特許第6793965号(P6793965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6793965-可撓管 図000002
  • 特許6793965-可撓管 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793965
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】可撓管
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/127 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   F16L11/127
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-239140(P2018-239140)
(22)【出願日】2018年12月21日
(65)【公開番号】特開2020-101225(P2020-101225A)
(43)【公開日】2020年7月2日
【審査請求日】2020年10月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000134534
【氏名又は名称】株式会社トヨックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大蔵 優
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0210750(US,A1)
【文献】 登録実用新案第3001708(JP,U)
【文献】 実開平3−86279(JP,U)
【文献】 特開昭49−30914(JP,A)
【文献】 実公昭49−7945(JP,Y1)
【文献】 特開平7−223534(JP,A)
【文献】 特開2010−181032(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0144756(US,A1)
【文献】 国際公開第2005/119112(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/127
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向へ連続して形成される管本体と、
前記管本体の層内に軸方向へ設けられて前記管本体の端面から突出する先端部を有する導電線と、
前記導電線の周囲に前記管本体の前記層と非粘着な液状材料で形成される被覆層と、を備え、
前記被覆層は、前記管本体の前記層と前記導電線との境界面に配置されることを特徴とする可撓管。
【請求項2】
前記管本体が径方向に重なり合う複数の層を有し、前記複数の層の間に、前記被覆層となる非粘着な材料で覆った前記導電線が埋設されることを特徴とする請求項1記載の可撓管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アース線などの導電線が内部に設けられた可撓管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の可撓管として、ポリウレタンにより形成された内面層と外面層との間に、補強層とアース線とが設けられ、アース線がスパイラルに巻かれてホース層内に埋設され、アース線の端部をホースの端部から突出して電気的に接続することにより、静電気を排除してホース内への帯電を防止するようにした研掃材のブラストホースがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平07−004122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ホースの端部からアース線の端部を突出させてアース接続するには、ニッパーやハサミなどを用いてホースの端部からアース線のみを取り出す必要がある。
しかし乍ら、このような従来の可撓管では、ホース層内にアース線が埋設されるため、アース線の周囲からホース層の構成材料(ポリウレタン)を取り除かなければならず、この分離作業が困難で、分離作業に手間取るという問題があった。
特にホース層を構成する内面層と外面層の間にアース線が埋設される場合には、内面層と外面層が剥離しないように強固に接着されるため、内面層及び外面層の構成材料であるポリウレタンがアース線と固着しており、アース線の表面からポリウレタンを取り除くことが非常に困難であった。アース線の表面からポリウレタンを無理に取り外そうと引っ張ると、アース線も一緒に引きちぎれることがあった。
