(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794114
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】圧力駆動式灌流ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20201119BHJP
A61M 1/00 20060101ALI20201119BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20201119BHJP
F04B 43/02 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
A61M5/142 500
A61M1/00 140
A61B18/14
F04B43/02 B
F04B43/02 C
F04B43/02 D
F04B43/02 M
F04B43/02 F
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-18773(P2016-18773)
(22)【出願日】2016年2月3日
(65)【公開番号】特開2016-140766(P2016-140766A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2019年2月1日
(31)【優先権主張番号】14/613,727
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【審査官】
小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04869656(US,A)
【文献】
米国特許第05399166(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0030426(US,A1)
【文献】
米国特許第05342313(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61B 18/14
A61M 1/00
F04B 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療ポンプであって、
医療装置にポンプ輸送される流体の第1及び第2の容器をそれぞれ受容するように構成された、第1及び第2のコンパートメントと、
前記第1のコンパートメントと前記第2のコンパートメントとの間に組み込まれた、パドルと、
前記パドルが前記第1の容器から前記流体をポンプ輸送するように前記第1の容器に圧力を印加する第1の時間と、前記パドルが前記第2の容器から前記流体をポンプ輸送するように前記第2の容器に圧力を印加する第2の時間とを交互に繰り返すよう、前記パドルを駆動するように構成された、制御モジュールと、を備え、
前記医療装置が、組織の切除を行うように構成された切除電極を含むプローブを備え、かつ前記プローブが、前記流体を受け取り、受け取った前記流体を用いて前記切除の間に前記組織を灌流するように構成されている、医療ポンプ。
【請求項2】
前記制御モジュールが、前記パドルの位置を感知し、前記パドルの前記位置に基づいて前記第1の時間と前記第2の時間とを交互に繰り返すよう、前記パドルの回転方向を変更するように構成されている、請求項1に記載の医療ポンプ。
【請求項3】
前記医療ポンプがセンサーを備え、前記センサーは、前記パドルの角度を測定し、測定された前記角度に基づいて前記第1の時間と前記第2の時間とを交互に繰り返すよう、測定された前記角度を前記制御モジュールに送信するように構成されている、請求項1に記載の医療ポンプ。
【請求項4】
前記制御モジュールが、前記第1の容器からの前記流体の流量の減少を感知し、前記流量の減少に基づいて、前記第1の時間と前記第2の時間とを交互に繰り返すよう、前記パドルの回転方向を変更するように構成されている、請求項1に記載の医療ポンプ。
【請求項5】
前記医療ポンプが流量計に連結され、前記流量計が、前記第1及び第2の時間における前記流量の減少を測定し、測定された前記流量の減少を前記制御モジュールに送信するように構成されている、請求項4に記載の医療ポンプ。
【請求項6】
前記第1のコンパートメントが第1の壁と前記パドルとによって形成され、前記第2のコンパートメントが第2の壁と前記パドルとによって形成され、かつ前記パドルが、前記第1の壁と前記第2の壁を画定する平面の接合部によって画定されるヒンジを中心に前記第1の壁と前記第2の壁との間で回転する、請求項1に記載の医療ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ポンプに関し、具体的には、医療用灌流ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
