特許第6793945号(P6793945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793945
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】電気的駆動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 41/06 20060101AFI20201119BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20201119BHJP
   F16K 41/08 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   F16K41/06
   F16K31/04 A
   F16K41/08
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-251046(P2016-251046)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-105387(P2018-105387A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(74)【代理人】
【識別番号】100182176
【弁理士】
【氏名又は名称】武村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】海野 晋一
【審査官】 西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−275977(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/054118(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/067464(WO,A1)
【文献】 実用新案登録第2542950(JP,Y2)
【文献】 特開2003−247655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00 − 31/05
F16K 39/00 − 51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体が設けられた弁軸と、前記弁体が接離又は近接離間する弁座部を有する弁口オリフィスが形成された弁座を備えるとともに、流体が導入導出される弁室が形成された弁本体と、前記弁本体に固定されたガイドブッシュに摺動自在に内挿された前記弁軸に設けられた前記弁体を電気的駆動力を利用して前記弁座部に対して昇降させるための昇降駆動部と、を備える電気的駆動弁であって、
前記弁室と前記昇降駆動部との間をシールするシール部材が、前記弁本体と前記ガイドブッシュとによって挟持されており、
前記弁本体における前記弁室の天井部に、前記弁軸が挿通される通し穴及び前記ガイドブッシュが固定される嵌合穴が設けられ、前記通し穴と前記嵌合穴との間に凹穴が設けられ、前記シール部材が、前記凹穴内で前記弁軸に外装されて配在されており、
前記シール部材は、内端が前記弁軸の外周に当接せしめられ、外端が前記ガイドブッシュと前記凹穴内に配置された弾性部材とで挟持された環状部材で構成されており、
前記弾性部材と前記弁軸との間に隔離壁が設けられていることを特徴とする電気的駆動弁。
【請求項2】
前記環状部材は、前記ガイドブッシュと前記弾性部材との間に配置される平板状部と、該平板状部の内端から突設されて前記弁軸の外周に当接せしめられる筒状部とで構成されていることを特徴とする請求項に記載の電気的駆動弁。
【請求項3】
前記隔離壁は前記弁本体と一体に成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気的駆動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば流量制御弁等として使用される電動弁や電磁弁等の電気的駆動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的駆動弁の一種である電動弁の従来例を図4に示す。図示従来例の電動弁1’は、上部小径部25aと中間大径部25bと下部中径部25cとからなる弁軸25の下端部に設けられた逆円錐状の弁体24と、流体(例えば冷媒)入出口となる流体導入管(継手)61及び流体導出管(継手)62が連結されるとともに、前記弁体24により開閉される弁口オリフィス22が形成された弁座29及び弁室21を有する弁本体20とを備え、前記弁座29に対する弁体24のリフト量を制御することにより冷媒等の流体の通過流量を調整するようになっている。前記弁本体20の鍔状部材23(に形成された段差部)には、天井部40aを有する下方開口の円筒状のキャン40の下端部が突き合わせ溶接により密封接合されている。
