(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エマルジョンのガラス転移温度が−40℃〜30℃の範囲であり、酸価が30〜80mgKOH/gの範囲である請求項1に記載の紙用オーバーコーティング用及び接着剤用組成物。
【背景技術】
【0002】
ドーナッツ、ハンバーガー等のファーストフードや惣菜のような調理済みの食品の包材は内容物の水分や油分がしみこまないように耐水性や耐油性が必要であり、さらにレンジで加熱した場合に食品から発する水蒸気で内容物がしっけて風味が損なわれないように適度な透湿性が必要となる。このような機能を包材である紙に付与する方法として、従来、過フッ素炭化水素のアクリレートまたはリン酸エステルなどのフッ素系化合物を用いた組成物をコーティングする方法が行われてきた。しかしながらフッ素系の組成物は、加熱すると紙中に存在するフッ素系化合物が熱分解されて自然界において「難分解性」のフッ素系炭化水素が発生し環境汚染等の問題が指摘されている。
【0003】
これに対し、例えば、特許文献1では、紙基材上にカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーの塗工層を設けることで、耐油性、透気性に優れた耐油紙を作製している。しかしながら、特許文献1の作製方法で得られるセルロースナノファイバーは結晶性のセルロースナノファイバー表面のカルボキシル基が塩型になっているため、水によって容易に膨潤し崩壊してしまう。多くの惣菜類やファーストフードは油分以上に水分を多量に含んでおり、内容物に水分によってセルロースナノファイバーの塗工層が崩壊し、内容物への汚染や水分および油分の浸透につながる恐れがある。そのため、耐水性、耐油性を有しつつ安全性の高いコーティング剤が求められている。
【0004】
更に近年では、マイクロプラスチックを始めとする海洋プラスチックごみ問題がクローズアップされる中で、「再利用可能」「生分解性を有する」などの機能を持つ素材の一つとして、再生可能な資源である「木」を原料とする「紙」への関心が高まってきている。
【0005】
現在広く普及している食品向け紙製容器の1つである紙カップ類は、紙であるものの原料の一部にリサイクル効率を低下させるポリエチレンフィルムが使用されている。通常紙カップは、熱で溶かしたポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等をフィルム状に押し出したポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等を紙基材に貼り合わせて得る。紙カップ成型時には、ポリエチレンフィルムがバーナーや熱風等の間接加熱下による熱溶融により接着剤の役目を果たし、且つ、ポリエチレンフィルムが紙カップ内側に存在するので紙基材が直接内容物と接触する事なく防水性や強度が付与される。
しかしながら貼り合わされたポリエチレンフィルムは、紙リサイクル時に紙リサイクル処理で使用するアルカリ溶液に溶解しないため物理的に除去する必要があり、リサイクル効率の低下につながる。またプラスチックごみの海洋への流出による海洋汚染が世界的に問題となっている。持続可能な開発目標(SDGs)のターゲットとして「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」という目標が掲げられ、サミット(主要国首脳会議)でも取り組み強化が合意されるなど、プラスチックごみの削減は世界的な重要テーマとなっている。従って、これらの用途に適用可能で且つ紙リサイクル効率を低下させない、ポリエチレンフィルム代替品が求められている。またプラスチックフィルムを使用しない紙容器が求められている。
【0006】
紙ストローについても、2015年、南米コスタリカ沖で、鼻にストローが刺さったウミガメが発見された事を1つの契機に、プラスチック製ストローの使用を廃止する運動が世界各国で急速に広まっており、米国大手ハンバーグチェーン店では欧州市場の一部でプラスチック製ストローの利用を段階的に取りやめ、代わりに紙ストローの導入を予定するなど、注目が高まっている。
【0007】
また、英国政府でも2018年春、使い捨てプラスチックストロー販売の禁止を目指すと表明したほか、同時期に欧州連合(EU)はプラスチックストローに関する禁止措置を提案した。また、インド政府は使い捨てのプラスチック製品を2022年までに禁止する方針を示しており、アジア地区への波及も現実になりつつある。
【0008】
こういった状況下、日本国内でも一部の外食産業等で、紙製ストローへの切り替えの動きが徐々に加速しつつある。
【0009】
一方で、紙製ストローは薄手の用紙を2枚以上、複数枚貼りあわせて作製する事から、
貼りあわせた時の平滑性、ストロー使用時の給水に伴う耐水性が要求され、従来から使用されているポリビニルアルコール系接着剤や、デンプン系接着剤を用いた紙積層体を使用した紙製ストローでは、特に耐水性が不十分であり、プラスチック製ストロー程の強度が保てないのが実態である。
【0010】
これに対し、例えば、特許文献2では紙との接着性の向上を目的に、特定のポリオレフィン樹脂から成る水性分散体と有機アミン化合物を特定比率で配合した紙用水性接着剤の発明が成されているが、貼りあわせた時の平滑性、耐水性の点で十分とは言えず、紙製食器向け積層体としては強度不足である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(エマルジョン)
本発明で使用するエマルジョンは、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体を少なくとも含む樹脂を含有し、最低造膜温度が−30℃〜30℃の範囲である。
【0016】
本発明のエマルジョンを用いた紙用オーバーコーティング組成物は、ピンホール等の欠陥の無い緻密な造膜性を有するため、耐水性、耐油性に優れる。また、本発明のエマルジョンは接着性も有するため、紙と紙、又は紙とフィルムとを接着する接着剤用組成物として使用できる。
(スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体)
