特許第6793970号(P6793970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6793970漏れ気泡自動検知システムおよび漏れ気泡自動検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793970
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】漏れ気泡自動検知システムおよび漏れ気泡自動検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/38 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   G01M3/38 H
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-44955(P2019-44955)
(22)【出願日】2019年3月12日
(65)【公開番号】特開2019-174455(P2019-174455A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2019年3月15日
(31)【優先権主張番号】特願2018-59902(P2018-59902)
(32)【優先日】2018年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516323220
【氏名又は名称】株式会社コムウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100102864
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】権平 泰造
(72)【発明者】
【氏名】小高 和行
【審査官】 岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−182630(JP,A)
【文献】 特開平07−027655(JP,A)
【文献】 特開2016−205988(JP,A)
【文献】 特開2016−148580(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/071337(WO,A1)
【文献】 登録実用新案第3047893(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象と、前記検査対象を液没する溶液とを格納する容器と、
前記検査対象の直上に配置され、かつ、前記溶液を挟み込む内部空間を有するスクリーンと、
前記スクリーンの前記内部空間を減圧して、前記スクリーンの前記内部空間における前記溶液の水位を、前記容器における前記溶液の水位よりも高く上げる減圧装置と、
前記検査対象を加圧する加圧装置と、
前記スクリーンを撮影して画像を生成する撮影装置と、
撮影した前記画像を解析して前記検査対象に由来する漏れ気泡の有無を判定する判定装置と、
前記減圧装置、前記加圧装置および前記判定装置の動作を自動的に制御する制御装置と
を具備し、
前記減圧装置は、前記溶液が前記減圧装置に侵入しないように前記溶液の水位を保つ
漏れ気泡自動検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の漏れ気泡自動検知システムにおいて、
前記スクリーンの前記内部空間における前記溶液の前記水位を測定する水位計
をさらに具備し、
前記制御装置は、前記水位計の測定結果に応じて、前記水位が所定の範囲に収まるように前記減圧装置を制御する
漏れ気泡自動検知システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の漏れ気泡自動検知システムにおいて、
前記溶液は、界面活性剤を含む水溶液である
漏れ気泡自動検知システム。
【請求項4】
請求項3に記載の漏れ気泡自動検知システムにおいて、
前記界面活性剤は、
エタノール
を含み、
前記溶液における前記エタノールの濃度は、40重量%乃至45重量%の範囲に含まれる
漏れ気泡自動検知システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の漏れ気泡自動検知システムにおいて、
前記スクリーンは、
前記溶液の水面に対して垂直に配置され、かつ、互いに平行に配置された2枚の平面部と、
前記検査対象に由来する前記漏れ気泡を、前記2枚の平面部の間の前記内部空間に向けて誘導する斜面部と
を具備し、
前記2枚の平面部の間の距離は、前記2枚の平面部の間における前記漏れ気泡の上昇を妨げないように、3ミリメートル乃至15ミリメートルの範囲に含まれ
前記撮影装置から見て前記スクリーンの背景となる暗幕
をさらに具備する
漏れ気泡自動検知システム。
【請求項6】
請求項5に記載の漏れ気泡自動検知システムにおいて、
前記斜面部の内側表面の前記溶液に対する親水性を高めるように、前記斜面部の内側表面に塗布されたコーティング剤
をさらに具備する
漏れ気泡自動検知システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の漏れ気泡自動検知システムにおいて、
前記加圧装置は、外部の空気を圧縮した圧縮空気で前記検査対象を加圧する
漏れ気泡自動検知システム。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の漏れ気泡自動検知システムにおいて、
前記加圧装置は、外部の空気より高い気圧を有するヘリウムガスで前記検査対象を加圧する
漏れ気泡自動検知システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の漏れ気泡自動検知システムにおいて、
前記判定装置は、前記撮影装置の動作を制御する
漏れ気泡自動検知システム。
【請求項10】
容器に溶液を張ることと、
検査対象を前記溶液に液没することと、
前記検査対象の直上にスクリーンを配置し、前記スクリーンの内部空間に前記溶液を挟み込むことと、
前記スクリーンの前記内部空間を減圧装置によって減圧して、前記スクリーンの前記内部空間における前記溶液の水位を、前記容器における前記溶液の水位よりも高く上げることと、
前記溶液が前記減圧装置に侵入しないように前記溶液の水位を保つことと、
前記検査対象を加圧装置によって加圧することと、
