(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る初期ポップアップ機構を備えた伸縮機構について説明する。なお、本明細書において、「上」あるいは「下」とは、特装車両は通常地面に配置されることから、鉛直方向を基準とした上下方向を表している。また、本明細書において、拡幅部が拡幅する側の方向を拡幅方向とし、拡幅部が収納される側の方向を収納方向とする。
【0017】
図1は、実施の形態に係る伸縮機構が用いられる特装車両を示す斜視図である。
図1に示すように、特装車両2は、運転席が設けられたキャビン4の後方に、直方体状の車両本体6を備えている。なお、車両本体6の内部には、収容空間8が形成され、車両本体6の後方には、収容空間8内への人の出入りおよび荷物の搬入出を行う開口部10が設けられている。また、車両本体6の内部には、車両本体6の側面から幅方向に拡幅する拡幅部12が収納されている。
【0018】
ここで、
図2(a)は、拡幅部12が車両本体6内に収納された状態を特装車両2の正面から視た図であり、
図2(b)は、拡幅部12が車両本体6内から拡幅された状態を特装車両2の正面から視た図である。この拡幅部12には、特装車両2の進行方向の右側に拡幅する右拡幅部12aおよび特装車両2の進行方向の左側に拡幅する左拡幅部12bが含まれている。
【0019】
ここで拡幅部12は、2段構成を有している。すなわち、拡幅時に車両本体6と連続する第1拡幅部、第1拡幅部の外側にさらに拡幅される第2拡幅部を有している。具体的には、右拡幅部12aには、第1拡幅部12a1と第2拡幅部12a2が含まれ、左拡幅部12bには、第1拡幅部12b1と第2拡幅部12b2がそれぞれ含まれる。そして、第2拡幅部12a2および第2拡幅部12b2には、複数の非常口14が設けられている。この拡幅部12は、後述する伸縮機構20を作動させることによって拡幅および収納される。なお、拡幅部12には、車両本体6の上下方向および前後方向のいずれにも拡幅部12を傾けずに、バランスよく移動させることができる動力伝達機構(図示せず)がその骨組みに沿って配置されてる。かかる動力伝達機構については、たとえば、特許第6600846号公報に開示されている技術を用いることが好ましい。
【0020】
なお、
図2(b)に示すように、拡幅部12は、拡幅した状態において、いかなる脚にも支えられておらず、拡幅部12の下部には大きな下部スペースが形成される。このため、段差や障害物を過剰に意識することなく拡幅部12を拡幅させ、大スペースを確保することができる。
【0021】
図3は、実施の形態に係る伸縮機構20を上方から視た状態を示す分解斜視図である。なお、
図3は、伸縮機構20が車両本体6内に収納された状態、すなわち畳まれた状態の分解斜視図である。
図3に示すように、伸縮機構20は、車両本体6内に固定される直方体状の筐体である固定ガイド部22、拡幅時に固定ガイド部22から車両本体6の外側(拡幅方向側)にスライドする第1スライダー部24、拡幅時に第1スライダー部24からさらに車両本体6の外側(拡幅方向側)にスライドする第2スライダー部26を備えている。
【0022】
ここで、固定ガイド部22の内部には、外周に台形ネジが形成された台形ネジ軸28が収納されている。また、固定ガイド部22の内部の拡幅方向側には、後述するチェーン36を接続するための第1接続穴30aを有する第1チェーン支持部30が固定されている。なお、この第1チェーン支持部30は、台形ネジ軸28には接続されていない。また、固定ガイド部22は断面U字形状を有し、上側が解放され下側が底面として構成されている。さらに、固定ガイド部22の収納方向側の端部には、後述する第2スライダー部26のフック係合部49に係合されるフック52が取り付けられている。
【0023】
第1スライダー部24は、固定ガイド部22によって長手方向にスライド可能に保持され、断面略ロの字形状の本体部24aと、本体部24aの側壁から上方に延設された一対の屈曲部24b1から成る軸受部24bを備えている。ここで、本体部24aは、本体部24aの収納方向側に固定され、台形ネジ軸28と螺合されるナット部34をその内部に収容している。また、軸受部24bは、第2スライダー部26を長手方向にスライド可能に保持し、両屈曲部24b1間には、車輪38の軸38aが支持されている。そして、軸38aに支持された車輪38、および車輪38に掛け渡されたチェーン36が両屈曲部24b1間に配置されている。なお、第1スライダー部24および第2スライダー部26は、チェーン36の回転に伴って長手方向にスライドする。また、第1スライダー部24には、後述する床板部48を折り畳んだ際に谷状になる谷状の部分Tを支持する支持部材40が固定され、支持部材40によって谷状の部分Tが支持される部分が床保持機構を構成している。なお、この支持部材40は、床板部48の谷状の部分Tを支持するのみであって、拡幅部12全体の荷重を支持するものではない。