灌流ポンプは、医療用途における低侵襲性手技など広範に装置類に使用されている。先行技術の例を、以下に提示する。
【0003】
参照によりその開示が本明細書に組み込まれるRogozinskiらへのPCT特許公開第WO 2014/030140号は流体移動システムを記述しており、これは、(a)少なくとも2つのインフレータブル物体と、(b)第1と第2のインフレータブル物体の間に置かれた少なくとも1つの状態可変移送導管とを含み、この状態可変導管は開状態では流体を通過させ、閉状態では流体を流さないように構成されている。別の流体移送システムは、(a)入口ポートと、(b)出口ポートと、(c)入口ポートと出口ポートの間に画定された一方向性の主導管と、(d)中間ポートと、(e)中間ポートと主導管との間に画定された、第1の一方向性の弁と第2の一方向性の弁の間で主導管と交差する中間導管と、を含んでおり、主導管が一方向性の流体の流れを画定する。
【0004】
参照によりその開示が本明細書に組み込まれるSibbittらへの米国特許第7,118,554号は注射器装置を記述しており、この注射器装置は、第1の注射器胴体(その遠位端に第1の開口部を含み、その開口部を通じて流体を押し出す又は吸引することが可能である);第1の注射器胴体の開口部を通じて流体を押し出すために第1の注射器胴体の内部を摺動する第1の注射器プランジャー(その遠位端にストッパーを含み、そのストッパーは第1の注射器胴体と密封式かつ摺動式に係合する);第1の注射器の軸方向に平行な軌跡に沿って移動する往復部材;及び第1の注射器プランジャー及び往復部材からなる群のうちの1つの部材が遠位に移動したときにその群のもう一方の部材が近位に移動するように強制される往復部材に第1の注射器プランジャーを接続する往復装置;を含んでいる。
【0005】
参照によりその開示が本明細書に組み込まれるKadanへの米国特許出願公開第2004/0082915(A1)号は、診断的針関節鏡検査を行い、関節区画の内部への単一の入口ポートを通じて洗浄するためのシステムを記述している。このシステムは灌流及び吸引のための弁を有するハンドピース、そのハンドピースに取り付けられた診断カニューレ、で構成されている。このシステムは移動式カートと、カメラと、高解像度モニターと、ハンドピースに灌流流体を送達するために個々に制御される灌流ポンプに動力を供給するエアコンプレッサーと、流体を収集するための真空吸引コンソールと、を含んでいる。
【0006】
参照によりその開示が本明細書に組み込まれるWillisらへの米国特許第8,709,008号は、配備カテーテルと、拡大構成に展開可能に取り付けられた撮像フードと、を含む可視電極切除システムを記述している。使用の際、血液のような不透明の体液で通常は充填されている体腔内の撮像される組織の区域に当接して又は隣接して撮像フードが配置される。生理食塩水のような半透明又は透明の流体がすべての血液を置換して、配備カテーテル内で撮像要素を介して撮像される組織の透き通った区域が残されるまで、かかる流体を撮像フード内にポンプ輸送することができる。その流体を通じて電流を流し、撮像対象組織の区域へと電流が直接流れ、その電気エネルギーが別の分離した切除プローブ又は器具を必要とせずに流体を通じて伝導されるようにして、視認している組織を切除することができる。
【0007】
参照によりその開示が本明細書に組み込まれるGallardoらへの米国特許第2013003426号(A1)は、複数の専用灌流チューブがそれぞれの電極又は電極一式に流体を供給する切除に適合したカテーテルを記述している。それらのチューブは、単極切除又は双極切除を達成し得る灌漑チップ及び/又はリング電極に灌漑流体を送達するカテーテルを貫通する並列流路を提供する。そのような分離した専用の流路は、流体を異なる吐出量で対応する電極又は電極一式に送達することを可能にする。そのようなカテーテルを使用する統合された切除システムは、切除エネルギー源と、互いに独立に動作し得る複数のポンプヘッドを有する灌流ポンプとを有する。流体源とカテーテルの間に延びる統合された灌流チューブ一式が含まれており、各ポンプヘッドは異なるチューブに作用して、流体を異なる電極又は電極一式に送達することができる。
【0008】
