(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794066
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】射出成形機の履歴情報管理システム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20201119BHJP
G16Y 10/25 20200101ALI20201119BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20201119BHJP
【FI】
B29C45/76ZJC
G16Y10/25
G16Y20/20
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-154476(P2018-154476)
(22)【出願日】2018年8月21日
(65)【公開番号】特開2020-29000(P2020-29000A)
(43)【公開日】2020年2月27日
【審査請求日】2019年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】花山 和寛
【審査官】
正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−198148(JP,A)
【文献】
特開2014−004828(JP,A)
【文献】
特開2012−030386(JP,A)
【文献】
特開2002−086531(JP,A)
【文献】
特開2004−157780(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第108202444(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第108177316(CN,A)
【文献】
中国実用新案第206865503(CN,U)
【文献】
国際公開第2005/084916(WO,A1)
【文献】
特開2004−157774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 48/00−48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネット接続可能な射出成形機と、インターネット上に設けられているクラウドサーバーと、インターネット接続可能なクライアント端末とからなり、
前記射出成形機は常時インターネット接続されて前記クラウドサーバを周期的にポーリングしており、ユーザが前記クライアント端末を操作して、前記クライアント端末から前記クラウドサーバに所定のアップロードの要求を上げると、前記射出成形機はこれを検出し、要求された指定期間分について、前記射出成形機の操作の履歴、成形サイクルにおいて収集される測定データの履歴、前記射出成形機において発生する警報の履歴からなる履歴情報を、該履歴情報が保存されている前記射出成形機のコントローラの記憶領域から読み取って前記クラウドサーバにアップロードするようになっており、
前記クライアント端末は前記クラウドサーバーにアップロードされた前記履歴情報にアクセスできるようになっていることを特徴とする射出成形機の履歴情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機において実施される操作の履歴、成形サイクルにおいて収集される各種の測定データの履歴、射出成形機において発生する警報の履歴、等の各種履歴情報を管理する、射出成形機の履歴情報管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、文献名を挙げるまでもなく従来周知で、樹脂を射出する射出装置、金型を型締めする型締装置、等から構成されている。射出成形機において成形品を成形するには色々な操作が必要になる。すなわち、所定の金型を型締装置に取付け、型締力調整をする。成形を繰り返し、良品が得られるように成形条件を調整する。すなわち成形条件出しを実施する。その後、数回成形サイクルを実施し、成形が安定したことを確認して自動運転に移行する。すなわち射出成形機において成形品を成形するには色々な操作を実施している。このような操作は、一定の履歴件数だけ射出成形機のコントローラに保存されている。一方、成形サイクルを連続的に実施しているとき、金型温度、型締力、射出速度、保圧等の各種の測定データが適宜測定されている。このような測定データについても、所定の成形サイクル数だけコントローラに保存されている。さらには、射出成形機の運転中において警報が発生することもあり、このような履歴も所定の件数だけコントローラに保存されている。これらの操作履歴、測定データ履歴、警報履歴等の履歴情報は、コントローラに保存可能な保存期間、保存件数等に制限があり、例えば、所定の機種の射出成形機であれば、測定データ履歴は10000成形サイクル分だけ保存されるようになっている。10000成形サイクルを越えると最古の成形サイクルにおける測定データ履歴が消去され、消去したレコードに測定データが上書きされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−4828号公報
