【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年7月20日 一般社団法人 日本建築学会発行 2016年度 日本建築学会大会(九州)学術講演梗概集 第649〜650頁にて公開 平成28年7月20日 一般社団法人 日本建築学会発行 2016年度 日本建築学会大会(九州)学術講演梗概集 第651〜652頁にて公開 平成28年8月24日 2016年度 日本建築学会大会(九州)にて公開
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の制振装置では、地震時にオイルダンパに圧縮力が作用した際に、緩衝材も圧縮されて変形する。このためオイルダンパの振動減衰効果が低くなる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して、ダンパーが接合された構造体間の振動伝播を抑制しつつダンパーの振動減衰効果を発揮させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のダンパーの取付構造は、相対移動する構造体の一方に設けられたブラケットと、前記ブラケットを貫通する取付ボルトで前記ブラケットの両側面に対して接離可能に配置された第1挟持板及び第2挟持板と、前記第1挟持板と前記ブラケットの一方の側面の間、及び前記第2挟持板と前記ブラケットの他方の側面の間に挟持された防振部材と、前記第1挟持板と前記ブラケットの一方の側面の間、及び前記第2挟持板と前記ブラケットの他方の側面の間に設けられ、前記防振部材より厚みが小さい支圧板と、前記第1挟持板に一端が固定され、前記構造体の他方に他端が固定されたダンパーと、を有し、
前記ブラケットには、前記第1挟持板と当接し、前記ダンパーの軸方向と直交する方向への前記第1挟持板の変位を規制する規制部材が設けられている。
【0007】
請求項1のダンパーの取付構造によると、相対移動する構造体の一方に設けられたブラケットの両側面に、第1挟持板と第2挟持板とが、ブラケットを貫通する取付ボルトで取付けられている。また、ブラケットと第1挟持板との間、及びブラケットと第2挟持板との間に、防振部材が挟持されている。
【0008】
これにより、ブラケットとダンパーが、防振部材を介して接合される。このため、構造体の一方で発生した微振動は防振部材によって減衰され、ダンパー及び構造体の他方へ伝わりにくい。また、構造体の他方で発生した微振動はダンパーには伝わるが防振部材によって減衰され、構造体の一方へ伝わりにくい。したがって、微振動が構造体間で伝播することを抑制できる。
【0009】
また、ブラケットと第1挟持板の間及びブラケットと第2挟持板の間には、防振部材よりも厚みが小さい支圧板が設けられている。
【0010】
地震時に構造体が変位した場合は、第1挟持板側又は第2挟持板側の防振部材が縮み、支圧板がブラケットと第1挟持板又は第2挟持板とに挟まれる。これにより、地震力が支圧板を介してブラケットからダンパーに伝達され、ダンパーの振動減衰効果を発揮できる。
請求項2のダンパーの取付構造は、前記取付ボルトは、前記第1挟持板の4つの角部を貫通し、前記防振部材は、前記取付ボルトを取り囲む円環状に形成され、前記支圧板は、4辺が前記取付ボルトと対向する正方形状とされている。
【0011】
請求項3のダンパーの取付構造は、相対移動する構造体の一方に設けられた第1ブラケットと、前記第1ブラケットに取付ボルトで前記第1ブラケットの側面に対して接離可能に配置された第1挟持板と、前記第1挟持板と前記第1ブラケットの側面の間に挟持された第1防振部材と、前記第1挟持板と前記第1ブラケットの側面の間に設けられ、前記第1防振部材より厚みが小さい第1支圧板と、前記構造体の他方に設けられた第2ブラケットと、前記第2ブラケットに取付ボルトで前記第2ブラケットの側面に対して接離可能に配置された第2挟持板と、前記第2挟持板と前記第2ブラケットの側面の間に挟持された第2防振部材と、前記第2挟持板と前記第2ブラケットの側面の間に設けられ、前記第2防振部材より厚みが小さい第2支圧板と、前記第1挟持板に一方が固定され、前記第2挟持板に他方が固定されたダンパーと、を有し、
前記第1ブラケットには、前記第1挟持板と当接し、前記ダンパーの軸方向と直交する方向への前記第1挟持板の変位を規制する規制部材が設けられ、前記第2ブラケットには、前記第2挟持板と当接し、前記ダンパーの軸方向と直交する方向への前記第2挟持板の変位を規制する規制部材が設けられている、する。
