【実施例】
【0033】
以下、本発明に係る陶器製品について実施例によって詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。また、実施例(参考例)・比較例における物性、特性の評価方法は以下の通りである。
【0034】
<製造に要する熱量(環境負荷の大きさ)>
陶器製品を製造する際の熱処理の内容によって、下記の3段階で評価した。
◎:600℃以上の熱処理(素焼き・本焼き)を行わない
○:600℃以上の熱処理(素焼き・本焼き)を1回のみ行う
×:600℃以上の熱処理(素焼き・本焼き)を2回以上行う
【0035】
<質感(陶器らしさ)>
実施例・比較例で得られた陶器製品の質感(陶器感)を、金属棒で軽く叩いたときの反響音および目視によって下記の3段階で官能評価した。
◎:十分な質感がある
○:若干の質感がある
△:ほとんど質感がない
【0036】
<耐水性>
実施例・比較例で得られた陶器製品に、如雨露によって所定量(200cc)の水を3回/日の割合で30日間に亘って浴びせ続けた後の損傷状態を、目視によって下記の3段階で官能評価した。
○:まったく損傷が認められない
△:若干の損傷が認められる
×:使用に耐えられない程度の損傷が認められる
【0037】
<耐衝撃性>
実施例・比較例で得られた陶器製品(植木鉢)を、重さの異なる3種類の先切り金鎚(ヘッド部の重量は、それぞれ、約200g,約400g,約800gで、ヘッド部の先端の曲率半径は、いずれも約2.0mm)によって叩いて破砕させたときの壊れにくさを、下記の3段階で官能評価した(n=10)。なお、陶器製品を先切り金鎚によって叩く際には、陶器製品の筒状部分の高さ方向における中間の部分に、50cm程度上方から先切り金鎚のヘッド部を自由落下させるように打ち付けた。
◎:ヘッド部の重量が約800gの先切り金鎚を打ち付けても破砕しなかった
○:ヘッド部の重量が約800gの先切り金鎚を打ち付けることによって破砕した
△:ヘッド部の重量が約400gの先切り金鎚を打ち付けることによって破砕した
×:ヘッド部の重量が約200gの先切り金鎚を打ち付けることによって破砕した
【0038】
<合成樹脂膜の密着性>
実施例・比較例で得られた陶器製品の合成樹脂膜にカッターナイフで10mm幅のコ字状の切り目を入れ、その切り目から合成樹脂膜を手によって引き剥がしたときの引き剥がしにくさを下記の3段階で官能評価した。
◎:合成樹脂膜が原型・素焼き品に高い強度で密着しており非常に引き剥がしにくい
○:合成樹脂膜が原型・素焼き品に密着しており引き剥がしにくい
△:あまり力を加えてなくても合成樹脂膜を原型・素焼き品から引き剥がすことができた
【0039】
[実施例1]
陶土(以下の組成を有する配合粘土A80重量部に対して20質量部の水分を加えたもの)を用いて、
図2の如き形状を有する植木鉢(上部の外径=150mm、下部の外径=100mm、高さ=200mm、筒状部分の厚さ=3.0mm)の原型(成形品)を作製した。
<配合粘土A(白土)>
・SiO
2:68.0質量%
・Al
2O
3:18.9質量%
・Fe
2O
3:3.02質量%
・K
2O:2.28%
・その他:7.80質量%
しかる後、その原型を、雨の当たらない風通しの良い室内(常温)で96時間保管することによって、十分に乾燥させた。
【0040】
しかる後、その乾燥後の原型の表面に、粉体塗装によって、合成樹脂製の塗膜を形成した。すなわち、
図3の如く、静電ガンGを用い、8秒間に亘って、電荷を与えられた粉末塗料(ポリエステル:久保孝ペイント(株)製 ニッシンパウダーPE783ライン)を加圧空気によって噴霧することによって、成形品(すなわち、乾燥後の原型)Sの表面に粉末塗料を吹き付けた。そして、そのように粉末塗料を吹き付けた成形品(乾燥後の原型)を、熱風循環機内で180℃の温度で20分間加熱し、吹き付けた塗料を成形品の表面に溶着させて、成形品の表面に厚さ100μmのポリエステル製の塗膜を形成することによって実施例1の陶器製品(植木鉢)を得た。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。実施例1の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0041】
[
参考例2]
実施例1と同様にして得られた乾燥後の原型を、ガス窯内で1,000℃の温度で10時間に亘って加熱することによって素焼きした。しかる後、その素焼き品の表面に、実施例1と同様な方法で、合成樹脂(ポリエステル)製の塗膜を形成することによって
参考例2の陶器製品(植木鉢)を得た。なお、陶器製品の表面に形成されたポリエステル製の塗膜の厚さは100μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。