【0004】
特許文献1は、クラウドサーバと接続されている射出成形機が記載されている。このクラウドサーバには、所定のコンピュータも接続されている。コンピュータには当該射出成形機に関する型締力、加熱シリンダの断面積等の色々な情報、すなわち機械パラメータが保存されており、この射出成形機を識別する機械番号を入力すると、この射出成形機に関する機械パラメータがクラウドサーバにアップロードされるようになっている。クラウドサーバには他のコンピュータも接続されており、この他のコンピュータはクラウドサーバにアップロードされている機械パラメータを参照し、そして射出成形機に取付け予定の金型の情報を読み込んで、最適な成形条件を計算する。この最適な成形条件はクラウドサーバにアップロードされる。特許文献1に記載の射出成形機は、クラウドサーバから最適な成形条件をダウンロードし、成形を開始することができる。なお、この射出成形機は成形不良を検出すると、この情報と関連する情報とをクラウドサーバにアップロードする。すなわち警報履歴と、測定データの一部をアップロードするようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の射出成形機においても、所定の保存期間あるいは所定の件数だけ、射出成形機のコントローラに履歴情報が保存されているので、必要に応じて内容を閲覧することができ、何らかの問題が発生していれば、履歴情報を解析することで原因を調べることもできる。しかしながら、閲覧や解析をするためには射出成形機のコントローラを直接操作しなければならず、遠隔で閲覧、解析ができない。さらには履歴情報の保存期間は限られていて、閲覧や解析を希望しても消去されてできない場合もある。さらには解析の自由度が小さい問題もある。すなわち履歴情報を解析するときには色々なソフトウエアを使って効率的に解析したいが、一般的に射出成形機のコントローラにはそのような解析用のソフトウエアはインストールされていないので不便でもある。これに対して、特許文献1に記載の射出成形機の場合には、ある条件下において警報履歴等がクラウドサーバにアップロードされるようになっている。そうすると、PC、タブレット端末等からクラウドサーバにアクセスして履歴情報を閲覧し、解析することができる。また履歴情報の保存期間も長期間にすることができる。しかしながら、特許文献1に記載の射出成形機は、射出成形機で成形不良が生じたとき射出成形機の判断で警報履歴等をクラウドサーバにアップロードするようになっているので、必ずしもユーザが欲しい履歴情報が含まれている保証は無い。つまり、成形不良が生じなければ警報履歴等はアップロードされないので、PC等からは閲覧も解析もできない。成形不良が生じるときは、その予兆が数時間前の成形サイクルから生じていることもあるが、そのような予兆が現れている時間帯の履歴情報を閲覧・解析したくてもこれらがクラウドサーバに保存されている保証がない。
【0006】
したがって本発明は、射出成形機において実施される操作の履歴、成形サイクルにおいて収集される各種の測定データの履歴、射出成形機において発生する警報の履歴、等の各種履歴情報に関し、長期間所定の場所に保存することができ、ユーザが必要とする時間帯の履歴情報を、PC、タブレット端末、スマートフォン等から容易に取得することができ、それによって必要な解析をすることができる、射出成形機の履歴情報管理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、インターネット接続可能な射出成形機と、インターネット上に設けられているクラウドサーバーと、インターネット接続可能なクライアント端末とからなる、射出成形機の履歴情報管理システムとして構成する。このシステムは、
ユーザがクライアント端末を操作して、クライアント端末からクラウドサーバに所定のアップロードの要求を上げるようにする。この要求は、射出成形機のコントローラの記憶領域に保存されている射出成形機の操作の履歴、成形サイクルにおいて収集される測定データの履歴、射出成形機において発生する警報の履歴、からなる履歴情報
について指定期間分だけクラウドサーバーにアップロード
するようにというものである。射出成形機は常時インターネット接続されており、クラウドサーバを周期的にポーリングして要求を読み取る。そして要求に従って指定期間分の履歴情報をクラウドサーバにアップロードする。
クライアントはアップロードされた情報を利用できる。
【0008】
すなわち本発明は、上記目的を達成するために、インターネット接続可能な射出成形機と、インターネット上に設けられているクラウドサーバーと、インターネット接続可能なクライアント端末とからなり、
前記射出成形機は常時インターネット接続されて前記クラウドサーバを周期的にポーリングしており、ユーザが前記クライアント端末を操作して、前記クライアント端末から前記クラウドサーバに所定のアップロードの要求を上げると、前記射出成形機はこれを検出し、要求された指定期間分について、前記射出成形機の操作の履歴、成形サイクルにおいて収集される測定データの履歴、