【0012】
請求項3のダンパーの取付構造によると、相対移動する構造体の一方に設けられた第1ブラケットに第1挟持板が取付ボルトで取付けられている。また、構造体の他方に設けられた第2ブラケットに第2挟持板が取付ボルトで取付けられている。そして、第1ブラケットと第1挟持板との間に第1防振部材が挟持され、第2ブラケットと第2挟持板との間に第2防振部材が挟持されている。
【0013】
これにより、第1ブラケットとダンパーとが、防振部材を介して連結される。また、第2ブラケットとダンパーとが、防振部材を介して連結される。このため、構造体の一方又は他方で発生した微振動は防振部材によって減衰され、ダンパー及び構造体の他方又は一方へ伝わりにくい。したがって、微振動が構造体間で伝播することを抑制できる。
【0014】
また、第1ブラケットと第1挟持板の間には第1防振部材よりも厚みが小さい第1支圧板が設けられ、第2ブラケットと第2挟持板の間には第2防振部材よりも厚みが小さい第2支圧板が設けられている。
【0015】
地震時に構造体が変位し第1防振部材が縮んだ場合、第1支圧板が第1ブラケットと第1挟持板とに挟まれる。これにより、第1ブラケットからの力をダンパーに伝達し、ダンパーの振動減衰効果を発揮できる。
【0016】
また、地震時に構造体が変位し第2防振部材が縮んだ場合、第2支圧板が第2ブラケットと第2挟持板とに挟まれる。これにより、第2ブラケットからの力をダンパーに伝達し、ダンパーの振動減衰効果を発揮できる。
請求項4のダンパーの取付構造は、前記取付ボルトは、前記第1挟持板の4つの角部を貫通し、前記第1防振部材は、前記取付ボルトを取り囲む円環状に形成され、前記第1支圧板は、4辺が前記取付ボルトと対向する正方形状とされている。
【0017】
一態様のダンパーの取付構造は、前記ブラケットには、前記ダンパーの軸方向と直交する方向への前記第1挟持板の変位を規制する規制部材が設けられている。
【0018】
一態様のダンパーの取付構造によると、第1挟持板にダンパーの軸方向に沿った方向以外の方向から力が作用した際に、第1挟持板がダンパーの軸方向と直交する方向へ移動することが規制される。このため、ブラケットと第1挟持板に挟持された防振部材が、軸方向(圧縮方向)と直交する方向(せん断方向)へ変形することが抑制される。このため、防振部材の振動減衰効果を発揮しやすい。
【0019】
なお、「ダンパーの軸方向」とは、ダンパーを設置した時点での部材軸の方向である。また、「ダンパーの軸方向と直交する方向」とは、ダンパーの軸方向と直交する方向を含む方向のことであり、例えばダンパーの軸方向に対して上下左右を含む方向である。さらに、規制部材が規制する変位は、ブラケットに対する第1挟持板の相対変位である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るダンパーの取付構造によると、ダンパーが接合された構造体間の振動伝播を抑制しつつダンパーの振動減衰効果を発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
(ダンパーの取付構造)
図1(A)に示すように、第1実施形態に係るダンパーの取付構造10は、互いに相対移動可能とされた上部構造体12と、下部構造体22との間に設けられる免震機構である。
【0023】
上部構造体12からは下向きにH型鋼のブラケット14が突設され、また、下部構造体22からは上向きにH型鋼のブラケット24が突設されている。これらのブラケット14、24の間には免震装置としてのオイルダンパー30が配置されており、地震時に上部構造体12及び下部構造体22が横方向(
図1(A)の左右方向)に変位した際に、このオイルダンパー30が伸縮することによって、地震動が減衰される。
【0024】
オイルダンパー30のロッドの端部30Aには、鋼製の平板である第1挟持板40Aが固定されており、オイルダンパー30のケーシングの端部30Bは、下部構造体22から突設されたブラケット24に固定されている。
【0025】
(挟持板、防振部材)
図1(A)、(B)に示すように、第1挟持板40Aは、上部構造体12から突設されたブラケット14のフランジ14Aに対向して配置され、第1挟持板40Aとフランジ14Aの間にはゴム製の防振部材50Aが挟持されている。
【0026】
