(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
医療現場においては、治療中に患者の体液や血液が飛散し、これが誤って医者や看護婦の眼、口、鼻に接触することがある。治療を受ける患者が伝染性の病原菌を保有している場合には、この病原菌を含む液体が医者等の眼、口、鼻に接触することにより、医者等が病原菌に感染するケースもあった。特に近年のCOVID−19、いわゆる新型コロナウィルスの世界的流行により、これに感染している患者の治療に際して医者等が病原菌に感染しないように、医者等の眼、口などと患者の病原菌を含む液体との接触を確実に防止する必要性は更に高まっている。また医療現場においては、有害な薬液を取り扱う場合も多く、これが誤って医者や看護婦の眼、口、鼻、あるいは皮膚などに接触し、医者等に障害を与えることもあった。
【0003】
そこで、有害な液体が顔面に接触しないようこれを保護する医療用顔面保護具が提案されている(例えば特許文献1参照)。この医療用顔面保護具は、
図23に示すように、顔面を覆う液体不浸透性の透明な平板フィルム91が、当該平板フィルム91を頭部に固定する固定部材92に、平板フィルム91両側端に設けられたスペーサー部93を介して取り付けられている。これにより、着用時にスペーサー部93によって平板フィルム91と顔面との間に間隔が設けられ、眼鏡を着用していても顔が圧迫されたり、眼鏡がフィルムに接触しない構造としている。
【0004】
ただ、以上の構造の医療用顔面保護具は、平板フィルムで顔面を覆うため、顔面の前面側は被覆できるが、顔面の側面側は十分に被覆できない欠点がある。また、平面状の平板フィルムは、薄くすると変形し易くなって使用時における形状が安定しないため、厚く成形する必要があって、安価に多量生産できない問題点もあった。とくに、感染症の流行時における医療現場等においては、使用後は廃棄処分されるため、安価に多量生産することが求められる。
【0005】
これに対して、透明な平板フィルムに代えて、湾曲可能な透明プラスチック板を使用して装着者の顔を覆うフェイスシールドとして、
図24の展開図に示すように透明プラスチックシートからなるフェイスガード部81の両側にストラップ部82を一体成形したものも提案されている。
図24に示すフェイスシールド80は、シート状のフェイスガード部81の上部に、顔面との間に間隔を設けるための湾曲可能なスペーサー83を固定している。このフェイスシールド80は、
図25の斜視図に示すように、スペーサー83を額に接触させる状態でフェイスガード部81で顔面を被覆して、両側に延長されたストラップ部82を後頭部側で連結して装着する構造としている。
【0006】
しかしながらこの構成では、
図24のような展開図状態でフェイスシールドを製造する必要が生じ、成型のための金型に非常に大きなものが必要となって製造コストが高くなるという問題があった。また、大きなシート材から製造する必要があるため、必要な部分を切り取った残りの廃棄処分される部分が大きくなってロスが多くなることも製造コストを高くする原因となる。また、展開図状態での運搬、管理に際しても、サイズが大きいため、それぞれコスト高となる。
【0007】
これを防ぐために、
図26に示すようにフェイスガード部71とストラップ部72を別部材とすることが考えられる。フェイスガード部71の両側面に設けたスリット74に、ストラップ部72を通すことで、
図25と同様にフェイスガード部71の両側面にストラップ部72を設けることができ、
図25のように同様の使い勝手を実現できる。この方法であれば、フェイスガード部71とストラップ部72をそれぞれ別の金型を用いて成形できるため、金型を小型化できる。また運搬時や保管時にもフェイスガード部71とストラップ部72にそれぞれ分けて小型化でき、利便性に優れる。
【0008】
しかしながら、この構成ではフェイスガード部71にストラップ部72を通して連通していることから、
図27に示すように、フェイスガード部71とストラップ部72との相対位置が決まらないため、使用時にストラップ部72がずれて位置決めがし難くなり、装着感が悪いという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、装着感に優れたフェイスシールドを安価に多量生産できる技術を提供することにある。
