特許第6794103号(P6794103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794103
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/16 20060101AFI20201119BHJP
   F24C 1/00 20060101ALI20201119BHJP
   A47J 27/04 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   A47J27/16 D
   F24C1/00 320B
   F24C1/00 340A
   A47J27/04 C
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-203788(P2015-203788)
(22)【出願日】2015年10月15日
(65)【公開番号】特開2017-74253(P2017-74253A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】北谷 和也
(72)【発明者】
【氏名】上田 真也
(72)【発明者】
【氏名】熊 紀博
【審査官】 川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−205201(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0013879(US,A1)
【文献】 特開昭51−106773(JP,A)
【文献】 実開昭57−148362(JP,U)
【文献】 特開2004−236991(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0334349(US,A1)
【文献】 特開2010−136940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00−29/06
A47J 33/00−36/42
F24C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉と、
前記加熱炉に供給する水蒸気を発生する蒸気発生部と、
被加熱物を支持する支持部材と、を備え、
前記加熱炉は上部に開放部を有し、
前記支持部材は、凹部形状の容器であり、
記加熱炉の内側面に蒸気吹出口が設けられており、
前記蒸気吹出口は、前記支持部材の底面よりも上方に設けられていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記被加熱物からでた油脂または汁を受ける受け皿を備え、
前記受け皿は、前記加熱炉の底面から離間していることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理器の一例としては、七輪等の網焼き式加熱調理器がある。このような網焼き式加熱調理器は、食材等の被加熱物が載置された網の下側に電熱線、炭等といった熱源が配置された構成となっている。
【0003】
また、従来の加熱調理器の別の例としては、オーブンレンジ等の、加熱室に収容された食材等の被加熱物をオーブン加熱するオーブン式加熱調理器がある。このようなオーブン式加熱調理器は、一般的に、ファン及び熱風ヒータから構成される加熱ヒータを備え、該加熱ヒータから、加熱室に設けられた通風口を介して循環される熱風によってオーブン加熱を行う構成となっている。また、最近では、水蒸気を利用した加熱を採用したオーブン式加熱調理器がある。このようなオーブン式加熱調理器は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-10163号公報(2007年 1月18日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記網焼き式加熱調理器では、被加熱物の加熱状況(焼色、焼き加減、形状等)を均一に調節するために、加熱調理中に容易に被加熱物を操作することができるという利点がある。例えば、網上の火力が強い領域に被加熱物を移動したり、被加熱物の表面を焼くために被加熱物を裏返すといった操作を容易に行うことができる。また、網焼き式加熱調理器は、通常、解放された空間内にて加熱調理が行なわれるため、被加熱物の加熱調理過程が容易にわかるという利点がある。その反面、上記網焼き式加熱調理器では、電熱線、炭等といった熱源を用いて被加熱物を加熱しているため、加熱調理時間が経過するに従い、被加熱物から水分が蒸発する。それゆえ、被加熱物が乾燥し、しっとりとした仕上がりに加熱調理することが困難であるという欠点がある。
