(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光を使った路面の反射率に基づき路面種別を判定する路面種別判定部と、該路面種別判定部の判定結果に基づいて、無段変速機の油圧制御を行う変速機コントローラとを備え、
路面種別に基づいて、車両の制御を行う車両制御方法であって、
光を使った路面の反射率に基づき路面種別を判定するステップと、
路面種別に基づいて車両の制御を行うステップと、
を含み、
前記車両の制御は、前記路面種別判定部が、車両前方の路面を現在走行中の路面よりも高μ路と判断したときは、前記変速機コントローラは、車両が前方の路面に到達する前に当該路面に応じた油圧に切り替えること、または前記路面種別判定部が、車両前方の路面を現在走行中の路面よりも低μ路と判断したときは、前記変速機コントローラは、車両が前方の路面に到達した後に当該路面に応じた油圧に切り替えること、
を特徴とする車両制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施例1]
図1は、本発明に係る車両制御装置の概略構成を示す図である。
この車両は動力源としてエンジン1を備える。エンジン1の出力回転は、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ2、第1ギヤ列3、バリエータ20、副変速機30(以下、バリエータ20と副変速機30を合わせて、単に「無段変速機4」という。)、第2ギヤ列5、終減速装置6を介して駆動輪7へと伝達される。第2ギヤ列5には駐車時に変速機4の出力軸を機械的に回転不能にロックするパーキング機構8が設けられている。
【0010】
車両には、車両制御部としての、エンジン1を制御するエンジンコントローラ1aと、エンジン1の動力の一部を利用して駆動されるオイルポンプ10と、オイルポンプ10からの油圧を調圧して変速機4の各部位に供給する油圧制御回路11を制御する制御装置としての変速機コントローラ12と、ホイールシリンダへ供給されるブレーキ圧をブレーキペダル踏力に応じて制御する制御装置としてブレーキコントローラ100とが設けられている。
【0011】
また、アクセル開度(スロットル開度)センサ41、プライマリ入力回転速度センサ42、車速センサ43、無段変速機4の油圧センサ44、運転者が操作するセレクトレバー位置センサ45等が設けられている。これらのセンサは、CAN(Controller Area Network)や高速通信バス等の適切なバスを介して各コントローラ1a、12、100および路面種別判定部50と接続されており、相互に情報を共有することができる。
【0012】
また、路面判別判定部(ADAS)50は、エンジンコントローラ1a、変速機コントローラ12、ブレーキコントローラ100へ路面種別の情報を出力する。
各コントローラ1a、12、100は、路面種別に適合した特性を有している。詳細は、後述する。
【0013】
路面判別判定部(ADAS)50は、車両前方約30m先の路面にレーザー光を照射して、反射するレーザー光を受信するセンサ(Laser LIDAR)60から、路面検出データを取得し、この路面検出データから路面の反射率を算出し、路面種別を判定している。さらに、路面判別判定部(ADAS)50は、ワイパー71、フロントガラスに設置された振動センサ72、あるいはインターネット経由での走行中の場所の天気等の情報73に基づき、路面が濡れているか否かを判定する路面状況判定部70から判定結果データを取得している。詳細は、後述する。
【0014】
無段変速機4の各構成について説明すると、バリエータ20と、バリエータ20に対して直列に設けられる副変速30とを備える。
バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、プーリ21、22の間に掛け回されるVベルト23とを備えるベルト式無段変速機である。プーリ21、22は、それぞれ固定円錐板と、この固定円錐板に対してシーブ面を対向させた状態で配置され固定円錐板との間にV溝を形成する可動円錐板と、この可動円錐板の背面に設けられて可動円錐板を軸方向に変位させる油圧シリンダ23a、23bとを備える。油圧シリンダ23a、23bに供給される油圧を調整すると、V溝の幅が変化してVベルト2 3と各プーリ21、22との接触半径が変化し、バリエータ20の変速比vRatioが無段階に変化する。
【0015】
副変速機30は前進2段・後進1段の変速機構である。副変速機30は、2つの遊星歯車のキャリアを連結したラビニョウ型遊星歯車機構31と、ラビニョウ型遊星歯車機構31を構成する複数の回転要素に接続され、それらの連係状態を変更する複数の摩擦締結要素(Lowブレーキ32、Highクラッチ33、Revブレーキ34)とを備える。各摩擦締結要素32〜34への供給油圧を調整し、各摩擦締結要素32〜34の締結・解放状態を変更すると、副変速機30の変速段が変更される。例えば、Lowブレーキ32を締結し、Highクラッチ33とRevブレーキ34を解放すれば副変速機30 の変速段は1速となる。Highクラッチ33を締結し、Lowブレーキ32とRevブレーキ34を解放すれば副変速機30の変速段は1速よりも変速比が小さな2速となる。また、Revブレーキ34を締結し、Lowブレーキ32とHighクラッチ33を解放すれば副変速機30の変速段は後進となる。