参照により本明細書に組み込まれる文書は、いずれかの用語が、それらの組み込まれた文書内で、本明細書で明示的又は暗示的に行われる定義と相反するように定められる場合を除き、本出願の一体部分と見なされるべきであり、本明細書における定義のみが考慮されるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載の本発明の実施形態は、医療装置にポンプ輸送される流体のためのそれぞれの第1及び第2の容器を受容するように構成された第1及び第2のコンパートメントと、第1のコンパートメントと第2のコンパートメントの間に取り付けられたパドルとを含む医療ポンプを提供する。加えてこのポンプは、パドルが第1の容器から流体をポンプ輸送するように前記容器に圧力を印加する第1の時間と、パドルが第2の容器から流体をポンプ輸送するように前記容器に圧力を印加する第2の時間とを交互に繰り返すよう、パドルを駆動するように構成された、制御モジュールと、を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、医療装置は組織の切除を行うように構成された切除電極を含むプローブを含み、このプローブは流体を受け取り、その受け取った流体を用いて切除中に組織を灌流するように構成されている。他の実施形態では、制御モジュールは、パドルの位置を感知し、パドルの位置に基づいて第1の時間と第2の時間とを交互に繰り返すよう、パドルの回転方向を変更するように構成される。更に他の実施形態では、ポンプはセンサーを含み、このセンサーはパドルの角度を測定し、その測定した角度を制御モジュールに送信して、その測定された角度に基づいて第1の時間と第2の時間とを交互に繰り返すように構成される。
【0011】
一実施形態では、制御モジュールは、第1の容器からの流体の流量の減少を感知し、第1の時間と第2の時間とを交互に繰り返すよう、パドルの回転方向を変更するように構成される。別の実施形態では、ポンプは、第1及び第2の時間における流量の減少を測定し、その測定された流量の減少を制御モジュールに送信するように構成された流量計に連結される。また別の実施形態では、第1のコンパートメントは第1の壁とパドルとで形成され、第2のコンパートメントは第2の壁とパドルとで形成され、第1の壁と第2の壁を画定する平面の接合部によって画定されるヒンジを中心に第1の壁と第2との壁の間でパドルが回転する。
【0012】
加えて、本発明の実施形態により、医療装置にポンプ輸送される流体のためのそれぞれの第1の容器及び第2の容器を受容するように構成された第1のコンパートメントと第2のコンパートメントとを提供することを含む方法が提供される。第1のコンパートメントと第2のコンパートメントの間にパドルが組み込まれている。このパドルは、パドルが第1の容器から流体をポンプ輸送するように前記容器に圧力を印加する第1の時間と、パドルが第2の容器から流体をポンプ輸送するように前記容器に圧力を印加する第2の時間とを交互に繰り返すように駆動される。
【0013】
以下の本開示の発明を実施するための形態を、図面と併せ読むことによって、本開示のより深い理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による、低侵襲性の医療システムの概略描写図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、低侵襲性の医療システムの灌流アセンブリの概略描写図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、低侵襲性の医療手技における灌流方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概説
カテーテルなどの医療プローブは、心臓組織の切除など多様な医療手技に用いられている。プローブの遠位端は切除電極を備えることができ、プローブは灌流システムからの流体を受け取り、その受け取った流体を用いて切除中に組織を灌流するように構成されている。典型的には、かかる灌流システムは、流体容器から、遠位端を通じて、組織に灌流流体を運ぶ蠕動灌漑ポンプを備えている。
【0016】
しかしながら、本発明者は、蠕動ポンプが手技中に行われる測定に電気ノイズを導入することを見出した。この電気ノイズは、おそらくは、ポンプに使用されるチューブへの圧力の変化によって生じる圧電効果によって引き起こされる。この圧電電圧はマイクロボルト単位のものであるが、灌流に用いられる流体(例えば生理食塩水)の伝導性の性質がこれらの電圧をカテーテルに転送し、心臓電圧もまたマイクロボルト単位のものであるために、ポンプによって生成された電圧が心臓電圧測定に干渉する。
【0017】
