【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1の特性を含む骨再生のための組成物、請求項24の特性を含む架橋ヒドロゲル塊の作製方法ならびに請求項26、27および28に記載の前記組成物に対する適用方法により、提起される問題を解決する。
【0007】
本発明による組成物は、ヒドロゲルマトリクスおよび無機物粒子を含み、薬物または金属イオンなどの1つ以上の活性薬剤をさらに含有し得る。この材料の特有の特徴は、この二相構造であり:第一相は、組み込まれる無機物(好ましくはヒドロキシアパタイトまたは他のリン酸カルシウム)粒子を伴う体積安定性の架橋ヒドロゲル塊を含有する。この架橋相中の無機物含量は、材料の優れた注入性を保証するために20%未満である。ラットの試験において、この少量の無機物が身体自身の無機物の並置を惹起するのに十分であり、従って新しい骨形成のための足場の役割を果たす石灰化骨伝導性顆粒のインシトゥ形成につながることが示されている。より多量(>20%)の無機物粒子によって、本組成物の注入性が低下し、架橋過程の障害が起こった。
【0008】
ゲル成分は、粒子を保持し、ゲルの石灰化が起こり、生体材料が新しい骨により置き換えられるまで、材料の体積を維持するための機能を有する。この第1相は、さらに、粒子に結合され得るか、またはヒドロゲル中に単に統合され得るかのいずれかの活性薬剤を含有し得る。
【0009】
第2相は、第1相を埋め込む液体またはヒドロゲル様の相を含むか、またはこれらからなる。これは、好ましくは、リン酸カルシウム粒子なしで、またはリン酸カルシウム粒子と組み合わせて、抗菌性、骨同化もしくは抗異化性、骨形成および/または骨伝導の目的のための薬物または生理活性分子を含む。この機能は、組み込まれた物質の迅速な放出を確実にし、本組成物を注射可能にし、石灰化架橋ヒドロゲル塊間の空隙を通じて新しい骨形成を促進するのに有用な三次元構造を確実にすることである。
【0010】
この組成物の主な長所は、現在の最先端の材料と比較して、主に無機物含量が少ないことにより生じる、その優れた注入性である。この特性は、接近困難な骨欠損への、および、最先端材料の適用に外科的アプローチが必要となる骨領域への低侵襲性適用のための組成物の特有の適合性に対する理由でもある。
【0011】
ヒドロゲル成分を有する現在知られている骨代用材は、一般的には、材料の注入性を改善する非架橋ポリマー鎖のみを含む。しかし、非架橋天然ヒドロゲルは、数日以内にヒト体内で分解され、体積安定性ではない。従って、分解が遅い無機物成分に添加し得るのは、非常に低い濃度の非架橋ヒドロゲルのみであり、そうでなければ持続的な欠損部充填が達成され得ない。既に予め架橋されたヒドロゲル(例えば市販の皮膚充填剤)と無機物成分を組み合わせるという試みもなされている。しかし、最悪の場合、分解を減速させるヒアルロニダーゼ阻害剤と組み合わせた無機物不含のヒドロゲル塊の存在は、骨組織が高密度の架橋ヒドロゲルに入り得ないため、骨において役に立たない空隙が生じることにつながる。本発明による組成物は、ヒドロゲル分解速度と同様の速度での身体自身の無機物の並置を介して石灰化する架橋ヒドロゲルを含有する粒子のみを使用することによって、この限界を克服する。容易に注入可能な架橋ヒドロゲル成分は、このようにして、体積損失なくインビボ過程を介して優れた骨伝導性骨足場に変換される。
【0012】
さらに、本組成物の二相性により、調整放出プロファイルを有する活性薬剤の統合が可能になる。活性物質の位置(架橋第1相対非架橋第2相、遊離分子対担体粒子上に担持された分子)に依存して、即時突発放出または持続放出プロファイルのいずれかを標的とし得る。
【0013】
本発明のさらなる有利な実施形態は、以下のように言及し得る:
特定の実施形態において、無機物粒子は、5μm未満、好ましくは1μm未満の平均直径を有する。
【0014】
さらなる実施形態において、無機物粒子には、この表面上で、以下の物質のうち1つ以上:
好ましくは
a)同化または抗異化骨活性物質の群、特に、ラネル酸ストロンチウム、増殖因子、抗スクレロスチン抗体、ビスホスホネート、選択的エストロゲン受容体またはRANKリガンド阻害剤;または
b)抗菌物質の群、特に抗生物質、ハロゲン放出化合物、過酸化物、ビグアナイド、クロルヘキシジンまたは
c)金属、特に銀、亜鉛または銅化合物
から選択される、薬物または生理活性分子が負荷され得る。
【0015】
この実施形態の長所は、薬物が、−特に比較的大きな無機物粒子に連結される場合−、架橋された石灰化ヒドロゲル塊に封入されているという事実ゆえに、長期間にわたってゆっくりと放出されるという事実にある。
【0016】
無機物粒子は、好ましくはピロリン酸カルシウム[Ca
2P
2O
7]、炭酸カルシウム[CaCO
3]、リン酸一カルシウム一水和物[Ca(H
2PO
4)
2・H
2O]、リン酸一カルシウム[Ca(H
2PO
4)
2]、リン酸二カルシウム無水物[CaHPO
4]、リン酸二カルシウム二水和物[CaHPO
4・2H
2O]、リン酸八カルシウム[Ca
8H
2(PO
4)
6・5H
2O]、アルファ−リン酸三カルシウム[アルファ−Ca
3(PO
4)
2]、ベータ−リン酸三カルシウム[ベータ−Ca
3(PO
4)
2]、ヒドロキシアパタイト[Ca
5(PO
4)
3OH]、リン酸四カルシウム[Ca
4(PO
4)
2O]、カルシウム欠損型ヒドロキシアパタイト[Ca
10−X(HPO
4)
X(PO
4)
6−X(OH)
2−X]、フルオロアパタイト[Ca
5(PO
4)
3F]、非晶質リン酸カルシウムオキシアパタイト[Ca
10(PO
4)
6O]またはCaおよびP含有生理活性シリカガラスの群から選択される何らかのリン酸カルシウムであり得る。
【0017】
好ましくは、無機物粒子は本質的に細孔を含まない。
【0018】
さらなる実施形態において、架橋ヒドロゲル塊は、100から250μmの範囲の平均直径を有する。架橋ヒドロゲル塊の最大体積は、好ましくは4
*10
−9mm
3から4mm
3の範囲である。
【0019】
架橋塊を得るために使用されるヒドロゲルは、意図的に、好ましくは多糖の群、特にヒアルロン酸およびこの誘導体、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、キチン、キトサン、アガロースまたは寒天、コラーゲン、ゼラチン、エラスチンまたはフィブリンから選択される、ポリマー材料を含む。
【0020】
無機物粒子の含量は、意図的に第1相の1から10重量%、好ましくは2から5重量%の範囲である。
【0021】
無機物粒子は、1.0
*10
−7μm
3より大きい、好ましくは2.0
*10
−6μm
3より大きい体積を有し得る。無機物粒子(2)は、50
*10
3μm
3より小さい、好ましくは5
*10
3μm
3より小さい体積を有し得る。
【0022】
特定の実施形態において、無機物粒子は針状である。針は、10から200nmの範囲、好ましくは40から60nmの範囲の長さを有し得る。
【0023】
さらなる実施形態において、無機物粒子の体積は、2.0
*10
−7から5.0
*10
3μm
3の範囲である。
【0024】
さらなる実施形態において、第1相は75から99重量%の含水量を有する。
【0025】
またさらなる実施形態において、第2相は、さらに、ナノからマイクロサイズのリン酸カルシウム粒子を含む。ナノからマイクロサイズのリン酸カルシウム粒子は、ピロリン酸カルシウム[Ca
2P
2O
7]、炭酸カルシウム[CaCO
3]、リン酸一カルシウム一水和物[Ca(H
2PO
4)
2・H
2O]、リン酸一カルシウム[Ca(H
2PO
4)
2]、リン酸二カルシウム無水物[CaHPO
4]、リン酸二カルシウム二水和物[CaHPO
4・2H
2O]、リン酸八カルシウム[Ca
8H
2(PO
4)
6・5H
2O]、アルファ−リン酸三カルシウム[アルファ−Ca
3(PO
4)
