特許第6794090号(P6794090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6794090
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 1/30 20060101AFI20201119BHJP
   B41M 1/06 20060101ALI20201119BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20201119BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20201119BHJP
   C09D 11/103 20140101ALI20201119BHJP
   C09D 11/106 20140101ALI20201119BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20201119BHJP
   C09D 11/03 20140101ALI20201119BHJP
【FI】
   B41M1/30 D
   B41M1/06
   C09D11/101
   C09D11/102
   C09D11/103
   C09D11/106
   C09D11/037
   C09D11/03
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-551606(P2020-551606)
(86)(22)【出願日】2020年4月7日
(86)【国際出願番号】JP2020015725
【審査請求日】2020年9月24日
(31)【優先権主張番号】特願2019-88283(P2019-88283)
(32)【優先日】2019年5月8日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】山田 智和
(72)【発明者】
【氏名】山本 博之
(72)【発明者】
【氏名】三品 彰義
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−057455(JP,A)
【文献】 特開2019−001090(JP,A)
【文献】 特表2011−521029(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/085369(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/30
B41M 1/06
C09D 11/03
C09D 11/037
C09D 11/101
C09D 11/102
C09D 11/103
C09D 11/106
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に紫外線硬化性オフセットインキ層を設ける工程1と、前記紫外線硬化性オフセットインキ層を酸素濃度5%以下の雰囲気で紫外線により硬化する工程2をこの順に有する印刷物の製造方法であって、
前記紫外線硬化性オフセットインキが、ガラス転移温度が30℃〜140℃のアルデヒド樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、フェノール樹脂、オルガノポリシロキサン樹脂、エステル系樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の非反応性樹脂と、(メタ)アクリルモノマー及び/又は(メタ)アクリルオリゴマーと、光重合開始剤と、顔料とを含む紫外線硬化性オフセットインキであることを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項2】
前記非反応性樹脂を、インキ全量に対して5〜50質量%の範囲で含有する請求項1に記載の印刷物の製造方法。
【請求項3】
前記非反応性樹脂がアルデヒド樹脂及び/又はケトン樹脂である請求項1又は2に記載の印刷物の製造方法。
【請求項4】
前記紫外線硬化性オフセットインキが無溶剤である請求項1〜3のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項5】
前記光重合開始剤が、数平均分子量250以上2000以下のα−アミノアルキルフェノン及び数平均分子量300以上1500以下のアシルフォスフィンオキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種の光重合開始剤を、インキ全量に対し5.0質量%以下含有する請求項1〜4のいずれか記載の印刷物の製造方法。
【請求項6】
増感剤を含有する請求項1〜のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項7】
前記紫外線がLED−UVランプであり、そのピーク波長が350〜400nmである請求項1〜のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙またはプラスチック基材に、紫外線硬化性オフセットインキを設けた印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線照射条件下や電子線照射条件下で硬化する印刷インキは、その瞬間乾燥の特性の利便性から、紙器等の食品包装向けパッケージ印刷を中心に広く使用されている。
近年、食品包装において、インキ中の化学物質が内容食品へ移行(マイグレーション)する問題が懸念されており、例えば電子線(以下EBと称する場合がある)硬化型インキの場合はインキ成分中の未反応モノマーが、紫外線(以下UVと称する場合がある)硬化型インキの場合はインキ成分中の未反応光重合開始剤が、印刷面から裏移りし内容食品へ溶出することによるマイグレーションが問題となっている。また光重合開始剤は、光重合開始剤の開裂反応後の残渣が臭気を発生する場合もあり、該臭気が食品に移行する懸念も指摘されている。
【0003】
牛乳パック等の飲料紙器の分野での例を挙げれば、低マイグレーションを実現すべく、分子量の比較的大きな光重合開始剤や官能基度の高いモノマーを使用した特殊な配合の紫外線硬化性オフセットインキの使用が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかしながら食品安全性への要求が強まるに従い、そもそもの光重合開始剤の使用量低減を望む声が高まっている。
【0004】
一方で、紫外線硬化性オフセットインキの特徴である瞬間乾燥は、光重合開始剤の使用量に大きく依存する。一般に光重合開始剤の使用量が多くなるほどインキの瞬間乾燥性は増し使用量が減るほど乾燥性が劣る傾向にある。インキは通常その目的から着色剤である顔料を含有するが、可視光を吸収して特定の色を発色する顔料は即ち紫外領域にも吸収があるために紫外線硬化を阻害することが知られている(例えば非特許文献1参照)。特に墨インキに使用されるカーボンブラックは、全紫外波長領域に渡り紫外線を吸収するため、印刷物表面の硬化不良を引き起こしたり、塗膜内部まで紫外線が到達せず、塗膜内部の硬化性が不十分となることがあった。また塗膜表面と内部とで硬化性が異なる結果、インキキの硬化皮膜に体積収縮が発生したり、皮膜の柔軟性が損なわれるために基材との密着性が著しく低下してしまうこともあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−155499号公報
【特許文献2】特開2015−172171号公報
【非特許文献1】ネットワークポリマー Vol.34 No.5 (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来の紫外線硬化性オフセットインキと同様の印刷適性を有し、硬化速度を維持し且つ光重合開始剤の使用量を低減することの可能な、印刷物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の紫外線硬化性オフセットインキを使用し、基材上に紫外線硬化性オフセットインキ層を設けた後、前記紫外線硬化性オフセットインキ層を酸素濃度5%以下の雰囲気で紫外線ランプを使って硬化することで、前記課題を解決した。