前記スクリーンを撮影装置によって撮影して画像を生成することと、
撮影した前記画像を解析して前記検査対象に由来する漏れ気泡の有無を判定装置によって判定することと、
前記減圧装置によって減圧することと、前記加圧装置によって加圧することと、前記撮影装置によって撮影することと、前記判定装置によって検出することとを、制御装置によって自動的に制御することと
を具備する
漏れ気泡自動検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は漏れ気泡自動検知システムおよび漏れ気泡自動検知方法に関し、例えば、非破壊検査による漏れ気泡自動検知システムおよび漏れ気泡自動検知方法に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
工業製品の漏れ検査は、この工業製品の内側から外側までを貫通する欠陥の有無を判定するための、重要な非破壊検査である。精度の高い漏れ検査として、分子量が小さいヘリウムガスを利用した検査方法が知られている。しかし、ヘリウムガスをサーチガスとして利用する従来の漏れ検査装置は、その規模が比較的大掛かりであり、その値段が比較的高い。また、大気中に存在するヘリウムガスの濃度は、本来、非常に低い。そのため、従来技術においては、ヘリウムガスが一度漏れ出した検査環境を、次の検査までに元の状態に戻して精度良く保つことは、比較的困難であり、兌換作業に手間がかかり、運用管理が複雑であり、効率が悪い。また、ヘリウムガスの経済的コストは比較的高い。
【0003】
より簡便で、かつ経済的コストが安価な検査方法として、ヘリウムガスの代わりに大気中の空気を用いる漏れ検査も知られている。すなわち、いわゆるタイヤのパンク検査と同様に、検査対象を液体中に沈め、必要に応じて検査対象に圧力を加え、検査対象の内側に存在する空気が気泡として外側に漏れ出るかどうかを検出する。しかし、この検査方法では、液体中の気泡の有無を作業員の目視により判定している。そのため、目視による判定を継続的に行う作業員への負担は重く、作業員によって判定基準が全く同じであるとは限らない。
【0004】
上記に関連して、特許文献1(特開2016−205988号公報)には、リーク試験方法及びその装置に係る記載が開示されている。このリーク試験方法では、試験体を容器内の液体に浸漬し、試験体の内部から出てくる泡で漏れを検出する。このリーク試験方法は、容器の液面上方に超音波検知器を配置し、泡が液面で破裂する際に生じる超音波を超音波検知器で検知することを特徴としている。また、この液体は、水と微泡剤の混合液である。ここで、微泡剤は、液体中にて発生する泡を、水のみからなる液体にて発生する泡よりも微細な泡とするものである。
【0005】
特許文献1(特開2016−205988号公報)のリーク試験方法では、試験体の内部から外部に空気が漏れる穴などの有無を検査するために、液体の中に沈めた試験体から泡が漏れるかどうかを判定する。泡の存在は、この泡が液面で破裂する際に生じる超音波として検出される。ここで、直径が1mm未満の微小な泡の方が、より大きい泡よりも検出しやすいとした上で、微小な泡が発生しやすくなる微泡剤が、試験体を水没させる液体環境に配合されている。この微泡剤としては、メタノールやエタノールの他、イソプロパノール(イソプロピルアルコール)などの低級アルコールや炭素数6以上の高級アルコールであってもよいとされている。ただし、大きな泡を発生させることにより目視による観察を容易に行い得る目的で添加される界面活性剤は、微泡剤としては不適切であるともしている。また、泡をカメラなどで光学的に検出することについては、開示も示唆も無い。
【0006】
また、非特許文献1には、液体中で発生する気泡において、ガス密度がより高い気体の気泡径はより小さいことを示す実験結果が開示されている。
【0007】
また、非特許文献2には、液体の中に沈められた円筒の端部に開いた微小な穴から放出される気体に由来する気泡の直径を求める近似式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016−205988号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】井戸川清、池田光二、福田隆至、諸岡成治、「高圧気泡塔における気泡特性に及ぼす流体物性の影響」、化学工学論文集、1985年、11巻、4号、432〜437頁
【非特許文献2】HASAN N. OGUZ and ANDREA PROSPERETTI、「Dynamics of bubble growth and detachment from a needle」、Journal of Fluid Mechanics、1993年、vol.257、111〜145頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
検査対象に対する漏れ検査を、安価かつ効率よく行う。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0012】
一実施の形態によれば、漏れ気泡自動検知システムは、容器(2)と、スクリーン(3)と、減圧装置(4)と、加圧装置(5)と、撮影装置(6)と、判定装置(7)と、制御装置(8)とを具備する。ここで、容器(2)は、検査対象(9)と、検査対象(9)を液没する溶液(21)とを格納する。スクリーン(3)は、検査対象(9)の直上に配置され、かつ、溶液(21)を挟み込む内部空間(31)を有する。減圧装置(4)は、スクリーン(3)の内部空間(31)を減圧して、スクリーン(3)の内部空間(31)における溶液(21)の水位(33)を、容器(2)における溶液(21)の水位(23)よりも高く上げる。加圧装置(5)は、検査対象(9)を加圧する。撮影装置(6)は、スクリーン(3)を撮影して画像を生成する。判定装置(7)は、撮影した前記画像を解析して検査対象(9)に由来する漏れ気泡の有無を判定する。制御装置(8)は、減圧装置(4)、加圧装置(5)および判定装置(7)の動作を自動的に制御する。
【0013】