これを防止するために、ハサミやニッパー等を用いて、アース線の表面に固着したポリウレタンをギリギリまで取り除こうとすると、誤ってアース線を切ってしまうこともあり、アース線を容易に取り出すことができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために本発明に係る可撓管は、軸方向へ連続して形成される前記管本体と、前記管本体の前記層内に軸方向へ設けられて前記管本体の前記端面から突出する前記先端部を有する前記導電線と、前記導電線の周囲に前記管本体の前記層と非粘着な液状材料で形成される被覆層と、を備え、前記被覆層は、前記管本体の前記層と前記導電線との境界面に配置されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係る可撓管の全体構成を示す説明図であり、導電線を取り出した後の斜視図である。
図2】切断時の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る可撓管Aは、図1図2に示すように、管本体1の層内に設けられた導電線2の先端部2aを管本体1の端面1aから突出させ、管継手などの導電体(図示しない)に対して導電線2の先端部2aが電気的に接続されるものである。
詳しく説明すると、本発明の実施形態に係る可撓管Aは、軸方向へ連続して形成される管本体1と、管本体1の層内に設けられる導電線2と、導電線2の周囲に形成される被覆層3と、を主要な構成要素として備えている。
さらに、管本体1の層内に設けられる補強線材4を備えることが好ましい。
【0008】
可撓管Aの管本体1は、例えば塩化ビニルやポリウレタンなどの軟質合成樹脂か、又はシリコーンゴムやその他のゴムなどの軟質材料で変形可能な管状に形成された例えばホースやチューブなどの可撓性を有する管体である。
管本体1は、径方向に重なり合う複数の層を有する複数層構造や多層構造か、又は単層構造に形成される。
管本体1の製造方法としては、押出し成形や共押出し成形などにより層を作成することが好ましい。
管本体1の具体例として図1図2に示される場合には、内層11,外層12を有する二層構造である。図示例の場合には、透明や半透明な軟質合成樹脂又はシリコーンゴムなどの軟質材料からなる内層11と外層12を、押出成形などにより積層して一体化している。
内層11と外層12の間には、後述する導電線2及び被覆層3と補強線材4を配置している。
また、その他の例として図示しないが、管本体1として二層構造に代え三層以上の多層構造や単層構造に変更することや、不透明な軟質材料で形成することや、内層11及び外層12の間に後述する導電線2及び被覆層3のみを配置するなどの変更が可能である。
【0009】
導電線2は、電気伝導性を有する導電材料で管本体1の軸方向へ連続するように形成され、その軸方向の両側に管本体1の端面1aから突出する先端部2aを有している。
導電線2の具体例としては、金属繊維や金属箔の撚り糸,金属線などが用いられる。
管本体1の端面1aから突出した導電線2の先端部2aは、管継手などの導電体(図示しない)に対し電気的に接続されることにより、導電線2をアース線やその他の電線として用いることが可能になる。
【0010】
被覆層3は、管本体1の層と非粘着な材料からなり、管本体1の層と導電線2との境界面に、導電線2の表面2bに形成され、管本体1の層内に埋め込んで配置される。
被覆層3を構成する管本体1の層(軟質合成樹脂又はシリコーンゴムなどの軟質材料)と非粘着な材料としては、例えばシリコーン系や非シリコーン系の剥離剤,シリコーン系やフッ素系などの離型剤,界面活性剤,鉱物油,又はこれらと類似した材料か、若しくはこれらの組みあわせた材料などが用いられる。これにより、管本体1の層を構成する軟質材料に対する導電線2の表面2bの摩擦力(摩擦抵抗)が低下して、両者の非粘着性と導電線2の摺動性が付与される。
さらに管本体1が複数の層を有する複数層構造や多層構造の場合には、管本体1となる複数の層の間に、被覆層3となる非粘着な材料で覆った導電線2を埋設することが好ましい。この場合には、被覆層3となる非粘着な材料として流動可能な液状体などを用いることが好ましい。特にシリコーンオイルなどの粘性(粘度)が高い液状体が好ましい。
つまり、本発明の実施形態に係る可撓管Aの製造方法としては、被覆層3となる非粘着な材料を導電線2の表面2bに塗布するか又は含浸させるなどの処理により、表面2bが非粘着な材料で覆われた状態の導電線2を、複数の層の間に埋設することが好ましい。
