は、処理室(19a,19b)内をy方向に伸びる複数の給気管38と、処理室(19a,19b)外に配置されて複数の給気管38に冷却ガスを供給する給気ファン(図示省略)を備えている。
図4に示すように、給気管38には、周方向の2か所に噴出孔39a,39bが形成されている。このため、給気ファンから給気管38に供給された冷却ガスは、噴出孔39a,39bから処理室(19a,19b)内に噴射される。本実施例では、噴出孔39a,39bから噴射される冷却ガスの噴出方向がワークWの表面に対して直交するように、給気管38を設置する向きが調整されている。
図4に示すように、噴出孔39a,39bは、給気管38の軸線を挟んで対向する位置に配置されている。このため、給気管38の搬入口15a側と搬出口16a側のそれぞれにワークWが位置する場合、当該給気管38の噴出孔39aから噴射される冷却ガスは一方のワークWに噴射され、当該給気管38の噴出孔39bから噴射される冷却ガスは他方のワークWに噴射される。また、
図2に示すように、給気管38の噴出孔39a,39bは、y方向に間隔を空けて複数形成されている。このため、噴出孔39a,39bから噴射される冷却ガスは、ワークWの幅方向(y方向)の全体に噴射されることになる。
【0031】
図1に示すように、給気管38は、上部案内ローラ(22a,22b,22c)のそれぞれの下方に、z方向に間隔を空けて2個配置されている。また、給気管38は、下部案内ローラ24のそれぞれの上方に、z方向に間隔を空けて2個配置されている。
図1から明らかなように、給気管38は、第1ヒータ(26a,26b)及び第2ヒータ28が配置される位置とは異なる位置に配置されている。具体的には、第2ヒータ28と給気管38はz方向(搬送方向)に等しい間隔を空けて交互に配置されている。また、上述したように、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に架け渡されたワークWによって、処理室(19a,19b)は上部処理室19aと下部処理室19bとに区分されているが、上部処理室19aと下部処理室19bのそれぞれに給気管38が配置されている。
【0032】
給気管38に供給される冷却ガスとしては、例えば、不活性ガス、窒素、Arガス等を用いることができる。処理室(19a,19b)内の雰囲気ガスは、給気管38から処理室(19a,19b)内に噴射されるガスによって調整される。本実施例では、ワークWに含まれる水分を除去するため、処理室(19a,19b)内の雰囲気ガスは、露点が0℃以下となるガスに調整されている。なお、冷却ガスとしては、露点が0℃以下となる大気としてもよい。
【0033】
コントローラ44は、CPU,ROM,RAMを備えたプロセッサによって構成され、搬送装置20と加熱装置(26,28)と給気装置を制御する。具体的には、コントローラ44は、搬送装置20を制御することでワークWの搬送速度及び張力を制御し、加熱装置(26,28)を制御することでワークWの加熱量を制御し、給気装置を制御することで給気管38からワークWに噴射される冷却ガスの流量及び流速を制御する。
【0034】
なお、熱処理炉10には、搬入口ローラ21に巻回されたワークWを搬出口ローラ25にセットするための通し装置が設けられている。
図1に示すように、通し装置は、処理室(19a,19b)内と処理室(19a,19b)外を通って循環するチェーン42と、チェーン42を駆動する駆動装置(図示省略)を備えている。チェーン42は、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に架け渡されたワークWと同様に、搬入口15aから上下方向に向きを変えながら搬出口16aまで伸び、搬出口16aから処理室(19a,19b)の外側を通って搬入口15aに戻っている。
図1に示すように、チェーン42が架け渡される経路は、ワークWが架け渡される経路(すなわち、ワークWの搬送経路)と複数個所で交差している。なお、チェーン42が配置される位置は、ワークWの幅方向(y方向)の外側の位置となるため、チェーン42とワークWが干渉することはない(
図2参照)。通し装置によりワークWを搬出口ローラ25にセットするには、まず、チェーン42に設けられた図示しないクランプにより搬入口ローラ21に巻回されたワークWをクランプする。次いで、駆動装置によりチェーン42を循環させ、ワークWを搬入口ローラ21より送り出す。これにより、チェーン42のクランプに保持されたワークWは、処理室(19a,19b)内をチェーン42と共に移動し、搬出口16aまで移動する。搬出口16aまでワークWが移動すると、クランプを操作してチェーン42からワークWを開放し、ワークWを搬出口ローラ25にセットする。最後に、搬出口ローラ25を回転させてワークWに張力を与えることで、ワークWが搬入口15aから案内ローラ(22a,22b,22c,24)を介して搬出口16aまで架け渡される。
【0035】
