【実施例】
【0025】
図1に示す本発明の軒先支持材1の第1実施例は、横葺き屋根構造の水下側に軒先構造を形成するものであって、軒天化粧材を兼ねる裏面側型材3の先端に、前記軒先化粧材1Bを裏面から支持する上面側型材2がヒンジ構造Hを介して回動可能に取り付けられている。なお、この軒先支持材1の取付対象は、どのような下地構造でもよく、鉄骨下地、RC下地、垂木等の支持材を配設したものでもよい。
【0026】
前記上面側型材2は、この第1実施例では、別部材の軒先化粧材1Bを裏面側から支持する部材であって、屋根材4の裏面に配設される支持材(垂木)5aの軒端に延設状に取り付けられている。そして、裏面側型材3の先端に、ヒンジ構造Hを介して回動可能に取り付けられている。
この上面側型材2には、
図1(c)に示すように軒先化粧材1Bを受支する面板部21を有し、軒先化粧材1Bを取り付けるための取付受部22,23が軒端及び棟側にそれぞれ設けられ、その棟端には前記支持材(垂木)5aの軒端への取付部25が断面略コ字状に設けられている。そして、この上面側型材2の裏面側には、ヒンジ構造Hを形成する略円弧状の軸受部27が設けられている。なお、この軸受部27が設けられる面板部21は、やや裏面側へ陥没状に(凹部211)形成されている。
なお、前記面板部21は、屋根材4と同様の傾斜勾配を備える水上部分とそれを更に下方へ傾斜した水下部分とからなり、前記軒端の取付受部22は、傾斜状下向き片の下端を指し、前記棟側の取付受部23は、面板部21から立ち上がって軒側へ傾斜する折れ片状の取付片24の水下側の隅部を指す。また、前記取付部25は、面板部21の裏面側に略L字状片26を設けて断面略コ状の空間を形成している。
【0027】
前記上面側型材2の表面側に取り付けられている軒先化粧材1Bは、前記上面側型材2の面板部に受支される化粧面11の軒端に、前記上面側型材2の取付受部22に係合状に取り付けられる折返し部である取付部12を有し、その棟端には、最も水下側に位置する屋根材4Zの水下側成形部42に保持される保持部13を有する。なお、最も水下側に位置する屋根材4の水下側成形部42は、前記上面側型材2の取付片24に係合状に取り付けられるが、その取付の際に下面側に保持部13を押圧状に保持している。
【0028】
前記裏面側型材3は、この第1実施例では、化粧面31を備える軒天化粧材を兼ねるものであって、その軒先側の先端には、前記上面側型材2がヒンジ構造Hを介して回動可能に取り付けられている。
この裏面側型材3には、
図1(b)に示すように前記化粧面31が略水平状の平坦面状であって、その表面側の軒端には、ヒンジ構造Hを形成する中空円筒状の軸部32が設けられている。また、この化粧面31の他方側には、直角状に立ち上がる起立状片33と、該起立状片33から外方へ延在する横片34,35とが設けられ、この横片34,35間に側方が開放された係止溝部36が形成されている。
【0029】
そして、前述のように前記上面側型材2と前記裏面側型材3はヒンジ構造Hを介して回動可能に取り付けられているが、略L字状の係止部材1Cにより、両型材2,3間の拡開角度を維持する構成である。
この係止部材1Cは、縦片14の下端に横片15が形成された構成であり、該横片15が前記裏面側型材3に設けられた係止溝部36に係止され、前記縦片14の上端が前記上面側型材2の面板部21と略L字状片26との隅部に係止されるので、両型材2,3間の拡開角度は維持されるものとなる。
【0030】
なお、この第1実施例における前記軒先支持材1の取付対象である横葺き屋根構造は、略ハット状の支持材(垂木)5a上に取り付けられた保持材(吊子)5bにより横葺き屋根材4が保持される構成であって、面板部41の水下側に水下成形部42、水上側に水上成形部43が形成され、これらの成形部42,43は保持部材5bを介して係合保持される構成である。なお、最軒端に位置する屋根材のみに符号4Zを付して他の位置の屋根材4と区別した。
【0031】
また、これらの屋根材4にて形成される横葺き屋根構造は、屋根面の傾斜勾配に沿うように躯体6aが配設され、該躯体6aには略水平状に延在する天井母屋6bが一体的に組み付けられ、前記躯体6aには前記屋根材4を支持する支持材5aが取り付けられ、前記天井母屋6bには、天井材6cが吊設状に配設されて略水平状の天井面を形成している。なお、図中、6dは前記天井材6cと前記裏面側型材3との間を覆う接続用化粧材であって、シール材6eと共に一体的に形成されるので、前記横葺き屋根構造の内部や形成した軒先構造の内部が室内側から露出することがない。