本発明で使用するスチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体(以下スチレンアクリル共重合体(A)と称する場合がある)は、スチレン、αメチルスチレン及び(メタ)アクリレートとの共重合体である。
【0017】
尚、本発明において(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートの総称を表し、(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸の総称を表す。
【0018】
本発明において、αメチルスチレンは、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレンのいずれかまたは混合物を表す。本発明の組成物はスチレンアクリル共重合体(A)を含むため、耐熱性が向上する。
【0019】
また、前記スチレンや前記αメチルスチレン以外のスチレン誘導体(p−ジメチルシリルスチキシスチレン、p−tert−ブチルジメチルシロキシスチレン、p−tert−ブチルスチレン)、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレンらを本発明の範囲を損なわない範囲において一部使用してもよい。
【0020】
(メタ)アクリレートとしては特に限定はなく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸iso−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸n−トリデシル、(メタ)アクリル酸n−ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−tert−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピル、メタクリル酸ペンタフルオロプロピル、メタクリル酸オクタフルオロペンチル、メタクリル酸ペンタデカフルオロオクチル、メタクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロニトリル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレンオキサイド基含有(メタ)アクリル単量体等、汎用の(メタ)アクリレートを使用することが出来る。中でも、アクリレートを有するホモポリマーがより低いガラス転移温度を呈することから好ましく、炭素原子数1〜20のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましく、炭素原子数1〜12のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましい。このような炭素原子数1〜12のアルキル基を有するアクリレートとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸アリル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸iso−アミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル等が挙げられる。本発明のスチレンアクリル共重合体(A)の構成成分として用いられる(メタ)アクリレートは、1種類であっても2種類以上であってもよいが、2種類以上の(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、中でも、炭素原子数1〜12のアルキル基を有するアクリレート2種類以上を主成分として用いることが好ましい。
【0021】
本発明で使用するエマルジョンは、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体を更に含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体は、(メタ)アクリル酸と前記(メタ)アクリレートとの共重合体である(以下アクリル共重合体(B)と称する場合がある)。前記(メタ)アクリレートとしては特に限定はないが、中でも炭素原子数1〜20のアルキル基を有するアクリレートであることが好ましく、アクリレートを有するホモポリマーがより低いガラス転移温度を呈することから好ましく、炭素原子数1〜20のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましく、炭素原子数1〜12のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましい。このような炭素原子数1〜12のアルキル基を有するアクリレートとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸アリル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸iso−アミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル等が挙げられる。
【0022】
本発明で使用するエマルジョンは、前記スチレンアクリル共重合体(A)と前記アクリル共重合体(B)とを含有することが好ましいが、これは、乳化重合や転送乳化等の公知の水性媒体を使用する重合法で重合した前記スチレンアクリル共重合体(A)のエマルジョンと、乳化重合や転送乳化等の公知の水性媒体を使用する重合法で重合した前記アクリル共重合体(B)のエマルジョンとを適宜混合したエマルジョンであってもよいし、前記スチレンアクリル共重合体(A)と前記アクリル共重合体(B)とがコアシェル構造を形成する樹脂のエマルジョンであってもよい。なお、「スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂」とは、スチレンアクリル共重合体(A)からなる樹脂であってもよいし、前記スチレンアクリル共重合体(A)と前記アクリル共重合体(B)とがコアシェル構造を形成する樹脂であってもよい。
(エマルジョンの製造方法)
本発明においてエマルジョンは特に限定なく公知の乳化重合や転送乳化等の公知の水性媒体を使用する重合法で重合して得ることができる。また水性媒体にポリマーが分散した形態にはエマルジョンやディスパージョン、懸濁液等様々な表現があるが本発明においてはエマルジョンに統一する。
