特許第6793979号(P6793979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6793979
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】陶器製品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/83 20060101AFI20201119BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20201119BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20201119BHJP
   C09D 5/03 20060101ALI20201119BHJP
   C09D 127/12 20060101ALI20201119BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20201119BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   C04B41/83 B
   B05D7/00 C
   B05D7/24 301A
   C09D5/03
   C09D127/12
   C09D163/00
   C09D167/00
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-159504(P2019-159504)
(22)【出願日】2019年9月2日
【審査請求日】2020年2月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596123176
【氏名又は名称】合資会社ホ−ハン製陶所
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 隆幸
【審査官】 谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−156387(JP,A)
【文献】 特開2003−342057(JP,A)
【文献】 特開昭54−047741(JP,A)
【文献】 特開平08−157748(JP,A)
【文献】 特開昭59−016799(JP,A)
【文献】 特開平11−217282(JP,A)
【文献】 特開昭53−137222(JP,A)
【文献】 特開昭63−143977(JP,A)
【文献】 特開2017−143966(JP,A)
【文献】 特開昭50−115206(JP,A)
【文献】 鈴木陽子,外2名,瓦用原料の調査研究−砂利排土の窯業基礎性状−,愛知県産業技術研究所 研究報告2010,2010年,p.56-59
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/00−41/91
C04B 33/00−33/36
B05D 7/00
B05D 7/24
C09D 5/03
C09D 127/12
C09D 163/00
C09D 167/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土質材を固めて成形してなる成形品の表面が、合成樹脂の塗膜で被覆された陶器製品であって、
前記合成樹脂が、ポリエステル系樹脂あるいはエポキシ系樹脂もしくはフッ素樹脂中に染料あるいは顔料を添加したものであり、前記塗膜が、0.01mm以上0.5mm以下の厚さを有するものであるとともに、
前記粘土質材が、60〜80質量%のSiOと10〜30質量%のAlとを配合し、かつ、0.3〜5.0質量%のFeを含有するものであり、かつ、
前記成形品が、前記粘土質材を固めて乾燥しただけの原型であることを特徴とする陶器製品。
【請求項2】
粘土質材を固めて成形してなる成形品の表面が、合成樹脂の塗膜で被覆された陶器製品の製造方法であって、
60〜80質量%のSiOと10〜30質量%のAlとを配合し、かつ、0.3〜5.0質量%のFeを含有する粘土質材を固めて100℃未満の温度で乾燥することのみによって原型を作成した後に、
その原型の表面に、ポリエステル系樹脂あるいはエポキシ系樹脂もしくはフッ素樹脂中に染料あるいは顔料を添加した合成樹脂を、最終的な塗膜の厚みが0.01mm以上0.5mm以下の厚さとなるように粉体塗装することを特徴とする陶器製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陶器製品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植木鉢、プランター、花瓶、壺、食器、瓦、タイル、衛生陶器等の用途に陶器製品が広く用いられている。そのような陶器製品は、特許文献1の如く、粘土の成形品を700℃〜900℃で素焼きして素焼き素地を作製した後に、その素焼き素地の表面に釉薬を塗布し、しかる後、1,000℃〜1,300℃で本焼き(締め焼き)することによって製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6164595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の如き従来の陶器製品は、製造する際に非常に高温で加熱することが必要であるため、環境への負荷が大きい、という不具合がある。また、従来の陶器製品は、釉薬のカラーを安定させることが難しかった。