【0024】
第2スライダー部26は、下側が解放され上側が天面26aとして構成された断面逆U字形状の部品であり、第1スライダー部24上に長手方向にスライド可能に被せられている。この第2スライダー部26の天面26a内側の収納方向側には、チェーン36を接続するための第2接続穴44aを有する第2チェーン支持部44が固定されている。また第2スライダー部26の拡幅方向側の端部の両サイドには、端床部46を固定する固定部47が取り付けられている。さらに、第2スライダー部26の天面26aの収納方向側の端部には、収納時に第1スライダー部24および2スライダー部26がスライドすることを防止するためのフック係合部49が形成されている。
【0025】
なお、第1スライダー部24は第1拡幅部12a1に固定され、第2スライダー部26は第2拡幅部12a2に固定されている。このため、第1スライダー部24の伸縮に伴って第1拡幅部12a1が拡幅または収納し、第2スライダー部24の伸縮に伴って第2拡幅部12a2が拡幅または収納する。このように、伸縮機構20が固定ガイド部22と第1スライダー部24の他に、さらに第1スライダー部24から車両本体6の外側(拡幅方向側)にスライドする第2スライダー部24を備えることにより、大スペースを確保可能な2段構成の拡幅部12を拡幅および収納させることができる。
【0026】
図4は、実施の形態に係る伸縮機構20に床板部48を配置した状態を示す図である。なお、ここでは、右拡幅部12aに搭載された伸縮機構20に床板部48配置した状態を特装車両2の正面から視た状態を例示している。ここで、床板部48は、第1床板部48a、第2床板部48b、第3床板部48c、および第4床板部48dの4枚の床板を回動可能に軸支することによって構成されている。
【0027】
また、床板部48は、拡幅時以外には、断面M字状に収束している(
図11(a)参照)。なお、
図4では、右拡幅部12aに搭載された床板部48を例示するが、左拡幅部12bに搭載された床板部48もその基本的構造、挙動は同様であるため、本明細書において説明を省略する。
【0028】
次に、床板部48の接続構成について説明する。まず、端床部46の収納方向側の端部には山形鋼46a(山形鋼とは、断面L字型の断面を有する鋼材をいう。)が固定され、第1床板部48aの拡幅方向側の端部には山形鋼48a1が固定されている。そして、端床部46と第1床板部48aとは、山形鋼46aの端部と山形鋼48a1の端部とを互いに回動可能に軸支することによって接続されている。
【0029】
同様に、第4床板部48dの収納方向側の端部には山形鋼48d1が固定され、車両本体6に固定されたフレーム60の拡幅方向側にも山形鋼60aが固定されている。そして、第4床板部48dとフレーム60とは、山形鋼48d1の端部と山形鋼60aの端部とを互いに回動可能に軸支することによって接続されている。
【0030】
また、第1床板部48aの収納方向側の端部には溝形鋼48a2(溝形鋼とは、断面コの字型の断面を有する鋼材をいう。)が固定され、第2床板部48bの拡幅方向側の端部には溝形鋼48b2が固定されている。第1床板部48aと第2床板部48bは、互いに対向する溝形鋼48a2、48b2の開口端の下側延設部同士を回動可能に軸支することによって接続されている。
【0031】
同様に、第3床板部48cの収納方向側の端部には溝形鋼48c2が固定され、第4床板部48dの拡幅方向側の端部には溝形鋼48d2が固定されている。第3床板部48cと第4床板部48dは、互いに対向する溝形鋼48c2、48d2の開口端の下側延設部同士を回動可能に軸支することによって接続されている。
【0032】
この第1床板部48aと第2床板部48bの連結部分、および第3床板部48cと第4床板部48dの連結部分は、M字状に折り畳まれた収納状態、およびM字状に折り畳む収納過程において2つの山状の部分Y、Yを成す。以下、当該床板部48がM字状に折り畳まれているか否かに拘わらず、当該連結部分を山状の部分Yと称する。
【0033】
図5(a)は、第2床板部48bと第3床板部48cの連結部分を示す拡大図である。
図5(a)に示すように、第2床板部48bの収納方向側の端部には山形鋼48b1が固定され、第3床板部48cの拡幅方向側の端部には山形鋼48c1が固定されている。そして、第2床板部48bと第3床板部48cは、山形鋼48b1、48c1を介してヒンジ49b、49cで回動可能に接続されている。この第2床板部48bと第3床板部48cの連結部分は、床板部48を折り畳んでM字状にした状態において谷状の部分Tを成す。以下、当該床板部48がM字状に折り畳まれているか否かに拘わらず、当該連結部分を谷状の部分Tと称する。
