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特許6793967ワーク保持治具及びワーク保持治具へのワーク取付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793967
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】ワーク保持治具及びワーク保持治具へのワーク取付方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/31 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   C23C18/31 E
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-542637(P2018-542637)
(86)(22)【出願日】2017年9月27日
(86)【国際出願番号】JP2017034924
(87)【国際公開番号】WO2018062260
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2020年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2016-192109(P2016-192109)
(32)【優先日】2016年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507264549
【氏名又は名称】株式会社アルメックステクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】石井 勝己
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 重幸
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−34579(JP,A)
【文献】 特表2007−514275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00−20/08
C25D 13/00−21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の上部横部材と、一対の下部横部材と、前記一対の上部横部材及び前記一対の下部部材を連結する連結部と、を含む治具本体と、
前記一対の上部横部材間に平行に支持される複数の第1支持部材と、
前記複数の第1支持部材の各々に支持され、複数のワークの各々の上端部をクランプする複数の第1クランプ部材と、
前一対の下部横部材間に平行に支持される複数の第2クランプ支持部材と、
前記複数の第2クランプ支持部材の各々に支持され、前記複数のワークの各々の下端部をクランプする複数の第2クランプ部材と、
を有し、
前記複数の第1支持部材及び複数の第2支持部材の一方は、前記一対の上部横部材及び前記一対の下部横部材の一方に昇降可能に支持され
前記治具本体は、前記複数の第1クランプ部材及び前記複数の第2クランプ部材が開放状態の時に、垂直状態である前記複数のワークの各々を水平移動させて前記治具本体内への搬入を許容する搬入口を有することを特徴とするワーク保持治具。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数の第2支持部材の各々は、前記一対の下部横部材に昇降可能に案内され、かつ、前記一対の下部横部材により下限位置が設定され、
前記複数のワークの各々は、前記複数の第2支持部材の一つと、該一つの第2支持部材に支持された前記複数の第2クランプ部材との自重により、テンションが付与されることを特徴とするワーク保持治具。
【請求項3】
請求項1において、
前記複数の第1支持部材の各々は、前記一対の上横部材に昇降可能に案内され、かつ、上方への付勢力が付与され、
前記複数のワークの各々は、前記付勢力により、テンションが付与されることを特徴とするワーク保持治具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、
前記連結部は、前記一対の上部横部材と前記一対の下部横部材との間の上下方向距離を調整可能な機構を含むことを特徴とするワーク保持治具。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、
