特許第6793923号(P6793923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793923
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】車両放送システム
(51)【国際特許分類】
   H04H 20/62 20080101AFI20201119BHJP
   B61L 25/02 20060101ALI20201119BHJP
   H04R 27/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   H04H20/62
   B61L25/02 A
   H04R27/00 H
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-30660(P2017-30660)
(22)【出願日】2017年2月22日
(65)【公開番号】特開2018-137597(P2018-137597A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2020年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592066860
【氏名又は名称】八幡電気産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 聡
(72)【発明者】
【氏名】小玉 大輔
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−295575(JP,A)
【文献】 特開平11−045388(JP,A)
【文献】 特開2008−244527(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/128585(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0045996(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0116514(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04H 20/62
B61L 25/02
H04R 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常放送時に使用する通常用電源線と、
非常時放送時に使用する非常用電源線と、
前記通常用電源線及び前記非常用電源線のいずれか一方のみを通電するように切り替える電源切替部と、
音声入力部から入力されたアナログの音声信号を、デジタル伝送路又はアナログ伝送路に出力する第1放送装置と、
前記デジタル伝送路又は前記アナログ伝送路から入力された音声信号を、車両ごとに設けられた音声出力部から出力させる第2放送装置と、
を備え、
前記第1放送装置は、前記電源切替部による前記通常用電源線の通電を検知した場合、前記アナログの音声信号をデジタルの音声信号に変換して前記デジタル伝送路に出力するとともに、前記電源切替部による前記非常用電源線の通電を検知した場合、前記アナログの音声信号を前記アナログ伝送路に出力し、
前記第2放送装置は、前記電源切替部による前記通常用電源線の通電を検知した場合、前記デジタル伝送路から入力されたデジタルの音声信号をアナログの音声信号に変換して前記音声出力部から出力させるとともに、前記電源切替部による前記非常用電源線の通電を検知した場合、前記アナログ伝送路から入力されたアナログの音声信号を前記音声出力部から出力させることを特徴とする車両放送システム。
【請求項2】
前記電源切替部は、前記通常用電源線及び前記非常用電源線のいずれか一方のみを通電するように手動で切り替える電源切替スイッチであることを特徴とする請求項1に記載の車両放送システム。
【請求項3】
前記電源切替部は、バッテリーの電圧が所定の電圧以下であることを検知した場合に、前記非常用電源線のみを通電するように切り替えることを特徴とする請求項1に記載の車両放送システム。
【請求項4】
前記電源切替部は、バッテリーの電圧がDC70V以下であることを検知した場合に、前記非常用電源線のみを通電するように切り替えることを特徴とする請求項3に記載の車両放送システム。
【請求項5】
前記第1放送装置及び前記第2放送装置は、広電圧範囲の入力に対して定電圧を出力する定電圧電源回路を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両放送システム。
【請求項6】
前記定電圧電源回路は、DC50〜110Vの入力に対して定電圧を出力することを特徴とする請求項5に記載の車両放送システム。
【請求項7】
前記第1放送装置は、前記アナログ伝送路に出力するアナログの音声信号の電圧を増幅する増幅器を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両放送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両放送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両において、旅客案内・旅客誘導等の車内放送や乗務員間連絡などを実現する車両放送システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