【0005】
本発明の目的は、上記従来の陶器製品が有する問題点を解消し、製造持に高温で加熱することが不要で環境への負荷が小さい上、カラーバリエーションが豊富で実用的な陶器製品、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、粘土質材を固めて成形してなる成形品の表面が、合成樹脂の塗膜で被覆された陶器製品であって、前記合成樹脂が、ポリエステル系樹脂あるいはエポキシ系樹脂もしくはフッ素樹脂中に染料あるいは顔料を添加したものであり、前記塗膜が、0.01mm以上0.5mm以下の厚さを有するものであるとともに、前記粘土質材が、60〜80質量%のSiOと10〜30質量%のAlとを配合し、かつ、0.3〜5.0質量%のFeを含有するものであり、かつ、前記成形品が、前記粘土質材を固めて乾燥しただけの原型であることを特徴とするものである。
また、請求項2に記載された発明は、粘土質材を固めて成形してなる成形品の表面が、合成樹脂の塗膜で被覆された陶器製品の製造方法であって、60〜80質量%のSiOと10〜30質量%のAlとを配合し、かつ、0.3〜5.0質量%のFeを含有する粘土質材を固めて100℃未満の温度で乾燥することのみによって原型を作成した後に、その原型の表面に、ポリエステル系樹脂あるいはエポキシ系樹脂もしくはフッ素樹脂中に染料あるいは顔料を添加した合成樹脂を、最終的な塗膜の厚みが0.01mm以上0.5mm以下の厚さとなるように粉体塗装することを特徴とする陶器製品の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の陶器製品は、製造時に2度に亘って(すなわち、素焼きと本焼き)500℃以上の高温で加熱することが不要で環境への負荷が小さい上、カラーバリエーションが豊富である。
また、請求項1に記載の陶器製品は、廃棄する際に、合成樹脂の塗膜をカットして引き剥がすだけで内部の成形品を容易に土に戻すことが可能であるため、廃棄時の環境への負荷がきわめて小さい。
【0014】
請求項1に記載の陶器製品は、合成樹脂膜がポリエステル系樹脂あるいはエポキシ系樹脂もしくはフッ素樹脂からなるものであり、強度(耐衝撃強度)が高いので、長期間に亘って使用しても損傷しにくい。
【0015】
請求項1に記載の陶器製品は、合成樹脂膜の厚みが所定の数値範囲内に調整されているので、十分な耐衝撃強度を有しているとともに、陶器らしい質感を有している。
【0019】
請求項2に記載の製造方法で製造される陶器製品は、廃棄する際に、合成樹脂の塗膜をカットして引き剥がすだけで内部の成形品を容易に土に戻すことが可能であるため、廃棄時の環境への負荷がきわめて小さい。
また、請求項2に記載された陶器製品の製造方法によれば、製造持に高温で加熱することが不要で環境への負荷が小さく、カラーバリエーションが豊富な陶器製品を、安価かつ容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】陶器製品の製造工程を示すフローチャートである。
図2】成形された植木鉢の原型を示す説明図である。
図3】素焼き品に粉体塗装を施す様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る陶器製品は、粘土質材を固めて成形してなる成形品の表面が合成樹脂の塗膜で被覆されていることを特徴とするものである。すなわち、本発明に係る陶器製品は、図1の如く、粘土質材を固めて原型(素焼き前の成形品)を作製(STEP1)した後、その原型を乾燥させて(STEP2)、乾燥後の原型を炉内で所定の温度で加熱することによって素焼き品を作製し(STEP3)、しかる後、その素焼き品の外周に合成樹脂膜を被覆させる(STEP4)ことによって製造される。また、本発明に係る陶器製品の製造においては、乾燥後の原型を炉内で所定の温度で加熱することによって素焼き品を作製する工程(すなわち、図1におけるSTEP3)を省略することも可能であるし、後述するように粘土質材に合成樹脂を配合する場合には、粘土質材を固めて原型を作製して乾燥させた後に(すなわち、図1におけるSTEP2の後に)、所定の温度(100℃以上547℃未満)で加熱することによって粘土質材中の合成樹脂を溶融させてから冷却固化させる工程を加えることも可能である。
【0022】