本明細書で説明する、以下の本発明の実施形態は、圧力駆動式灌流ポンプを用いて流体を輸送するための改善された技術を提供する。一実施形態では、ポンプは、2つのコンパートメント(第1及び第2のコンパートメントと呼ばれる)を備えており、それらは、遠位端にポンプ輸送される流体のそれぞれの第1の容器及び第2の容器を受容するように構成され、第1のコンパートメントと第2のコンパートメントとの間にパドルが組み込まれている。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1のコンパートメントは第1の壁とパドルとで形成され、第2のコンパートメントは第2の壁とパドルとで形成され、第1の壁と第2の接合部によって画定されるヒンジを中心に第1の壁と第2の壁との間でパドルが回転する。他の実施形態では、灌流制御モジュールは、パドルが第1の容器から流体をポンプ輸送するように前記容器に圧力を印加する第1の時間と、パドルが第2の容器から流体をポンプ輸送するように前記容器に圧力を印加する第2の時間とを交互に繰り返すよう、典型的にはモーターを用いてパドルを駆動するように構成されている。
【0019】
一実施形態では、制御モジュールは、パドルの位置を感知し、パドルの位置に基づいて第1の時間と第2の時間とを交互に繰り返すよう、パドルの回転方向を変更するように構成されている。別の実施形態では、ポンプは位置センサーを含み、このセンサーはパドルの角度を測定し、その測定した角度を制御モジュールに送信し、その測定された角度に基づいて交互に繰り返しを行うように構成されている。代替実施形態では、ポンプは流量計に連結され、流量計が、第1及び第2の時間における流量の減少を測定し、その測定された流量の減少を制御モジュールに送信し、第1の時間と第2の時間とを交互に繰り返すように構成されている。
【0020】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、低侵襲性の医療システム12の概略描写図である。このシステムは医療専門家14によって行われる手技に使用することができ、例として、システム12はヒト患者18の心臓16の一部の切除手技を含むと仮定する。切除を行うために、医療専門家14は、プローブ20を患者の内腔に挿入し、その結果、プローブの遠位端22が、患者の心臓に入る。遠位端22は、遠位端の外側上に取り付けられた電極24を含み、電極は、心臓のそれぞれの領域に接触する。プローブ20は操作コンソール48に接続された近位端28を有し、かつ、切除手技(切除手技は
図2を参照して説明される)のための灌流流体を提供する、灌流アセンブリ52と並列接続される。
【0021】
灌流アセンブリ52は流体を灌流チューブ86(
図2に図示されている)に送達し、チューブが、切除などの医療手技中に遠位端22に流体を運ぶ。アセンブリ52は、医療手技の灌流の要求に応じて遠位端22への流体の流量を調節するために灌流モジュール56によって制御される。アセンブリ52とモジュール56の機能を以下に説明する。
【0022】
システム12が、システムの操作コンソール48内に設置されるシステムプロセッサ46により制御される。手技中、プロセッサ46が、典型的には、当該技術分野で既知である方法を用いてプローブの遠位端22の位置及び配向を追跡する。例えば、プロセッサ46は、患者18の体外にある磁気送信器が遠位端に位置付けられたコイルで信号を発生させる、磁気追跡方法を使用してもよい。Biosense Webster(カリフォルニア州Diamond Bar)により製造されるCarto(登録商標)システムは、このような追跡方法を使用する。
【0023】
プロセッサ46のソフトウェアは、例えば、ネットワークで、電子的な形でプロセッサにダウンロードすることができる。あるいは又はこれに加えて、このソフトウェアは、光学的、磁気的、又は電子的記憶媒体など、一時的でない有形の媒体上に提供され得る。遠位端22の行路が、典型的に画面62上で患者18の心臓の3次元表示60で表示される。
【0024】
システム12を動作するために、プロセッサ46が、メモリ50、及びシステムを動作するためにプロセッサにより使用される、例えば切除モジュール54,灌流モジュール56並びに追跡モジュール(
図1には示されていないが、これがプロセッサ46によって使用される追跡方法を動作する)などの、複数のモジュールと通信する。切除モジュール54は、例えば、切除手技の使用電力などのパラメータをプロセッサが制御することを可能にする。灌流モジュール56は、例えば、切除中に灌流流体の流量などのパラメータをプロセッサ46が制御することを可能にする。簡潔さのために、ハードウェア要素並びにソフトウェア要素を含むことができる他のモジュールは、