かつての車両放送システムでは、車両間の引き通し線を介するアナログ伝送方式が採用されていた。従来のアナログ伝送方式を採用した車両放送システム200は、図6に示すように、乗務員室(運転室)内に設けられたマイクロホン201から入力された音声を、音声引き通し線202を介して、各車両の内外に設けられたスピーカー203から出力する構成となっている。
しかしながら、アナログ伝送方式を採用した場合、耐ノイズ性が弱いためにノイズの影響を受けやすかったり、車両間引き通し線を設ける必要があるため手間やコストが掛かったりする等の課題があった。
【0003】
そこで、近年の車両放送システムでは、列車情報管理装置を介するデジタル伝送方式が採用されるようになっている。従来のデジタル伝送方式を採用した車両放送システム300は、図7に示すように、運転室内に設けられたマイクロホン301から入力された音声を、列車情報管理装置のデジタル伝送路302を介して、各車両の内外に設けられたスピーカー303から出力する構成となっている。デジタル伝送方式は、アナログ伝送方式と比べ、耐ノイズ性の向上や車両間引き通し線の低減などの特長を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−130072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のデジタル伝送方式を採用した車両放送システムでは、列車情報管理装置が使用できない場合(例えば、装置故障時や長時間停電に伴うバッテリー電圧の低下時(DC70V以下))に、車内放送や乗務員間連絡を行うことができないという課題がある。
【0006】
本発明は、デジタル伝送方式の車両放送を使用できない状態となった場合であっても、車両放送を提供することが可能な車両放送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明は、
車両放送システムにおいて、
通常放送時に使用する通常用電源線と、
非常時放送時に使用する非常用電源線と、
前記通常用電源線及び前記非常用電源線のいずれか一方のみを通電するように切り替える電源切替部と、
音声入力部から入力されたアナログの音声信号を、デジタル伝送路又はアナログ伝送路に出力する第1放送装置と、
前記デジタル伝送路又は前記アナログ伝送路から入力された音声信号を、車両ごとに設けられた音声出力部から出力させる第2放送装置と、
を備え、
前記第1放送装置は、前記電源切替部による前記通常用電源線の通電を検知した場合、前記アナログの音声信号をデジタルの音声信号に変換して前記デジタル伝送路に出力するとともに、前記電源切替部による前記非常用電源線の通電を検知した場合、前記アナログの音声信号を前記アナログ伝送路に出力し、
前記第2放送装置は、前記電源切替部による前記通常用電源線の通電を検知した場合、前記デジタル伝送路から入力されたデジタルの音声信号をアナログの音声信号に変換して前記音声出力部から出力させるとともに、前記電源切替部による前記非常用電源線の通電を検知した場合、前記アナログ伝送路から入力されたアナログの音声信号を前記音声出力部から出力させるように構成した。
【0008】
かかる構成の車両放送システムによれば、電源切替部としての電源切替スイッチを切り替えることで、デジタル伝送方式とアナログ伝送方式のいずれの車両放送を利用するかを選択することができる。したがって、デジタル伝送路が使用できない状態となった場合であっても、アナログ伝送方式を選択することで、車両放送を提供することができる。
【0009】
ここで、望ましくは、
前記電源切替部は、前記通常用電源線及び前記非常用電源線のいずれか一方のみを通電するように手動で切り替える電源切替スイッチである。
かかる構成によれば、乗務員が電源切替スイッチを切り替えるという簡易な操作で、デジタル伝送方式とアナログ伝送方式のいずれの車両放送を利用するかを選択することができる。したがって、例えば、列車情報管理装置が故障する等、列車情報管理装置やデジタル伝送路が使用できない状態となった場合であっても、乗務員の判断でアナログ伝送方式を選択することができるので、車両放送をより確実に提供することができる。
【0010】
また、望ましくは、
前記電源切替部は、バッテリーの電圧が所定の電圧以下であることを検知した場合に、前記非常用電源線のみを通電するように切り替える。
ここで、所定の電圧とは、これ以上電圧が下がると列車情報管理装置やその他の車両機器が機能しなくなるおそれのある電圧のことである。
かかる構成によれば、バッテリー電圧の低下により列車情報管理装置やその他の車両機器が機能しなくなる前のタイミングで自動的にアナログ伝送方式の車両放送に切り替えることができる。したがって、バッテリー電圧の低下に伴う機器のダウンによる乗客の混乱を抑制しつつ、旅客案内や旅客誘導等を行うことができる。
【0011】
特に、望ましくは、
