(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793959
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】海底貯蔵庫並びにこれを使用した貯蔵方法及び養殖方法
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20201119BHJP
A01K 61/53 20170101ALI20201119BHJP
A23L 3/00 20060101ALI20201119BHJP
B65D 81/18 20060101ALI20201119BHJP
A01K 61/55 20170101ALI20201119BHJP
【FI】
B65G1/00 551A
A01K61/53ZAB
A23L3/00 101Z
B65D81/18 Z
A01K61/55
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-19192(P2018-19192)
(22)【出願日】2018年2月6日
(65)【公開番号】特開2019-137473(P2019-137473A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2020年7月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518044192
【氏名又は名称】大西 新祐
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大西 新祐
【審査官】
板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−084940(JP,A)
【文献】
特開2000−125690(JP,A)
【文献】
特開2014−177749(JP,A)
【文献】
米国特許第09758302(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0162667(US,A1)
【文献】
登録実用新案第3020487(JP,U)
【文献】
特開2008−063826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00
A01K 61/00−61/65
A23L 3/00
B65D 81/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵本体と、該貯蔵本体を囲繞する2以上の遮蔽壁材を構成要素とする遮蔽壁と、を備え、
前記貯蔵本体が通水性であり、該遮蔽壁に流水取込口が設けられ、
前記遮蔽壁材間の間隙が前記流水取込口であることを特徴とする、水中地面に設置される水中貯蔵庫。
【請求項2】
貯蔵本体と、該貯蔵本体を囲繞する遮蔽壁材を構成要素とする遮蔽壁と、を備え、
前記遮蔽壁材が、前記貯蔵本体の周囲から前記貯蔵本体に向かって上向きに傾斜していることを特徴とする、水中地面に設置される水中貯蔵庫。
【請求項3】
前記遮蔽壁材が可撓性であることを特徴とする、請求項2に記載の水中貯蔵庫。
【請求項4】
前記遮蔽壁材が上部遮蔽壁材及び下部遮蔽壁材からなり、
前記貯蔵本体に近い位置に長支柱、遠い位置に短支柱が設けられており、
前記下部遮蔽壁材は、その内側面と前記短支柱の上端とが接続されており、前記短支柱の上端を支点とし、前記下部遮蔽壁材の幅方向を軸としたシーソー運動可能であり、
前記上部遮蔽壁材は、その内側面と前記長支柱の上端とが接続されており、前記長支柱の上端を支点とし、前記上部遮蔽壁材の幅方向を軸としたシーソー運動可能であり、
前記上部遮蔽壁材の下端と前記下部遮蔽壁材の上端が接続されており、
前記上部遮蔽壁材と前記下部遮蔽壁材の接続部が、前記シーソー運動に連動した、これら遮蔽壁材の幅方向を軸とするヒンジ運動可能であり、
前記下部遮蔽壁材の下端には第一の錘が設けられていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の水中貯蔵庫。
【請求項5】
前記上部遮蔽壁材の下端又は前記下部遮蔽壁材の上端に第二の錘が設けられていることを特徴とする、請求項4に記載の水中貯蔵庫。
【請求項6】
前記上部遮蔽壁材と前記下部遮蔽壁材の接続部に、前記ヒンジ運動を永久磁石の回転運動に変換する変換手段を備える発電機構が設けられていることを特徴とする、請求項4又は5に記載の水中貯蔵庫。
【請求項7】
貯蔵本体と、該貯蔵本体を囲繞する遮蔽壁材を構成要素とする遮蔽壁と、を備え、
前記貯蔵本体の天井に開閉自在に設けられた扉が設けられていることを特徴とする、水中地面に設置される水中貯蔵庫。
【請求項8】
空気袋を備え、空気が充填された該空気袋を前記扉に係止することにより、該空気袋の浮力により前記扉の開閉の補助が可能であることを特徴とする、請求項7に記載の水中貯蔵庫。