図1では例示されていない。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態による、低侵襲性の医療システム12の灌流アセンブリ52の概略描写図である。
【0026】
灌流アセンブリは灌流ポンプ70を備えている。ポンプは「硬い表紙の本」が開かれたような形状であり、2つの壁(本の2つの「表紙」)と、それらの壁の間に位置するパドル76(本のページに相当する)とによって形成された2つのコンパートメントを備えている。右コンパートメント77は、「硬い表紙の本」の「右表紙」である第1の壁78と、パドル76とによって形成されている。左コンパートメント79は、「硬い表紙の本」の「左表紙」である第2の壁80と、パドル76とによって形成されている。パドルは、壁78及び80を画定する平面の間の接合部(本の「背骨」に相当する)に対して平行なヒンジ81を中心に回転し、モーター(
図2には図示せず)を用いて壁の間を往復する。モーターは灌流モジュール56によって制御され、灌流モジュールはポンプのための制御モジュールとして作用する。ポンプの説明における「右」及び「左」という用語は、純粋にコンパートメントを明確に区別するために使用しているのであって、ポンプが多くの異なる配向で動作し得ることを理解されたい。
【0027】
図2の例で、本明細書で袋とも呼ばれる2つの流体容器は、灌流流体を提供するために右と左のコンパートメントに配置される。容器72は、壁80とパドル76との間の左コンパートメントに配置され、容器74は壁78とパドル76との間の右コンパートメントに配置される。各袋は、灌流流体と、袋の外に流体を導き出す2つの継ぎ手とを含んでいる。第1の対のチューブ82は袋72の継ぎ手に接続され、第2の対のチューブ84は袋74の継ぎ手に接続される。
【0028】
一実施形態では、各袋の2つの継ぎ手は流れの予備のために使用される。それらの継ぎ手の一方が閉塞した場合に、袋のもう一方の継ぎ手が流体をそれぞれのチューブに向かわせる。別の実施形態では、チューブ82及び84の各対を合流させて単一の(より幅広の)チューブにし、流量制御ボックスに接続する。チューブ82はボックス90に接続され、チューブ84はボックス88に接続される。
【0029】
ボックス88は流量計96と弁92を備えている。流量計は、袋74から灌流チューブ86へのチューブ84内の流体の流量を測定する。弁は、「開」状態において袋74から灌流チューブ86への流れを可能にし、「閉」状態では流れを遮断する。同様に、ボックス90は流量計98と弁94を備えている。流量計は袋72から灌流チューブ86へのチューブ84内の流量を測定し、弁94は、「開」状態では袋74から灌流チューブ86への流れを可能にし、「閉」状態では流れを遮断する。いくつかの実施形態では、調整可能な開状態(例えば、高速流では広く開き、ゆっくりした流れでは狭く開く)によって流量を調節する能力を各弁が有している。ボックス88及び90は灌流モジュール56によって制御され、弁は(モジュール56により)自動で又は(医療専門家により)手動で制御可能である。
【0030】
切除手技の前にパドル76を、例えば壁78など一方の壁に向けて回転させる。その結果、左コンパートメント(パドル76と壁80の間)は灌流流体で満たされた新しい袋を受容することができる。したがって、袋72がポンプ70の左コンパートメント内に配置される。この段階では、両方の弁92及び94が閉じており、灌流アセンブリは切除手技の準備ができている。
【0031】
切除手技が開始すると、モジュール56は、第1のコマンドを送信して弁94を開き、第2のコマンドを送信して、パドル76を左方向に回転して袋72を圧縮し、袋72からチューブ82に流体を運ぶために、ポンプのモーターを起動する。この段階で、流体がチューブ82内を流れる(一方、チューブ84は流体を含んでいない)。流量計98は流量を測定し、読み取り値をモジュール56に送信し、それがポンプモーターの力を制御することによって、袋72へのパドル76の圧縮力を調節する。流量計98で必要とされる流量は切除モジュールによって決定され、灌流モジュールはそれに応じて流量(及びしたがって袋72への圧縮力)を設定する。他の実施形態では、ポンプ70のヒンジにてセンサー83を使用してパドル76の角度を測定し、袋72及び74への圧縮を制御することができる。
【0032】