【0011】
本発明の第1の側面に係るフェイスシールドは、装着者の顔を覆うフェイスシールドであって、可撓性を有する透明な樹脂製で、上部の両側に連結部をそれぞれ設けたフェイスガード部と、フェイスガード部の連結部に挿入可能な、可撓性を有する細長い板状で、両端を互いに連結可能としたストラップ部とを備えている。フェイスガード部は、シート状の本体部と、本体部の一方の面側に突出して、連結部同士の間に形成された複数のガード側凸部とを備えており、ガード側凸部の裏面側を空洞状のガード側凹部としている。ストラップ部は、ガード側凹部に嵌合するストラップ側凸部を形成している。フェイスシールドは、ストラップ部を、ストラップ側凸部がガード側凹部と対向する姿勢で、ストラップ部の両端を、連結部にそれぞれ挿入して、ストラップ側凸部をガード側凹部に嵌合させた状態で、ガード側凸部を装着者の額に接触させて、前記ストラップ部をそれぞれ後頭部側に回して連結することで着用可能に構成している。
【0012】
上記構成により、フェイスガード部と装着者の顔面との間に空白を設けるための凸部を利用して、ストラップ部の位置ずれを抑制でき、フィット感や装着感に優れたフェイスシールドを実現できる。特に、スペーサとなる凸部の裏面側に形成されるデッドスペースである凹部を利用して、ストラップ部を嵌合させるという簡単な構成としたことで、安価に大量生産でき、新型コロナウィルスの世界的流行により需要がひっ迫しているフェイスシールドを安定供給することにもつながる。また、フェイスシールドを装着する際、複数のガード側凸部を額に接触させて、装着者の顔面とフェイスガード部との間に空間を安定的に形成でき、眼鏡やゴーグル等を着用した状態においても違和感なく装着することができる。さらに、フェイスガード部とストラップ部とを別部材とすることで、製造コストを低減しながら、収納や搬送を効率よくできる特徴が実現できる。
【0013】
本発明の第2の側面に係るフェイスシールドは、フェイスガード部が、複数のガード側凸部を、連結部同士を結ぶ直線上に、互いに離間して形成している。
【0014】
上記構成により、複数のガード側凸部を互いに離間して設けることで、フェイスガード部を顔面に装着する際には、複数のガード側凸部の先端部が互いに接近する姿勢となるようにシート状の本体部を湾曲しながら、複数のガード側凸部の先端面を額にフィットさせることができる。このため、頭部の形状や大きさが異なる使用者に対しても、フェイスガード部を理想的な形状に湾曲しながら額にフィットさせて、顔面を確実に被覆できる。また、複数のガード側凸部を連結部同士の間に直線上に配置することで、両側の連結部に挿入して連結されるストラップ部に設けたストラップ側凸部を、ガード側凸部の裏面側に形成されるガード側凹部に確実に案内できる。さらに、ガード側凹部にストラップ側凸部を案内した状態で、ストラップ部の両端を後頭部で連結する状態では、ストラップ側凸部で位置決めされるストラップ部を介してガード側凸部の先端面を額に押圧することで、フェイスガード部を顔面から離れた所定の位置に正しい姿勢で配置できる特長がある。とくに、ストラップ部の引っ張り力を、各ガード側凸部の先端面が額を押圧する力として作用させることで、フェイスガード部を安定して装着できる。
【0015】
本発明の第3の側面に係るフェイスシールドは、複数のガード側凸部を、先窄み形状に形成している。
【0016】
上記構成により、フェイスガード部を顔面に装着する際に、先窄み形状のガード側凸部の先端部を互いに接近させる姿勢となるようにシート状の本体部を湾曲できるので、フェイスガード部をより高い自由度で湾曲させて、複数のガード側凸部の先端面を使用者の額にフィットさせることができる。また、複数のガード側凸部を先窄み形状とすることで、複数枚のフェイスガード部を互いに積層する状態では、ガード側凸部とガード側凹部とを互いに嵌合させながらシート状の本体部を重ね合わせることでコンパクトに重ねることができ、多数枚を省スペースに収納しながら搬送し、また備蓄できる特長もある。
【0017】
本発明の第4の側面に係るフェイスシールドは、複数のガード側凸部が、本体部の中間部に配置される第一ガード側凸部と、本体部の両側部に配置される第二ガード側凸部とを備えており、第一ガード側凸部の裏面側に形成されるガード側凹部をストラップ側凸部と嵌合する嵌合凹部としている。
【0018】
