【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
使用材料としては、以下に示すとおりである。
(1)普通ポルトランドセメント:太平洋セメント社製
(2)細骨材A:山口県山口市産の砕砂と佐賀県東松浦郡産の海砂を、1:1の質量比で混合してなる混合砂、密度2.59g/cm
3
(3)細骨材B:一般社団法人セメント協会(販売元)セメント強さ試験用標準砂
(4)粗骨材:福岡県北九州市産硬質砂岩砕石、最大寸法20mm、密度2.65g/cm
3
(5)高性能AE減水剤:BASFジャパン製、商品名「マスターグレニウムSP8SV」
(6)高性能減水剤:花王株式会社製、商品名「マイティ150」
(7)消泡剤A:BASFジャパン製、商品名「マスターエア404」
(8)消泡剤B:株式会社小野田製、商品名「ニコフィックス800」
【0065】
[実施例1]
[高性能AE減水剤量の予測]
選択用および学習用サンプル(以下、単に「学習用サンプル」ともいう。)としてサンプリング日の異なる15個の普通ポルトランドセメントについて、上記細骨材A、粗骨材、高性能AE減水剤、消泡剤Aを用いてコンクリートを製造した。
各材料の配合は、単位セメント量が330kg/m
3、細骨材率が45質量%、単位水量が165kg/m
3、高性能AE減水剤量がコンクリート100質量%中、0.5〜1.0質量%となるようにした。また、空気量が2%以下となるように消泡剤の添加量を調整した。製造したコンクリートの混練直後のスランプを測定した。
コンクリートの製造は、「JIS A 1138(試験室におけるコンクリートの作り方)」に準拠して行った。また、コンクリートのスランプは、「JIS A 1101(コンクリートのスランプ試験方法)」に準拠して測定した。
得られたスランプを評価データの実測値(選択データおよび学習データ)とした。
【0066】
また、学習用サンプルに使用した15個の普通ポルトランドセメントの各々について、コンクリートの配合条件に関するデータとして高性能AE減水剤の量(以下、「高性能AE減水剤量」ともいう。)、セメントに関するデータとしてセメントの鉱物組成、及び、セメントの物理特性に関するデータとしてモルタルフローを、学習データにおける監視データの実測値とした。
なお、高性能AE減水剤量は、学習用サンプルとして製造したコンクリートにおいて目標スランプを8±1cmとして添加した量(コンクリート100質量%中の割合(質量%))である。
また、セメントの鉱物組成は、上記15個の普通ポルトランドセメントについて、粉末X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製D8 ADVANCE)にて、測定範囲:2θ=10〜65°の範囲で測定を行い、リ−トベルト解析ソフト(ブルカー・エイエックスエス株式会社製DIFFRAC
plusTOPAS(Ver.3))によって計算されたC
3SとC
3Aの含有率である。
モルタルフローは、以下の方法による混練直後の値と混練30分後の値である。
[モルタルフロー試験]
上記普通ポルトランドセメント、細骨材B、高性能減水剤、消泡剤Bを、水セメント比が0.35、細骨材とセメントの質量比(細骨材/セメント)が2.0、高性能減水剤がセメント100質量%に対して1.2質量%、消泡剤がセメント100質量%に対して0.1質量%となるように混合して調製したモルタルについて、「JIS A 1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)」のフロー試験に準拠して、混練直後と混練30分後のモルタルフローを測定した。
【0067】
[監視データの選択]
上述した監視データ(高性能AE減水剤量、C
3S及びC
3Aの含有率、モルタルフロー(直後、30分後))のうち、表1に示す監視データを選択した条件1〜4の各々について(表1中、選択した監視データを「○」で示す。)、選択した監視データの実測値と、評価データの実測値を用いて、未学習のニューラルネットワークの学習を行った。該学習は1300回行った。
学習後のニューラルネットワークの入力層に、選択した監視データの実測値を入力して得られた評価データの推測値と、評価データの実測値との平均2乗誤差(表1中、「RMSE」と示す。)を算出した。
結果を表1に示す。
条件1〜4のうち、平均2乗誤差の値が最も小さかった条件1において選択した監視データの組み合わせ(高性能AE減水剤量、C
3S及びC
3Aの含有率、モルタルフロー(直後、30分後))を、ニューラルネットワークの学習に用いられる監視データ(学習データおよびモニターデータ)とした。
【0068】
【表1】
【0069】
また、モニター用のサンプル(以下、「モニター用サンプル」ともいう。)として、前記学習用サンプルとして使用した15個の普通ポルトランドセメントとはサンプリング日の異なる2個の普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートのスランプを学習データと同様に測定して、モニターデータ(評価データの実測値)とした。
さらに、上記2個の普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートの高性能AE減水剤量、上記2個の普通ポルトランドセメントの鉱物組成、及び上記2個の普通ポルトランドセメントを用いたモルタルフローを、学習データと同様にして得て、モニターデータ(監視データの実測値)とした。
【0070】
