特許第6794087号(P6794087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6794087
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】舌苔取り具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/24 20060101AFI20201119BHJP
   A61C 17/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   A61B17/24
   A61C17/00 T
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-109248(P2020-109248)
(22)【出願日】2020年6月25日
【出願変更の表示】実願2020-1039(U2020-1039)の変更
【原出願日】2019年7月18日
【審査請求日】2020年6月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】308028810
【氏名又は名称】阿部 洋
(72)【発明者】
【氏名】阿部 洋
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第204072338(CN,U)
【文献】 登録実用新案第3017914(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3139380(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3121294(JP,U)
【文献】 特開2007−151613(JP,A)
【文献】 特開2015−73586(JP,A)
【文献】 特開2012−95995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/24
A61C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舌の表面に押圧されて前記舌に接し貫通孔を有する苔取網部(2)と、
前記苔取網部(2)の周辺を固定する網固定部(4)と、を備え、
前記苔取網部(2)は、表側の網部(3)と裏側の網部(13)とを有し、
前記表側の網部(3)は、表側に凸状の膨らみ部(14)を構成し、
前記裏側の網部(13)は、裏側に凹状の舌苔保持部(5)として凹部を構成することを特徴とする
舌苔取り具。
【請求項2】
前記膨らみ部(14)は、3mmから4mmまでの前記凸状に形成されたことを特徴とする
請求項1記載の舌苔取り具。
【請求項3】
前記網部固定部(4)に先端が結合された屈曲自在の取手をさらに備えることを特徴とする
請求項1および請求項2のうちいずれか1項記載の舌苔取り具。

【発明の詳細な説明】
【技術の分野】
【0001】
本発明は、舌の表面に付着して離れない舌苔を除去できる舌苔取り具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の舌苔取り具は、柄の先端部分の舌と接触する部分が、ヘラタイプ、ブラシタイプ、ワイヤー状などに大別されているが、どれも舌についている舌苔に上からブラシでこすって舌の先端に掻き出すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−360463
【特許文献2】特開平9−51898
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の舌苔取り具は、ガーゼなどの袋状構造体からなり、その袋状構造体に1〜3本の指を差し込んで、舌苔や舌の汚れを、こそげ取るようにして拭き取れるように構成されている。しかし、このような舌苔取り具では、袋状構造体に指を差し込んで口に入れるだけで、袋状の物体が上あごや舌に触ることにより嘔吐反射が強くなる。
以前ヘルパーが指にガーゼを巻きつけて口の中に差し込んで舌苔や食べ物のカスなどを取っていたが、嘔吐反射がひどく危険のため、最近ではあまり採用されていない。
【0005】
特許文献2に記載の舌苔除去器具は、頭部に網目状の突起と、網目状突起の間に凹部を設け、突起のある面を舌面に当て、裏面を上あごに舌を用いて押当てながら、柄部を指で摘んで前方に引出し、突起と凹部の作用で舌苔を削ぎ落とすようにして除去するものである。