参考例2の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0042】
[
参考例3]
陶土の粘土原料を以下の組成を有する配合粘土Bに変更した以外は
参考例2と同様にして、
参考例3の陶器製品(植木鉢)を得た。
<配合粘土B(白土)>
・SiO
2:67.2質量%
・Al
2O
3:19.5質量%
・Fe
2O
3:3.19質量%
・K
2O:2.17%
・その他:7.94質量%
そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。実施例3の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0043】
[
参考例4]
素焼き品の表面に粉体塗装によって合成樹脂製の塗膜を形成する際に、静電ガンによる粉末塗料の噴霧時間を4秒間に変更した以外は
参考例2と同様にして、
参考例4の陶器製品(植木鉢)を得た。なお、陶器製品の表面に形成されたポリエステル製の塗膜の厚さは50μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。
参考例4の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0044】
[
参考例5]
素焼き品の表面に粉体塗装によって合成樹脂製の塗膜を形成する際に、静電ガンによる粉末塗料の噴霧時間を12秒間に変更した以外は
参考例2と同様にして、
参考例5の陶器製品(植木鉢)を得た。なお、陶器製品の表面に形成されたポリエステル製の塗膜の厚さは120μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。
参考例5の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0045】
[
参考例6]
素焼き品の表面に粉体塗装によって合成樹脂製の塗膜を形成する際に、粉末塗料をエポキシ樹脂(久保孝ペイント(株)製 ニッシンパウダーEP758ライン)に変更した以外は
参考例2と同様にして、
参考例6の陶器製品(植木鉢)を得た。なお、陶器製品の表面に形成されたエポキシ樹脂製の塗膜の厚さは100μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。
参考例6の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0046】
[
参考例7]
素焼き品の表面に粉体塗装によって合成樹脂製の塗膜を形成する際に、粉末塗料をフッ素樹脂(三井・ケマーズ フロロプロダクツ(株)製 ポリテトラフルオロエチレン)に変更した以外は
参考例2と同様にして、
参考例7の陶器製品(植木鉢)を得た。なお、陶器製品の表面に形成されたフッ素樹脂製の塗膜の厚さは100μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。
参考例7の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0047】
[
参考例8]
実施例1と同様な陶土(配合粘土A90重量部に対して10質量部の水分を加えたもの)99質量%とポリエステルの粒子(平均粒子径=約400μmの粉状物)1質量%とを十分に混練することによって、実施例1と同様な形状を有する植木鉢の原型を作製した。そして、その植木鉢の原型を、雨の当たらない風通しの良い室内(常温)で96時間保管することによって十分に乾燥させた後、ガス窯内で260℃の温度で30分間に亘って加熱することによって、ポリエステルを陶土に溶融固着させた。しかる後、その加熱成形品の表面に、実施例1と同様な方法で、合成樹脂(ポリエステル)製の塗膜を形成することによって
参考例8の陶器製品(植木鉢)を得た。なお、陶器製品の表面に形成されたポリエステル製の塗膜の厚さは100μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。
参考例8の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0048】
[
参考例9]
植木鉢の原型を作製する際の陶土とポリエステルの粒子との混合割合を以下の通りに変更した以外は
参考例8と同様にして、
参考例9の陶器製品(植木鉢)を得た。
・陶土(配合粘土A90重量部に対して10質量部の水分を加えたもの):97質量%
・ポリエステルの粒子(平均粒子径=約400μmの粉状物):3質量%
なお、陶器製品の表面に形成されたポリエステル製の塗膜の厚さは100μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。
参考例9の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0049】