【請求項9】
前記貯蔵本体が非通水性の壁面及び天井を備えることを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載の水中貯蔵庫。
【請求項10】
前記貯蔵本体が非通水性の壁面及び天井を備え、
前記遮蔽壁材が、前記貯蔵本体の周囲全面を囲繞し、前記貯蔵本体を水流から隔絶した状態となしていることを特徴とする、請求項2〜8の何れか一項に記載の水中貯蔵庫。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の水中貯蔵庫の貯蔵本体に、食品組成物を貯蔵することを特徴とする、食品組成物の貯蔵方法。
【請求項12】
請求項1〜10の何れか一項に記載の水中貯蔵庫の貯蔵本体内で水生生物を育成することを特徴とする、水生生物の養殖方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海底での食品組成物の貯蔵又は養殖方法に用いられる水中貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
酒類などの食品組成物を海底で貯蔵・熟成する技術が知られている(例えば特許文献1〜3)。このような技術によれば当該食品組成物のブランディング効果を得られるだけではなく、海底において食品組成物に加わる様々な作用により、地上で熟成させる場合に比べて有利な効果が得られるとされている。例えば、特許文献2には、潮流によって食品組成物に振動が加えられ熟成が促進されるという効果が得られることが開示されている。
【0003】
ところで、貝類や海藻類の養殖は垂下法やロープ養殖法といった方法が用いられるのが一般的であるが、特許文献4に開示されているように、養殖ユニットを用いた方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−153252号公報
【特許文献2】特開平10−84940号公報
【特許文献3】特開平5−153954号公報
【特許文献4】特開2000−125690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2には、潮流によって食品組成物に振動が加えられ熟成が促進されるという効果が得られることが開示されているものの、強い潮流が包装容器に加わると、別の包装容器や箱の間仕切りに包装容器が衝突し、破損する恐れがある。
【0006】
また、特許文献4に記載の方法では潮流が強い海域では、養殖している貝類や海藻類などの水生生物が流されたり、ダメージを受けたりする問題がある。
【0007】
本発明はこのような問題を解決し、強い流れから内容物を保護しつつも、適切な振動を内容物に伝えることを可能にする技術を提供とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、貯蔵本体と、該貯蔵本体を囲繞する遮蔽壁材を構成要素とする遮蔽壁と、を備え、水中地面に設置される水中貯蔵庫である。
本発明の水中貯蔵庫によれば、遮蔽壁の存在により、貯蔵本体に収容する食品組成物等が収納された包装用容器や養殖に供する水生生物に強い水流が直接当たることを防ぐことができ、破損や流出の問題を解決することができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記貯蔵本体が通水性であり、該遮蔽壁に流水取込口が設けられている。
このような形態の水中貯蔵庫は、貯蔵本体に収容した内容物に水流を当てて振動を伝える用途に用いることができる。遮蔽壁により強い水流が内容物に直接あたることを防ぎ、流水取込口から取り込んだ適度な水流を内容物に当てることができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、2以上の前記遮蔽壁材を備え、前記遮蔽壁材間の間隙が前記流水取込口である。
かかる形態の水中貯蔵庫は、シンプルな構造でありながらも、貯蔵本体に当たる水流を効果的に調整することができる。
【0011】
また、本発明の好ましい形態では、前記貯蔵本体が非通水性の壁面及び天井を備える。
水流が当たることによる振動ではなく、水中の音を貯蔵本体に収容した内容物に伝えることで熟成などを行う場合には、かかる形態の水中貯蔵庫を好適に使用することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記遮蔽壁材が、前記貯蔵本体の周囲全面を囲繞し、前記貯蔵本体を水流から隔絶した状態となしている。
これにより、水流が貯蔵本体に当たることによる振動ではなく、純粋に水中で伝搬している音を貯蔵本体に収容した内容物に伝えることができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記遮蔽壁材が、前記貯蔵本体の周囲から前記貯蔵本体に向かって傾斜している。