また、ブラケット14におけるフランジ14Bに対向して第2挟持板40Bが配置され、第2挟持板40Bとフランジ14Bの間にはゴム製の防振部材50Bが挟持されている。なお、防振部材50A、50Bはそれぞれコイルばねなどとされていてもよい。
【0027】
第1挟持板40A、フランジ14A、フランジ14B、第2挟持板40Bは、防振部材50A、50Bを挟持した状態でこれらを貫通する取付ボルト60によって一体的に固定されている。取付ボルト60の両端部は第1挟持板40A、第2挟持板40Bから突出し、これらの突出部分にナット51が捩じ込まれている。これにより、第1挟持板40Aとフランジ14Aの間に配置された防振部材50A、第2挟持板40Bとフランジ14Bの間に配置された防振部材50Bがそれぞれ圧縮された状態で配置される。
【0028】
防振部材50A、防振部材50Bは、この状態から更に圧縮することが可能であり、また、圧縮前の状態に戻す(伸ばす)ことが可能である。これにより、第1挟持板40Aとフランジ14Aとは、防振部材50Aを挟持した状態を保ちながら互いに接離可能とされており、また、第2挟持板40Bとフランジ14Bとは、防振部材50Bを挟持した状態を保ちながら互いに接離可能とされている。
【0029】
図2(A)、(B)に示すように、防振部材50A、防振部材50Bはそれぞれ円環状とされており、取付ボルト60が内部を貫通している。
【0030】
(支圧板)
図1(A)、(B)、(C)に示すように、第1挟持板40Aとフランジ14Aの間には、防振部材50Aよりも厚みが小さい鋼製の支圧板70Aが設けられている。支圧板70Aはフランジ14Aに溶接されており、第1挟持板40Aとの間に隙間を空けて配置されている。
【0031】
同様に、第2挟持板40Bとフランジ14Bの間には、防振部材50Bよりも厚みが小さい鋼製の支圧板70Bが設けられている。支圧板70Bはフランジ14Bに溶接されており、第2挟持板40Bとの間に隙間を空けて配置されている。
【0032】
なお、支圧板70Aはオイルダンパー30の芯線CL上に配置されており、
図2(A)に示すように、支圧板70Aの中心位置が、芯線CLが通過する位置と略一致している。支圧板70Aは芯線CLに沿った方向から見て略正方形状とされ、4辺が取付ボルト60と対向する配置とされている。これにより、例えば
図2(A)に2点鎖線で示したように、取付ボルト60を囲繞するように配置された防振部材50Aの直径を大きくしても、防振部材50Aと支圧板70Aとが干渉し難くなっている。
【0033】
また支圧板70Bは、
図2(B)に示すように、芯線CLに沿った方向から見て長方形とされ、上下方向及び横方向に隣接する防振部材50Bの間に配置されている。なお、支圧板70A、70Bは溶接に限らず、皿ネジやボルト、接着剤などを用いてフランジ14A、14Bに固定してもよい。
【0034】
(規制部材)
図1(A)に示すように、フランジ14Aの表面下部には、フランジ14Aの表面から第1挟持板40Aの下方へ向かって突出する鋼製の受け板80が溶接されており、受け板80と第1挟持板40Aとの間には、第1挟持板40Aが下方向(オイルダンパー30の軸方向と直交する鉛直下向き方向)へ移動することを規制するゴム製の鉛直移動規制部材82が設けられている。
【0035】
また、
図1(B)、(C)に示すように、フランジ14Aの表面両側部には、フランジ14Aの表面から第1挟持板40Aの側方へ向かって突出する鋼製の受け板84が溶接されており、受け板84には、
図1(C)に示すように、第1挟持板40Aが横方向(オイルダンパー30の軸方向と直交する水平方向)へ移動することを規制する鋼製の水平移動規制部材86が溶接されている。
【0036】
さらに、受け板84と第1挟持板40Aとの間には、
図1(C)に二点鎖線で示すように、水平移動規制部材86よりも厚みの大きな(厚みt)ゴム製の防振部材87が設けられており、平常時において水平移動規制部材86と第1挟持板40Aとが接触することを抑制している。水平移動規制部材86と防振部材87とは、互いに上下方向の位置をずらして設けられている。
【0037】
なお、
図1(A)においては、ダンパーの取付構造10の立面構造を判り易くするために、受け板84と水平移動規制部材86及び防振部材87の図示を省略している。また、防振部材87及び水平移動規制部材86の構成を説明するため、便宜上
図1(B)においては防振部材87を実線で示し、
図1(C)においては水平移動規制部材86を実線で示している。
【0038】