【0023】
例えば水性媒体中にモノマー混合物を供給して、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてエマルジョンを重合する。
【0024】
前記スチレンアクリル共重合体(A)のエマルジョンと、前記アクリル共重合体(B)のエマルジョンとを適宜混合したエマルジョンの場合は、それぞれのモノマー混合物を重合させたエマルジョンを混合させることで得られる。
【0025】
また、コアシェル構造を形成するエマルジョンの場合は、コアポリマーを形成するモノマー混合物を供給して、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてコアポリマーを形成する工程(1)と、シェルポリマーを形成するモノマー混合物を工程(1)のコアポリマーに供給し、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてコアポリマーにシェルを形成する工程(2)により得られる。また、シェルポリマーを形成するモノマー混合物を供給して、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてシェルポリマーを形成する工程(i)と、コアポリマーを形成するモノマー混合物を工程(i)のシェルポリマーに供給し、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてコアポリマーにシェルを形成する工程(ii)により得られる。
【0026】
開始剤としては特に限定なく、乳化重合法等で使用される過酸化物、過硫酸塩、アゾ化合物、又はレドックス系、或いはこれらの混合物を使用すればよい。過酸化物としては例えば、過酸化水素、過酸化アンモニウム、過酸化ナトリウム、又は過酸化カリウム、t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、及びベンゼンペルオキシドが挙げられる。また過硫酸塩としては例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、又は過硫酸カリウムが挙げられる。またアゾ化合物としては例えば、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、及び4,4’−(4−シアノバレリン酸)が挙げられる。またレドックス系は酸化剤と還元剤とから成り、酸化剤としては例えば先に挙げたうちの1の過酸化物、過硫酸塩、若しくはアゾ化合物、又は塩化ナトリウム若しくは塩化カリウム、又は臭化ナトリウム若しくは臭化カリウムが挙げられる。還元剤としては例えばアスコルビン酸、グルコース、又はアンモニウム、硫酸水素ナトリウム若しくは硫酸水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム若しくは亜硫酸水素カリウム、ナトリウムチオスルフェート若しくはカリウムチオスルフェート、又は硫化ナトリウム若しくは硫化カリウム、又は鉄(II)アンモニウムスルフェートが挙げられる。
中でも過硫酸塩、より好ましくは過硫酸アンモニウムが好ましい。
【0027】
前記モノマー混合物の重合は、例えば界面活性剤、連鎖移動剤、キレート剤等の添加剤の存在下で、例えば界面活性剤及び連鎖移動剤の存在下で行うことができる。これらの添加剤は、工程(1)で使用する水性媒体に予め添加させておいてもよいし、工程(1)あるいは工程(2)で供給するモノマー混合物と混合させておいてもよい。
【0028】
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば二ナトリウムドデシルジフェニルオキシド、ジスルホン酸塩等が挙げられる。また連鎖移動剤としても特に限定されないが、例えばα−メチルスチレン二量体、チオグリコール酸、亜リン酸水素ナトリウム、2−メルカプトエタノール、N−ドデシルメルカプタン、及びt−ドデシルメルカプタン等が挙げられる。キレート剤としては特に限定されないが、例えばエチレンジアミン四酢酸が挙げられる。
【0029】
コアシェル構造を形成する場合、水媒体中での安定性を高めるためには、酸性基を有する前記アクリル共重合体(B)がシェルとなることが好ましいが合成中に全ての前記アクリル共重合体(B)がシェルとなっておらず一部前記スチレンアクリル共重合体(A)がシェルとなっている構造を有するエマルジョンであっても問題ない。
【0030】
また中和が必要な場合は、中和剤としてアンモニア、トリエチルアミン、アミノメチルプロパノール、モノエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等の塩基類等を使用することができる。
(最低造膜温度)
前記エマルジョンの最低造膜温度は、−30℃〜30℃の範囲である。
本発明において最低造膜温度は、合成ゴムラテックスの水分が蒸発して乾燥するとき、連続したフィルムが形成されるのに必要な最低の温度であり、温度勾配板法により得られるものである。中でも−10〜25℃の範囲が好ましく、−5〜20℃の範囲がより好ましい。
【0031】
また前記エマルジョンのガラス転移温度(以下Tgと称する場合がある)は、−40℃〜30℃の範囲であることが好ましく、中でも−35〜25℃の範囲が好ましく、−30〜23℃の範囲がより好ましい。
本発明においてガラス転移温度は、示差走査熱量計による測定により得られるものである。
【0032】
また前記エマルジョンの酸価は30〜80mgKOH/gの範囲であることが好ましく、中でも40〜75mgKOH/gの範囲が好ましく、50〜70mgKOH/gの範囲がより好ましい。
【0033】
本発明において酸価は、JIS試験方法K 0070−1992に準拠した測定方法により得られるものである。
(その他の樹脂)
本発明の紙用オーバーコーティング組成物は、スチレンアクリル共重合体(A)やアクリル共重合体(B)以外の樹脂を含有してもよい。
【0034】