【0006】
一方、特許文献1に開示されたオーブン式加熱調理器では、被加熱物の加熱に水蒸気及び加熱ヒータからの輻射熱を用いるので、被加熱物内の水分の蒸発を防止し、しっとりとした仕上がりに調理することができる。その反面、オーブン式加熱調理器は、加熱室という密閉された空間内にて被加熱物の加熱調理を行うため、加熱調理中に被加熱物を移動させる、裏返すといった操作を行うことが困難であるという欠点がある。
【0007】
このように、網焼き式加熱調理器及び水蒸気を用いたオーブン式加熱調理器の両方の利点を併せ持つ加熱調理器は、従来存在しない。
【0008】
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱調理中に容易に被加熱物を操作しつつ、水蒸気を用いて加熱調理することが可能な、全く新しい概念を有する加熱調理器を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る加熱調理器は、加熱炉と、前記加熱炉に供給する水蒸気を発生する蒸気発生部と、被加熱物を支持する支持部材と、を備え、前記加熱炉は上部に開放部を有し、前記支持部材は、凹部形状の容器であり、前記加熱炉の内側面に蒸気吹出口が設けられており、前記蒸気吹出口は、前記支持部材の底面よりも上方に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、加熱調理中に容易に被加熱物を操作しつつ、水蒸気を用いて加熱調理することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1に係る加熱調理器の構成を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態1に係る加熱調理器内部の構成を示す斜視図である。
図3】(a)は、本発明の実施形態1に係る加熱調理器の構成を示す断面図であり、(b)は、(a)に示された構成と異なる、蒸気吹出口の配置の一例を模式的に示した平面図である。
図4】本発明の実施形態1に係る加熱調理器における蒸気発生部の構成を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態2に係る加熱調理器の構成を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態2に係る加熱調理器内部の構成を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態2に係る加熱調理器の構成を示す断面図である。
図8】本発明の実施形態2に係る加熱調理器の別の変形例における、加熱炉の底面に形成された蒸気吹出口の構成を模式的に示す平面図である。
図9】本発明の実施形態3に係る加熱調理器の構成を示す斜視図である。
図10】本発明の実施形態3に係る加熱調理器内部の構成を示す斜視図である。
図11】本発明の実施形態3に係る加熱調理器の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る加熱調理器1Aの構成を示す斜視図である。また、図2は、加熱調理器1A内部の構成を示す斜視図である。また、図3の(a)は、加熱調理器1Aの構成を示す断面図である。
【0013】
図1図3の(a)に示されるように、加熱調理器1Aは、加熱炉20と、蒸気発生部30と、網部材4と、給水部50と、を備えている。また、加熱炉20、蒸気発生部30、網部材4、及び給水部50は、筺体6内に収容されている。筺体6は、正方形の底面を有する四角柱形状である。
【0014】
加熱炉20は、上部に開放部21を有する凹部形状の容器である。本実施形態に係る加熱調理器1Aでは、加熱炉20は、正方形型の容器の形態となっている。加熱炉20の4つの側壁23それぞれの内面には、蒸気吹出口22が設けられている。