図2に示すように、袋72からほとんどの流体が流れ出ると、(灌流流体で満たされた)袋74の配置のために右コンパートメントが十分に開かれる。袋72がほぼ空になると、センサー及び/又は流量計94がモジュール56にアラームを送信し、それが弁94を閉じ、弁92を開き、袋74の圧縮を始めるためにモーターの方向を逆にする。この段階でチューブ82内で流れが停止し、袋74からの流体がチューブ84内を流れる。モジュール56が、流量計96から流量の読み取り値を、及びヒンジのセンサーから角度読み取り値を受信して、パドル76の角度を制御することによって、及び弁92の開状態の程度を制御することによって、切除手技の吐出量を制御する(通常は専門家14が最大及び最小の吐出量閾値を設定する)。パドル76が右に(壁78に向かって)回転され、充填された袋を包含するために左コンパートメントが十分に開いたら、操作者(又は機械)が空の袋72を引き出し、新しい袋と交換することができる。
【0033】
パドル76の振動は、切除手技中にシステム12の電気ノイズを発生させずに灌流流体の連続した流れを遠位端に運ぶことを可能にする。加えて、このポンプ構造は、切除手技の灌流の仕様に応じて厳しい流量制御によって灌流流体の非制限容量を送達するコンパクトな機構を提供する。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態による、低侵襲性の医療システム12における灌流方法を概略的に示すフローチャートである。この方法は、左袋の配置工程200で左コンパートメントに袋72を配置する工程で始まる。左弁の開放工程202において、モジュール56は、チューブ82を介して袋72から流体が灌流チューブ86に流れるのを可能にするために弁94を開状態に、弁92を閉状態に設定する。左の圧縮工程204において、モジュール56は袋72を圧縮するためにパドル76を左に回転するようにモーターに指示する。左の送達工程206において、チューブ82を通じて灌流流体が袋72から灌流チューブ86へと流れ、吐出量が、流量計98によって監視され、かつパドル76の回転角度測定値によって制御される。
【0035】
第1の決定工程208において、モジュール56は例えばセンサー83を用いてパドルの回転角度を感知することによって袋72がほとんど(例えば95%)空であるかどうかを調べる。吐出量及び他の制御値(パドル76の回転角度など)は制御上限及び下限を有し、それらを超えるとアラームが起動する。値が制御制限範囲内であれば、本方法は圧縮工程204に戻る。それらの値の少なくとも1つ(例えば吐出量又は回転角度測定値)が制御制限を超えると、モジュール56は袋が95%空であるというアラームを発し、本方法は右袋の配置工程210へと続き、そこで操作者又は機械が新しい袋(例えば袋74)をポンプ70の右コンパートメントに配置する。
【0036】
右弁の開放工程212において、モジュール56は、チューブ84を介して袋74から流体が灌流チューブ86に流れるのを可能にするために弁92を開状態に、弁94を閉状態に設定する。右の圧縮工程214において、モジュール56は袋74を圧縮するためにパドル76を右に回転するようにモーターに指示する。右の送達工程216において、チューブ82を通じて灌流流体が袋74から灌流チューブ86へと流れ、吐出量が、流量計96によって監視され、かつパドル76の回転角度測定値によって制御される。
【0037】
第2の決定工程218において、モジュール56は、パドル76の角度を感知することによって、又は流量計96で吐出量を読み取ることによって、袋74がほとんど空かどうかを調べる。弁が制御制限範囲内であれば、本方法は右圧縮工程214に戻り、袋74からの灌流流体をチューブ84に送達し続ける。それらの値の少なくとも1つがそのそれぞれの制御制限を越えたら、本方法は左袋の配置工程200に戻り、操作者又は機械が左コンパートメントに新しい袋(灌流流体で満たされている)を配置して左コンパートメントからの新しい灌流サイクルを始める。
【0038】
フローチャートを観察すると、動作中にポンプが、工程200〜206の時間に相当する第1の時間と工程210〜216の時間に相当する第2の時間とを交互に繰り返すことが示されている。第1の時間中はパドルがコンパートメント79内の容器72に圧力を印加し、したがってこれらの容器から流体をポンプ輸送する。第2の時間中はパドルがコンパートメント77内の容器74に圧力を印加し、それで容器74から流体をポンプ輸送する。
【0039】
上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上に具体的に示し、記載した内容に限定されるものではないということが理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲には、上で説明した様々な特徴の組み合わせと部分的組み合わせの両方、並びにそれらの変形形態及び修正形態が含まれ、これらは、上述の説明を読めば当業者には想到されるであろうものであり、従来技術では開示されていないものである。
