(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794032
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】配線ダクト
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20201119BHJP
H05K 7/02 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
H02G3/04 050
H05K7/02 N
H02G3/04 087
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-167566(P2016-167566)
(22)【出願日】2016年8月30日
(65)【公開番号】特開2018-38124(P2018-38124A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小出 章博
(72)【発明者】
【氏名】水上 実
【審査官】
鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭48−099493(JP,U)
【文献】
特開2002−159115(JP,A)
【文献】
特開2012−231144(JP,A)
【文献】
特表2004−500782(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0151524(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H05K 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部と、前面側に突出する側面部が基端部の上下から延びた配線保持部と、を備えたダクト部材を具備し、前記基端部に設けられた第一の連結部を介して前記ダクト部材を背面合わせで連結した配線ダクトであって、
ダクト部材は略同一形状で構成された二つのベース部材を上下方向に組み合わせて構成され、
ベース部材には、ベース部材同士を連結する第二の連結部が備えられた配線ダクト。
【請求項2】
マウントアングルへの取付に利用される固定部を基端部の側面に備えた請求項1に記載の配線ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器から引き出された配線等の収納に利用される配線ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、上下に複数の側面部を有するダクト部材をラックといわれる電気機器収納用箱のマウントアングルに取り付けて使用することが知られている。このダクト部材は機器から引き出された配線等の収納に利用されるものであり、電気機器収納用箱に取り付けると、配線を支えることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−159115号公報
【0004】
このようなダクト部材は、マウントアングル内の空間で配線処理を行う場合に使用されるため、基端部の片面側に配線保持部を有する構成とすることが一般的である。配線保持部を両面側に有する配線ダクトも存在はするが、使用頻度は低いものであった。そのため、配線保持部を両面側に有する配線ダクトを専用部材として、一体で成形すると、成形設備上、在庫管理上の観点から、コスト高となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明の課題は、配線保持部を両面側に有する配線ダクトを安価に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、次のような手段を採用する。第一の手段は、基端部と、前面側に突出する側面部が基端部の上下から延びた配線保持部と、を備えたダクト部材を具備し、基端部に設けられた連結部を介して前記ダクト部材を背面合わせで連結した配線ダクトである。
【0007】
第一の手段において、ダクト部材が上下方向に組み合わされる複数のベース部材から構成されるものとすることが好ましい。
【0008】
第一の手段において、ダクト部材が上下方向に組み合わされる二つのベース部材から構成され、前記ベース部材が、略同一形状で構成されるものとすることが好ましい。
【0009】
第一の手段において、マウントアングルへの取付に利用される固定部を基端部の側面に備えた構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、配線保持部を両面側に有する配線ダクトを安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態のダクト部材を前面側から見た斜視図である。
【
図2】
図1のダクト部材を背面側から見た斜視図である。
【
図4】ダクト部材が連結された配線ダクトの斜視図である。
【
図5】カバーと固定部が取り付けられたダクト部材の斜視図である。
【
図6】ダクト部材が取り付けられた電気機器収納用箱の斜視図である。
【
図7】ダクト部材として組み付ける前のベース部材を前面側から見た斜視図である。
【
図8】ダクト部材として組み付ける前のベース部材を背面側から見た斜視図である。
【
図9】ダクト部材として組み付ける前のベース部材の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に発明を実施するための形態を示す。
図1及び
図2に示すことから理解されるように、本実施形態のダクト部材1は基端部22と、基端部22の上下双方から前面側に突出する側面部24を有する構成である。このダクト部材1の背面には、ダクト部材1同士を背面合わせで連結する連結部を設けている。したがって、
図3に示すようなダクト部材1を、互いの背面が対向するように連結して
図4に示した状態とすると、前後面に配線スペース(配線保持部)を備えた配線ダクト5を構成することができる。このため、同様な大きさの配線ダクト5を一体成形する際に必要となる成形金型よりも小型の成形金型を用いることで成形することが可能となる。このため、製造コストを抑制することが可能となる。
【0013】