一実施の形態によれば、漏れ気泡自動検知方法は、容器(2)に溶液(21)を張ること(S01)と、検査対象(9)を溶液(21)に液没すること(S02)と、検査対象(9)の直上にスクリーン(3)を配置し、スクリーン(3)の内部空間(31)に溶液(21)を挟み込むこと(S03)と、スクリーン(3)の内部空間(31)を減圧装置(4)によって減圧して、スクリーン(3)の内部空間(31)における溶液(21)の水位(33)を、容器(2)における溶液(21)の水位(23)よりも高く上げること(S05)と、検査対象(9)を加圧装置(5)によって加圧すること(S06)と、スクリーン(3)を撮影装置(6)によって撮影して画像を生成すること(S07)と、撮影した画像を解析して検査対象(9)に由来する漏れ気泡の有無を判定すること(S08)と、減圧装置(4)によって減圧すること(S05)、加圧装置(5)によって加圧すること(S06)および判定装置(7)によって検出すること(S08)を、制御装置(8)によって自動的に制御すること(S04)とを具備する。
【発明の効果】
【0014】
前記一実施の形態によれば、漏れ気泡を撮影しやすい領域を作ってそこに漏れ気泡を誘導し、この領域を撮影装置によって撮影し、撮影して得られた画像を判定装置によって解析することによって、漏れ気泡の有無を機械的に、かつ、自動的に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A図1Aは、一実施形態による漏れ気泡自動検知システムの一構成例を示す部分断面図である。
図1B図1Bは、一実施形態による判定装置の一構成例を示すブロック回路図である。
図1C図1Cは、一実施形態による漏れ気泡自動検知システムの別の構成例を示す平面図である。
図1D図1Dは、図1Aに示した漏れ気泡自動検知システムの一変形例を示す部分断面図である。
図2図2は、一実施形態による漏れ気泡自動検知方法の一構成例を示すフローチャートである。
図3図3は、一実施形態による漏れ気泡自動検知システムおよび漏れ気泡自動検知方法で用いる溶液におけるエタノールの濃度と、漏れ気泡が検査対象から発生して離脱するまでの時間との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明による漏れ気泡自動検知システムおよび漏れ気泡自動検知方法を実施するための形態を以下に説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1Aを参照して、本実施形態による漏れ気泡自動検知システム1の構成について説明する。図1Aは、一実施形態による漏れ気泡自動検知システム1の一構成例を示す部分断面図である。
【0018】
(構成要素)
図1Aの漏れ気泡自動検知システム1の構成要素について説明する。図1Aの漏れ気泡自動検知システム1は、容器2と、スクリーン3と、減圧装置4と、気密ホース41と、加圧装置5と、気密ホース51と、撮影装置6と、判定装置7と、制御装置8とを備える。
【0019】
スクリーン3は、内部空間31と、水位計34と、斜面部35と、第1平面部361と、第2平面部362と、接続口37と、枠部38と、桟39とを備える。スクリーン3の斜面部35は、後述するように、その内側で発生した漏れ気泡91を特定の領域に集めるように構成されていることから、ホッパー冶具とも呼ばれる。
【0020】
容器2は、その内側に溶液21を張り、この溶液21の中に検査対象9を液没し、この検査対象9の上方にスクリーン3を配置するように構成されている。したがって、容器2は、溶液21を張っても溶液21が漏れず、かつ、溶液21に接しても劣化しない素材で構成されていることが好ましい。溶液21は、例えば、水に界面活性剤を所定の比率で混合した水溶液である。界面活性剤としては、検査対象9から漏れ気泡91が発生した場合に、漏れ気泡91が検査対象9の表面から素早く剥離するものを選択することが好ましく、例えば、エタノールであっても良い。ただし、溶液21の溶媒および界面活性剤ならびに両者の混合比率は、液没された検査対象9に悪影響を与えないように選択することが好ましい。
【0021】
容器2の形状は、例えば、検査対象9およびスクリーン3を安定的に配置出来るように、上面は開口していて、かつ、底面は平らであることが好ましいが、これはあくまでも一例であって、本実施形態による容器2の構成を限定しない。容器2の底面は、例えば、検査対象9およびスクリーン3の形状に対して相補的な曲面を有していても良い。
【0022】
容器2に張った溶液21の中に、開口している上面から空中の異物などが混入しないように、図示しない蓋を容器2に被せても良い。このとき、蓋には、スクリーン3と干渉しないための穴などが設けられていることが好ましい。
【0023】
スクリーン3は、検査対象9から発生した漏れ気泡91が溶液21の中で浮上する様子を、撮影装置6によって撮影しやすくするように構成されている。スクリーン3は、その少なくとも一部分、特に内側表面が、溶液21に接触している必要がある。また、スクリーン3は、漏れ気泡91の撮影に支障が無い程度に透明であることが好ましい。スクリーン3は、例えば、透明なアクリル素材またはPET(ポリエチレンテレフタレート)素材で構成されていても良い。また、撮影装置6から見て漏れ気泡91を溶液21と区別しやすいように、スクリーン3の傍には、図示しない暗幕を配置しても良い。なお、後述するように、検査対象9の大きさに合わせて複数のスクリーン3を並べて用いても良い。
【0024】
水位計34は、スクリーン3の内部空間31における溶液21の水位33を測定し、上限水位331および下限水位332で規定される範囲に水位33が含まれているかどうかを判定するように構成されている。図1Aの構成例では、水位計34は、撮影装置6とは別のデジタルカメラとして構成されている。ただし、この構成は、あくまでも一例にすぎず、本実施形態を限定しない。別の例として、水位計34は、スクリーン3の内部空間31に配置された浮きであって、内部空間31における溶液21の水面32の移動に応じて移動する機械的な水位計34であっても良い。さらに別の例として、撮影装置6が水位計34としても機能する構成であっても良い。
【0025】
減圧装置4は、スクリーン3の内部空間31における溶液21の水面32の水位33を、容器2における溶液21の水面22の水位23よりも高い位置に上げるために、スクリーン3の内部空間31における気圧を下げるように構成されている。減圧装置4は、例えば、スクリーン3の内部空間31から空気を引き抜く真空ポンプであっても良い。
【0026】
加圧装置5は、検査対象9に欠陥があった場合などに、検査対象9の内部空間に存在する空気などの気体が、この欠陥を介して検査対象9の外部に漏れ出やすくするために、検査対象9の内部空間における気圧を上げるように構成されている。加圧装置5は、例えば、検査対象9の内部空間に圧縮空気を送り込むコンプレッサであっても良い。