一般に、舌苔や食べカスが一番溜まりやすい場所は、舌の奥にある有郭乳頭と葉状乳頭の近くと言われている。このような乳頭が多くある場所は、特許文献2に記載のような舌苔除去器具で舌苔を削ぎ落したり除去することは、舌に傷をつけたり嘔吐反射強くなるため採用することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、舌の表面の奥にクリーム状や粘土状に付いて離れない舌苔を、舌の表面に傷をつけることなく、嘔吐反射も強くなく、除去することができ、舌苔の臭い・色などの状態を確認することができる舌苔取り具を提供する。
本発明の舌苔取り具は、舌の表面と接する網部を有する苔取網部と、苔取網部の周辺を固定する網固定部とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、苔取網部が舌の表面と接する網部を有しているので、舌の表面に付着している舌苔は、網部を舌に押圧するだけで網部を通り抜けて網部裏面に溢れ出し網部裏面に保持される。
したがって、本発明によれば、舌の表面の舌苔を突起などでこそぎ取る必要が無いので舌の表面を傷つけることはない。また、網部は厚さが薄いものであるため、舌苔を取るのに網部を舌の表面に押し付けるだけで良いので嘔吐反射強く発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の舌苔取り具の一実施形態の平面図である。
図2図2は、本発明の舌苔取り具の一実施形態の右側面図である。
図3図3は、本発明の舌苔取り具の一実施形態の使用状態を示す平面図である。
図4図4は、本発明の舌苔取り具の一実施形態の実物写真を示す図である。
図5図5は、本発明の舌苔取り具の一実施形態の苔取り網部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図2において、本発明の一実施形態の舌苔取り具1は、舌の表面と接する表側の網部3を有する苔取網部2と、苔取網部2の周辺を固定する網固定部4とを備えている。表側の網部3は、多数の網目から形成されており舌苔が通り抜ける貫通孔を有している。また、表側の網部3が舌の表面に押圧されることにより、舌苔が網部3の網目の貫通孔を抜け出て裏側の網部13に保持される。
【0010】
苔取網部2は、表側の網部3を頂部とした凸状に形成されており、裏側の網部13に出てきた舌苔は裏側の凹状の形状により容易に保持される。
また、本発明の一実施形態の舌苔取り具1は、屈曲自在の取手10を有し、取手10の先端に網固定部2が結合されている。
【0011】
さらに詳細に説明すると、本発明の一実施形態の舌苔取り具1は、取手10の一端から苔取網部2の先端までの長さが約150mm程度である。取手10の太さは5mm〜6mmである。取手10の材質は総てステンレスである。苔取網部2は、図1に示すように、先端が丸みのある三角形状に形成されており、取手10の一端に結合されている。
図1において、本実施の形態の舌苔取り具1は、取手10の手前(図面の下方)の端から、丸みのある三角形状の苔取網部2の先端(図面の上方)までの長さCが150mm程度である。苔取網部2の長さBは50mm程度であり、苔取網部2の先端部分の一番幅の広い部分Aが18mm程度である。
【0012】
苔取網部2は舌の表面と接する部分が表側の網部3であって、図3に示すように、裏側の網部13で舌苔15を保持する。苔取網部2の回りには苔取網部2を固定する網固定部4が設けられている。網固定部4は、苔取網部2の周囲がむき出しになっていると苔取網部2を形成する個々の網の先端で舌を傷つけるので、断面が曲率を有する形状に網の端部を成形したり、断面が曲率を有する平坦な保持具で網の端部を固定したりして形成されている。
【0013】
また、網固定部4により、この一部を指で持って、あるいは、取手10を手で持って、表側の網部3を舌の表面12に押し当てることができる。
苔取網部2は、図2図5に示すように、表側の網部3を頂部とするように凸状に形成されている。すなわち、表側の網部3は、金網からなる膨らみ部14を有している。したがって、これに伴い、裏側の網部13は凹状に形成されている。
【0014】
苔取網部2の裏側の網部13は、図2図5に示すように、凹状であるため、裏側の網部13によって、この部分で舌苔15を保持する舌苔保持部5が形成される。すなわち、苔取網部2の表側の網部3を、舌の奥の舌苔が一番溜まっているまたは付着している舌苔の上に重ねて、かるく押えるだけで表側の網部3の反対面である裏側の網部13で形成される舌苔保持部5に舌苔を保持した状態で口の外に出すことができる。