例えば、本発明の紙用オーバーコーティング組成物は、スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度の樹脂(以下ガラス転移温度の高い樹脂(C)と称する場合がある)を更に含有することが好ましい。このようなガラス転移温度の高い樹脂(C)を含有することにより、耐ブロッキング性の向上と、本発明のコーティング組成物を塗布した塗工紙を積層した際の、滑り性を良くすることができる。樹脂(C)のガラス転移温度は、スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂のガラス転移温度よりも20℃以上高いことが好ましく、30℃以上高いことがより好ましい。また、樹脂(C)のガラス転移温度は、本発明のコーティング組成物の効果を損なわないために、0℃〜85℃の範囲であることが好ましい。具体的には、スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂のガラス転移温度が−40℃〜0℃の範囲に対して、樹脂(C)が0℃〜40℃の範囲であることが好ましい。
【0035】
ガラス転移温度の高い樹脂(C)の材料は特に限定されるものではないが、本発明のコーティング組成物の耐油性、耐熱性等の特性を損なわないために、スチレンアクリル共重合体であることが好ましく、前記スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂と同様の材料であることがより好ましい。また、樹脂(C)の含有量は、所望する耐ブロッキング性、スタッキング性に応じて適宜調節できるが、スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂と樹脂(C)との重量比(スチレンアクリル共重合体(A)/樹脂(C))が90/10〜20/80であることが好ましく、80/20〜30/70であることが好ましい。
【0036】
ガラス転移温度の高い樹脂(C)を含有する本発明で使用するエマルジョンは、例えば、前記スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂を含有するエマルジョンと、乳化重合や転送乳化等の公知の水性媒体を使用する重合法で重合した樹脂(C)のエマルジョンとを適宜混合して得られる。
(その他の添加剤)
本発明の紙用オーバーコーティング組成物は、その他シリカ、アルミナ、ポリエチレンワックス、消泡剤、レベリング剤、粘着性付与剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤等も配合することができる。
【0037】
本発明で使用するエマルジョンは、ワックスを含有することにより、本発明のコーティング組成物を塗布した塗工紙を積層した際の、滑り性を良くすることができるので、作業性を向上できる。ワックスとしては、脂肪酸アミドワックス、カルナバワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、みつろう、マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレン−ワックス、アマイドワックスなどのワックスを挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし併用してもよい。
【0038】
中でも脂肪酸アミドワックス、カルナバワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスを使用することが好ましく、特にカルナバワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスを使用することが好ましい。
【0039】
脂肪酸アミドワックスの具体例としては、例えば、ペラルゴン酸アミド、カプリン酸アミド、ウンデシル酸アミド、ラウリン酸アミド、トリデシル酸アミド、ミリスチン酸アミド、ペンタデシル酸アミド、パルミチン酸アミド、ヘプタデシル酸アミド、ステアリン酸アミド、ノナデカン酸アミド、アラキン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド、オレイン酸アミド、セトレイン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、これらの混合物及び動植物油脂脂肪酸アミド等が挙げられる。
前記カルナバワックスの具体例としてはMICROKLEAR 418(Micro Powders,Inc.社製)、精製カルナバワックス1号粉末(日本ワックス株式会社)等が挙げられる。
【0040】
前記オレフィンワックスの具体例としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスが挙げられ、例えばMPP−635VF(Micro Powders,Inc.)、MP−620VF XF(Micro Powders,Inc)等が挙げられる。
【0041】
前記パラフィンワックスの具体例としては、例えばMP−28C、MP−22XF、MP−28C(Micro Powders,Inc.)等が挙げられる。
【0042】
前記ワックスの配合量は、ワックス総量が本発明の組成物中の固形分100質量%全量に対し1.5〜20質量%であることが好ましい。ワックス総量が本発明の組成物中の固形分100%全量に対し3質量%以上であれば耐ブロッキング性を保持できる傾向にあり、ワックス総量が水性ヒートシール剤固形分100%全量に対し15質量%以下であればヒートシール性が保持できる傾向にある。
【0043】
また、ワックスの融点は、耐油性、耐熱性の観点から、80℃〜130℃の範囲であることが好ましい
前記ワックスは、スチレンアクリル共重合体(A)を含む樹脂のエマルジョンに直接添加し混合分散させてもよいし、ワックスの分散体を作製した後、エマルジョンと混合させてもよい。分散方法としては、公知の方法、例えばメディアを用いた分散装置として、ペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミル等を使用することができ、メディアを用いないものとして超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機等で分散することができる。
【0044】
粉体のワックスを使用する場合は、ワックスを均一分散させるために、メディアを用いて練肉を行ったり、ワックスの分散体を作製した後配合を行ったりすることが好ましい。練肉方法は公知の方法で行うことができる。
