特許第6793949号(P6793949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6793949バイオエタノール発酵工程用添加剤及びバイオエタノールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793949
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】バイオエタノール発酵工程用添加剤及びバイオエタノールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/06 20060101AFI20201119BHJP
   C12P 7/10 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   C12P7/06
   C12P7/10
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-40268(P2017-40268)
(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公開番号】特開2018-143150(P2018-143150A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】永松 泰成
(72)【発明者】
【氏名】針尾 英孝
【審査官】 田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/132760(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/25538(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/06−7/14
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンポリオール(A)と、一般式(2)で表されるポリオキシアルキレンポリオール(B)とを含有してなることを特徴とするバイオエタノール発酵工程用添加剤。

[H-(AO−)[(−AO)(−EO)-H](p−q) (1)

[(−AO)(−EO)−H] (2)

及びRは炭素数2〜25の活性水素化合物の反応残基、AOは炭素数3〜18のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、m、n、r及びsは1〜100の整数、p及びtは2〜10の整数、qは1〜10の整数、p≧qである。
【請求項2】
ポリオキシアルキレンポリオール(A)及びポリオキシアルキレンポリオール(B)の合計重量に基づいて、ポリオキシアルキレンポリオール(A)の含有量が5〜50重量%、ポリオキシアルキレンポリオール(B)の含有量が50〜95重量%である請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】
糖質原料、でんぷん原料及び木質(セルロース)原料からなる群より選ばれる少なくとも1種を原料としてバイオエタノールを製造する方法において、
請求項1又は2に記載された添加剤を発酵液に添加して発酵する発酵工程を含むことを特徴とするバイオエタノールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオエタノール発酵工程用添加剤及びバイオエタノールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオエタノール発酵工程において生産効率を向上させための添加剤として、グリフィンのHLB値が0〜6の範囲であるポリオキシアルキレン化合物(A)と、ポリオキシアルキレンポリオール(B)とを含有してなることを特徴とするバイオエタノール発酵工程用添加剤が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2015/025538パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のバイオエタノール発酵工程用添加剤は、生産効率の向上と共に使用量が多くなる傾向があるいう問題がある。
本発明は、さらに少ない使用量で生産効率を向上できるバイオエタノール発酵工程用添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のバイオエタノール発酵工程用添加剤の特徴は、ポリオキシアルキレンポリオール(A)と、一般式(2)で表されるポリオキシアルキレンポリオール(B)とを含有してなる点を要旨とする。
【0006】
[H-(AO−)[(−AO)(−EO)-H](p−q) (1)