【0008】
すなわち本発明は、基材上に紫外線硬化性オフセットインキ層を設ける工程1と、前記紫外線硬化性オフセットインキ層を酸素濃度5%以下の雰囲気で紫外線により硬化する工程2をこの順に有する印刷物の製造方法であって、
前記紫外線硬化性オフセットインキが、ガラス転移温度が30℃〜140℃の非反応性樹脂と、(メタ)アクリルモノマー及び/又は(メタ)アクリルオリゴマーと、光重合開始剤と、顔料とを含む紫外線硬化性オフセットインキである印刷物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法により、従来の紫外線硬化性オフセットインキと同様の印刷適性を有し、硬化速度を維持し且つ光重合開始剤の使用量を低減することの可能な、印刷物の製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の印刷物の製造方法は、少なくとも、基材上に、ガラス転移温度が30℃〜140℃の非反応性樹脂と、(メタ)アクリルモノマー及び/又は(メタ)アクリルオリゴマーと、光重合開始剤と、顔料とを含む紫外線硬化性オフセットインキ層を設けた印刷物の製造方法である。
【0011】
(紫外線硬化性オフセットインキ)
本発明で使用する紫外線硬化性オフセットインキは、ガラス転移温度が30℃〜140℃の非反応性樹脂を含有することが特徴である。以後「ガラス転移温度が30℃〜140℃の非反応性樹脂」を、非反応性樹脂(a)と称する場合があり、ガラス転移温度を「Tg」と称する場合がある。
【0012】
(非反応性樹脂(a))
本発明で使用する非反応性樹脂(a)とは、本技術分野において所謂紫外線硬化性オフセットインキのバインダー樹脂として知られているものであって、ガラス転移温度が30℃〜140℃の範囲内であればいずれも利用することができる。本発明において「非反応性樹脂」とは、紫外線を照射しても反応しない樹脂を指しており、具体的には、光重合開始剤の存在下で紫外線によりラジカル重合可能な(メタ)アクリロイル基等の反応性基を有さない樹脂を指す。
【0013】
更に本発明においては、非反応性樹脂のガラス転移温度は30℃〜140℃であることが特徴である。本発明においてガラス転移温度は、重合に用いるモノマーの種類と、その添加量により調整することができる。なお、重合して得られた平版印刷インキ用樹脂のガラス転移温度が上述した範囲内であればよく、重合に用いる個々のモノマーのガラス転移温度が上述した範囲内である必要はない。ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)または動的粘弾性のtanδピークにより測定することができる。
【0014】
紫外線硬化性オフセットインキのバインダー樹脂として知られているものとして、特に好ましいものを挙げれば、例えば、アルデヒド樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、フェノール樹脂、オルガノポリシロキサン樹脂、エステル系樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらバインダー樹脂は、単独で使用しても、いずれか2種以上を組合せて使用してもよい。
【0015】
(アルデヒド樹脂及び/又はケトン樹脂)
アルデヒド樹脂及び/又はケトン樹脂とは、アルデヒド(好ましくは脂肪族アルデヒド)又はケトン(好ましくはシクロヘキサノン又はメチルシクロヘキサノン)の縮合生成物であり、例えば、尿素又はホルムアルデヒドの縮合生成物であってもよい。 尿素−アルデヒド樹脂及び尿素−ケトン樹脂は、アミノプラスト樹脂の分類に属しており、そして尿素とアルデヒド(アセトアルデヒド、グリオキサール及びホルムアルデヒドなど、特にホルムアルデヒド)又はケトンとの硬化性縮合物である。例えば、ラロパル(登録商標)A81(BASF AG、軟化点:80〜95℃、Tg 57℃)や、A101(BASF AG、軟化点:95〜110℃、Tg 73℃)、TEGO(登録商標) VariPlus SK (Evonik Resource Efficiency、融点115℃、Tg 90℃)や、VariPlus AP (Evonik Resource Efficiency、融点75℃、Tg 50℃、)、ケトンレジン K−90(荒川化学社製)などが挙げられる。
中でも、尿素−アルデヒド樹脂、特に尿素−ホルムアルデヒド樹脂が好ましい。尿素−ホルムアルデヒド樹脂を製造するのに使用される原料に関する関連情報は、B. Meyer:「尿素−ホルムアルデヒド樹脂(Urea−Formaldehyde Resins)」, Addison−Wesley, London 1979に見い出すことができる。最も好ましいのは、ラロパル(登録商標)A81(BASF AG、軟化点:80〜95℃)及びA101(BASF AG、軟化点:95〜110℃)
【0016】
(石油樹脂)
石油樹脂とは、ナフサを分解した際の炭素数の多い不飽和化合物を重合したものであり、C5留分を原料とする脂肪族系、C9留分を原料とする芳香族系、シクロペンタジエン(ジシクロペンタジエン)を原料とする脂環族系、さらにC5留分とC9留分を原料とした共重合系がある。C5留分としては、イソプレン、ピペリレン、シクロペンタジエン、ペンテン類、ペンタン類等、C9留分としては、ビニルトルエン、インデン、ジシクロペンタジエン等が挙げられ、それぞれ触媒の存在下あるいは無触媒で熱重合して得られるものである。触媒としてはフリーデルクラフト型のルイス酸触媒、例えば三フッ化ホウ素およびそのフェノール、エーテル、酢酸等との錯体が通常使用される。アリルアルコール、酢酸ビニルエステル等を共重合して得ることも可能であるし、得られた石油樹脂に無水マレイン酸、アクリル酸等を付加することも可能である。
【0017】
上記石油樹脂は市販のものを適宜使用することが可能であり、脂肪族系石油樹脂としては、日本ゼオン社製クイントンA100、クイントンB170、クイントンK100、クイントンM100、クイントンR100、クイントンC200S、丸善石油化学社製マルカレッツT−100AS、マルカレッツR−100AS、芳香族系石油樹脂としては、JXTGエネルギー株式会社製ネオポリマーL−90、ネオポリマー120、ネオポリマー130、ネオポリマーE−100、ネオポリマーE−130、ネオポリマー130S、ネオポリマーS、東ソー社製ペトコールLX、ペトコールLX−HS、ペトコール100T、ペトコール120、ペトコール120HS、ペトコール130、ペトコール140、ペトコール140HM、ペトコール140HM5、東邦化学工業社製トーホーハイレジン#120S、トーホーハイレジンRS−21、トーホーハイレジンRS−9、共重合系石油樹脂としては、日本ゼオン社製クイントンD100、クイントンN180、クイントンP195N、クイントンS100、クイントンS195、クイントンU185、クイントンG100B、クイントンG115、クイントンD200、クイントンE200SN、クイントンN295、東ソー社製ペトロタック60、ペトロタック70、ペトロタック90、ペトロタック100、ペトロタック100V、ペトロタック90HM、脂環族系石油樹脂としては、丸善石油化学社製マルカレッツM−890A、日本ゼオン社製クイントン1325、等が挙げられる。また前記石油樹脂は、カルボン酸基や水酸基等の官能基を有していてもよく、上記市販品の中で、酸価、水酸基価を有するものを使用したり、アクリル酸、無水マレイン酸等を付加反応させて使用してもよい。
また前記石油樹脂を多価アルコールや多塩基酸を反応させてなるポリエステル樹脂であってもよい。
【0018】
(フェノール樹脂)
印刷インキ用に汎用されるフェノール樹脂は、ロジン等の樹脂酸とアルキルフェノール類を用いたレゾール型樹脂成分とポリオール成分とからなるロジン変性フェノール樹脂がある。