原料となる粘土質材としては、粘土類(木節粘土、蛙目粘土、黄土等)、カオリン、ロウ石、セリサイト、ベントナイト等の可塑性原料、けい砂、けい石等の石英類、焼粉、素地粉等の非可塑性原料、長石、石灰石、マグネサイト、ドロマイト、滑石、ケイ灰石、骨灰等のリン酸カルシウム類、フリット類等の媒溶材原料を、必要に応じて任意の割合で混合させたものを好適に用いることができる。また、構成物質の面では、SiO,Al,Fe,KO,TiO,CaO,MgO,NaO等を所定の割合で配合したものを粘土質材として用いることができ、それらの中でも、60〜80質量%のSiOと10〜30質量%のAlとを配合したものを用いると、原型や素焼き品の表面に合成樹脂を粉体塗装する際の樹脂の付着性が良好なものとなるので好ましい。そして、それらの粘土質材に水を加えて十分に混練することによって、本発明に係る陶器製品の原料を得ることができる。
【0023】
また、陶器製品の原型(素焼き前の成形品)を成形する方法としては、鋳込み成形、ろくろ成形、押出し成形、プレス成形、あるいはこれらの組合せ等を用いることができる。さらに、原型の乾燥は、雨の当たらない場所で放置することも可能であるが、50℃〜70℃の雰囲気下で48時間〜120時間程度保持させることによって行うのが好ましい。また、乾燥した原型を素焼きする場合(あるいは、原型中の合成樹脂を溶融させる場合)には、ガス窯や電気炉等を用いて100℃〜1,300℃の温度で15分〜5時間程度加熱するのが好ましい。
【0024】
そして、本発明に係る陶器製品は、上記の如く成形された原型(乾燥後のものや、乾燥後に熱処理したもの)あるいは当該原型を素焼きして得た素焼き品の表面(外周)に、合成樹脂膜を被覆させることによって製造される。また、本発明に係る陶器製品は、原型あるいは素焼き品の表面全体が合成樹脂膜によって覆われたものでも良いし、原型あるいは素焼き品の表面の一部が合成樹脂膜によって覆われたもの(たとえば、底面以外が合成樹脂膜によって覆われたもの)でも良い。なお、陶器製品を、原型(素焼きしない成形品)の表面全体が合成樹脂膜によって覆われたものとした場合には、陶器製品の耐水性がきわめて良好なものとなる上、廃棄する際に、合成樹脂の塗膜をカットして引き剥がすだけで内部の成形品を容易に土に戻すことが可能となり、廃棄時の環境への負荷がきわめて小さいものとなる。一方、素焼き品の表面の一部のみが合成樹脂膜によって覆われたものとすることによって(たとえば、容器形状等に形成された素焼き品の外側の表面のみが合成樹脂膜によって覆われたものとすることによって)、素焼き品の吸湿性を利用した加湿器を構成することも可能となる。
【0025】
また、合成樹脂膜を被覆させる方法としては、溶融させた合成樹脂、溶剤に溶解させた合成樹脂、あるいは水に分散させた合成樹脂を吹き付ける方法や、ロール・刷毛によってコーティングする方法等の各種の方法を採用することができるが、粉体塗装(静電ガンを用いて、電荷を与えられた粉末塗料を加圧空気によって噴霧することによって、原型や素焼き品の表面に粉末塗料を吹き付ける塗装方法)を用いると、簡易な設備で均一な塗膜を原型や素焼き品の表面に形成することが可能となるので好ましい。また、原型・素焼き品の原料である粘土質材中の鉄分を0.3〜5.0%に調整しておくと、粉体塗装によって原型や素焼き品に合成樹脂膜を被覆させる際に、合成樹脂の付着性が良好なものとなり、十分な厚みの合成樹脂膜を短時間で形成することが可能となるので好ましい。なお、粘土質材中の鉄分が0.6〜1.7%であると、より好ましい。
【0026】
一方、原型や素焼き品の表面に被覆させる合成樹脂の種類は、特に限定されず、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロピレン等のフッ素樹脂(テフロン(登録商標))、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンスルファイド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド等、あるいはそれらをブレンドしたものや変性物等を好適に用いることができる。また、原型や素焼き品の表面に被覆させる合成樹脂が、ポリエステル系樹脂(すなわち、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等、あるいはそれらをブレンドしたものや変性物)あるいはエポキシ系樹脂(すなわち、エポキシ樹脂あるいはその変性物)もしくはフッ素樹脂(すなわち、フッ素樹脂あるいはその変性物)であると、陶器製品が耐衝撃強度に優れたものとなるので好ましい。また、原型や素焼き品の表面に被覆させる合成樹脂がポリエステル系樹脂であると、陶器製品がきわめて耐候性(耐紫外線性)に優れたものとなるので特に好ましい。また、原型や素焼き品の表面に粉体塗装によって合成樹脂を被覆させる場合に、ポリエステル系樹脂やエポキシ系樹脂を用いると、原型や素焼き品と合成樹脂皮膜との密着性が良好なものとなるので好ましい。加えて、原型や素焼き品の表面に被覆させる合成樹脂中には、抗菌剤、染料・顔料等を、必要に応じて添加することができる。