[
参考例10]
植木鉢の原型を作製する際の陶土とポリエステルの粒子との混合割合を以下の通りに変更した以外は
参考例8と同様にして、
参考例10の陶器製品(植木鉢)を得た。
・陶土(配合粘土A90重量部に対して10質量部の水分を加えたもの):90質量%
・ポリエステルの粒子(平均粒子径=約400μmの粉状物):10質量%
なお、陶器製品の表面に形成されたポリエステル製の塗膜の厚さは100μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。
参考例10の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0050】
[
参考例11]
植木鉢の原型を作製する際の陶土とポリエステルの粒子との混合割合を以下の通りに変更した以外は
参考例8と同様にして、
参考例11の陶器製品(植木鉢)を得た。
・陶土(配合粘土A90重量部に対して10質量部の水分を加えたもの):85質量%
・ポリエステルの粒子(平均粒子径=約400μmの粉状物):15質量%
なお、陶器製品の表面に形成されたポリエステル製の塗膜の厚さは100μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。
参考例11の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0051】
[
参考例12]
植木鉢の原型を作製する際の陶土とポリエステルの粒子との混合割合を以下の通りに変更した以外は
参考例8と同様にして、
参考例12の陶器製品(植木鉢)を得た。
・陶土(配合粘土A90重量部に対して10質量部の水分を加えたもの):80質量%
・ポリエステル樹脂(平均粒子径=約400μmの粉状物):20質量%
なお、陶器製品の表面に形成されたポリエステル製の塗膜の厚さは100μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。
参考例12の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0052】
[
参考例13]
実施例1と同様な陶土(配合粘土A90重量部に対して10質量部の水分を加えたもの)99質量%とポリエステルの粒子(平均粒子径=約400μmの粉状物)1質量%とを十分に混練することによって、実施例1と同様な形状を有する植木鉢の原型を作製した。そして、その植木鉢の原型を用いて、
参考例7と同様な方法で、乾燥、素焼き、粉体塗料による塗膜(エポキシ樹脂からなる塗膜)の形成を行うことによって、
参考例13の陶器製品(植木鉢)を得た。なお、陶器製品の表面に形成されたエポキシ樹脂製の塗膜の厚さは100μmであった。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。
参考例13の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0053】
[比較例1]
実施例1と同様の方法によって、植木鉢の成形品(乾燥させた原型)を作製した。そして、その成形品の特性を、上記した方法によって評価した。比較例1の陶器製品(乾燥させた原型)の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0054】
[比較例2]
参考例2と同様の方法によって、植木鉢の素焼き品を作製した。そして、その素焼き品の特性を、上記した方法によって評価した。比較例2の陶器製品(素焼き品)の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0055】
[比較例3]
参考例2と同様にして植木鉢の素焼き品を作製した後、その素焼き品の表面に、釉薬(主原料である草木の灰に長石、珪石等を配合した灰釉)を塗布した後に、その釉薬を塗布した素焼き品を、ガス窯内で1,200℃の温度で20時間に亘って釉焼(本焼き)することによって比較例3の陶器製品(植木鉢)を得た。そして、その陶器製品の特性を、上記した方法によって評価した。比較例3の陶器製品の評価結果を、性状とともに表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1から、
実施例1および参考例2〜13で得られた陶器製品は、いずれも製造時に必要な熱量が少なく、環境負荷が小さい上、質感(陶器感)が良好であるとともに、耐水性、耐衝撃性に優れていることが分かる。それに対して、比較例1で得られた陶器製品(熱処理した原型素焼き品)は、耐水性、耐衝撃性が不良であり、 比較例2で得られた陶器製品(素焼き品)は、耐衝撃性が不良であり、比較例3で得られた陶器製品は、製造に要する熱量が大きく、環境負荷が大きいことが分かる。