本発明の第5の側面に係るフェイスシールドは、フェイスガード部が、複数の第一ガード側凸部を備えている。
【0019】
上記構成により、連結部同士を結ぶ直線上に複数の第一ガード側凸部を形成することで、裏面側に複数の嵌合凹部を設けることができ、ストラップ側凸部を嵌合させる嵌合凹部の位置を変更することで、ストラップ部の端部の連結位置を調整することが可能となる。
【0020】
本発明の第6の側面に係るフェイスシールドは、第一ガード側凸部を3個設けると共に、第二ガード側凸部を両側に1個ずつ設けている。
【0021】
本発明の第7の側面に係るフェイスシールドは、第一ガード側凸部を、平面視において等脚台形状に形成している。
【0022】
上記構成により、フェイスガード部を装着者の顔に沿って湾曲させる際、隣接するガード側凸部同士が干渉する事態を回避して、使い易くできる。
【0023】
本発明の第8の側面に係るフェイスシールドは、第二ガード側凸部を、平面視において、フェイスガード部の中央側から側縁側に向かって突出高さが次第に低くなる形状に形成している。
【0024】
上記構成により、フェイスガード部を装着した際に、フェイスガード部の中央側はガード側凸部と額を接触させて顔面との間に空間を形成する一方、フェイスガード部の両側部で連結部を設けた部分においては装着者の頭部に接近するようにフェイスガード部を変形させながらストラップ部を連結できる。
【0025】
本発明の第9の側面に係るフェイスシールドは、ストラップ部が、端部の一方に複数のスリットを形成し、端部の他方にスリットに挿入可能な矢尻状の挿入部を形成している。
【0026】
本発明の第10の側面に係るフェイスシールドは、フェイスガード部が、防曇材を含んでいる。
【0027】
上記構成により、フェイスガード部の表面を親水性として、装着者の吐く息などによる表面の曇りを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のフェイスシールドの実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一若しくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0030】
本発明のフェイスシールドは、装着者の顔面に装着して、顔面を外部の異物から保護するためのフェイスシールドであって、例えば、医療現場等において、医療従事者が患者から排出される飛沫や液体、血液等から顔面を保護する用途に使用される。ただ、本発明のフェイスシールドは、医療以外の目的、例えば、接客業等において、対面で応対する者同士における感染の防止や、工場等の種々の作業現場において、粉塵等の異物から顔面を保護する用途にも使用できる。
【0031】
[実施形態1]
本発明の実施形態1にかかるフェイスシールドを
図1〜
図22に示す。
図1はフェイスシールドの分解斜視図を、
図2は
図1のフェイスシールドを湾曲させた使用状態を示す斜視図を、
図3は
図2のフェイスシールドの分解斜視図を、
図4は
図2のフェイスシールドのストラップ部を連結した状態を斜め後方から見た斜視図を、
図5はフェイスシールドの装着状態を示す水平断面図を、
図6〜
図9はフェイスシールドの正面図、背面図、右側面図、及び平面図を、
図10〜
図12はフェイスガード部の正面図、右側面図、及び平面図を、
図13〜
図15はフェイスガード部の正面図、右側面図、及び平面図を、
図16及び
図17は
図6のフェイスシールドの水平断面図及び模式水平断面図を、
図18及び
図19は
図6のフェイスシールドの垂直断面図及び模式垂直断面図をそれぞれ示している。
【0032】
図1〜
図19に示すフェイスシールド100は、装着者の顔面Fを被覆するフェイスガード部10と、このフェイスガード部10に連結されて、フェイスガード部10を顔面Fに装着するためのストラップ部20とを備えている。フェイスガード部10は、可撓性を有する透明な樹脂製で、上部の両側に連結部14をそれぞれ設けている。フェイスガード部10は、シート状の本体部11と、この本体部11の一方の面側に突出して、連結部14同士の間に形成された複数のガード側凸部12とを備え、ガード側凸部12の裏面側を空洞状のガード側凹部13としている。ストラップ部20は、フェイスガード部10の連結部14に挿入可能な、可撓性を有する細長い板状で、両端を互いに連結可能とすると共に、ガード側凹部13に嵌合するストラップ側凸部23を備えている。フェイスシールド100は、ストラップ側凸部23をガード側凹部13に案内する状態でガード側凸部12を装着者の額Hに接触させて、ストラップ部20をそれぞれ後頭部側に回して連結することで着用するようにしている。