【0032】
このような構成を有する
図1(a)の軒先構造は、以下の手順にて施工することができる。
施工に際し、予め上面側型材2に裏面側型材3をヒンジ構造Hを介して回動可能に取り付けておいた状態で、前述のように断面略コ字状に形成した取付部25を、前記横葺き屋根構造の支持材(垂木)5aの軒端へ嵌合状に取り付け、上方からビス2cを打ち込んで固定する。この上面側型材2の取付に際し、最も水下側に位置する屋根材4の水下側成形部42が、前記上面側型材2の取付片24に係合状に取り付けられるように配設する。
【0033】
次に、前記上面側型材2に回動可能に取り付けておいた裏面側型材3を、略水平状となるように回動させる。それと共に、この裏面側型材3の係止溝部36に係止した係止部材1Cの縦片14の上端を、前記上面側型材2の面板部21と略L字状片26との隅部に係止するように配置させる。この状態で上面側型材2の上方からヒンジ構造Hにビス2bを打ち込むことにより、上面側型材2と裏面側型材3との拡開角度が固定される。
【0034】
その後、前記軒先化粧材1Bの軒端に設けた取付部12を、前記上面側型材2の取付受部22に係合状に取り付けると共に、棟端に設けた保持部13を、最も水下側に位置する屋根材4Zの水下側成形部42の下面側に保持させる(滑り込ませる)。
なお、前記ヒンジ構造Hにビス2bを打ち込む構成は、両部材2,3が分離する事故等を防ぐためには必要であるが、例えば両部材2,3を経年後でも寸法変形をほとんど生じない金属製材等にて形成した場合や軸部32と軸受部27とを十分に深く係合させている場合にはこのビス2bを省略して予め前記上面側型材2の表面に前記軒先化粧材1Bを取り付けておくようにしてもよい。
【0035】
図2(b),(c)は、係止部材1Cが異なる以外は前記第1実施例と同様に施工される軒先構造であって、比較のために前記第1実施例については同図(a)にも示した。
そして、拡開角度が前記第1実施例より小さい
図2(b)に用いた係止部材1Dは、縦片16が傾斜状の短片であり、拡開角度が前記第1実施例より大きい
図2(c)に用いた係止部材1Eは、縦片17が屈折された長片であり、何れの係止部材1D,1Eにおいても裏面側型材3の係止溝部36に係止する横片15は共通の構成である。
これらの
図2(a)〜(c)より明らかなように、予め長さが異なる係止部材1C,1D,1Eを準備することにより、異なる拡開角度に対応させることができる。
【0036】
図2(d)は、前記第1の態様の角度調節機構を示すものであって、上面側型材2'に設けた下向き片28
(架け渡し部)と裏面側型材3'に設けた上向き片37とが対向状に近接するように設け、前記上向き片37の対向面に複数の凹部371を形成すると共に前記下向き片28の対向面に係止凸部281を形成した例である。
なお、図中、282は前記下向き片28に設けた通孔であり、2dは該通孔282に挿着する固定ビスである。
【0037】
また、この
図2(d)における上面側型材2'は、軸受部27'に回動を妨げる規制片271が設けられ、該規制片271が裏面側型材3'の化粧面31に当接するため、図示した以上には拡開角度を狭める方向への回動ができないようにしている。
さらに、この
図2(d)における裏面側型材3'は、軸部32'に前記軸受部27'の回動を防ぐ規制部321が設けられ、所定以上の拡開角度を広げる方向への回動を規制している。
【0038】
この
図2(d)の軒先構造は、前述のようにそれぞれ規制部(片)321,271を備えるので、軸部32'と軸受部27'とで形成されるヒンジ構造Hの回動角度の範囲が制限されたものであり、係止凸部281と凹部371との係合により所望の角度に設定した状態でビス2dを側方から打ち込んで固定することができる。
【0039】
図3に示す本発明の第2実施例の軒先支持材1IIは、前記第1実施例と同様の横葺き屋根構造の水下側に軒先構造を形成するものであって、軒天化粧材を兼ねる裏面側型材3IIの先端に、前記軒先化粧材1Bを裏面から支持する上面側型材2'がヒンジ構造Hを介して回動可能に取り付けられている。