【0016】
図2は、実施例1に係る路面種別判定部の処理の内容を示したフローチャートである。
ステップS1では、路面種別判定部50は、ワイパー作動中、振動センサが雨滴を検知、あるいはインターネット経由で走行中の場所が雨の情報に基づき、路面が濡れていると判定する路面状況判定部70の判定結果データを読み込み、処理をステップ2へと移行する。
【0017】
ステップS2では、路面種別判定部50は、路面状況判定部70の判定結果データから、路面が濡れていると判定すると、処理をステップS9へ移行する。また、路面は濡れていないと判定すると、処理をステップS3へ移行する。
【0018】
ステップS3では、路面種別判定部50は、センサ(Laser LIDAR)60から路面検出データを読み込み、当該データを受信してからの経過時間をカウントするとともに、処理をステップS4へと移行する。
【0019】
ステップS4では、路面種別判定部50は、読み込んだ路面検出データを記憶している路面学習データと比較可能な形式に変換を行い、処理をステップS5へ移行する。
【0020】
ステップS5では、路面種別判定部50は、路面学習データを読み込み、処理をステップS6へ移行する。
なお、ここで、路面学習データは、4種類(アスファルト路面、コンクリート路面、ブロック路面、砂利路面)の乾いた路面の学習データを有している。
【0021】
ステップS6では、路面種別判定部50は、読み込んだ路面検出データと4種類の路面学習データを比較し一致するか否かを判定する。
一致しない場合には、路面種別に応じた制御を禁止し、ステップ9へ移行する。
あるいは、一番安全率が大きいアスファルト路面に応じた制御を行っても良い。
4種類の路面種別のいずれかと一致した場合には、処理をステップS7へ移行する。
なお、具体的な一致する判断は、路面検出データと路面学習データが80%以上の確率で類似であるとの判断で行っている。
【0022】
ステップS7では、路面種別判定部50は、センサ(Laser LIDAR)60から路面検出データを受信してからの経過時間とともに、判定した路面種別を変速機コントローラ12へ出力し、処理をステップS8へ移行する。ここで、路面種別判定部50の処理は、終了する。
【0023】
ステップS8では、変速機コントローラ12が路面種別に応じた油圧特性に変更して、処理を終了する。変速機コントローラ12による油圧の変更方法の詳細は後述する。
【0024】
ステップS9では、濡れた路面情報を変速機コントローラ12へ出力し、処理をステップS10へ移行する。ここで、路面種別判定部50の処理は、終了する。
【0025】
ステップS10では、変速機コントローラ12が、濡れた路面に応じた油圧特性あるいは変速比特性に変更して、処理を終了する。
なお、本実施例の場合、一番安全率が大きいアスファルト路面に応じた特性としている。
【0026】
図3は、変速機コントローラ12による、油圧の変更処理の内容を示したフローチャートである。
ステップS101では、変速機コントローラ12は、上記ステップS7において路面種別判定部50から入力した路面種別の判定結果に基づいて、前方路面が油圧を低減できる路面か否か判定する。油圧を低減することができると判定するとステップS102へ移行し、油圧を低減することができないと判定するとステップS103へ移行する。
【0027】
ステップS102では、変速機コントローラ12は、センサ(Laser LIDAR)60から路面検出データを受信してからの経過時間と、車速センサ43からの現在の車速データに基づき、車両が判定した路面に到達するまでの時間を計算し、当該時間が経過するまで処理を待機した後、ステップS104へ移行する。
【0028】
ステップS103では、油圧低減量をゼロにし、ステップS105へ移行する。ここで、「油圧低減量」とは、車輪のグリップ力が一番高く、最も高い油圧が設定された路面(例えば、
図4のアスファルト路面)の油圧特性(基本油圧)から、別の路面に移行する場合に差し引く油圧のことであり、例えば、
図4に示すように、各路面の油圧特性の差に相当するものである。
【0029】
ステップS104では、判定した路面に対応した油圧低減量を設定する。例えば、アスファルト路面に対応する油圧にて走行中に、前方路面が砂利と判定された場合は、アスファルト路面と砂利路面との油圧特性の差が油圧低減量となる。
【0030】
ステップS105では、ステップS103及びS104で設定された油圧低減量に基づいて、無段変速機の油圧を変更して、処理を終了する。
【0031】
図4は、実施例1に係る路面種別による概略の無段変速機の油圧特性図である。
横軸は、アクセル開度、縦軸は、無段変速機油圧、例えばライン圧を示している。
車輪のグリップ力が一番高いアスファルト路面が一番油圧が高く、次にコンクリート路面、ブロック路面、最もグリップ力が低い砂利路面を一番油圧を低く設定してある。
車両が高μ路を走行する場合は駆動輪7から受ける大きなトルクの影響でベルト滑りの恐れがあるため、無段変速機4に高い油圧を供給する必要がある。一方、低μ路では、駆動輪7からの大きなトルク入力がないため油圧を下げることができる。このような路面種別に基づいて油圧制御を行うことで、燃費の向上を図りつつベルト滑りを防止することを目的として、変速機コントローラ12は、路面種別判定部50よりの路面種別に応じて、油圧特性を切り替えている。ここで、最も高いアスファルト路面の油圧を基本油圧とし、この基本油圧と、路面種別判定部50により判定された4種類の路面における油圧特性との差を油圧低減量として設定する。
