特許第6793966号(P6793966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793966
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】ワーク保持治具及び表面処理装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/08 20060101AFI20201119BHJP
   C25D 21/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   C25D17/08 G
   C25D21/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-542636(P2018-542636)
(86)(22)【出願日】2017年9月27日
(86)【国際出願番号】JP2017034923
(87)【国際公開番号】WO2018062259
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2020年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2016-192108(P2016-192108)
(32)【優先日】2016年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507264549
【氏名又は名称】株式会社アルメックステクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】石井 勝己
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 重幸
【審査官】 祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−316891(JP,A)
【文献】 特開2013−011009(JP,A)
【文献】 特開2009−132956(JP,A)
【文献】 特許第5898540(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/08
C25D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形のワークを処理槽内の処理液中にて垂直状態で保持し、かつ、前記ワークを陰極に設定するワーク保持治具であって、
上枠部材及び下枠部材を含む横枠部材と、前記下枠部材と電気的に接続される一対の縦枠部材と、を含み、前記ワークを囲んで配置される導電性の枠状部材と、
前記上枠部材に支持され、前記ワークの上辺を把持する導電性の複数の第1チャック部材と、
前記下枠部材に支持され、前記ワークの下辺を把持する導電性の複数の第2チャック部材と、
共通給電部と、
前記共通給電部から前記上枠部材に通電する第1通電部と、
前記共通給電部から前記一対の縦枠部材に通電する、前記第1通電部よりも抵抗値が小さい第2通電部と、
を有し、
前記第1通電部は、
前記上枠部材の両端部に電気的に接続されて固定され、絶縁部材を介して前記一対の縦枠部材をそれぞれ上下動自在に案内する一対の第1導電部材と、
前記共通給電部と前記一対の第1導電部材とを電気的に接続する一対の第2導電部材と、
を含むことを特徴とするワーク保持治具。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク保持治具において、
前記一対の第2導電部材の各々は、前記一対の第1導電部材の各々と共通給電部との間の各最短ルートを迂回して、冗長に形成されることを特徴とするワーク保持治具。
【請求項3】
請求項1または2に記載のワーク保持治具において、
前記一対の第1導電部材の各々に縦長穴が設けられ、
前記一対の縦枠部材の各々に、前記縦長穴に沿って案内される前記絶縁部材が設けられていることを特徴とするワーク保持治具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のワーク保持治具において、
前記第2通電部は、前記共通給電部と前記一対の縦枠部材の上端部とを電気的に接続する2本の導電ケーブルを含むことを特徴とするワーク保持治具。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のワーク保持治具において、
前記ワーク保持治具は、前記ワークに通電して前記ワークの両面を処理するものであり、
前記複数の第1チャック部材及び複数の第2チャック部材の各々は、
前記横枠部材に固定される固定チャック片と、
前記固定チャック片に対して搖動自在に支持される可動チャック片と、
前記固定チャック片と前記可動チャック片とに挟まれる前記ワークの挟持状態を維持する弾性部材と、
を含み、
前記弾性部材は、少なくとも前記横枠部材と前記可動チャック片とに電気的に接続されて固定される導電性の板バネであることを特徴とするワーク保持治具。
【請求項6】
ワークに通電して前記ワークの両面を処理するワーク保持治具であって、
導電部材に電気的に絶縁させて固定される固定チャック片と、
前記固定チャック片に対して搖動自在な可動チャック片と、
前記固定チャック片と前記可動チャック片とに挟まれる前記ワークの挟持状態を維持する板バネと、
を含み、
前記板バネは、
前記可動チャック片に電気的に導通させて固定される第1固定部と、
前記導電部材に電気的に導通させて固定される第2固定部と、
前記固定チャック片に電気的に導通させて固定される第3固定部と、
前記第1固定部と前記第2固定部とを連結する一対の腕部と、
を含み、
前記第2固定部は、前記板バネの長手方向において前記第1固定部と前記第3固定部との間に位置し、
前記一対の腕部は、平面視にて前記固定チャック片及び前記可動チャック片の両側に配置される一部がU字状の湾曲部を含むことを特徴とするワーク保持治具。
【請求項7】
請求項において、
前記固定チャック片に支持されて前記可動チャック片を揺動自在に支持する軸部を有し、
前記第1固定部は、前記平面視にて前記軸部の位置よりも前記可動チャック片のチャック端側に偏った位置にて、前記可動チャック片に固定されていることを特徴とするワーク保持治具。
【請求項8】
請求項において、
前記固定チャック片に支持されて前記可動チャック片を揺動自在に支持する軸部を有し、
前記第1固定部は、前記平面視にて前記軸部の位置よりも前記可動チャック片のチャック端側に偏った位置にて、前記可動チャック片に固定され、
前記第3固定部は、前記平面視にて前記軸部の位置よりも前記固定チャック片のチャック端とは反対の端部側に偏った位置にて、前記固定チャック片に固定されていることを特徴とするワーク保持治具。
