(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793931
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】スナック菓子様の梅加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20201119BHJP
【FI】
A23L19/00 D
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-85761(P2016-85761)
(22)【出願日】2016年4月22日
(65)【公開番号】特開2017-192361(P2017-192361A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2019年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】595056099
【氏名又は名称】長谷川醸造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正一郎
【審査官】
山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−289855(JP,A)
【文献】
特開昭62−195263(JP,A)
【文献】
特開2008−237152(JP,A)
【文献】
特開2004−113006(JP,A)
【文献】
特開2001−299310(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3081191(JP,U)
【文献】
特開2014−117232(JP,A)
【文献】
特開平10−248516(JP,A)
【文献】
特開昭59−140867(JP,A)
【文献】
特開昭62−163679(JP,A)
【文献】
特開昭60−126039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23B
A23G
FSTA/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
種抜き梅漬又は種抜き梅干しを調製する工程と、
調製された前記種抜き梅漬又は前記種抜き梅干しを植物油中で、ゲージ圧600〜1400Paの減圧下で、70℃〜90℃の温度で水分含水率が5%程度になるまでフライ乾燥する工程と、
20〜30%程度の油を含む状態に脱油する工程
を備えているスナック菓子様の梅加工品の製造方法。
【請求項2】
種抜き調味梅漬又は種抜き調味梅干しを調製する工程と、
調製された前記種抜き調味梅漬又は前記種抜き調味梅干しを植物油中で、ゲージ圧600〜1400Paの減圧下で、70℃〜90℃の温度で水分含水率が5%程度になるまでフライ乾燥する工程と、
20〜30%程度の油を含む状態に脱油する工程
を備えているスナック菓子様の梅加工品の製造方法。
【請求項3】
種抜き梅漬又は種抜き梅干しを調製する工程と、
調製された前記種抜き梅漬又は前記種抜き梅干しに対してマイクロ波減圧乾燥機を用い、2.0×104Paの減圧下で、マイクロ波出力3kWにて3時間マイクロ波照射を行い水分含水率が5%程度になるまで乾燥させる工程と
を備えているスナック菓子様の梅加工品の製造方法。
【請求項4】
種抜き調味梅漬又は種抜き調味梅干しを調製する工程と、
調製された前記種抜き調味梅漬又は前記種抜き調味梅干しに対してマイクロ波減圧乾燥機を用い、2.0×104Paの減圧下で、マイクロ波出力3kWにて3時間マイクロ波照射を行い水分含水率が5%程度になるまで乾燥させる工程と
を備えているスナック菓子様の梅加工品の製造方法。
【請求項5】
種抜き調味梅漬を調製する工程は、
生梅を塩漬けして梅漬を調製し、当該梅漬を種抜きして種抜き梅漬とした後に調味して種抜き調味梅漬を調製するものである請求項2又は4記載のスナック菓子様の梅加工品の製造方法。
【請求項6】
種抜き調味梅漬を調製する工程は、
生梅を塩漬けして梅漬を調製し、当該梅漬を調味して調味梅漬とした後、当該調味梅漬を種抜きして種抜き調味梅漬を調製するものである請求項2又は4記載のスナック菓子様の梅加工品の製造方法。
【請求項7】
種抜き調味梅干しを調製する工程は、
生梅を塩漬けした後に天日干しして梅干しとし、当該梅干しを種抜きして種抜き梅干しとした後に調味して種抜き調味梅干しを調製するものである請求項2又は4記載のスナック菓子様の梅加工品の製造方法。
【請求項8】
種抜き調味梅干しを調製する工程は、
生梅を塩漬けした後に天日干しして梅干しとした後、当該梅干しを調味して調味梅干しとし、当該調味梅干しを種抜きして種抜き調味梅干しを調製するものである請求項2又は4記載のスナック菓子様の梅加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、梅加工品の製造方法に関する。特に、梅漬けや、梅干しから、サクサクな食感を有するスナック菓子のような新規な梅加工品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から梅加工品や、その製造方法に関しては種々の提案がされている。
【0003】