【0015】
苔取網部2はステンレスから構成されている。苔取網部2の表側の網部3の金網の目が1mm〜1.5mmに形成されているため、表側の網部3で押えられて網目を貫通した、舌苔やクリーム状の汚れものなどは、舌苔保持部5の中から外に洩れることはない。
【0016】
表側の網部3は、網固定部4から表側に3mm〜4mmの金網の膨らみ部14が設けられている。すなわち、苔取網部2は、網部3を頂部とするように凸状に形成されて膨らみ部14が形成されている。
【0017】
舌苔取り具1の取手10は、金属の芯9の回りに金属などをスプリング状に巻いて形成されており、上、下、左、右に屈曲自在に動かす事ができる。取手10の、苔取網部2との結合部との反対側の端には、舌苔取り具1をフックなどに保管などするための掛け具6が設けられている。
【0018】
取手10がスプリング状であるため、口の中で舌苔取り具1を動かして歯茎や舌にあたっても抵抗をやわらげる事ができる。
【0019】
図3は、本発明の舌苔取り具1の一実施形態の使用状態を示す平面図であって、図面の上側が舌の付け根側、すなわち喉側であり、図面の下側が舌の先端側、すなわち唇側である。舌の奥にある、糸状乳頭7よりも有郭乳頭8および葉状乳頭11の側に多くできる舌苔は、自分が口から吐いている臭いと同じ臭いである事が実験の結果わかった。
【0020】
取手10を持ち、苔取網部2の表側の網部3を、舌の表面12に押し当てることにより、舌苔15や食べカスなどを、表側の網部3から裏側の網部13に押し出し、裏側の網部13の中の舌苔保持部5の中に保持できる。裏側の網部13の中に押し出された舌苔15や食べカスなどは、舌苔保持部5の中に保持された状態で、舌苔取り具1を口から出すことができる。これにより、苔の色、臭い、成分などがわかり、また口の中を浄化することができる。
【0021】
従来は、痴呆老人が寝たきり老人の場合は、自分の力で口の汚れを外に出す力がないため、ヘルパーが指にガーゼを巻きつけて口の中に差し込んで、舌苔や食べ物のカスなど拭き取っていた。しかし、この場合、舌の先は拭き取る事ができるが、舌の奥の舌苔や汚れは嘔吐反射が強くでるため、拭き取る事ができない。そのため、うがい水を使って拭き取れなかった舌苔などを口の外に取り出していた。
【0022】
しかし、本発明の舌苔取り具1は、表側の網部3を舌の表面に押し当てるだけで、口の中に残っている舌苔や食べカスなどをほとんど除去できるので、うがい水を使わなくても舌苔や食べカスなどを口の外に取り出す事ができる。
【0023】
現在販売されている舌ブラシは、ほとんどがブラシ状かヘラ状であるため、舌の上の糸状乳頭7や有郭乳頭8をブラシの先やヘラの先端で舌をこするため、舌に傷をつけていた。
本実施形態の舌苔取り具1は、全体がステンレスのため滑りが良く、舌の表面に傷をつける事がない。また、舌苔取り具1が金属のため臭いや、雑菌がつきにくいため、殺菌をして使用すれば業務用でも使用できる。
【0024】
図2図3において、裏側の網部13の中側には舌苔保持部5が形成されており、舌苔取り具1の表側の網部3を舌苔の上に置いて押し付け、口の外に出す事により、舌苔が表側の網部3に引っ掛かりながら舌苔保持部5の中に溜めながら、舌苔を口の外に出すことができる。
【0025】
図2の自在に曲がる屈曲自在のスプリング状の取手10の中には、針金状の芯9が設けられている。
【0026】
図3は、舌の表面12を舌苔取り具1で汚れを取り去っている状態を示す図である。舌苔取り具1の横幅Aが18mmぐらいに細くしているため、嘔吐反射が少なく、舌の奥まで挿入してきれいにできる。
【0027】
図3において、舌苔や食べカスは、舌の奥の方にある有郭乳頭8と葉状乳頭11の近くにたまりやすくなっており、この部分に一番多く溜まる。このような乳頭が多くある場所は、舌に傷をつけたり嘔吐反射が強くなったりするため、ブラシタイプ、ヘラタイプでは簡単に舌苔を取る事ができない。
【0028】
本実施の形態では、苔取網部2を舌苔などで汚れている部分の上から押さえるだけで、舌苔などの汚れはクリーム状またはペースト状、粘土状になっているため、表側の網部3が、クリーム状またはペースト状、粘土状の舌苔などを網目の周りから裏側の網部13に押し出し、舌苔が、苔取網部2の網目である貫通孔を通り抜けて、裏側の網部13で形成される舌苔保持部5に集めて取り出すことができる。
【0029】