【請求項9】
処理液が収容され、上端開口を有する表面処理槽と、
前記表面処理槽の前記処理液中に浸漬される矩形のワークを垂下して保持し、かつ、前記ワークを陰極に設定する請求項1乃至のいずれか一項に記載のワーク保持治具と、
前記表面処理槽内にて、前記ワークと対向する位置に配置される陽極電極と、
を有することを特徴とする表面処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続メッキ装置等の表面処理装置に用いられるワーク保持治具及び表面処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
連続メッキ装置等の表面処理装置では、ワーク保持治具にてワークを垂下して保持し、表面処理槽内の液中にてワークを連続搬送している。ワーク保持治具は、例えば特許文献1に示すように、ワークの上端をチャックしてワークを垂下して保持するのが一般的である。
【0003】
また、ワーク保持治具の他の機能は、表面処理槽内に配置される陽極(アノード)に対してワークを陰極(カソード)に設定することにある。陰極−陽極間に電界を形成してメッキ液を電気分解してワーク表面をメッキする。そのために、ワークの上端をチャックするチャック部材は導電性部材にて形成され、ワーク保持治具を介してワークを陰極に設定している。
【0004】
しかし、ワークの上端にて通電ルートを確保するだけでは、ワークの表面処理の面内均一性を確保するには限界がある。そこで、本願出願人は、ワークの上端及び下端をチャックするチャック部材を介して、ワークの上下方向から給電するワーク保持治具を開発した(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−132956号公報
【特許文献2】特許第5898540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に開示された技術によれば、ワークの電流分布の面内均一性を向上させることはできるが、例えばワークの上下端部に通電する通電ルートの抵抗差をさらに小さくし、あるいはワークの表裏面に通電する通電ルートの抵抗差も小さくして、面内均一性をさらに向上させることが要望される。
【0007】
本発明の幾つかの態様は、ワークの上下端部あるいは表裏面に通電する通電ルートの抵抗差をさらに小さくして、ワークの電流分布の面内均一性をさらに向上させることができるワーク保持治具及び表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一態様は、矩形のワークを処理槽内の処理液中にて垂直状態で保持し、かつ、前記ワークを陰極に設定するワーク保持治具であって、
上枠部材及び下枠部材を含む横枠部材と、前記下枠部材と電気的に接続される一対の縦枠部材と、を含み、前記ワークを囲んで配置される導電性の枠状部材と、
前記上枠部材に支持され、前記ワークの上辺を把持する導電性の複数の第1チャック部材と、
前記下枠部材に支持され、前記ワークの下辺を把持する導電性の複数の第2チャック部材と、
共通給電部と、
前記共通給電部から前記上枠部材に通電する第1通電部と、
前記共通給電部から前記一対の縦枠部材に通電する、前記第1通電部よりも抵抗値が小さい第2通電部と、
を有し、
前記第1通電部は、
前記上枠部材の両端部に電気的に接続されて固定され、絶縁部材を介して前記一対の縦枠部材をそれぞれ上下動自在に案内する一対の第1導電部材と、
前記共通給電部と前記一対の第1導電部材とを電気的に接続する一対の第2導電部材と、
を含むワーク保持治具に関する。
【0009】
本発明の一態様によれば、共通給電部から複数の第1チャック部材には、第1通電部である一対の第1,第2導電部材と、上枠部材とを介して通電され、共通給電部から複数の第2チャック部材には、第1通電部よりも抵抗値が小さい第2通電部と、一対の縦枠部材と、下枠部材とを介して通電される。
【0010】
ここで、第1通電部は特許文献2のように直接に上枠部材に最短ルートで通電するのではなく、一対の縦枠部材の昇降ガイドを兼ねる一対の第1,第2導電部材を介して通電される。よって、第1通電部の抵抗値を、第2通電部及び一対の縦枠部材のトータル抵抗値とほぼ等しく設定することが容易となる。それにより、複数の第1チャック部材からワークに流れる電流と、複数の第2チャック部材からワークに流れる電流をほぼ等しくでき、ワークの電流分布の面内均一性をさらに向上させることができる。また、上枠部材の両端部に電気的に接続されて固定される一対の第1導電部材は、絶縁部材を介して一対の縦枠部材をそれぞれ上下動自在に案内する部材としても兼用される。それにより、一対の縦枠部材に支持される下枠部材及び複数の第2チャック部材は自重により下方に移動して、ワークに張力を付与して、特に薄板状のワークに生じ得る撓みを防止することができる。しかも、上枠部材及び一対の第1導電部材と、一対の縦枠部材とは、絶縁部材により電気的に絶縁されるので、第1,第2通電部の通電ルートを電気的に絶縁することができる。
【0011】
(2)本発明の一態様では、 前記一対の第2導電部材の各々は、前記一対の第1導電部材の各々と共通給電部との間の各最短ルートを迂回して、冗長に形成することができる。こうすると、第1通電部の抵抗値を、第2通電部及び一対の縦枠部材のトータル抵抗値とほぼ等しく設定することがさらに容易となる。
【0012】
(3)本発明の一態様では、前記一対の第1導電部材の各々に縦長穴を設け、前記一対の縦枠部材の各々に前記縦長穴に沿って案内される前記絶縁部材を設けることができる。こうすると、縦長穴を有する一対の第1導電部材の抵抗値が増大するので、第1通電部の抵抗値を、第2通電部及び一対の縦枠部材のトータル抵抗値とほぼ等しく設定することがさらに容易となる。
【0013】
(4)本発明の一態様では、前記第2通電部は、前記共通給電部と前記一対の縦枠部材の上端部とを電気的に接続する2本の導電ケーブルを含むことができる。こうして、第2通電部の抵抗値を小さくすることで、第1通電部の抵抗値を、第2通電部及び一対の縦枠部材のトータル抵抗値とほぼ等しく設定することがさらに容易となる。
【0014】
(5)本発明の一態様では、
前記ワーク保持治具は、前記ワークに通電して前記ワークの両面を処理するものであり、
前記複数の第1チャック部材及び複数の第2チャック部材の各々は、
前記横枠部材に固定される固定チャック片と、
前記固定チャック片に対して搖動自在に支持される可動チャック片と、
前記固定チャック片と前記可動チャック片とに挟まれる前記ワークの挟持状態を維持する弾性部材と、
を含み、