上記学習データを用いて、ニューラルネットワークの学習を行った。ニューラルネットワークとしては、入力層、中間層及び出力層を有する階層型のニューラルネットワークを用いた。なお、該ニューラルネットワークは、監視データの選択に用いたニューラルネットワークとは異なる未学習のものである。
ニューラルネットワークの学習は、最初に上記学習データとモニターデータを用いて10,000回行った。得られたニューラルネットワークを用いて、σ
Lとσ
Mを算出したところ、σ
Lとσ
Mの関係はσ
L<σ
Mであった。
その後、ニューラルネットワークを初期化し、上記学習データとモニターデータを用いて、ニューラルネットワークの学習を、前記学習回数に0.95を乗じた数の学習回数(端数切捨て)行うことを、学習後のニューラルネットワークを用いて算出されたσ
Lとσ
Mの関係がσ
L≧σ
Mとなるまで繰り返した。その結果、解析度判定値は、2.56%となったので、学習を終了した。
上記サンプルとは異なる普通ポルトランドセメントBを用いて、上記学習プロセスで使用したコンクリートと同一の条件で製造したコンクリートについて、スランプを測定した。その結果は、8.5cmであった。
一方、学習データおよびモニターデータにおける、17個の監視データの実測値の組み合わせ(高性能AE減水剤量、セメントの鉱物組成、及びモルタルフローの組み合わせ)を、得られた学習済みのニューラルネットワークの入力層に入力し、出力層より、スランプの推測値を出力した。
得られたスランプの推測値は、8.2±0.6cm(偏差は3σを示す。)であり、実測値と予測値はほぼ一致した。このことから、得られた学習済みのニューラルネットワークは信頼性の高いものであることがわかる。
【0071】
次に、上記学習済みのニューラルネットワークを用いて、コンクリートの配合条件(高性能AE減水剤量)の予測を行った。
上記ニューラルネットワークの学習に使用した、サンプリング日の異なる17個(学習用サンプル15個とモニター用サンプル2個の合計)のコンクリートの高性能AE減水剤量を除く監視データ(C
3S及びC
3Aの含有率、モルタルフロー(直後、30分後))の実測値の平均値を算出した。
その結果、C
3Sの含有率の実測値の平均値は60.4質量%、C
3Aの含有率の実測値の平均値は6.7質量%、モルタルフロー(直後)の実測値の平均値は232mm、モルタルフロー(30分後)の実測値の平均値は160mmであった。
【0072】
次いで、上記学習済みのニューラルネットワークの入力層に、高性能AE減水剤量を除く監視データ(C
3S及びC
3Aの含有率、モルタルフロー(直後、30分後))の実測値の平均値と、表2に示す高性能AE減水剤量を入力して、各高性能AE減水剤量に対するスランプの推測値を得た。結果を表2に示す。なお、高性能AE減水剤量は、上記17個のコンクリートの高性能AE減水剤量の実測値の数値範囲内で、任意に変動した値(実測値の最大値と最小値を10等分するように変動した値)である。
【0073】
【表2】
【0074】
高性能AE減水剤量とスランプの推測値との組み合わせから、回帰分析を行い、高性能AE減水剤量とスランプの推測値との関係を示す下記式(1)を得た。
スランプの推測値=8.51×(高性能AE減水剤量)+1.59・・・(1)
式(1)から、安全側に考慮して誤差を修正して、高性能AE減水剤の必要量とスランプの目標値との関係を示す下記式(2)を得た。修正はスランプの実測値がスランプの推測値と比べて過少になることを防ぐ目的で行われるものである。具体的には、誤差0.42cm(2σ)の値を、式(1)の右辺から減算することで行った。
スランプの目標値=8.51×(高性能AE減水剤の必要量)+1.17・・・(2)
【0075】
得られた式(2)を用いて、スランプの目標値に対する高性能AE減水剤の必要量を求めた。具体的には、スランプの目標値を8.5cm以上と定め、上記式(2)に該目標値の下限値(8.5cm)を代入することで、高性能AE減水剤の必要量(0.80質量%)を得た。該必要量は、コンクリートの製造において、高性能AE減水剤量を0.80質量%以上とすれば、得られるコンクリートのスランプが目標値(8.5cm以上)を下回ることはないと推測できる値である。
【0076】
[比較例1]
実施例1で使用した17個(学習用サンプル15個+モニター用サンプル2個)の普通ポルトランドセメントを母集団とし、コンクリートのスランプとの高い相関を有するコンクリートの配合条件に関するデータ、セメントに関するデータ、及び、セメントの物理特性に関するデータであった、高性能AE減水剤量、セメントの鉱物組成(C
3S及びC
3Aの含有率)、及びモルタルフロー(直後、30分後)を説明変数とした重回帰分析を行い、下記回帰式(決定係数R
2=0.42)を得た。
(コンクリートのスランプ(cm))=(8.95)×(高性能AE減水剤量(質量%))+(0.04)×(C
3Sの含有率(質量%))−1.09×(C
3Aの含有率(質量%))+1.9×10
−3×(モルタルフロー(直後)(mm))−1.5×10
−3×(モルタルフロー(30分後)(mm))+10.7
上記回帰式に、実施例1で使用した15個の普通ポルトランドセメントに関するデータである、高性能AE減水剤量、セメントの鉱物組成(C
3S及びC
3Aの含有率)、及びモルタルフロー(直後、30分後)を代入して得られたスランプの推測値は、8.1±1.4cm(偏差は3σを示す。)であった。
【0077】
