(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
<磁気計測装置2の概要>
本発明に係る磁気センサ1(磁気センサ5〜9)及び磁気計測装置2の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、磁気計測装置2は、プローブ部2A、及び、計測部2Bを備えている。プローブ部2Aは、後述する磁気センサ1A、1B(以下、総称して「磁気センサ1」という。)を有する。プローブ部2Aは、外部磁界を検出可能な磁気グラジオセンサである。プローブ部2Aの構成の詳細は後述する。計測部2Bはプローブ部2Aを駆動する。
【0020】
計測部2Bは、クロック部21、及び、パルス生成器22を備える。クロック部21は、所定の間隔でパルス信号をパルス生成器22に出力する。パルス生成器22は、クロック部21から出力されるパルス信号に応じて、プローブ部2Aの磁気センサ1A、1Bのそれぞれの第2コイル12(
図2参照)に電流を供給する。パルス生成器22から第2コイル12に供給される電流は、クロック部21から出力されるパルス信号に同期して周期的に変化する。周期的に変化する電流の波形は、パルス状に変化する方形波である。以下、パルス生成器22から第2コイルに12に供給されるパルス電流を、「Ie」と表記する(
図2参照)。
【0021】
更に、計測部2Bは、サンプルホールド回路24、26、差動アンプ28、フィルタ30、アンプ32、及び、フィルタ34を有する。サンプルホールド回路24は、磁気センサ1Aの第1コイル11A(
図2参照)の誘導起電力の振幅のピークを検出する。サンプルホールド回路26は、磁気センサ1Bの第1コイル11B(
図2参照)の誘導起電力の振幅のピークを検出する。なお、サンプルホールド回路24、26には、クロック部21から出力されるパルス信号がトリガ信号として供給される。サンプルホールド回路24、26におけるピーク値の検出は、トリガ信号に同期して所定の位相ごとに行われる。以下、第1コイル11Aの誘導起電力を、「Ea」と表記する(
図2参照)。第1コイル11Bの誘導起電力を、「Eb」と表記する(
図2参照)。
【0022】
差動アンプ28は、サンプルホールド回路24、26の出力値の差分を出力する。これにより、磁気計測装置2は、勾配磁界検出方式(グラジオ方式)に基づいて外部磁界を検出できる。フィルタ30は、差動アンプ28からの出力信号から高周波成分および低周波成分を除去し、所望の周波数成分のみを取り出す。アンプ32は、フィルタ30からの出力信号を増幅する。フィルタ34 は、アンプ32からの出力信号から高周波成分および低周波成分を再度除去し、所望の周波数成分のみを取り出す。フィルタ34から出力される信号は、非図示の表示装置に表示される。
【0023】
図2は、プローブ部2Aの基本構成を概念的に示す。プローブ部2Aは、磁気センサ1A、1Bを有する。磁気センサ1Aは、参照用のセンサとして用いられる。磁気センサ1Bは、後述する外部磁界Bmesを計測するためのセンサとして用いられる。磁気センサ1A、1Bは同一形状を有する。これによって、磁気センサ1は、所謂グラジオセンサを形成する。なお、磁気センサ1A、1Bは、磁気センサ1Bに外部磁界Bmesが作用し、磁気センサ1Aに外部磁界Bmesが作用しないように、互いに離れた位置に配置される。
【0024】
磁気センサ1Aは、磁性材料10A、第1コイル11A、及び、第2コイル12Aを有する。磁性材料10Aは、磁気異方性を有する長手状の固体材料である。第1コイル11A及び第2コイル12Aは、それぞれ、ソレノイドコイルである。第1コイル11A及び第2コイル12Aは、それぞれ、磁性材料10Aに近接して配置される。磁性材料10A、第1コイル11A、及び、第2コイル12Aの配置の詳細については後述する。
【0025】