【0045】
また複数種のワックスを併用する際には、複数種のワックスを同時に添加してもよいし、複数の工程に分けて添加してもよい。
【0046】
また、本発明の紙用オーバーコーティング用及び接着剤用組成物は、各種コーターを使用してコーティングする際に組成物が泡立つことを防止するため、ポリマー系消泡剤、シリコン系消泡剤、フッ素系消泡剤が好ましく使用される。これら消泡剤としては乳化分散型及び可溶化型などいずれも使用できる。中でもポリマー系消泡剤が好ましい。
前記消泡剤の添加量としては、紙用オーバーコーティング組成物全量の0.005重量%〜0.1重量%が好ましい。
【0047】
本発明の紙用オーバーコーティング用及び接着剤用組成物の具体的な例としては、コーティング方法として、たとえばロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファロールコーター、キスコーター、カーテンコーター、キャストコーター、スプレイコーター、ダイコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等を適宜採用することができ、得られた印刷物は、様々な用途に応じて後加工され、食品など商品の包装に使用される。
(紙基材上に紙用オーバーコーティング組成物を塗布する塗布工程)
本発明で用いる紙基材としては、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造されるが、その抄紙条件は特に規定されるものではない。製紙用天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、およびそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等が挙げられる。パルプの種類としては、硫酸塩蒸解法、酸性・中性・アルカリ性亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用することができる。
また、市販の各種上質紙やコート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙や板紙などを用いることもできる。
本発明の分散液を紙基材上に塗布する場合の方法としては、コンマコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、リバースグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、ロールキスコーター、リバースキスコーター、キスグラビアコーター、リバースキスグラビアコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、リップコーター、ディップコーター、ブレードコーター、ブラシコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター等のいずれかもしくは二つ以上の塗工方法を組み合わせて用いることができる。
【0048】
また、紙基材を本発明の紙用オーバーコーティング用及び接着剤用組成物に含浸させることにより、紙基材上に樹脂層を設けてもよい。
【0049】
塗工する際の本発明の紙用オーバーコーティング用及び接着剤用組成物の膜厚は、用途によるが、食品用紙容器に使用する場合は、例えば2〜10g/m
2の範囲であれば、本発明の効果を十分に得ることができる。中でも6〜10g/m
2の範囲であることがより好ましい。
【0050】
紙基材に本発明の紙用オーバーコーティング用及び接着剤用組成物を塗工した塗工物は、耐水性、耐油性、撥油性を有しているため、紙用オーバーコーティング剤として使用した場合、耐水及び/又は耐油紙として使用できる。本発明の塗工物は、紙コップ、カップ麺、各種飲料、アイスクリーム、プリン、ゼリー等のデザート、米菓、ポテトチップス、チョコレート菓子、ビスケット等のスナック菓子、ハンバーガーやホットドックのラップ紙、ピザ等の持ち帰り用容器、から揚げやポテト等のホットスナック用容器、納豆等の総菜を対象とするカップ類を始めとする食品用紙容器、紙ストロー等に広く使用される。
(紙容器の製造方法)
本発明の紙用オーバーコーティング用及び接着剤用組成物を用いて紙容器を製造する具体的態様として、少なくとも紙基材と紙基材あるいはプラスチックフィルムとが接着した積層体であって、紙基材の少なくとも一面に、本発明の紙用オーバーコーティング用及び接着剤用組成物の樹脂層を有する積層体を用いた紙コップ様の紙容器の製造方法について、具体的に述べる。なお、本明細書において「積層体」とは、紙と紙又は紙とプラスチックフィルムが一部分でも互いに重なり合う部分を有するものを意味する。なお本発明においては本具体的態様に限定されることなく、コーティング可能な紙容器に全て適用可能である。
【0051】
本発明の積層体を用いた紙コップは、紙基材の丸めて重ね合わせた両端部の貼り合わせ面を積層させて接着した胴部材(1)と、前記胴部材(1)の下端に接着された板状の底部材(2)とを有する。該紙コップは、容器内面及び容器を組み立てる際の貼り合わせ面に樹脂層が設けられており、この樹脂層に本発明の紙用オーバーコーティング用及び接着剤用組成物を用いる。
【0052】
前記筒状の胴部材(1)、前記板状の底部材(2)共に、樹脂層が設けられた紙基材を所望の形状に切り抜いたものである。
まず、紙基材において、紙容器の内面(コッブの内側面)となる部分及び/又は貼り合わせ面となる面の少なくとも一部に、本発明の本発明の紙用オーバーコーティング用及び接着剤用組成物を塗工する。塗工方法としては前述の塗工方法を適宜用いることができる。塗工後、塗工面の水性溶剤を乾燥機等で除去した後、必要に応じて印刷を施す。印刷面は、塗工面とは反対側の面に施されることが多い。
次に、塗工により樹脂層を設けた紙基材において、前記筒状の胴部材(1)は扇状に、前記板状の底部材(2)は円形に切り抜く。なお、紙基材に樹脂層を設ける工程及び紙基材を切り抜く工程の順番は特に限定はなく、紙基材を扇形や円形状に切り抜いた後に樹脂層を設けてもよい。
【0053】