前記複数の第1支持部材の各々に固定され、前記複数の第1クランプ部材の可動片を揺動可能に支持する複数の第1ホルダーをさらに有し、
前記複数の第1ホルダーの各々は第1垂直面を含み、
前記複数の第1クランプ部材の前記可動片は、前記第1垂直面に対して接離されることを特徴とするワーク保持治具。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項において、
前記複数の第1支持部材の各々は第1垂直面を含み、
前記複数の第1クランプ部材の可動片は前記第1垂直面に対して接離されることを特徴とするワーク保持治具。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、
前記複数の第2支持部材の各々に固定され、前記複数の第2クランプ部材の可動片を揺動可能に支持する複数の第2ホルダーをさらに有し、
前記複数の第2ホルダーの各々は第2垂直面を含み、
前記複数の第2クランプ部材の前記可動片は、前記第2垂直面に対して接離されることを特徴とするワーク保持治具。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項において、
前記複数の第2支持部材の各々は第2垂直面を含み、
前記複数の第2クランプ部材の可動片は前記第2垂直面に対して接離されることを特徴とするワーク保持治具。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のワーク保持治具に複数のワークを取り付ける方法であって、
前記複数の第1支持部材の一つに保持された前記複数の第1クランプ部材を、第1外力を付与してクランプ可能な状態にする第1工程と、
前記複数の第1クランプ部材の一つ及び前記複数の第2支持部材の一つの一方を、第2外力を付与して上下方向の一方に移動させ、かつ、前記複数の第2支持部材の一つに保持された前記複数の第2クランプ部材を、第3外力を付与してクランプ可能な状態にする第2工程と、
前記複数のワークの一枚を垂直状態にして、第1方向に水平移動させて前記搬入口より前記治具本体内に搬入する第3工程と、
前記第1及び第3外力を解除して、前記複数の第1クランプ部材及び前記複数の第2クランプ部材を用いて、前記一枚のワークの上端部と下端部とをクランプする第4工程と、
前記複数の第1クランプ部材の一つ及び前記複数の第2支持部材の一つの一方を、前記第2外力の解除により前記上下方向の他方に移動させ、前記一枚のワークにテンションを付与する第5工程と、
を有し、
前記ワーク保持治具への前記複数のワークの全ての取り付けが完了するまで、前記第1〜第5工程を繰り返し実施することを特徴とするワーク保持治具へのワーク取付方法。
【請求項10】
請求項において、
前記第5工程後に、前記ワーク保持治具へ取り付けられる次のワークの搬入に備えて、前記ワーク保持治具を前記第1方向と直交する第2方向に水平移動させる第6工程をさらに有することを特徴とするワーク保持治具へのワーク取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解メッキに用いられるワーク保持治具及びワーク保持治具へのワーク取付方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
無電解メッキは、電解メッキと相違して浴中を電流が流れないため、メッキ処理されるワークは導電体のみならずプラスチックやセラミックスのような非導電体とする利点がある。
【0003】
特許文献1に、無電解メッキ液を収容したメッキ槽の中に、複数の配線基板を、無電解メッキ液が流通可能な隙間を介して鉛直に立てて並べ、あるいはラックに吊り下げて、バッチ処理することが開示されている(請求項1,3及び図4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−93651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、例えばスマートフォン等の電子機器の小型化に伴い配線基板は薄型化されている。配線基板の厚さが例えば100μm以下の薄さになると、特許文献1のようにラックに立てて並べられ、あるいはラックに吊り下げられる配線基板は、その薄さによって撓んでしまう。
【0006】