(作用・効果)
第1実施形態に係るダンパーの取付構造10によると、
図3(A)に示すように、上部構造体12及びブラケット14がオイルダンパー30のロッドを縮ませる方向(
図3(A)の矢印の方向)へ変位すると、ブラケット14のフランジ14Aと第1挟持板40Aとの間に挟持された防振部材50Aが圧縮される。なお、下部構造体22及びブラケット24がオイルダンパー30のロッドを縮ませる方向へ変位しても同様に防振部材50Aが圧縮される。
【0039】
防振部材50Aが圧縮されて支圧板70Aと等しい厚みになると、ブラケット14のフランジ14Aから、支圧板70Aを介して、オイルダンパー30のロッドの端部に固定された第1挟持板40Aへ支圧力が伝達される。
【0040】
支圧板70Aは鋼製とされており、圧縮力を受けても厚みが変化しにくい。このため、フランジ14Aから受ける圧縮力をオイルダンパー30へ伝達することができる。したがって、オイルダンパー30の振動減衰効果を発揮しやすい。また、防振部材50Aが支圧板70Aの厚み以上に圧縮されにくいため、防振部材50Aの破損が抑制される。
【0041】
これに対して例えば支圧板70Aがない場合、フランジ14Aから防振部材50Aを介してオイルダンパー30へ圧縮力が伝達される。このときゴム製とされた防振部材50Aは弾性変形を続けるため、フランジ14Aから受ける圧縮力をオイルダンパー30へ十分に伝達しにくい。したがって、オイルダンパー30の振動減衰効果が低減される。また、防振部材50Aは過剰に圧縮されると、破損する虞がある。
【0042】
また、第1実施形態に係るダンパーの取付構造10によると、
図3(B)に示すように、上部構造体12及びブラケット14がオイルダンパー30を伸ばす方向(
図3(B)の矢印の方向)へ変位すると、ブラケット14のフランジ14Bと第2挟持板40Bとの間に挟持された防振部材50Bが圧縮される。なお、下部構造体22及びブラケット24がオイルダンパー30を伸ばす方向へ変位しても同様に防振部材50Bが圧縮される。
【0043】
防振部材50Bが圧縮されて支圧板70Bと等しい厚みになると、ブラケット14のフランジ14Bから支圧板70Bを介して、第2挟持板40Bへ支圧力が伝達される。この支圧力は、
図3(B)に矢印Nで示したように取付ボルト60に捩じ込まれたナット51を押圧し、このナット51が取付ボルト60を引っ張ることで、矢印Mで示したように、オイルダンパー30の端部に固定された第1挟持板40Aへ引張力が伝達される。
【0044】
支圧板70Bは支圧板70Aと同様に鋼製とされており、圧縮力を受けても厚みが変化しにくい。このため、フランジ14Bから受ける圧縮力を、第2挟持板40B、取付ボルト60、第1挟持板40Aを介してオイルダンパー30へ引張力として伝達することができる。したがって、オイルダンパー30の振動減衰効果を発揮しやすい。また、防振部材50Bは支圧板70Bの厚み以上に圧縮されにくいため、防振部材50Bの破損が抑制される。
【0045】
なお、取付ボルト60は、引張力を受けた際に構造耐力上支障となるような変形を起こさない程度の引張剛性を備えているものとする。
【0046】
なお、第1実施形態においてフランジ14A、14Bに固定された支圧板70A、70Bは鋼製とされているが、本発明の実施形態はこれに限らず、それぞれ防振部材50A、50Bよりも厚みが小さければ、木製やゴム製、これらを組み合わせた材質などとしてもよい。支圧板70A、70Bの厚みが防振部材50A、50Bよりも小さければ、防振部材50A、50Bが圧縮された際に、支圧板70A、70Bがそれぞれ第1挟持板40A、第2挟持板40Bと当接するので、フランジ14A、14Bから第1挟持板40A、第2挟持板40Bへ圧縮力を伝達することができる。また、防振部材50A、50Bが受ける圧縮力が分散されるので、防振部材50A、50Bの損傷を抑制することができる。
【0047】
また、支圧板70A、70Bは、それぞれフランジ14A、14Bではなく、第1挟持板40A、第2挟持板40Bに固定してもよい。このように構成しても、フランジ14A、14Bから第1挟持板40A、第2挟持板40Bへ圧縮力を伝達することができる。
【0048】
また、第1実施形態に係るダンパーの取付構造10によると、
図1(A)に示すように、第1挟持板40Aの下方には、第1挟持板40Aが下方向へ移動することを規制する鉛直移動規制部材82が設けられている。これにより、第1挟持板40Aがオイルダンパー30の自重によって下向きに移動することが規制される。このため、第1挟持板40Aとフランジ14Aとの間に挟持された防振部材50Aが上下方向にせん断変形することが抑制される。