前記弾性部材は、少なくとも前記横枠部材と前記可動チャック片とに電気的に接続されて固定される導電性の板バネとすることができる。
【0015】
(6)本発明の他の態様は、
ワークに通電して前記ワークの両面を処理するワーク保持治具であって、
導電部材に固定される固定チャック片と、
前記固定チャック片に対して搖動自在な可動チャック片と、
前記固定チャック片と前記可動チャック片とに挟まれるワークの挟持状態を維持する弾性部材と、
を含み、
前記弾性部材は、少なくとも前記導電部材と前記可動チャック片とに電気的に導通させて固定される導電性の板バネであるワーク保持治具に関する。
【0016】
上述の(5)及び(6)の態様によれば、横枠部材(導電部材)から板バネを介して可動チャック片に通電することができる。一般に可動チャック片は、固定チャック片に支持される軸部に搖動自在に支持され、固定チャック片と可動チャック片とに挟まれるワークの挟持状態を維持する弾性部材には、軸部に挿通される捩じりコイルスプリングが用いられる。この場合には、導電部材と可動チャック片との通電ルートには、固定チャック片と、軸部及び捩じりコイルスプリングが介在される。しかし、軸部及び捩じりコイルスプリングである介在部材は、固定チャック片及び可動チャック片と局所的に接触するだけである。よって、導電部材から介在部材を経て可動チャック片に至る通電ルートの抵抗値は、導電部材から固定チャック片に至る通電ルートの抵抗値よりも格段に大きくなる。ワークの両面に通電してワークの両面を表面処理する場合、上述の抵抗値の相違によりワーク表裏面での処理の均一性が確保できなかった。上述の(4)及び(5)の態様によれば、電部材から板バネを介して可動チャック片に通電することで、ワーク表裏面での処理の均一性を向上させることができる。しかも、固定チャック片7と可動チャック片とに挟まれるワークの挟持状態を維持する板バネを通電部材として兼用することで、部品点数は増大しない。
【0017】
(7)本発明のさらに他の態様では、
前記板バネは、
前記可動チャック片に電気的に導通させて固定される第1固定部と、
前記導電部材に電気的に導通させて固定される第2固定部と、
前記第1固定部と前記第2固定部とを連結する一対の腕部と、
を含み、
前記一対の腕部は、平面視にて前記固定チャック片及び前記可動チャック片の両側に配置される一部が、U字状の湾曲部を含むことができる。
【0018】
こうすると、板バネが平面視にて線対称形状となり、板バネの挟持力を線対称で均等に作用させることができると共に、導電部材から可動チャック片に至る板バネの通電ルートも線対称で確保することができる。それにより、ワークの電流分布の面内均一性が高まる。
【0019】
(8)本発明のさらに他の態様では、
前記固定チャック片は前記導電部材に電気的に絶縁させて固定され、
前記板バネは、
前記可動チャック片に電気的に導通させて固定される第1固定部と、
前記導電部材に電気的に導通させて固定される第2固定部と、
前記固定チャック片に電気的に導通させて固定される第3固定部と、
前記第1固定部と前記第2固定部とを連結する一対の腕部と、
を含み、
前記第2固定部は、前記板バネの長手方向において前記第1固定部と前記第3固定部との間に位置し、
前記一対の腕部は、平面視にて前記固定チャック片及び前記可動チャック片の両側に配置される一部がU字状の湾曲部を含むことができる。
【0020】
こうすると、導電部材から、第2固定部、一対の腕部及び第1固定部を介して可動チャック片に線対称で通電ルートが形成されるので、ワークの電流分布の面内均一性が高まる。さらに、固定チャック片とは電気的に絶縁された導電部材から、板バネの第2固定部及び第3固定部を介して固定チャック片に通電ルートが形成される。それにより、導電部材から固定チャック片への第1通電ルートと、導電部材から可動チャック片への第2通電ルートとの双方が板バネにより形成され、第1,第2通電ルート間の抵抗値の差をより小さくすることができる。それにより、ワーク表裏面での処理の均一性をさらに向上させることができる。
【0021】
(9)本発明の他の態様では、前記固定チャック片に支持されて前記可動チャック片を揺動自在に支持する軸部を有し、前記第1固定部を、前記軸部の位置よりも前記可動チャック片のチャック端側に偏った位置にて前記可動チャック片に固定することができる。
【0022】
こうすると、板バネにより可動チャック片のチャック端を固定チャック片側に移動付勢できる上に、板バネのU字状湾曲部を経由した第2通電ルートの抵抗値の増大を、第1固定部から可動チャック片のチャック端までの距離を短くすることで相殺することができる。
【0023】
(10)本発明の他の態様では、前記固定チャック片に支持されて前記可動チャック片を揺動自在に支持する軸部を有し、前記第1固定部は、前記平面視にて前記軸部の位置よりも前記可動チャック片のチャック端側に偏った位置にて、前記可動チャック片に固定され、前記第3固定部は、前記平面視にて前記軸部の位置よりも前記固定チャック片のチャック端とは反対の端部側に偏った位置にて、前記固定チャック片に固定することができる。
【0024】
こうすると、板バネの第2固定部から第3固定部を経て固定チャック片のチャック端までの第1通電ルートの長さを長くすることで、板バネの第2固定部、U字状の湾曲部及び第1固定部を経て可動チャック片のチャック端までの第2通電ルートの抵抗値と、第1通電ルートの抵抗値との差を小さくすることができる。
【0025】
(11)本発明のさらに他の態様は、
処理液が収容され、上端開口を有する表面処理槽と、
前記表面処理槽の前記処理液中に浸漬されるワークを垂下して保持し、かつ、前記ワークを陰極に設定する(1)〜(10)のいずれかに記載のワーク保持治具と、
前記表面処理槽内にて、前記ワークと対向する位置に配置される陽極電極と、
を有する表面処理装置を定義している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る表面処理装置の縦断面図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3】比較例のワーク保持治具の斜視図である。
図4】2つの案内レールと比較例のワーク保持治具とを示す図である。
図5】本発明の実施形態に係るワーク保持治具の被通電部を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るワーク保持治具の通電部及びワーク保持部を示す正面図である。
図7図7(A)は一対の縦枠部材を昇降可能に案内する一対の導電部材の支持構造を示す一部が接結された図であり、図7(B)は第1導電部材に形成される縦長穴を示す図である。
図8】特許文献2の第2給電部を示す図である。
図9】第1,第2チャック部材の側面図である。