前記電源切替部は、バッテリーの電圧がDC70V以下であることを検知した場合に、前記非常用電源線のみを通電するように切り替える。
かかる構成によれば、一般に、鉄道業界で使用される機器が作動する限界のバッテリー電圧であるDC70V以下となるタイミングで自動的にアナログ伝送方式の車両放送に切り替えることができる。したがって、バッテリー電圧の低下に伴う機器のダウンによる乗客の混乱をより確実に抑制しつつ、旅客案内や旅客誘導等を行うことができる。
【0012】
また、望ましくは、
前記第1放送装置及び前記第2放送装置は、広電圧範囲の入力に対して定電圧を出力する定電圧電源回路を備える。
かかる構成によれば、入力電圧値に依存することなく、放送音量を一定に保つことができる。したがって、バッテリーの電圧が低下した場合であっても、放送音量の低下を抑制することができる。
【0013】
特に、望ましくは、
前記定電圧電源回路は、DC50〜110Vの入力に対して定電圧を出力する。
かかる構成によれば、一般に、鉄道業界で使用される機器が作動する限界のバッテリー電圧であるDC70V以下(DC50〜70V)の入力に対しても、放送音量を一定に保つことができる。したがって、バッテリーの電圧が低下した場合であっても、放送音量の低下を抑制しつつ、車両放送を提供することができる。
【0014】
また、望ましくは、
前記第1放送装置は、前記アナログ伝送路に出力するアナログの音声信号の電圧を増幅する増幅器を備える。
かかる構成によれば、アナログ伝送路に出力するアナログの音声信号をS/N比が良好となるように増幅することができる。したがって、アナログ伝送方式を採用する非常時放送時も、明瞭で聞き取りやすい放送を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、デジタル伝送方式の車両放送を使用できない状態となった場合であっても、車両放送を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る車両放送システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】電源線を切り替える構成を示すブロック図である。
図3】AVRの構成を示すブロック図である。
図4】マイクロホンからの音声経路を切り替える放送装置の構成を示すブロック図である。
図5】スピーカーへの音声経路を切り替える放送装置の構成を示すブロック図である。
図6】従来のアナログ伝送方式を採用した車両放送システムの概略構成を示すブロック図である。
図7】従来のデジタル伝送方式を採用した車両放送システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
本発明の実施の形態に係る車両放送システム100は、図1に示すように、電源線1と、マイクロホン(音声入力部)2と、放送装置(第1放送装置)3と、列車情報管理装置4(図2参照)のデジタル伝送路41と、アナログ伝送路5と、放送装置(第2放送装置)6と、スピーカー7(音声出力部)と、を備えて構成されている。本実施の形態では、上記の各構成は、11両編成の鉄道車両上に構成されている。図1に示すように、1号車及び11号車が運転室となっている。すなわち、1号車が先頭車両の場合は11号車が最後尾車両となり、11号車が先頭車両の場合は1号車が最後尾車両となる。また、2〜10号車は、全て同一の構成となっている。
なお、本実施の形態では、11両編成の鉄道車両としているが、これに限定されるものではなく、例えば、15両編成の鉄道車両等としてもよい。
【0019】
電源線1は、図1及び図2に示すように、通常放送時に使用する通常用電源線11と、非常時放送時に使用する非常用電源線12と、を備えて構成されている。
通常用電源線11は、バッテリー13、放送装置3、6及び列車情報管理装置4にそれぞれ接続されている。
非常用電源線12は、バッテリー13及び放送装置3、6にそれぞれ接続されている。
各電源線1(通常用電源線11及び非常用電源線12)はいずれも、バッテリー13と、放送装置3、6及び列車情報管理装置4と、の間で、電源切替スイッチ(電源切替部)14に接続されている。
【0020】
電源切替スイッチ14は、通常用電源線11及び非常用電源線12のいずれか一方のみを通電するように切り替えるスイッチである。
通常用電源線11が通電された場合、バッテリー13から放送装置3、6及び列車情報管理装置4に対してそれぞれ電力が供給される。この場合、列車情報管理装置4のデジタル伝送路41を介したデジタル伝送方式の車両放送が提供される。
一方、非常用電源線12が通電された場合、バッテリー13から放送装置3、6に対してそれぞれ電力が供給される。この場合、アナログ伝送路5を介したアナログ伝送方式の車両放送が提供される。
電源切替スイッチ14は、鉄道車両の先頭車両及び最後尾車両の各運転室に設置されている。乗務員は、電源切替スイッチ14を手動で切り替えることで、デジタル伝送方式とアナログ伝送方式のいずれの車両放送を利用するかを選択することができる。
【0021】
マイクロホン2及び放送装置3は、電源切替スイッチ14と同様、鉄道車両の先頭車両及び最後尾車両の各運転室に設置されている。