【0027】
さらに、原型や素焼き品の表面に被覆させる合成樹脂の厚みは、特に限定されないが、0.01mm以上0.5mm以下であると、陶器製品が耐衝撃強度に優れたものとなるとともに、陶器製品に触れたときの質感が陶器らしいものとなるので好ましい。合成樹脂の厚みが、0.01mm未満になると、陶器製品の耐衝撃強度が不十分なものとなるので好ましくなく、合成樹脂の厚みが、0.5mmを上回ると、陶器製品に触れたときの質感が陶器らしくなくなる(すなわち、合成樹脂特有のものとなる)ので好ましくない。原型や素焼き品の表面に被覆させる合成樹脂の厚みは、0.05mm以上0.2mm以下であるとより好ましく、0.12mm以上0.15mm以下であると特に好ましい。
【0028】
また、上記の如く、粉体塗装によって原型や素焼き品に合成樹脂膜を被覆させる場合には、表面に合成樹脂の粉末を付着させた原型や素焼き品をガス窯や電気炉等で加熱して、原型や素焼き品の表面に付着した合成樹脂を溶融させて原型や素焼き品の表面に定着させるのが好ましい。粉体塗装によって原型や素焼き品の表面にポリエステル系樹脂製あるいはエポキシ系樹脂製の塗膜を形成する場合には、100℃〜250℃の温度で10分〜2時間程度加熱するのが好ましく、フッ素樹脂製の塗膜を形成する場合には、300℃〜450℃の温度で10分〜2時間程度加熱するのが好ましい。また、粉体塗装によって原型(あるいは熱処理品)や素焼き品に合成樹脂膜を被覆させる場合には、原型(あるいは熱処理品)や素焼き品を100℃〜150℃の温度で加熱した直後に(あるいは、加熱しながら)粉体塗装を施すと、塗膜がでこぼこになりにくく、滑らかな塗膜を形成することが可能となるので好ましい。
【0029】
また、本発明に係る陶器製品を形成するための粘土質材は、合成樹脂を混合したものでも良い。粘土質材内に添加する合成樹脂の種類は、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂(すなわち、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等、あるいはそれらをブレンドしたものや変性物)あるいはポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等、あるいはそれらをブレンドしたものや変性物)であると、原型の成形が容易になるので好ましい。また、粘土質材に添加する合成樹脂として、リサイクルPET等のリサイクルした合成樹脂を利用することができ、そのようなリサイクルした合成樹脂を用いると、陶器製品の環境への負荷がきわめて小さなものとなるので好ましい。
【0030】
さらに、粘土質材内に合成樹脂を添加する場合には、添加する合成樹脂を平均粒径が1.0mm以下の粒子状にしておくと、混練時に粘土質材内に合成樹脂が均一に分散し、原型や素焼き品の耐衝撃強度が高くなるので好ましく、平均粒径が0.5mm以下の粒子状にしておくと、より好ましい。なお、添加する合成樹脂は、粒子径が細かいほど好ましいが、平均粒径=0.05mm程度の粒子状が限界であると考えられる。
【0031】
さらに、粘土質材中に添加する合成樹脂の種類を、原型や素焼き品の外周に形成する合成樹脂膜の原料と同じにすると(たとえば、粘土質材中に添加する合成樹脂および原型や素焼き品の外周に形成する合成樹脂膜の原料を、ともにポリエステル系樹脂とすると)、原型や素焼き品の表面への合成樹脂膜の密着性が非常に良好なものとなり、薄い合成樹脂膜の被覆によってきわめて高い耐衝撃強度を発現させることが可能となるので好ましい。
【0032】
さらに、上記の如く、粘土質材中に合成樹脂を添加する場合には、添加する合成樹脂の量は特に限定されないが、添加量が3質量%以上15質量%以下であると好ましく、5質量%以上10質量%以下であるとより好ましい。添加量が3質量%未満となると、原型や素焼き品の強度を効果的に増加させることができないので好ましくなく、反対に、添加量が15質量%を上回ると、陶器製品の質感(陶器らしさ)が損なわれるので好ましくない。加えて、粘土質材中における合成樹脂の添加量が15質量%を上回っていると、粉体塗装によって原型や素焼き品に合成樹脂膜を被覆させる場合に、原型や素焼き品が電荷を帯びにくくなり、粉体樹脂が付着しにくくなるので、その面からも好ましくない。
【実施例】
【0033】
以下、本発明に係る陶器製品について実施例によって詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。また、実施例(参考例)・比較例における物性、特性の評価方法は以下の通りである。
【0034】
<製造に要する熱量(環境負荷の大きさ)>
陶器製品を製造する際の熱処理の内容によって、下記の3段階で評価した。
◎:600℃以上の熱処理(素焼き・本焼き)を行わない
○:600℃以上の熱処理(素焼き・本焼き)を1回のみ行う