【0003】
前記キャン40の内周には、所定の間隙αをあけてロータ56が配在され、該ロータ56を回転駆動すべく前記キャン40の円筒状部分の外周には、ヨーク51、ボビン52、ステータコイル53、及び樹脂モールドカバー54等からなるステータ55が外嵌されており、前記ロータ56とステータ55とでステッピングモータ50が構成される。
【0004】
そして、ロータ56と弁軸25との間には、ロータ56の回転を利用して前記弁体24を前記弁座29に接離又は近接離間させる駆動機構が設けられている。この駆動機構は、弁本体20にその下端部26aが圧入固定されるとともに、弁軸25(の中間大径部25b)が摺動自在に内挿された筒状のガイドブッシュ26の外周に形成された固定ねじ部(雄ねじ部)28と、前記弁軸25及びガイドブッシュ26の外周に配在された下方開口の筒状の弁軸ホルダ32の内周に形成されて前記固定ねじ部28に螺合せしめられた移動ねじ部(雌ねじ部)38とからなるねじ送り機構30で構成されている。
【0005】
前記弁軸ホルダ32とロータ56とは支持リング36を介して結合されるとともに、その支持リング36に弁軸ホルダ32の上部突部がかしめ固定され、これにより、ロータ56、支持リング36及び弁軸ホルダ32が一体的に連結されている。
【0006】
前記ガイドブッシュ26には、ロータ56(弁軸ホルダ32)の回転下動規制を行うストッパ機構31の一方を構成する下ストッパ体(固定ストッパ)27が固着され、弁軸ホルダ32には、ストッパ機構31の他方を構成する上ストッパ体(移動ストッパ)37が固着されている。
【0007】
また、前記ガイドブッシュ26の上部小径部26bが弁軸ホルダ32の上部に内挿されるとともに、弁軸ホルダ32の天井部32a中央に形成された挿通穴32bに、弁軸25の上部小径部25aが挿通せしめられている。弁軸25の上部小径部25aの上端部(挿通穴32bから突出した部分)には、プッシュナット33が固着(圧入固定)されている。上ストッパ体37が下ストッパ体27に当接しておらず、かつ弁体24が弁座29に当接していないときには、後述する圧縮コイルばね34の弾発力により、弁軸ホルダ32の天井部32aはプッシュナット33の底面に押し付けられている。
【0008】
さらに、前記弁軸25は、該弁軸25の上部小径部25aに外挿され、かつ、弁軸ホルダ32の天井部32aと弁軸25における中間大径部25bの上端段丘面との間に縮装された弁締め切り兼緩衝用の圧縮コイルばね34によって、常時下方(閉弁方向)に付勢されている。この場合、前記圧縮コイルばね34は、その上端部がワッシャ等のばね受け部材39を介して前記弁軸ホルダ32の天井部32a下面に係止されている。なお、弁軸ホルダ32の天井部32a上には、コイルばねからなる復帰ばね35が配在されている。この復帰ばね35は、駆動機構によりロータ56が上昇して移動ねじ部(雌ねじ部)38と固定ねじ部(雄ねじ部)28との螺合が外れた後、ロータ56の下降によって、再度、移動ねじ部38を固定ねじ部28に螺合させるために設けられている。
【0009】
このような構成とされた電動弁1’にあっては、ステータコイル53に対する通電(パルス供給)制御を行うことにより、弁本体20に固定されたガイドブッシュ26に対し、ロータ56及び弁軸ホルダ32が一体に回転せしめられ、ガイドブッシュ26の固定ねじ部28と弁軸ホルダ32の移動ねじ部38とのねじ送りにより、弁軸25(弁体24)が昇降して、弁口オリフィス22が開閉される。したがって、かかる電動弁1’にあっては、ロータ56の回転量により弁体24のリフト量(弁開度)、すなわち流体の通過流量を調整することができ、ロータ56の回転量は供給パルス数により制御されるため、流体通過流量を高精度に調整することができる(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−50415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、前記した如くの従来例の電動弁は、一般に、空気調和機、冷凍機等の冷凍サイクルに流量制御弁等として組み込まれ、流体導入管から弁室に流入し、弁体により開閉される弁口オリフィスを介して流体導出管に流される冷媒の流量を制御するために使用されているが、近年では、当該電動弁の制御性の観点から、例えば空気や水等といった冷媒以外の流体の流量制御にも当該電動弁を使用することが提案されている。