マイクロホン2は、乗務員が旅客案内・旅客誘導等の車内放送や乗務員間連絡などを行う際に使用する。
放送装置3は、デジタル伝送路41及びアナログ伝送路5にそれぞれ接続され、マイクロホン2から入力された音声信号を、デジタル伝送路41又はアナログ伝送路5に出力する。
【0022】
また、放送装置3は、図2図4に示すように、定電圧電源回路(以下AVR)31と、A/D変換器32と、増幅器33と、放送切替部34と、を備えて構成されている。
【0023】
AVR31は、広電圧範囲(DC50〜110V)の入力に対して定電圧(DC15V)を出力する回路である。放送装置3がAVR31を備えたことで、入力電圧値に依存することなく、放送音量を一定に保つことができる。なお、本実施の形態では、定電圧としてDC15Vを出力するようにしているが、これに限定されるものではない。出力値は車種により異なるため、車種に応じて適宜任意の値を出力値として設定することが可能である。
また、AVR31は、通常放送時(通常用電源線11選択時)に適切にA/D変換器32に入力されるよう、音声レベル(−10dBライン)を切り替える。
【0024】
A/D変換器32は、AVR31で音声レベルを切り替えられたアナログの音声信号をデジタルの音声信号に変換して、デジタル伝送路41に出力する。
増幅器33は、AVR31で音声レベルを切り替えられたアナログの音声信号の電圧を増幅して、アナログ伝送路5の音声引き通し線51に出力する。ここで、アナログの音声信号を音声引き通し線51に出力する前に増幅器33を備えたのは、AVR31で音声レベルを低く切り替えられた音声信号をそのまま音声引き通し線51に出力した場合、有害ノイズの影響を受けやすくなるため、結果的に良好なS/N比を確保することが困難となるからである。そこで、増幅器33を備えて、音声引き通し線51に出力するアナログの音声信号をS/N比が60dB以上となるように増幅することで、非常時放送時も明瞭で聞き取りやすい放送を提供することができる。
放送切替部34は、通常用電源線11又は非常用電源線12のいずれかを加圧検知した結果に応じて、音声信号及びマイクSW信号の双方の経路を切り替える。
【0025】
また、放送装置3は、図4に示すように、通常用電源線11及び非常用電源線12のいずれが加圧(通電)されているかを常時監視している。
放送装置3は、通常用電源線11の加圧を検知した場合(通常放送時)、マイクロホン2から入力されたアナログの音声信号をA/D変換器32にてデジタルの音声信号に変換し、デジタル伝送路41に出力する。また、マイクロホン2から入力されたマイクSW信号を、デジタル伝送路41に出力する。
一方、放送装置3は、非常用電源線12の加圧を検知した場合(非常時放送時)、マイクロホン2から入力されたアナログの音声信号を増幅器33にて増幅し、アナログ伝送路5の音声引き通し線51に出力する。また、マイクロホン2から入力されたマイクSW信号を、アナログ伝送路5の制御引き通し線52に出力する。
【0026】
デジタル伝送路41は、図1に示すように、放送装置3及び放送装置6の全てと接続されている。
デジタル伝送路41は、放送装置3から入力されたデジタルの音声信号を、放送装置6に出力する。また、放送装置3から入力されたマイクSW信号に基づいて、スピーカーON信号を放送装置6に出力する。
【0027】
アナログ伝送路5は、図1に示すように、2本の音声引き通し線51と、制御引き通し線52と、を備えて構成されている。
音声引き通し線51及び制御引き通し線52は、放送装置3及び放送装置6の全てと接続されている。
音声引き通し線51は、放送装置3から入力されたアナログの音声信号を、放送装置6に出力する。
制御引き通し線52は、放送装置3から入力されたマイクSW信号に基づいて、スピーカーON信号を放送装置6に出力する。
【0028】
放送装置6及びスピーカー7は、鉄道車両の各車両内に設置されている。
放送装置6は、デジタル伝送路41及びアナログ伝送路5にそれぞれ接続され、デジタル伝送路41又はアナログ伝送路5から入力された音声信号を、スピーカー7に出力する。
【0029】
放送装置6は、図2図3及び図5に示すように、AVR61と、D/A変換器62と、増幅器63と、放送切替部64と、を備えて構成されている。
AVR61は、放送装置3のAVR31と同様の構成であるため、説明を省略する。また、放送切替部64は、放送装置3の放送切替部34と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0030】
D/A変換器62は、デジタル伝送路41から入力されたデジタルの音声信号をアナログの音声信号に変換して、スピーカー7に出力する。
増幅器63は、アナログ伝送路5の音声引き通し線51から入力されたアナログの音声信号の電圧を増幅して、スピーカー7に出力する。
【0031】
また、放送装置6は、図5に示すように、通常用電源線11及び非常用電源線12のいずれが加圧(通電)されているかを常時監視している。
放送装置6は、通常用電源線11の加圧を検知し(通常放送時)、デジタル伝送路41から入力されたスピーカーON信号が有効である場合、デジタル伝送路41から入力されたデジタルの音声信号をD/A変換器62にてアナログの音声信号に変換し、スピーカー7に出力する。