学習済みのニューラルネットワークに高性能AE減水剤量を除く監視データの実測値の平均値と表2に示す高性能AE減水剤量を入力する代わりに、上記回帰式に高性能AE減水剤量を除く監視データの実測値の平均値と表2に示す高性能AE減水剤量を代入して、各高性能AE減水剤量に対するスランプの推測値を得る以外は実施例1と同様にして、高性能AE減水剤量とスランプの推測値との関係を示す下記式(3)を得た。
スランプの推測値=8.06×(高性能AE減水剤量)+1.59・・・(3)
式(3)から、安全側に考慮して誤差を修正して、高性能AE減水剤の必要量(スランプの目標値を得ることが可能である高性能AE減水剤量)とスランプの目標値との関係を示す下記式(4)を得た。修正はスランプの実測値がスランプの推測値と比べて過少になることを防ぐ目的で行われるものである。具体的には、誤差0.42cm(2σ)の値を、式(3)の右辺から減算することで行った。
スランプの目標値=8.06×(高性能AE減水剤の必要量)+1.39・・・(4)
得られた式(4)によりスランプの目標値(8.5cm以上)に対する高性能AE減水剤量の必要量を求めたところ、0.88質量%であった。
【0078】
実施例1及び比較例1で使用した17個(学習用サンプル15個+モニター用サンプル2個)の普通ポルトランドセメントとはサンプリング日の異なる普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートであって、高性能AE減水剤量を除く監視データの実測値が上記17個のサンプルの実測値の平均値に近く、かつスランプが8.5cmに近いコンクリートにおける高性能AE減水剤量は0.79質量%であった。
該量は、比較例1で求めた高性能AE減水剤の必要量(0.88質量%)よりも、実施例1で求めた高性能AE減水剤の必要量(0.80質量%)に近いことから、本発明の予測方法によれば、より正確にコンクリートの配合条件を予測することができることがわかる。
【0079】
[実施例2]
[単位水量の予測]
選択用および学習用サンプルとしてサンプリング日の異なる15個の普通ポルトランドセメントについて、上記細骨材A、粗骨材、高性能AE減水剤、消泡剤Aを用いてコンクリートを製造した。
各材料の配合量は、水とセメントの質量比(水/セメント)が0.3、細骨材率が45質量%、高性能AE減水剤量がセメント100質量%に対して0.7質量%となるようにした。また、空気量が2%以下となるように消泡剤の添加量を調整したコンクリートを製造し、製造したコンクリートの混練直後のスランプを測定した。
なお、コンクリートの製造方法およびスランプの測定方法は実施例1と同じである。
得られたスランプを評価データの実測値(選択データおよび学習データ)とした。
【0080】
また、学習用サンプルに使用した15個の普通ポルトランドセメントの各々について、
コンクリートの配合条件に関するデータとして単位水量、セメントに関するデータとしてセメントの鉱物組成、及び、セメントの物理特性に関するデータとしてモルタルフローを、学習データにおける監視データの実測値とした。
なお、単位水量は、学習用サンプルとして製造したコンクリートにおいて、所要のスランプ(8±1cm)を得ることができる範囲でできるだけ小さくなるよう試験を行って調整した値である。
また、セメントの鉱物組成は、上記15個の普通ポルトランドセメントについて、実施例1と同様にして計算したC
3S及びC
3Aの含有率である。
また、モルタルフローは、上記15個の普通ポルトランドセメントについて、実施例1と同様にして測定した混練直後の値と混練30分後の値である。
【0081】
[監視データの選択]
上述した監視データ(単位水量、C
3S及びC
3Aの含有率、及びモルタルフロー(直後、30分後))のうち、表3に示す監視データを選択した条件1〜4の各々について(表3中、選択した監視データを「○」で示す。)、選択した監視データの実測値と、評価データの実測値を用いて、未学習のニューラルネットワークの学習を行った。該学習は800回行った。
学習後のニューラルネットワークの入力層に、選択した監視データの実測値を入力して得られた評価データの推測値と、評価データの実測値との平均2乗誤差(表3中、「RMSE」と示す。)を算出した。
結果を表3に示す。
条件1〜4のうち、平均2乗誤差の値が最も小さかった条件1において選択した監視データの組み合わせ(単位水量、C
3S及びC
3Aの含有率、モルタルフロー(直後、30分後))を、ニューラルネットワークの学習に用いられる監視データ(学習データおよびモニターデータ)とした。
【0082】
【表3】
【0083】
また、モニター用のサンプルとして、前記学習用サンプルとして使用した15個の普通ポルトランドセメントとはサンプリング日の異なる2個の普通ポルトランドセメントを用いて、コンクリートのスランプを学習データと同様に測定して、モニターデータ(評価データの実測値)とした。
さらに、上記2個の普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートの単位水量、上記2個の普通ポルトランドセメントのセメントの鉱物組成、及び上記2個の普通ポルトランドセメントを用いたモルタルフローを、学習データと同様に測定して、モニターデータ(監視データの実測値)とした。
【0084】
上記学習データを用いて、ニューラルネットワークの学習を行った。ニューラルネットワークとしては、入力層、中間層及び出力層を有する階層型のニューラルネットワークを用いた。なお、該ニューラルネットワークは、監視データの選択に用いたニューラルネットワークとは異なる未学習のものである。