【0012】
しかしながら、上記従来例の電動弁は、ロータが配置されたキャン内に流体(冷媒)が流入する構造、つまり、キャン内と弁室とが流通する構造であるので、前記のように冷媒に代えて空気や水等の流体の流量制御に使用する場合、弁室からキャン内に流入する流体(例えば、湿気を含んだ空気や水)が当該電動弁の動作不良を引き起こすおそれがあった。
【0013】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、電動弁や電磁弁等の電気的駆動弁の使用用途を拡大しつつ、動作不良を可及的に抑えることのできる電気的駆動弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記する課題を解決するために、本発明に係る電気的駆動弁は、基本的に、弁体が設けられた弁軸と、前記弁体が接離又は近接離間する弁座部を有する弁口オリフィスが形成された弁座を備えるとともに、流体が導入導出される弁室が形成された弁本体と、前記弁本体に固定されたガイドブッシュに摺動自在に内挿された前記弁軸に設けられた前記弁体を電気的駆動力を利用して前記弁座部に対して昇降させるための昇降駆動部と、を備える電気的駆動弁であって、前記弁室と前記昇降駆動部との間をシールするシール部材が、前記弁本体と前記ガイドブッシュとによって挟持されており、前記弁本体における前記弁室の天井部に、前記弁軸が挿通される通し穴及び前記ガイドブッシュが固定される嵌合穴が設けられ、前記通し穴と前記嵌合穴との間に凹穴が設けられ、前記シール部材が、前記凹穴内で前記弁軸に外装されて配在されており、前記シール部材は、内端が前記弁軸の外周に当接せしめられ、外端が前記ガイドブッシュと前記凹穴内に配置された弾性部材とで挟持された環状部材で構成されており、前記弾性部材と前記弁軸との間に隔離壁が設けられていることを特徴としている。
【0018】
更に好ましい態様では、前記環状部材は、前記ガイドブッシュと前記弾性部材との間に配置される平板状部と、該平板状部の内端から突設されて前記弁軸の外周に当接せしめられる筒状部とで構成される。
【0020】
更に好ましい態様では、前記隔離壁は前記弁本体と一体に成形される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、弁本体に形成された弁室と昇降駆動部との間をシールするシール部材が、弁本体と該弁本体に固定されたガイドブッシュとによって挟持されており、当該シール部材によって弁室から昇降駆動部(例えばキャン内)への流体の流入が阻止されるので、簡単な構成でもって、電動弁や電磁弁等の電気的駆動弁の使用用途を拡大しつつ、動作不良を可及的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る電気的駆動弁(電動弁)の一実施形態を示す縦断面図。
図2図1に示される電動弁の要部拡大断面図。
図3図1、2に示される電動弁の他例の要部拡大断面図。
図4】従来の電動弁を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。なお、各図において、部材間に形成される隙間や部材間の離隔距離等は、発明の理解を容易にするため、また、作図上の便宜を図るため、誇張して描かれている場合がある。また、本明細書において、上下、左右等の位置、方向を表わす記述は、図1の方向矢印表示を基準としており、実際の使用状態での位置、方向を指すものではない。
【0024】
図1は、本発明に係る電気的駆動弁(電動弁)の一実施形態を示す縦断面図、図2は、その要部拡大断面図である。
【0025】
本実施形態の電動弁1の基本構成は、前述した図4に示される従来例の電動弁1’とほぼ同じであるので、従来例の電動弁1’の各部に対応する部分には共通の符号を付している。
【0026】
図示実施形態の電動弁1は、基本的に、段付き逆円錐状の弁体24が下端部に設けられた弁軸25と、流体(例えば冷媒)入出口となる流体導入管(継手)61及び流体導出管(継手)62が連結されるとともに、前記弁体24により開閉される弁口オリフィス22が形成された弁座(弁座部材)29及び流体が導入導出される弁室21を有する弁本体20とを備える。