【0027】
撮影装置6は、スクリーン3の内部空間31に存在する溶液21の中を漏れ気泡91が浮上する様子を撮影し、その結果として得られる画像データをデジタル信号として判定装置7に向けて送信するように構成されている。撮影装置6は、例えば、デジタルカメラである。
【0028】
判定装置7は、撮影装置6から受信する画像データに漏れ気泡91が写っているかどうかの判定を行うように構成されている。判定装置7は、例えば、所定のプログラムを実行するコンピュータであっても良い。なお、図1Dに示すように、判定装置7はさらに撮影装置6の制御を行ってもよいし、制御装置8に向けて任意の信号を送信してもよい。図1Dは、図1Aに示した漏れ気泡自動検知システム1の一変形例を示す部分断面図である。
【0029】
図1Bを参照して、本実施形態による判定装置7の構成要素について説明する。図1Bは、一実施形態による判定装置7の一構成例を示すブロック図である。図1Bの判定装置7は、バス71と、入出力インターフェース72と、演算装置73と、記憶装置74と、外部記憶装置75とを備えている。記憶装置74は、プログラム741と、データ742とを格納している。
【0030】
制御装置8は、減圧装置4と、加圧装置5と、撮影装置6と、判定装置7と、水位計34とを自動的に制御するように構成されている。制御装置8は、例えば、所定のプログラムを実行するコンピュータであっても良い。なお、制御装置8は、判定装置7と同様に構成されていても良い。また、制御装置8および判定装置7は、同一のコンピュータが所定のプログラムを実行して提供する2つの機能であっても良い。なお、図1Dに示すように、撮影装置6の制御は制御装置8ではなく判定装置7によって行われてもよい。図1Dの構成は、図1Aの構成と比較して、撮影装置6の制御を行う主体を制御装置8から判定装置7に変更することで得られる。図1Dのその他の構成は、図1Aの場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0031】
(接続関係)
図1Aの漏れ気泡自動検知システム1の構成要素の位置関係および接続関係について説明する。
【0032】
まず、容器2の内側に、溶液21が張ってある。溶液21の中には、検査対象9の全体が液没している。スクリーン3は、溶液21の水面22に対して直交する垂直方向に上から見た場合に、すなわち漏れ気泡91が溶液21の中で重力とは反対の方向に浮上する方向から見た場合に、検査対象9の全体を覆うように配置されている。また、スクリーン3は、同様に上から見た場合に、容器2の内側に配置されている。その一方で、水面22に対して水平な方向に横から見た場合に、スクリーン3のうち、斜面部35を含む下部は、溶液21に入っており、残る上部は、溶液21の水面22から出ている。
【0033】
スクリーン3のうち、水面22から出ている部分は、主に、第1平面部361と、第2平面部362と、枠部38とで構成されている。図1Aに示した構成例では、第1平面部361および第2平面部362は、同様の形状を有しており、かつ、互いに平行に配置されている。また、枠部38は、第1平面部361および第2平面部362の間に挟み込まれて、かつ、第1平面部361および第2平面部362の淵に沿うように、配置されている。ここで、第1平面部361および第2平面部362は、枠部38を介して、水密に一体化されていることが好ましい。また、第1平面部361および第2平面部362の間には、両者が互いに接近する方向に変形しないように、桟39が配置されていても良い。
【0034】
言い換えれば、第1平面部361および第2平面部362の間に挟み込まれている内部空間31は、第1平面部361、第2平面部362および枠部38によって規定され、この内部空間31の内側に存在する溶液21は、接続口37以外のどこからもスクリーン3の外部に漏れ出ないことが好ましい。なお、接続口37は、図1Aの構成例では第2平面部362に設けられているが、第1平面部361に設けられていても良いし、枠部38に設けられていても良い。
【0035】
スクリーン3の接続口37は、気密ホース41を介して、溶液21の外に配置された減圧装置4に接続されている。言い換えれば、減圧装置4は、気密ホース41および接続口37を介して、スクリーン3の内部空間31に存在する空気を抜き出すことが出来る。
【0036】
減圧装置4は、制御装置8に電気的に接続されていることが好ましい。言い換えれば、減圧装置4は、制御装置8から電気的に送信される制御信号に応じて動作できるように構成されている。また、減圧装置4は、図示しない電源から電力を供給される。一例として、制御装置8は、減圧装置4およびその電源の間の電力供給を導通または遮断することで減圧装置4の動作を制御しても良い。
【0037】
加圧装置5は、溶液21の外に配置されており、気密ホース51を介して検査対象9の内部空間に接続されている。言い換えれば、加圧装置5は、気密ホース51を介して、検査対象9の内部空間に向けて圧縮空気を送り出すことが出来る。気密ホース51は、加圧装置5と、スクリーン3の直下に配置された検査対象9とを繋ぐために、容器2およびスクリーン3の間の隙間を通っても良い。
【0038】
加圧装置5は、制御装置8に電気的に接続されていることが好ましい。言い換えれば、加圧装置5は、制御装置8から電気的に送信される制御信号に応じて動作できるように構成されている。また、加圧装置5は、図示しない電源から電力を供給される。一例として、制御装置8は、加圧装置5およびその電源の間の電力供給を導通または遮断することで減圧装置4の動作を制御しても良い。
【0039】
撮影装置6は、溶液21の外に配置されている。撮影装置6は、内部空間31の溶液21の中を浮上する漏れ気泡91をより確実に撮影できるように、内部空間31の厚さが、撮影装置6の被写界深度の範囲内に収まるような位置に配置されていることが好ましい。被写界深度とは、焦点が合っているように見える被写体と、撮影装置6との距離の範囲である。言い換えれば、第1平面部361および第2平面部362の間の距離は、撮影装置6の被写界深度の範囲内に収まっていることが好ましい。
【0040】