ニューラルネットワークの学習は、最初に上記学習データとモニターデータを用いて10,000回行った。得られたニューラルネットワークを用いて、σ
Lとσ
Mを算出したところ、σ
Lとσ
Mの関係はσ
L<σ
Mであった。
その後、ニューラルネットワークを初期化し、上記学習データとモニターデータを用いて、ニューラルネットワークの学習を、前記学習回数に0.95を乗じた数の学習回数(端数切捨て)行うことを、学習後のニューラルネットワークを用いて算出されたσ
Lとσ
Mの関係がσ
L≧σ
Mとなるまで繰り返した。その結果、解析度判定値は、4.66%となったので、学習を終了した。
上記サンプルとは異なる普通ポルトランドセメントBを用いて、上記学習プロセスで使用したコンクリートと同一の条件で製造したコンクリートについて、スランプを測定した。その結果は、7.5cmであった。
一方、学習データおよびモニターデータにおける、17個の監視データの実測値の組み合わせ(単位水量、セメントの鉱物組成、及びモルタルフローの組み合わせ)を、得られた学習済みのニューラルネットワークの入力層に入力し、出力層より、スランプの推測値を出力した。
得られたスランプの推測値は、7.3±1.2cm(偏差は3σを示す。)であり、実測値と予測値はほぼ一致した。このことから、得られた学習済みのニューラルネットワークは信頼性の高いものであることがわかる。
【0085】
次に、上記学習済みのニューラルネットワークを使用してコンクリートの製造条件(単位水量)の予測を行った。
上記ニューラルネットワークの学習に使用した、サンプリング日の異なる17個(学習用サンプル15個とモニター用サンプル2個の合計)のコンクリートの単位水量を除く監視データ(C
3S及びC
3Aの含有率、モルタルフロー(直後、30分後))の実測値の平均値を算出した。
その結果、C
3Sの含有率の実測値の平均値は60.4質量%、C
3Aの含有率の実測値の平均値は6.7質量%、モルタルフロー(直後)の実測値の平均値は232mm、モルタルフロー(30分後)の実測値の平均値は160mmであった。
【0086】
次いで、上記学習済みのニューラルネットワークの入力層に、単位水量を除く監視データ(C
3S及びC
3Aの含有率、モルタルフロー(直後、30分後))の実測値の平均値と、表4に示す単位水量を入力して、各単位水量に対するスランプの推測値を得た。結果を表4に示す。
なお、単位水量は、上記17個のコンクリートの単位水量の実測値の数値範囲内で、任意に変動した値(実測値の最大値と最小値を10等分するように変動した値)である。
【0087】
【表4】
【0088】
単位水量とスランプの推測値との組み合わせから、回帰分析を行い、単位水量とスランプの推測値との関係を示す下記式(5)を得た。
スランプの推測値=0.32×(単位水量)−44.9・・・(5)
式(5)から、安全側に考慮して誤差を修正して、単位水量の必要量とスランプの目標値との関係を示す下記式(6)を得た。修正はスランプの実測値がスランプの推測値と比べて過少になることを防ぐ目的で行われるものである。具体的には、誤差0.78cm(2σ)の値を、式(5)の右辺から減算する形で行った。
スランプの目標値=0.32×(単位水量の必要量)−45.7・・・(6)
【0089】
得られた式(6)を用いて、スランプの目標値に対する単位水量の必要量を求めた。具体的には、スランプの目標値を8.0cm以上と定め、上記式(6)に該目標値の下限値(8.0cm)を代入することで、単位水量の必要量(165.3kg/m
3)を得た。該必要量は、コンクリートの製造において、単位水量を165.3kg/m
3以上とすれば、得られるコンクリートのスランプが目標値(8.0cm以上)を下回ることはないと推測できる値である。
【0090】
[比較例2]
実施例2で使用した17個(学習用サンプル15個+モニター用サンプル2個)の普通ポルトランドセメントに関するデータを母集団とし、コンクリートのスランプとの高い相関を有する、コンクリートの配合条件に関するデータ、セメントに関するデータ、及び、セメントの物理特性に関するデータであった、単位水量、セメントの鉱物組成(C
3S及びC
3Aの含有率)、及びモルタルフロー(直後、30分後)を説明変数とした重回帰分析を行い、下記回帰式(決定係数R
2=0.47)を得た。
(コンクリートのスランプ(cm))=(0.16)×(単位水量(kg/m
3))−(0.15)×(C
3Sの含有率(質量%))+1.20×(C
3Aの含有率(質量%))−0.01×(モルタルフロー(直後)値(mm))+0.02×(モルタルフロー(30分後)値(mm))+2.82
上記回帰式に、実施例2で使用した17個の普通ポルトランドセメントに関するデータである単位水量、セメントの鉱物組成(C
3S及びC
3Aの含有率)、及びモルタルフロー(直後、30分後)を代入して得られたスランプの推測値は、7.1±1.7cm(偏差は3σを示す。)であった。
【0091】
学習済みのニューラルネットワークに単位水量を除く監視データの実測値の平均値と表4に示す単位水量を入力する代わりに、上記回帰式に単位水量を除く監視データの実測値の平均値と表4に示す単位水量を代入して、各単位水量に対するスランプの推測値を得る以外は実施例2と同様にして、単位水量とスランプの推測値の関係式(7)を得た。
スランプの推測値=0.17×(単位水量)−20.2・・・(7)