【0027】
本例では、前記弁軸25は、上部小径部25aと中間大径部25bと下部小径部25cとからなり、その弁軸25(の下部小径部25c)の下端部に、(上側から)逆円錐台面からなる上部弁体部24aと比較的細径の下部挿通部24bとからなる前記弁体24が一体的に設けられている。
【0028】
また、弁本体20の側部開口に前記流体導入管61がろう付け等により連結され、下部開口に前記流体導出管62がろう付け等により連結されており、前記弁本体20の下部開口と弁室21との間(具体的には、その間に設けられた内周段差部)に、天井部29b付き略円筒状の弁座29が圧入・かしめ等により装着されている。この弁座29の天井部29b外周には、弁本体20の下部開口と弁室21との間の内周段差部と相補的な形状を有する段差29cが形成されるとともに、天井部29bの中央に、前記弁体24(の上部弁体部24a)が接離又は近接離間する弁座部29aを有する弁口オリフィス22が形成されている。また、前記弁本体20の内部に設けられた弁室21の天井部21aには、前記弁軸25(の中間大径部25b)が若干の隙間をあけて挿通(内挿)される通し穴21bが設けられるとともに、前記弁体部20の上部中央(すなわち、弁室21の天井部21aの上側)には、後述するガイドブッシュ26の下端部26aが嵌合固定される嵌合穴21dが設けられている。
【0029】
前記弁本体20の上部外周に設けられた鍔状部材23(に形成された段差部)には、天井部40aを有する下方開口の円筒状のキャン40の下端部が突き合わせ溶接により密封接合されている。
【0030】
前記キャン40の内周には、所定の間隙αをあけてロータ56が配在され、該ロータ56を回転駆動すべく前記キャン40の円筒状部分の外周には、ヨーク51、ボビン52、ステータコイル53、及び樹脂モールドカバー54等からなるステータ55が外嵌されており、前記ロータ56とステータ55とでステッピングモータ50が構成される。
【0031】
ロータ56と弁軸25との間には、ロータ56の回転を利用して前記弁体24を前記弁座29(の弁座部29a)に接離又は近接離間させる駆動機構が設けられている。この駆動機構は、弁本体20の上部中央に設けられた嵌合穴21dにその下端部26aが圧入固定されるとともに、弁軸25(の中間大径部25b)が摺動自在に内挿された筒状のガイドブッシュ26の外周に形成された固定ねじ部(雄ねじ部)28と、前記弁軸25及びガイドブッシュ26の外周に配在された下方開口の筒状の弁軸ホルダ32の内周に形成されて前記固定ねじ部28に螺合せしめられた移動ねじ部(雌ねじ部)38とからなるねじ送り機構30で構成されている。
【0032】
前記弁軸ホルダ32とロータ56とは支持リング36を介して結合されるとともに、その支持リング36に弁軸ホルダ32の上部突部がかしめ固定され、これにより、ロータ56、支持リング36及び弁軸ホルダ32が一体的に連結されている。
【0033】
前記ガイドブッシュ26の外周には、ロータ56(弁軸ホルダ32)の回転下動規制を行うストッパ機構31の一方を構成する下ストッパ体(固定ストッパ)27が固着され、弁軸ホルダ32の外周には、ストッパ機構31の他方を構成する上ストッパ体(移動ストッパ)37が固着されている。
【0034】
また、前記ガイドブッシュ26の上部小径部26bが弁軸ホルダ32の上部に内挿されるとともに、弁軸ホルダ32の天井部32a中央に形成された挿通穴32bに、弁軸25の上部小径部25aが挿通せしめられている。弁軸25の上部小径部25aの上端部(挿通穴32bから突出した部分)には、プッシュナット33が固着(圧入固定)されている。
【0035】
さらに、前記弁軸25は、該弁軸25の上部小径部25aに外挿され、かつ、弁軸ホルダ32の天井部32aと弁軸25における中間大径部25bの上端段丘面との間に縮装された弁締め切り兼緩衝用の圧縮コイルばね34によって、常時下方(閉弁方向)に付勢されている。この場合、前記圧縮コイルばね34の上端部は、ワッシャ等のばね受け部材39を介して前記弁軸ホルダ32の天井部32a下面に係止されている。なお、弁軸ホルダ32の天井部32a上には、コイルばねからなる復帰ばね35が配在されている。
【0036】