なお、この第2実施例における上面側型材2IIも裏面側型材3IIも、各部位に関して前記第1実施例における上面側型材2や裏面側型材3と共通する箇所は同一符号を付して説明を省略する。特に上面側型材2IIの軸受部27'及び規制片271は、前記
図2(d)と同様であるから、同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
この第2実施例における軒先支持材1IIは、前記第1実施例のように係止部材1Cを用いるものではなく、前記第2の態様の角度調節機構を用いて両型材2II,3IIの拡開角度を調整したものである。即ち裏面側型材3IIにボルト3cの頭部を収納可能な上方が開放する溝部38を形成し、上面側型材2IIには前記ボルト3cを挿通させる通孔281を設け、前記溝部38に頭部を収納したボルト3cをその通孔281に挿通させ、所望の角度にてナット3dを締着する構成を採用した。
なお、図中3eは、裏面側型材3IIと接続用化粧材6dとを連結するビスである。
【0041】
なお、
図3(c)に示すように上面側型材2IIの通孔281は、略平坦状の面板部21に設けられるものではなく、裏面側へ没入する凹部28の隆状底面に形成される長孔である。前記凹部28は、下方が縮径する略鉢状の断面形状を備える。また、裏面側型材3'の溝部38は、略水平状に配設される化粧面31の上面に形成されるので、該溝部38に頭部を収納したボルト3cは略鉛直状に上向きに配設される。そして、略鉛直状に立設されたボルト3cに前記通孔281を挿通させると、
図4(a)〜(c)に示されるようにどのような拡開角度でもナット3dを底面に圧接状に締め付けることができる。
【0042】
図4(b),(c)は、両型材2II,3IIの拡開角度が異なる以外は前記第2実施例と同様に施工される軒先構造であって、比較のために前記第2実施例については同図(a)にも示した。
そして、拡開角度が前記第2実施例より小さい
図4(b)では、短いボルト3csを用いており、拡開角度が前記第2実施例より大きい
図4(c)では、ボルト3c自体は変わらないが、ナットを締め付ける位置が高くなっている。
これらの
図4(a)〜(c)より明らかなように、底面側型材3IIに立設したボルト3cに、上面側型材2IIに形成した通孔281を挿通させることにより、一つの機構(一組の部材)にて任意の拡開角度の調整できる。なお、ここで一組の部材とは、ボルト3cを立設した底面側型材3IIと通孔281を設けた上面側型材2IIとを指すものである。
【0043】
図5に示す本発明の第3実施例の軒先支持材1IIIは、前記第1,第2実施例と同様の横葺き屋根構造の水下側に軒先構造を形成するものであって、軒天化粧材を兼ねる裏面側型材3IIIの先端に、上面側型材2IIIがヒンジ構造Hを介して回動可能に取り付けられている点でも同様である。
この第3実施例における軒先支持材1IIIは、前記第3の態様の角度調節機構を用いて両型材2III,3IIIの拡開角度を調整したものである。即ち前記第2の態様における溝部がヒンジ構造H2を介して回動可能に取り付けられている例である。
【0044】
この第3実施例における裏面側型材3IIIは、
図5(e)に示すように化粧面31の上面側に、前記第2実施例における溝部38に代えてその上部が切り欠かれた円弧状の第二軸受部39を備える構成である。この第二軸受部39には、
図5(g)に示すボルト3cssの頭部を収納可能な上方が開放する溝部71と、その下方に断面円状の棒状体である第二軸部72とを備える溝部材7を回動可能に取り付けられる。
また、この第3実施例における上面側型材2IIIは、
図5(f)に示すように前記第2実施例における下方が縮径する略鉢状の断面形状を備える凹部28に代えて底面に対して両側面が垂直状に立ち上がる枡状凹部29が設けられ、該枡状凹部29の底面に長孔状の通孔291を有する点では同様である。
【0045】
そして、
図5(a),(b),(c),(d)は、その順で両型材2III,3IIIの拡開角度が次第に大きくなる軒先支持材1IIIであって、ヒンジ構造H2の分だけ長いボルトを必要としないため、
図5(a)〜(c)では前記短いボルト3csよりも更に短いボルト3cssを用いた。