なお、本明細書において、上下方向は、図面により決定するものとする。
【0033】
(フェイスガード部10)
フェイスガード部10は、可撓性を有する透明の樹脂シートで製造されており、シート状の本体部11と、この本体部11の一方の面に突出して形成された複数のガード側凸部12とを備えている。フェイスガード部10は、可撓性を有する透明の樹脂製であって、好ましくは、無色透明の樹脂シートで製造される。このような樹脂として、例えば、熱可塑性樹脂である、ポリエチレンテレフタラート(PET)、とくに、非結晶ポリエチレンテレフタラート(A−PET)が使用される。ポリエチレンテレフタラート製のフェイスガード部10は、耐水性と生産性に優れる特長がある。ただ、フェイスガード部10を成形する樹脂には、ポリエチレンテレフタラート以外の熱可塑性樹脂を使用することもできる。さらに、フェイスガード部10を製造する樹脂は、防曇材を含むことができる。防曇材には、例えば、安全性の高いグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが使用できる。これらの防曇材を樹脂に練り込み、又は塗布することで、プラスチックの表面を親水性に変え、フェイスガード部10の表面の曇りを防止できる。このため、装着者が吐く息などによる表面の曇りを抑制ができる。
【0034】
フェイスガード部10の本体部11は、顔面全体を被覆できる大きさと形状を有している。
図1〜
図3、
図6、及び
図10に示す本体部11は、全体の形状を、四隅のコーナー部が面取りされた略長方形状としている。略長方形状の本体部11は、例えば、上下幅を20cm〜50cm、好ましくは、25cm〜40cmとし、左右幅を20cm〜60cm、好ましくは、30cm〜40cmとして、装着者の顔面全体を被覆できるようにしている。さらに、本体部11は、フェイスガード部10を顔面に装着する際に簡単に湾曲できるように所定の厚さに成形される。本体部11は、例えば、その厚さを0.1mm〜0.4mm、好ましくは0.2mm〜0.3mmとする。
【0035】
フェイスガード部10は、本体部11の上部の両側に、ストラップ部20を連結するための連結部14を設けている。
図1に示す連結部14は、細長い帯状のストラップ部20を挿通する差し込み部14Aとしている。差し込み部14Aは、シート状の本体部11に切り込みを設けて形成している。切り込みからなる差し込み部14Aは、簡単かつ容易に設けることができると共に、樹脂シートからなるストラップ部20を簡単に挿通できる特長がある。
図1に示す差し込み部14Aは、上下に伸びる直線部14aと、直線部14aの両端に連結された傾斜部14bとからなる。両端の傾斜部14bは、直線部14aの両端からフェイスガード部10の中央部に向かってハの字状に広がる形状に設けられている。この形状の差し込み部14Aは、帯状のストラップ部20をフェイスガード部10の中央部側から側縁方向に向かってスムーズに挿入できる特長がある。フェイスガード部10の両側部に形成された差し込み部14Aは、左右対称の位置に設けられており、フェイスガード部10の中央部から両側縁側に向かってストラップ部20の両端が挿通されるようにしている。
【0036】
さらに、フェイスガード部10は、略長方形状の本体部11の上部であって、両側部に設けた一対の連結部14の間に複数のガード側凸部12を設けている。複数のガード側凸部12は、本体部11の一方の表面から突出する姿勢で、左右方向に並んで形成されている。ガード側凸部12は、裏面側を空洞状のガード側凹部13としており、ストラップ部20のストラップ側凸部23を嵌入できる構造としている。図のフェイスガード部10は、平面状で所定の厚さを有する樹脂シートを真空成形して複数のガード側凸部12を一体的に成形している。樹脂シートを真空成形して形成されるガード側凸部12は、裏面側にガード側凹部13が形成される。
【0037】