本発明の目的は、バッチ処理される複数のワークの撓みを防止し、無電解メッキ液が流通できる隙間をワーク間に確保して、メッキ品質を維持しながら無電解メッキすることができるワーク保持治具及びワーク保持治具へのワーク取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、
一対の上部横部材と、一対の下部横部材と、前記一対の上部横部材及び前記一対の下部横部材を連結する連結部と、を含む治具本体と、
前記一対の上部横部材間に平行に支持される複数の第1支持部材と、
前記複数の第1支持部材の各々に支持され、矩形である複数のワークの各々の上端部をクランプする複数の第1クランプ部材と、
前記一対の下部横部材間に平行に支持される複数の第2支持部材と、
前記複数の第2支持部材の各々に支持され、前記複数のワークの各々の下端部をクランプする複数の第2クランプ部材と、
を有し、
前記複数の第1支持部材及び複数の第2支持部材の一方は、前記一対の上部横部材及び前記一対の下部横部材の一方に昇降可能に支持されるワーク保持治具に関する。
【0008】
本発明の一態様によれば、複数の第1クランプ部材及び複数の第2クランプ部材にクランプされる複数のワークの各々は、複数の第1支持部材及び複数の第2支持部材の一方が他方に対して遠ざかるように移動されることによりテンションが付与される。それにより、複数のワークを撓ませずに平行に配置することができる。結果として、このワーク保持治具に保持された複数のワークをメッキ浴に浸漬すると、たとえ薄いワークであっても隣り合うワーク間には無電解メッキ液が流通できる適正な隙間が確保される。それにより、メッキ品質を維持しながら無電解メッキして複数のワークをバッチ処理することができる。なお、複数の第1支持部材及び複数の第2支持部材の一方を他方に対して遠ざかるように移動させる力は、後述の(2)のように治具の一部の部材の自重を利用するもの、後述の(3)のように治具に設けたバネなどの付勢力を利用するものの他、少なくとも処理槽に配置される治具に作用する外力を利用することができる。また、複数の第1支持部材及び複数の第2支持部材の双方を、一対の上部横部材及び一対の下部横部材の双方に対してに昇降可能に支持しても良い。
【0009】
(2)本発明の一態様では、前記複数の第2支持部材の各々は、前記一対の下部横部材に昇降可能に案内され、かつ、前記一対の下部横部材枠により下限位置が設定され、前記複数のワークの各々は、前記複数の第2支持部材の一つと、該一つの第2支持部材に支持された前記複数の第2クランプ部材との自重により、テンションが付与されてもよい。
【0010】
こうして、複数の第1クランプ部材により吊り下げられる複数のワークの各々の下端部に、複数の第2支持部材の各々と複数の第2クランプ部材との自重を作用させることができる。それにより、ばねの付勢力等による外力を用いずに複数のワークを撓ませずに平行に配置することができる。
【0011】
(3)本発明の一態様では、前記複数の第1支持部材の各々は、前記一対の上部横部材に昇降可能に案内され、かつ、スプリング等の付勢部材や重り等により上方への付勢力が付与され、前記複数のワークの各々は、前記付勢力により、テンションが付与されても良い。
【0012】
(4)本発明の一態様では、前記連結部は、前記一対の上部横部材と前記一対の下部横部材との間の上下方向距離を調整可能な機構を含むことができる。連結部は、例えばスライド機構とロック機構等の公知の機構により、一対の上部横部材と一対の下部横部材との間の上下方向距離を調整可能とすることで、縦サイズの異なるワークがワーク保持治具に保持可能となる。
【0013】
(5)本発明の一態様では、前記複数の第1支持部材の各々に固定され、前記複数の第1クランプ部材の可動片を揺動可能に支持する複数の第1ホルダーをさらに有し、
前記複数の第1ホルダーの各々は第1垂直面を含み、
前記複数の第1クランプ部材の前記可動片は、前記第1垂直面に対して接離されても良い。
【0014】
このように、ワークの上端部を挟む一対の部材の一方を、複数の第1クランプ部材の可動片を揺動可能に支持する第1ホルダーに設けた第1垂直面とすることで、部材点数が減少する。さらに、複数の第1クランプ部材の可動片と対向する領域に形成された第1垂直面に倣ってワークの垂直姿勢を確保することができる。
【0015】
(6)本発明の一態様では、
前記複数の第1支持部材の各々は第1垂直面を含み、
前記複数の第1クランプ部材の可動片は前記第1垂直面に対して接離されても良い。
【0016】