2]、ベータ−リン酸三カルシウム[ベータ−Ca
3(PO
4)
2]、ヒドロキシアパタイト[Ca
5(PO
4)
3OH]、リン酸四カルシウム[Ca
4(PO
4)
2O]、カルシウム欠損型ヒドロキシアパタイト[Ca
10−X(HPO
4)
X(PO
4)
6−X(OH)
2−X]、フルオロアパタイト[Ca
5(PO
4)
3F]、非晶質リン酸カルシウムまたはオキシアパタイト[Ca
10(PO
4)
6O]の群から選択され得る。
【0026】
第2相中のナノからマイクロサイズのリン酸カルシウム粒子の量は、1から40重量%、好ましくは10から20重量%の範囲であり得る。
【0027】
ナノからマイクロサイズのリン酸カルシウム粒子には、この表面上で、以下の物質のうち1つ以上:
a)薬物または生理活性分子、好ましくは、同化または抗異化骨活性物質、特に、ラネル酸ストロンチウム、増殖因子、抗スクレロスチン抗体、ビスホスホネート、選択的エストロゲン受容体またはRANKリガンド阻害剤の群から選択されるもの;または
b)抗菌物質、特に抗生物質、ハロゲン放出化合物、過酸化物、ビグアナイド、クロルヘキシジン;または
c)金属、特に銀、亜鉛または銅化合物
が負荷され得る。
【0028】
この実施形態の長所は、薬物が、塊に対する担体として作用する、十分に接近可能な生理学的に適合する水性液体中に位置するという事実ゆえに、短時間で比較的迅速に薬物が放出されるという事実にある。これらの物質はまた、全物質を粒子に負荷させ得るわけではないので、リン酸カルシウム粒子とは独立して組み込まれ得る。
【0029】
体積に関する第1相対第2相の比は、3:1から19:1の範囲、好ましくは4:1から10:1の範囲であり得る。
【0030】
特定の実施形態において、本発明による組成物は、ヒアルロニダーゼ阻害剤を基本的に含まず、特に基本的にアスコルビン酸6−ヘキサデカノエートを含まない。
【0031】
さらなる実施形態において、本組成物は、無機物粒子を有さない架橋ヒドロゲルを伴う第3相を含まない。
【0032】
さらなる実施形態において、本組成物は本質的に麻酔剤を含まない。
【0033】
本発明による組成物中で使用される架橋ヒドロゲル塊を作製するための方法は、以下の段階:
a)好ましくは、多糖類の群、特にヒアルロン酸およびこれらの誘導体、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、キチン、キトサン、アガロースまたは寒天、コラーゲン、ゼラチン、エラスチンまたはフィブリンから選択されるポリマー材料を含むヒドロゲルを選択することと、
b)ヒドロゲル内に均一に分布させるために、選択されるヒドロゲルに対して無機物粒子を混合することと;
c)段階b)で得られる混合物を架橋剤の作用により架橋させることと、
d)最大体積4mm
3の塊を得るために、段階c)の架橋混合物を破砕することと、
を含み得る。
【0034】
ヒアルロン酸の誘導体は、HA−アミン、HA−ヒドラジド、HA−ジスルフィド、HA−チラミン、メタクリル化またはエステル化ヒアルロン酸の群から選択され得る。
【0035】
本発明による組成物は、特に整形外科または外傷学の分野において、骨欠損の修復および脆弱な骨構造の増強において使用可能である。本組成物は、歯周炎およびインプラント周囲炎関連の骨欠損の処置のために、または骨増生、特にサイナスリフトのために歯科においてさらに使用され得る。本組成物はまた、歯周骨欠損またはインプラント周囲骨欠損の処置にも適している。
【0036】
本発明による組成物の、表在性の歯周骨欠損またはインプラント周囲骨欠損の低侵襲性の適用のための方法は、以下の段階:
a)全ての感染組織および歯/インプラントの表面上のプラーク/バイオフィルムを除去するために、罹患歯/インプラントの広範なスケーリングおよび根面平滑化を行うことと、
b)骨欠損部への直接的なシリンジからの歯肉縁下注射を介した、請求項1から23のいずれか1項において使用される組成物の適用と、