紙基材上に本発明の組成物をコーティングした後、組成物が接着性、粘着性を有する程度の乾燥状態で、扇状に切り抜かれた筒状の胴部材(1)の両端の貼り合わせ面を重ね合わせて、圧着又は熱圧着する。熱圧着の方法は特に限定は無いが、バーナーや熱風等の熱源を用いることができる。加熱、重ね合わせ、圧着の順に特に限定はないが、貼り合わせ面同士を重ね合わせた後圧着しながら熱源で加熱することが、加熱によりコーティングをした組成物の乾燥が進行しないので、接着性が損なわれない状態でより強固に接着できることから好ましい。この時の加熱温度は200〜450℃、加熱圧着時間は0.5〜3秒が好ましい。
【0054】
一方、前記円形に切り抜かれた底部材(2)は、前記筒状となった胴部材の内側に、本発明の組成物をコーティングした面がカップ内側となるように設置後、底部材と胴部材との接触部を、底部材側と胴部材側の樹脂層を前述と同様に圧着又は熱圧着して接着させる。この時、樹脂層が底部材と胴部材の隙間と埋めるため、水漏れ等が生じることはない。
【0055】
その後、紙容器の内面の樹脂層の水性溶剤を乾燥機等で除去を行ってもよい。
紙カップの製造においては、この後公知の工程、例えば胴部材の底側の下端を内側に折り込み、回転する円形の型で圧着させ、紙カップ底部を仕上げる方法で紙カップを得ることができる。最後に、胴部材の上端の飲み口に相当する部分は、必要に応じツールを回転させながら紙カップの外側に巻き込むカーリングと呼ばれる成型処理を行う。
前記具体的態様の紙容器は、主に底部材が円板状であるカップ形状の容器であるもののであるが、形状はこれに限定されず、例えば底部材が矩形板状の直方体、多角形あるいは立方体形状の容器であってもよい。また、必要に応じて、別途製造された蓋材等によって容器を密封し、例えば、電子レンジ等で加熱する際には蓋材を外したり、あるいは一部を開封して使用するものであってもよい。
【0056】
以上により、紙基材と紙基材とが、本発明の組成物の樹脂層により接着している積層体(紙容器)が得られ、また、紙基材と紙基材とが積層していない部分に、オーバーコーティング用の樹脂層を有する積層体(紙容器)が得られる。
【0057】
上記方法では、紙容器の内面(コッブの内側面)となる部分及び/又は貼り合わせ面となる面の両方に、本発明の組成物の樹脂層を設けた構成について説明したが、例えば、紙容器の内面にオーバーコーティング用の樹脂層のみを設けて、張り合わせ面にはヒートシール剤等の他の接着可能な材料を設けて張り合わせを行う構成としてもよいし、張り合わせ面のみに本発明の樹脂層を接着剤として用いる構成としてもよい。
(紙ストローの製造方法)
次に、本発明の積層体を用いた紙ストローの製造方法について、具体的に述べる。本発明の紙ストローは、1又は複数枚の紙の少なくとも一端部が張り合わされて積層された筒状の構造を有する。該紙ストローは、ストローの表面(内面及び外面)、積層した張り合わせ面に樹脂層が設けられており、この樹脂層に本発明の紙用オーバーコーティング用及び接着剤用組成物を用いる。
【0058】
前記紙ストローは、1枚の紙を筒状に丸めて端部を貼り合わせたものであってもよいし、テープ状の複数枚の紙を螺旋状に巻き付けて紙同士を貼り合わせて筒状にするものであってもよい。以下、螺旋状のストローの製造方法について述べる。
【0059】
まず、テープ状の紙基材を用意し、紙基材の両面に本発明の組成物の樹脂層を設ける。樹脂層の形成方法としては、前述の塗工方法や、含浸による方法を適宜用いることができる。なお、シート状の紙基材を準備して本発明の組成物の樹脂層を設けた後、裁断によりテープ状の紙基材としてもよい。紙基材は、紙ストローの耐水性及び強度の観点から、2枚又は3枚のテープ状紙基材を用いることが好ましく、複数のテープ状の紙を螺旋状に巻いたときに、ストローの内側に位置する紙材と、外側に位置する紙材とで紙基材の種類を変えることができる。例えば、内側の紙材は強度付与のために厚さが比較的厚いものとし、一番表側の紙材は表面を滑らかにするために厚さが比較的薄めのものとして必要に応じて印刷を施してもよい。テープ幅はストローの所望の直径(幅)等に合わせて適宜調節可能であるが、例えば0.5cm〜2.0cmくらいが好ましい。
【0060】
紙基材上に本発明の組成物をコーティングした後、組成物が接着性、粘着性を有する程度の乾燥状態で、テープ状の紙を芯材に螺旋状に巻き付ける。このとき、前に巻いた紙の端部を重なり合わせながら、例えばストローの最内側に位置するテープ紙、真ん中に位置するテープ紙及び表面に位置するテープ紙の3枚を順次巻きしめて、テープ状の紙の貼り合わせ面を圧着又は熱圧着する。熱圧着の際の熱源や加熱温度は前述の紙容器の方法を適宜用いることができる。
【0061】
その後、紙ストローの内面及び表面の樹脂層の水性溶剤を乾燥機等で除去を行い、芯材を抜き取ることにより、空洞が形成された筒上のストローを形成する。
以上により、紙基材と紙基材とが、本発明の組成物の樹脂層により接着している積層体(紙ストロー)が得られ、また、紙基材と紙基材とが積層していない部分に、オーバーコーティング用の樹脂層を有する積層体(紙ストロー)が得られる。
【0062】
上記方法では、紙基材と紙基材を積層した例について説明したが、紙基材とプラスチックフィルムとを、本発明の組成物を用いて接着したり、表面をコーティングしてもよい。例えば、紙ストローにおいて、テープ状の紙とテープ状のフィルムとを積層した積層体をストローとしてもよい。
【0063】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0064】
尚、最低造膜温度の測定は、温度勾配板法による造膜温度試験機(株式会社井本製作所)を使用した。
【0065】
ガラス転移温度(Tg)の測定は、示差走査熱量計(株式会社TAインスツルメント製「DSC Q100」)を用い、窒素雰囲気下、冷却装置を用い温度範囲−80〜450℃、昇温温度10℃/分の条件で走査を行う事で行った。
【0066】
また、酸価は、JIS試験方法K 0070−1992に準拠して測定した。テトラヒドロフラン(THF)溶媒にポリマー0.5gを溶解させ、フェノールフタレインを指示薬として、0.1M水酸化カリウムアルコール溶液で滴定することにより求めた。
【実施例】
【0067】
(製造例1)
<アクリルエマルジョンの合成>