遮蔽壁材が傾斜しているため、遮蔽壁材に当たった水流をうまく上方に逃がすことができる。そのため、かかる形態の水中貯蔵庫は、耐久性に優れる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記遮蔽壁材が可撓性である。
可撓性の遮蔽壁材を用いることにより、より効果的に水流の当たる勢いを逃がすことができ、耐久性に優れた水中貯蔵庫を提供することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記遮蔽壁材が上部遮蔽壁材及び下部遮蔽壁材からなり、
前記貯蔵本体に近い位置に長支柱、遠い位置に短支柱が設けられており、
前記下部遮蔽壁材は、その内側面と前記短支柱の上端とが接続されており、前記短支柱の上端を支点とし、前記下部遮蔽壁材の幅方向を軸としたシーソー運動可能であり、
前記上部遮蔽壁材は、その内側面と前記長支柱の上端とが接続されており、前記長支柱の上端を支点とし、前記上部遮蔽壁材の幅方向を軸としたシーソー運動可能であり、
前記上部遮蔽壁材の下端と前記下部遮蔽壁材の上端が接続されており、
前記上部遮蔽壁材と前記下部遮蔽壁材の接続部が、前記シーソー運動に連動した、これら遮蔽壁材の幅方向を軸とするヒンジ運動可能であり、
前記下部遮蔽壁材の下端には第一の錘が設けられている。
【0016】
このように遮蔽壁材がヒンジ運動をなす形態とすることにより、さらに効果的に水流の当たる勢いを逃がすことができ、耐久性に優れた水中貯蔵庫を提供することができる。
【0017】
前記上部遮蔽壁材の下端又は前記下部遮蔽壁材の上端に第二の錘が設けられている。
第二の錘を設けることで、遮蔽壁が内側に湾曲した状態を維持することができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記上部遮蔽壁材と前記下部遮蔽壁材の接続部に、前記ヒンジ運動を永久磁石の回転運動に変換する変換手段を備える発電機構が設けられている。
これにより、遮蔽壁材が水流によりたわむ動作を利用して発電をすることができる。
【0019】
前記貯蔵本体の天井に開閉自在に設けられた扉が設けられている。
上方に扉を設けることで、貯蔵本体の内容物の出し入れを容易にすることができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、空気袋を備え、空気が充填された該空気袋を前記扉に係止することにより、該空気袋の浮力により前記扉の開閉の補助が可能である。
空気袋の浮力を利用することで、貯蔵本体の扉を容易に開閉することができる。
【0021】
本発明は、上述した水中貯蔵庫の貯蔵本体に、食品組成物を貯蔵することを特徴とする、食品組成物の貯蔵方法にも関する。
【0022】
また、本発明は、上述した水中貯蔵庫の貯蔵本体内で水生生物を育成することを特徴とする、水生生物の養殖方法にも関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、強い流れから内容物を保護しつつも、適切な振動を内容物に伝えることができる水中貯蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】(a)扉を閉じた状態の水中貯蔵庫の斜視図である。(b)扉を開いた状態の水中貯蔵庫の斜視図である。
【
図2】(a)扉を閉じた状態の水中貯蔵庫の側面図である。(b)扉を開いた状態の水中貯蔵庫の側面図である。
【
図3】(a)扉を開いた状態の水中貯蔵庫の平面図である。(b)扉を閉じた状態の水中貯蔵庫の平面図である。
【
図4】扉を開いた状態の水中貯蔵庫の平面図である。
【
図5】上部遮蔽壁材と下部遮蔽壁材の二材構成をとる遮蔽壁を備える水中貯蔵庫の側面図である。(a)流れが弱いときの遮蔽壁の側面図。(b)流れが強いときの遮蔽壁の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明を加えるが、本発明の技術的範囲は以下の実施形態に限定されない。
【0026】
実施例の水中貯蔵庫1について
図1〜5を参照しながら説明する。
実施例の水中貯蔵庫1は、矩形箱型の貯蔵本体2を備える。貯蔵本体2は枠材23の組み合わせからなる骨組み構造をとり、複数の収容区画22が形成されている(
図1、3)。非通水性の壁面を有さないため、貯蔵本体2は水流が内部に流入する通水性構造となっている(
図2)。
【0027】
貯蔵本体2の上面には扉21が設けられており、扉21を通して収納体6を出し入れすることができる。収容体6は収容区画22に収容することができる(
図1(b)、
図2(b))。
収容体6収容区画22には、収容体6を保持するために、収納体保持手段24を設けてもよい(
図4)。収納保持手段24の具体的な構成は特に限定されず、収容区画22内で収容体6が動かないように固定できることが好ましい。振動を吸収するために、収納保持手段24を緩衝材で構成してもよい。
【0028】