を含み得る。
【0037】
段階a)の間に行われるクリーニングは、機械的に、特にキュレットによって、または光により、好ましくはレーザー、超音波によって、または水もしくは空気ジェットによって行われ得る。
【0038】
低侵襲性サイナスリフトのための本発明による組成物の低侵襲性の適用のための別の方法は、以下の段階:
a)歯肉弁の作製によって処置しようとする部位に接近することと;
b)穿孔または打ち抜きによる副鼻腔(sinus cavity)への小さな開口部の形成と;
c)シュナイダー膜の、好ましくはバルーンを用いた隆起と;
d)段階b)で形成された開口部を通じた本発明による組成物の注入を介した、形成された空隙の充填と、
を含み得る。
【0039】
整形外科における骨増生のための、特に大腿骨頸部または椎骨の処置のための、本発明による組成物の低侵襲性の適用のためのさらなる方法は、以下の段階:
a)非常に小さな軟組織切開または意図的な大きさのカニューレもしくはトロカールを介した標的骨への接近と、
b)穿孔または打ち抜きによって骨の皮質に1mm未満の開口部を形成することと、
c)シリンジから骨梁への注入を介した本発明による組成物の適用と;
d)軟組織の閉鎖と、
を含み得る。
【0040】
第1相の詳細な説明
第1相のヒドロゲルは、高密度のゲル構造を得るために架橋され得る何らかの適切な生体適合性であり分解性であるポリマー材料から作製され得る。ヒドロゲルは、好ましくは天然ポリマー材料(即ち非合成ポリマー、天然で見出され得るポリマー)および/またはゼラチン、エラスチン、コラーゲン、寒天/アガロース、キトサンまたはフィブリンなどのECMに由来するポリマーを含むか、またはこれらからなる。これらはまた、少なくとも1つのグリコサミノグリカンまたは少なくとも1つのプロテオグリカンまたはこれらの混合物のいずれかも含み得る。グリコサミノグリカンは、例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸またはこれらの組み合わせであり得る。天然およびECM由来ポリマーは、天然の組織との生物学的および化学的類似性ゆえに第一選択の生体材料である。
【0041】
架橋第1相ヒドロゲルのための本発明による好ましい実施形態は、ヒアルロン酸またはこの誘導体である。実験環境では、分子量200万ダルトンのヒアルロン酸水溶液が使用されており、濃度は1から2%w/vに及ぶが、0.1から5%w/vに及ぶ濃度が予想され得る。架橋ヒアルロン酸を得るための望ましい特定の方法はなく;重合前に架橋ゲル中にマイクロ/ナノ粒子の組み込みが可能となる限り、あらゆる種類の公知の非架橋ヒアルロン酸組成物を使用し得る。
【0042】
実験環境では、BDDE(1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル)を0.00273v/v濃度(最終ゲル10mL中27.3μL)で架橋剤として使用した。遊離未反応BDDEを除去するために、最終的なゲルを架橋段階後に意図的に透析した。
【0043】
架橋後、160μmのメッシュフィルターを通じて架橋第1相を押し出して、そのサイズの均一な大きさの塊を得た。塊の大きさは、最終材料の注入に使用される針/カニューレのサイズおよび標的とされる骨領域の構造に基づいて選択され;このサイズは、好ましくは50から500μmで変動し得る。
【0044】
第1相ヒドロゲルは、基本的には、歯周/インプラント周囲欠損などの骨欠損の体積を満たすために充填要素として作用する。これはさらに、相自体の石灰化を誘発する「核形成点」として作用する無機物粒子を保持する。形成する石灰化顆粒は、新しい骨形成を先導し、支持するインシトゥ形成骨伝導性足場として作用する。
【0045】
第1相は、第1相石灰化が進行する限り放出される生理活性物質を第1相内にさらに含有し得、この放出はいずれにしても、非架橋の第2相薬物放出について後で説明するものと比較して遅い過程である。
【0046】