次に、上述した熱処理炉10を用いてワークWから水分を除去する処理を説明する。まず、給気管38から処理室(19a,19b)内に冷却ガスを供給し、処理室(19a,19b)内を所定の雰囲気に調整する。次いで、コントローラ44は、搬送装置20を駆動することで、ワークWを搬入口15aから処理室(19a,19b)を通って搬出口16aまで搬送する。この際、コントローラ44は、加熱装置(26,28)を制御してワークWに赤外線領域の電磁波を照射すると共に、給気管38からワークWの表面に冷却ガスを噴出する。加熱装置(26,28)から赤外線領域の電磁波が照射されると、ワークWに含まれる水分が照射された電磁波を吸収し、水分が蒸発する。ワークWから蒸発した水分は、給気管38から噴射される冷却ガスによってワークWの表面から除去される。ワークWの表面から除去された水分を含んだ雰囲気ガスは、下壁13の排気口13aと、上壁14の排気口14aのそれぞれから処理室(19a,19b)外に排気される。ワークWは、搬入口15aから搬出口16aまで搬送される間に水分が除去される。水分が除去されたワークWは、搬出口ローラ25に巻き取られる。
【0036】
上記の熱処理炉10によると、案内ローラ(22a,22b,22c,24)の近傍で、案内ローラ(22a,22b,22c,24)と対向する第1ヒータ(26a,26b)を備えている。また、上部案内ローラ(22a,22b,22c)と下部案内ローラ24の間に第2ヒータ28を備えている。これらヒータ26a,26b,28のため、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に接触した状態におけるワークWに対する熱収支を制御でき、また、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に接触していない状態におけるワークWに対する熱収支を制御することができる。このため、ワークWの熱収支を好適に制御でき、ワークWから水分を除去する処理の効率を格段に向上することができる。例えば、ワークWが案内ローラ(22a,22b,22c,24)に接触することで、ワークWから案内ローラ(22a,22b,22c,24)に熱が流れてワークWが冷却され過ぎてしまう場合は、第1ヒータ(26a,26b)からワークWに供給する熱量を増加し、ワークWが冷却され過ぎないようにする。これによって、ワークWから水分を除去する効率が低下してしまうことを防止することができる。
【0037】
また、上記の熱処理炉10では、給気管38と第2ヒータ38が搬送方向に交互に配置され、また、給気管38からの冷却ガスはワークWの表面に直交する方向から噴射される。これによって、ワークWの内部から蒸発した水分がワークWの表面から速やかに除去され、ワークWからの水分の除去が促進される。これによっても、ワークWの水分の除去効率を高めることができる。
【0038】
さらに、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に架け渡されたワークWによって、処理室(19a,19b)は上部処理室19aと下部処理室19bとに区分されるが、上部処理室19aと下部処理室19bのそれぞれに給気管38と排気口14a,13aが配置されている。このため、上部処理室19aに供給された冷却ガス及び下部冷却室19bに供給された冷却ガスは、除去された水分と共に速やかに処理室(19a,19b)外に排気される。これによっても、処理室(19a,19b)内のガスの流れが好適化され、ワークWの水分除去効率を高めることができる。
【0039】
なお、ヒータ(26a,26b,28)は、内管及び外管を形成する赤外線透過材料を選択することで、放射する赤外線の波長領域を調整することができる。このため、ワークWの特性に応じて放射する電磁波の波長を調整することで、ワークWの熱処理効率を向上することができる。例えば、ワークWとして、固形分(フェノール・エポキシ樹脂、10〜90wt%)と、該固形分をスラリー状又はペースト状とする溶媒(水又は溶剤(例えば、IPA(イソプロピルアルコール、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)等)から構成される物質を乾燥する場合を考える。このようなワークWを乾燥する場合、熱処理炉10の前半では近赤外線波長を選択したヒータ(26a,26b,28)により水又は溶剤の乾燥を行い、熱処理炉10の後半では遠赤外線波長を選択したヒータ(26a,26b,28)によるアニーリングを行うようにしてもよい。
【0040】
また、上記の実施例では、ヒータ(26a,26b,28)は、全て同一の波長領域の電磁波を放射したが、このような例に限られない。例えば、ヒータ(26a,26b,28)から放射される電磁波の波長は、搬送経路上の位置に応じて調整されていてもよい。例えば、熱処理炉10によってワークWから水分を除去する場合、ワークWに含まれる水分量は、搬入口15aから搬出口16aに向かって徐々に低下する。このため、ヒータ(26a,26b,28)から放射される電磁波の波長を、搬入口15aから搬出口16aに向かって徐々に長くすることで、水分量に応じた電磁波をワークWに照射することができる。
【0041】
また、上記の実施例では、案内ローラ(22a,22b,22c,24)の近傍に第1ヒータ(26a,26b)を配置し、第1ヒータ(26a,26b)によってワークWを加熱したが、このような例に限られない。例えば、案内ローラの内部に熱媒が流れる流路を設け、案内ローラによってワークWを加熱してもよい。このような構成によっても、案内ローラに接触する状態におけるワークWの熱収支が制御可能となり、ワークWの熱処理効率を向上することができる。
【0042】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。