図示例のように導電線2及び被覆層3を複数の層(内層11,外層12)の間に埋設する場合には、被覆層3となる非粘着な材料を導電線2の表面2bと複数の層(内層11,外層12)にそれぞれ密着させることが好ましい。これにより、切断した管本体1の端面1aから液体が複数の層(内層11,外層12)の間に浸入しないように防水処理して剥離防止される。
【0011】
補強線材4としては、管本体1の層構成材料よりも硬質な材料、例えばポリエステルやナイロン(登録商標)やアラミドなどの合成樹脂製繊維からなる補強糸4a,4bが主に用いられる。
補強糸4a,4bとしては、複数本の細い合成樹脂製繊維を撚り合わせたマルチフィラメント、一本の合成樹脂製繊維からなるモノフィラメント(monofilament:単繊維)、テープ状の合成樹脂製繊維からなるフラットヤーン(又はテープヤーン)などがある。
図示例のように補強線材4を複数の層(内層11,外層12)の間に埋設する場合には、補強線材4に加えて導電線2が配置された後に、接着剤をスプレー塗布やディップコーティングなどの公知手段で塗布して複数の層(内層11,外層12)と密着させることが好ましい。
これにより、切断した管本体1の端面1aから液体が導電線2及び補強線材4を伝わって、複数の層(内層11,外層12)の間に浸入しないように処理して剥離防止される。また塗布した接着剤により複数の層(内層11,外層12)が強固に密着される。
【0012】
導電線2及び被覆層3と補強線材4の配置方向は、管本体1の軸方向へ螺旋状に巻き付けることや、管本体1の軸方向へ直線状に配置することなどが挙げられる。
導電線2及び被覆層3と補強線材4の螺旋巻き形態には、管本体1の軸方向へ単数ずつが所定ピッチで螺旋状に巻回される単条巻きや、軸方向へ離れた複数組を所定ピッチで螺旋状に巻回する複条巻きなどがある。
導電線2及び被覆層3と補強線材4の配置方法としては、押出し成形や共押出し成形などによる管本体1の層作成と同時に、導電線2及び被覆層3と補強線材4を螺旋状に巻き付けることが好ましい。
特に導電線2及び被覆層3と補強線材4を螺旋状に巻き付ける場合には、管本体1の軸線に対する導電線2及び被覆層3と補強線材4の傾斜角度を小さく設定することが好ましい。
一般的に理想的な導電線2及び被覆層3と補強線材4の傾斜角度は、約109度であるが、具体例としては約80度〜100度、詳しくは85〜95度が望ましい。これに対して、導電線2及び被覆層3と補強線材4の傾斜角度が85度未満の場合には、圧力変動時に可撓管Aの伸縮が大きくなる。また導電線2及び被覆層3と補強線材4の傾斜角度が95度を越える場合には、導電線2が取り出し難くなる。
【0013】
導電線2及び被覆層3と補強線材4の具体例として図1図2に示される場合には、補強線材4として螺旋巻き方向が逆向きな複数の補強糸4a,4bを軸方向へ所定ピッチでずらしながら巻回している。これにより、内層11と外層12の間に沿って螺旋状に編組した補強層(網状のブレード構造)が形成される。補強糸4a,4bのいずれかを導電線2及び被覆層3に置き換えることで、導電線2及び被覆層3が螺旋状に巻き付けられている。
また、その他の例として図示しないが、補強層として網状のブレード構造をマルチフィラメントやモノフィラメントやフラットヤーンに代えることや、ニット編み構造に代えるなどの変更も可能である。
【0014】
次に、本発明の実施形態に係る可撓管Aにおいて管本体1が導電線2を除いて切断され、管本体1の層内に設けられた導電線2の先端部2aを管本体1の端面(切断面)1aから突出させる方法について説明する。
図2に示される切断方法では、持ち運び可能な手持ち式の管切断具Bを用いている。
管切断具Bは、従来周知のニッパーと同様な構造を有している。すなわち管切断具Bは、可撓管A(管本体1)を径方向へ挟み込むように対向して設けられる一対の切断刃B1と、一対の切断刃B1を移動自在に支持するジョイント部B2と、一対の切断刃B1に連続して形成されるグリップ部(図示しない)と、を主要な構成要素として備えている。
一対の切断刃B1は、管本体1の外径寸法や、一対の切断刃B1で管本体1を平滑状に押し潰した時の幅寸法よりも長い幅寸法に設定され、管本体1において導電線2を除いた箇所のみ切断するための凹状部B3を有している。
【0015】
本発明の実施形態に係る可撓管Aを管切断具Bで切断する方法は、管本体1の導電線2に向けて一対の切断刃B1を位置決めするセット工程と、一対の切断刃B1を管本体1の径方向へ接近移動させる切断工程と、管本体1から切断分離した不要な管本体1′から導電線2の先端部2aを引き出す分離工程と、を主要な工程として含んでいる。