【0015】
網部材4は、網目構造を有し、その上面が加熱炉20の開放部21に位置するように設けられている。この網部材4は、加熱炉20の上部の形状に適合する容器の形態であり、底面に加熱調理器1Aの調理対象である食材等の被加熱物が載置される。網部材4の底面は、加熱炉20の開放部21よりも下側に位置する。網部材4の底面に載置された被加熱物は、開放部21を介して、例えば、はし、トング等を用いて、裏返す、あるいは移動させることが可能である。
【0016】
蒸気発生部30は、加熱炉20に供給する過熱水蒸気を発生する装置であり、加熱炉20を構成する4つの側壁23それぞれの外面に設けられている。
【0017】
給水部50は、蒸気発生部30に対応して4つ設けられている。そして、給水部50は蒸気発生部30に接続した給水チューブ51を備えており、蒸気発生部30へ水を供給するようになっている。給水部50は、給水ポンプ(不図示)、給水タンク(不図示)等を備えている。
【0018】
4つの蒸気発生部30により生成された過熱水蒸気は、加熱炉20の側壁23の内面に設けられた蒸気吹出口22を介して、加熱炉20内部に供給される。蒸気吹出口22から供給された過熱水蒸気は、加熱炉20の開放部21よりも下の空間を満たす。このとき、網部材4に載置された被加熱物は、開放部21よりも下の空間に満たされた過熱水蒸気により、加熱調理される。
【0019】
図4は、本実施形態に係る加熱調理器1Aにおける蒸気発生部30の構成を示す断面図である。なお、図4において、切替部35は、模式的に示している。
【0020】
図4に示されるように、蒸気発生部30は、蒸気発生用ヒータ31(第1の加熱ヒータ)と、過熱水蒸気発生用ヒータ32(第2の加熱ヒータ)と、蒸気発生用ヒータ31及び過熱水蒸気発生用ヒータ32のオン/オフを独立して切り替える切替部35と、を備えている。蒸気発生部30は、蒸気発生用ヒータ31及び過熱水蒸気発生用ヒータ32が筐体33内に組み込まれたユニットとして構成されている。筐体33内には、隔壁33Cが設けられている。隔壁33Cは、筐体33の内部空間を、蒸気発生用ヒータ31が収容されている蒸気発生空間33Aと、過熱水蒸気発生用ヒータ32が収容されている過熱水蒸気発生空間33Bとに区分している。
【0021】
隔壁33Cは、SUS304(18クロムステンレス)といった耐熱性ステンレス鋼により構成された基材と、この基材を覆う被膜と、を有する。この被膜は、耐熱性を有し、例えば黒塗装により形成される。
【0022】
過熱水蒸気発生空間33Bは、蒸気発生空間33A内に設けられている。蒸気発生空間33Aと過熱水蒸気発生空間33Bとは互いに蒸気の出入りが可能なように連通している。また、過熱水蒸気発生空間33Bには、加熱炉20内の空間と連通する蒸気排出管34が設けられている。この蒸気排出管34は、加熱炉20の蒸気吹出口22を貫通するように設けられている。
【0023】
筐体33は、アルミニウム等の金属のダイカスト法により鋳造された基材と、この基材を覆う被膜とを有する。この被膜は、撥水性を有し、基材の表面から錆等の酸化物が析出することを防止する。この被膜は、例えば塗装により形成される。
【0024】
蒸気発生部30の筐体33内には、給水部50からの水が滴下される。蒸気発生用ヒータ31は、筐体33を加熱し、筐体33に滴下された水を蒸発させる。これにより、蒸気発生空間33A内に約100℃の飽和水蒸気が発生する。
【0025】
ここで、蒸気発生用ヒータ31は、筐体33に鋳込まれている。このため、蒸気発生用ヒータ31と筐体33との接触面積を大きくすることができる。その結果、蒸気発生用ヒータ31の熱を筐体33に効率よく伝達でき、蒸発効率が向上する。
【0026】
蒸気発生空間33Aにて生成した飽和水蒸気は、過熱水蒸気発生空間33Bに流入する。そして、過熱水蒸気発生空間33Bにて、過熱水蒸気発生用ヒータ32によって加熱されて100℃以上(例えば約300℃)の過熱水蒸気となる。ここで、過熱水蒸気とは、100℃以上の過熱状態にまで加熱された水蒸気を意味する。過熱水蒸気発生空間33Bにて生成した過熱水蒸気は、蒸気排出管34を通過して、加熱炉20に供給される。
【0027】