使用するロジン類としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン、該天然ロジンから誘導される重合ロジン、天然ロジンや重合ロジンを不均化または水素添加して得られる安定化ロジン、天然ロジンや重合ロジンに不飽和カルボン酸類を付加して得られる不飽和酸変性ロジンなどが上げられる。なお、不飽和酸変性ロジンとは、例えばマレイン酸変性ロジン、無水マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、イタコン酸変性ロジン、クロトン酸変性ロジン、ケイ皮酸変性ロジン、アクリル酸変性ロジン、メタクリル酸変性ロジンなど、またはこれらに対応する酸変性重合ロジンがあげられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。またロジンと反応させるポリオール成分としては、特に限定はなく2価アルコールや3価アルコールが主に使用される。
【0019】
レゾール型フェノール樹脂は常法により得ることが出来る。合成方法の一例としては、フェノール類とアルデヒド類を仕込み、揮発性有機溶剤を添加し、金属酸化物触媒またはアルカリ触媒存在下で縮合反応させることにより得られる。フェノール類としては、フェノール水酸基を持つすべての芳香族化合物が使用でき、石炭酸、クレゾール、アミルフェノール、ビスフェノールA、p−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノール等が上げられるが、中でもアルキル置換したフェノール類が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等があげられる。
【0020】
ロジン変性フェノール樹脂は常法により得ることが出来る。合成方法の一例としては、撹拌機を取り付けた反応釜にロジン類を加熱溶解し、ポリオールを添加し所定時間反応させ、所定の酸価未満となった後にレゾール型フェノール樹脂を添加反応させて得る等の方法がある。
【0021】
(オルガノポリシロキサン樹脂)
印刷インキ用に汎用されるオルガノポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン及びカルボン酸、水酸基、アミノ基によって変性されたジメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが挙げられ、特に好ましくは、ジメチルポリシロキサンである。オルガノポリシロキサンの数平均分子量は特に限定はなく通常10,000〜1000,000の範囲内のものが使用される。
【0022】
(エステル系樹脂)
印刷インキ用に汎用されるエステル系樹脂は、一塩基酸と多塩基酸と多価アルコールから得られるポリエステル樹脂である。
一塩基酸としては、多価アルコールと反応してポリエステル樹脂を構成することができる一塩基酸であればよく、具体的には、ロジン、水添ロジン等の脂環式一塩基酸;アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、キリ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルチミン酸、ヘプラデシル酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ノナデカン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸などの脂肪族一塩基酸;安息香酸、パラターシャリーブチル安息香酸、カプロン酸などが挙げられる。これらの1種のみを単独で使用してもよいし、併用してもよい。
【0023】
多塩基酸としては、多価アルコールと重合してポリエステル樹脂とすることができる多塩基酸であり、以外の多塩基酸として具体的には、(無水)マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、(無水)フタル酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、フマル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸またはヘキサヒドロ(無水)フタル酸などが挙げられる。これらの1種のみを単独で使用してもよいし、併用してもよい。
【0024】
多価アルコールとしては、一塩基酸と多塩基酸と反応してポリエステル樹脂とすることができる多価アルコールであればよく、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドないしはプロピレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイドないしはプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。これらの1種のみを単独で使用してもよいし、併用してもよい。これらの中でも、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが入手容易性・安価・反応性の観点から好ましく、4価であり高分岐構造を取りやすいため、分子量コントロールの観点から特にペンタエリスリトールが好ましい。
【0025】
エステル系樹脂の重合方法は、特に限定されない。塊状重合や溶液重合による直接エステル化やエステル交換法などの公知の慣用の方法が適用できる。
【0026】
また、前記一塩基酸とエポキシ樹脂とを反応させたエポキシエステル樹脂も好ましく用いられる。エポキシ樹脂としては例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジβメチルグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラヒドロキシフェニルメタンテトラグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、塩素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAグリシジルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;p−オキシ安息香酸グリシジルエーテル・エステルなどのグリシジルエーテル・エステル型エポキシ樹脂;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステルなどのグリシジルエステル型エポキシ樹脂;グリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルアミン型エポキシ樹脂;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油などの線状脂肪族エポキシ樹脂;3,4−エポキシー6メチルシクロヘキシルメチル3,4エポキシ−6メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシシクロヘキサン)カルボキシレートなどの脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂(a1)は単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0027】
前記エポキシ樹脂と前記一塩基酸とを混合し、窒素雰囲気中で加熱下に反応する方法等により、エポキシエステル樹脂を調製することができる。
【0028】
(ポリアクリル樹脂)
印刷インキ用に汎用されるポリアクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルやスチレン系モノマー等の重合体または共重合体があげられる。なお(メタ)アクリルとは、メタクリルおよびアクリルを意味する。また、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートおよびアクリレートを意味する。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどが挙げられる。更にアルキル基は更にベンゼン環構造を有しても良い。