【0034】
また、ヒンジ49b、49cの下羽部49x、49yは、支持部材40上において支持板62を介して配置された山形鋼51a、51bの間に挟持されている。このように、支持部材40上に谷状の部分Tを配置することにより、伸縮機構20を作動させ、拡幅部12を拡幅または収納する際に、床板部48の谷状の部分Tが垂れ下がらないように支持することができる。
【0035】
ここで、
図5(b)は、支持部材40を上方から視た斜視図である。
図5(b)に示すように、山形鋼51a、51bは支持板62上に配置され、さらに支持板62は、支持部材40の天面40aに配置されている。また、支持部材40の天面40aには側壁部64、64が形成され、側壁部64の両端内側には、それぞれ車輪66が取り付けられている。
【0036】
なお、支持部材40の天面40aには、車輪用開口部70が形成されており、車輪66は、車輪用開口部70を介して第2スライダー部26の天面26aと当接している。これにより、支持部材40は、断面視において第2スライダー部26を跨いで構成され、第2スライダー部26は、車輪66を介して支持部材40の天面40a下をスライドする。よって、第2スライダー部26に負荷をかけずに床板部48を保持することができる。
【0037】
また、山形鋼51a、51bの下フランジ51a1、51b1および支持板62には、伸縮機構20の伸縮方向と直交する方向に延びる第1貫通穴72が形成され、第1貫通穴72には、支持部材40の天面40aに立設固定されたボルトなどの第1突出部76が貫通している。さらに、支持板62には、伸縮機構20の伸縮方向に延びる第2貫通穴74が形成され、第2貫通穴74にもまた、支持部材40の天面40aに立設固定されたボルトなどの第2突出部78が貫通している。
【0038】
このように、第1貫通穴72に第1突出部76を貫通させ、第2貫通穴74に第2突出部78を貫通させることにより、床板部48の谷状の部分Tは、伸縮機構20の伸縮方向、およびこれと直交する方向に遊間をもって支持部材40に支持されることになる。このため、実際に配置される床板部48の位置や寸法が設計上の位置や寸法と若干異っていても、誤差を許容しつつ配置することが可能である。
【0039】
また、床板部48を折り畳んだ際に山状になる山状の部分Yには、
図6(a)に示す、初期ポップアップ機構90、および
図6(b)に示す、終期補助ダンパー機構91が配置されている。なお、初期ポップアップ機構90と終期補助ダンパー機構91は、たとえば、床板部48の山状の部分Yにおいて、車両本体6の長手方向(
図1の進行方向)に交互に配置されている。
【0040】
図7は、初期ポップアップ機構90の構成を示す概要図である。
図7に示すように、初期ポップアップ機構90は、床板部48の折り畳み開始を補佐するものであり、アクチュエータ93、第1アーム部96、第2アーム部98、およびアーム支持部99を備えている。
【0041】
アクチュエータ93は、その本体部であるシリンダ部92、シリンダ部92から突出可能に格納されるポップアップ部94、および図示しない制御機構によって構成されており、たとえば油圧などを用いてポップアップ部94の昇降を制御する。なお、制御機構は、それぞれ図示しないモーター、後述するスイッチ95の状態を検知する検知部等を備えている。
【0042】
また、ポップアップ部94は、上端に床板部48の山状の部分Yと当接する当接部94aを備え、その下方に当接部94aを支持する支持棒部94bを備えている。シリンダ部92は、山状の部分Yの直下に配置され、シリンダ部92には、支持棒部94bが突出可能に格納されている。
【0043】
また、第1アーム部96、第2アーム部98の上端部は、それぞれ回動軸96a、98aに軸支されており、第1アーム部96、第2アーム部98は、回動軸96a、98aを介して第1床板部48a(第3床板部48c)と第2床板部48b(第4床板部48d)に山状の部分Yを挟んで回動可能に接続されている。
【0044】
また、第1アーム部96、第2アーム部98の下端部は、それぞれ回動軸96c、98cを介してアーム支持部99に回動可能に接続されている。また、第1アーム部96、第2アーム部98の下端部には、それぞれギア96b、98bが形成され、互いに噛合している。このように、ギア96b、98bを互いに噛合させることにより、第1アーム部96と第2アーム部98は、同角度で開閉することが可能になる。これにより、安定的に第1床板部48a(第3床板部48c)と第2床板部48b(第4床板部48d)を開閉することができる。
【0045】