×:600℃以上の熱処理(素焼き・本焼き)を2回以上行う
【0035】
<質感(陶器らしさ)>
実施例・比較例で得られた陶器製品の質感(陶器感)を、金属棒で軽く叩いたときの反響音および目視によって下記の3段階で官能評価した。
◎:十分な質感がある
○:若干の質感がある
△:ほとんど質感がない
【0036】
<耐水性>
実施例・比較例で得られた陶器製品に、如雨露によって所定量(200cc)の水を3回/日の割合で30日間に亘って浴びせ続けた後の損傷状態を、目視によって下記の3段階で官能評価した。
○:まったく損傷が認められない
△:若干の損傷が認められる
×:使用に耐えられない程度の損傷が認められる
【0037】
<耐衝撃性>
実施例・比較例で得られた陶器製品(植木鉢)を、重さの異なる3種類の先切り金鎚(ヘッド部の重量は、それぞれ、約200g,約400g,約800gで、ヘッド部の先端の曲率半径は、いずれも約2.0mm)によって叩いて破砕させたときの壊れにくさを、下記の3段階で官能評価した(n=10)。なお、陶器製品を先切り金鎚によって叩く際には、陶器製品の筒状部分の高さ方向における中間の部分に、50cm程度上方から先切り金鎚のヘッド部を自由落下させるように打ち付けた。
◎:ヘッド部の重量が約800gの先切り金鎚を打ち付けても破砕しなかった
○:ヘッド部の重量が約800gの先切り金鎚を打ち付けることによって破砕した
△:ヘッド部の重量が約400gの先切り金鎚を打ち付けることによって破砕した
×:ヘッド部の重量が約200gの先切り金鎚を打ち付けることによって破砕した
【0038】
<合成樹脂膜の密着性>
実施例・比較例で得られた陶器製品の合成樹脂膜にカッターナイフで10mm幅のコ字状の切り目を入れ、その切り目から合成樹脂膜を手によって引き剥がしたときの引き剥がしにくさを下記の3段階で官能評価した。
◎:合成樹脂膜が原型・素焼き品に高い強度で密着しており非常に引き剥がしにくい
○:合成樹脂膜が原型・素焼き品に密着しており引き剥がしにくい
△:あまり力を加えてなくても合成樹脂膜を原型・素焼き品から引き剥がすことができた
【0039】
[実施例1]
陶土(以下の組成を有する配合粘土A80重量部に対して20質量部の水分を加えたもの)を用いて、図2の如き形状を有する植木鉢(上部の外径=150mm、下部の外径=100mm、高さ=200mm、筒状部分の厚さ=3.0mm)の原型(成形品)を作製した。
<配合粘土A(白土)>
・SiO:68.0質量%
・Al:18.9質量%
・Fe:3.02質量%
・KO:2.28%
・その他:7.80質量%
しかる後、その原型を、雨の当たらない風通しの良い室内(常温)で96時間保管することによって、十分に乾燥させた。
【0040】
しかる後、その乾燥後の原型の表面に、粉体塗装によって、合成樹脂製の塗膜を形成した。すなわち、図3の如く、静電ガンGを用い、8秒間に亘って、電荷を与えられた粉末塗料(ポリエステル:久保孝ペイント(株)製 ニッシンパウダーPE783ライン)を加圧空気によって噴霧することによって、成形品(すなわち、乾燥後の原型)Sの表面に粉末塗料を吹き付けた。そして、そのように粉末塗料を吹き付けた成形品(乾燥後の原型)を、熱風循環機内で180℃の温度で20分間加熱し、吹き付けた塗料を成形品の表面に溶着させて、成形品の表面に厚さ100μmのポリエステル製の塗膜を形成することによって実施例1の陶器製品(植木鉢)を得た。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。実施例1の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0041】
参考例2]
実施例1と同様にして得られた乾燥後の原型を、ガス窯内で1,000℃の温度で10時間に亘って加熱することによって素焼きした。しかる後、その素焼き品の表面に、実施例1と同様な方法で、合成樹脂(ポリエステル)製の塗膜を形成することによって参考例2の陶器製品(植木鉢)を得た。なお、陶器製品の表面に形成されたポリエステル製の塗膜の厚さは100μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。参考例2の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0042】
参考例3]
陶土の粘土原料を以下の組成を有する配合粘土Bに変更した以外は参考例2と同様にして、参考例3の陶器製品(植木鉢)を得た。
<配合粘土B(白土)>
・SiO:67.2質量%
・Al:19.5質量%
・Fe:3.19質量%
・KO:2.17%
・その他:7.94質量%
そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。実施例3の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0043】
参考例4]