式(7)から安全側に考慮して誤差を修正して、単位水量の必要量とスランプの目標値との関係を示す下記式(8)を得た。修正はスランプの実測値がスランプの推測値と比べて過小になることを防ぐ目的で行われるものである。具体的には、誤差1.12cm(2σの値)を式(7)の右辺から減算することで行った。
スランプの目標値=0.17×(単位水量の必要量)−21.3・・・(8)
得られた式(8)によりスランプの目標値(8.0cm以上)に対する必要となる単位水量を求めたところ、173.6kg/m
3となった。
【0092】
実施例2及び比較例2で使用した17個(学習用サンプル15個+モニター用サンプル2個)の普通ポルトランドセメントとはサンプリング日の異なる普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートであって、単位水量を除く監視データの実測値が上記17個のサンプルの実測値の平均値に近く、かつスランプが8.0cmに近いコンクリートの単位水量は165.7kg/m
3であった。
該単位量は、比較例2で求めた単位水量の必要量(173.6kg/m
3)よりも、実施例2で求めた単位水量の必要量(165.7kg/m
3)に近いことから、本発明の予測方法によれば、より正確にコンクリートの配合条件を予測することができることがわかる。
【0093】
[実施例3]
[高性能AE減水剤量の予測]
選択用および学習用サンプルとしてサンプリング日の異なる15個の普通ポルトランドセメントについて、上記細骨材A、粗骨材、消泡剤Aを用いてコンクリートを製造した。
各材料の配合量は、単位セメント量が330kg/m
3、細骨材率が45質量%、単位水量が165kg/m
3となるようにした。また、空気量が2%以下となるように消泡剤の添加量を調整したコンクリートを製造した。製造したコンクリートの混練直後のスランプフローを測定した。
なお、コンクリートの製造方法は実施例1と同じである。スランプフローは「JIS A 1150(コンクリートのスランプフロー試験方法)」に準拠して測定した。
得られたスランプフローを評価データの実測値(選択データおよび学習データ)とした。
【0094】
また、学習用サンプルに使用した15個の普通ポルトランドセメントの各々について、コンクリートの配合条件に関するデータとして高性能AE減水剤量、セメントに関するデータとしてセメントの鉱物組成、及び、セメントの物理特性に関するデータとしてモルタルフローを、学習データにおける監視データの実測値とした。
これらのデータを得る方法は、実施例1と同様である。
【0095】
[監視データの選択]
上述した監視データ(高性能AE減水剤量、C
3S及びC
3Aの含有率、モルタルフロー(直後、30分後))のうち、表5に示す監視データを選択した条件1〜4の各々について(表5中、選択した監視データを「○」で示す。)、監視データの実測値と、評価データの実測値を用いて、未学習のニューラルネットワークの学習を行った。該学習は1500回行った。
学習後のニューラルネットワークの入力層に、選択した監視データの実測値を入力して得られた評価データの推測値と、評価データの実測値との平均2乗誤差(表5中、「RMSE」と示す。)を算出した。
結果を表5に示す。
条件1〜4のうち、平均2乗誤差の値が最も小さかった条件1において選択した監視データの組み合わせ(高性能AE減水剤量、C
3S及びC
3Aの含有率、モルタルフロー(直後、30分後))を、ニューラルネットワークの学習に用いられる監視データ(学習データおよびモニターデータ)とした。
【0096】
【表5】
【0097】
また、モニター用のサンプルとして、前記学習用サンプルとして使用した15個の普通ポルトランドセメントとはサンプリング日の異なる2個の普通ポルトランドセメントを用いて、コンクリートのスランプフローを学習データと同様に測定して、モニターデータ(評価データの実測値)とした。
さらに、上記2個の普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートの高性能AE減水剤量、上記2個の普通ポルトランドセメントの鉱物組成、及び上記2個の普通ポルトランドセメントを用いたモルタルフローを、学習データと同様に測定して、モニターデータ(監視データの実測値)とした。
【0098】
上記学習データを用いて、ニューラルネットワークの学習を行った。ニューラルネットワークとしては、入力層、中間層及び出力層を有する階層型のニューラルネットワークを用いた。なお、該ニューラルネットワークは、監視データの選択に用いたニューラルネットワークとは異なる未学習のものである。
ニューラルネットワークの学習は、最初に上記学習データとモニターデータを用いて10,000回行った。得られたニューラルネットワークを用いて、σ
Lとσ
Mを算出したところ、σ
Lとσ
Mの関係はσ
L<σ
Mであった。
その後、ニューラルネットワークを初期化し、上記学習データとモニターデータを用いて、ニューラルネットワークの学習を、前記学習回数に0.95を乗じた数の学習回数(端数切捨て)行うことを、学習後のニューラルネットワークを用いて算出されたσ
Lとσ
Mの関係がσ
L≧σ
Mとなるまで繰り返した。その結果、解析度判定値は、0.34%となったので、学習を終了した。
上記サンプルとは異なる普通ポルトランドセメントBを用いて、上記学習プロセスで使用したコンクリートと同一の条件で製造したコンクリートについて、スランプフローを測定した。その結果は、58.5cmであった。