磁気センサ1Bは、磁性材料10B、第1コイル11B、及び、第2コイル12Bを有する。磁性材料10B、第1コイル11B、及び、第2コイル12Bは、それぞれ、磁気センサ1Aの磁性材料10A、第1コイル11A、及び、第2コイル12Aに対応する。以下、磁性材料10A、10Bを総称して「磁性材料10」という。第1コイル11A、11Bを総称して「第1コイル11」という。第2コイル12A、12Bを総称して「第2コイル12」という。
【0026】
パルス生成器22(
図1参照)から供給されるパルス電流Ieは、第2コイル12A、12Bに流れる。また、第1コイル11Aの誘導起電力Eaは、サンプルホールド回路24(
図1参照)に出力され、第1コイル11Bの誘導起電力Ebは、サンプルホールド回路26(
図1参照)に出力される。
【0027】
図3を参照し、磁気センサ1の動作原理の概要を説明する。
図3では、磁気センサ1のうち、磁性材料10及び第2コイル12のみが示され、第1コイル11は省略されている。又、第2コイル12は直線で示されている。磁性材料10中の矢印は、磁気モーメントを示す。状態S(0)は、磁気センサ1の磁性材料10に、外部磁界のうち磁性材料10の長手方向Lの成分(以下、「外部磁界Bmes」という。)が作用していない無磁界状態、又は、環境磁界のみが作用している状態を示す。つまり、状態S(0)は、グラジオセンサにおいて参照用のセンサとして用いられる、磁気センサ1Aの状態を示す。状態S(1)は、磁気センサ1の磁性材料10に、外部磁界Bmesが作用した状態を示す。つまり、状態S(1)は、グラジオセンサにおいて測定用のセンサとして用いられる、磁気センサ1Bの状態を示す。状態S(2)は、磁気センサ1A、1Bのそれぞれの第2コイル12A、12Bに、パルス電流Ieが印加された状態を示す。
【0028】
状態S(0)で示されるように、磁性材料10Aにおける磁気モーメントは、外部磁界Bmesが作用していない状態で、長手方向Lと直交する直交方向Vと一致する。磁気モーメントは、直交方向Vの何れかを向く。つまり、直交方向Vの一方側を向く磁気モーメントと、直交方向Vの他方側を向く磁気モーメントとが混在する。一方、状態S(1)で示されるように、外部磁界Bmesが作用することに応じて、一部の容易磁化方向を形成する磁気モーメントの配向が変化する。磁性材料10Bにおける磁気モーメントは、直交方向Vに対して長手方向に傾く。つまり、磁気モーメントは、長手方向Lの成分を含んだ状態になる。
【0029】
第2コイル12にパルス電流Ieが通流した場合、第2コイル12は、パルス電流Ieに応じて直交方向Vの成分を有する誘起磁界を生じさせる。以下、パルス電流Ieの通電に応じて第2コイル12に生じる誘起磁界のうち、直交方向Vの成分を、「誘起磁界Be」という。この場合、状態S(2)に示すように、磁性材料10中の磁気モーメントの一定量は、誘起磁界Beの向きに整列する。これによって、磁性材料10中の磁気モーメントの一定量は、直交方向Vの何れかの向きと一致し、それぞれの向きが揃う。
【0030】
パルス電流Ieが第2コイル12に通電することによって磁性材料10の磁気モーメントが整列するとき、第2コイル12は磁界を一時的に発生させる。以下、誘起磁界Beによって一時的に発生する磁界を、「一過性磁界」という。ここで、状態S(0)の場合、磁気モーメントに長手方向Lの成分は含まれない。このため、状態S(0)から状態S(2)に変化した場合において、磁気モーメントの長手方向Lの時間的変化は生じないので、一過性磁界に長手方向Lの成分は含まれない。一方、状態S(1)の場合、磁気モーメントに長手方向Lの成分が含まれる。このため、状態S(1)から状態S(2)に変化した場合において、磁気モーメントの長手方向Lの時間的変化が生じるので、一過性磁界に長手方向Lの成分が含まれる。つまり、磁性材料10Aが状態S(0)から状態S(2)に変化するときの一過性磁界の長手方向Lの成分と、磁性材料10Bが状態S(1)から状態S(2)に変化するときの一過性磁界の長手方向Lの成分とでは、大きさが異なる。
【0031】
一過性磁界の長手方向Lの成分が変化した場合、第1コイル11に誘導起電力Eが発生する。第1コイル11Aに誘起する誘導起電力Ea(