【0030】
アクリル酸エステルは、水酸基を有しても良く、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステルなどのグリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが、水に対する親和性を向上させるため好ましい。これらは、単独または2種以上を併用できる。
【0031】
アクリル酸エステルは、水酸基以外の官能基を有しても良く、官能基のとしては、カルボキシル基、アミド結合基、アミノ基、アルキレンオキサイド基等が挙げられる。
【0032】
カルボキシル基含有アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、p−カルボキシベンジルアクリレート、エチレンオキサイド変性(付加モル数:2〜18)フタル酸アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピルアクリレート、コハク酸モノヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸β−カルボキシエチル、アクリル酸2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチル、マレイン酸、モノエチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びフマル酸などが挙げられる。
【0033】
アクリル酸エステルでアミド結合を含有するものとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、などの(メタ)アクリルアミド系の化合物などが挙げられる。
【0034】
アクリル酸エステルでアミノ基を含有するものは、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステルなどが挙げられる。
【0035】
アクリル酸エステルは、アルキレンオキサイド単位を有しても良い、例えば、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−フェノキシエチル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0036】
ポリアクリル樹脂の合成方法としては、有機溶剤の存在下でのアニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合、リビングカチオン重合、ラジカル重合、及びリビングラジカル重合等、公知の方法が使用できる。
【0037】
(ポリウレタン樹脂)
印刷インキ用に汎用されるポリウレタン樹脂としては、有機ジイソシアネートとポリオールの反応生成物が挙げられる。有機ジイソシアネートとしては例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、ω,ω′−ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等及びこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。
【0038】
高分子量ポリオールとしてはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、シリコンポリオール、ポリアクリルポリオール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては環状エーテルを開環重合して得られるもの、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ポリエステルポリオールとしてはジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸等)又はその無水物と低分子量ジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等)との重縮合によって得られるもの、例えばポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリブチレンセバケート等、低分子量ジオールへのラクトンの開環重合によって得られるもの、例えばポリカプロラクトン、ポリメチルバレロラクトン等が挙げられる。ポリエーテルエステルグリコールとしてはポリエステルグリコールに環状エーテルを開環重合したもの、ポリエーテルグリコールとジカルボン酸とを重縮合したもの、例えばポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート等が挙げられる。ポリカーボネートポリオールとしては低分子量ジオールとアルキレンカーボネート又はジアルキルカーボネートとから脱グリコール又は脱アルコールによって得られるポリブチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。ポリオレフィンポリオールとしてはポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。シリコンポリオールとしてはポリジメチルシロキサンポリオール等が挙げられる。また、これらの2種類以上の混合物が挙げられる。これらの中でも耐候性の点からはポリカーボネートポリオール、密着性の点からはポリエステルポリオール及びこれらの混合物が好ましい。高分子量ポリオールの分子量は下限値が、通常、200以上、好ましくは、500以上であり、上限値が、通常、10000以下、6000以下である。分子量が小さすぎると柔軟性が乏しく、分子量が大きすぎると密着性が低下する傾向にある。
【0039】
有機ジイソシアネートと高分子量ポリオール反応仕込量はNCO/OHモル比で下限値が、通常、1.01以上、好ましくは1.5以上であり、上限値が、通常、10以下、好ましくは5以下である。この比が小さすぎるとハードセグメント量が少なく耐摩耗性が低い傾向がある。一方、大きすぎると溶解性が乏しく、また粘度も高くなりすぎる傾向にある。 また分子量を調整する目的で、低分子ポリオール化合物やアミン等の鎖延長剤や末端停止剤を使用してもよい。
【0040】
前記非反応性樹脂(a)は、インキ全量に対して5〜50質量%の範囲で含有することが好ましく、より好ましくは10〜40質量%の範囲である。
非反応性樹脂(a)がインキ全量に対して50質量%以内であれば、印刷インキの粘度やインキのタック値が適性な範囲となり、例えば、印刷に使用する紙の表面がインキのタックにより破壊されにくくなり、印刷物中の画線部にインキが転写されず白抜けする部分が生じにくくなる。また、非反応性樹脂が、インキ全量に対して5質量%以上であれば、印刷インキの粘度が低すぎることもなく、例えば、印刷中に印刷機の各ローラーからインキのミストが発生して印刷機を著しく汚したり紙面を汚したりしにくくなる。さらに、水を使用し、画像を形成するオフセット印刷においては、インキ中に水が過剰に混入し、インキが過乳化の状態になり、インキの流動性がなくなることがあり、乳化したインキが印刷機中の親水化処理されたローラーに堆積しやすくなる。この堆積により、親水的なローラーは疎水的になり、版に水が供給されにくくなるため、印刷物の非画線部に汚れが発生したりするが、前記非反応性樹脂(a)をインキ全量に対して5〜50質量%の範囲で含有することで、そのような不具合を生じにくくなる。
【0041】
本発明においては、前記非反応性樹脂(a)を使用する以外は特に限定なく該分野で公知のインキ組成物を使用することができる。一般的には、(メタ)アクリルモノマー及び/又は(メタ)アクリルオリゴマー、及び光重合開始剤を含有するオフセットインキが使用される。
【0042】
((メタ)アクリルモノマー及び/又は(メタ)アクリルオリゴマー)