先ず、実施例1に使用するコア/シェル型のアクリルエマルジョンを合成した。合成例中の「部」は「重量部」を表し、「%」は「重量%」を表す。
(合成例1)
窒素ガス置換した四つ口フラスコに、イソプロピルアルコールを100部仕込み、温度を80〜82℃に上げた後、滴下ロートに仕込んだミリスチルアクリレート1部、スチレン30部、アクリル酸10部、メチルメタクリレート5部、過酸化ベンゾイル1部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、過酸化ベンゾイル0.5部を追加し、更に2時間反応させた。温度を40℃に下げ、ジメチルエタノールアミン、イオン交換水を添加した。その後、反応フラスコの温度を80〜82℃に上げ、ストリッピングを行ない、最終的に固形分30%の水溶性樹脂を得た。
上記で得た水溶性樹脂に、イオン交換水10部を反応フラスコに仕込み、温度を80℃〜82℃に上げた後、過硫酸カリウムを2部添加し、スチレン15部、αメチルスチレン5部、2−エチルヘキシルアクリレート24部、ブチルアクリレート10部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、過硫酸カリウム0.2部を添加し、2時間反応させた。このようにして得られたアクリルエマルジョン(樹脂1)の固形分は40%であり、最低造膜温度は1℃、ガラス転移点は−27℃、固形分の酸価は64mgKOH/gであった。
(実施例1)
前記アクリルエマルジョン(樹脂1)を85部、ポリマー系消泡剤0.03部、及びイオン交換水14.97部の合計100部を25℃にて15分間、ディスパーにて十分攪拌し紙用オーバーコーティング組成物を作製した。
【0068】
(実施例2)
実施例1のアクリルエマルジョン(樹脂1)の代わりに、「スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体(スチレンアクリル共重合体(A))」を有する市販品のアクリルエマルジョンAを85部使用した他は、実施例1と同様の手順にて紙用オーバーコーティング組成物を作製した。
【0069】
市販品のアクリルエマルジョンAの最低造膜温度は18℃、ガラス転移点は21℃、固形分の酸価は55mgKOH/gであった。
(実施例3)
実施例1のアクリルエマルジョン(樹脂1)の代わりに、「スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体(スチレンアクリル共重合体(A))」を有する市販品のアクリルエマルジョンBを85部使用した他は、実施例1と同様の手順にて紙用オーバーコーティング組成物を作製した。
【0070】
市販品のアクリルエマルジョンBの最低造膜温度は1℃、ガラス転移点は−9℃、固形分の酸価は61mgKOH/gであった。
【0071】
(実施例4)
実施例1のアクリルエマルジョン(樹脂1)の代わりに、「スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体(スチレンアクリル共重合体(A))」を有する市販品のアクリルエマルジョンDを85部使用した他は、実施例1と同様の手順にて紙用オーバーコーティング組成物を作製した。
【0072】
市販品のアクリルエマルジョンDの最低造膜温度は6℃、ガラス転移点は8℃、固形分の酸価は55mgKOH/gであった。
【0073】
(実施例5)
実施例1のアクリルエマルジョン(樹脂1)64部と、実施例2のアクリルエマルジョンA22部を混合したアクリルエマルジョン(合計86部)を使用し、また、イオン交換水を13.97部とした他は、実施例1と同様の手順にて紙用オーバーコーティング組成物を作製した。
【0074】
(実施例6)
実施例1のアクリルエマルジョン(樹脂1)43部と、実施例2のアクリルエマルジョンA43部を混合したアクリルエマルジョン(合計86部)を使用した他は、実施例5と同様の手順にて紙用オーバーコーティング組成物を作製した。
【0075】
(実施例7)
実施例1のアクリルエマルジョン(樹脂1)21部と、実施例2のアクリルエマルジョンA65部を混合したアクリルエマルジョン(合計86部)を使用した他は、実施例5と同様の手順にて紙用オーバーコーティング組成物を作製した。
【0076】
(実施例8)
実施例7のアクリルエマルジョンにおいて、カルナバワックス(MICROKLEAR 418:Micro Powders,Inc.)を1.2部加え、イオン交換水を12.77部とした紙用オーバーコーティング組成物を均一に分散して実施例8の紙用オーバーコーティング組成物を作製した。
【0077】
(実施例9)
実施例8のカルナバワックスの代わりに、ポリエチレンワックス(MPP−635VF:Micro Powders,Inc.)を1.2部加えた他は、実施例8と同様の手順にて、均一分散した実施例9の紙用オーバーコーティング組成物を作製した。
【0078】
(実施例10)
実施例8のカルナバワックスの代わりに、パラフィンワックス(MP−28C:Micro Powders,Inc.)を1.2部加えた他は、実施例8と同様の手順にて均一分散した実施例10の紙用オーバーコーティング組成物を作製した。
【0079】
(比較例1)
実施例1のアクリルエマルジョン(樹脂1)の代わりに、市販品のアクリルエマルジョンCを85部使用した他は、実施例1と同様の手順にて紙用オーバーコーティング組成物を作製した。
【0080】
市販品のアクリルエマルジョンCの最低造膜温度は101℃、ガラス転移点は99℃、固形分の酸価は49mgKOH/gであった。
実施例1〜10、比較例1で作製したそれぞれ紙用オーバーコーティング組成物を坪量40g/m
2の純白用紙(日本製紙(株)社製)にワイヤーバーを用いて、膜厚の厚みが10g/m
2になるように塗布し、乾燥機を用いて150℃にて20秒乾燥させ 、評価用の塗工紙をそれぞれ作製した。
【0081】
(耐油性評価)
サラダ油をスポイトに採取し、0.1mlを評価用の塗工紙試験片に滴下する。
サラダ油を滴下後、60℃にて2時間、及び120℃にて2時間経過後、サラダ油を拭き
取り、表面及び裏面を下記評価基準に従って目視で評価する。
【0082】
○:表面に滴下の跡がなく、裏面への浸透がない。
△:表面に滴下の跡はあるが、裏面への浸透がない。
×:表面に滴下の跡があり、裏面への浸透がある。
【0083】