図2参照)、及び、第1コイル11Bに誘起する誘導起電力Eb(
図2参照)は、それぞれ、磁性材料10における一過性磁化の長手方向Lの成分の変化に対応する。ここで、第1コイル11Bに誘起する誘導起電力Ebの変化は、外部磁界Bmesを反映する。具体的には、第2コイル12Bに通電するパルス電流Ieの通電時(Hi)及び非通電時(Low)における第1コイル11Bの誘導起電力Ebの差の大きさの最大値ΔEb(max)は、外部磁界Bmesに一意に対応する。このため、磁気計測装置2の計測部2Bは、最大値ΔEb(max)に基づいて、外部磁界Bmesの大きさを算出できる。なお、磁気センサ1A、1Bに一様に環境磁界が作用する場合がある。これに対し、計測部2Bは、第2コイル12Aに通電するパルス電流Ieの通電時(Hi)及び非通電時(Low)における第1コイル11Aの誘導起電力Eaの差の大きさの最大値ΔEa(max)と、最大値ΔEb(max)との差分を、外部磁界Bmesとして特定することによって、環境磁界の影響を排除した精度の高い外部磁界Bmesの測定が可能となる。
【0032】
なお、パルス電流Ieの通電により、第2コイル12に生じる誘起磁界Beの向きは、周期的に反転する。これによって、磁性材料10の磁気モーメントが整列される励起状態期間と、通電が停止されて磁気モーメントが元の状態に戻る弛緩状態期間とが、短い周期で繰り返される。このため、計測部2Bは、第1コイル11における誘導起電力Eの励起状態期間と弛緩状態期間とにおける差を検出することができる。又、計測部2Bは、励起状態期間と弛緩状態期間とにおける差の算出を複数回くり返して平均値などを算出することもできる。
【0033】
<本実施形態の効果(計測部2Bについて)>
以上のように、磁気計測装置2のプローブ部2Aは、同一形状を有する磁気センサ1A、1Bを有する。磁気センサ1Aは参照用のセンサとして用いられ、磁気センサ1Bは計測用のセンサとして用いられる。磁気センサ1A、1Bは、所謂グラジオセンサを形成する。磁気計測装置2の計測部2Bは、磁気センサ1Bに作用する外部磁界のうち長手方向Lの成分(外部磁界Bmes)の大きさを、第1コイル11A、11Bの誘導起電力Ea,Ebに基づいて特定できる。より詳細には、計測部2Bは、第1コイル11A、11Bの誘導起電力Ea,Ebの差が大きい程、外部磁界Bmesが大きいと特定できる。この場合、磁性材料10A、10Bに一様に作用する環境磁界の影響を排除できる。このため、磁気計測装置2は、外部磁界Bmesを高い精度で計測できる。
【0034】
計測部2Bのうちパルス生成器22は、第2コイル52にパルス電流Ieを供給することによって誘起磁界Beを生じさせることができる。なお、パルス電流Ieの通電により生じる誘起磁界Beの向きは、周期的に反転する。これによって、計測部2Bは、磁性材料10を励起状態期間と弛緩状態期間とに短い周期で切り替えることができる。このため、磁気計測装置2は、第1コイル11における誘導起電力Eの励起状態期間と弛緩状態期間とにおける差を検出することによって、外部磁界Bmesを更に高い精度で計測できる。
【0035】
<第1実施形態(磁気センサ5)>
図4を参照し、磁気センサ5について説明する。磁気センサ5は、磁性材料50、第1コイル51、第2コイル52、及び、ボビン53を備えている。磁気センサ5、磁性材料50、第1コイル51、及び、第2コイル52は、それぞれ、上記の説明における磁気センサ1、磁性材料10、第1コイル11、及び、第2コイル12に対応する。
【0036】
ボビン53は、円環状を有する。ボビン53はプラスチック製である。第1コイル51及び第2コイル52は、それぞれ、素線がボビン53に巻回されることによって形成される。詳細は次の通りである。第2コイル52の素線は、ボビン53に対してトロイダル状に巻回される。第2コイル52は、所謂トロイダルコイルを形成する。第2コイル52の内側の部分(以下、「芯部54」という。)は、ボビン53と同一の円環状となる。第1コイル51の素線は、第2コイル52の外側に、ボビン53の周回に沿って円状に巻回される。第1コイル51と第2コイル52とは絶縁される。