図10】第1,第2チャック部材の平面図である。
図11】第1,第2チャック部材の底面図である。
図12図1の処理槽に配置される陽極電極部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0028】
1.表面処理装置の概要
図1は、表面処理装置例えば連続メッキ処理装置の縦断面図である。連続メッキ処理装置10は、回路基板等のワーク20をそれぞれ保持する複数の搬送治具30Aが、図1の紙面と垂直な方向に循環搬送される。図1では、循環搬送路100のうちのは平行な2つの直線搬送路110,120を示している。この2つの直線搬送路110,120は両端にて連結されてループ状の循環搬送路100を形成している。
【0029】
循環搬送路100には、複数のワーク保持治具30Aの各々に保持されたワーク20を表面処理例えばメッキ処理するメッキ槽(広義には表面処理槽)200と、メッキ槽200よりも循環搬送路100の上流に設けられて未処理のワーク20複数の搬送治具30Aに搬入する搬入部(図示せず)と、メッキ槽200よりも循環搬送路100の下流に設けられて処理済みのワーク20を複数のワーク保持治具30Aから搬出する搬出部(図示せず)とが設けられている。
【0030】
本実施形態では、メッキ槽200は第2直線搬送路120に沿って設けられ、搬入部及び搬出部は第1直線搬送路110に設けられている。循環搬送路100には、メッキ槽200の上流側に配置される前処理槽群230と、メッキ槽200の下流側に配置される後処理槽群(図示せず)とをさらに有する。
【0031】
前処理槽群230は、搬入部とメッキ槽200との間に、上流側から順に、例えば脱脂槽、湯洗槽、水洗槽、シャワー槽及び酸洗槽等を配置することで構成される。後処理槽は、メッキ槽200と搬出部との間に、上流側から順に、例えばシャワー槽及び水洗槽を配置することで構成される。なお、前処理槽群230及び後処理槽群の数や種類は適宜変更可能である。
【0032】
図1に示すように、連続メッキ処理装置10は、メッキ液Q(広義には処理液)が収容され、上端開口201を有するメッキ槽(広義には表面処理槽)200を有する。連続メッキ処理装置10はさらに、図1の一部を拡大して示す図2に示すように、メッキ槽200の上端開口201の上方から外れた位置にて、メッキ槽200の長手方向と平行な第1方向(紙面と垂直な方向)に沿って延設される例えば2本の第1案内レール130及び第2案内レール140を有する。複数の搬送治具30Aは、メッキ槽200の処理液中に配置させてワーク20をそれぞれ保持し、第1,第2案内レール130,140に支持される。案内レールは1本であっても良いし、3本以上であっても良い。
【0033】
複数のワーク保持治具30Aの各々は、図3に示すように、大別して、搬送部300と、ワーク保持部500とを有する。なお、図1に示すワーク保持治具30Aのうちの搬送部300は、後述する本実施形態のワーク保持治具30Bと共用することができる。図1に示すワーク保持治具30Aのうちの通電部330及びワーク保持部500は比較例を示し、図6に示す本実施形態のワーク保持治具30Bの給電部650及びワーク保持部600とは異なっている。
【0034】
図1に示すワーク保持治具30Aは、搬送部300と通電部330とを有する。搬送部300として、水平アーム部301と、第1被案内部310と、第2被案内部320とを有する。水平アーム部301は、図3に示すように、第1方向(搬送方向)Aと直交(広義には交差)する第2方向Bに沿って延びる例えば2本の第1,第2水平アーム301A,301Bを有する。第1被案内部310は、図4に示すように、水平アーム部301の一端側に支持されて、第1案内レール130に案内される。第2被案内部320は、図4に示すように、水平アーム部301の他端側に支持されて、第2案内レール140に案内される。
【0035】
通電部330は、図3に示すように、搬送部300と兼用される導電性の水平アーム部301(301A,301B)と、導電性の支持板331と、支持板331より垂下して支持された例えば2本の導電性の垂直アーム部332A,332B(332)とを有する。支持板331は、図3に示すように、第1被案内部310と第2被案内部320との間の位置にて、水平アーム部301に固定されている。
【0036】
このように、複数の治具30Aの各々は、ワーク20を保持する垂直アーム部332を挟んで第2方向Bの両端側の第1,第2被案内部310,320が、第1,第2案内レール130,140に支持された両持ち梁の形態を有する。従って、本実施形態では、ワーク保持治具30Aの搬送中に亘って上下動を抑えて安定してワーク20を保持搬送することができる。しかも、摺動部となる第1,第2案内レール130,140及び第1,第2被案内部310,320は、メッキ槽200の上端開口201の上方から外れた位置にあるので、粉塵等がメッキ槽200内に落下してメッキ液を汚染することがない。
【0037】
メッキ処理装置10では、ワーク20をカソード(陰極)とし、メッキ槽200がワーク20の搬送経路を挟んだ両側にアノード(陽極:例えば銅系アノードボール)410L,410Rを収容する円筒網バック(収容部)202,203設け、カソード−アノード間に電界を形成してメッキ液を電気分解して、ワーク20を電界メッキする。そのために、メッキ液Qに浸漬されて搬送されるワーク20に通電する必要がある。ワーク20に通電するためには、例えば、第1,第2案内レール130,140の少なくとも一方を通電レールとすることができる。この場合、ワーク保持治具30Aを構成する部材のうち、第1,第2案内レール130,140から通電部330を経てワーク20に通電する経路の材料を、電気導体で形成すれば良い。
【0038】
あるいは、図1及び図2に示すように、メッキ処理装置10は、第1,第2案内レール130,140とは別個に少なくとも1本の通電レール210を設けることができる。特に、本実施形態の通電レール210は、特開2009−132999に開示された電流制御方法を実施するために、図2に示すように、互いに絶縁された複数例えば4本の分割通電レール210A〜210Dを有する。複数のワーク保持治具30Aの各々は、4本の分割通電レール210A〜210Dのいずれか一つと接触して通電される被通電部340(図2及び図3)を有している。被通電部340は、通電部330の構成要素である水平アーム部301(301A,301B)に固定されている。
【0039】
このように、複数の治具30Aの各々は、被通電部340を挟んで第2方向Bの両端側の第1,第2被案内部310,320が、第1,第2案内レール130,140に支持された両持ち支持の形態を有する。従って、ワーク保持治具30Aの搬送中に亘って、被通電部340の上下動を抑えて安定して通電レール210との接触を維持することができる。