また、初期ポップアップ機構90の直上に位置する床板部48の山状の部分Yには、スイッチ95が配置されている。スイッチ95は、接触部95aと被接触部95bとから成り、接触部95aが溝形鋼48a2(溝形鋼48c2)内に配置され、被接触部95bが溝形鋼48b2(溝形鋼48d2)内に配置されている。
【0046】
そして、床板部48が断面M字状に折り畳まれているとき(
図11(a)参照)には、接触部95aと被接触部95bとが互いに非接触状態にあり、床板部48が開かれ(
図11(b)参照)、ある程度平坦になると接触部95aと被接触部95bとが接触する。接触部95aと被接触部95bが接触している状態においてアクチュエータ93を作動させることができる。
【0047】
たとえば、スイッチ等を押して床板部48を完全に開かれた状態から折り畳まれた状態に移行する場合、接触部95aと被接触部95bが接触していることが検知部に検知されると、モーターが駆動すると共にオイルタンク(図示せず)からオイルがシリンダ部92に供給される。これにより、ポップアップ部94が上昇して山状の部分Yが当接部94aによって突き上げられる。
【0048】
逆に、今度はスイッチ等を押して、床板部48を折り畳まれた状態から開かれた状態に移行する場合、接触部95aと被接触部95bが接触したことが検知部に検知されると、モーターが駆動すると共にシリンダ部92からオイルタンクにオイルが戻される。これにより、下降するポップアップ部94に減衰力が働き、当接部94aと当接している山状の部分Yが徐々に下降する。
【0049】
図8は、終期補助ダンパー機構91の構成を示す概要図である。
図8に示すように、終期補助ダンパー機構91は、床板部48の展開動作の終了を補佐するものであり、ダンパー102、第1アーム部106、第2アーム部108、およびアーム支持部111を備えている。なお、ダンパー102には、たとえばガスダンパーなどが用いられる。
【0050】
ここで、ダンパー102は、山状の部分Yの直下に配置されると共に、棒状のロッド102aと、ロッド102aが格納される円筒状のケース102bを備えている。ここで、ロッド102aがケース102bに格納される際には抵抗が発生し、ロッド102aの移動の際にガス反力などによる減衰力が働くように構成されている。
【0051】
また、ロッド102aの上端は、床板部48の山状の部分Yに接続されている。すなわち、ロッド102aの上端には、貫通穴102a1が形成され、第1床板部48a(第3床板部48c)と第2床板部48b(第4床板部48d)を接続するヒンジの軸棒48xが貫通穴102a1を貫通している。このため、ロッド102aの突出、格納は、床板部48の山状の部分Yの上下動と連動する。
【0052】
また、第1アーム部106、第2アーム部108の上端部は、それぞれ回動軸106a、108aに軸支されており、第1アーム部106、第2アーム部108は、回動軸106a、108aを介して第1床板部48a(第3床板部48c)と第2床板部48b(第4床板部48d)に回動可能に接続されている。
【0053】
また、第1アーム部106、第2アーム部108の下端部は、それぞれ回動軸106c、108cを介してアーム支持部111に回動可能に接続されている。また、第1アーム部106、第2アーム部108の下端部には、それぞれギア106b、108bが形成され、互いに噛合している。このように、ギア106b、108bを互いに噛合させることにより、第1アーム部106と第2アーム部108は、同角度で開閉することが可能になり、安定的に第1床板部48a(第3床板部48c)と第2床板部48b(第4床板部48d)を開閉することができる。
【0054】
次に、実施の形態に係る伸縮機構20の動作について、右拡幅部12aを例に、伸縮機構20が車両本体6から拡幅される場合の動作を例に説明する。ここで、
図9(a)は、伸縮機構20を収縮させた状態を車両本体6の前方から視た図であり、
図9(b)は、伸縮機構20を伸長させた状態を車両本体6の前方から視た図である。
【0055】
まず、
図9(a)に示すように、床板部48がM字状に折り畳まれて車両本体6内部に格納されている。この状態において、伸縮機構20は、固定ガイド部22、第1スライダー部24、および第2スライダー部26が重ねられた状態にある。また、初期ポップアップ機構90は、
図10(a)に示すように、床板部48が折り畳まれた状態において、隣接する第1床板部48a(第3床板部48c)と第2床板部48b(第4床板部48d)との間に収納され、終期補助ダンパー機構91も、
図10(b)に示すように、床板部48が折り畳まれた状態において、隣接する第1床板部48a(第3床板部48c)と第2床板部48b(第4床板部48d)との間に収納されている。これにより、独立した収納スペースを確保する必要がなく、拡幅部12を収納した場合において初期ポップアップ機構90および終期補助ダンパー機構91をコンパクトに格納することができる。