複数のガード側凸部12は、左右の連結部14同士を結ぶ直線上に、互いに離間して形成されている。このように、複数のガード側凸部12を左右の連結部14の間に配置する構造は、左右の連結部14を結ぶ状態で配置されるストラップ部20の両端部を後頭部で連結してストラップ部20を締め付ける状態で、ストラップ部20の引っ張り力を、各ガード側凸部12の先端面が額を押圧する力として作用させることができ、複数のガード側凸部12を安定して額Hに押圧できる特長がある。さらに、複数のガード側凸部12を互いに離間して配置することで、フェイスガード部10を顔面Fに装着する際には、複数のガード側凸部12の先端部を互いに接近させながらシート状の本体部11を湾曲させて、複数のガード側凸部12の先端面を額Hにフィットさせることができる。
【0038】
図1〜
図19に示すガード側凸部12は、シート状の本体部11に対して突出方向に向かって次第に幅が狭くなる先窄み形状に成形されている。ガード側凸部12は、
図15に示す平面視において、突出方向に向かって次第に左右幅が狭くなる形状とすると共に、
図14に示す側面視においても、突出方向に向かって次第に上下幅が狭くなる形状としている。この形状のガード側凸部12は、真空成形時において、先窄み形状の傾斜面が金型の抜き勾配となって、金型からスムーズに剥離できる。また、ガード側凸部12を先窄み形状とすることで、裏面側に形成されるガード側凹部13の内面形状も凹部の底部に向かって先窄み形状に形成される。このため、製造された複数のフェイスガード部10を互いに積層する際には、ガード側凸部12を対向するガード側凹部13に案内する状態で本体部11を重ねてコンパクトに収納できる。このように、互いに積層可能なフェイスガード部10は、多数を積層する状態で全体の厚さを薄くできるので、搬送時や備蓄時において、省スペースに収納できる特長がある。
【0039】
複数のガード側凸部12は、
図1〜
図5、
図17、及び
図19に示すように、本体部11の中間部に配置される第一ガード側凸部12Aと、本体部11の両側部に配置される第二ガード側凸部12Bとを備えている。さらに、図に示すフェイスガード部10は、第一ガード側凸部12Aの裏面側に形成されるガード側凹部13を、ストラップ側凸部23と嵌合する嵌合凹部13Xとしている。すなわち、第一ガード側凸部12Aの裏面側に形成される嵌合凹部13Xの内形を、ストラップ側凸部23を嵌合状態で案内できる形状としている。
【0040】
図に示すフェイスガード部10は、全体で5個のガード側凸部12を備えており、中間部に3個の第一ガード側凸部12Aを設けて、両側に1個ずつの第二ガード側凸部12Bを設けている。3つの第一ガード側凸部12Aは、フェイスガード部10の左右の中間部であって、左右対称の姿勢で設けている。第一ガード側凸部12Aをこの配列とするフェイスガード部10は、真ん中の第一ガード側凸部12Aを、
図3及び
図5に示すように、顔面Fの中心線上に配置することで左右のバランスよく装着できる。また、ストラップ部20のストラップ側凸部23を真ん中の第一ガード側凹部13Aに案内することで、フェイスガード部の中心部を額Hの中心部に向かって押圧して、左右のバランスよくフェイスガード部10を装着できる。ただ、フェイスガード部は、第一ガード側凸部の個数を3個には限定せず、第一ガード側凸部を1〜2個とすることも、4個以上とすることもできる。
【0041】
第一ガード側凸部12Aは、顔面Fの前面側に配置されて、フェイスガード部10を顔面から所定の距離離れた位置に配置する。このため、装着者が眼鏡やゴーグル等を着用する場合においても、眼鏡やゴーグルがフェイスガード部10に接触することなく、安心して使用できる。したがって、顔面Fの前面側に配置される第一ガード側凸部12Aは、顔面Fとフェイスガード部10との間隔を十分に保つことができるように、突出量を2cm以上であって、好ましくは2.5cm以上とする。また、第一ガード側凸部12Aは、突出量が大きくなると、フェイスガード部10を顔面に安定して装着するのが難しくなる虞があるので、突出量を5cm以下であって、好ましくは4.5cm以下とする。さらに、第一ガード側凸部12Aの先端面は、狭すぎると安定した装着が難しくなり、広すぎると圧迫感を感じるおそれがあるので、先端面は上下幅を1〜2cm、左右幅を2〜4cm程度とする。さらにまた、先端面と外周面との境界部分は、面取りして湾曲面とすることで、装着者の接触部分に対する違和感を低減できる。