前記射出成形機において発生する警報の履歴からなる
履歴情報を、該履歴情報が保存されている前記射出成形機のコントローラの記憶領域から読み取って前記クラウドサーバにアップロードするようになっており、前記クライアント端末は前記クラウドサーバーにアップロードされた前記履歴情報にアクセスできるようになっていることを特徴とする射出成形機の履歴情報管理システムとして構成される。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明は、インターネット接続可能な射出成形機と、インターネット上に設けられているクラウドサーバーと、インターネット接続可能なクライアント端末とからなる射出成形機の履歴情報管理システムとして構成される。そして、
射出成形機は常時インターネット接続されてクラウドサーバを周期的にポーリングしており、ユーザがクライアント端末を操作して、クライアント端末からクラウドサーバに所定のアップロードの要求を上げると、射出成形機はこれを検出し、要求された指定期間分について、射出成形機の操作の履歴、成形サイクルにおいて収集される測定データの履歴、射出成形機において発生する警報の履歴からなる
履歴情報を、該履歴情報が保存されている射出成形機のコントローラの記憶領域から読み取ってクラウドサーバにアップロードするようになっており、クライアント端末はクラウドサーバーにアップロードされた履歴情報にアクセスできるようになっている。つまり、任意の指定期間分の履歴情報をアップロードできると共に、そのようにアップロードされたクラウドサーバ上の履歴情報をクライアント端末から閲覧・解析できるので、必要な履歴情報を見ることができないという問題は発生しない。そしてクラウドサーバは、射出成形機のコントローラの記憶領域に比して容量が大きいので、実質的に履歴情報の保存可能期間に制限がなくなる。また、クライアント端末にはPC、タブレット、スマートフォン等があるが、これらのクライアント端末で履歴情報の閲覧・解析をする場合、市販の閲覧・解析ソフトを利用することができ、効率が高い。
さらに、射出成形機からの履歴情報のアップロード
はクライアント端末からの要求によって実施することができるので、ユーザは射出成形機の所まで行ってコントローラを操作する必要がなく、遠隔で射出成形機の必要な期間の履歴情報を入手できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る射出成形機の履歴情報管理システムを示す概念図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る射出成形機の履歴情報管理システムにおいて、射出成形機のコントローラ上、またはクライアント端末上で操作するアプリケーションの画面を示す、図である。
【
図3】クライアント端末上で表示される、履歴情報の閲覧画面を示す図である。
【
図4】クライアント端末上で表示される、履歴情報の閲覧画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る射出成形機の履歴情報管理システム1は、
図1に示されているように、インターネット接続可能な射出成形機2と、インターネット上に設けられているクラウドサーバ3と、PCやタブレット端末あるいはスマートフォン等のクライアント端末5と、から構成されている。射出成形機2はインターネット接続が可能である点以外は従来の射出成形機と同様に構成され、金型を型締めする型締装置、金型に樹脂を射出する射出装置等からなる。射出成形機2には
図1に示されていないがコントローラが設けられ、コントローラに付属しているモニタから射出成形機2に対する各種の操作ができるようになっている。コントローラには所定の容量の記憶領域が設けられており、所定の履歴情報が一定件数、あるいは一定の成形サイクル数分だけ保存されるようになっている。履歴情報には、射出成形機2を操作した履歴である操作履歴、成形サイクルを実施しているときに得られる金型温度、型締力、射出速度、保圧等の各種の測定データの履歴、そして射出成形機2の運転中において発生する警報の履歴すなわち警報履歴等がある。射出成形機2は工場内LANに接続されており、工場内LANからインターネットに接続できるようになっている。このような射出成形機2のコントローラには履歴送信アプリケーション6がインストールされている。履歴送信アプリケーション6は、ユーザーの要求に従って、コントローラ内に保存されている履歴情報を収集してクラウドサーバー3にアップロードするようになっている。
【0012】