このように、ワークの上端部を挟む一対の部材の一方を、複数の第1クランプ部材を保持する第1支持部材に設けた第1垂直面とすることで、部材点数が減少する。さらに、複数の第1クランプ部材の可動片と対向する領域に形成された第1垂直面に倣ってワークの垂直姿勢を確保することができる。
【0017】
(7)本発明の一態様では、
前記複数の第2支持部材の各々に固定され、前記複数の第2クランプ部材の可動片を揺動可能に支持する複数の第2ホルダーをさらに有し、
前記複数の第2ホルダーの各々は第2垂直面を含み、
前記複数の第2クランプ部材の前記可動片は、前記第2垂直面に対して接離されても良い。
【0018】
このように、ワークの下端部を挟む一対の部材の一方を、複数の第2クランプ部材の可動片を揺動可能に支持する第2ホルダーに設けた第2垂直面とすることで、部材点数が減少する。さらに、複数の第2クランプ部材の可動片と対向する領域に形成された第2垂直面に倣ってワークの垂直姿勢を確保することができる。
【0019】
(8)本発明の一態様では、
前記複数の第2支持部材の各々は第2垂直面を含み、
前記複数の第2クランプ部材の可動片は前記第2垂直面に対して接離されても良い。
【0020】
このように、ワークの下端部を挟む一対の部材の一方を、複数の第2クランプ部材を保持する第2支持部材に設けた第2垂直面とすることで、部材点数が減少する。さらに、複数の第2クランプ部材の可動片と対向する領域に形成された第2垂直面に倣ってワークの垂直姿勢を確保することができる。特に、ワークの上端部が第1垂直面に倣い、ワークの下端部が第2垂直面に倣うことで、ワークの垂直姿勢をより確実に確保することができる。それにより、ワーク間には無電解メッキ液が流通できる適正な隙間が確実に確保される。
【0021】
(9)本発明の一態様では、前記治具本体は、垂直状態の前記複数のワークの各々を水平移動させて前記治具本体内への搬入を許容する搬入口を有することができる。
【0022】
このような搬入口を有するワーク保持治具を用いると、後述する(10)のワーク取付方法を実現することができる。
【0023】
(10)本発明の他の態様は、上述の(9)に記載のワーク保持治具に複数のワークを取り付ける方法であって、
前記複数の第1支持部材の一つに保持された前記複数の第1クランプ部材を、第1外力を付与してクランプ可能な状態にする第1工程と、
前記複数の第1クランプ部材の一つ及び前記複数の第2支持部材の一つの一方を、第2外力を付与して上下方向の一方に移動させ、かつ、前記複数の第2支持部材の一つに保持された前記複数の第2クランプ部材を、第3外力を付与してクランプ可能な状態にする第2工程と、
前記複数のワークの一枚を垂直状態にして、第1方向に水平移動させて前記搬入口より前記治具本体内に搬入する第3工程と、
前記第1及び第3外力を解除して、前記複数の第1クランプ部材及び前記複数の第2クランプ部材を用いて、前記一枚のワークの上端部と下端部とをクランプする第4工程と、
前記複数の第1クランプ部材の一つ及び前記複数の第2支持部材の一つの一方を、前記第2外力の解除により前記上下方向の他方に移動させ、前記一枚のワークにテンションを付与する第5工程と、
を有し、
前記ワーク保持治具への前記複数のワークの全ての取り付けが完了するまで、前記第1〜第5工程を繰り返し実施するワーク保持治具へのワーク取付方法に関する。
【0024】
本発明の他の態様によれば、ワーク保持治具に対する第1〜第3外力の付与/解除(第1,2,4,5工程)と、ワークの第1方向への水平移動(第3工程)とにより、ワーク保持治具に複数のワークを取り付けることができ、ワーク保持治具へのワークの取り付けの自動化が容易となる。
【0025】
(11)本発明の他の態様では、前記第5工程後に、前記ワーク保持治具へ取り付けられる次のワークの搬入に備えて、前記ワーク保持治具を前記第1方向と直交する第2方向に水平移動させる第6工程をさらに有することができる。
【0026】
こうすると、上述の方法を自動化するにあたり、ワーク保持治具を第2方向に水平移動させるだけで、第1〜第3外力を付与/解除する装置とワークを搬入する装置とは移動を要することなく、ワーク保持治具への全てのワークの取り付けが完了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係るワーク保持治具の斜視図であり、第3工程及び第4工程を説明する図である。
図2図1に示すワーク保持治具を、治具内部にて第1方向Aから見た側面図である。
図3】昇降アームに吊り下げられた図1に示すワーク保持治具を、治具内部にて第2方向Bから見た側面図である。