なお、一般的に、光学系の性能のうち、被写界深度の大きさと、所望する画質の高さとは、トレードオフの関係にある。言い換えれば、被写界深度の範囲を広げれば、漏れ気泡91を検出するという観点における画質は低くなり、所望する画質を高くすれば被写界深度の範囲が狭くなる。本実施形態では、撮影装置6の画質を高めるために、第1平面部361および第2平面部362の間の距離を短くする、すなわちスクリーン3の内部空間31の厚さを薄くする、という選択肢を採用している。具体的には、本実施形態では、内部空間31の厚さを5ミリメートルとしているが、例えば、3乃至15ミリメートルの範囲内に含まれていても良い。ただし、この数値はあくまでも一例にすぎず、本実施形態による漏れ気泡自動検知システム1の構成を限定しない。撮影装置6における所望の画質および被写界深度は、検査対象9に生じ得る欠陥の大きさ、溶液21に含まれる界面活性剤の種類および濃度、などに応じて適宜に選択することが好ましい。そして、内部空間31の厚さの上限は、被写界深度に応じて決定しても良い。なお、内部空間31の厚さの下限は、減圧装置4によって水位33を所望の高さまで上げた際に生じるスクリーン3の変形と、スクリーン3の剛性とに応じて決定しても良い。言い換えれば、第1平面部361および第2平面部362が互いに接近する方向に変形した結果、漏れ気泡91の上昇を妨げることがないように、内部空間31の厚さの下限を設定しても良い。あるいは、第1平面部361および第2平面部362の変形を防ぐ目的で、両者の間に桟39を配置しても良い。
【0041】
撮影装置6は、制御装置8に電気的に接続されている。撮影装置6は、制御装置8から送信される制御信号に応じてスクリーン3の撮影を行い、その撮影の結果として得られる画像データを制御装置8に向けて送信する。
【0042】
本実施形態による水位計34は、撮影装置6と同様に、溶液21の外に配置されており、かつ、内部空間31の溶液21の水面32を確実に撮影できるような位置に配置されていることが好ましい。より詳細には、水面32があるべき範囲、すなわち上限水位331および下限水位332の間の領域を撮影出来るような位置に、水位計34が配置されていることが好ましい。
【0043】
水位計34は、制御装置8に電気的に接続されている。水位計34は、制御装置8から送信される制御信号に応じて水面32の撮影を行い、その撮影の結果として得られる画像データを制御装置8に向けて送信する。
【0044】
判定装置7は、溶液21の外に配置されている。図1Bを参照して、判定装置7の構成要素の接続関係について説明する。バス71は、入出力インターフェース72、演算装置73、記憶装置74および外部記憶装置75のそれぞれに接続されている。言い換えれば、入出力インターフェース72、演算装置73、記憶装置74および外部記憶装置75のそれぞれは、バス71を介して相互に電気的な通信を行うことが出来る。
【0045】
入出力インターフェース72は、撮影装置6に接続されて、撮影装置6から画像データを受信しても良い。また、入出力インターフェース72は、制御装置8に接続されて、制御装置8から制御信号を受信しても良い。
【0046】
記憶装置74は、プログラム741と、データ742とを格納していても良い。ここで、演算装置73は、バス71を介して記憶装置74からプログラム741およびデータ742を読み出し、プログラム741を実行し、プログラム741の実行中にデータ742の内容を用いても良いし、データ742を記憶装置74に書き込んでも良い。
【0047】
その他、外部記憶装置75は、外部の記録媒体751に接続されても良い。外部記憶装置75は、接続された記録媒体751から他のプログラムやデータを読み込んで記憶装置74に格納しても良い。
【0048】
制御装置8は、溶液21の外に配置されている。制御装置8は、判定装置7がプログラム741を実行することによって得られる機能の一つとして構成されていても良いし、判定装置7とは別のコンピュータとして構成されていても良い。いずれの場合も、制御装置8のより詳細な構成は、図1Bに示した判定装置7の構成例と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。ただし、制御装置8は、入出力インターフェース72またはこれに相当する別の装置を介して、減圧装置4、加圧装置5、撮影装置6、判定装置7および水位計34のうち、一部または全てに接続されている。
【0049】
なお、前述のとおり、検査対象9の大きさに合わせて複数のスクリーン3を並べて用いても良い。このことについて、図1Cを参照して説明する。図1Cは、一実施形態による漏れ気泡自動検知システム1の別の構成例を示す平面図である。
【0050】
図1Cでは、検査対象9の長手方向に、第1スクリーン3A〜第3スクリーン3Cの、合計3基のスクリーン3を並べて用いている。第1スクリーン3A〜第3スクリーン3Cのそれぞれは、図1Aのスクリーン3の場合と同様に、斜面部35A〜35Cと、第1平面部361A〜361Cと、第2平面部362A〜362Cと、枠部38A〜38Cとを備えている。ここで、スクリーン3の総数は、あくまで一例にすぎず、本実施形態を限定しない。以降、第1スクリーン3A〜第3スクリーン3Cを区別しない場合には、単に「スクリーン3」と記す。
【0051】
第1スクリーン3A〜第3スクリーン3Cのそれぞれは、図1Aに示したスクリーン3と同様に構成されているので、さらなる詳細な説明を省略する。また、図1Cに示した漏れ気泡自動検知システム1は、第1スクリーン3A〜第3スクリーン3Cの他に、図示しない3台の水位計34と、図示しない3台の減圧装置4と、3台の撮影装置6A〜6Cとを備えていることが好ましい。以降、第1撮影装置6A〜第3撮影装置6Cを区別しない場合には、単に「撮影装置6」と記す。
【0052】
言い換えれば、図1Cに示した漏れ気泡自動検知システム1では、スクリーン3と同じ数の水位計34、減圧装置4および撮影装置6を用いる。残る加圧装置5、判定装置7および制御装置8については、スクリーン3と同じ数に増やしても良いし、可能であれば単独で動作しても良い。
【0053】
第1スクリーン3A〜第3スクリーン3Cの位置関係について説明する。検査対象9から発生する漏れ気泡91を、いずれかのスクリーン3の第1平面部361および第2平面部362に挟まれた内部空間31まで確実に誘導できるように、隣接する2つのスクリーン3の斜面部35は密着していることが好ましい。
【0054】