【0042】
複数の第一ガード側凸部12Aは、同じ形状に形成しており、裏面側に形成されるガード側凹部13である嵌合凹部13Xも同じ形状に形成されている。
図5及び
図15に示す第一ガード側凸部12Aは、平面視において、等脚台形状に形成している。第一ガード側凸部12Aの平面形状を等脚台形状とするフェイスガード部10は、
図4及び
図5に示すように、本体部11を顔に沿って湾曲させる状態で、隣接する第一ガード側凸部12A同士が互いに干渉することなくスムーズに湾曲されて、各第一ガード側凸部12Aの先端面を額Hに接触させることができる。
【0043】
さらに、複数の第一ガード側凸部12Aを備えるフェイスガード部10は、
図20と
図21に示すように、ストラップ側凸部23を嵌合させるガード側凹部13の位置を変更することができる。すなわち、複数の第一ガード側凸部12Aの裏面側に形成される複数の嵌合凹部23Xを選択しながらストラップ側凸部23を嵌合させることで、ストラップ部20の端部の連結位置29を調整することが可能となる。ここで、
図20は、
図5の状態から右の嵌合凹部13Xにストラップ側凸部23の位置を変更した状態を示し、
図21は、
図5の状態から左の嵌合凹部13Xにストラップ側凸部23の位置を変更した状態を示している。これらの図に示すように、ストラップ側凸部23の位置を変更することで、ストラップ部20の両端部を連結する連結位置29を装着者の後頭部から左右にずらすことができる。したがって、装着者は、ストラップ部20の両端部の連結位置29を最適な位置に選択できる。
【0044】
第二ガード側凸部12Bは、第一ガード側凸部12Aよりも平均的な突出高さを低く形成している。
図1〜
図5、及び
図17に示す第二ガード側凸部12Bは、平面視において、フェイスガード部10の中央側から側縁側に向かって突出高さが次第に低くなる形状に形成している。図に示す第二ガード側凸部は、平面形状を略四角形状として、先端の形状を中央側から側縁側に向かって次第に低くなる傾斜面としている。以上のように、第二ガード側凸部12Bの突出高さをフェイスガード部10の側縁に向かって次第に低くする構造は、
図5に示すように、フェイスガード部10を装着者の頭部に装着する状態で、頭部の前面側では、フェイスガード部10の中央部を顔面から所定の間隔に配置しながら、側頭部に近づくにつれて、フェイスガード部10を次第に頭部に接近するように配置でき、こめかみの近傍では、フェイスガード部10を頭部に接近させる姿勢で装着できる。これにより、装着者の両目の外側を確実にフェイスガード部10で被覆して保護できると共に、フェイスガード部10の両側部を頭部に接近させることで、ストラップ部20の全長を短くできる。
【0045】
ただ、第二ガード側凸部は、平面形状を三角形状とすることもできる。三角形状の第二ガード側凸部は、例えば、中央側に配置される側面がフェイスガード部の本体部となす角度を、反対側である側縁側に配置される側面がフェイスガード部の本体部となす角度よりも大きい鋭角とする。この形状の第二ガード側凸部も、フェイスガード部を装着した際には、フェイスガード部の中央側では三角形状の第二ガード側凸部の頂点を額に接触させて空間を形成する一方、フェイスガード部の両側部においては、三角形状の第二ガード側凸部の頂点から側縁部に向かう傾斜面を額に接触させて、装着者の頭部に接近するように配置できる。
【0046】
以上のフェイスガード部10は、平面状の本体部11から突出する姿勢で複数のガード側凸部12を設けているので、これらを積層して収納する際には、ガード側凸部12を対向するガード側凹部13に案内しながら、平面状の本体部11を複数層に重ねる状態でコンパクトに収納できる。
【0047】
また、フェイスシールド100を顔面に装着する際には、平面状の本体部11を湾曲しながら装着する。平面状の本体部11は、複数のガード側凸部12の先端を装着者の額Hに接触させる状態で湾曲されて、全体の形状が、平面視において装着者の顔面の前面に沿う湾曲面となるように変形される。この形状に変形されることで、フェイスガード部10は、装着者の顔面を効率よく被覆して外部から保護できる。また、装着者の顔面に沿う湾曲面状に湾曲されるフェイスガード部10は、所定の形状に湾曲されることで、使用時において安定できる特長もある。
【0048】