特開2004‐290007号公報(特許文献1)には、塩漬されて熟成した梅肉の粉砕物と、アマノリやワカメなどの食用の海藻もしくはその熱水抽出物またはゼラチンからなる結着性食材との混合物をシート状に抄製し、水分含量が30%未満に乾燥させた乾燥シート状梅干が提案されている。種を取り除いた梅実の加工食品をボリューム感のある食品にし、従来にないシート状の梅干加工食品として多様な利用形態に供することができるとされている。
【0004】
特開2008‐104406号公報(特許文献2)には、完熟梅を約4%濃度の塩水中で約72時間程度の間、1〜10℃の範囲で低温保管して塩蔵処理した後、水切りを行い、砂糖1に対して水0.4の重量比混合割合として溶融し、90〜100℃に加熱した砂糖溶液中に浸漬状としたまま、約10〜15日間程度の間、砂糖溶液濃度を高める濃縮処理を継続し、この浸漬期間中に、所定期間毎の殺菌処理と、数次の交ぜ返し処理とを実施し、且つ太陽光照射による梅表皮の発色処理を施し、糖度62以上の甘梅とした上、40〜50℃の範囲で一週間に亘り、陰干し乾燥させ、甘梅の糖度75以上とし、甘梅の表面全体に麦芽糖粉末または顆粒をまぶしてなる梅菓子が提案されている。より気軽に手掴みでも手指を汚すことなく食することが可能であり、しかも食べ盛りの子供達にも大いに好まれ、消費の拡大が期待できる新たな梅菓子製造技術であるとされている。
【0005】
特開2012‐191886号公報(特許文献3)には、油脂含量が15%以上である調味油に、固形梅を添加して梅加工食品が提案されている。酸味や塩味が緩和され、まろやかな食味が付与された梅加工食品、梅原料として、塩漬、調味液に浸漬された梅を用いた場合であっても、酸味、塩味等に影響されることなく調味液の呈味がしっかりと付与され、味の多様性に対応可能な梅加工食品を提供することができるとされている。
【0006】
特開2013‐183735号公報(特許文献4)には、塩漬原料梅を常法の手段で塩抜きを行い、一定条件下の食塩濃度、酸度の液に、ジンゲロール及びショウガオールの含有物と、甘味料、酸味料、調味料を添加、共存させて漬込み、乾燥させて一定条件の食塩濃度、酸度、全窒素、ジンゲロール及びショウガオール含有量とする乾燥梅干菓子の製造方法が提案されている。健康的イメージのある菓子を得るために、主に漬物等に使用されている塩漬梅と生姜を有効利用し、嗜好性の高い乾燥梅干菓子を製造することができるとされている。
【0007】
特開2014‐117232(特許文献5)には、梅干し、梅漬け、干し梅、梅のアルコール漬け、梅の糖漬けなどの漬け梅、好ましくは未成熟な青梅をカルシウム塩及び塩で漬けた硬質梅漬を、漬け梅に対して、質量比で好ましく5〜30%、漬け梅や油、その他の調味料などを含めた全体量に対して25%以下、好ましくは5〜20%の油で炒める梅加工食品が提案されている。油っぽさが抑えられながらまろやかさが付与されたこれまでにない風味を有する梅加工食品を提供することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004‐290007号公報
【特許文献2】特開2008‐104406号公報
【特許文献3】特開2012‐191886号公報
【特許文献4】特開2013‐183735号公報
【特許文献5】特開2014‐117232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来から種々の梅加工品や、その製造方法が提案されているが、梅漬や、梅干しから梅加工品を製造すると、梅漬、梅干しには種があるため、いつでもどこでも食べられるような状態の梅加工品にするためには特有の工程を採用するなどが必要になる。
【0010】
また、従来提案されている梅加工品の中に、種を抜いたものも提案されているが、いずれもウエットか、やや乾燥した柔らかい商品でしかなかった。
【0011】
そこで、この発明は、梅漬や、梅干しから製造する梅加工品であって、種がなく、また、水分含有率が低い、サクサクした、ポテトチップスのような食感の梅加工品を提供する梅加工品の製造方法を提案することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]
種抜き梅漬又は種抜き梅干しを調製する工程と、
調製された前記種抜き梅漬又は前記種抜き梅干しを減圧条件下で油揚げして水分含水率を低下させる工程と
を備えている梅加工品の製造方法。
【0013】
[2]
種抜き調味梅漬又は種抜き調味梅干しを調製する工程と、
調製された前記種抜き調味梅漬又は前記種抜き調味梅干しを減圧条件下で油揚げして水分含水率を低下させる工程と
を備えている梅加工品の製造方法。
【0014】
[3]
種抜き梅漬又は種抜き梅干しを調製する工程と、
減圧条件下で、調製された前記種抜き梅漬又は前記種抜き梅干しに対してマイクロ波を照射して乾燥させる工程と
を備えている梅加工品の製造方法。
【0015】
[4]
種抜き調味梅漬又は種抜き調味梅干しを調製する工程と、
減圧条件下で、調製された前記種抜き調味梅漬又は前記種抜き調味梅干しに対してマイクロ波を照射して乾燥させる工程と
を備えている梅加工品の製造方法。
【0016】
[5]
種抜き調味梅漬を調製する工程は、
生梅を塩漬けして梅漬を調製し、当該梅漬を種抜きして種抜き梅漬とした後に調味して種抜き調味梅漬を調製するものである[2]又は[4]の梅加工品の製造方法。
【0017】
[6]
種抜き調味梅漬を調製する工程は、
生梅を塩漬けして梅漬を調製し、当該梅漬を調味して調味梅漬とした後、当該調味梅漬を種抜きして種抜き調味梅漬を調製するものである[2]又は[4]の梅加工品の製造方法。