[-(AO)-(EO)−H] (2)
【0007】
及びRは炭素数2〜25の活性水素化合物の反応残基、AOは炭素数3〜18のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、m、n、r及びsは1〜100の整数、p及びtは2〜10の整数、qは1〜10の整数、p≧qである。
【0008】
本発明のバイオエタノールの製造方法の特徴は、糖質原料、でんぷん原料及び木質(セルロース)原料からなる群より選ばれる少なくとも1種を原料としてバイオエタノールを製造する方法において、
上記のバイオエタノール発酵工程用添加剤を発酵液に添加して発酵する発酵工程を含む点を要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のバイオエタノール発酵工程用添加剤は、バイオエタノール発酵工程において、より少ない使用量で優れた生産効率を発揮する。
【0010】
本発明のバイオエタノールの製造方法を用いると、より少ないバイオエタノール発酵工程用添加剤の使用量であっても高い生産効率でバイオエタノールを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
炭素数2〜25の活性水素含有化合物の反応残基(R、R)は、炭素数2〜25の活性水素化合物から活性水素原子を除いた反応残基を意味する。
炭素数2〜25の活性水素含有化合物としては、水酸基(−OH)、イミノ基(−NH−)、アミノ基(−NH)及び/又はカルボキシル基(−COOH)を少なくとも1個含む化合物が含まれ、ポリオール、アミド、アミン、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸及びアミノカルボン酸が含まれる。
【0012】
ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、テトラグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジヒドロキシアセトン、フルクトース、グルコース、マンノース、ガラクトース、スクロース、ラクトース及びトレハロース等が挙げられる。
【0013】
アミドとしては、モノアミド(ギ酸アミド、プロピオン酸アミド及びステアリルアミド等)及びポリアミド(マロン酸ジアミド及びエチレンビスオクチルアミド等)等が挙げられる。
【0014】
アミンとしては、モノアミン(エチルアミン、アニリン及びステアリルアミン等)及びポリアミン(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミン等)等が挙げられる。
【0015】
ポリカルボン酸としては、マレイン酸及びヘキサン二酸等が挙げられる。
【0016】
ヒドロキシカルボン酸としては、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、リンゴ酸及び12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0017】
アミノカルボン酸としては、グリシン、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸及び12−アミノラウリン酸等が挙げられる。
【0018】
炭素数3〜18のオキシアルキレン基(AO)としては、オキシプロピレン、オキシブチレン、オキシイソブチレン、オキシ−1,2−デシレン、オキシ−1,12−ドデシレン、オキシ−1,2−ドデシレン及びオキシ−1,2−オクタデシレン等が挙げられる。
【0019】
m、n、r及びsは、それぞれ1〜100の整数であり、好ましくは2〜75の整数、さらに好ましくは3〜60の整数である。
【0020】
p及びtは、それぞれ、2〜10の整数であり、好ましくは2〜7の整数、さらに好ましくは2又は3の整数である。
【0021】
qは、1〜10の整数であり、好ましくは1〜7の整数、さらに好ましくは1又は2の整数である。
【0022】
pとqとの関係は、p≧q、すなわち、pの値はqの値以上である。
【0023】
(−AO)及び(−EO)はブロック状に結合されており、(−AO)及び(−EO)もブロック状に結合されている。
【0024】
ポリオキシアルキレンポリオール(A)の含有量は、ポリオキシアルキレンポリオール(A)及びポリオキシアルキレンポリオール(B)の合計重量に基づいて、5〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは15〜30重量%である。ポリオキシアルキレンポリオール(B)の含有量は、ポリオキシアルキレン化合物(A)及びポリオキシアルキレンポリオール(B)の合計重量に基づいて、50〜95重量%が好ましく、さらに好ましくは60〜90重量%、特に好ましくは70〜85重量%である。
【0025】
本発明のバイオエタノール発酵工程用添加剤は、公知の製造方法を適用して得ることができる。
ポリオキシアルキレンポリエーテル(A)及びポリオキシアルキレンポリオール(B)は、公知のアルキレンオキシド付加反応で製造できる。そして、ポリオキシアルキレンポリエーテル(A)及びポリオキシアルキレンポリオール(B)を均一混合して、本発明のバイオエタノール発酵工程用添加剤が得られる。