図4図1に示すワーク保持治具の底面図である。
図5図5(A)〜図5(C)は、第1クランプ部材及び第1支持部材の平面図、クランプ解除及びクランプ動作時の側面図であり、第1工程及び第4工程を説明する図である。
図6図6(A)〜図6(C)は、第2クランプ部材及び第2支持部材の平面図、クランプ解除及びクランプ動作時の側面図であり、第2工程及び第4工程を説明する図である。
図7】第2支持部材の上昇位置を示す図であり、第2工程を説明する図である。
図8】第2支持部材の下降位置を示す図であり、第5工程を説明する図である。
図9】本発明の実施形態であるワーク保持治具へのワークの取付方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0029】
1.ワーク保持治具
図1は、本発明の一実施形態に係るワーク保持治具の斜視図である。図1図4において、ワーク保持治具10は治具本体20を有する。治具本体20は、四角形状の上枠30と、四角形状の下枠40と、上枠30及び下枠40を連結する連結部50と、を含む。なお、この治具本体20内へ一枚ずつのワークW(図2及び図3参照)を搬入する方向を第1方向Aとする。一枚のワークWが搬入された後のワーク保持治具10のステップ移動方向を第2方向Bとする。
【0030】
上枠30は、第1方向Aで対向する第1,第2上枠部材31,32と、第2方向Bで対向する第3,第4上枠部材33,34を四角枠状に連結して構成される。第1方向Aで対向する第1,第2上枠部材31,32には、下端に開口するスリット31A,32Aが複数例えば20個設けられている。また、第1,第2上枠部材31,32には、ワーク保持治具10を吊り下げてメッキ浴に対して昇降させる昇降部材200(図3参照)に支持されるフック31B,32Bが一体形成されている。なお、治具本体20の上枠部材33,34は上枠30を形成するための補強部材である。上枠30の部分は必ずしも枠状でなくても良く、少なくともスリット31A,32Aが形成される互いに平行な上枠部材(一対の上部横部材)31,32を有していればよい。
【0031】
下枠40は、第1方向Aで対向する第1,第2下枠部材41,42と、第2方向Bで対向する第3,第4下枠部材43,44を四角枠状に連結して構成される。第1方向Aで対向する第1,第2下枠部材41,42には、上端に開口するスリット41A,42Aが、上側のスリット31A,32Aと対向して複数例えば20個設けられている。必要により、図1に示すように、第1,第2下枠部材41,42の間の距離を二分する位置にて、両端が第3,第4下枠部材43,44に固定される中間材45を設けても良い。この中間材45にも、上端に開口するスリット45Aが第1方向Aでスリット41A,42Aと対向する位置に設けられる。なお、治具本体20の下枠部材43,44は下枠40を形成するための補強部材である。下枠40の部分は必ずしも枠状でなくても良く、少なくともスリット41A,42Aが形成される互いに平行な上枠部材(一対の下部横部材)41,42を有していればよい。
【0032】
上枠30及び下枠40を連結する連結部50は、上枠30及び下枠40の四隅を上下で連結する複数例えば4本の縦枠部材51〜54を有する。連結部50は、必要により補強部材を有することができ、図1において第2方向Bで対向する二面を補強する水平補強部材55と垂直補強部材56とを有する。補強部材は筋交いであっても良い。
【0033】
連結部50は、例えば図1において第1方向Aで対向する二面には、各面を横断または縦断する補強部材が配置されない。これにより、本実施形態では、第1上枠部材31と、第1下枠部材41と、これらを連結する2本の縦枠部材51,52で囲まれた空間が、ワークWの搬入口60として確保される。搬入口60は搬出口としても兼用できる。第2上枠部材32と、第2下枠部材42と、これらを連結する2本の縦枠部材53,54で囲まれた空間も補強部材が配されないことから、この空間はワークWを搬入出する際に、ワークWの搬入先端または搬出後端を保持する治具の搬入出口として利用できる。
【0034】
上枠30の第1,第2上枠部材31,32のスリット31A,32Aには、複数(20個)の第1支持板(第1支持部材)70の両端が挿入され、第1,第2上枠部材31,32が落下しないように支持(例えば固定)される。それにより、複数の第1支持板70が、上枠30の第1方向Aで対向する二辺間に平行に支持される。複数の第1支持板70の各々には、矩形である複数のワークWの各々の上端部を付勢力によりクランプする、複数例えば4個の第1クランプ部材80が支持される。なお、第1,第2上枠部材31,32のスリット31A,32Aには、複数(20個)の第1支持板70の両端が、昇降可能に支持されても良い。この場合、複数の第1支持板70は、バネ等の付勢力により上枠30に対して上方に移動付勢されてもよい。