収容体6は通水性構造であっても、非通水性構造であってもよく、収容体6の内部に収容する物品等により適宜選択することができる。
例えば、内容物に水流を当てることにより振動を加え、熟成等を促進させる目的であれば、収容体6は通水性であることが好ましい。
内容物が、食品組成物が収容された瓶や樽などの包装用容器である場合には、収容体6内部において包装用容器が振動するような構成をとることが好ましいい。
【0029】
一方、内容物に直接水流を当てるのではなく、水中の音を内容物に伝え、その音波により緩やかに熟成等を行う場合には、収容体6は非通水性(密閉構造)とすることが好ましい。
【0030】
また、内容物に直接水流を当てるのではなく、水中の音を内容物に伝え、その音波により緩やかに熟成等を行う場合には、貯蔵本体2自体を非通水性の密閉構造としてもよい。つまり、非通水性の壁面と天井を設け、貯蔵本体2の内外を空間的に断絶してもよい。
【0031】
音波により緩やかに熟成等を行う場合には、熟成等を進行させる内容物の貯蔵本体2又は収容体6の内部における存在態様は、内容物に水中の音が伝わる構成であれば特に限定されない。
内容物が、食品組成物が収容された瓶や樽などの包装用容器である場合には、これら包装用容器は、貯蔵本体2又は収容体6の壁面に接触しない位置に載置することが好ましい。これにより、貯蔵本体2又は収容体6に水流が衝突することによる強い振動が包装用容器に伝わることを防ぐことができ、純粋に水中に伝搬している音による微振動のみで包装用容器中に収容された食品組成物を熟成させることができる。
【0032】
また、この場合には包装用容器が貯蔵本体2又は収容体6の内部で転がり、強い衝撃が加わらないように、緩衝材等で包まれた態様とすることも好ましい。
【0033】
実施例において、貯蔵本体2の周囲には4枚の遮蔽壁材3からなる遮蔽壁が設けられている(
図1〜3)。そして、それぞれの遮蔽壁材3の間隙が流水取込口4となっている。
水中貯蔵庫1の周囲に流れる水流は、大部分が遮蔽壁によって遮断され、貯蔵本体2に直接当たらないようになっている。貯蔵本体2に当たる水流は、流水取込口4から流入した水流に限られている。
このような構成をとることで、強い水流が貯蔵本体2に当たることを防ぐことができ、貯蔵本体2に収容する内容物の破損や流出を防ぐことができる。
【0034】
遮蔽壁材3の数、及び流水取込口4の数は特に限定されない。流水取込口4の数を増やすか、或いは、流水取込口4の面積を大きくすれば、貯蔵本体2に当たる水流が強くなる傾向がある。そのため、水中貯蔵庫1を海底に設置する場合には、その海域の潮流の強さに応じて、遮蔽壁材3及び流水取込口4の数、大きさを調整することが好ましい。
【0035】
遮蔽壁材3は、貯蔵本体2の周囲から貯蔵本体2に向かって傾斜している(
図1、2)。これにより、遮蔽壁に当たった水流が上方に逃がされ、遮蔽壁材3や貯蔵本体2が破損することを防ぐことができる。
【0036】
遮蔽壁材3の上端の地面からの高さは、貯蔵本体2の高さと略一致するように設計されている(
図1)。また、それぞれの遮蔽壁材3の上端辺は、貯蔵本体2の上面におけるそれぞれの辺に沿っている(
図1、3)。
【0037】
遮蔽壁材3の材質は特に限定されない。剛性体であっても可撓性体であってもよい。遮蔽壁材3に当たる水流をうまく受け流し、遮蔽壁材3に加わるダメージを減らし、耐久性を高める観点では、遮蔽壁材3は可撓性の素材で構成することが好ましい。
可撓性の素材としては、樹脂や合成ゴムなどを例示することができる。
【0038】
遮蔽壁材3は広告板として利用することもできる(
図3(a)、
図4)。
【0039】
また、
図5に示すように遮蔽壁材3を上部遮蔽壁材31及び下部遮蔽壁材32の二材構成としてもよい。
上部遮蔽壁材31は貯蔵本体2に近い位置に据えられた長支柱311によって支持され、下部遮蔽壁材32は貯蔵本体2に遠い位置に据えられた短支柱321によって支持されている。
【0040】
下部遮蔽壁材32の内側面と短支柱321の上端とが接続されている。そして、下部遮蔽壁材32は、短支柱321の上端を支点とし、下部遮蔽壁材32の幅方向を軸としたシーソー運動が可能なように構成されている。
なお、
図5に示すように短支柱321の上端は貯蔵本体2に向けて屈曲している。これにより、下部遮蔽壁材32のシーソー運動の可動域に制限がかけられ、破損を防止することができる。
【0041】
同様に、上部遮蔽壁材31の内側面と長支柱311の上端とが接続されている。そして、上部遮蔽壁材31は、長支柱311の上端を支点とし、上部遮蔽壁材31の幅方向を軸としたシーソー運動が可能なように構成されている。
なお、
図5に示すように長支柱311の上端は貯蔵本体2に向けて屈曲している。これにより、上部遮蔽壁材31のシーソー運動の可動域に制限がかけられ、破損を防止することができる。
【0042】