本発明において、前記(メタ)アクリルモノマー及び/又は(メタ)アクリルオリゴマーとは、アクリルとメタクリルとを総称したものである。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
2官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチルー2−エチルー1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート等の3官能以上の重合製アクリレートモノマーがより好ましく、モノマー全量の30質量%以上含有する事が好ましい。
【0045】
重合性オリゴマーとしては、上述したアミン変性アクリレートの他に、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオレフィン(メタ)アクリレート、ポリスチレン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
単官能、2官能の(メタ)アクリレートに較べ、より反応性の高い3官能以上の(メタ)アクリレート、重合性オリゴマーを用いた方が硬化性や皮膜の強度を向上させるに有利であり、特にUV−LED光源の様な低エネルギーで紫外線硬化型オフセットインキを好適に硬化させるという点で有用である。軟包装用フィルム等の印刷基材への接着性、インキ硬化膜のひび割れを抑制した皮膜の柔軟性をより優先して考慮すれば、単官能〜3官能の重量平均分子量1,000以下の(メタ)アクリレートを使用することがより好ましい。(メタ)アクリルモノマー及び/又は(メタ)アクリルオリゴマー成分は、好ましくはインキ全量の10〜80質量%含有し、より好ましくは20〜70質量%含有する。
【0047】
(光重合開始剤)
本発明で使用する光重合開始剤は、特に限定なく該分野で公知の光重合開始剤を使用することができるが、中でも、前記酸素濃度5%以下の雰囲気で紫外線ランプを使って硬化する工程2において、良好な印刷適性を与える組成として、数平均分子量250以上2000以下のα−アミノアルキルフェノン及び数平均分子量300以上1500以下のアシルフォスフィンオキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種の光重合開始剤を、インキ全量に対し5.0質量%以下含有することが好ましい。
【0048】
前記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤について、数平均分子量300を上回ることで、内包物への光重合開始剤成分移行の移行に伴うマイグレーション量をより低減できる傾向にあり、数平均分子量1500を超えない量ではインキ自体の流動性、光重合開始剤の結晶化に伴う再析出による保存安定性、印刷後の皮膜乾燥性等を良好に保つことができる。
数平均分子量300以上1500以下のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(数平均分子量418.5)、(2、4、6−トリメチルベンゾイル)−ジフェニルフォスフィンオキサイド(数平均分子量348.4)、フェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル(数平均分子量316.3)等が挙げられる。
【0049】
また、前記α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤について、数平均分子量250を上回ることで、特にフィルムを設けた場合における光重合開始剤成分移行の移行に伴うマイグレーション量が低減できる可能性があり、数平均分子量2000を超えない量で、インキ自体の流動性、光重合開始剤の結晶化に伴う再析出による保存安定性、印刷後の皮膜乾燥性等を良好に保つことができる。
【0050】
数平均分子量250以上2000以下のα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤としては、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(数平均分子量279)、1−([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−2−メチル−2−モルフォリノプロパン−1−オン(数平均分子量309)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−ピペリジノフェニル)−ブタン−1−オン(数平均分子量364)、2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)−2−ベンジル−1−ブタノン(数平均分子量:366.5)、2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(数平均分子量:380.5)、「1−(9,9−ジブチル−9H−フルオレン−2−イル)−2−メチル−2−モルフォリノプロパン−1−オン」(平均分子量:434)ポリエチレングリコールジ[β−4−[4−(2−ジメチルアミノ−2−ベンジル)ブタノイルフェニル]ピペラジン]プロピオネート(数平均分子量:1039)等が好ましい。
【0051】
前記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤や前記α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤は、各々単独で用いても、併用してもよい。特に発光ピーク波長が350〜420nmの範囲の紫外線を発生するUV−LED光源を活性エネルギー線源として用いた場合には、アシルホスフィンオキサイド系化合物、アミノアルキルフェノン系化合物合物を併用することが硬化性に優れる点から好ましい。
【0052】
その他、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシム系化合物、3,6−ビス(2−メチル−2−モルフォリノプロパノニル)−9−ブチルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物や、
【0053】
ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;その他10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等の光重合開始剤を併用してもよい。
【0054】
また数平均分子量300以上1500以下のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及び/又は数平均分子量250以上2000以下のα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤に、増感剤を併用することが好ましく、インキ全量の0.1〜5質量%の範囲で添加することがさらに好ましい。
【0055】
光増感剤は、紫外線を吸収して電子励起一重項状態に遷移した後、系間交差により三重項状態に遷移する。そして、基底状態の光重合開始剤と衝突した際にエネルギー移動が生じ、光重合開始剤を励起三重項状態に遷移させる働きをする化合物である。例えばLED等の発光波長域が狭い光源を使用する場合は、光重合開始剤からラジカルを効率よく発生させ、光重合開始剤の働きをサポートする為、増感剤を組み合わせることが好ましい。
【0056】
光増感剤としては、特に限定されないが、チオキサントン系、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、アントラキノン系、クマリン系などが挙げられる。これらの中でも、特に2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系化合物や、ミヒラーケトン、4,4´−ビス−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなど4,4’−ジアルキルアミノベンゾフェノン類が好ましく、性能、安全性や入手しやすさなどの観点から、2,4−ジエチルチオキサントン,2−イソプロピルチオキサントン、4,4´−ビス−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが特に好ましい。