第1相ヒドロゲルは、第1相の石灰化を誘発する主な機能を有するリン酸カルシウム粒子を含む。好ましい実施形態において、効率的に石灰化を誘導することが示されているため、ヒドロキシアパタイト粒子が選択される。粒子のサイズは、約50nmから約5μmの範囲であり得る。実験結果から、ナノサイズの粒子は、より高い石灰化活性を有するため、より良好な結果が得られ得ることが示され、従って粒径が小さいほど良好な石灰化性能につながると思われる。粒子は実質的に丸型であり得るが、50nmの針状粒子も使用されており、優れた結果を示している。一実施形態において、200nmの丸型または5μmの丸型粒子も使用されている。2つの特定の実施形態において、BET表面積≧80m
2/gを有する<50nmのヒドロキシアパタイト粒子またはBET表面積≧100m
2/gを有する5±1μmのヒドロキシアパタイト粒子が使用されている。可視化のために走査型電子顕微鏡(SEM)を使用する場合、粒子はこの表面上では実質的に滑らかに見え、このコアにおいて顕著な多孔性を呈さない。
【0047】
リン酸カルシウム粒子の濃度は、好ましくは第1相ゲルの1から20%w/v、好ましくは1から5%で含まれる。最終ゲルの注入性および架橋において問題が生じるため、より高い濃度は企図されない。実験設定で示されるように、良好な石灰化過程を効率的に惹起するためには1から2%の濃度で十分である。
【0048】
架橋過程の前に第1相ヒドロゲルに粒子を添加し、均質な石灰化過程を誘導するために、粒子をこの中で均一に分散させる。
【0049】
インビボ環境において、ビスホスホネート(一実施形態においてゾレドロネート)を負荷されているかまたは負荷されていない、低濃度のヒドロキシアパタイトマイクロ/ナノ粒子(最終的な第1相ヒドロゲルの10%w/v)を組み込む、記載のような架橋ヒアルロン酸ヒドロゲルを含む第1相の石灰化速度は、マイクロCTに基づく動的組織形態測定法で研究されている。複合材料の結果は、ヒドロキシアパタイトなしの架橋ヒアルロン酸ヒドロゲルと比較した場合、ラットの大腿骨顆部への適用の3から10日後に2倍または3倍の石灰化速度を示した。このパラメータは、ヒドロゲル埋入の3または10日後に得られた2回の連続したマイクロCTスキャンの比較に基づく。石灰化速度は、%/日で示し、新しく生成された石灰化マトリクスと以前に存在した石灰化マトリクスとの比で計算される。
【0050】
第2相の詳細な説明:
第2相は、水、PBSのような緩衝溶液などの生理学的に適合性の液体または非架橋ヒアルロン酸などの非架橋ヒドロゲル材料さえも含む。第2相は、第1相を埋め込み、ある一定の態様において、これは第1相に対する担体として働く。ヒアルロン酸ヒドロゲルが使用される場合、この濃度は、好ましくは第1相ヒアルロン酸ヒドロゲルに対するものと同じ範囲(0.1から5%w/vに及ぶ。)であり、好ましくは、インビボで抗炎症効果がより良好であるので低分子量ヒアルロン酸(100万ダルトン未満)が使用される。
【0051】
さらに、第2相は、この中に、好ましくは抗菌剤/抗生物質、鎮痛剤、サイトカイン、増殖因子、タンパク質、ペプチド、例えば骨誘導剤、骨伝導剤、再吸収阻害剤などの低分子薬物またはこれらの何らかの組み合わせなど、生理活性物質を含み得る。生理活性物質のサイズに依存して、これらは第2相から第1相へと自由に拡散しおよび戻り得るか、またはこれらは第2相に閉じ込められ得:従って、対象の体内において材料が埋入/注入されると、生理活性化合物のサイズおよび/または相の他の物理化学的パラメータ(例えば濃度)が活性物質の放出に影響を与える。例えば、抗菌剤として使用される遊離銀イオンは、より大きな銀粒子よりも速く放出される。銀は、特に、感染過程が骨量減少の原因であることが多い歯科用途に対して、第2相に組み込もうとする最も好ましい生理活性物質および抗菌物質の1つである。銀は、前述のように、粒子、遊離イオンまたはリン酸カルシウム粒子の表面上に担持されるイオンの形態のいずれかで適用される。
【0052】