これにより、網部材4に載置された被加熱物は、加熱炉20の蒸気吹出口22から吹き出した100℃以上(例えば約300℃)の過熱水蒸気により加熱調理される。このとき、過熱水蒸気が被加熱物表面に供給され付着し、被加熱物表面に凝縮して大量の凝縮潜熱を被加熱物に与える。それゆえ、被加熱物に熱を効率よく伝えることができる。
【0028】
また、加熱調理器1Aでは、過熱水蒸気を使用して加熱調理しているので、被加熱物から水分が蒸発して乾燥するのを抑制することができる。それゆえ、被加熱物を、適度の水分を保持したしっとりとした仕上がりに調理することができる。
【0029】
また、加熱調理器1Aによれば、網部材4における被加熱物を載置する底面は、加熱炉20の開放部21よりも下側に位置している。そして、網部材4に載置された被加熱物は、開放部21を介して、例えば、はし、トング等を用いて、裏返す、あるいは移動させることが可能である。それゆえ、過熱水蒸気により加熱された被加熱物を加熱状況に応じて容易に操作することができる。
【0030】
したがって、加熱調理器1Aの構成によれば、加熱調理中に容易に被加熱物を操作しつつ、過熱水蒸気を用いて加熱調理することが可能である。加熱調理器1Aは、網焼き式加熱調理器及び過熱水蒸気を用いたオーブン式加熱調理器の両方の利点を併せ持つ全く新しい加熱調理器である。
【0031】
また、加熱調理器1Aでは、過熱水蒸気のみを用いた加熱調理が可能である。一方、過熱水蒸気を用いたオーブン式加熱調理器は、過熱水蒸気に加え、加熱ヒータによって加熱された加熱庫の輻射熱によって加熱調理するものである。
【0032】
加熱調理器1Aは、過熱水蒸気を用いたオーブン式加熱調理器と異なり、外部と連通する開放部21を有する加熱炉20内(非密閉空間)にて過熱水蒸気を供給する構成である。しかも、加熱調理器1Aは、過熱水蒸気のみによって被加熱物を加熱調理する構成である。蒸気発生部30は、網部材4に載置された被加熱物を加熱するために、過熱水蒸気を発生し続けるが、センサ等を用いて被加熱物の加熱状況をセンシングし、過熱水蒸気の発生を制御するようにしてもよい。
【0033】
また、図4に示されるように、蒸気発生部30は、蒸気発生用ヒータ31及び過熱水蒸気発生用ヒータ32のオン/オフを独立して切り替える切替部35を備えている。それゆえ、加熱調理器1Aでは、過熱水蒸気を用いた加熱調理、及び飽和水蒸気を用いた蒸し調理の両方を行うことができる。
【0034】
被加熱物を蒸し調理する場合、切替部35は、蒸気発生用ヒータ31をオンにする一方、過熱水蒸気発生用ヒータ32をオフにするように制御する。これにより、蒸気発生部30は、蒸気発生用ヒータ31により発生した飽和水蒸気を加熱炉20内部に供給する。そして、加熱炉20は、開放部21よりも下の空間が飽和水蒸気で満たされ、網部材4に載置された被加熱物の蒸し調理が可能になる。
【0035】
また、被加熱物を過熱水蒸気により加熱調理する場合、切替部35は、蒸気発生用ヒータ31及び過熱水蒸気発生用ヒータ32の両方をオンにするように制御する。これにより、蒸気発生部30は、過熱水蒸気発生用ヒータ32により発生した過熱水蒸気を加熱炉20内部に供給する。そして、加熱炉20は、開放部21よりも下の空間が過熱水蒸気で満たされ、網部材4に載置された被加熱物の過熱水蒸気による加熱調理が可能になる。
【0036】
このように、加熱調理器1Aでは、過熱水蒸気または飽和水蒸気を用いることによって、ヘルシーな調理を行うことができる。加熱調理器1Aでは、網部材4に載置された被加熱物表面に過熱水蒸気または飽和水蒸気が供給される。そして、過熱水蒸気または飽和水蒸気は、凝縮水として被加熱物の表面に付着する。これにより、被加熱物中の塩分または油分は、被加熱物の表面に付着した凝縮水と共に滴下する。その結果、被加熱物中の塩分または油分を低減することができる。
【0037】
さらに、蒸気発生部30は、網部材4に載置された被加熱物を加熱するために、過熱水蒸気または飽和水蒸気を発生し続けるので、網部材4に載置された被加熱物の周りの空間は、過熱水蒸気または飽和水蒸気が充満して無酸素状態となる。これにより、被加熱物の酸化を抑制した加熱調理が可能となる。
【0038】
また、本実施形態に係る加熱調理器1Aでは、加熱炉20の側壁23の内面にのみ、過熱水蒸気または飽和水蒸気を吹き出す蒸気吹出口22が設けられている。網部材4に載置された被加熱物の直下に位置する底面24に蒸気吹出口22やヒータ等の熱源が設けられていない。これにより、加熱調理過程に被加熱物からでた油脂または汁が滴下しても、これら油脂または汁が加熱されて発煙することを防止することができる。