前記キャン40の内周及び外周に配在されたロータ56とステータ55とからなるステッピングモータ50、弁軸25(の中間大径部25b)が摺動自在に内挿されたガイドブッシュ26、ガイドブッシュ26の外周に形成された固定ねじ部28と弁軸ホルダ32の内周に形成された移動ねじ部38とからなるねじ送り機構(駆動機構)30、ガイドブッシュ26の外周に固着された下ストッパ体27と弁軸ホルダ32の外周に固着された上ストッパ体37とからなるストッパ機構31、圧縮コイルばね34等で、弁座29に形成された弁口オリフィス22の弁座部29aに対して弁体24を昇降させる昇降駆動部が構成される。
【0037】
上記に加えて、本実施形態の電動弁1では、弁本体20の内部に形成された弁室21と昇降駆動部を構成するキャン40内(円筒状空所)との間をシール(密閉封止)するためのシール部材70が装備されている。
【0038】
詳細には、前記弁本体20における弁室21の天井部21aに設けられた通し穴21bと嵌合穴21dとの間に、通し穴21bと嵌合穴21dの穴径の略中間の穴径を有する凹穴21cが設けられている。
【0039】
シール部材70は、前記凹穴21c内に圧縮状態で配在されたゴム製のOリング71と、Oリング71と当該凹穴21c内を通る弁軸25(の中間大径部25b)との間に介装されたテフロン(登録商標)製のリング状部材72とを有している。言い換えれば、前記シール部材70は、凹穴21c内で弁軸25(の中間大径部25b)にリング状部材72が摺動可能に外装され、そのリング状部材72の外周にOリング71が圧縮状態で配在されて構成されている。前記Oリング71は、その内周がリング状部材72の外周(面)に圧接(密着)せしめられ、その外周が凹穴21cの周壁面21caに圧接(密着)せしめられ、その下部が凹穴21cの底面21cbに圧接せしめられ、その上部がガイドブッシュ26(の下端部26a)の下面に圧接せしめられるようにして、前記凹穴21c内に装着されている。
【0040】
なお、前記シール部材70(Oリング71及びリング状部材72)の組み付けにあたっては、例えば、リング状部材72とOリング71を中間大径部25bの所定位置に(例えば下側から)外装するとともにガイドブッシュ26等を組み付けた弁軸25を、弁本体20に設けられた嵌合穴21dを介して通し穴21b及び弁室21に挿入するようにし、前記Oリング71を圧縮しながら前記リング状部材72とOリング71を嵌合穴21dと通し穴21bとの間に設けられた凹穴21cに嵌め込めば良い。
【0041】
このような構成とされた電動弁1においても、前述した図4に示される従来例の電動弁1’と同様、ステータコイル53に対する通電(パルス供給)制御を行うことにより、弁本体20に固定されたガイドブッシュ26に対し、ロータ56及び弁軸ホルダ32が一体に回転せしめられ、ガイドブッシュ26の固定ねじ部28と弁軸ホルダ32の移動ねじ部38とのねじ送りにより、弁軸25(弁体24)が昇降して、弁口オリフィス22が開閉される。したがって、ロータ56の回転量により弁体24のリフト量(弁開度)、すなわち流体の通過流量を調整することができ、ロータ56の回転量は供給パルス数により制御されるため、流体通過流量が高精度に調整される。
【0042】
また、本実施形態の電動弁1においては、弁本体20における弁室21の天井部21aの通し穴21bと嵌合穴21dとの間に凹穴21cが設けられ、弁本体20に形成された弁室21と昇降駆動部との間をシールするシール部材70(Oリング71及びリング状部材72)が、その凹穴21c内で弁軸25(の中間大径部25b)に外装されて配在されるとともに、凹穴21cの底面21cbと弁本体20に固定されたガイドブッシュ26(の下端部26a)の下面とによって挟持されている。そのため、当該シール部材70によって弁室21から昇降駆動部(例えばキャン40内)への流体の流入が阻止されるので、簡単な構成でもって、当該電動弁1の使用用途を拡大しつつ、動作不良を可及的に抑えることができる。
【0043】
また、前記シール部材70により、昇降駆動部(例えばキャン40内)から弁室21への異物(例えば、電動弁1の動作によって発生する摩耗粉等)の混入を阻止できるといった効果も得られる。
【0044】
また、本実施形態では、シール部材70を構成するOリング71と弁軸25との間に摺動抵抗の低いテフロン(登録商標)製のリング状部材72が介装されているので、シール性を確保したままで当該シール部材70と弁軸25との摺動性を良くすることができる。
【0045】
なお、上記した実施形態におけるシール部材70に代えて、例えば図3に拡大図示される如くのシール部材75を適用してもよい。
【0046】