ここで、
図1〜
図5に示すフェイスガード部10は、複数のガード側凸部12を先窄み形状とするので、フェイスガード部10を湾曲させる状態では、隣接するガード側凸部12同士の対向する側面同士が互いに接近する状態となってスムーズに湾曲される。また、フェイスガード部10は、隣接する複数のガード側凸部12の先端面が、装着者の額Hに接触する状態で湾曲されるので、装着する装着者の顔面の大きさや形状に沿う状態で湾曲される。したがって、使用する装着者に最適な形状に湾曲されて、良好な装着状態に保持される。例えば、頭部の周囲が大きく、額部分が平面状に近い使用者(例えば、大柄な男性)においては、隣接するガード側凸部12の先端面が平面に近い額の全面に密着することで、フェイスガード部10の湾曲形状は平面状に近くなる。この場合、使用者の顔面も大きくて平面状に近いため、効果的に被覆される。また、頭部の周囲が小さく、額部分が湾曲面に近い使用者(例えば、小柄な女性)においては、隣接するガード側凸部12の先端面が湾曲面に近い額に沿って密着することで、フェイスガード部10の湾曲形状は円弧状に近くなる。この場合、使用者の顔面も小さく、頭部の外形も小さいため、フェイスガード部が円弧状に湾曲されることで、顔面全体が効果的に保護される。
【0049】
以上のように、複数のガード側凸部12を隣接して設けると共に、これらのガード側凸部12の対向する側面を先細り形状の傾斜面とする構造は、フェイスガード部10を装着者の顔面に最適な形状に湾曲させながら無理なく装着できる特長が実現できる。
【0050】
(ストラップ部20)
ストラップ部20は、フェイスガード部10の差し込み部14Aに挿入可能な形状であって、可撓性を有する細長い板状としている。このストラップ部20も、樹脂製であって、所定の厚さを有する樹脂製シートを、所定の幅と長さに裁断して製造される。ストラップ部20には、例えば、前述のフェイスガード部10を製造する樹脂シートと同じものが使用できるが、ストラップ部20は、必ずしも透明である必要はなく、また防曇性も要求されない。したがって、フェイスガード部10に使用する樹脂よりも安価な樹脂を使用してもよい。
【0051】
ストラップ部20は、使用者の頭部に巻き付けた状態で連結できる十分な長さと幅を有する。ストラップ部20は、例えば、幅を2cm〜5cm、好ましくは3cm〜4cmとし、全長を60cm〜80cmとする。さらに、ストラップ部20は、両端を互いに連結可能としている。
図1〜
図3のストラップ部20は、一方の端部に複数のスリット21を設けると共に、他方の端部には、スリット21に挿入可能な矢尻状の挿入部22を形成している。複数のスリット21は、
図22に示すように、ストラップ部20の長手方向に離して所定の間隔で設けられている。各スリット21は、短手方向に延長して設けられた直線部21aと、この直線部21aの両端に連結された傾斜部21bとからなる。両端の傾斜部21bは、直線部21aの両端からストラップ部20中央部側に向かってハの字状に広がる形状に設けられている。この形状のスリット21は、矢尻状の挿入部22を端縁側から中央部側に向かってスムーズに挿入できる特長がある。
【0052】
挿入部22は、先端部を山形とすると共に、後端部の両側には、外側方向に突出する引掛部22aを設けている。この形状の挿入部22は、ストラップ部20の反対側の端部に形成されたスリット21に挿入された状態で、両側の引掛部22aがスリット21の両端部に係止されて、抜けないように連結される。
図22に示すスリット21は両端に傾斜部21bを備えており、この傾斜部21bに引掛部22aが案内されて、抜けないように係止される構造としている。この構造は、簡単な構造として、挿入部22を確実にスリット21に案内しながら、連結された状態では抜けない構造にできる。ただ、ストラップ部の両端部は、その連結構造を以上の構造に特定しない。ストラップ部の両端部は、互いに連結できる他の全ての構造が採用できる。
【0053】
さらに、
図1〜
図3、及び