【0032】
図5は、実施例1に係る車両制御装置の車両制御時の、路面に対する無段変速機の油圧の変化を示すタイムチャートである。
図5にて、実施例1の作動を説明する。
【0033】
横軸は、時間であり、縦軸は、上から順に、前方路面種別、判定路面種別、走行路面種別および無段変速機の油圧を示している。
前述したが、路面判別判定部(ADAS)50は、車両前方約30m先の路面にレーザー光を照射して、その反射率データを読み取るセンサ(Laser LIDAR)60から、路面検出データを取得している。
【0034】
そこで、時間t1で、センサ(Laser LIDAR)60から取得した路面検出データに基づいて、路面判別判定部(ADAS)50が路面判定を開始する。時間t2で、現在走行中の砂利路面から車両前方約30m先はアスファルト路面と判定し、時間t4でアスファルト路面の走行を開始する。実施例1では、油圧を低減できる路面ではないため、時間t2で直ちに油圧低減量をゼロにし、予め備えたアスファルト路面の油圧特性(基本油圧特性)に基づき、徐々に目標油圧に向けて、油圧の上昇を開始する。
【0035】
時間t3で、目標油圧に達し、この目標油圧を維持する。時間Tは、路面判定開始からアスファルト路面に達する時間である。これは、車速に応じて変化するため、高車速で走行中は、時間t4の直前に油圧制御を開始すると、油圧上昇遅れにより車両がアスファルト路面に到達したときに目標油圧に到達していない恐れがある。そこで、実施例1では、路面判定と同時(t2)に油圧制御を開始することにより、車両がアスファルト路面に到達する前の時間t3に目標油圧を達成している。
【0036】
次に作用効果を説明する。
実施例1の車両制御装置および車両制御方法にあっては、以下に列挙する作用効果を奏する。
(1)路面種別判定部50は、車両前方の路面を現在走行中の路面よりも高μ路と判定したときは、変速機コントローラ12は、車両が前方の路面に到達する前に当該路面に応じた油圧に切り替えるようにした。
よって、油圧を上げなければならない路面走行時には、確実に無段変速機4の油圧が高くなっているため、無段変速機のベルト滑り等を確実に防止することができる。
【0037】
[実施例2]
図6は、実施例2に係る車両制御装置の車両制御時の、路面に対する無段変速機の油圧の変化を示すタイムチャートである。
図6にて、実施例2の作動を説明する。
横軸は、時間であり、縦軸は、上から順に、前方路面種別、判定路面種別、走行路面種別および無段変速機の油圧を示している。
【0038】
前述したが、路面判別判定部(ADAS)50は、車両前方約30m先の路面にレーザー光を照射して、その反射率データを読み取るセンサ(Laser LIDAR)60から、路面検出データを取得している。
そこで、時間t1で、センサ(Laser LIDAR)60から取得した路面検出データに基づいて、路面判別判定部(ADAS)50が路面判定を開始する。時間t2で、現在走行中のアスファルト路面から車両前方約30m先は砂利路面と判定し、時間t3で砂利路面の走行を開始する。
【0039】
実施例2では、油圧を低減できる路面であるため、車両が砂利路面に到達する時間t3まで待つこととし、時間t3を経過した後に、予め備えた砂利路面の油圧特性に基づき油圧低減量を設定し、基本油圧からこの油圧低減量を差し引いた目標油圧に向けて、油圧の低下を開始する。時間t3で砂利路面の走行を開始した後、時間t4で目標油圧に達すると、目標油圧を維持する。
【0040】
次に作用効果を説明する。
実施例2の車両制御装置および車両制御方法にあっては、以下に列挙する作用効果を奏する。
(1)路面種別判定部50は、車両前方の路面を現在走行中の路面よりも低μ路と判断したときは、変速機コントローラ12は、車両が前方の路面に到達した後に当該路面に応じた油圧に切り替えるようにした。
よって、無段変速機4の油圧を下げるときには、車両が低μ路に到達した後に油圧を低下するため、走行中の路面に対し無段変速機4の油圧が低すぎることによって発生する無段変速機4のベルトのスリップを防止することができる。
【0041】
以上、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例に示した構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0042】
上記実施例では、4種類の路面状況の学習データを有しているが、これだけに限るモノではなく、砂混じり路面等を追加してもよい。また、上記実施例では、路面が濡れているのかの判定として、ステップ2の判定、及びステップ6の2回行っているが、これに限るものではなく、例えば、ステップ6だけでもよい。すなわち、検出された路面の反射率データと予め備える路面学習データとを比較し、一致しない場合に路面が濡れていると判定してもよい。
また、路面種別判定部(ADAS)50では、センサ(Laser LIDAR)60で検出した反射光を用いて路面の反射率を算出しているが、センサ(Laser LIDAR)60が独自の制御部を有し路面の反射率を算出してもよい。いずれの形態も本発明の範囲に含まれる。