【0040】
〔実施の態様〕
(1) 医療ポンプであって、
医療装置にポンプ輸送される流体の第1及び第2の容器をそれぞれ受容するように構成された、第1及び第2のコンパートメントと、
前記第1のコンパートメントと第2のコンパートメントとの間に組み込まれた、パドルと、
前記パドルが前記第1の容器から前記流体をポンプ輸送するように前記第1の容器に圧力を印加する第1の時間と、前記パドルが前記第2の容器から前記流体をポンプ輸送するように前記第2の容器に圧力を印加する第2の時間とを交互に繰り返すよう、前記パドルを駆動するように構成された、制御モジュールと、を備えている、医療ポンプ。
(2) 前記医療装置が、組織の切除を行うように構成された切除電極を含むプローブを備え、かつ前記プローブが、前記流体を受け取り、前記受け取った流体を用いて前記切除の間に前記組織を灌流するように構成されている、実施態様1に記載の医療ポンプ。
(3) 前記制御モジュールが、前記パドルの位置を感知し、前記パドルの前記位置に基づいて前記第1の時間と第2の時間とを交互に繰り返すよう、前記パドルの回転方向を変更するように構成されている、実施態様1に記載の医療ポンプ。
(4) 前記ポンプがセンサーを備え、前記センサーは、前記パドルの角度を測定し、前記測定された角度に基づいて前記第1の時間と第2の時間とを交互に繰り返すよう、前記測定した角度を前記制御モジュールに送信するように構成されている、実施態様1に記載の医療ポンプ。
(5) 前記制御モジュールが、前記第1の容器からの前記流体の流量の減少を感知し、前記流量の減少に基づいて、前記第1の時間と第2の時間とを交互に繰り返すよう、前記パドルの回転方向を変更するように構成されている、実施態様1に記載の医療ポンプ。
【0041】
(6) 前記ポンプが流量計に連結され、前記流量計が、前記第1及び第2の時間における前記流量の減少を測定し、前記測定された流量の減少を前記制御モジュールに送信するように構成されている、実施態様5に記載の医療ポンプ。
(7) 前記第1のコンパートメントが第1の壁と前記パドルとによって形成され、前記第2のコンパートメントが第2の壁と前記パドルとによって形成され、かつ前記パドルが、前記第1の壁と第2の壁を画定する平面の接合部によって画定されるヒンジを中心に前記第1の壁と第2の壁との間で回転する、実施態様1に記載の医療ポンプ。
(8) 医療装置にポンプ輸送される流体の第1及び第2の容器をそれぞれ受容するように構成された、第1及び第2のコンパートメントを提供することと、
前記第1のコンパートメントと第2のコンパートメントとの間にパドルを組み込むことと、
前記パドルが前記第1の容器から前記流体をポンプ輸送するように前記第1の容器に圧力を印加する第1の時間と、前記パドルが前記第2の容器から前記流体をポンプ輸送するように前記第2の容器に圧力を印加する第2の時間とを交互に繰り返すように前記パドルを駆動することと、を含む、方法。
(9) 前記流体をポンプ輸送することが、組織の切除中にポンプ輸送された流体を用いて前記組織を灌流することを含む、実施態様8に記載の方法。
(10) 第1の時間と第2の時間とを交互に繰り返すことが、前記パドルの位置を感知することと、前記パドルの位置に基づいて前記第1の時間と第2の時間とを交互に繰り返すように前記パドルの回転方向を変更することとを含む、実施態様8に記載の方法。
【0042】
(11) 位置を感知することが、前記第1及び第2の時間における前記パドルの角度を測定することと、その測定された角度に基づいて前記第1の時間と第2の時間とを交互に繰り返すように、その測定された角度を、前記パドルを制御している制御モジュールに送信することとを含む、実施態様8に記載の方法。
(12) 前記流体の流量の減少を感知することと、その流量の減少に基づいて前記第1の時間と第2の時間とを交互に繰り返すように前記パドルの回転方向を変更することとを含む、実施態様8に記載の方法。
(13) 位置を感知することが、前記第1及び第2の時間における前記流体の流量の減少を測定することと、前記測定された流量の減少を、前記パドルを制御する制御モジュールに送信することとを含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記第1のコンパートメントが第1の壁と前記パドルとによって形成され、前記第2のコンパートメントが第2の壁と前記パドルとによって形成され、かつ前記パドルが、前記第1の壁と第2の壁を画定する平面の接合部によって画定されるヒンジを中心に前記第1の壁と第2の壁との間で回転する、実施態様8に記載の方法。