【0040】
図5は、被通電部340の詳細を示している。被通電部340は、水平アーム部301(301A,301B)に固定される導電性の支持板350と導電性の接触部341とを導電性の例えば2本の平行リンク342A,342Bで連結する四節回転連鎖の平行リンク機構342を有する。2本のリンク342A,342Bは、付勢部材であるねじりコイルスプリング343,343により、常時時計廻り方向に移動付勢されている。この結果、接触部341を通電レール210に適度な接触圧にて接触させることができる。
【0041】
また、2本の平行リンク342A,342Bは、上側支点が先行し、下側支点が後行するように傾斜している。この結果、接触部341は搬送治具30Aに引っ張られる形態で走行するので、走行が安定する。
【0042】
2.比較例の通電部及びワーク保持部
上述した通り、比較例のワーク保持治具30Aの通電部330は、図3に示すように、導電性の水平アーム部301と、導電性の支持板331と、導電性の垂直アーム部332A,332B(332)とを有する。さらに、この2本の垂直アーム部332A,332Bには、比較例としてのワーク保持部500が垂下して支持される。
【0043】
ワーク保持部500は、図3に示すように、矩形ワーク20の上辺20aを把持する導電性の複数の第1チャック部材510と、矩形ワーク20の上辺20aと鉛直方向Cにて対向する下20bを把持する導電性の複数の第2チャック部材520と、矩形ワーク20を囲んで配置され、複数の第1チャック部材510及び複数の第2チャック部材520を支持する枠状部材530と、を有する。
【0044】
枠状部材530は、複数の第1チャック部材510を支持する導電性の上枠部材531と、複数の第2チャック部材520を支持する導電性の下枠部材532と、上枠部材531の両端部と下枠部材532の両端部とそれぞれを連結する導電性の2つの縦枠部材533,534と、を有する。
【0045】
このように、比較例の枠状部材530では、上枠部材531と下枠部材532とは2つの縦枠部材533,534により電気的に導通されている。通電部として機能する2本の垂直アーム部332A,332Bから下枠部材532に通電するには上枠部材531を経由させていた。よって、従来では下枠部材532への通電ルートの抵抗値が上枠部材531への通電ルートの抵抗値よりも必然的に大きくなる。そのため、ワーク20内の電流分布は、上辺20aほど電流値が高く、下辺20bほど電流値が低くなり、面内均一性が良好でなかった。
【0046】
3.本実施形態にワーク保持治具に係るワーク保持部
3.1.第1,第2チャック部材、枠状部材及び第1,第2通電部
図6は、本発明の実施形態にワーク保持治具30Bを示し、特に比較例のワーク保持治具30Aとは異なる構成を有するワーク保持部600を示している。なお、比較例のワーク保持治具30Aと本実施形態のワーク保持治具30Bとは、図3に示す搬送部300を共用することができる。図6のワーク保持治具30Bは、共通給電部650を含むワーク保持部600の構造が、図3のワーク保持治具30Aと異なる。なお、共通給電部650は、図3に示す搬送部300における接触部341(図5)から支持板350、水平アーム部301(301A,301B)、支持板331を経由してワーク保持部600に至る通電ルートと接続される。図6は、図3に示す垂直アーム部332(332A,332B)及びワーク保持部500に代わる構造を示しており、図6に示す共通給電部650は図3に示す支持板331に連結される。
【0047】
図6に示すワーク保持部600は、矩形ワーク20の上辺20aを把持する導電性の複数の第1チャック部材610と、矩形ワーク20の下辺20bを把持する導電性の複数の第2チャック部材620と、矩形ワーク20を囲んで配置され、複数の第1チャック部材610及び複数の第2チャック部材620を支持する枠状部材630と、共通給電部650と、第1通電部660及び第2通電部670とを有する。本実施形態では、ワーク保持部600は、共通給電部650と枠状部材630とを例えば2本の絶縁アーム601,601により連結している。
【0048】
ここで、特にごく薄いワークを表面処理対象とする場合、処理槽200にワーク20を降下させて投入する時や、図3の搬送方向Aに向けてワーク20を処理槽200内にて搬送する時、液圧によりワーク20の垂下状態を保持できなくなる。
【0049】
本実施形態のワーク保持部600は、ワーク20の上下辺20a,20bをチャックしているので、液圧が作用してもワーク20の垂直姿勢を保持することができる。なお、第2チャック部材620を垂直方向にて可動としている。この点について後述する。
【0050】
本実施形態は、ワーク20の厚さが100μm以下、好ましくは60μm以下のように極薄のワーク20でも変形を防止できる。本実施形態では、ワーク20の厚さは例えば40μm=0.04mmである。なお、比較例のワーク保持部500も上下の第1,第2チャック部材510,520を有することから、ワーク20の変形を防止できる点については、本実施形態と同様である。
【0051】
しかし、比較例のワーク保持部500のように、枠状部材530及び第1,第2チャック部材510,520を導通させた場合には、第2チャック部材520を支持した下枠部材532への通電ルートの抵抗値が、第1チャック部材510を支持した上枠部材531への通電ルートの抵抗値よりも必然的に大きくなってしまう。なぜなら、下枠部材532への通電ルートは、上枠部材531への通電ルートを必ず経由するからである。また、特許文献1の従来技術のように、保持治具によりワークの上端のみをチャックした場合には、通電ルートは上枠部材にのみ限定される。従って、陽極から液中を介してワーク及び枠状部材に流れる電流(あるいはそれとは逆向きの電子の流れ)は、ワーク保持治具にチャックされたワークの上端側ほど流れ易くなり、ワーク内の電流分布はワーク面内にて不均一となる。ワークの電流分布の面内均一性は、ワークの表面処理品質に影響する。
【0052】
本実施形態では、矩形ワーク20を囲んで配置される枠状部材630は、複数の第1チャック部材610を支持する導電性の上枠部材(横枠部材)631と、複数の第2チャック部材620を支持する導電性の下枠部材(横枠部材)632と、導電性の一対の縦枠部材633,634と、を有することができる。なお、複数の第1チャック部材610は上枠部材(横枠部材)631に対して、複数の第2チャック部材620は上枠部材(横枠部材)632に対して、それぞれ枠状部材630の縦軸中心線に対して線対称で配置される。また、本実施形態では、共通給電部650から上枠部材631に給電する第1通電部660は、上枠部材631の両端部に設けられた一対の第1導電部材661,662と、共通給電部650と一対の第1導電部材640A,640Bとを電気的に接続する一対の第2導電部材663,664とを有することができる。共通給電部650から一対の縦枠部材633,634に給電する第2通電部670は、例えば2本の縦枠通電ケーブル671A,671Bを有する。