これらの各軒先構造では、前述のように裏面側型材3IIIの第二軸受部39に溝部材7の第二軸部72を回動可能に取り付けてヒンジ構造H2とし、前記溝部材7の溝部71にボルト3cssの頭部を収納して先端を上面側型材2IIIに設けた枡状凹部29の底面の通孔291に挿通させたので、
図5(a)〜(d)に示されるようにどのような拡開角度でもナット3dを枡状凹部29の底面に圧接状に締め付けることができる。
【0046】
図6(a)〜(d)に示す第4実施例の軒先支持材1IVは、ヒンジ構造が、前記第1実施例等における軸受部27と軸部32とをスライド状に組み付けて形成されるものではなく、上面側型材2IVの面板部21ivの先端に設けられる軸受部27ivも裏面側型材3IVの化粧面31ivの先端に設けられる軸部32ivも共に略円弧状に形成され、これらを回動させて組み付けて一体化した構造である。
【0047】
まず、
図6(a)に示すように裏面側型材3IVに設けた縦片を金具6fにビス固定した後、固定した裏面側型材3IVの軸部32ivに上面側型材2IVに設けた軸受部27ivを回動させつつ一体化させる。なお、上面側型材2IVの裏面側に設けた下方が開放する溝部には、前記
図2(d)における
架け渡し部(下向き片
28)と同様の作用を果たす
架け渡し材としての調整部材8が別部材として取り付けられている。
次に、
図6(b)に示すように裏面側型材3IVに設けた上向き片32ivに調整部材8を対向状に近接させ、前記上向き片32ivの対向面に設けた凹凸部を前記調整部材8の対向面に設けた凹凸部に噛合状に組み合わせたので、作業者が支える必要がなく微調整を行うことができ、安定に固定作業(ビス打ち)を行うことができる。
【0048】
そうして、
図6(c)に示すように拡開角度が決定したら、ビス8bにて固定すればよいが、この例における前記調整部材8は、前記
図2(d)における下向き片28と違って別部材であるから、上面側型材2IVは通し材であるが、この調整部材8はピース材でもよい。また、同図では、裏面側型材3IVの更に下面側に天井化粧材6Gをビス6hにて固定しているので、裏面側型材3IVもピース材でもよい。但し、
図6(d)に示すように天井化粧材6Gが存在しない態様においては、裏面側型材3IVは通し材となる。
【0049】
図7(a)〜(c)に示す第5実施例の軒先支持材1Vにおける前記第3の態様の角度調節機構は、前記
図5の第3実施例とは異なり、上面側型材2Vに、浅皿状の凹部29vを設け、該凹部29vの底面に通孔を有し、裏面側型材3Vに、上方が開放する椀状の凹部39vを設け、該凹部39vに弾性材9aと共にボルト9bの頭部を収容した態様であり、ボルト9bの頭部は、弾性材9aと共に凹部39の内面を回動することができるため、ヒンジ構造を形成することができる。
そして、この態様においては、
図7(b)に示すようにボルト9bをほぼ一定角度として裏面側型材3Vを傾斜するように角度調整して設定した角度にてナット9cを締着して固定することができる。
【0050】
図7(d)に示す第6実施例の軒先構造は、アルミ押出材にて軒先化粧材1Fを作成した例であり、素材自体に強度を有するため、軒先側の先端には係合溝を形成して上面側型材1VIに係合させ、水上側の先端をビス止め(ビス1g)して上面側型材1VIに固定する構成を採用している。
【0051】
図8(a),(b)に示す第7実施例の軒先支持材1VIIは、前記第2実施例と同様に前記第2の態様の角度調整機構を用いたものであり、上面側型材2VIIに形成する凹部28viiの形状が異なる以外は、裏面側型材3VIIに上方が開放する溝部38を設けて該溝部38内にボルト3cの頭部を収容させ、ナット3dを締着して取り付ける点なども全く同様であるから図面に同一符号を付して説明を省略する。
この第7実施例における裏面側型材3VIIのヒンジ部H3の前方には、下方から見えないようにする化粧部30が設けられている。
【0052】
なお、この第7実施例では、垂木6a及び天井母屋6bの上に横葺き屋根構造(屋根材4)が構築され、
図8(a)の軒先構造では、天井母屋6bの下面に支持材6Iを介して天井材6cが吊設状に配設されて略水平状の天井面を形成し、
図8(b)の軒先構造では、部材6J及び部材6Kにて段状部分が形成され、該段状部分に対して部材6L及び部材6Mを取り付けて軒天構造を形成している。