【0057】
また、高い衛生性を所望する際は、高分子量化された増感剤を使用することが好ましい。一例としては、IGM社製の「Omnipol TX(数平均分子量:660)」や、RaHN社製の「Genopol TX−1(数平均分子量:820)」等があげられ、これらは単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。
【0058】
本発明の課題を達成するために光重合開始剤の量は出来る限り少ないことが好ましいが本発明の製造方法においては、硬化時に酸素濃度5%以下の雰囲気で行うために、紫外線硬化性オフセットインキが含有する全ての光重合開始剤の総量をインキ全量に対し5質量%以下に抑えることが可能である。この観点から、好ましい光重合開始剤の総量は、インキ全量の0.01〜5質量%である。0.01質量%以上の添加量があれば良好な硬化乾燥性を得ることができる。一方、5質量%を越える量でも良好な硬化乾燥性を得ることができるが、場合によっては臭気等の問題が生じうる。一方10質量%以上ではインキ流動性等を適性な範囲に保つことが困難となり可能となる。
【0059】
(顔料)
顔料としては、公知公用の着色用有機顔料を挙げることができ、例えば「有機顔料ハンドブック(著者:橋本勲、発行所:カラーオフィス、2006年初版)」に掲載される印刷インキ用有機顔料等が挙げられ、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、金属フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン顔料、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール顔料、カーボンブラック顔料、その他多環式顔料等が使用可能である。
【0060】
また、本発明の紫外線硬化性オフセットインキには、体質顔料として無機微粒子を用いてもよい。無機微粒子としては、酸化チタン、グラファイト、亜鉛華等の無機着色顔料;炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、クレー(ChinaClay)、シリカ粉、珪藻土、タルク、カオリン、アルミナホワイト、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、バライト粉、砥の粉等の無機体質顔料や、シリコーン、ガラスビーズなどがあげられる。これら無機微粒子は、インキ中に0.1〜60重量%の範囲で使用することにより、着色やインキのレオロジー特性を調整したりすることが可能である。
【0061】
(その他添加剤)
その他の添加剤としては、例えば耐摩擦性、ブロッキング防止性、スベリ性、スリキズ防止性を付与する添加剤としては、カルナバワックス、木ろう、ラノリン、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス、フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックス、およびシリコーン化合物などの合成ワックス等を例示することができる。
【0062】
また例えば、インキの保存安定性を付与する添加剤としては、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p −メトキシフェノール、t −ブチルカテコール、t −ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1−ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p −ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5−ジ−tert−ブチル−p −ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ−p −ニトロフェニルメチル、N−(3−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o−イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等の重合禁止剤が例示される。
【0063】
その他、要求性能に応じて、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗菌剤等の添加剤を添加することができる。
【0064】
本発明の紫外線硬化性オフセットインキは、無溶剤で使用することもできるし、必要に応じて適当な溶媒を使用する事も可能である。溶媒としては、上記各成分と反応しないものであれば特に限定されるものではなく、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0065】
本発明の印刷物の製造方法で使用する紫外線硬化性オフセットインキの製造は、アクリレートモノマー、光重合開始剤、バインダー樹脂、増感剤、その他添加剤等を配合してミキサー等で撹拌混合し、三本ロールミル、ビーズミル等の分散機を用いて練肉することで製造される。
【0066】
(工程1)
本発明の工程1において、使用する基材としては特に限定は無くオフセット印刷分野で通常使用されている紙もしくはプラスチック基材、食品包装分野で使用される軟包装基材を使用すればよい。例えば紙であれば、カタログ、ポスター、チラシ、CDジャケット、ダイレクトメール、パンフレット、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等のパッケージ等の印刷に用いられる上質紙、クラフト紙、純白ロール紙、グラシンペーパー、パーチメント紙、マニラボール、白ボール、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、各種合成紙、等が挙げられる。
【0067】
またプラスチック基材や軟包装基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル樹脂フィルム;OPP(2軸延伸ポリプロピレン)フィルム等のポリオレフィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ−p−キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)などのポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン−ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等や、特にシーラントフィルムとして使用される低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、VMCPP(アルミ蒸着無延伸ポリプロピレン)、VMLDPE(アルミ蒸着低密度ポリエチレン)、エチレン−ビニルアセテート共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのポリオレフィン樹脂等の樹脂フィルムがあげられる。
また前記樹脂フィルムに各種バリア機能等の機能性を付与するための、アルミニウム箔などの軟質金属箔、アルミ蒸着、シリカ蒸着、アルミナ蒸着、シリカアルミナ2元蒸着などの蒸着層、塩化ビニリデン系樹脂、変性ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、MXDナイロンなどからなる有機バリア層等が設けられた複合フィルムも挙げられる。
【0068】