第1スクリーン3A〜第3スクリーン3Cおよび第1撮影装置6A〜第3撮影装置6Cの位置関係について説明する。第1撮影装置6A〜第3撮影装置6Cは、第1スクリーン3A〜第3スクリーン3Cを、それぞれ撮影する。したがって、図1Cの構成例では、図1Aの場合と比較して、単純計算で3倍の範囲を撮影することが可能となる。なお、各スクリーン3における幅方向の寸法は、各撮影装置6の焦点距離、画角、などの諸パラメータに基づいて適宜に設定することが好ましい。
【0055】
(動作)
図2を参照して、本実施形態による漏れ気泡自動検知システム1の動作、すなわち本実施形態による漏れ気泡自動検知方法について説明する。図2は、一実施形態による漏れ気泡自動検知方法の一構成例を示すフローチャートである。なお、本実施形態による漏れ気泡自動検知方法は、スクリーン3の総数に関係無く同様であるので、以降はスクリーン3の総数が1である場合について説明する。
【0056】
図2のフローチャートは、第0ステップS00〜第11ステップS11の合計12の工程を含んでいる。図2のフローチャートは、第0ステップS00から開始する。第0ステップS00の次には、第1ステップS01が実行される。
【0057】
第1ステップS01において、容器2に溶液21を張る。ここで、図3を参照して、溶液21に含まれる界面活性剤の濃度と、検査対象9から発生した漏れ気泡91が検査対象9の表面から剥離するまでの時間との関係について説明する。図3は、一実施形態による漏れ気泡自動検知システム1および漏れ気泡自動検知方法で用いる溶液21におけるエタノールの濃度と、漏れ気泡91が検査対象9から発生して離脱するまでの時間との関係の一例を示すグラフである。
【0058】
図3の例では、溶液21がエタノールを含まない場合には剥離に60秒以上の時間がかかったが、40重量%のエタノールを混合した溶液21の場合には10秒以内に剥離が実現した。このことは、本実施形態による漏れ気泡自動検知システム1および漏れ気泡自動検知方法の効率が、従来の方法と比較して、大幅に改善されていることを示している。なお、溶液21が含む界面活性剤の種類によっては、その濃度が1%以下であっても、エタノールを含む場合と同等またはそれ以上に速いスピードでの剥離を実現できる場合もある。
【0059】
また、図3の例では、50重量%のエタノールを溶液21に混合しても、剥離までの時間はさほど短縮していない。このことは、エタノールの濃度を40重量%より多く増やしても、さらなる効率の改善につながるとは限らないことを示している。
【0060】
そこで、本実施形態では、溶液21におけるエタノールの濃度を、40重量%程度に設定する。ただし、この値は、あくまでも一例であって、本実施形態を限定しない。界面活性剤としてのエタノールの、溶液21に対する濃度が、例えば40乃至45重量%の範囲内であっても良い。第1ステップS01の次には、第2ステップS02が実行される。
【0061】
第2ステップS02において、検査対象9を、容器2の中の溶液21に、液没する。なお、検査対象9は、その全体が、溶液21の水面22より下に位置していることが好ましい。また、検査対象9は、予め、気密ホース51を介して加圧装置5に接続されていることが好ましい。第2ステップS02の次には、第3ステップS03が実行される。
【0062】
第3ステップS03において、容器2の中で溶液21に液没している検査対象9の直上に、スクリーン3を配置する。このとき、スクリーン3の下部、特に斜面部35は、容器2の中で溶液21に液没することが好ましい。その一方で、スクリーン3の上部、特に平面部361および平面部362の、少なくとも撮影装置6によって撮影される部分は、容器2の中の溶液21の水面22から上に出ていることが好ましい。なお、この時点においては、スクリーン3の内部空間31における溶液21の水面32の水位33は、容器2における溶液21の水面22の水位23と同じであっても良い。第3ステップS03の次には、第4ステップS04が実行される。
【0063】
第4ステップS04において、制御装置8が、減圧装置4、加圧装置5、撮影装置6および判定装置7を制御する。漏れ気泡自動検知システム1のこれ以降の動作は、制御装置8の制御下で自動的に行われることが好ましい。言い換えれば、第1ステップS01〜第3ステップS03の各工程は、作業員の手作業によって行われても良い。第4ステップS04の次には、第5ステップS05が実行される。
【0064】
第5ステップS05において、減圧装置4がスクリーン3の内部空間31を減圧し、スクリーン3の内部空間31における溶液21の水位33を、上げる。このとき、水位33は、上限水位331より低く、かつ、下限水位332より高いことが好ましい。上限水位331は、溶液21が、接続口37および気密ホース41を介して減圧装置4に浸入しない目安として、適宜な余裕をもって設けられていることが好ましい。下限水位332は、水面32が、撮影装置6による漏れ気泡91の撮影と、判定装置7による画像データの画像処理および判定との妨げにならない目安として、適宜な余裕を持って設けられていることが好ましい。言い換えれば、下限水位332は、撮影装置6が漏れ気泡91を撮影する範囲の、上方向の境界よりも上にあることが好ましい。ただし、上述のように、撮影装置6が水位計34を兼任する場合には、反対に、上限水位331および下限水位332の両方が、撮影装置6の撮影範囲に含まれていても良い。いずれの場合も、水位計34は水面32を測定し、この測定の結果に応じて制御装置8が減圧装置4を制御して、水位33が上限水位331および下限水位332の間に保たれることが好ましい。第5ステップS05の次には、第6ステップS06が実行される。
【0065】
本装置の1つの特徴は、スクリーン3の内部を通過する漏れ気泡91を、スクリーン3の外部に配置された撮影装置6で撮影できることにある。このことから、下記のようなメリットが得られる。
1)溶液21に含まれる汚れ等による撮影への悪影響が少なく、漏れ気泡91を高い精度で撮影するための撮影パラメータ(焦点距離や、撮影装置6から漏れ気泡91までの距離など)における選択自由度が高い。
2)撮影対象である漏れ気泡91はスクリーン3の内部を浮上するので、スクリーン3の内部で浮遊する浮遊物との区別が容易である。
3)撮影する漏れ気泡91は減圧上昇する間にその見かけが大きくなる傾向があるので、見落としが少ない。
4)複数の検査対象9を連続的に測定する際に、前の測定で発生した漏れ気泡91が水面32に残ったとしても、次の測定に影響しない。
【0066】