【0039】
また、加熱調理器1Aは、加熱炉20の開放部21を覆う蓋部材を備えていてもよい。そして、被加熱物の種類に応じて、蓋部材を用いた加熱調理を行うようにしてもよい。例えば、熱が通りにくい食材を加熱調理する場合、効率的に被加熱物を加熱するために、加熱炉20の開放部21を蓋部材により覆った状態にて加熱調理する。
【0040】
なお、被加熱物を載置する部材は、網目構造を有する網部材4に限定されず、加熱炉20の開放部21、または開放部21よりも下側の位置に被加熱物を支持できる支持部材であれば特に限定されない。例えば、被加熱物を支持する支持部材として、トレイ等が挙げられる。
【0041】
網部材4は、網目構造により加熱炉20内に満たされた過熱水蒸気に接触するように被加熱物を支持する。それゆえ、被加熱物をムラなく加熱調理することができる。
【0042】
また、図1図3の(a)に示されるように、加熱炉20の側壁23の内面は、底面24に対して傾斜している。より具体的には、加熱炉20の側壁23は、互いに対向する側壁23の内面の間隔が底面24へ向かうに従い狭くなるように構成されている。
【0043】
このような構成とすることにより、過熱水蒸気を蒸気吹出口22から斜め上方へ吹出すことが可能になる。それゆえ、網部材4に載置された被加熱物を下方から加熱調理しやすくすることができる。
【0044】
なお、図1図3の(a)に示された構成では、加熱調理器1Aは、加熱炉20の側壁23の内面にのみ蒸気吹出口22が設けられていた。しかし、蒸気吹出口22は、加熱炉20において、加熱調理過程に被加熱物から滴下された油脂または汁を避けるように配置されていればよい。
【0045】
図3の(b)は、図1図3の(a)に示された構成と異なる、蒸気吹出口22の配置の一例を模式的に示した平面図である。図3の(b)に示されるように、蒸気吹出口22は、加熱炉20の底面24に設けられていてもよい。蒸気吹出口22は、底面24において、網部材4の底面41と重複する領域よりも外周側に設けられていることが好ましい。
【0046】
加熱調理過程に被加熱物からでた油脂または汁は、加熱炉20の底面24において、網部材4の底面41と重複する領域に滴下され得る。図3の(b)に示された構成によれば、蒸気吹出口22は、底面24において、網部材4の底面41と重複する領域よりも外周側に設けられているので、油脂または汁が加熱されて発煙することを防止することができる。
【0047】
なお、加熱炉20の底面24には、加熱調理過程に被加熱物からでた油脂または汁を受ける受け皿25が設置されていてもよい。この受け皿25は、加熱炉20における蒸気吹出口22形成部分以外の部分に設けられている。また、受け皿25は、加熱炉20から取り外し可能である。
【0048】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図5図8に基づいて説明すれば、以下のとおりである。図5は、本実施形態に係る加熱調理器1Bの構成を示す斜視図である。また、図6は、加熱調理器1B内部の構成を示す斜視図である。また、図7は、加熱調理器1Bの構成を示す断面図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0049】
図5図7に示されるように、本実施形態に係る加熱調理器1Bは、加熱炉20Bの形状が実施形態1と異なる。本実施形態に係る加熱調理器1Bでは、加熱炉20Bは、上部に開放部21Bを有する凹部形状の容器であり、長方形型の容器の形態となっている。そして、蒸気吹出口22は、加熱炉20Bの4つの側壁23Bのうち長方形型の長辺を含む2つの側壁23Bそれぞれの内面に設けられている。
【0050】
蒸気吹出口22を介して加熱炉20Bへ供給する飽和水蒸気または過熱水蒸気を発生させる蒸気発生部30は、2つ設けられている。そして、これら2つの蒸気発生部30は、加熱炉20Bを構成する4つの側壁23Bのうち、長方形型の長辺を含む2つの側壁23Bそれぞれの外面に設けられている。
【0051】
網部材4Bは、加熱炉20Bにおける開放部21Bを有する上部に適合する容器の形態となっている。すなわち、長方形型の容器の形態となっている。