【0053】
共通給電部650から第1通電部660を介した第1チャック部材610への通電ルートと、共通給電部650から第2通電部670を介して第2チャック部材620への通電ルートとは、後述する絶縁部材640により電気的に絶縁され、抵抗値を独立して設定できる。それにより、ワーク20の電流分布の面内均一性を向上させて、ワーク20の表面処理品質をさらに高める改善するようにしている。
【0054】
本実施形態では、複数の第1チャック部材610と複数の第2チャック部材620とは、電気的に絶縁されている。しかも、共通給電部650から第1,第2チャック部材610,620への通電も、互いに電気的に絶縁された第1,第2通電部660,670に分離されている。第1通電部660は、共通給電部650から枠状部材630の一部である上枠部材531を介して複数の第1チャック部材610に通電する。第2通電部670は、共通給電部650から枠状部材630の他の一部である一対の縦枠部材533,534及び下枠部材532を介して複数の第2チャック部材620に通電する。
【0055】
よって、共通給電部650から第1通電部660を介した第1チャック部材610への通電ルートと、共通給電部650から第2通電部670を介して第2チャック部材620への通電ルートとは、抵抗値を独立して設定できる。それにより、共通給電部650から複数の第1チャック部材610に至る通電ルートの抵抗値と、共通給電部650から複数の第2チャック部材620に至る通電ルートの抵抗値とを、実質的に等しく設定できる。この結果、ワーク20の電流分布の面内均一性を向上させて、ワーク20の表面処理品質をさらに高めることができる。
【0056】
特に、本実施形態では、共通給電部650から上枠部材631に通電する第1通電部660は、一対の第1導電部材661,662と、一対の第2導電部材663,664とを有する。一対の第1導電部材661,662は、上枠部材631の両端部に電気的に接続されて固定され、後述する絶縁部材640を介して一対の縦枠部材533,534をそれぞれ上下動自在に案内する。一対の第2導電部材663,664は、共通給電部650と一対の第1導電部材661,662とを電気的に接続する。このように、第1通電部660は冗長に形成される。さらに、一対の第2導電部材663,664の各々は、一対の第1導電部材661,662の各々と、共通給電部650との間の各最短ルートを迂回して冗長に形成されている。本実施形態では、一対の第2導電部材663,664の各々は、上端が共通給電部650に接続された垂直片665と、一端が一対の第1導電部材661,662の一方に接続される水平片666と、垂直片665の下端と水平片666の他端とを接続する傾斜片667とを有して、冗長に形成されている。
【0057】
ここで、特許文献2の図6によれば、第1通電部660は共通通電部301A,301Bから上枠部材631に直接通電しており、しかも、第1通電部660の一部の構成要素である導電性の連結部662(662A,662B)は、共通通電部301A,301Bを支持する絶縁性の連結部661と上枠部材631との間の最短ルートである鉛直下方に向けて直線状に延びている。これに対して、本実施形態の第1通電部660は、図6に示すように、共通給電部650から直接に上枠部材631に給電せずに、一対の第1導電部材661,662を介在させて上枠部材631に給電している。加えて、共通給電部650から一対の第1導電部材661,662に給電する一対の第2導電部材663,664は、上述のように冗長に形成されている。従って、特許文献2の第1通電部660よりも本実施形態の第1通電部660の方が、共通給電部650から上枠部材631に至る給電経路の抵抗値を容易に大きく設定することができる。
【0058】
一方、特許文献2でも本実施形態でも、第2通電部670は2本の縦枠通電ケーブル671A,671Bを有する点で共通している。しかし、特許文献2の第2通電部670は、図8に示すように、縦枠通電ケーブル671A(671B)は、圧縮コイルスプリング643及び固定部材644を介して縦枠部材633(634)に連結されている。固定部材644は、上枠部材631に固定された絶縁性案内部材641に縦枠通電ケーブル671A,671Bを固定する。絶縁性案内部材641は、垂直片641Aに2つの水平片641B,641Cが連結され、縦枠通電ケーブル671A,671Bは水平片641Cに、ボルト644A、ナット644B及びワッシャー644C,644Dにより固定される。水平片641Bの下方には、縦枠部材633(634)の上端部633A(634A)を上下動自在に案内する絶縁性筒状部材642が設けられる。上端部633A(634A)は絶縁性筒状部材642の穴642A等に挿通されて水平片641Bより上方に突出した位置にフランジ633B(634B)を有する。圧縮コイルスプリング643は、ワッシャー644Dとフランジ633B(634B)との間に配置され、縦枠部材633(634)を押し下げることでワーク20にテンションを付与している。よって、第2通電部670は、共通給電部650から一対の縦枠部材633,634に至る給電経路に圧縮コイルスプリング643等を要する特許文献2よりも、本実施形態の方が、給電経路の抵抗値を容易に小さく設定することができる。
【0059】
以上のことから、本実施形態の第1通電部660における抵抗値を、第2通電部670及び縦枠部材633(634)のトータル抵抗値と実質的に等しく設定することができる。これにより、共通給電部650から複数の第1チャック部材610に至る通電ルートの抵抗値と、共通給電部650から複数の第2チャック部材620に至る通電ルートの抵抗値とを、実質的に等しく設定できる。
【0060】
3.2.一対の縦枠部材の昇降可能な支持構造
一対の縦枠部材633,634は、一対の第1導電部材661,662に昇降自在に支持されている。図7(A)は昇降可能な支持構造を示し、図7(B)は第1導電部材661に形成される少なくとも一つ、例えば2つの縦長穴661Aを示している。なお、第1導電部材662にも同様に縦長穴662A(図7(A)参照)が設けられる。
【0061】