セット工程では、図2に示されるように、導電線2が軸方向へ螺旋状や直線状に埋設される管本体1に対して、作業者が一対の切断刃B1の凹状部B3を導電線2と管本体1の径方向へ対向するように位置決めし、位置ズレしないように管切断具Bを仮止めする。
切断工程では、作業者が一対の切断刃B1を管本体1の径方向へ接近移動させて、一対の切断刃B1の間に管本体1を挟み込む。これにより、管本体1に切れ目が入って切り離し可能になっている。
分離工程では、作業者が管本体1の切断後に管本体1の端面1aから切断した不要な管本体1′を管本体1の軸方向へ分離移動させる。これにより、切り離した不要な管本体1′の端面(切断面)1a′に露出する被覆層3′から導電線2の先端部2aが引き抜かれる。
この際、導電線2及び被覆層3を螺旋状に巻き付ける場合には、管本体1の軸線に対する導電線2及び被覆層3の傾斜角度が小さくなるほど、被覆層3と導電線2における軸方向への摩擦力(摩擦抵抗)が低下して、切断した不要な管本体1′の被覆層3′から導電線2の先端部2aから引き抜き易くなる。
【0016】
このような本発明の実施形態に係る可撓管Aによると、管本体1の層内に導電線2を軸方向へ螺旋状に巻き付けた場合のように、管本体1の層に対して導電線2が一体的に設けられても、管本体1の層との境界面に導電線2が被覆層3を挟んだ非粘着な状態で配置される。
このため、図1及び図2に示されるように、管本体1の層を管切断具Bなどで導電線2が除かれるように切断して軸方向へ引き離すことにより、切断分離した不要な管本体1′の被覆層3′から導電線2の先端部2aがスムーズに引き出し可能となる。この引き離しに伴って、管本体1の層内に設けた導電線2の先端部2aのみが、管本体1の端面(切断面)1aから突出する。
したがって、管本体1の層内から導電線2の先端部2aを容易に取り出すことができる。
その結果、ホース層内にアース線が埋設される従来のものに比べ、管本体1の層構成材料と導電線2が切れることなく確実に分離でき、分離作業に手間取らず作業性に優れる。
【0017】
特に、管本体1が径方向に重なり合う複数の層(内層11,外層12)を有し、複数の層(内層11,外層12)の間に、被覆層3となる非粘着な材料で覆われた導電線2を埋設することが好ましい。
この場合には、複数の層(内層11,外層12)の間に導電線2を軸方向へ螺旋状に巻き付けた場合のように、複数の層(内層11,外層12)に対して導電線2が一体的に設けられても、複数の層(内層11,外層12)に対し導電線2が被覆層3を挟んだ非粘着な状態で配置される。
このため、図1及び図2に示されるように、複数の層(内層11,外層12)を管切断具Bなどで導電線2が除かれるように切断して軸方向へ引き離すことにより、切断分離した不要な管本体1′の被覆層3′から導電線2の先端部2aがスムーズに引き出し可能となる。この引き離しに伴って、複数の層(内層11,外層12)の間に設けた導電線2の先端部2aのみが、管本体1の端面(切断面)1aから突出する。
したがって、複数の層(内層11,外層12)の接着強度を低下させずに管本体1の層内から導電線2の先端部2aを容易に取り出すことができる。
その結果、管本体1を通る流体の圧力が上昇しても、複数の層(内層11,外層12)が剥離せず、優れた耐圧性能を保持できる。
また複数の層(内層11,外層12)の間に導電線2と補強線材4を配置した後に接着剤により複数の層(内層11,外層12)と密着させた場合でも、管切断具Bなどで導電線2が除かれるように切断して軸方向へ引き離すことにより、導電線2の先端部2aのみが、管本体1の端面(切断面)1aから突出して、容易に取り出すことができる。
【0018】
さらに、被覆層3となる非粘着な材料が液状であることが好ましい。
この場合には、被覆層3として非粘着な液状材料で表面2bが覆われた導電線2を押出し成形などで、管本体1の層と導電線2との境界面に配置することにより、導電線2の周囲に非粘着な液状材料からなる被覆層3が形成される。
したがって、被覆層3を簡単に作成することができる。
その結果、製造速度の高速化と製造コストの低減化が図れる。
【0019】
なお、前示の実施形態において図示例では、管本体1を内層11と外層12の二層構造にしたが、これに限定されず、最内層や最外層を有する三層以上の多層構造にしてもよい。
さらに管本体1の層内に補強線材4を設けたが、これに限定されず、補強線材4が無くてもよい。
また可撓管Aを持ち運び可能な手持ち式の管切断具Bで切断したが、これに限定されず、持ち運び不能な設置式の裁断器によって管本体1が導電線2を除いて切断されるように変更してもよい。
【符号の説明】
【0020】
A 可撓管 1 管本体
1a 端面 11,12 複数の層(内層,外層)
2 導電線 2a 先端部
3 被覆層
図1
図2