本実施形態のダクト部材1の基端部22には、配線挿通孔23が設けられており、基端部22の前後方向の配線保持部にまたがって配線することが可能である。基端部22の前面方向に延びる櫛状の側面部24は、略平行に延びる複数の腕部25を備えている。この腕部25の間に配線を通せば、ダクト部材1に対して上下となる方向に向けて配線をすることが可能となる。
図5に示すように、側面部24の先端には、ダクト部材1の前面側の開口を覆うカバー42が取り付け可能である。また、本実施形態の基端部22の左右両側面には、平面視略L字状の固定部44が設けられている。ダクト部材1は、この固定部44を介して、
図6に示すように、電気機器収納用箱9のマウント部材92などに固定される。なお、本実施形態の固定部44はダクト部材1と別部材としているが、基端部22の側面に一体形成することも可能である。
【0014】
本実施形態においては、ダクト部材1を背面合わせで連結することによって、前後面に配線保持部を備えた配線ダクト5を構成する。この配線ダクト5の基端部22に固定部44を設け、マウント部材92などに固定する。マウント部材92に固定される板状のパネルの前後に貫通するようにコネクタが設けられ、前後方向からケーブルを接続することができる配線接続部材において、前方向から接続されるケーブルは、前側の配線保持部で保持し、後方向から接続されるケーブルは、後側の配線保持部で保持する。このように、両側に配線保持部を設けることで、前側と後側とでケーブル等を区別して配線することができ、ケーブルの混同を避けることができる。また、基端部22には配線挿通孔23が設けられており、配線挿通孔23を通すことで、前側と後側とにまたがって配線をすることもできる。
【0015】
図1及び
図7に示す事項から理解されるように、ダクト部材1は基端部22で上下方向に組み合わされる複数のベース部材3から構成されるものとすることが可能である。そうすることでベース部材3の成形金型で、配線ダクトを成形することができるため、成形設備上のコストを抑制することが可能となる。本実施形態のダクト部材1は、略同一形状の二つのベース部材3を組み合わせて構成されている。ベース部材3は、基端部22と基端部22の前方に延びる側面部24で構成されており、このベース部材3を上下方向で組み合わせると、基端部22の上下から側面部24が前方に延びるダクト部材1とすることができる。なお、本実施形態のダクト部材1は、樹脂製であり、単一のベース部材3の成形金型で、配線ダクトを成形することができるため、さらに製造コストを抑制することができる。
【0016】
本実施形態のダクト部材1は、ダクト部材1同士を連結可能とするため、基端部22の背面に第一の連結部71を設けている。第一の連結部71は、ダクト部材1を背面同士で連結するために使用されるものであり、凸部と、この凸部を嵌め込むことが可能な凹部を備えている。より具体的には、ダクト部材1を構成するベース部材3の一端側には、後方側に延びる平面視T字形状の凸部82が設けられており、更には、他のダクト部材1の凸部82を嵌め込むことが可能な凹部83が設けられている。この凹部83は中央に窪みを有する長円形状に形成されている。このような構成であるため、窪んでいない箇所から凸部82を凹部83に挿入させ、窪んでいる箇所までスライドさせると、ダクト部材1同士の分離を抑制することができる。
【0017】
また、基端部22の背面には、弾性変形可能な部位に設けられた突出部位88と、この突出部位88を嵌め込むことが可能なへこみ部89が設けられている。この突出部位88とへこみ部89は、ダクト部材1同士を連結する際に、適切な位置でダクト部材1相互の移動を抑制する。
【0018】
本実施形態のダクト部材1は、同形状のベース部材3の一側面が互いに向かい合うように組み合わせることで構成されており、凸部82と凹部83が上下に並ぶように位置している。同様に、突出部位88とへこみ部89も上下に並ぶように位置している。本実施形態においては、ダクト部材1の両端に設けられた凸部82を、互いに対応する凹部83に嵌め込むことでダクト部材1同士を連結するため、合計4つの凸部82が4つの凹部83に挿入される。この状態から、4つの突出部位88が4つのへこみ部89に嵌め込まれるまでダクト部材1をスライドさせると、前方及び後方に配線空間を有する配線ダクト5が構成される。
【0019】
ところで、
図2、
図8及び
図9に示されていることから理解されるように、ベース部材3には、ベース部材3同士を連結する第二の連結部72が設けられている。本実施形態の第二の連結部72は、凸部と、この凸部を嵌め込むことが可能な凹部を備えている。より具体的には、
図10に示すように、L字状の凸部76と、この凸部76をひっかけることが可能な凹部77をベース部材3の基端部22に備えている。ベース部材3を連結してダクト部材1を構成する際には、凹部77にL字状の凸部76を挿入後、所定の位置までスライドさせることで、所定の位置で固定する。
【0020】
ところで、
図5に示すように、本実施形態では、ダクト部材1をマウント部材92などに固定可能にする固定部44を、基端部22の左右両側面に設けている。この固定部44は、上下に位置するベース部材3の双方の側面に接するように取り付けられる。本実施形態のダクト部材1は、ダクト部材1を構成するベース部材3を左右方向に離れるようにスライドさせると、二つのベース部材3に分離可能となる構成であるが、ダクト部材1に固定部44を取り付けると、ベース部材3が左右方向にスライドすることが抑制されるため、組み合わされたベース部材3の分離が抑制される。
【0021】
以上、一つの実施形態を中心に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、連結部の形状は、実施形態の構造と異なるものであっても良い。たとえば、第一の連結部で示したような構成を第二の連結部で採用しても良いし、その逆でもよい。
【0022】
また、基端部から延びる側面部は、板部と開口部とを交互に備える櫛状に形成された実施例を示したが、櫛状に形成する形態でなくても良い。側面部は、少なくとも配線を保持できる形状であればよく、例えば、略長方形の板部で形成されてもよい。また長方形の一部のみに開口部を有した凹形状であってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 ダクト部材
3 ベース部材
22 基端部
24 側面部
71 第一の連結部
72 第二の連結部