図7(A)は、第1導電部材662に昇降可能に支持される縦枠部材634を示している。縦枠部材633も、図7(A)と同じ支持構造により第1導電部材661に支持されている。縦枠部材664は、第1導電部材662に形成された縦長穴662Aに沿って案内される絶縁部材635を有する。この絶縁部材635により、縦枠部材664は第1導電部材662に形成された縦長穴662Aに沿って昇降自在となり、かつ、第1導電部材662から電気的に絶縁される。
【0062】
絶縁部材635は、例えばフランジ635A付きの軸部635Bと、絶縁ワッシャー635Cとを含むことができる。フランジ635Aが縦枠部材634と第1導電部材662との間に配置されて、軸部635Bが縦長穴662Aに挿通される。軸部635Bの軸長さは第1導電部材662の厚さtよりも長く設定される。縦長穴662Aより僅かに突出する軸部635Bの自由端面に、絶縁ワッシャー635Cが配置される。この状態で、絶縁部材635が縦枠部材634に固定される。例えば、ネジ、タッピングスクリューまたはボルト等の締結具636が、絶縁ワッシャー635C、軸部635B及びフランジ635Aに形成されている孔を介して、縦枠部材634と締結される。
【0063】
図7(A)に示す通り、絶縁部材635の軸部635Bは縦長穴662Aに沿って昇降できる自由度が確保されている。よって、縦枠部材634、下枠部材632及び第2チャック部材620の自重により、縦長穴662Aの範囲内で縦枠部材634が移動することで、ワーク20にテンションを付与することできる。液中で移動されるワーク20を撓ませないためには、ワーク20に付与するテンションは、縦枠部材634、下枠部材632及び第2チャック部材620の自重で十分である。よって、本実施形態では、ワーク20にテンションを付与するバネ等の弾性部材は不要である。
【0064】
図7(A)に示す昇降支持構造の利点として、縦枠部材633,634の電気抵抗を増大させる加工が不要または最小限となることである。なぜなら、締結具636としてネジ又はボルトを用いる場合には、縦枠部材633,634にはネジ孔を設けるだけでよく、しかもネジ孔にはネジ又はボルトが螺合される。締結具636としてタッピングスクリューを用いる場合には、縦枠部材633,634には下孔を設けるだけでよく、しかも下孔にはタッピングスクリューが螺合される。この他、絶縁部材635のフランジ635Aを縦枠部材633,634に接着等で固定する場合には、縦枠部材633,634の加工は不要となる。
【0065】
ここで、第2通電部670と縦枠部材633,634とは、共通給電部650と下枠部材632との間に配置される導電部材であり、共通給電部650と上枠部材631との間に配置される第1通電部660と同程度の電気抵抗とすることが求められる。そのためには、縦枠部材633,634の電気抵抗を小さくする必要がある。本実施形態では、縦枠部材633,634は全長に亘って例えば一定の矩形断面となり、長穴やバネ等を設けて電気抵抗を増大させるような異形断面とする必要がない。
【0066】
3.3.チャック構造
第1,第2チャック部材610,620の構造を図9図11を参照して説明する。本実施形態では、図9図11に示すように、複数の第1チャック部材610及び複数の第2チャック部材620の各々は、導電部材である横枠部材700(上枠部材631または下枠部材632)に固定される固定チャック片710と、固定チャック片710に対して可動である可動チャック片720と、を有する。可動チャック片720は、固定チャック片710に支持される軸部740に搖動自在に支持される。図9に示すように、固定チャック片710のチャック端711と可動チャック片720のチャック端721とが閉じた状態により、チャック端711,721間にワーク20を挟持することができる。軸部740に対してチャック端721と反対側に位置する操作部722を操作して、チャック端721をチャック端711から遠ざけることで、ワーク20の挟持状態を解除することができる。
【0067】
ワーク20の例えば表面と接触する固定チャック片710と、ワーク20の例えば裏面と接触する可動チャック片720とにより、ワーク20は挟持される。このワーク20の挟持状態は、弾性部材730により維持することができる。本実施形態では、弾性部材730は、少なくとも横枠部材700(上枠部材631または下枠部材632)と可動チャック片720とに電気的に接続されて固定される導電性の板バネとすることができる。
【0068】
ここで、固定チャック片710と可動チャック片720とに挟まれるワークの挟持状態を維持する弾性部材には、一般には軸部740に挿通される捩じりコイルスプリングが用いられる。この場合には、導電部材700と可動チャック片720との通電ルートには、固定チャック片710と、軸部740と、捩じりコイルスプリングが介在されることになる。しかし、軸部740及び捩じりコイルスプリングである介在部材は、固定チャック片710及び可動チャック片720と局所的に接触するだけである。よって、導電部材700から介在部材を経て可動チャック片720に至る第2通電ルートの抵抗値は、導電部材700から固定チャック片710に至る第1通電ルートの抵抗値よりも格段に大きくなる。ワーク20の両面に通電してワーク20の両面を表面処理する場合、上述の抵抗値の相違によりワーク20の表裏面での処理の均一性が確保できなかった。本実施形態の構造によれば、導電部材700(上枠部材631または下枠部材632)から板バネ730を介して可動チャック片720に通電することで、ワーク20の表裏面での処理の均一性を向上させることができる。しかも、固定チャック片710と可動チャック片720とに挟まれるワーク20の挟持状態を維持する板バネ730を通電部材として兼用することで、部品点数は増大しない。
【0069】
ここで、板バネ730は、第1固定部731と、第2固定部732と、第1固定部731及び第2固定部732を連結する一対の腕部733A,733Bと、を少なくとも有することができる。板バネ730の第1固定部731はボルト750により可動チャック片720に電気的に導通させて固定される。板バネ730の第2固定部732は、ボルト751と、必要により第2固定部732の表裏面側の導電プレート752,753とにより、導電部材700(上枠部材631または下枠部材632)と、電気的に導通させて固定される。なお、導電部材700と固定チャック片71との間に、導電性または絶縁性のプレート754を設けても良い。プレート754を絶縁プレートとした場合には、図9または図11に示すように、板バネ730の第3固定部733を固定チャック片710と電気的に導通させて固定することができる。ただし、プレート754を導電性プレートとするか、あるいはプレート754を設けない場合には、第3固定部733は必ずしも設ける必要はない。第3固定部733を経由せずとも、固定チャック片710は導電部材700と導通するからである。いずれの場合でも、一対の腕部733A,733Bは、図10または図11に示す平面視にて、固定チャック片710及び可動チャック片720の両側に配置される一部が、図9に示すようにU字状に湾曲した湾曲部を形成している。