【0037】
磁性材料50は、磁気異方性を有する固体材料である。磁性材料50は、磁性材料50A、50B、50C、50D、50E、50F、50G、50Hを有する。磁性材料50A〜50Hは、それぞれ、長手状を有するアモルファス性のワイヤ(アモルファスワイヤ)である。磁性材料50の断面形状は円形である。磁性材料50A〜50Hは、互いに平行に延びる。磁性材料50A〜50Hの長手方向Lと、ボビン53の中心軸の延びる方向とは、略一致する。磁性材料50A〜50Hは、それぞれ、ボビン53を長手方向Lに貫通する。言い換えれば、磁性材料50A〜50Hは、それぞれ、第2コイル52の芯部54を長手方向Lに貫通する。磁性材料50A〜50Hのそれぞれの一部は、第2コイル52の芯部54内に配置される。磁性材料50A〜50Hは、ボビン53の周回方向に等間隔に配置される。
【0038】
第1コイル51の素線と、第2コイル52の素線とは、長手方向Lと直交する直交方向Vから見た状態で、互いに直交する。以下、第1コイル51及び第2コイル52を直交方向Vから見たときのそれぞれの素線の延びる方向を、それぞれ、「第1コイル51の素線の延びる方向」「第2コイル52の素線の延びる方向」という。第1コイル51の素線の延びる方向は、長手方向Lと直交する。第2コイル52の素線の延びる方向は、長手方向Lと一致する。
【0039】
<第1実施形態の作用、効果>
磁気センサ5の第2コイル52に対し、計測部2Bのパルス生成器22からパルス電流Ieが通電された場合を例に挙げる。この場合、第2コイル52は、パルス電流Ieの通電に応じて誘起磁界を生じさせる。誘起磁界は、芯部54に沿った周回方向を向く。このため、誘起磁界は、長手方向Lと直交する。又、誘起磁界は、芯部54内に集中的に分布し、芯部54から外部に漏れにくい。なお、磁性材料50の一部は芯部54内に配置される。このため、誘起磁界の直交方向Vの成分である誘起磁界Beは、磁性材料50に効率よく作用する。
【0040】
なお、磁気センサ5では、磁性材料50に対する誘起磁界Beの有無に応じて変化する一過性磁界の変化量を、第1コイル51の誘導起電力Eによって検出し、外部磁界Bmesを計測する。従って、磁気センサ5は、上記のように誘起磁界Beを磁性材料50に効率よく作用させることによって、外部磁界Bmesを計測するときの感度を向上させることができる。
【0041】
磁気センサ5では、磁性材料50として、アモルファスワイヤが用いられる。アモルファス材料は、磁界によって磁気モーメントを容易に変化させることができる。このため、誘起磁界Beの作用に応じて一時的に発生する一過性磁界を大きくできる。従って、磁気センサ5は、外部磁界Bmesを計測するときの感度を更に向上させることができる。又、磁気センサ5には、複数の磁性材料50が設けられる。これによって、外部磁界Bmesを検出するときの感度を更に向上させることができる。
【0042】
第1コイル51と第2コイル52とのそれぞれの素線の延びる方向は、互いに直交する。ここで、第2コイル52にパルス電流Ieを通電したことに応じて磁性材料50から発生する一過性磁界は、磁性材料50の磁気モーメントのうち長手方向Lの時間的変化に基づいて発生する。このため、一過性磁界は、長手方向Lの成分を有する。又、第1コイル51の素線の延びる方向は、長手方向Lと直交する。なお、第1コイル51には、直交する向きの磁界が作用したときに誘導起電力Eが生じる。つまり、磁気センサ5では、第1コイル51と第2コイル52とのそれぞれの素線の延びる方向を直交させることによって、磁性材料10から発生する一過性磁界を、第1コイル51の誘導起電力Eに基づいて効率よく検出できる。
【0043】
<第2実施形態(磁気センサ6)>
図5を参照し、磁気センサ6について説明する。磁気センサ6が磁気センサ5(