【0056】
ここで、
図11(a)に示すモーター110が駆動してスプロケット112に回転力が入力されると、チェーン114およびスプロケット116を介して台形ネジ軸28に回転力が伝達され、台形ネジ軸28が回転する。この台形ネジ軸28の回転により、台形ネジ軸28と螺合するナット部34が拡幅方向に移動する。なお、ナット部34は、第1スライダー部24に固定されているため、台形ネジ軸28に伴って第1スライダー部24全体が拡幅方向に移動する。
【0057】
そして、第1スライダー部24全体が拡幅方向に移動すると、
図11(b)に示すように、第1スライダー部24に固定されている支持部材40もまた拡幅方向に移動する。なお、第1スライダー部24は、第1チェーン支持部30に接続されたチェーン36を回転させながら移動する。また、第2チェーン支持部44が固定されている第2スライダー部26は、チェーン36の回転に伴って拡幅方向に移動する。
【0058】
なお、チェーン36は、固定ガイド部22に固定された第1チェーン支持部30、および第1スライダー部24に固定された第2チェーン支持部44に接続されている。このため、チェーン36を基準とすると、固定ガイド部22と第2スライダー部26は、チェーン36の回転に伴って、相対的に同じ速度で反対方向に離間する。すなわち、固定ガイド部22を基準にすれば、第2スライダー部26は、第1スライダー部24の2倍の速度で拡幅方向に移動する。
【0059】
また、床板部48は、第4床板部48dの収納方向側の端部を車両本体6に固定されたフレーム60に固定している。このため、床板部48の谷状の部分Tは、支持部材40に支持されながら拡幅方向に移動する。また、第1床板部48aは、第2スライダー部26に固定された端床部46と接続されているため、床板部48の拡幅方向側の端部は、谷状の部分Tよりも速い速度で拡幅方向に移動する。このように、床板部48は、伸縮機構20の伸長に伴い徐々に開かれて行く。
【0060】
なお、床板部48が開かれる過程において、山状の部分Yは、徐々にその高さを下降させることになる。この際に、終期補助ダンパー機構91は、山状の部分Yの高さの下降に伴って、
図12(a)に示すように、徐々にロッド102aをケース102b内に格納させる。ここで、
図11(c)に示すように、伸縮機構20の伸長動作が終了すると床板部48が完全に開かれ、終期補助ダンパー機構91は、
図12(b)に示すように、ロッド102aがケース102b内に格納された状態になる。このように、床板部48が完全に開かれた状態に移行する際には、ケース102b内に封入されているガスの反力によりロッド102aに減衰力が働く。これにより、伸縮機構20の伸縮動作の終了時において、山状の部分Yが急激に下降し、衝撃や振動が発生する事態を防止することができる。
【0061】
同様に、初期ポップアップ機構90は、山状の部分Yの高さが下降し、ある程度山状の部分Yの傾斜が緩やかになると、
図13(a)に示すように、接触部95aと被接触部95bとが接触し、その旨が検知部に検知される。すると、アクチュエータ93が作動してポップアップ部94に減衰力が加えられ、ポップアップ部94の下降速度が減速される。これにより、山状の部分Yは、下面を当接部94aに当接させたままゆっくりと下降し、
図13(b)に示すように、床板部48が完全に開かれた状態に移行する。このため、初期ポップアップ機構90によっても、伸縮機構20の伸縮動作の終了時において、山状の部分Yが急激に下降し、衝撃や振動が発生する事態を防止することができる。
【0062】
この実施の形態における発明によれば、伸縮機構20が二つのスライダー部を重ねて有することにより、拡幅部12を大きく広げることができ、大スペースを即座に確保することができる。また、2段構成の拡幅部を有する特装車両2において拡幅部12の拡幅および収納を的確に実現することができる。また、拡幅部を2段構成にすることにより、車体幅よりもはるかに広い拡幅面積を確保することが可能になる。
【0063】
また、収納時に固定ガイド部22に設けられたフック52を第2スライダー部26に設けられたフック係合部49に係合させることにより、チェーン36が破断するなど、損傷した場合でも第1スライダー部24および第2スライダー部26がスライドすることを的確に防止することができる。
【0064】
また、大スペースを即座に確保することが可能な特装車両2においては、支持部材40によって谷状の部分Tが支持される床保持機構を第1スライダー部24に備えることにより、拡幅部12を拡幅または収縮させる際において床板部48が垂れ下がらないように保持することができる。