【0070】
こうすると、板バネ730が平面視で線対称形状となり、板バネ730の挟持力を線対称で均等に作用させることができると共に、導電部材700から可動チャック片720に至る板バネ730の通電ルートも線対称で確保することができる。それにより、ワーク20の電流分布の面内均一性が高まる。
【0071】
ここで、図9に示す例では、第2固定部732は、板バネ730の展開時の長手方向において第1固定部731と第3固定部733との間に位置する。そして、固定チャック片710とは電気的に絶縁された導電部材700から、板バネ730の第2固定部732及び第3固定部733を介して固定チャック片710に通電ルートが形成される。それにより、導電部材700から固定チャック片710への第1通電ルートと、導電部材700から可動チャック片720への第2通電ルートとの双方が板バネ730により形成され、第1,第2通電ルート間の抵抗値の差をより小さくすることができる。それにより、ワーク20の表裏面での処理の均一性をさらに向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、図9及び図10から明らかなように、平面視にて軸部740の位置よりも可動チャック片720のチャック端721側に偏った位置に第1固定部731を設けている。こうすると、板バネ730により可動チャック片720のチャック端721を固定チャック片710側に移動付勢できる。その上、板バネ730の一対の腕部733A,733BのU字状湾曲部を経由した第2通電ルートの抵抗値の増大を、第1固定部731から可動チャック片720のチャック端721までの距離を短くすることで相殺または緩和することができる。
【0073】
また、本実施形態では、図9及び図11から明らかなように、平面視にて軸部740の位置よりも固定チャック片710のチャック端711とは反対の端部側に偏った位置に、第3固定部733を設けている。こうすると、板バネ730の第2固定部732から第3固定部733を経て固定チャック片710のチャック端711までの第1通電ルートの長さを長くすることができる。それにより、板バネ730の第2固定部732、一対の腕部733A,733BのU字状の湾曲部及び第1固定部731を経て可動チャック片720のチャック端までの第2通電ルートの抵抗値と、第1通電ルートの抵抗値との差を小さくすることができる。
【0074】
4.ワーク内の電流分布の面内均一性を向上させる陽極電極
図12は、図1に示すワーク20の搬送路の両側に配置される陽極電極(アノード)410R(410L)を模式的に示している。この陽極電極410R(410L)は、処理槽200の長手方向に沿って延びる陽極バー400より通電される。通常は、陽極電極410R(410L)は陽極バー400に直接接続されるが、本実施形態では、陽極バー400と陽極電極410R(410L)との間に絶縁体430を介在させて、陽極バー400に陽極電極410R(410L)を固定している。陽極バー400から垂下する中継通電部420が設けられている。中継通電部420の下端部の接点部材420Aが、処理槽200内の処理液Qの液面Q1よりも低い位置に設けられる。接点部材420Aは、例えば陽極電極410R(410L)の垂直方向の中間位置に接続されて、陽極電極410R(410L)に通電するように構成している。
【0075】
中継通電部420が接続される陽極電極410R(410L)の垂直方向の中間位置とは、ワーク保持治具30Bにて垂下して保持されたワーク20の縦寸法を2分する位置が好ましい。ワーク20として縦寸法が異なる複数種が使用される場合には、中継通電部420を周知の昇降機構を利用して接点部材420Aの上下位置を調整することができる。なお、接点部材420Aは図12の紙面と垂直な方向で、所定長さで陽極電極410R(410L)と接触させることができる。
【0076】
陽極電極410R(410L)では、接点部材420Aからの電流は、処理槽200内の処理液を介して、陰極(カソード)であるワーク20に泣けて流れる際に、陽極電極410L(410R)上を接点部材420Aの高さ位置から上方向E1と下方向E2とに分岐して流れる。図9に示す陽極電極410R(410L)を、上述したワーク保持部600を有するワーク保持治具30Bと組み合わせて使用することで、陽極電極410R(410L)の中継通電部420と対向するワーク20の上下方向の中心位置から陰極側の第1チャック部材610及び第2チャック部材620へと均等に電流が流れ、ワーク20に対して流れる電流は、その垂直方向での電流分布の不均一性が改善される。
【0077】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。
【0078】
例えば、治具30Bの通電部330は、水平アーム部301等を経由させずに、被通電部340と共通給電部650とをケーブルで接続することもできる。
【符号の説明】
【0079】
10 表面処理装置(連続メッキ処理装置)、20 ワーク、20a 上辺、
20b 下辺、30A,30B ワーク保持治具、200 表面処理槽(メッキ槽)、
201 上端開口、210 通電レール、210A〜210D 分割通電レール、
301,301A,301B 第1,第2水平アーム、340 被通電部、
410L,410R 陽極電極、600 ワーク保持部、610 第1チャック部材、
620 第2チャック部材、630 枠状部材、
631 上枠部材(横枠部材、導電部材)、632 下枠部材(横枠部材、導電部材)、633,634 一対の縦枠部材、635 絶縁部材、640 絶縁部材、
641 絶縁板、642 絶縁ピン、643 抜け止めフランジ、650 共通給電部、
660 第1通電部、661,662 一対の第1導電部材、
663,664 一対の第2導電部材、670 第2通電部、
671A,671B 縦枠通電ケーブル、700 導電部材(上枠部材、下枠部材)、
710 固定チャック片、711 チャック端、720 可動チャック片、
721 チャック端、730 弾性部材(板バネ)、731 第1固定部、
732 第2固定部、733A,733B 一対の腕部、740 軸部、
A 第1方向(搬送方向)、B 第2方向、C 鉛直方向、Q 処理液(メッキ液)、
Q1 液面
図1
図2
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図10
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図12