一方、放送装置3は、非常用電源線12の加圧を検知し(非常時放送時)、アナログ伝送路5の制御引き通し線52から入力されたスピーカーON信号が有効である場合、アナログ伝送路5の音声引き通し線51から入力されたアナログの音声信号を増幅器63にて増幅し、スピーカー7に出力する。
【0032】
スピーカー7は、放送装置6のD/A変換器62又は増幅器63から入力された音声信号を、各車両内に出力する。
【0033】
以上のように、本発明の実施の形態に係る車両放送システム100では、放送装置3が、電源切替スイッチ14による通常用電源線11の通電を検知した場合、アナログの音声信号をデジタルの音声信号に変換してデジタル伝送路41に出力し、放送装置6が、デジタル伝送路41から入力されたデジタルの音声信号をアナログの音声信号に変換してスピーカー7から出力させることで、デジタル伝送方式の車両放送を提供することができる。
また、放送装置3が、電源切替スイッチ14による非常用電源線12の通電を検知した場合、アナログの音声信号をアナログ伝送路5に出力し、放送装置6が、アナログ伝送路5から入力されたアナログの音声信号をスピーカー7から出力させることで、アナログ伝送方式の車両放送を提供することができる。
すなわち、乗務員は、電源切替スイッチ14を切り替えるという簡易な操作で、デジタル伝送方式とアナログ伝送方式のいずれの車両放送を利用するかを選択することができる。したがって、例えば、列車情報管理装置4が故障する等、デジタル伝送路41が使用できない状態となった場合であっても、アナログ伝送方式を選択することで、車両放送を提供することができる。
【0034】
また、本発明の実施の形態に係る車両放送システム100では、放送装置3及び放送装置6は、広電圧範囲(DC50〜110V)の入力に対して定電圧を出力するAVR31、61を備えることで、入力電圧値に依存することなく、放送音量を一定に保つことができる。したがって、バッテリーの電圧が低下した場合であっても、放送音量の低下を抑制することができる。
【0035】
また、本発明の実施の形態に係る車両放送システム100では、放送装置3は、アナログ伝送路5に出力するアナログの音声信号の電圧を増幅する増幅器33を備えることで、アナログ伝送路5に出力するアナログの音声信号をS/N比が良好となるように増幅することができる。したがって、アナログ伝送方式を採用する非常時放送時も、明瞭で聞き取りやすい放送を提供することができる。
【0036】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0037】
例えば、上記実施の形態では、乗務員が電源切替スイッチ14を手動で切り替えるようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、電源切替スイッチ14にバッテリー13の電圧を検知する機能を持たせるようにし、バッテリー13の電圧が所定の電圧以下であることを検知した場合に、非常用電源線12のみを通電するように自動的に切り替えるようにしてもよい。ここで、所定の電圧とは、これ以上電圧が下がると列車情報管理装置4やその他の車両機器が機能しなくなるおそれのある電圧のことであり、例えば、DC70Vである。
【0038】
このように、電源切替スイッチ14が、バッテリー13の電圧が所定の電圧以下であることを検知した場合に、非常用電源線12のみを通電するように切り替えることで、バッテリー13電圧の低下により列車情報管理装置4やその他の車両機器が機能しなくなる前のタイミングで自動的にアナログ伝送方式の車両放送に切り替えることができる。したがって、バッテリー13電圧の低下に伴う機器のダウンによる乗客の混乱を抑制しつつ、旅客案内や旅客誘導等を行うことができる。
【0039】
また、上記実施の形態では、スピーカー7を各車両内に設置するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、各車両内の他、各車両外に設置するようにしてもよい。特に、非常時放送を行う場合、乗客のみならず、各車両外にいる人たちにも情報を報知することが必要となるケースも考えられるため、スピーカー7を各車両外に設置することは好ましい。
【0040】
その他、車両放送システムを構成する各装置の細部構成及び各装置の細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
100 車両放送システム
1 電源線
11 通常用電源線
12 非常用電源線
13 バッテリー
14 電源切替スイッチ(電源切替部)
2 マイクロホン(音声入力部)
3 放送装置(第1放送装置)
31 AVR(定電圧電源回路)
32 A/D変換器
33 増幅器
34 放送切替部
4 列車情報管理装置
41 デジタル伝送路
5 アナログ伝送路
51 音声引き通し線
52 制御引き通し線
6 放送装置(第2放送装置)
61 AVR(定電圧電源回路)
62 D/A変換器
63 増幅器
64 放送切替部
7 スピーカー(音声出力部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7