【0035】
下枠40の第1,第2下枠部材41,42のスリット41A,42Aには、複数(20個)の第2支持板(第2支持部材)90の両端が挿入されて支持される。複数の第2支持板90の両端は、図1に示す下枠部材41,42のスリット41A,42Aを覆って取り付けられる規制部材46により、抜け止めされている。それにより、複数の第2支持板90が、下枠40の第1方向Aで対向する二辺間に平行に支持される。第1支持板70とは異なり、第2支持板90はスリット41A,42Aに固定されず、スリット41A,42Aに案内されて昇降可能である。また、スリット41A,42Aの奥行き方向の底面が、第2支持板90の下限位置を設定する。複数の第2支持板90の各々には、複数のワークWの各々の下端部を付勢力によりクランプする、複数例えば4個の第2クランプ部材100が支持される。なお、複数の第1支持板70が昇降可能に支持される場合、複数の第2支持板90は固定されても良い。
【0036】
ここで、本実施形態によれば、複数の第1クランプ部材80により吊り下げられる複数のワークWの各々の下端部に、複数の第2支持板90の各々と複数の第2クランプ部材100との自重を作用させることができる。なぜなら、複数の第2クランプ部材100を保持する複数の第2支持板90の各々は、下枠40に設けられたスリット41A,42Aにより昇降可能であり、それらの自重により下降して、ワークWにテンションを付与するからである。下降位置での複数の第2支持板90の各々は、スリット41A,42Aの奥行き方向の底面と接触しないように設計される。それにより、複数のワークWを撓ませずに平行に配置することができる。結果として、このワーク保持治具10に保持された複数のワークWをメッキ浴に浸漬すると、たとえ薄いワークWであっても隣り合うワークW間には無電解メッキ液が流通できる適正な隙間が確保される。それにより、メッキ品質を維持しながら無電解メッキして複数のワークWをバッチ処理することができる。
【0037】
ワークWの上端部のクランプ構造を図5(A)〜図5(C)に示す。図5(A)〜図5(C)では、複数の第1支持板70の各々には第1ホルダー71が固定される。第1ホルダー71は、軸72を支持する。軸72に、第1クランプ部材(可動片)80が揺動可能に支持される。第1クランプ部材80は、軸72に挿通された捩じりコイルスプリング73により第1付勢力が付与される。第1クランプ部材80は、一端部にクランプ端82を有し、他端部側にレバー83を有する。第1ホルダー71は第1垂直面74を含む。この第1垂直面74は、第1ホルダー71に揺動可能に支持される第1クランプ部材80のクランプ端82と対向する領域にて局所的に、第1ホルダー71から下方に延びて設けることができる。第1クランプ部材80は、第1垂直面74に対して接離される。つまり、第1クランプ部材80のクランプ端82と第1垂直面74との間でワークWの上端部がクランプされ、そのクランプ状態は捩じりコイルスプリング73の第1付勢力により維持される。コイルスプリング73の第1付勢力に抗してレバー83に第1外力F1を付与することで、第1クランプ部材80のクランプ端82は第1垂直面74から遠ざかる方向に移動して、ワークWのクランプ状態が解除される。
【0038】
このように、ワークWの上端部を挟む一対の部材の一方を、複数の第1クランプ部材80を揺動自在に支持する第1ホルダー71に設けた第1垂直面74とすることで、部材点数が減少する。さらに、複数の第1クランプ部材80と対向する領域に形成された第1垂直面74に倣ってワークWの垂直姿勢を確保することができる。なお、第1垂直面74は、第1ホルダー71ではなく第1支持板70に設けても良く、この場合でも同様の作用・効果を奏することができる。
【0039】