このように、本実施の形態では、苔取網部2で従来のように舌の表面をこそぎとったり、削ぎ落としたりする必要がなく、舌の表面、特に舌奥の表面を傷つけることはない。また苔取網部2は網目で形成されるため、強い嘔吐反射を招くことはない。
【0030】
図4は試作品であって、ステンレスで自在に曲がるスプリング状の取手10を、くの字状に曲げた状態を示している。取手10が屈曲自在に曲がるため、口の中のすみずみまで汚れを取る事ができる。
【0031】
苔取網部2は、図1の上方である先端から見た網目が、図3図5に示すように菱形状16に形成されている。そのため舌の表面に表側の網部3を上に乗せて押し付け、手前に舌苔取り具1を口の外へ引く事により、舌苔がきれいに、すくい取られる。また、すくい取られた舌苔や食べカスは、舌苔保持部5から外に出ないように菱形状16の網目にそって網の中心に向いている。すなわち、菱形状16の各網目の鋭角部は取手方向を向いているため、舌苔保持部5で保持された舌苔は網目の鋭角部で十分保持できる。
【0032】
なお、上記実施形態では、舌苔取り具1をステンレスで形成したが、特に、少なくとも苔取網部2および網固定部4を、金や銀で形成することにより殺菌効果を高めることができる。また、コストを抑えるためには可撓性樹脂で形成することにより、安価な舌苔取り具1を構成することができる。
【0033】
上記実施形態では、苔取網部2を、先端部が丸みを有する三角形状で形成したが、角部が丸みを有する四角形状、円形状、T字状など、口内を傷つけないどのような形状でも可能である。ただ、舌の幅より小さく、喉から舌先の方向の長さの方が幅方向より長い方が、舌奥まで苔取網部2を挿入することができ、嘔吐反射が少ない。
【0034】
また、膨らみ部14は、上記実施形態のように、表側の網部3から取手10に向けて傾斜していなくても、表側の網部3全体が皿状形状など、膨らんでいれば任意の形状でも可能である。
取手10もスプリング状でなくても、自由に撓む可撓性樹脂で形成することも可能である。
【0035】
網部3、15の網目は、菱形状でなくても、四角形状、三角形状でも可能である。網部3、15は、上記実施形態から分かるように、網部の表側3と網部の裏側15との間に貫通孔が形成されている必要がある。
【0036】
ペースト状、粘土状の舌苔などを表側から裏側に押し、貫通孔を介して出すために、網部3、15の網目の大きさは、上記実施形態のように1mm〜1.5mmに形成するのが最適であった。すなわち、繊維の糸で形成される1mmよりも小さな網目の大きさでは舌苔を貫通孔から押し出すには不適であり、また、1.5mmより大きすぎると貫通孔から押し出される舌苔の量が少なくなり、舌苔の除去効果が低下する。
【0037】
以上説明したように、本発明の舌苔取り具は、舌の表面と接する網部を有する苔取網部と、苔取網部の周辺を固定する網固定部とを備えている。
【0038】
したがって、本発明によれば、苔取網部が舌の表面と接する網部を有しているので、舌の表面に付着している舌苔は、網部を舌に押圧するだけで網部を通り抜けて網部裏面に押し出され網部裏面に保持される。
【0039】
本発明によれば、舌の表面の舌苔を突起などでこそぎ取る必要が無いので舌の表面を傷つけることはない。また、網部は厚さが薄いものであるため、舌苔を取るのに網部を舌の表面に押し付けるだけで良いので嘔吐反射はほとんど発生しない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、舌を傷つけることなく、また嘔吐反射が発生することなく、舌奥に形成される舌苔を除去できるので、医療分野、介護分野などの舌苔取り具として有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 舌苔取り具
2 苔取網部
3 表側の網部(舌に接する部分)
4 網固定部
5 舌苔保持部
6 掛け具
7 糸状乳頭
8 有郭乳頭
9 芯
10 取手
11 葉状乳頭
12 舌の表面
13 裏側の網部
14 膨らみ部
15 舌苔
16 菱形状
【要約】
【課題】従来の舌の清掃には、舌ブラシやヘラのついたブラシ状が多く使われているが、舌についている粘土状の苔は簡単には取る事ができないため、ブラシやヘラで何度もこするため、舌の表面に傷つけていた。
【解決手段】舌苔取具(1)の取手(10)の先に設けられた苔取網部(2)を、舌苔や汚れている部分に押し付けることにより、舌の表面などに傷をつける事なく、舌苔保持部(5)に集めて取り出す事ができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5