素焼き品の表面に粉体塗装によって合成樹脂製の塗膜を形成する際に、静電ガンによる粉末塗料の噴霧時間を4秒間に変更した以外は参考例2と同様にして、参考例4の陶器製品(植木鉢)を得た。なお、陶器製品の表面に形成されたポリエステル製の塗膜の厚さは50μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。参考例4の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0044】
参考例5]
素焼き品の表面に粉体塗装によって合成樹脂製の塗膜を形成する際に、静電ガンによる粉末塗料の噴霧時間を12秒間に変更した以外は参考例2と同様にして、参考例5の陶器製品(植木鉢)を得た。なお、陶器製品の表面に形成されたポリエステル製の塗膜の厚さは120μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。参考例5の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0045】
参考例6]
素焼き品の表面に粉体塗装によって合成樹脂製の塗膜を形成する際に、粉末塗料をエポキシ樹脂(久保孝ペイント(株)製 ニッシンパウダーEP758ライン)に変更した以外は参考例2と同様にして、参考例6の陶器製品(植木鉢)を得た。なお、陶器製品の表面に形成されたエポキシ樹脂製の塗膜の厚さは100μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。参考例6の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0046】
参考例7]
素焼き品の表面に粉体塗装によって合成樹脂製の塗膜を形成する際に、粉末塗料をフッ素樹脂(三井・ケマーズ フロロプロダクツ(株)製 ポリテトラフルオロエチレン)に変更した以外は参考例2と同様にして、参考例7の陶器製品(植木鉢)を得た。なお、陶器製品の表面に形成されたフッ素樹脂製の塗膜の厚さは100μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。参考例7の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0047】
参考例8]
実施例1と同様な陶土(配合粘土A90重量部に対して10質量部の水分を加えたもの)99質量%とポリエステルの粒子(平均粒子径=約400μmの粉状物)1質量%とを十分に混練することによって、実施例1と同様な形状を有する植木鉢の原型を作製した。そして、その植木鉢の原型を、雨の当たらない風通しの良い室内(常温)で96時間保管することによって十分に乾燥させた後、ガス窯内で260℃の温度で30分間に亘って加熱することによって、ポリエステルを陶土に溶融固着させた。しかる後、その加熱成形品の表面に、実施例1と同様な方法で、合成樹脂(ポリエステル)製の塗膜を形成することによって参考例8の陶器製品(植木鉢)を得た。なお、陶器製品の表面に形成されたポリエステル製の塗膜の厚さは100μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。参考例8の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0048】
参考例9]
植木鉢の原型を作製する際の陶土とポリエステルの粒子との混合割合を以下の通りに変更した以外は参考例8と同様にして、参考例9の陶器製品(植木鉢)を得た。
・陶土(配合粘土A90重量部に対して10質量部の水分を加えたもの):97質量%
・ポリエステルの粒子(平均粒子径=約400μmの粉状物):3質量%
なお、陶器製品の表面に形成されたポリエステル製の塗膜の厚さは100μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。参考例9の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0049】
参考例10]
植木鉢の原型を作製する際の陶土とポリエステルの粒子との混合割合を以下の通りに変更した以外は参考例8と同様にして、参考例10の陶器製品(植木鉢)を得た。
・陶土(配合粘土A90重量部に対して10質量部の水分を加えたもの):90質量%
・ポリエステルの粒子(平均粒子径=約400μmの粉状物):10質量%
なお、陶器製品の表面に形成されたポリエステル製の塗膜の厚さは100μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。参考例10の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0050】
参考例11]
植木鉢の原型を作製する際の陶土とポリエステルの粒子との混合割合を以下の通りに変更した以外は参考例8と同様にして、参考例11の陶器製品(植木鉢)を得た。