図3に示されるシール部材75は、円環状の平板状部75aと、該平板状部75aの内端から上向きに突設された短円筒状の筒状部75bとを有する、テフロン(登録商標)製の環状部材で形成されている。シール部材(環状部材)75の内端の筒状部75bは、弁軸25(ここでは、下部小径部25c)の外周に摺動自在に当接せしめられるとともに、平板状部75aが、弁本体20の凹穴21cの底面21cb上に圧縮状態で配置されたOリング(弾性部材)69とガイドブッシュ26(の下端部26a)の下面とで挟持されている。言い換えれば、シール部材75の筒状部75bが、弁軸25の外周に摺動自在に当接せしめられるとともに、その平板状部75aは、弁本体20の凹穴21cの底面21cb上に配置されたOリング69によってガイドブッシュ26(の下端部26a)の下面に圧接(密着)せしめられている。
【0047】
また、図3に示される例では、前記Oリング69と弁軸25との接触を避けて摺動抵抗を低減するとともに前記凹穴21c内でのOリング69の位置ずれを防止すべく、凹穴21c(の底面21cb)の内端に、円筒状の隔離壁68が一体的に突設されており、Oリング69と弁軸25との間に、弁本体20と一体に成形された前記隔離壁68が介在されている。なお、この場合、弁軸25の下部小径部25cが上下方向で長く形成され、前記弁本体20の通し穴21b、凹穴21c(隔離壁68)、シール部材(環状部材)75(の筒状部75b)、及びガイドブッシュ26の下部には、前記弁軸25における下部小径部25cが通されている。
【0048】
前述した如くの図3に示されるシール部材75を使用した場合でも、図1、2に示される電動弁1(のシール部材70)と同様の作用効果が得られることは詳述するまでも無い。
【0049】
なお、上記実施形態では、弁口オリフィス22が形成された弁座29が弁本体20と別部材として構成されているが、弁座29を弁本体20と一体に構成しても良いことは勿論である。また、弁軸25や弁本体20等の形状・構成等は適宜に変更できることは言うまでも無い。
【0050】
また、上記実施形態では、流体が、弁本体における弁室の側部に連結された流体導入管から、弁室、及び弁座に形成された縦向きの弁口オリフィスを介して、弁室の下部に連結された流体導出管に流されるものとしたが、逆に、流体が、流体導出管から、弁口オリフィス、及び弁室を介して流体導入管に流される場合にも、上記と同様の作用効果が得られることは勿論である。
【0051】
また、本発明は、様々なタイプの電動弁に採用し得ることは言うまでも無い。その一例としては、例えば、弁体が最下降位置にあるときに、弁体が弁座部に接当(着座)して流体の流れが遮断される閉弁タイプの電動弁、弁体が弁座部に接当(着座)しつつ、弁体に設けられた連通穴や弁座部に設けられたブリード溝等を介して所定量の通過流量が確保されるタイプの電動弁(いずれも弁体が弁座部に接離する電動弁)、弁体が最下降位置(通常なら全閉状態となる)にあるときに、弁体と弁座部との間に所定の大きさの間隙が形成されて所定量の通過流量が確保される閉弁レスタイプの電動弁(弁体が弁座部に近接離間する電動弁)などが挙げられる。
【0052】
また、上記実施形態では、ロータとステータとからなるステッピングモータ、ガイドブッシュと弁軸ホルダとの間のねじ送り機構等を利用した昇降駆動部によって、弁体を弁座部に対して昇降させる電動弁について説明したが、本発明は、通電のONとOFFとの切換えによってプランジャンを駆動させて弁体を弁座部に対して昇降させる電磁弁等の他の電気的駆動弁にも適用し得ることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0053】
1 電動弁(電気的駆動弁)
20 弁本体
21 弁室
21a 天井部
21b 通し穴
21c 凹穴
21d 嵌合穴
22 弁口オリフィス
23 鍔状部材
24 弁体
25 弁軸
26 ガイドブッシュ
27 下ストッパ体(固定ストッパ)
28 固定ねじ部(雄ねじ部)
29 弁座(弁座部材)
29a 弁座部
30 ねじ送り機構
31 ストッパ機構
32 弁軸ホルダ
34 圧縮コイルばね
37 上ストッパ体(移動ストッパ)
38 移動ねじ部(雌ねじ部)
40 キャン
50 ステッピングモータ
55 ステータ
56 ロータ
61 流体導入管
62 流体導出管
68 隔離壁
69 Oリング(弾性部材)
70 シール部材
71 Oリング
72 リング状部材
75 シール部材(環状部材)
75a 平板状部
75b 筒状部
図1
図2
図3
図4