【0052】
また、給水部50Bは、蒸気発生部30に対応して2つ設けられている。そして、給水部50Bは蒸気発生部30に接続した給水チューブ51Bを備えており、蒸気発生部30へ水を供給するようになっている。
【0053】
また、加熱炉20B、蒸気発生部30、及び給水部50Bは、筺体6Bに収容されている。筺体6Bは、長方形の底面を有する四角柱形状である。
【0054】
このように、本実施形態に係る加熱調理器1Bは、加熱炉20Bが上部に開放部21Bを有する凹部形状の容器であり、長方形型の容器の形態となっている。また、蒸気吹出口22は、加熱炉20Bの対向する2つの側壁23Bの内面に設けられている。このような形状の加熱炉20Bを有する加熱調理器1Bは、例えば焼き鳥等の串物の加熱調理に適している。それゆえ、加熱炉20Bの寸法は、串物の寸法に応じて設定され得る。
【0055】
また、図5図7に示されている構成では、蒸気吹出口22は、加熱炉20Bの対向する2つの側壁23Bの内面に設けられていた。しかし、蒸気吹出口22の位置は、加熱炉20Bの寸法、網部材4Bにおける被加熱物が載置される底面の寸法等に応じて適宜設定可能である。網部材4Bにおける被加熱物が載置される底面の寸法が比較的大きく、加熱調理器1Bが一度に多くの被加熱物を加熱調理可能な構成である場合、蒸気吹出口22は、加熱炉20Bの底面24Bに設けられていることが好ましい。
【0056】
網部材4Bに載置された被加熱物と蒸気吹出口22との距離が近いほど、被加熱物を効率的に加熱調理することができる。網部材4Bにおける被加熱物が載置される底面の寸法が比較的大きい場合、網部材4Bに載置された個々の被加熱物と蒸気吹出口22との距離が不均一であると被加熱物毎に加熱状況を不均一になる。蒸気吹出口22が加熱炉20Bの底面24Bに設けられている場合、網部材4Bに載置された個々の被加熱物と蒸気吹出口22との距離は均一であるので、均一に加熱調理することができる。
【0057】
さらに、蒸気吹出口22が加熱炉20Bの底面24Bに設けられている場合、図8に示されるように、蒸気吹出口22は、加熱炉20Bの底面24Bにおける外周領域に設けられていることが好ましい。図8は、本実施形態に係る加熱調理器1Bの別の変形例を示し、加熱炉20Bの底面24Bに蒸気吹出口22が形成された構成を模式的に示す平面図である。
【0058】
被加熱物として例えば焼き鳥等の串物を網部材4Bに載置して加熱調理する場合、加熱調理過程に被加熱物からでた油脂または汁は、加熱炉20Bの底面24Bにおける網部材4Bの底面41Bと重複する領域に滴下する。図8に示される構成では、熱源となる蒸気吹出口22は底面24Bにおける網部材4Bの底面41Bと重複する領域よりも外周側の領域に設けられている。それゆえ、加熱調理過程に被加熱物からでた油脂または汁が滴下しても、これら油脂または汁が加熱されて発煙することを防止することができる。
【0059】
なお、加熱炉20Bの底面24Bには、加熱調理過程に被加熱物からでた油脂または汁を受ける受け皿25Bが設置されていてもよい。この受け皿25Bは、加熱炉20Bの底面24Bに形成された蒸気吹出口22を避けて設けられている。また、受け皿25Bは、加熱炉20Bから取り外し可能である。
【0060】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、図9図11に基づいて説明すれば、以下のとおりである。図9は、本実施形態に係る加熱調理器1Cの構成を示す斜視図である。また、図10は、加熱調理器1C内部の構成を示す斜視図である。また、図11は、加熱調理器1Cの構成を示す断面図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0061】
図9図11に示されるように、本実施形態に係る加熱調理器1Cは、加熱炉20Cの形状が実施形態1または2と異なる。本実施形態に係る加熱調理器1Cでは、加熱炉20Bは、上部に開放部21Cを有する凹部形状の容器であり、円筒型の容器の形態となっている。そして、蒸気吹出口22は、加熱炉20Cの円筒部分を構成する側壁23Cの外面に設けられている。
【0062】