一方、学習データおよびモニターデータにおける、17個の監視データの実測値の組み合わせ(高性能AE減水剤量、セメントの鉱物組成、及び、モルタルフローの組み合わせ)を、得られた学習済みのニューラルネットワークの入力層に入力し、出力層より、スランプフローの推測値を出力した。
得られたスランプフローの推測値は、58.6±0.6cm(偏差は3σを示す。)であり、実測値と予測値はほぼ一致した。このことから、得られた学習済みのニューラルネットワークは信頼性の高いものであることがわかる。
【0099】
次に、上記学習済みのニューラルネットワークを使用してコンクリートの配合条件(高性能AE減水剤量)の予測を行った。
上記ニューラルネットワークの学習に使用した、サンプリング日の異なる
17 個(学習用サンプル15個とモニター用サンプル2個の合計)のコンクリートの高性能AE減水剤を除く監視データ(C
3S及びC
3Aの含有率、モルタルフロー(直後、30分後))の実測値の平均値を算出した。
その結果、C
3Sの含有率の実測値の平均値は56.2質量%、C
3Aの含有率の実測値の平均値は6.5質量%、モルタルフロー(直後)の実測値の平均値は333mm、モルタルフロー(30分後)の実測値の平均値は243mmであった。
【0100】
次いで、上記学習済みのニューラルネットワークの入力層に、高性能AE減水剤量を除く監視データ(C
3S及びC
3Aの含有率、モルタルフロー(直後、30分後))の実測値の平均値と、表6に示す高性能AE減水剤量を入力して、各高性能AE減水剤量に対するスランプフローの推測値を得た。結果を表6に示す。
なお、高性能AE減水剤量は、上記17個のコンクリートの高性能AE減水剤量の実測値の数値範囲内で、任意に変動した値(実測値の最大値と最小値を8等分するように変動した値)である。
【0101】
【表6】
【0102】
高性能AE減水剤量とスランプフローの推測値との組み合わせから、回帰分析を行い、高性能AE減水剤量とスランプフローの推測値との関係を示す下記式(9)を得た。
スランプフローの推測値=14.8×(高性能AE減水剤量)+43.4・・・(9)
式(9)から、安全側に考慮して誤差を修正して、高性能AE減水剤の必要量とスランプフローの目標値との関係を示す下記式(10)を得た。修正はスランプフローの実測値がスランプフローの推測値と比べて過少になることを防ぐ目的で行われるものである。具体的には、誤差0.42cm(2σ)の値を、式(9)の右辺から減算することで行った。
スランプフローの目標値=14.8×(高性能AE減水剤の必要量)+43.0・・・(10)
【0103】
得られた式(10)を用いて、スランプフローの目標値に対する高性能AE減水剤の必要量を求めた。具体的には、スランプフローの目標値を60cm以上と定め、上記式(10)に該目標値の下限値(60cm)を代入することで、高性能AE減水剤の必要量(1.12質量%)を得た。該必要量は、コンクリートの製造において、高性能AE減水剤量を1.12質量%以上とすれば、得られるコンクリートのスランプフローが目標値(60cm以上)を下回ることはないと推測できる値である。
【0104】
[比較例3]
実施例3で使用した17個(学習用サンプル15個+モニター用サンプル2個)の普通ポルトランドセメントに関するデータを母集団とし、コンクリートのスランプフローとの高い相関を有する、コンクリートの配合条件に関するデータ、セメントに関するデータ、及び、セメントの物理特性に関するデータであった、高性能AE減水剤量、セメントの鉱物組成(C
3S及びC
3Aの含有率)、及びモルタルフロー(直後、30分後)を説明変数とした重回帰分析を行い、下記回帰式(決定係数R
2=0.51)を得た。
(コンクリートのスランプフロー(cm))=(15.9)×(高性能AE減水剤量(質量%))−(0.11)×(C
3Sの含有率(質量%))−(0.19)×(C
3Aの含有率(質量%))+(0.05)×(モルタルフロー(直後)値(mm))−(0.02)×(モルタルフロー(30分後)値(mm))+33.9
上記回帰式に、実施例3で使用した17個の普通ポルトランドセメントに関するデータである、高性能AE減水剤量、セメントの鉱物組成(C
3S及びC
3Aの含有率)、及びモルタルフロー(直後、30分後)を代入して得られたスランプフローの推測値は、59.1±1.6cm(偏差は3σを示す。)であった。
【0105】
学習済みのニューラルネットワークに高性能AE減水剤量を除く監視データの実測値の平均値と表6に示す高性能AE減水剤量を入力する代わりに、上記回帰式に高性能AE減水剤量を除く監視データの実測値の平均値と表6に示す高性能AE減水剤量を代入して、各高性能AE減水剤量に対するスランプフローの推測値を得る以外は実施例3と同様にして、高性能AE減水剤量とスランプフローの推測値の関係式(11)を導出した。
スランプフローの推測値=15.9×(高性能AE減水剤量)+43.1・・・(11)
式(11)から安全側に考慮して誤差を修正して、高性能減水剤の必要量とスランプフローの目標値との関係を示す式(12)を得た。修正はスランプフローの実測値がスランプフローの推測値と比べて過小になることを防ぐ目的で行われるものである。具体的には、誤差1.12cm(2σの値)を式(11)の右辺から減算することで行った。
スランプフローの目標値=15.9×(高性能AE減水剤の必要量)+42.0・・・(12)
得られた式(12)によりスランプフローの目標値(60cm以上)に対する高性能AE減水剤量の必要量を求めたところ、1.19質量%となった。