好ましい実施形態において、第2相は、前に記載のように、おそらく上述の生理活性物質のいずれかが負荷されるリン酸カルシウム粒子を含む。好ましい実施形態において、このような粒子にビスホスホネートおよび/または銀イオンが負荷される。この種の組み合わせは、感染過程の可能性を回避しながら骨形成過程を促進し;この組み合わせは、歯科の骨欠損に対して特に興味深い。負荷過程は、活性物質を水などの適切な溶媒に溶解し、次に微粒子を添加するか、または得られた活性物質溶液をナノ粒子分散液と混合するかのいずれかのことから構成され得る。最終生成物は、この表面を生理活性物質でコーティングされたマイクロ/ナノ粒子である。
【0053】
流動性の液相であるので、第2相は、最終的なヒドロゲルの注入を促進し、同時に血管新生および新生骨形成のための空間を架橋塊の間に残す。
【0054】
体積に関して、第1相対第2相の比は、好ましくは4:1であるが、注入可能な状態を維持するために19:1まで上昇させ得る。
【0055】
適用
本発明による記載の組成物は、シリンジに貯蔵され、シリンジから適用されることが好ましい。材料の柔らかさおよび特有の注入性によって、不規則な形状で、非耐力の、閉鎖的で接近困難な骨欠損に特に適するようになる。これらの種の欠損は、整形外科、外傷学、審美学および歯科学において見出され得る。
【0056】
歯科において、本材料は、現在使用されている骨代用材と比較してはるかに有利な注入性(25G針を容易に通過)があるため、フラップレスの低侵襲性技術を用いてインプラント周囲および歯周欠損に適用され得る。歯周炎またはインプラント周囲炎に冒された患者における本当の歯または歯科インプラントを取り巻く骨欠損は、
図5で示されるように、この部位の適正なクリーニングおよび消毒の後、材料の単純な歯肉縁下注射によって満たされ得る。
【0057】
新しい生体材料に対する別の可能性のある用途は、
図6で示されるように、例えばバルーンを用いたシュナイダー膜の隆起によって形成される洞における空隙に骨代用材が注入される、低侵襲性のサイナスリフトである。繰り返すが、新しい二相性材料の優れた注入性ゆえに、この材料の適用に必要であるのは、非常に小さい外傷性アクセスのみである。この新しい材料のさらなる利点は、これを銀イオンなどの抗菌剤で完成させ得ることである。これにより、インプラント周囲炎などの感染過程によって生じる骨欠損に完全に適したものとなる。
【0058】
より小さい骨欠損の低侵襲性処置の他に、本発明による組成物は、材料を適所に保持するために使用される膜と組み合わせて、より大きな欠損の外科的処置のためにも使用され得る。これは、殆どの他の市販の骨代用材にも使用される標準的な手順である。
【0059】
本発明による組成物は、外傷学および整形外科においても大きな長所を有する。これは、好ましくは、外傷、嚢胞、腫瘍または他のものによって引き起こされる限定された接近困難な骨欠損に対して使用される。歯科用途の場合のように、本材料を適用するために必要であるのは、部位への低侵襲性のアクセスのみである。別の可能な用途は、単純骨内注射を介して、大腿骨頸部などの損傷のある脆弱な骨構造に、または骨粗鬆症患者の椎骨において本材料を予防的に適用することである。本材料はまた、骨構造の局所的な増強のために、予め穿孔を行った骨ねじ穴または他のインプラント(例えば股関節、膝、肩)の準備済みの土台にも適用し得る。この適用は、骨粗鬆症ラットモデルにおいてビスホスホネートと組み合わせて試験し、良好な結果が得られている。統合される抗菌剤は、危険なインプラント感染のリスクをさらに低下させる。
【0060】
本発明による組成物の注入可能な形態の他に、第2の凍結乾燥した海綿状形態の材料も可能である。凍結乾燥ヒアルロン酸は体液を容易に吸収し、これはヒドロゲルのインシトゥ形成につながる。海綿状形態は、開放外科介入の枠内で、より大きな開放骨欠損への適用に有利であり得る。
【0061】
例として、添付の図面を参照して、本発明の特別な実施形態を以下に記載する。