蒸気吹出口22を介して加熱炉20Cへ供給する飽和水蒸気または過熱水蒸気を発生させる蒸気発生部30は、4つ設けられている。これら4つの蒸気発生部30は、加熱炉20Cの円筒型の側壁23Cの外面に設けられており、円筒型の側壁23Cを直交する4方向から囲むように配置されている。
【0063】
網部材4Cは、加熱炉20Cにおける開放部21Cを有する上部に適合する容器の形態となっている。すなわち、円筒型の容器の形態となっている。
【0064】
また、給水部50Cは、蒸気発生部30に対応して4つ設けられている。そして、給水部50Cは蒸気発生部30に接続した給水チューブ51Cを備えており、蒸気発生部30へ水を供給するようになっている。
【0065】
また、加熱炉20C、蒸気発生部30、及び給水部50Cは、筺体6Cに収容されている。筺体6Cは、円形の底面を有する円柱形状である。
【0066】
本実施形態に係る加熱調理器1Cは、実施形態1と同様に、加熱調理中に容易に被加熱物を操作しつつ、過熱水蒸気を用いて加熱調理することが可能である。
【0067】
また、加熱炉20Cには、加熱調理過程に被加熱物からでた油脂または汁を受ける受け皿25Cが設置されていてもよい。この受け皿25Cは、加熱炉20Cの底面24Cから離間している。このように底面24Cと受け皿25Cとが離間していることによって、側壁23Cに形成された蒸気吹出口22から吹き出す過熱水蒸気の熱が加熱炉20Cの底面24Cに伝わることを抑制する断熱効果がある。
【0068】
なお、受け皿25Cは、蒸気吹出口22形成部分以外の部分に設けられていればよく、実施形態1及び2と同様に、加熱炉20Cの底面24Cに接触して設置されていてもよい。
【0069】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る加熱調理器1Aは、加熱炉20と、前記加熱炉20に供給する水蒸気を発生する蒸気発生部30と、を備え、前記加熱炉20は上部に開放部21を有し、前記加熱炉20の内面に蒸気吹出口22が設けられている構成である。
【0070】
上記の構成によれば、加熱炉20の内面に蒸気吹出口22が設けられているので、加熱炉20内の空間は、蒸気吹出口22から吹き出した水蒸気により満たされる。それゆえ、加熱炉20内に載置された被加熱物は、蒸気吹出口22から吹き出した水蒸気により加熱調理される。このように、上記の構成によれば、水蒸気を使用して加熱調理しているので、被加熱物から水分が蒸発して乾燥するのを抑制することができる。それゆえ、被加熱物を、適度の水分を保持したしっとりとした仕上がりに調理することができる。
【0071】
また、上記の構成によれば、加熱炉20は、上部に開放部21を有しているので、被加熱物は、開放部21を介して、裏返す、あるいは移動させることが可能である。それゆえ、上記の構成によれば、水蒸気により加熱された被加熱物を加熱状況に応じて容易に操作することができる。
【0072】
以上より、上記の構成によれば、加熱調理中に容易に被加熱物を操作しつつ、水蒸気を用いて加熱調理することができる。
【0073】
本発明の態様2に係る加熱調理器1Aは、上記態様1において、前記蒸気吹出口22は、前記加熱炉20の内側面(側壁23の内面)に設けられている構成であってもよい。
【0074】
上記の構成によれば、底面に熱源となる蒸気吹出口22が設けられていない。それゆえ、上記の構成によれば、加熱調理過程に被加熱物からでた油脂または汁が加熱炉20の底面に滴下しても、これら油脂または汁が加熱されて発煙することを防止することができる。
【0075】
本発明の態様3に係る加熱調理器1Aは、上記態様1または2において、被加熱物を支持する支持部材(網部材4)を備え、前記蒸気吹出口22は、少なくとも前記支持部材よりも下方に設けられている構成である。
【0076】
上記の構成によれば、蒸気吹出口22は、少なくとも前記支持部材よりも下方に設けられているので、前記加熱炉20における少なくとも前記支持部材よりも下の空間は、蒸気吹出口22から吹き出した水蒸気により満たされる。それゆえ、より効率的に、被加熱物を加熱調理することができる。
【0077】
本発明の態様4に係る加熱調理器1Aは、上記態様3において、前記支持部材は、前記水蒸気に接触するように被加熱物を支持する網部材4であることが好ましい。
【0078】