【0106】
実施例3及び比較例3で使用した17個(学習用サンプル15個+モニター用サンプル2個)の普通ポルトランドセメントとはサンプリング日の異なる普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートであって、高性能AE減水剤量を除く監視データの実測値が上記17個のサンプルの実測値の平均値に近く、かつスランプフローが60cmに近いコンクリートの高性能AE減水剤量は1.11質量%であった。
該量は、比較例3で求めた高性能AE減水剤の必要量(1.19質量%)よりも、実施例3で求めた高性能AE減水剤の必要量(1.15質量%)に近いことから、本発明の予測方法によれば、より正確にコンクリートの配合条件を予測することができることがわかる。
【0107】
[実施例4]
[単位水量の予測]
選択用および学習用サンプルとしてサンプリング日の異なる15個の普通ポルトランドセメントについて、上記細骨材A、粗骨材、高性能AE減水剤、消泡剤Aを用いてコンクリートを製造した。
各材料の配合量は、水とセメントの質量比(水/セメント)が0.3、細骨材率が45質量%、高性能AE減水剤量がセメント100質量%に対して0.7質量%となるようにした。また、空気量が2%以下となるように消泡剤の添加量を調整したコンクリートを製造し、混練直後のコンクリートのスランプフローを測定した。
コンクリートの製造方法およびスランプフローの測定方法は実施例3と同じである。
得られたスランプフローを評価データの実測値(選択データおよび学習データ)とした。
【0108】
また、学習用サンプルに使用した15個の普通ポルトランドセメントの各々について、
コンクリートの配合条件に関するデータとして単位水量、セメントに関するデータとしてセメントの鉱物組成、及び、セメントの物理特性に関するデータとしてモルタルフローを、学習データにおける監視データの実測値とした。
これらのデータを得る方法は、実施例2と同様である。
【0109】
[監視データの選択]
上述した監視データ(単位水量、C
3S及びC
3Aの含有率、及びモルタルフロー(直後、30分後))のうち、表7に示す監視データを選択した条件1〜4の各々について(表7中、選択した監視データを「○」で示す。)、監視データの実測値と、評価データの実測値を用いて、未学習のニューラルネットワークの学習を行った。該学習は900回行った。
学習後のニューラルネットワークの入力層に、選択した監視データの実測値を入力して得られた評価データの推測値と、評価データの実測値との平均2乗誤差(表7中、「RMSE」と示す。)を算出した。
結果を表7に示す。
条件1〜4のうち、平均2乗誤差の値が最も小さかった条件1において選択した監視データの組み合わせ(単位水量、C
3S及びC
3Aの含有率、モルタルフロー(直後、30分後))を、ニューラルネットワークの学習に用いられる監視データ(学習データおよびモニターデータ)とした。
【0110】
【表7】
【0111】
また、モニター用のサンプルとして、前記学習用サンプルとして使用した15個の普通ポルトランドセメントとはサンプリング日の異なる2個の普通ポルトランドセメントを用いて、コンクリートのスランプを学習データと同様に測定して、モニターデータ(評価データの実測値)とした。
さらに、上記2個の普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートの単位水量、上記2個の普通ポルトランドセメントの鉱物組成、及び上記2個の普通ポルトランドセメントを用いたモルタルフローを、学習データと同様に測定して、モニターデータ(監視データの実測値)とした。
【0112】
上記学習データを用いて、ニューラルネットワークの学習を行った。ニューラルネットワークとしては、入力層、中間層及び出力層を有する階層型のニューラルネットワークを用いた。なお、該ニューラルネットワークは、監視データの選択に用いたニューラルネットワークとは異なる未学習のものである。
ニューラルネットワークの学習は、最初に上記学習データとモニターデータを用いて10,000回行った。得られたニューラルネットワークを用いて、σ
Lとσ
Mを算出したところ、σ
Lとσ
Mの関係はσ
L<σ
Mであった。
その後、ニューラルネットワークを初期化し、上記学習データとモニターデータを用いて、ニューラルネットワークの学習を、前記学習回数に0.95を乗じた数の学習回数(端数切捨て)行うことを、学習後のニューラルネットワークを用いて算出されたσ
Lとσ
Mの関係がσ
L≧σ
Mとなるまで繰り返した。その結果、解析度判定値は、1.07%となったので、学習を終了した。
上記サンプルとは異なる普通ポルトランドセメントBを用いて、上記学習プロセスで使用したコンクリートと同一の条件で製造したコンクリートについて、スランプフローを測定した。その結果は、59.8cmであった。
一方、学習データおよびモニターデータにおける、17個の監視データの実測値の組み合わせ(単位水量、セメントの鉱物組成、及びモルタルフローの組み合わせ)を、得られた学習済みのニューラルネットワークの入力層に入力し、出力層よりスランプフローの推測値を出力した。
得られたスランプフローの推測値は、59.6±1.0cm(偏差は3σを示す。)であり、実測値と予測値はほぼ一致した。このことから、得られた学習済みのニューラルネットワークは信頼性の高いものであることがわかる。
【0113】