【0026】
均一混合する温度及び時間は、均一に混合できれば特に制限されないが、5〜60℃及び10分〜5時間が好ましい。また均一混合するための混合装置についても特に制限はないが、羽根型撹拌機、ラインミキサー等が使用できる。
【0027】
本発明のバイオエタノールの製造方法において使用できる原料としては、糖質原料、でんぷん原料及び木質(セルロース)原料からなる群より選ばれる少なくとも1種が使用できる。
糖質原料としては、糖質を多く含む食物資源であり、さとうきび、モラセス及び甜菜等が挙げられる。
【0028】
でんぷん原料としては、でんぷん質を多く含む食物資源であり、トウモロコシ、ソルガム、ジャガイモ、サツマイモ及び麦等が挙げられる。
【0029】
木質(セルロース)原料としては、セルロースを多く含む非食用の食物資源であり、木材及び廃建材等が挙げられる。木材としては、針葉樹(マツ、モミ、ツガ、トウヒ、カラマツ及びラジアタパイン等)及び広葉樹(ユーカリ、ポプラ、ブナ、カエデ及びカバ等)の他にケナフ、ミツマタ、コウゾ、ガンピ、桑、マニラ麻、アシ及びタケ等が含まれる。これらの木材は間伐材、製材屑、流木及び剪定材であってもよく、木材の枝、根及び葉が含まれていてもよい。廃建材としては、廃棄木質建材、廃棄木質パレット及び廃棄木質梱包材等が含まれる。
【0030】
本発明のバイオエタノールの製造方法としては、公知の方法が適用でき、糖化前処理工程、糖化工程及びエタノール発酵工程が含まれる。
エタノール発酵工程において、発酵液に上記のバイオエタノール発酵工程用添加剤を添加してから発酵させる。
バイオエタノール発酵工程用添加剤の添加量は特に限定されないが発酵液の重量に基づいて0.0001〜5重量%程度が好ましい。
エタノール発酵工程で使用できる発酵微生物としては、特に制限はなく、公知の酵母(たとえば、特開2013−39085号公報の0023段落に記載された発酵微生物)等が挙げられる。
【0031】
エタノール発酵工程を経た発酵液は、生成したエタノールを分離する分離工程に供される。エタノールを分離する方法は、蒸留法及び浸透気化膜法等の公知の方法を用いることができる。分離して得られたエタノールはそのまま用いてもよく、蒸留等の公知の方法で精製して用いてもよい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を意味する。
【0033】
公知の方法で合成したポリオキシアルキレンポリオール(a1〜a9)及びポリオキシアルキレンポリオール(b1〜b9)を表1及び2に示した。表中、POはオキシエチレン、BOはオキシブチレンを表す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
<実施例1>
ポリオキシアルキレンポリオール(a1)80部及びポリオキシアルキレンポリオール(b1)20部を羽根型撹拌機にて30℃で均一混合して、本発明のバイオエタノール発酵工程用添加剤1を得た。
【0037】
<実施例2〜9>
ポリオキシアルキレンポリオール(a1)80部及びポリオキシアルキレンポリオール(b1)20部を、表3に示すポリオキシアルキレンポリオール(A)及びポリオキシアルキレンポリオール(B)(種類及び部数)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のバイオエタノール発酵工程用添加剤2〜9を得た。
【0038】
<比較例1>
特許文献1の実施例1に準拠して、比較用のバイオエタノール発酵工程用添加剤(ブタノールプロピレンオキシド(60モル)付加体のリグノセリルエーテル9部とモンタニルアルコールプロピレンオキシド(10モル)付加体のエチルエーテル1部とポリオキシプロピレン(60モル)グリコール90部との均一混合物)を得た。
【0039】
【表3】
【0040】
実施例1〜9及び比較例1で得たバイオエタノール発酵工程用添加剤を用いて、以下のようにして生産効率試験を行い、その結果を表4に示す。
【0041】
<生産効率試験>
市販のさとうきび糖みつ(株式会社丸協農産より購入)200部、市販のドライイースト(日清フーズ株式会社販売スーパーカメリヤ)50部及びイオン交換水750部を均一混合してバイオエタノール発酵液を調製し、この発酵液300mLを内径50mm×高さ350mmのガラス製メスシリンダーに入れ、表4に示す測定試料(各実施例、比較例で得たバイオエタノール発酵工程用添加剤)の添加量をマイクロシリンジで添加し、40℃に温調した恒温水槽へメスシリンダーを投入し、撹拌下30分後のバイオエタノール発酵液体積(mL)を読み取り、次式から生産効率(%)を算出した。この値が小さいほど、生産で使用される発酵槽が小さくでき、生産効率が良好となる。
【0042】

(生産効率)=(30分後のバイオエタノール発酵液体積)×100/300
【0043】
【表4】
【0044】
本発明のバイオエタノール発酵工程用添加剤は、従来のバイオエタノール発酵工程用添加剤(比較例1)に比べ、さらに少ない使用量で生産効率が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のバイオエタノール発酵工程用添加剤は、バイオエタノールの生産効率を向上させるための添加剤として好適である。