前記基材において、プラスチック基材や軟包装基材に使用される樹脂フィルムは一般的に表面エネルギーが低く、紫外線硬化型オフセットインキに対する濡れが悪いため、密着性不良を引き起こしやすい。その為、高周波電源により供給される高周波・高電圧出力を、コロナ処理装置が備える放電電極とアースロールとの間に印加することでコロナ放電を発生させ、このコロナ放電下に前記フィルムを通過させることにより、前記基材の表面エネルギーを向上させることが好ましい。
【0069】
また、一般的にプライマーもしくはアンカー(コート剤)と称される密着性付与剤を予め前記プラスチック基材、軟包装基材上に塗布してもよく好ましい。
【0070】
これら基材に、オフセット印刷方式により印刷インキを転写し紫外線硬化性オフセットインキ層を設ける。
オフセット印刷方式による印刷は、カラープロセスインキや特色インキを、単色や多色使いで刷重ね印刷を行う方法が一般的である。
オフセット印刷機は多数の印刷機メーカーによって製造販売されており、一例としてハイデルベルグ社、小森コーポレーション社、リョービMHIグラフィックテクノロジー社、マンローランド社、KBA社等を挙げることができ、またシート形態の印刷用紙を用いる枚葉オフセット印刷機、リール形態の印刷用紙を用いるオフセット輪転印刷機、いずれの用紙供給方式においても本発明を好適に利用することが可能である。更に具体的には、ハイデルベルグ社製スピードマスターシリーズ、小森コーポレーション社製リスロンシリーズ、リョービMHIグラフィックテクノロジー社製RMGTシリーズ等のオフセット印刷機を挙げることができる。
【0071】
前記活性エネルギー線硬化性オフセットインキ層の印刷後の基材上の膜厚は、紫外線照射前のウェット状態で1色に付き0.5〜3μm程度であり、1.0〜1.5μmの範囲にあることが好ましい。膜厚が0.5μmを下回ると、充分なインキ濃度が得られず、また膜厚が3μmを上回ると紫外線照射時の硬化不良が発生しやすい傾向となる。
【0072】
(工程2)
本発明の工程2においては、硬化性および利便性の点から紫外線(UV)の使用が好ましく、紫外線ランプと成り得る具体的なエネルギー源又は硬化装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、紫外線発光ダイオード(UV−LED)、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線が挙げられる。前記紫外線発光ダイオード(UV−LED)としては、そのピーク波長が350〜400nmの範囲であるものが好ましく、積算光量が5mJ/cm以上、照射強度が500mW/cm以上の条件で硬化させることが好ましい。
【0073】
本発明においては、工程2において、前記紫外線硬化性オフセットインキ層を酸素濃度5%以下の雰囲気で紫外線ランプを使って硬化することを必須とする。紫外線ランプの露光チャンバー内の酸素濃度を5%以下に低減させれば、ラジカル反応の酸素阻害が抑えられ反応効率が上がるため、空気中で露光するよりも、より少ない光重合開始剤や増感剤の添加量で、優れた光硬化性を発現できるからである。また、それに伴い、臭気や、移行(マイグレーション)、溶出、黄変等の成分量を低減する事ができる。
【0074】
前記露光チャンバー内の酸素濃度を低減させる手法としては、例えば、窒素やアルゴンなどの不活性ガスをパージする方法や、気圧を減圧する方法が用いられる。特に、窒素パージがコスト的に安く、装置の作成も簡便で好ましく用いられる。
【0075】
前記酸素濃度の値としては、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下で露光を行うのが望ましい。これ以上の酸素濃度範囲では酸素阻害の影響が現れ、硬化不足になる恐れがある。
【0076】
(透明二ス組成物層を設ける工程(3−1))
本発明の印刷物の製造方法では、基材上に紫外線硬化性オフセットインキ層を設ける工程1、前記紫外線硬化性オフセットインキ層を酸素濃度5%以下の雰囲気で紫外線ランプを使って硬化する工程2により、基材上に印刷された印刷物を得ることができる。
一方、商業印刷、紙器、紙パッケージ印刷や食品包装分野において、紙またはプラスチックの基材を用いる場合は、インキ表面の擦れを抑制したり、意匠性を付与する為に、5%以上の有色顔料を含まない透明二ス組成物層を前記紫外線硬化性オフセットインキ層の上に形成する形態も知られている。
【0077】
本発明で使用する前記透明二ス組成物層は、1層以上でもよく、前記透明二ス組成物上に異なる組成の透明二スを重ね、多層構造を形成してもよい。また、各透明二ス組成物層は前記工程2の後、即ち前記工程1で印刷される前記紫外線硬化性オフセットインキを前記工程2によって硬化させた後、別の公知公用の印刷機若しくはコーターにより塗工(オフライン塗工)してもよいし、前記工程2の前、即ち、前記紫外線硬化性オフセットインキを印刷する印刷機に付帯された透明二ス塗工ユニットにより、基材上に紫外線硬化性オフセットインキ層を設ける工程1の後に塗工(インライン塗工)し、その後工程2によって硬化させてもよい。
【0078】
前記透明二ス組成物層の硬化・乾燥にあたっては、透明二ス組成物を構成する材料組成により、適宜、硬化・乾燥装置を選択することができる。例えば、前記透明二ス組成物中に、少なくとも(メタ)アクリルモノマー及び/又は(メタ)アクリルオリゴマー、を含有する場合は、前記工程2で照射される紫外線を使用して前記透明二ス組成物を硬化させてもよいし、別途活性エネルギー線源を使用して硬化・乾燥させてもよい。
また例えば、透明二ス組成物中に少なくとも水や揮発性有機溶剤を含有する場合は、熱風乾燥機を使用して水や有機溶剤が十分揮発する温度で乾燥させることが出来る。
【0079】
前記公知公用の印刷機若しくはコーターとは、具体的にロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファロールコーター、キスコーター、カーテンコーター、キャストコーター、スプレイコーター、ダイコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等を適宜採用することができる。
【0080】
前記別途活性エネルギー線とは具体的には、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線、マイクロ波、高周波、可視光線、赤外線、レーザー光線、プラズマ等が挙げられる。
【0081】
前記透明二ス組成物層の厚さは、0.1〜30μmが好ましく、1〜20μmであれば特に好ましい。透明二ス層が0.1μm以上であれば、摩擦により透明二ス層が破壊され、下層の紫外線硬化性オフセットインキ層に傷が付いたり、擦れたりするおそれがない。また、透明二ス層が30μm以下であれば、印刷物の屈曲により透明二ス層が割れたり、透明二ス組成物を硬化もしくは乾燥させる際に、該組成物の硬化・乾燥スピードが印刷スピードに対し、追従できず、硬化・乾燥不良を引き起こすおそれがない。
【0082】
(フィルムを設ける工程(3−2))
また一方、商業印刷、紙パッケージ印刷や食品包装分野においては、紙基材上に印刷した後、該印刷物上にフィルム等を貼りあわせ積層体とする形態も知られている。この場合例えば、前記硬化後の紫外線硬化性オフセットインキ層上に、フィルムを設ける工程(3−2)により得ることが出来る。
【0083】
本発明で使用できるフィルムとしては、前述の基材で述べたプラスチック基材や軟包装基材に適用される樹脂フィルム等が挙げられる。また硬化後の紫外線硬化性オフセットインキ層との密着性を高めるために、接着剤層を設けることが好ましい。接着剤層は、前記基材上に設けられた硬化後の紫外線硬化性オフセットインキ層上に塗工する方法で設けてもよいし、予めフィルムに接着剤層が設けられたプレコートフィルムを使用することもできる。接着剤を塗工する場合は前記のロールコーターやグラビアコーター法等の各種コーター法で行うことができる。
接着剤層を介しフィルムを設けた後、ラミネート法により積層体とすることができる。ラミネート法は特に限定されず、たとえばドライラミネート法、熱ラミネート法、ヒートシール法、押出しラミネート法等があげられる。