【0018】
[7]
種抜き調味梅干しを調製する工程は、
生梅を塩漬けした後に天日干しして梅干しとし、当該梅干しを種抜きして種抜き梅干しとした後に調味して種抜き調味梅干しを調製するものである[2]又は[4]の梅加工品の製造方法。
【0019】
[8]
種抜き調味梅干しを調製する工程は、
生梅を塩漬けした後に天日干しして梅干しとした後、当該梅干しを調味して調味梅干しとし、当該調味梅干しを種抜きして種抜き調味梅干しを調製するものである[2]又は[4]の梅加工品の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、梅漬や、梅干しから製造する梅加工品であって、種がなく、また、水分含有率が低い、サクサクした、ポテトチップスのような食感の梅加工品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(種抜き梅漬の調製)
生梅を塩漬けして梅漬を調製する。この梅漬を種抜きして種抜き梅漬を調製した。
【0022】
(種抜き梅干しの調製)
生梅を塩漬けした後に天日干しして梅干しとした。この梅干しを種抜きして種抜き梅干しを調製した。
【0023】
(種抜き調味梅漬の調製 1)
生梅を塩漬けして梅漬を調製する。この梅漬を種抜きして種抜き梅漬とする。その後、調味(味付け)して種抜き調味梅漬を調製した。このようにして調製した種抜き調味梅漬を種抜き調味梅漬1とした。
【0024】
(種抜き調味梅漬の調製 2)
生梅を塩漬けして梅漬を調製する。この梅漬を調味して(味付け)調味梅漬とする。その後、この調味梅漬を種抜きして種抜き調味梅漬を調製した。このようにして調製した種抜き調味梅漬を種抜き調味梅漬2とした。
【0025】
(種抜き調味梅干しの調製 1)
生梅を塩漬けした後に天日干しして梅干しとした。この梅干しを種抜きして種抜き梅干しとし、その後、調味(味付け)して種抜き調味梅干しを調製した。このようにして調製した種抜き調味梅干しを種抜き調味梅干し1とした。
【0026】
(種抜き調味梅干しの調製 2)
生梅を塩漬けした後に天日干しして梅干しとした。この梅干しを調味して調味梅干しとした。その後、この調味梅干しを種抜きして種抜き調味梅干しを調製した。このようにして調製した種抜き調味梅干しを種抜き調味梅干し2とした。
【0027】
(減圧フライ)
上記のように準備した種抜き梅漬、種抜き梅干し、種抜き調味梅漬1、種抜き調味梅漬2、種抜き調味梅干し1、調味梅干し2のそれぞれについて、減圧フライ法によって水分含水率を低下させた。
【0028】
なお、減圧フライを行う前に水分含量が多かったものについては液切りを行って水分量を低下させてから減圧フライを行った。
【0029】
すなわち、植物油中で、ゲージ圧600〜1400Paの減圧下で、70℃〜90℃の温度で水分含水率が5%程度になるまでフライ乾燥した。
【0030】
その後、遠心分離で脱油し、20〜30%程度の油を含む梅加工品を製造した。
【0031】
いずれの梅加工品もサクサクしたポテトチップスのような食感の梅加工品であった。いままでなかった新種のスナック菓子のようであった。
【0032】
種抜き梅漬、種抜き梅干しから調製した梅加工品は、梅漬、梅干しの風味、食味を呈する、サクサクしたポテトチップスのような食感の梅加工品、スナック菓子となった。
【0033】
種抜き調味梅漬1、2、種抜き調味梅干し1、2から調製した梅加工品は、梅漬、梅干しの風味、食味を残しつつ、味付けによって付与された食味、風味が加えられている、従来にない食味、風味を呈する、サクサクしたポテトチップスのような食感の梅加工品、スナック菓子となった。
【0034】
いずれの梅加工品とも、種がなく、いつでもどこでも食べられる状態の新規な梅加工品であった。また、軽い、賞味期間の長いものであった。
【0035】
(マイクロ波減圧乾燥機による乾燥処理)
上記のように準備した種抜き梅漬、種抜き梅干し、種抜き調味梅漬1、種抜き調味梅漬2、種抜き調味梅干し1、調味梅干し2のそれぞれについて、マイクロ波減圧乾燥機を用い、2.0×10
4Paの減圧下で、マイクロ波出力3kWにて3時間マイクロ波照射を行い水分含水率が5%程度になるまで乾燥して梅加工品を調製した。
【0036】
なお、マイクロ波減圧乾燥機で乾燥処理を行う前に水分含量が多かったものについては液切りを行って水分量を低下させてから乾燥処理を行った。
【0037】
いずれの梅加工品もサクサクしたポテトチップスのような食感の梅加工品であった。いままでなかった新種のスナック菓子のようであった。
【0038】
種抜き梅漬、種抜き梅干しから調製した梅加工品は、梅漬、梅干しの風味、食味を呈する、サクサクしたポテトチップスのような食感の梅加工品、スナック菓子となった。
【0039】
種抜き調味梅漬1、2、種抜き調味梅干し1、2から調製した梅加工品は、梅漬、梅干しの風味、食味を残しつつ、味付けによって付与された食味、風味が加えられている、従来にない食味、風味を呈する、サクサクしたポテトチップスのような食感の梅加工品、スナック菓子となった。
【0040】
いずれの梅加工品とも、種がなく、いつでもどこでも食べられる状態の新規な梅加工品であった。また、軽い、賞味期間の長いものであった。
【0041】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。