図4参照)と異なる点は、磁気センサ5におけるボビン53と同一形状を有する磁性材料60が、ボビン53の代わりに用いられ、磁気センサ5における磁性材料50が用いられない点である。第1コイル51、第2コイル52、及び、芯部54の構成は、磁気センサ5の場合と同一である。磁性材料60と芯部54とは、略同一形状となる。磁性材料60全体は、芯部54内に配置される。なお、第1コイル51及び第2コイル52と磁性材料60とは絶縁される。
【0044】
<第2実施形態の作用、効果>
磁気センサ6では、第2コイル52によって生じる誘起磁界は、磁性材料60に沿った周回方向を向く。このため、誘起磁界は、磁性材料60の中心軸の延びる方向(長手方向L)と直交する。又、磁性材料60全体が芯部54内に配置される。更に、誘起磁界は、芯部54内に集中的に分布し、芯部54から外部に漏れにくい。このため、誘起磁界の直交方向Vの成分である誘起磁界Beは、磁性材料60全体に効率よく作用する。従って、磁気センサ6は、外部磁界Bmesを計測するときの感度を更に向上させることができる。
【0045】
<第3実施形態(磁気センサ7)>
図6を参照し、磁気センサ7について説明する。磁気センサ7は、磁性材料70、第1コイル71、第2コイル72、及び、ボビン73を備えている。磁気センサ7、磁性材料70、第1コイル71、及び、第2コイル72は、それぞれ、上記の説明における磁気センサ1、磁性材料10、第1コイル11、及び、第2コイル12に対応する。
【0046】
ボビン73は、ボビン73A、73B、73C、73D、73E、73Fを有する。ボビン73A〜73Fは、第1実施形態におけるボビン53を周回方向に6つに分割したそれぞれの部分に対応する。ボビン73A〜73Fは、それぞれ、円弧状に湾曲した板状を有する。
【0047】
第2コイル72は、第2コイル72A、72B、72C、72D、72E、72Fを有する。第2コイル72A、72B、72C、72D、72E、72Fは、それぞれ、ボビン73A、73B、73C、73D、73E、73Fに巻回される。第2コイル72A〜72Fの巻回方向は、第1実施形態における第2コイル52の巻回方向と同一である。つまり、第2コイル72A〜72Fは、それぞれ、磁気センサ5の円環状のボビン53(
図4参照)のうち周回方向の一部に巻回された状態となる。第2コイル72A〜72Fのそれぞれは、互いの磁束によって磁気的に影響を及ぼしあう状態、つまり、磁気的に結合した状態となる。第2コイル72A〜72Fのそれぞれの芯部、及び、互いに隣接する第2コイル72A〜72F間の空間部分は、全体として、ボビン53に対応する共通の円環状の部分を形成する。この共通部分は、第2コイル72全体の芯部ということができる。
【0048】
以下、第2コイル72A〜72Fのそれぞれの芯部、及び、第2コイル72A〜72Fのそれぞれの間の空間部分を含む共通部分、つまり、第2コイルの芯部を、「芯部74」といい、図中点線で示す。第2コイル72A〜72Fは、非図示の部分で直列に接続されている。
【0049】
磁性材料70は、磁気異方性を有する固体材料である。磁性材料70は、磁性材料70A、70B、70C、70D、70E、70Fを有する。磁性材料70A〜70Fは、それぞれ、長手状を有するアモルファス性のワイヤ(アモルファスワイヤ)である。磁性材料70A〜70Fは、互いに平行に延びる。磁性材料70Aは、芯部74のうちボビン73F、73A間の部分を長手方向Lに貫通する。磁性材料70Bは、芯部74のうちボビン73A、73B間の部分を長手方向Lに貫通する。磁性材料70Cは、芯部74のうちボビン73B、73C間の部分を長手方向Lに貫通する。磁性材料70Dは、芯部74のうちボビン73C、73D間の部分を長手方向Lに貫通する。磁性材料70Eは、芯部74のうちボビン73D、73E間の部分を長手方向Lに貫通する。磁性材料70Fは、芯部74のうちボビン73E、73F間の部分を長手方向Lに貫通する。磁性材料70A〜70Fのそれぞれの一部は、芯部74内に配置される。磁性材料70A〜70Fは、芯部74の周回方向に等間隔に配置される。
【0050】