【0084】
前記接着剤層に使用する接着剤としては、特に限定なくラミネート包装分野で使用されるエポキシ樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エチレン酢酸ビニル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ポリエステル系接着剤、ウレタン系反応性接着剤等の接着剤などが挙げられる。また接着剤には、必要に応じて添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、レベリング剤、コロイド状シリカ、アルミナゾルなどの無機微粒子、ポリメチルメタクリレート系の有機微粒子、消泡剤、タレ性防止剤、湿潤分散剤、シランカップリング剤、粘性調整剤、紫外線吸収剤、金属不活性化剤、過酸化物分解剤、難燃剤、補強剤、可塑剤、潤滑剤、防錆剤、蛍光性増白剤、無機系熱線吸収剤、防炎剤、帯電防止剤、脱水剤などが挙げられる。また前記接着剤層の厚さは、0.5〜15μmが好ましく、1〜8μmであれば特に好ましい。
【0085】
本発明の印刷物の製造方法により得られる印刷物は、次の溶出試験法に示す手順で検出される光重合開始剤の検出量が低レベルであることが好ましい。
1.印刷面の総インキ量が60mgとなるように印刷物を成形した後、フィルムを内側にして、印刷面の全てが液面に接するように容積1000cmで、且つ、1000cmの内容液と接触する液体容器内面の総面積が600cmの液体容器を作製し、エタノール水溶液(エタノール50質量%と純水50質量%の混合溶液)1000cmを注ぎ密閉する。
2.密閉した液体容器を40℃雰囲気下で10日間静置した後、液体容器からエタノール水溶液を取り出し、液体クロマトグラフ質量分析にて光重合開始剤を定量する。
【実施例】
【0086】
以下に、本発明の内容及び効果を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。尚、例中「部」とあるのは「重量部」を示す。
【0087】
(活性エネルギー線硬化型オフセットインキの製造方法)
表1の組成に従って、実施例1〜4及び比較例1〜4のインキを3本ロールミルにて練肉することによって、各種のインキ組成物を得た。尚、表中の空欄は、未配合を意味している。
各インキの25℃における粘度は、28〜32Pasであった。前記25℃に粘度はJIS5701−1に従って、L型粘度計を用いて調整した。
【0088】
(展色物の製造方法)
簡易展色機(RIテスター、豊栄精工社製)を用い、インキ0.10mlを使用して、RIテスターのゴムロール及び金属ロール上に均一に引き伸ばし、PET原反(DIC社製、ダイタックUVPET透明25FL)上、約220cm2の面積範囲にわたって墨濃度1.8(X−Rite社製SpectroEye濃度計で計測)で均一に塗布されるように展色し、展色物を作製した。
【0089】
(紫外線発光ダイオード光源による乾燥方法)
前記の方法で得られた紫外線硬化性オフセットインキ塗布後の展色物を石英製の透明な窓が付き、ガスの封入口と排気口のついた窒素置換ボックスに入れ、ボックス内の酸素濃度が5%となるように窒素ガスを封入した。
水冷式UV−LED(中心発光波長385nm±5nmUV−LEDの出力100%)およびベルトコンベアを搭載したUV照射装置(アイグラフィックス社製)を使用し、展色物をコンベア上に載せ、コンベアスピード100m/minの速度で、LED直下(照射距離9cm)を通過させた。前記の方法で得られた光硬化性インキ塗布後の展色物に紫外線(UV)照射を行い、インキ皮膜を硬化乾燥させた。
【0090】
(活性エネルギー線硬化型インキの硬化性評価方法)
硬化直後に硬化インキ層を爪で擦ることにより硬化皮膜の硬化性を評価した。
評価基準は以下とした。
◎:強い力で擦っても傷が付かず、UV硬化性は非常に良好である。
〇:強い力で擦ると僅かに傷が付く。
△:強い力で擦ると明確に傷が付く
×:弱い力で擦っても明確に傷が付き、UV硬化性は不良である。
【0091】
(活性エネルギー線硬化型インキのテープ密着性評価方法)
碁盤目のクロスカットを入れない以外は、JIS K 5600に準じて、試験を行った。
硬化直後、硬化インキ層にニチバン製セロテープ(幅18mm)を貼り、90度方向に剥離した。5mm×5mmの領域において、印刷層の残存した面積を観察し、下記の基準で判断した。
○ : 印刷層の残存面積が全体の99%以上
△ : 印刷層の残存面積が全体の90%以上、99%未満
× : 印刷層の残存面積が全体の90%未満
【0092】
【表1】
【0093】
(参考例)
比較例1のインキにおいて、テープ密着性が○となるところまで光重合開始剤の量を増量させていった。その結果光重合開始剤の総量が 7 部(光重合開始A:3.1部、Omnirad TPO: 3.9部)となったところで、テープ密着性が○の評価となった。
【0094】
使用した原料の詳細は下記の通りである。
(顔料)
「ラーベン1060Ultra」:BIRLA CARBON製 カーボンブラック
「FASTOGEN BLUE TGR−1」:DIC製 Pigment Blue 15:3
「ホスタパームバイオレット RL 02」:クラリアント製 Pigment Violet 23
【0095】
(添加剤)
「ハイフィラー#5000PJ」:松村産業製 タルク
「S−381−N1」:シャムロック製 オレフィン系微粉末ワックス
【0096】
(非反応性樹脂)
「ジアリルフタレート樹脂ワニス」:大阪ソーダ製ダイソーダップ 35質量%/SR355NS/OTA480=35/32.5/32.5
「Laropal A81樹脂ワニス」:BASF製Laropal A81 66質量%/SR355NS=66/34
【0097】
((メタ)アクリルモノマー)
「アロニックスM−400」:東亞合成製 ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート
「SR355NS」:アルケマ製 ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
【0098】
(重合禁止剤)
「ステアラーTBH」:精工化学製 tert−ブチルハイドロキノン
【0099】
(光重合開始剤)
「光重合開始剤A」:下記の構造で表される化合物「2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−ピペリジノフェニル)−ブタン−1−オン」
【0100】
【化1】




(1)
【0101】
「光重合開始剤B」:1−([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−2−メチル−2−モルフォリノプロパン−1−オン
【0102】
【化2】

(2)
【0103】
「光重合開始剤C」:「1−(9,9−ジブチル−9H−フルオレン−2−イル)−2−メチル−2−モルフォリノプロパン−1−オン」
【0104】
【化3】


(3)
【0105】
Omnirad TPO 2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキシド
Omnirad EMK 4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
【0106】
この結果、実施例1〜4の紫外線硬化性オフセットインキは、従来よりも相当量少ない光重合開始剤量であっても硬化性に優れることが明らかである。
【要約】
基材上に紫外線硬化性オフセットインキ層を設ける工程1と、前記紫外線硬化性オフセットインキ層を酸素濃度5%以下の雰囲気で紫外線により硬化する工程2をこの順に有する印刷物の製造方法であって、前記紫外線硬化性オフセットインキが、ガラス転移温度が30℃〜140℃の非反応性樹脂と、(メタ)アクリルモノマー及び/又は(メタ)アクリルオリゴマーと、光重合開始剤と、顔料とを含む紫外線硬化性オフセットインキであることを特徴とする印刷物の製造方法。