上部遮蔽壁材31の下端と下部遮蔽壁材32の上端は接続されている。そのため、上部遮蔽壁材31と下部遮蔽壁材32のシーソー運動は互いに連動することになる。言い換えれば、上部遮蔽壁材31と下部遮蔽壁材32がそれぞれシーソー運動することにより、これら2種の遮蔽壁材3の接続部33は、遮蔽壁材3の幅方向を軸とするヒンジ運動を起こす。
【0043】
このような構成によって、強い水流を受けた場合に遮蔽壁は鉛直方向下向きのダウンフォースを受け、大きく内側にたわむのである(
図5(b))。そして、水流が弱まれば、下部遮蔽壁32の下端に設けられた第一の錘34の作用、すなわち、下部遮蔽壁材32と短支柱321との接続点を支点、第一の錘34を力点、下部遮蔽壁材32の上端を作用点とするテコの原理によって、遮蔽壁のたわみが回復する(
図5(a))。このとき、上部遮蔽壁材31の下端部に設けられた第二の錘35の作用によって、遮蔽壁が逆側にたわむ(外側に膨らむ)ことが防止されている。
このような上部遮蔽壁31と下部遮蔽壁32の二材構成とすることによって、水流をうまく上方に受け流すことができ、耐久性を向上させることができる。
【0044】
上部遮蔽壁31と下部遮蔽壁32の接続部33に発電機構を設け、これら2種の遮蔽壁材3のヒンジ運動を電気に変換することが好ましい(図示なし)。つまり、上部遮蔽壁31と下部遮蔽壁32の接続部33におけるヒンジ運動を永久磁石の回転運動に変換する変換手段を備える発電機構を接続部33に設ける。
これにより、水中貯蔵庫1を発電設備とすることも可能になる。
【0045】
貯蔵本体2の上面に設けられた扉21は、貯蔵本体2に収容する内容物の日光による変性を防ぐために、遮光性であることが好ましい。また、貯蔵本体2の耐久性の観点から鉄板で扉21を構成することが好ましい。
【0046】
扉21はヒンジ211を軸として両側に開く(
図1(b)、
図2(b))。扉21の開閉が、
図2(b)に示すように、空気を充填した空気袋5の浮力による補助を受けることができるような構成とすることが好ましい。空気袋5が初めから空気が充填された状態で扉21に予め係止されていてもよいし、扉21を開閉するときに別途用意した空気袋5を扉21に係止する構成としてもよい。
【0047】
なお、貯蔵本体2から収容体6を取りだす際に、空気が充填された空気袋5を収容体6に係止し、その浮力を利用して収容体6を浮上させる構成としてもよい(
図2(b))。
【0048】
貯蔵本体2の内部に収容した内容物の盗難を防ぐために、扉21には鍵を設けることが好ましい。
【0049】
水中貯蔵庫1の設置場所としては、海底、湖底又は河底など水流のある自然環境が好ましい。人工的な水流を起こすことができるプール等に設置してもよいが、コスト面及びブランディングの観点から海底等の自然の水流が起こる環境下に置くことが好ましい。
【0050】
水中貯蔵庫1に貯蔵する内容物は、例えばワインや日本酒、焼酎などの酒類、清涼飲料水、ハムなどの肉類、各種発酵食品など食品組成物が挙げられる。
これら食品組成物は、瓶、壺、ペットボトル、タッパーなどの定形性のある包装用容器の他、ビニール袋、布袋など定形性の無い包装用容器にパッケージングされた形態で貯蔵本体2又は収容体6に収容してもよい。包装用容器にパッケージングする場合には、真空パックの形態として保存性を向上させたり、内部に二酸化炭素等のガスを充填することで熟成を促進又は抑制するように制御してもよい。また、収容体6又は貯蔵本体2に直接食品組成物を収容する形態としてもよい。
食品組成物が収容された瓶等の包装用容器をエアーパッキン等の梱包材で梱包して収容体6又は貯蔵本体2に収容する形態としてもよい。
なお、食品衛生の観点から、包装用容器の内部に水が浸入しないように、口部分などをロウ付けやラップ等により封止することが好ましい。
【0051】
また、水中貯蔵庫1は養殖方法に応用することができる。貯蔵本体2の内部に養殖しようとする水生生物を収容して育成する。養殖する水生生物としては貝類や海藻類などの底生生物を好適に例示することができる。水中貯蔵庫1を用いて養殖することで、強い水流により水生生物、特に底生生物がダメージを受けたり、流出したりすることを防ぐことができる。
【0052】
貝類や海藻類の養殖を行う場合には、水中貯蔵庫1と垂下法、シングルシード法、ロープ養殖法を組み合わせて用いることができる。つまり、貝類や海藻類が固定ないし載置されたロープやカゴを貯蔵本体2に収容して養殖を行う。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は食品組成物の熟成方法や養殖方法に応用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 水中貯蔵庫
2 貯蔵本体
21 扉
211 ヒンジ
22 収容区画
23 枠材
24 収納体保持手段
3 遮蔽壁材
31 上部遮蔽壁材
311 長支柱
32 下部遮蔽壁材
321 短支柱
33 接続部
34 第一の錘
35 第二の錘
4 流水取込口
5 空気袋
6 収容体