図22に示すストラップ部20は、フェイスガード部10の差し込み部14Aに挿通される端部が逆方向に抜けるのを防止するための抜け止め凹部24を備えている。図のストラップ部20は、両端部の両側縁に複数の抜け止め凹部24を設けている。抜け止め凹部24は、差し込み部14Aに挿入される端部が、フェイスガード部10の内側から外側に向かって挿入される状態では、引っかかることなくスムーズに通過でき、逆方向に移動する際には、差し込み部14Aの端部に引っかかって逆方向への移動が阻止されるように、アンダーカット形状の凹部としている。複数の抜け止め凹部24は、ストラップ部20の端部の両側縁の対向する位置に所定の間隔で形成されている。両端部に抜け止め凹部24を備えるストラップ部20は、差し込み部24Aに挿通された端部が意図せずに抜けるのを有効に防止できる。
【0054】
さらに、
図1及び
図5に示すストラップ部20は、フェイスガード部10に形成されたガード側凹部13であって、嵌合凹部13Xに嵌合されるストラップ側凸部23を成形している。ストラップ側凸部23は、ストラップ部20の長手方向のほぼ中央部に位置して、一体成形して設けられている。図のストラップ部は、樹脂シートを真空成形してストラップ側凸部23を成形している。ストラップ側凸部23は、
図5に示すように、嵌合凹部13Xに嵌合される形状であって、平面視において等脚台形状に形成すると共に、形状第一ガード側凸部21Aよりも低く形成している。
【0055】
以上のフェイスシールド100は、以下のようにして装着者の顔面に装着される。
(1)
図1〜
図3に示すように、ストラップ部20の両端部をそれぞれフェイスガード部10の両側部に設けた連結部14である差し込み部14Aに挿通する。
(2)ストラップ部20は、中央部に設けたストラップ側凸部23がフェイスガード部10に設けたガード側凸部12の裏面側に形成されたガード側凹部13に案内される。
図1〜
図3に示すストラップ部20は、第一ガード側凸部12Aの裏面側に形成された嵌合凹部13Xにストラップ側凸部23を案内する状態を示している。このとき、複数の嵌合凹部13Xを備えるフェイスガード部10にあっては、ストラップ部20のストラップ側凸部23を所望の嵌合凹部13Xに嵌合させる。この状態で、ストラップ側凸部23がフェイスガード部10の定位置に連結される。
(3)フェイスガード部10を装着者の顔面Fに装着する。フェイスガード部10は、
図3に示すように、複数のガード側凸部12の先端面であって、とくに、第一ガード側凸部12Aの先端面が額Hに接触するように顔面Fに装着される。さらに、このとき、フェイスガード部10は、
図5に示すように、複数のガード側凸部12の先端部が互いに接近するように本体部11が湾曲される。フェイスガード部10は、複数の第一ガード側凸部12Aの先端面が額Hの前面に接触し、両側の第二ガード側凸部12Bの先端面が額Hの側部に接触する状態となるように、本体部11を湾曲させる。
(4)
図4及び
図5に示すように、ストラップ部20の両端部を後頭部において連結する。ストラップ部20は、頭部の周囲に沿って締め付ける状態で両端部を接近させると共に、最適な張力となる位置で連結する。ストラップ部20の両端は、一方の端部に設けた挿入部22を、他方の端部に設けたスリット21に挿入して連結される。
この状態で、フェイスガード部10は、第一ガード側凸部12Aの裏面側に形成された嵌合凹部13Xに嵌入されるストラップ側凸部23により位置決めされると共に、ストラップ部20の両端部が装着者の後頭部側に引っ張られる状態で締め付けられて、複数のガード側凸部12の先端面が額Hに接触する状態に押圧される。ストラップ部20による締め付け方向は、第一ガード側凸部12Aが、嵌合凹部13Xに嵌合されるストラップ側凸部23を介して額Hを押圧する方向と一致するため、フェイスガード部10は、第一ガード側凸部12Aの先端面を額Hに接触させる姿勢において安定して装着される。
【解決手段】フェイスシールドは、可撓性を有する透明な樹脂製のフェイスガード部10の上部の両側に設けた連結部14に可撓性を有する細長い板状のストラップ部20を挿入している。フェイスガード部10は、シート状の本体部11と、連結部14同士の間に形成された複数のガード側凸部12とを備えており、ガード側凸部12の裏面側を空洞状のガード側凹部13としている。ストラップ部20は、ガード側凹部13に嵌合するストラップ側凸部23を形成している。フェイスシールドは、ストラップ部20の両端を連結部14に挿入して、ストラップ側凸部23をガード側凹部13に嵌合させた状態で、ガード側凸部12を装着者の額Hに接触させて、ストラップ部20をそれぞれ後頭部側に回して連結して着用する。