クラウドサーバ3はインターネット上に設けられており、射出成形機2からアップロードされた履歴情報が保存される履歴情報管理データベース8、射出成形機2側の履歴送信アプリケーション6と通信して履歴情報を得、これを履歴情報管理データベース8に保存する履歴保存アプリケーション9、履歴情報管理データベース8に保存されている履歴情報をクライアント端末5に提供するWebサーバ10、等から構成されている。射出成形機2のコントローラに保存されている履歴情報をクラウドサーバ3にアップロードするのは前記したように履歴送信アプリケーション6であるが、これを起動するトリガーは本実施の形態において2種類ある。第1のトリガーは、コントローラ上での操作によるものであり、次に説明するように履歴送信アプリケーション6が備えている画面をコントローラ上で操作して行う。一方、第2のトリガーはクライアント端末5上での操作によるものである。いずれのトリガーによっても履歴送信アプリケーション6が実行されて履歴情報がアップロードされる。第2のトリガーつまりクライアント端末5における操作により、履歴送信アプリケーション6を実行させるためには、クライアント端末5から射出成形機2に情報を伝達する必要がある。この伝達方法には色々な方法があるが、本実施の形態においては、クラウドサーバ3に所定のファイル、つまり履歴収集指令12が設けられ、このファイルを介して情報が伝達される。
【0013】
本実施の形態に係る射出成形機の履歴情報管理システム1の作用を説明する。射出成形機2のコントローラ上で、履歴送信アプリケーション6に含まれる所定の画面を起動する。そうすると
図2に示されている、操作画面が表示される。この操作画面において、ユーザは次の項目を入力する。
「製品」 射出成形機2において成形していた成形品に関する情報で、アップロードの対象の履歴情報と関連して保存する情報である。
図2の例では「部品X成形履歴」となっている。
「開始、終了時刻」 アップロードの対象の履歴情報について、その開始時刻と終了時刻である。
「金型」 射出成形機2に取付けられている金型に関する情報である。
「材料」 樹脂材料についての情報である。
「担当者」ユーザ名である。
上記の項目を全て入力すると、操作画面のアプリケーションは自動的に管理番号を割り振る。管理番号はクラウドサーバ3に保存される履歴情報を管理するためのユニークな番号であり、
図2の例ではNo.77が割り振られている。ユーザは管理番号が割り振られたことを確認して送信ボタンをクリックする。
【0014】
履歴送信アプリケーション6は、ユーザが指定した項目、すなわち条件に従ってコントローラの記憶領域に保存されている履歴情報、すなわち操作履歴、測定データの履歴、警報履歴を収集する。このようにして収集した履歴情報を以後便宜的にユーザ指定履歴情報と呼ぶが、履歴送信アプリケーション6はこのユーザ指定履歴情報をクラウドサーバ3にアップロードする。クラウドサーバ3では履歴保存アプリケーション9がユーザ指定履歴情報を受け取り、履歴情報管理データベース8に格納する。履歴情報管理データベース8には、このようにしてアップロードされた複数のユーザ指定履歴情報が保存されることになる。
【0015】
履歴情報管理データベース8に保存された複数のユーザ指定履歴情報を閲覧するには、クライアント端末5においてWebブラウザを表示し、Webサーバ10にアクセスする。そうすると、Webサーバ10は履歴情報管理データベース8からユーザ指定履歴情報を収集してHTML画面に編集し、Webブラウザに送る。Webブラウザで、
図3に示されている履歴情報一覧が表示される。この画面には複数のユーザ指定履歴情報が表示される。画面上で閲覧したいユーザ指定履歴情報をクリックすると、
図4に示されている履歴情報閲覧画面に切り替わり、ユーザ指定履歴情報に含まれる履歴情報が表示される。ユーザは必要な履歴情報を閲覧できる。
【0016】
本実施の形態においては、前記したようにクライアント端末5からのトリガーによってもユーザ指定履歴情報がアップロードされる。これを説明する。クライアント端末5において、所定の操作をすると、クライアント端末5上に
図2に示されている操作画面に類似した画面が表示される。この画面上で、「製品」、「開始、終了時刻」、「金型」、「材料」、「担当者」の各情報を入力する。画面にはさらに射出成形機を特定する射出成形機IDも入力するようになっている。これらの項目を入力すると、自動的に管理番号が割り振られる。画面上で送信ボタンをクリックする。そうすると、画面で入力した項目がまとめられて、クラウドサーバ3内の履歴収集指令12に格納される。射出成形機2はいわゆるプッシュ通知により履歴収集指令12から情報を受け取る。すなわち、履歴送信アプリケーション6がクラウドサーバ3を周期的にポーリングして履歴収集指令12に情報が格納されているか否かをチェックし、情報があれば受け取る。履歴送信アプリケーション6は、受け取った情報、すなわち指定された条件に従って射出成形機2のコントローラ内の履歴情報を収集し、ユーザ指定履歴情報としてクラウドサーバ3にアップロードする。ユーザは、前記したようにしてクライアント端末5上で履歴情報を閲覧することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 射出成形機の履歴情報管理システム
2 射出成形機
3 クラウドサーバ
5 クライアント端末
6 履歴送信アプリケーション
8 履歴情報管理データベース
9 履歴保存アプリケーション
10 Webサーバ
12 履歴収集指令