ワークWの下端部のクランプ構造を図6(A)〜図6(C)に示す。図6(A)〜図6(C)では、複数の第2支持板90の各々には第2ホルダー91が固定される。第2ホルダー91は、軸92を支持する。軸92に、第2クランプ部材(可動片)100が揺動可能に支持される。第2クランプ部材100は、軸92に挿通された捩じりコイルスプリング93により第2付勢力が付与される。第2クランプ部材100は、一端部にクランプ端102を有し、他端部側にレバー103を有する。第2ホルダー91は第2垂直面94を含む。この第2垂直面94は、第2ホルダー91に搖動自在に支持される4つの第2クランプ部材100と対向する領域にて局所的に、第2ホルダー91から上方に延びて設けることができる。第2クランプ部材100は、第2垂直面94に対して接離される。つまり、第2クランプ部材100のクランプ端102と第2垂直面94との間でワークWの下端部がクランプされ、そのクランプ状態は捩じりコイルスプリング104の第2付勢力により維持される。コイルスプリング93の第2付勢力に抗してレバー103に第3外力F3を付与することで、第2クランプ部材100のクランプ端102は第2垂直面94から遠ざかる方向に移動して、ワークWのクランプ状態が解除される。
【0040】
このように、ワークWの下端部を挟む一対の部材の一方を、複数の第2クランプ部材100を揺動可能に支持する第2ホルダー91に設けた第2垂直面94とすることで、部材点数が減少する。さらに、複数の第2クランプ部材100と対向する領域に形成された第2垂直面94に倣ってワークWの垂直姿勢を確保することができる。特に、ワークWの上端部が第1垂直面74に倣い、ワークWの下端部が第2垂直面94に倣うことで、ワークWの垂直姿勢をより確実に確保することができる。それにより、ワークW間には無電解メッキ液が流通できる適正な隙間が確実に確保される。なお、第2垂直面94は、第2ホルダー91ではなく第2支持板90に設けても良く、この場合でも同様の作用・効果を奏することができる。
【0041】
2.ワーク保持治具へのワークの取付方法
本実施形態のワーク保持治具10にワークWを取り付ける方法について、図1及び図5図9を参照して説明する。
2.1.第1工程
図9に示すステップ1では、第1クランプ部材80が開放状態とされる。詳しくは、複数の第1支持板70の一つ、例えば図1においてに上枠30の第4上枠部材34と隣り合う一つの第1支持板70に保持された複数の第1クランプ部材80を、捩じりコイルスプリング73の第1付勢力に抗する第1外力F1(図5(B)参照)を付与して、クランプ可能な状態にする。
【0042】
2.2.第2工程
図9に示すステップ2では、第2クランプ部材100がワークWを受け入れ可能な位置にて開放状態とされる。詳しくは、複数の第2支持板90の一つを、例えば図1においてに下枠40の第4下枠部材44と隣り合う一つの第2支持板90を、図7に示す第2外力F2を付与して、下枠40のスリット41A,42内での下限位置から上昇させる。さらに、その一つの第2支持板90に保持された複数の第2クランプ部材100を、捩じりコイルスプリング93の第2付勢力に抗する第3外力F3(図6(B)参照)を付与して、クランプ可能な状態にする。外力F2,F3の付与タイミングは、同時であっても、いずれか一方が先であっても良い。また、第1工程と第2工程とは、同時であっても、いずれか一方が先であっても良い。
【0043】
2.3.第3工程
図9に示すステップ3では、一枚のワークWを垂直状態にして、図1に示す第1方向Aに水平移動させて搬入口60より治具本体20内に搬入する。この際、ワークWは、例えば搬送先端部と搬送後端部とをそれぞれ把持して、ワーク保持治具10と干渉することなくワークWを治具本体20内に搬入することができる。これにより、ワークWの上端部は、一つの第1支持板70の第1垂直面74と、それに支持されている複数の第1クランプ部材80との間に配置される。また、ワークWの下端部は、一つの第2支持板90の第2垂直面94と、それに支持されている複数の第2クランプ部材100との間に配置される。
【0044】
2.4.第4工程
図9に示すステップ4では、図5に示す第1外力F1と、図6に示す第3外力F3を解除して、複数の第1クランプ部材80及び複数の第2クランプ部材100を用いて、一枚のワークWの上端部と下端部とをクランプする。第4工程終了後の状態を図7に示す。このとき、ワークWの上下端部間の距離をL1とする。
【0045】
2.5.第5工程
図9に示すステップ5では、複数の第2支持板90の一つを、図8に示すように第2外力F2の解除により下降させる。このとき、ワークWの上下端部間の距離は、図7に示す距離L1よりも長い距離L2となる。よって、一枚のワークWにテンションが付与される。ワークWは、テンションが付与されることで撓みが除去される。これにより、一枚のワークWのワーク保持治具10への取付が完了する。このとき、例えば図示しないカウンターがカウントアップされ、初期値N=0がN=1に変更される。