第6ステップS06において、加圧装置5が検査対象9を加圧する。すなわち、加圧装置5が圧縮空気を生成し、気密ホース51を介してこの圧縮空気を検査対象9の内部空間に送り込む。その結果、もし内部空間から外部まで達する欠陥が検査対象9にあれば、検査対象9の内部空間の空気が漏れ気泡91となって検査対象9の表面に発生する。検査対象9の表面に発生した漏れ気泡91は、周囲の溶液21の、特に界面活性剤の働きによって、検査対象9の表面から早急に剥離する。検査対象9の表面から剥離した漏れ気泡91は、溶液21の中で垂直方向への浮上を開始する。浮上する漏れ気泡91の直上に斜面部35が存在する場合は、漏れ気泡91は斜面部35の表面に沿って斜めに浮上し、2枚の平面部361および362の間に挟まれた内部空間31に誘導されて垂直方向への浮上を再開する。
【0067】
ここで、もし漏れ気泡91が斜面部35に付着すると、漏れ気泡91の上昇が妨げられて、誤判定の原因となる可能性が考えられる。漏れ気泡91が斜面部35に付着しないために、斜面部35の内側表面の重力方向に対する角度を適切な値に設定することが好ましい。また、斜面部35を構成する素材として、漏れ気泡91が付着しにくい材料を選択することが好ましい。ここで、斜面部35の表面から漏れ気泡91が剥離しやすいということは、漏れ気泡91の周囲に存在する溶液21によって斜面部35の表面が濡れやすいということである。したがって、斜面部35を構成する素材として親水性が高い材料を選択することが好ましい。また、斜面部35の表面における漏れ気泡91の剥離しやすさおよび溶液21による濡れやすさは、溶液21に含まれる界面活性剤の種類および濃度にも影響される。さらに、斜面部35の内側表面には、その親水性をより高めるために、適切なコーティング剤を塗布してもよい。斜面部35の設計は、言い換えればホッパー冶具の設計は、これらの条件の組み合わせを総合的に勘案して行われることが好ましい。
【0068】
なお、検査対象9が、欠陥を有さない良品であれば、漏れ気泡91は当然に発生しない。第6ステップS06の次には、第7ステップS07が実行される。
【0069】
第7ステップS07において、撮影装置6がスクリーン3を撮影する。この撮影に係る諸パラメータは、漏れ気泡91が発生し得る頻度、発生し得る漏れ気泡91の大きさ、漏れ気泡91が溶液21の中を浮上する速度、などに応じて適宜に調整されることが好ましい。なお、適宜に調整された諸パラメータは、例えば、制御装置8が生成する制御信号として撮影装置6に送信されても良いし、作業者が手作業で撮影装置6に反映させても良い。もしその必要があれば、所望のパラメータで撮影可能な別の撮影装置6と交換しても良い。
【0070】
撮影装置6は、一度に複数回の撮影を連続的に行って、複数の画像データを生成しても良い。言い換えれば、撮影装置6は、いわゆる連写を行っても良い。一度に連写して生成する画像データの枚数、連写する周期、などの諸パラメータは、例えば、制御装置8を介して事前に設定することも可能である。
【0071】
また、撮影装置6は、連続撮影によって生成された複数の画像データを、順次、判定装置7に向けて送信しても良い。この場合、判定装置7は、図示しない表示装置に、受信した複数の画像でデータを連続的に表示しても良い。言い換えれば、撮影装置6から見たスクリーン3の様子を、最低限のタイムラグで表示することによって、いわゆるライブ表示が可能となる。
【0072】
なお、撮影に係る諸パラメータには、例えば、焦点距離、シャッタースピード、絞り、などが含まれることが好ましい。これらの諸パラメータは、本実施形態による漏れ気泡自動検知システム1の性能に対して、以下のような影響を及ぼすと考えられる。すなわち、絞りを広く調整すれば、漏れ気泡91を検出するという観点における画質は上がるが、被写界深度が狭くなる。反対に、絞りを狭く調整すれば、被写界深度は広くなるが、画質が下がる。シャッタースピードを短く調整すれば、画質は上がるが、1枚の画像の中で漏れ気泡91が移動する長さは短くなる。反対に、シャッタースピードを長く調整すれば、1枚の画像の中で漏れ気泡91が移動する長さは長くなるが、画質は下がる。焦点距離を短く調整すれば、1枚の画像に写るスクリーン3の範囲が広くなるが、画質は下がる。反対に、焦点距離を長く調整すれば、画質は上がるが、1枚の画像に写るスクリーン3の範囲が狭くなる。
【0073】
撮影によって得られた画像データは、判定装置7に向けて送信される。第7ステップS07の次には、第8ステップS08が実行される。
【0074】
第8ステップS08において、判定装置7が画像データを解析して、検査対象9に由来する漏れ気泡91の有無を判定する。ここで、判定装置7は、まず、撮影装置6から受信した画像データに、例えば、以下の画像処理を施す。
【0075】
まず、もし画像データにカラー情報が含まれていれば、画像データにいわゆる「グレースケール処理」を施す。すなわち、画像データを構成するピクセルのそれぞれに対応する情報を、どの程度明るいかを示す輝度のデータに変換する。なお、撮影装置6にその設定があれば撮影時にグレースケールの画像データを生成しても良い。
【0076】
次に、画像データにいわゆる「2値化」処理を施す。すなわち、輝度に所望の閾値を設定し、その画像データを構成するピクセルのそれぞれに対応する情報を、輝度がその閾値未満であれば「黒」を示すデータ、反対に閾値以上であれば「白」を示すデータに、変換する。漏れ気泡91を表すピクセルが「白」、その他のピクセルが「黒」に変換されるように、閾値を適宜に設定することが好ましい。
【0077】
なお、以上の処理に関連して、撮影装置6から見たスクリーン3の背景として前述の暗幕を用いることで、画像データ上で漏れ気泡91をさらに識別しやすくすることが可能となる。
【0078】
こうして得られた画像データに、さらに、フィルタ処理を施す。すなわち、漏れ気泡91と、漏れ気泡91以外の異物などのノイズとを画像データ上で区別するために、所望の閾値を設定し、この閾値以上のピクセル数を隣接して占める「白」データを漏れ気泡91と認定し、この閾値未満のピクセル数しか隣接して占めない「白」データについては不要なノイズとして扱う。
【0079】
なお、漏れ気泡91およびノイズを区別するために、互いに隣接する「白」データが占めるピクセル数のみならず、その形状にも注目しても良い。例えば、さらに別の閾値を用いて、縦横のピクセル数がこの閾値に等しい正方形を、画像データの任意の位置から切り出し、この切り出した正方形の中で、上述したフィルタ処理を施しても良い。
【0080】