次に、上記学習済みのニューラルネットワークを使用してコンクリートの製造条件(単位水量)の予測を行った。
上記ニューラルネットワークの学習に使用した、サンプリング日の異なる
17 個(学習用サンプル15個とモニター用サンプル2個の合計)のコンクリートの単位水量を除く監視データ(C
3S及びC
3Aの含有率、モルタルフロー(直後、30分後))の実測値の平均値を算出した。C
3Sの含有率の実測値の平均値は56.2質量%、C
3Aの含有率の実測値の平均値は6.5質量%、モルタルフロー(直後)の実測値の平均値は333mm、モルタルフロー(30分後)の実測値の平均値は243mmであった。
【0114】
次いで、上記学習済みのニューラルネットワークの入力層に、単位水量を除く監視データ(C
3S及びC
3Aの含有率、モルタルフロー(直後、30分後))の実測値の平均値と、表8に示す単位水量を入力して、各単位水量に対するスランプフローの推測値を得た。結果を表8に示す。
なお、単位水量は、上記17個のコンクリートの単位水量の実測値の数値範囲内で、任意に設定した値(実測値の最大値と最小値を10等分するように変動した値)である。
【0115】
【表8】
【0116】
単位水量とスランプフローの推測値との組み合わせから、回帰分析を行い、単位水量とスランプフローの推測値との関係を示す下記式(13)を得た。
スランプフローの推測値=0.44×(単位水量)−14.0・・・(13)
式(13)から、安全側に考慮して誤差を修正して、単位水量の必要量とスランプフローの目標値との関係を示す下記式(14)を得た。修正はスランプフローの実測値がスランプフローの推測値と比べて過少になることを防ぐ目的で行われるものである。具体的には、誤差0.66cm(2σ)の値を、式(13)の右辺から減算することで行った。
スランプフローの目標値=0.44×(単位水量の必要量)−14.7・・・(14)
【0117】
得られた式(14)を用いて、スランプフローの目標値に対する単位水量の必要量を求めた。具体的には、スランプフローの目標値を60cm以上と定め、上記式(14)に該目標値の下限値(60cm)を代入することで、単位水量の必要量(168.1kg/m
3)を得た。該必要量は、コンクリートの製造において、単位水量を168.1kg/m
3以上とすれば、得られるコンクリートのスランプフローが目標値(60cm以上)を下回ることはないと推測できる値である。
【0118】
[比較例4]
実施例4で使用した17個(学習用サンプル15個+モニター用サンプル2個)の普通ポルトランドセメントに関するデータを母集団とし、コンクリートのスランプフローとの高い相関を有する、コンクリートの配合条件に関するデータ、セメントに関するデータ、及び、セメントの物理特性に関するデータであった、単位水量、セメントの鉱物組成(C
3S及びC
3Aの含有率)、及びモルタルフロー(直後、30分後)を説明変数とした重回帰分析を行い、下記回帰式(決定係数R
2=0.39)を得た。
(コンクリートのスランプフロー(cm))=(0.03)×(単位水量(kg/m
3))−(0.03)×(C
3Sの含有率(質量%))−1.55×(C
3Aの含有率(質量%))−3.1×10
−3×(モルタルフロー(直後)値(mm))−4.2×10
−4×(モルタルフロー(30分後)値(mm))+18.4
上記回帰式に、実施例4で使用した17個の普通ポルトランドセメントに関するデータである単位水量、セメントの鉱物組成(C
3S及びC
3Aの含有率)、及びモルタルフロー(直後、30分後)を代入して得られたスランプフローの推測値は、59.0±2.1cm(偏差は3σを示す。)であった。
【0119】
学習済みのニューラルネットワークに単位水量を除く監視データの実測値の平均値と表8に示す単位水量の実測値を入力する代わりに、上記回帰式に単位水量を除く監視データの実測値の平均値と表8に示す単位水量を代入して、各単位水量に対するスランプフローの推測値を得る以外は実施例4と同様にして、単位水量とスランプフローの推測値との関係を示す下記式(15)を得た。
スランプフローの推測値=0.44×(単位水量)−15.3・・・(15)
式(15)から、安全側に考慮して誤差を修正して、単位水量の必要量とスランプフローの目標値との関係を示す下記式(16)を得た。修正はスランプフローの実測値がスランプフローの推測値と比べて過小になることを防ぐ目的で行われるものである。具体的には、誤差0.72N/mm
2(2σの値)を、式(15)の右辺から減算することで行った。
スランプフローの目標値=0.44×(単位水量の必要量)−16.0・・・(16)
得られた式(16)により、スランプフローの目標値(60cm以上)に対する必要となる単位水量を求めたところ、171.4kg/m
3であった。
【0120】
実施例4及び比較例4で使用した17個(学習用サンプル15個+モニター用サンプル2個)の普通ポルトランドセメントとはサンプリング日の異なる普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートであって、単位水量を除く監視データの実測値が上記17個のサンプルの実測値の平均値に近く、かつスランプフローが60cmに近いコンクリートの単位水量は167.6kg/m
3であった。
該量は、比較例4で求めた単位水量の必要量(171.4kg/m
3)よりも、実施例4で求めた単位水量の必要量(167.6kg/m
3)に近いことから、本発明の予測方法によれば、より正確にコンクリートの配合条件を予測することができることがわかる。