第1コイル71は、第1コイル71A、71B、71C、71D、71E、71Fを有する。第1コイル71Aは、磁性材料70Aに巻回されている。第1コイル71Bは、磁性材料70Bに巻回されている。第1コイル71Cは、磁性材料70Cに巻回されている。第1コイル71Dは、磁性材料70Dに巻回されている。第1コイル71Eは、磁性材料70Eに巻回されている。第1コイル71Fは、磁性材料70Fに巻回されている。第1コイル71A〜71Fは、非図示の部分で直列に接続されている。
【0051】
<第3実施形態の作用、効果>
磁気センサ7では、第1コイル71A〜71Fがそれぞれ磁性材料70A〜70Fに巻回され、更に、第1コイル71A〜71Fは直列に接続される。これによって、磁気センサ7は、第1態様と同様の効果に加え、磁性材料70Aから発生する微弱な一過性磁界を、第1コイル71の誘導起電力Eに基づいて更に高い精度で検出できる。従って、磁気センサ7は、外部磁界Bmesを更に高い精度で検出できる。
【0052】
又、磁気センサ7においては、ボビン73A〜73F間に空間が形成される。なお、この空間は、芯部74の一部に対応する。そしてこの空間に磁性材料70A〜70Fをそれぞれ通すことによって、磁性材料70A〜70Fの一部を、芯部74内に配置させることができる。このため、第1実施形態の磁気センサ5のように、磁性材料50をボビン53内に貫通させる必要がない。従って、磁気センサ7は、磁気センサ5に比べて容易に製造することが可能となる。
【0053】
<第4実施形態(磁気センサ8)>
図7を参照し、磁気センサ8について説明する。磁気センサ8は、磁気センサ8A、8Bを備えている。磁気センサ8A、8Bは、それぞれ、上記実施形態における磁気センサ1A、1Bに対応する。このため、磁気センサ8Aは参照用のセンサとして用いられ、磁気センサ8Bは計測用のセンサとして用いられる。
【0054】
磁気センサ8A、8Bは、それぞれ、第3実施形態における磁気センサ7と略同一形状を有する。磁気センサ8Aは、磁性材料80、第1コイル81、第2コイル82、及び、ボビン83を備えている。磁性材料80は、磁性材料80A、80B、80C、80D、80E、80Fを有する。第1コイル81は、第1コイル81A、81B、81C、81D、81E、81Fを有する。第2コイル82は、第2コイル82A、82B、82C、82D、82E、82Fを有する。ボビン83は、ボビン83A、83B、83C、83D、83E、83Fを有する。磁性材料80A〜80F、第1コイル81A〜81F、第2コイル82A〜82F、及び、ボビン83A〜83Fは、それぞれ、磁気センサ7における磁性材料70A〜70F、第1コイル71A〜71F、第2コイル72A〜72F、及び、ボビン73A〜73Fに対応する。第2コイル82の芯部84は、磁気センサ7における芯部74に対応する。
【0055】
磁気センサ8Bは、磁性材料85、第1コイル86、第2コイル87、及び、ボビン88を備えている。磁性材料85は、磁性材料85A、85B、85C、85D、85E、85Fを有する。第1コイル86は、第1コイル86A、86B、86C、86D、86E、86Fを有する。第2コイル87は、第2コイル87A、87B、87C、87D、87E、87Fを有する。ボビン88は、ボビン88A、88B、88C、88D、88E、88Fを有する。磁性材料85A〜85F、第1コイル86A〜86F、第2コイル87A〜87F、及び、ボビン88A〜88Fは、それぞれ、磁気センサ7における磁性材料70A〜70F、第1コイル71A〜71F、第2コイル72A〜72F、及び、ボビン73A〜73Fに対応する。第2コイル87の芯部89は、磁気センサ7における芯部74に対応する。
【0056】
磁性材料80、85は、長手方向Lに延びる共通のアモルファス性のワイヤによって形成される。より詳細には、磁性材料80A、85A、磁性材料80B、85B、磁性材料80C、85C、磁性材料80D、85D、磁性材料80E、85E、磁性材料80F、85Fは、それぞれ、長手方向Lに延びる1つのアモルファス性のワイヤによって形成される。磁気センサ8Aの磁性材料80A〜80Fは、アモルファスワイヤの長手方向Lにおける中心に対して一方側に対応する。一方、磁気センサ8Bの磁性材料85A〜85Fは、アモルファスワイヤの長手方向Lにおける中心に対して他方側に対応する。