【0065】
また、第1スライダー部24に固定された支持部材40で谷状の部分Tを保持することにより、移動速度の異なる第1スライダー部24、第2スライダー部26の動きに合わせて床板部48を開閉することができる。
【0066】
また、山状の部分Yの直下に終期補助ダンパー機構91を設けることにより、拡幅部12を拡幅し、床板部48が完全に開かれた状態に移行する際に、床板部48を滑らかに開くことができる。また、初期ポップアップ機構90において、ポップアップ部94に減衰力が加えられることによっても、同様の効果が得られる。
【0067】
なお、拡幅部12が拡幅状態から収納状態に変化する場合は、上述の説明と反対の動作がなされる。すなわち、伸縮機構20は、
図11(c)に示すように、床板部48が完全に開かれた状態から折り畳みが開始され、
図11(b)に示すように、中間状態を経て、
図11(a)に示すように、固定ガイド部22、第1スライダー部24、および第2スライダー部26が重ねられた状態に移行する。なお、収納する際においても、床板部48の拡幅方向側の端部は、谷状の部分Tよりも速い速度で収納方向に移動する。
【0068】
この場合、
図11(c)に示すように、床板部48が完全に開かれた状態において、
図13(b)に示すように、接触部95aと被接触部95bが接触していることが検知部に検知され、アクチュエータ93が作動する。これにより、
図13(a)に示すように、ポップアップ部94が上昇して山状の部分Yが当接部94aによって突き上げられ、
図11(b)に示す中間状態に移行する。
【0069】
なお、床板部48を折り畳む初期の過程においては、伸縮機構20を収縮させたとしても、必ずしも第1床板部48a(第3床板部48c)と第2床板部48b(第4床板部48d)の連結部分を山状にすることができるとは限らない。しかしながら、床板部48を折り畳む初期の過程において、第1床板部48a(第3床板部48c)と第2床板部48b(第4床板部48d)の連結部分を初期ポップアップ機構90でポップアップさせることにより、水平状態の床板部48の連結部分を強制的に下方から突き上げて折り畳みのきっかけを創出し、滑らかに床板部48の連結部分を山状にすることができる。このため、床板部48の連結部分に無理な力が加わって損傷する事態を防止することができ、拡幅部12の収納を開始する際に、滑らかに床板部48を折り畳むことができる。
【0070】
なお、上述の実施の形態においては、拡幅部12を拡幅収納させる機構として、
図3、4に示すような、チェーン36を用いて伸縮する伸縮機構20を採用しているが、チェーン36を用いない伸縮機構を用いてもよい。たとえば、
図14(a)〜(c)に示すように、伸縮機構20に代えて、スプライン軸150を用いた伸縮機構140を採用してもよい。
【0071】
ここで、
図14(a)〜(c)に示すように、伸縮機構140は、車両本体6内に固定される固定ガイド部142、拡幅時に固定ガイド部142から車両本体6の外側(拡幅方向側)にスライドする第1スライダー部144、拡幅時に第1スライダー部144からさらに車両本体6の外側(拡幅方向側)にスライドする第2スライダー部146を備えている。
【0072】
なお、伸縮機構140上には床板部48が配置され、第1スライダー部144には、床板部48の谷状の部分Tを支持する支持部材40が固定されている。また、第2スライダー部146の拡幅方向側の端部に取り付けられた固定部47には端床部46が固定されている。
【0073】
ここで、固定ガイド部142は、直方体状の筐体152に収納された第1台形ネジ軸148と第1台形ネジ軸148の上方において第1台形ネジ軸148と平行に配置されたスプライン軸150とから構成されている。そして、スプライン軸150の外周には、軸方向と平行な溝を有する歯が全長に亘って外周に形成されている。なお、第1台形ネジ軸148とスプライン軸150の収納方向側の端部には、それぞれスプロケット148a、150aが取り付けられ、両者には、チェーン149が掛け渡されている。また、スプライン軸150には、さらに軸方向に移動可能な移動スプロケット150bが取り付けられている。
【0074】
第1スライダー部144は、固定ガイド部142によって長手方向にスライド可能に保持され、第2台形ネジ軸154とこれを収納する筐体部155を有している。また、筐体部155の収納方向側の端部の下方には、突出部156が固定されており、突出部156の下端には、第1台形ネジ軸148と螺合する第1ナット部156aが設けられている。なお、突出部156は、スプライン軸150を跨いでおり、スプライン軸150には接続されていない。
【0075】