【0046】
図9に示すステップ6では、ワーク保持治具10に全てのワークWが取り付けられたかが判断される。本実施形態ではN=20の時にステップ6の判断がYESとなり、ワーク保持治具10へのワークWの取付が完了する。N<20であれば図9のステップ6の判断はNOとなり、ワーク保持治具10への全てのワークWの取り付けが完了するまで、第1〜第5工程(ステップ1〜5)が繰り返し実施される。このように、本実施形態によれば、ワーク保持治具10に対する第1〜第3外力F1〜F3の付与/解除(第1,2,4,5工程)と、ワークWの第1方向Aへの水平移動(第3工程)とにより、ワーク保持治具10に複数のワークを取り付けることができ、ワーク保持治具10へのワークWの取り付けの自動化が容易となる。
【0047】
2.6.第6工程
本実施形態では、図9に示すステップ6での判断がNOであれば、図9のステップ7に示すように、ワーク保持治具10へ取り付けられる次のワークWの搬入に備えて、ワーク保持治具10を図1に示す第1方向Aと直交する第2方向Bに水平移動させる第6工程をさらに有することができる。こうすると、上述の方法を自動化するにあたり、ワーク保持治具10を第2方向Bに水平移動させるだけで、第1〜第3外力F1〜F3を付与/解除する装置とワークWを搬入する装置とは移動を要することなく、ワーク保持治具10への全てのワークWの取り付けを完了させることができる。よって、ワーク取付装置の構造が簡易となる。
【0048】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。
【0049】
例えば、上述した取付方法では、ワークWを一枚ずつワーク保持治具10に取り付けたが、複数枚のワークWを同時に治具本体20内に搬入して、複数枚のワークWを同時に取り付けても良い。
【0050】
上述した実施形態では、下側の第2支持板90と第2クランプ部材100とを自重により下降させてワークWにテンションを付与したが、本発明はそれに限定されない。上側の第1支持板70と第1クランプ部材80とをバネ等の付勢力により上枠30に対して上昇させてワークWにテンションを付与しても良い。その場合、図7に示す第2外力F2は、第1支持板70に作用される下向き外力となる。
【0051】
また、ワークWに与えられるテンションは、ワークWをワーク保持治具10に取り付ける時に付与しなくても良く、少なくともワーク保持治具10が処理槽に配置される時に付与されればよい。従って、上枠30に対して第1支持板70を昇降自在とした場合、必ずしも第1支持板70をバネ等の付勢力により上枠30に対して上方付勢させなくても良い。
【0052】
また、ワーク保持治具10に縦サイズの異なるワークWを保持可能に形成しても良い。このために、連結部50のうち縦枠部材51〜54は、公知のスライド機構とロック機構とにより、上下方向の長さを調整可能とすることができる。それにより、一対の上部横部材31,32と一対の下部横部材41,42との上下方向距離を可変とすることができる。ワーク保持治具10に横サイズの異なるワークWを保持可能に形成しても良い。この場合、ワーク保持治具10の大きさを最大横サイズのワークWに合わせて製作しておけば、それ以下の横サイズのワークWを保持可能となる。横サイズの小さいワークWは第1,第2クランプ部材80,100の一部を用いてクランプしても良いし、あるいは図1のA方向で両端にある第1,第2クランプ部材80,100をA方向で移動可能としても良い。
【符号の説明】
【0053】
10 ワーク保持治具、20 治具本体、30 上枠、31〜34 第1〜第4上枠部材、31,32 一対の上部横部材、31A,32A スリット、32B,32B フック、40 下枠、41〜44 第1〜第4下枠部材、41,42 一対の下部横部材、41A,42A スリット、50 連結部、51〜54 第1〜第4縦枠部材、55 水平補強部材、56 垂直補強部材、60 搬入口、70 第1支持板(第1支持部材)、71 第1ホルダー、74 第1垂直面、80 第1クランプ部材、90 第2支持板(第2支持部材)、91 第2ホルダー、94 第2垂直面、100 第2クランプ部材、200 昇降部材、A 第1方向(ワーク搬入方向)、B 第2方向(治具移動方向)、F1 第1外力、F2 第2外力、F3 第3外力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9