上記の構成によれば、前記支持部材は、前記水蒸気に接触するように被加熱物を支持する網部材4であるので、被加熱物をムラなく加熱調理することができる。
【0079】
本発明の態様5に係る加熱調理器1Bは、上記態様1または2において、前記蒸気吹出口22は、前記加熱炉20Bの底面24Bに設けられている構成であってもよい。
【0080】
上記の構成によれば、個々の被加熱物と蒸気吹出口22との距離は均一である。それゆえ、例えば加熱調理器1Bが一度に多くの被加熱物を加熱調理可能な構成である場合、被加熱物を均一に加熱調理することができる。
【0081】
本発明の態様6に係る加熱調理器1Bは、上記態様5において、前記蒸気吹出口22は、前記加熱炉20Bの底面24Bにおける外周領域に設けられていることが好ましい。
【0082】
上記の構成によれば、前記蒸気吹出口22は、油脂または汁の発煙の原因となる底面24Bの中央領域に設けられていない。それゆえ、加熱調理過程に被加熱物からでた油脂または汁が滴下しても、これら油脂または汁が加熱されて発煙することを防止することができる。
【0083】
特に、本発明の態様7に係る加熱調理器1Bは、上記態様4において、前記蒸気吹出口22は、前記加熱炉20Bの底面24Bにおける網部材4Bの底面41Bと重複する領域よりも外側の領域に設けられていることが好ましい。
【0084】
網部材4に被加熱物を載置して加熱調理する場合、加熱調理過程に被加熱物からでた油脂または汁は、加熱炉20の底面24における網部材4Bの底面41Bと重複する領域に滴下する。上記の構成によれば、熱源となる蒸気吹出口22は底面24Bにおける網部材4Bの底面41Bと重複する領域よりも外周側の領域に設けられているので、加熱調理過程に被加熱物からでた油脂または汁が滴下しても、これら油脂または汁が加熱されて発煙することを防止することができる。
【0085】
本発明の態様8に係る加熱調理器1Aは、上記態様1〜7において、前記蒸気発生部30は、飽和水蒸気と過熱水蒸気との発生を切り替えることができる構成であってもよい。
【0086】
上記の構成によれば、過熱水蒸気を用いた加熱調理、及び飽和水蒸気を用いた蒸し調理の両方を行うことができる。
【0087】
本発明の態様9に係る加熱調理器1Aは、上記態様8において、前記蒸気発生部30は、水を加熱し飽和水蒸気を発生する第1の加熱ヒータ(蒸気発生用ヒータ31)と、前記飽和水蒸気を加熱し過熱水蒸気を発生する第2の加熱ヒータ(過熱水蒸気発生用ヒータ32)と、前記第1の加熱ヒータおよび第2の加熱ヒータを内部に収容する筐体33と、前記第1及び第2の加熱ヒータのオン/オフを独立して切り替える切替部35と、を備えた構成であってもよい。
【0088】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【実施例】
【0089】
図1図3に示された加熱調理器1Aを用いて、様々な食材(被加熱物)を加熱調理した。以下に、加熱調理した食材、及び加熱時間を順に示す。
・玉ねぎスライス(1cm)→加熱時間4分(裏返しなし)
*ステンレス製のフタあり。裏面にコゲもなく、蒸したような仕上がりとなった。
・かぼちゃ1cm→加熱時間5分(裏返しなし)
*ステンレス製のフタあり。
・冷凍うなぎ蒲焼の再加熱(タレ付き)→加熱時間3分(裏返しなし)
*ステンレス製のフタあり。
・牛バラ肉→加熱時間2分(裏返しあり:表面1分 裏面1分)
*油落ちなし。
・牛バラ肉スライス→加熱時間2分(裏返しなし)
*ステンレス製のフタあり。
・牛ロース→加熱時間4分(裏返しあり:表面2分 裏面2分)
・牛モモ赤身→加熱時間3分(裏返しあり:表面1.5分 裏面1.5分)
このように、本発明の加熱調理器を用いて、様々な食材の加熱調理が可能である。また、フタを取り付けることにより加熱時間が大幅に短縮された。
【符号の説明】
【0090】
1A、1B、1C 加熱調理器
4、4B、4C 網部材(支持部材)
20、20B、20C 加熱炉
21、21B、21C 開放部
22 蒸気吹出口
23、23B、23C 側壁
24、24B 底面
30 蒸気発生部
31 蒸気発生用ヒータ(第1の加熱ヒータ)
32 過熱水蒸気発生用ヒータ(第2の加熱ヒータ)
33 筐体
35 切替部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11