また、第2台形ネジ軸154の収納方向側の端部には、スプロケット154bが取り付けられ、スプロケット154bと移動スプロケット150bには、チェーン158が掛け渡されている。
【0076】
ここで、
図15は、
図14(c)内において円で示した部分の拡大図である。
図15(a)に示すように、筐体部155の収納方向側の端部には、さらに、筐体部155と突出部156とに固定された固定部材157が取り付けられている。固定部材157は、
図15(a)に示すように、断面視においてL字形状を有しており、筐体部155の収納方向側の端部には、筐体部155、突出部156、および固定部材157によって、これらに挟まれた箱状空間159が形成されている。
【0077】
かかる箱状空間159の中央には、移動スプロケット150bが配置されている。この移動スプロケット150bは、スプライン軸150の軸方向に移動可能に配置され、かつスプライン軸150と共に回転可能な筒状部材162(
図15(b))の外周に固定されている。また、筒状部材162の軸方向の両端は、
図15(c)に示すスライドベアリングなどの軸受部材164によって回転可能に保持されている。そして、軸受部材164は、箱状空間159内に固定されたホルダー部166によって保持されている。なお、収納方向側のホルダー部166は、筐体部155と固定部材157とに固定され、拡幅方向側のホルダー部166は、筐体部155、突出部156、および固定部材157とに固定されている。
【0078】
これにより、第1スライダー部144が拡幅方向側または収納方向側にスライドした際に、スプロケット154bと移動スプロケット150bの位置がずれてチェーン158が傾斜し、チェーン158に引張負荷が掛かることを防止することができる。また、スプロケット154bと移動スプロケット150bの位置がずれることにより、第1スライダー部144の拡幅または収納に不具合が生じることを防止することができる。
【0079】
第2スライダー部146は、伸縮方向に延びる板状または箱状の部品であり、収納方向側の端部の下方には、突出部160が固定されている。突出部160の下端には、第2台形ネジ軸154と螺合する第2ナット部160aが設けられている。
【0080】
次に、伸縮機構140の動作について、伸縮機構140が車両本体6から拡幅される場合の動作を例に説明する。まず、
図14(a)に示すモーター110が駆動してスプロケット112に回転力が入力されると、チェーン114およびスプロケット116を介して第1台形ネジ軸148に回転力が伝達され、第1台形ネジ軸148が回転する。
【0081】
この第1台形ネジ軸148の回転により、スプロケット148aが回転し、チェーン149およびスプロケット150aを介してスプライン軸150に回転力が伝達され、スプライン軸150が回転する。また、第1台形ネジ軸148の回転により、第1台形ネジ軸148と螺合する第1ナット部156aを有する突出部156が拡幅方向に移動する。これにより、第2台形ネジ軸154を含む第1スライダー部144全体が拡幅方向に移動する。
【0082】
ここで、第1スライダー部144全体が拡幅方向に移動すると、これに連動して、移動スプロケット150bもまたスプライン軸150に沿って拡幅方向に移動する。なお、上述したように、スプライン軸150は回転しているため、移動スプロケット150bは回転しながら拡幅方向に移動する。このため、チェーン158およびスプロケット154bを介して第2台形ネジ軸154に回転力が伝達され、第2台形ネジ軸154が回転する。
【0083】
これにより、第2台形ネジ軸154と螺合する第2ナット部160aを有する突出部160を介して第2スライダー部146が拡幅方向に移動する。なお、拡幅部12が拡幅状態から収納状態に変化する場合においては、上述の説明と反対の動作がなされる。また、床板部48、初期ポップアップ機構90、および終期補助ダンパー機構91の挙動については、伸縮機構20を例に
図11〜13等を用いて説明した場合と同様である。
【0084】
このように、チェーン36を用いて伸縮する伸縮機構20に代えて、スプライン軸150を用いた伸縮機構140を採用した場合においても、伸縮機構140が二つのスライダー部を重ねて有することにより、拡幅部12を大きく広げることができ、大スペースを即座に確保することが可能な2段構成の拡幅部を有する特装車両2において、拡幅部12の拡幅および収納を的確に実現することができる。
【0085】
また、拡幅部12を拡幅収納させる機構として、上述したような伸縮機構20、140を採用しなくてもよい。たとえば、
図16(a)〜(c)に示すように、第1拡幅部180に、拡幅部12から第1拡幅部180と第2拡幅部182を拡幅収納させるための展開機構184を設けてもよい。なお、