さらに、連写によって生成された複数の画像データを、時系列の順番で比較することで、漏れ気泡91の有無を判定する精度をより高めることが可能となる。例えば、任意の画像データを、その直前に撮影された画像データ、またはその直後に撮影された画像データ、もしくはこれら両方の画像データ、と比較することで、連写中に混入したノイズと、本物の漏れ気泡91とを区別できる場合がある。
【0081】
撮影した画像データから漏れ気泡91が検出されたか否かを判定した結果は、例えば、周囲の作業員に分かりやすく出力されても良い。例えば、図示しない表示装置によって、漏れ気泡91の有無を区別する2種類の画像を表示しても良い。また、図示しないスピーカによって、漏れ気泡91の有無を区別する2種類の音声を流しても良い。
【0082】
判定装置7は、図1Dに示すように、判定が終了したことを知らせる信号を生成して制御装置8に向けて送信してもよい。第8ステップS08の次には、第9ステップS09が実行される。
【0083】
第9ステップS09において、スクリーン3の内部空間31の減圧状態を開放する。このとき、制御装置8が減圧装置4の減圧動作を停止してもよい。減圧状態が開放されることによって、スクリーン3の内部空間31における水位33が元に戻る。第9ステップS09の次には、第10ステップS10が実行される。
【0084】
第10ステップS10において、スクリーン3を上昇させる。こうすることによって、検査対象9を容器2から出すことができるようになる。この動作は、作業者が手作業で行ってもよいし、適切な機構によって自動的に行われてもよい。第10ステップS10の次には、第11ステップS11が実行される。
【0085】
第11ステップS11において、本実施形態による漏れ気泡自動検知システム1の一連の動作、すなわち本実施形態による漏れ気泡自動検知方法の各工程が終了する。ここで、検査対象9は容器2から出され、気密ホース51との接続が解かれて、もし漏れ気泡91が出ていたなら不良品として扱われ、もし反対に漏れ気泡91が出ていなかったなら、少なくともこの基準においては良品として扱われることが好ましい。その後、別の検査対象9に対して同様に漏れ検査を行う場合は、第1ステップS01を省略して、第2ステップS02から開始しても良い。
【0086】
(第2実施形態)
本実施形態では、上述の第1実施形態に以下の変更を加える。すなわち、加圧装置5が外部の空気よりも高い気圧を有するヘリウムガスを検査対象9の内部空間に送り込むことによって検査対象9を加圧する。加圧装置5は、例えば、ヘリウムガスのボンベを備えていてもよい。本実施形態による漏れ気泡自動検知システム1および漏れ気泡自動検知方法のその他の構成は、上述の第1実施形態と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0087】
圧縮空気の代わりにヘリウムガスを用いることで、以下のような優れた作用効果を得られる。すなわち、ヘリウムガスを用いると、圧縮空気を用いた場合と比較して、検査の精度が向上する。言い換えれば、より微細な漏れを検知することが可能となる。その主な理由としては、空気の主成分である窒素分子(N)や酸素分子(O)よりも、ヘリウムガスを構成するヘリウム分子(He)の方が小さいことが挙げられる。つまり、検査対象9に存在する欠陥が、圧縮空気が通過できないほど微細であっても、同じ欠陥をヘリウムガスなら通過できる場合がある。その結果、本実施形態によれば、ヘリウムガスをサーチガスとして用いる従来の漏れ検査に匹敵する精度が実現されることを、発明者は実験により確認した。
【0088】
なお、ヘリウム分子は窒素分子や酸素分子よりも小さいが、溶液21の中の漏れ気泡91となったヘリウムガスは、第1実施形態の場合と同様に、その存在が判定装置7によって検知され得る。すなわち、検査対象9の欠陥を通過したヘリウムガスは、漏れ気泡91となって検査対象9の表面から剥離し、溶液21の中で浮上する。このとき、ヘリウムガスに由来する漏れ気泡91は、第1実施形態で圧縮空気を用いた場合と同程度の大きさに膨張する。したがって、ヘリウムガスに由来する漏れ気泡91をスクリーン3の内部空間31で撮影装置6によって撮影しても、第1実施形態の場合と同様に、判定装置7によってその存在が判定される。特に、空気が通過できない大きさの欠陥を通過したヘリウムガスの漏れ気泡91は、空気に由来する漏れ気泡91よりも大きくなる傾向があることを、発明者は実験によって観察した。
【0089】
このことに関連して、非特許文献1には、液体中で発生する気泡において、ガス密度がより高い気体の気泡径はより小さいことを示す実験結果が開示されている。また、非特許文献2には、以下の近似式(1)が開示されている。
=(3σa/2ρg)^(1/3) …(1)
この近似式(1)は、液体の中に沈められた円筒の端部に開いた微小な穴から放出される気体に由来する気泡の半径Rを表す。ここで、σは液体の表面張力係数を表し、aは円筒の内寸半径を表し、ρは液体の密度を表し、gは重力加速度を表す。
【0090】
このように、本実施形態におけるヘリウムガスの漏れ気泡91も、第1実施形態と同様の画像処理を用いて検出することができる。
【0091】
また、ヘリウムガスの漏れ気泡91も、界面活性剤の働きによって、検査対象9の表面からより早く剥離する。この効果は、第1実施形態の場合と同様である。
【0092】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、前記実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 漏れ気泡自動検知システム
2 容器
21 溶液
22 水面
23 水位
3、3A〜3C スクリーン
31 内部空間
32 水面
33 水位
331 上限水位
332 下限水位
34 水位計
35、35A〜35C 斜面部
361、361A〜361C 平面部
362、362A〜362C 平面部
37 接続口
38、38A〜38C 枠部
39 桟
4 減圧装置
41気密ホース
5 加圧装置
51 気密ホース
6、6A〜6C 撮影装置
7 判定装置
71 バス
72 入出力インターフェース
73 演算装置
74 記憶装置
741 プログラム
742 データ
75 外部記憶装置
751 記録媒体
8 制御装置
9 検査対象
91 漏れ気泡
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3