【0057】
以下、磁性材料80、85のそれぞれの長手方向Lにおける中心、且つ、アモルファスワイヤの円形断面の中心の位置を、「基準位置C」という。このとき、磁性材料80A、85A、磁性材料80B、85B、磁性材料80C、85C、磁性材料80D、85D、磁性材料80E、85E、磁性材料80F、85Fは、それぞれ、基準位置Cを基準として点対称の形状を有する。又、第1コイル81A、86A、第1コイル81B、86B、第1コイル81C、86C、第1コイル81D、86D、第1コイル81E、86E、第1コイル81F、86Fも同様、基準位置Cを基準として点対称の形状を有する。更に、基準位置Cを通って長手方向Lと直交する仮想平面を、「基準平面」と定義する。この場合、第2コイル82A、87A、第2コイル82B、87B、第2コイル82C、87C、第2コイル82D、87D、第2コイル82E、87E、第2コイル82F、87Fは、それぞれ、基準平面を基準として面対称の形状を有する。
【0058】
<第4実施形態の作用、効果>
磁気センサ8A、8Bは、それぞれ、第3実施形態と同様の効果を奏する。又、磁気センサ8A、8Bがプローブ部2Aに設けられた場合、磁性材料80、85に一様に作用する環境磁界の影響を、基準位置Cに対して一方側に配置された磁性材料80と、他方側に配置された磁性材料85とで対称にできる。又、基準位置Cを基準として互いに点対称の関係を有する磁性材料80、85のそれぞれについて、基準位置Cを基準として互いに点対称の関係を有する第1コイル81、86によって、一過性磁界を計測する。このため、磁性材料80が参照用として用いられ、且つ、磁性材料85が測定用として用いられたグラジオセンサが構成されることによって、環境磁界を好適に相殺することができる。従って、磁気センサ8による外部磁界Bmesの計測を、更に高い精度で行うことが可能となる。
【0059】
<第5実施形態(磁気センサ9)>
図8を参照し、磁気センサ9について説明する。磁気センサ9は、磁性材料90、第1コイル91、及び、第2コイル92を備えている。磁気センサ9、磁性材料90、第1コイル91、及び、第2コイル92は、それぞれ、上記の説明における磁気センサ1、磁性材料10、第1コイル11、及び、第2コイル12に対応する。
【0060】
磁性材料90は、長手方向Lと直交する直交方向Vの両側に対向する面を有する、板状のアモルファス性材料である。第2コイル92は、磁性材料90に直接巻回される。第2コイル92の素線の延びる方向は、長手方向Lと直交する。第2コイル92の芯部94の形状は、磁性材料90の形状と一致する。磁性材料90と第2コイル92とは絶縁される。第1コイル91は、第2コイル92の外側に巻回される。第1コイル91の素線の延びる方向は、長手方向Lと一致する。第1コイル91と第2コイル92とは絶縁される。
【0061】
<第5実施形態の作用、効果>
第2コイル92は、パルス電流Ieの通電に応じて誘起磁界を生じさせる。誘起磁界は、芯部94内に発生する。磁気センサ9において、磁性材料90全体が芯部94に含まれる。又、誘導磁界の向きは、第2コイル92の素線の延びる方向と直交する。なお、この方向は、磁性材料90の長手方向Lと直交する。このため、第2コイル92は、誘起磁界の直交方向Vの成分である誘起磁界Beを、磁性材料90に効率よく作用させることができる。
【0062】
又、磁性材料90の形状を板状とすることによって、磁気センサ5〜8における磁性材料50、60、70、80よりも表面積を大きくできる。このため、磁性材料90のうち外部磁界Bmesの検出が可能な領域の大きさを広くできる。更に、第1コイル91は磁性材料90に直接巻回されるので、磁性材料90によって生じる一過性磁界を高い精度で検出できる。