(耐水性評価)
水道水をスポイトに採取し、0.1mlを評価用の塗工紙試験片に滴下する。
水道水を滴下後、25℃にて30分経過後、水道水を拭き取り、表面及び裏面を下記評価
基準に従って目視で評価する。
○:表面に滴下の跡や、水による膨れがなく、裏面への浸透もない。
△:表面に滴下の跡はあるが、裏面への浸透はない。
×:表面に滴下の跡や、水による膨れがあり、裏面への浸透がある。
【0084】
(撥油性評価)
作製した塗工紙を用いJAPAN TAPPI 紙パルプ試験法No.41 キット法を用いて、撥油性の評価を行った。 尚、評価の際、撥油度が5以上である場合を合格、4未満の場合を不合格とした。撥油度12が最大で最も好ましい。
(耐ブロッキング性)
作製した塗工紙の塗工面と塗工面が接触するように重ね合わせ、10kgf/cm
2の加重をかけ、40℃の環境下に48時間経時させ、取り出し後、塗工面と非塗工面の接着具合を、次の4段階で目視評価した。
(評価基準)
◎:全くブロッキングが見られない。
〇:部分的に僅かにブロッキングが見られる。
△:部分的にブロッキングが見られる。
×:全面に渡ってブロッキングが見られる。
【0085】
(滑り角)
作製した塗工紙の塗工面と塗工面が接触するように重ね合わせて、傾斜法により、塗工紙が滑り始める傾斜角を滑り角として測定した。滑り角の測定は滑り角傾斜測定装置(HEIDON社製)を用いて行った。
【0086】
同様にして、作成した塗工紙の塗工面と非塗工面(面裏)が接触するように重ね合わせて滑り角を測定した。
【0087】
滑り角の値が小さいほど滑り性が向上するので、積層した状態の塗工紙から1枚ずつ塗工紙を取り出す等の扱いが容易となり、作業性が向上する。
【0088】
実施例1〜10、及び比較例1の各紙用オーバーコーティング組成物の組成、並びに該コーティング組成物を用いた塗工紙の評価結果を表1及び表2に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
本発明の紙用オーバーコーティング組成物を用いた塗工紙は、耐水性、耐油性及び撥油性に優れる結果となった。
【0092】
また、ガラス転移点が異なる樹脂を混合して用いた実施例5〜8は、ブロッキング性の向上と滑り角の低下がみられ、更にワックスを添加した実施例8〜10は滑り角がより低下する結果となった。
【0093】
〔紙積層体[I]の作製〕
(実施例11)
実施例1で作製した紙用オーバーコーティング組成物を接着剤Sとして使用し、ペーパーストロー原紙((株)ペーパーテック社製 坪量90g/m)にバーコーターで塗布量3.0g/m
2で塗布し、80℃−1分間で乾燥させた後、ストロー原紙2枚を貼り合わせた後、貼り合わせたその片面に再びバーコーターで塗布量3.0g/m
2で塗布し、80℃−1分間で乾燥させ、ストロー原紙を3枚貼り合わせた紙積層体とし、更に40℃−24時間の養生(エージング)を行った。
(実施例12、13、及び比較例2)
実施例2、3及び比較例1で作製した紙用オーバーコーティング組成物をそれぞれ接着剤T、U、及びVとして実施例11と同様の手順にてストロー原紙3枚を貼り合わせ紙積層体を作製し、同様に40℃−24時間の養生(エージング)を行った。
【0094】
〔紙/フィルム積層体[II]の作製〕
(実施例14)
実施例1で作製した紙用オーバーコーティング組成物を接着剤SとしてPETフィルム(膜厚:12μm)のコロナ処理面にバーコーターで塗布量3.0g/m
2で塗布し、80℃−1分間で乾燥させた後、カップ原紙(日本製紙(株)社製)と貼り合わせた後、40℃3日間の養生(エージング)を行った。
(実施例15、16、及び比較例3)
調整例2、3及び比較例1で作製した紙用オーバーコーティング組成物をそれぞれ接着剤T、U、及びVとして実施例14と同様の手順にてPETフィルム(膜厚:12μm)とカップ原紙を貼り合わせた後、同様に40℃3日間の養生(エージング)を行った。
【0095】
〔評価〕
以下のようにして実施例11−16、比較例2−3の積層体を評価し、結果を表3、4にまとめた。
(耐水性1:紙積層体[I]、及び紙/フィルム積層体[II])
作製した紙積層体[I]、及び紙/フィルム積層体[II]を各々幅15mmの短冊状に断裁したものを、25℃の水道水に6時間浸漬した後の、積層体の状態を次の3段階にて目視で評価した。
○:外観に変化が見られない。
△:用紙間、又は用紙/フィルム間に軽度の剥離が見られる。
×:用紙間、又は用紙/フィルム間の剥離が見られる。
(耐水性2:紙積層体[I])
作製した紙積層体[I]について、紙基材の湿潤引張強さをJIS P8135に準じ
て測定し、耐水性を評価した。
○:2.0kN/m以上である。
△:1.5以上 2.0kN/m未満である。
×:1.5kN/m未満である。
(密着性:紙/フィルム積層体[II])
作製した紙/フィルム積層体[II]のフィルム表面にセロハンテープ(ニチバン社製TF−12)を圧着し、テープを一気に剥がした時のフィルムの剥がれの程度を次の3段階にて目視で評価した。
○:外見に変化が見られない。
△:フィルム一部に浮きが見られた。
×:フィルムが紙から剥がれた。
【0096】
実施例11〜16、及び比較例2、3の各積層体の評価結果を表3、4に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【0099】
本発明の紙積層体は、耐水性に優れ、且つ密着性に優れる結果となった。
本発明は、スチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレートとのスチレンアクリル共重合体を含む樹脂を含有し、最低造膜温度が−30℃〜30℃の範囲であるエマルジョンと、水性媒体とを含有することを特徴とする紙用オーバーコーティング用及び接着剤用組成物、並びに該組成物の樹脂層を有するコート紙、耐水耐油紙、及び紙コップ、紙ストロー等の積層体に関する。本発明は、紙基材と紙基材あるいはプラスチックフィルムとを接着する接着剤としての機能と、紙基材表面のオーバーコート剤に所望される耐水性、耐油性の機能とを合わせ持つことができ、且つ、紙リサイクル時に分別せずにリサイクル可能である。従って、本発明のオーバーコーティング用及び接着剤用組成物は、紙容器等におけるポリエチレンの代替として有用である。