図16において、床板部48などの展開機構184以外の部品等は省略している。
【0086】
ここで、展開機構184は、チェーン186、第1回転体188、第2回転体190、第1チェーン支持部192、および第2チェーン支持部194を備えている。このうち、チェーン186と第1回転体188と第2回転体190は、第1拡幅部180の下端に配置されており、チェーン186は、第1回転体188と第2回転体190に掛け渡されている。なお、第1回転体188は第1拡幅部180の収納方向側に配置され、第2回転体190は第1拡幅部180の拡幅方向側に配置されている。
【0087】
また、車両本体6の拡幅方向側の端部には、第1チェーン支持部192が固定され、第2拡幅部182の収納方向側の端部には第2チェーン支持部194が固定されている。第1チェーン支持部192と第2チェーン支持部194は、それぞれチェーン186に接続されている。
【0088】
次に、展開機構184の動作について、拡幅部12が車両本体6から拡幅される場合の動作を例に説明する。まず、
図16(a)に示すように、第1拡幅部180と第2拡幅部182が共に車両本体6内に収納された収納時において、図示しない駆動部により、第1回転体188、第2回転体190が回転すると、これに伴ってチェーン186が回転する。
【0089】
ここで、チェーン186は、
図16(b)に示すように、車両本体6に固定された第1チェーン支持部192を支点として回転しながら第1拡幅部180もろとも拡幅方向に移動する。また、チェーン186に接続された第2チェーン支持部194が第2拡幅部182ごと拡幅方向に移動する。そして、
図16(c)に示すように、拡幅が完了すると第1回転体188、第2回転体190の回転が停止する。
【0090】
なお、この拡幅動作において、チェーン186を基準とすると、車両本体6と第2拡幅部182は、チェーン186の回転に伴って、相対的に同じ速度で反対方向に離間する。すなわち、車両本体6を基準にすれば、第2拡幅部182は、第1拡幅部180の2倍の速度で拡幅方向に移動する。なお、拡幅部12が拡幅状態から収納状態に変化する場合は、上述の説明と反対の動作がなされる。
【0091】
この展開機構184によれば、第2拡幅部182が第1拡幅部180の2倍の速度で移動するという規則性を維持しながら、第1拡幅部180と第2拡幅部182を拡幅収納させることができる。このため、先に第2拡幅部182が拡幅してしまって後に第1拡幅部180が拡幅するなどの不規則な挙動をする事態を防止することができる。
【0092】
また、
図16(a)〜(c)には図示していないが、展開機構184においても、拡幅部12上に床板部48を配置した場合、床板部48は、
図11等を用いて説明した場合に準じた挙動を示す。当然のことながら、床板部48には、初期ポップアップ機構90、および終期補助ダンパー機構91を取り付けることも可能である。
【0093】
なお、上述の実施の形態においては、2段構成の拡幅部12を例示したが、拡幅部は、3段以上の多段構成であってもよい。また、両側の拡幅部12の段数が異なってもよい。たとえば、片側が1段構成で反対側が2段構成であってもよい。また、拡幅部12が3段以上の多段構成である場合、床板部48は、一部に断面M字状を含む蛇腹状に折り畳まれる。
【0094】
また、上述の実施の形態においては、伸縮機構20に台形ネジ軸28、伸縮機構140に第1台形ネジ軸148、第2台形ネジ軸154を用いているが、これらに用いる軸は、必ずしも台形ネジ軸である必要はなく、外周にネジが形成されたネジ軸であればよい。
【0095】
また、上述の実施の形態においては、初期ポップアップ機構90において、油圧を用いてポップアップ部94の昇降を制御する場合を例に説明したが、ポップアップ部94の昇降は、必ずしも油圧によらず、たとえば、ガスやスプリングなどを用いて行ってもよい。同様に、終期補助ダンパー機構91においても、必ずしもガスダンパーを用いる必要はなく、たとえば、油圧やスプリングなどを用いても良いなど、本発明の目的を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能なものである。
【解決手段】車両本体の幅方向に拡幅および収納が可能な拡幅部を備えた特装車両において、前記拡幅部内に配置された床板部の折り畳み開始を補佐する初期ポップアップ機構であって、前記床板部を折り畳んだ際に山状になる連結部分の下方に配置された本体部と、前記本体部から突出可能に格納されると共に、前記連結部分に当接する当接部を有するポップアップ部とを備え、前記床板部が完全に開かれた状態から折り畳みが開始される際に、前記本体部から前記ポップアップ部を突出させ、前記当接部によって前記連結部分を突き上げる。