【0063】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。上記において、磁性材料10として、磁気異方性を有する固体材料が用いられた。磁性材料10として、磁気異方性を有する液体材料が用いられてもよい。又、磁性材料として、磁気異方性を有する固体及び液体の複合物が用いられてもよい。例えば、磁気異方性を有する粒子を含有するイオン液体などのように、磁気異方性を有する液体を所定の容器に含むような構成とすることも可能である。又、アモルファス材料と上記イオン液体との複合物として設けることも可能である。更に、磁性材料10として、アモルファス性以外の様々な材料を用いることができる。例えば、アモルファス性以外の磁性材料10として、ナノ結晶軟磁性合金、パーマロイ、フェライト等が挙げられる。
【0064】
第1実施形態における磁気センサ5のボビン53は、プラスチック製に限定されない。例えば、ボビン53はフェライト製であってもよい。又、磁気センサ5は、ボビン53を有さない構成であってもよい。ボビン53の周回方向の一部に切れ目が設けられていてもよい。切れ目を設けることによって、磁気センサ5の製造時、第2コイル52をボビン53に容易に巻回できる。
【0065】
第1実施形態における磁気センサ5、第3実施形態における磁気センサ7、及び、第4実施形態における磁気センサ8において、磁性材料10の形状及び数は、上記実施形態に限定されない。例えば、磁気センサ1に設けられる磁性材料10の形状及び数は、磁気センサ1に要求される検出感度に応じて変更されてもよい。例えば、磁性材料10の断面形状は、円形に限定されず、四角形であってもよい。又、異なる断面形状を有する磁性材料10が混在していてもよい。第5実施形態における磁気センサ9の磁性材料90の形状は、板状に限定されず、棒状であってもよい。
【0066】
第1実施形態における磁気センサ5、及び、第2実施形態における磁気センサ6について、第1コイル51は、ボビン53又は磁性材料60の内側に配置されてもよい。即ち、第1コイル51は、円筒状のボビン53又は磁性材料60の内壁に設けられてもよい。
【0067】
第2実施形態における磁気センサ6において、磁性材料60と第2コイル52との間は絶縁されていなくてもよい。例えば、磁性材料60と第2コイル52との接触により、相互間に微小電流が流れてもよい。
【0068】
第4実施形態において、磁性材料80、85は、磁気的に直列に結合したものと同等なものであればよい。例えば、双方が磁気的に結合されていれば、相互間に空間が介在していてもよい。つまり、磁性材料80、85は別々の部材であってもよい。第4実施形態において、磁性材料80、85は、長手方向Lの略中心の位置である基準位置Cを基準として対称であった。これに対し、例えば、磁性材料80、85は、長手方向Lの略中心の位置である基準位置Cを通って長手方向Lと直交する仮想平面を基準平面として、面対称の形状を有していてもよい。
【0069】
第1コイル11と第2コイル12とのそれぞれの素線の延びる方向は、互いに一致していなければよく、上記の第1〜第5実施形態のように直交する場合に限定されない。第1コイル11の素線の延びる方向と長手方向Lと一致していてもよい。第2コイル12の素線の延びる方向と長手方向Lとは相違していてもよい。
【0070】
磁気計測装置2のプローブ部2Aは、1つの磁気センサ1のみ有する構成であってもよい。この場合、磁気センサ1A、1Bのそれぞれの第1コイル11A、11Bの誘導起電力Ea、Ebを検出するために設けられた計測部2Bの構成(差動アンプ28等)は設けられなくてもよい。
【0071】
第2コイル12に通電する電流は、パルス電流Ieに限定されず、正弦波、のこぎり波、三角波、交流波など波形の形状を問わず、所定のパターンで反復的に変化するものであればよい。又、その所定のパターンが一定値だけ正または負方向にオフセットされた、即ち、直流成分が重畳された波形であってもよい。又、電流が反復的に変化する周期は、一定でなくてもよい。例えば、方形波においてHiレベルの出力時間と、Lowレベルの出力時間とは均等でなくてもよい。