・陶土(配合粘土A90重量部に対して10質量部の水分を加えたもの):85質量%
・ポリエステルの粒子(平均粒子径=約400μmの粉状物):15質量%
なお、陶器製品の表面に形成されたポリエステル製の塗膜の厚さは100μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。参考例11の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0051】
参考例12]
植木鉢の原型を作製する際の陶土とポリエステルの粒子との混合割合を以下の通りに変更した以外は参考例8と同様にして、参考例12の陶器製品(植木鉢)を得た。
・陶土(配合粘土A90重量部に対して10質量部の水分を加えたもの):80質量%
・ポリエステル樹脂(平均粒子径=約400μmの粉状物):20質量%
なお、陶器製品の表面に形成されたポリエステル製の塗膜の厚さは100μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。参考例12の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0052】
参考例13]
実施例1と同様な陶土(配合粘土A90重量部に対して10質量部の水分を加えたもの)99質量%とポリエステルの粒子(平均粒子径=約400μmの粉状物)1質量%とを十分に混練することによって、実施例1と同様な形状を有する植木鉢の原型を作製した。そして、その植木鉢の原型を用いて、参考例7と同様な方法で、乾燥、素焼き、粉体塗料による塗膜(エポキシ樹脂からなる塗膜)の形成を行うことによって、参考例13の陶器製品(植木鉢)を得た。なお、陶器製品の表面に形成されたエポキシ樹脂製の塗膜の厚さは100μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。参考例13の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0053】
[比較例1]
実施例1と同様の方法によって、植木鉢の成形品(乾燥させた原型)を作製した。そして、その成形品の特性を、上記した方法によって評価した。比較例1の陶器製品(乾燥させた原型)の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0054】
[比較例2]
参考例2と同様の方法によって、植木鉢の素焼き品を作製した。そして、その素焼き品の特性を、上記した方法によって評価した。比較例2の陶器製品(素焼き品)の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0055】
[比較例3]
参考例2と同様にして植木鉢の素焼き品を作製した後、その素焼き品の表面に、釉薬(主原料である草木の灰に長石、珪石等を配合した灰釉)を塗布した後に、その釉薬を塗布した素焼き品を、ガス窯内で1,200℃の温度で20時間に亘って釉焼(本焼き)することによって比較例3の陶器製品(植木鉢)を得た。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。比較例3の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1から、実施例1および参考例2〜13で得られた陶器製品は、いずれも製造時に必要な熱量が少なく、環境負荷が小さい上、質感(陶器感)が良好であるとともに、耐水性、耐衝撃性に優れていることが分かる。それに対して、比較例1で得られた陶器製品(熱処理した原型素焼き品)は、耐水性、耐衝撃性が不良であり、 比較例2で得られた陶器製品(素焼き品)は、耐衝撃性が不良であり、比較例3で得られた陶器製品は、製造に要する熱量が大きく、環境負荷が大きいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る樹脂組成物は、は、上記の如く優れた効果を奏するものであるから、植木鉢、プランター、花瓶、壺、食器、瓦、タイル、衛生陶器等の製品として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
1・・陶器製品(植木鉢)
H・・水抜き穴
【要約】
【課題】製造持に高温で加熱することが不要で環境への負荷が小さい上、カラーバリエーションが豊富で実用的な陶器製品を提供する。
【解決手段】SiO,Al,Fe,KO等を所定の割合で配合してなる陶土を用いて植木鉢の成形品(原型)を作製し、その成形品を、雨の当たらない風通しの良い室内(常温)で96時間保管することによって乾燥させた後、ガス窯内で1,000℃の温度で10時間に亘って加熱することによって素焼きした。しかる後、その素焼き品の表面に、粉体塗装により厚さ100μmのポリエステル製の塗膜を形成することによって陶器製品(植木鉢)を得た。
【選択図】図1
図1
図2
図3