【0049】
さらに、
図1(C)に示すように、フランジ14Aから突設された受け板84には、第1挟持板40Aが横方向へ移動することを規制する水平移動規制部材86が設けられている。これにより、オイルダンパー30が、オイルダンパー30を設置した時点での部材軸方向以外の方向から力を受けた際に、第1挟持板40Aが横向きに移動することが規制される。このため、第1挟持板40Aとフランジ14Aとの間に挟持された防振部材50Aが横方向にせん断変形することが抑制される。
【0050】
したがって、防振部材50Aはオイルダンパー30を設置した時点での部材軸方向以外への変形が規制され、振動減衰効果を発揮しやすい。
【0051】
なお、鉛直移動規制部材82及び水平移動規制部材86は、何れか又は双方を省略することもできる。鉛直移動規制部材82及び水平移動規制部材86の何れか又は双方を省略することで、機構を単純化することができる。この場合、防振部材50Aのせん断変形を抑制するために、鉛直移動規制部材82及び水平移動規制部材86を設ける構成と比較して、取付ボルト60の直径を大きくすると好適である。
【0052】
また、第1実施形態においては、上部構造体12に接合されたブラケット14と、下部構造体22に接合されたブラケット24、オイルダンパー30、第1挟持板40A、取付ボルト60及び第2挟持板40Bとは、直接接触しない非メタルタッチの構成とされている。そして、ブラケット14と第1挟持板40A及び第2挟持板40Bとは、防振部材50A及び防振部材50Bを介して接触している。
【0053】
つまり、上部構造体12と下部構造体22とは、金属的に絶縁され、防振部材50A、50Bを介して接続されている。このため、上部構造体12又は下部構造体22の何れか一方で微振動が発生しても、この微振動は防振部材50A、50Bによって減衰されるため、他方へ伝播しにくい。
【0054】
なお、第1実施形態においては、上部構造体12のブラケット14に対して、第1挟持板40A及び第2挟持板40Bを取付けるものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、下部構造体22のブラケット24に対して、第1挟持板40A及び第2挟持板40Bを取付けるものとしてもよい。このような構成でも、オイルダンパー30は振動減衰効果を発揮できる。
【0055】
また、第1実施形態におけるダンパーの取付構造10は、免震装置としてのオイルダンパー30の取付構造とされているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、オイルダンパー30に代えて鋼製の履歴系ダンパーなどを用いてもよい。つまり、上部構造体12と下部構造体22とが相対的に変位した際に力を受けるダンパーであれば、種類を問わず本実施形態の取付構造を適用することができる。以下に示す第2実施形態についても同様である。
【0056】
また、本実施形態においてブラケット14、24はH型鋼とされているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばI型鋼、C型鋼、平板、コンクリート等としてもよい。
【0057】
[第2実施形態]
第2実施形態に係るダンパーの取付構造20について説明する。なお、第1実施形態に係るダンパーの取付構造10と等しい構成については同じ符号を付し、説明は適宜省略する。第1実施形態に係るダンパーの取付構造10と等しい作用・効果についても同様である。
【0058】
図4(A)に示すように、第2実施形態に係るダンパーの取付構造20においては、オイルダンパー32における一方(ブラケット14側)の端部32Aに、鋼製の平板である第1挟持板40Aが固定されており、オイルダンパー32の他方(ブラケット24側)の端部32Cに、鋼製の平板である第2挟持板40Cが固定されている。
【0059】
図4(A)、(B)に示すように、第1挟持板40Aは、上部構造体12から突設されたブラケット14のフランジ14Aに対向して配置され、第1挟持板40Aとフランジ14Aの間にはゴム製の防振部材50Aが挟持されている。また、ブラケット14におけるフランジ14Bに対向して金属製の当て板80Bが配置されている。
【0060】
第1挟持板40A、フランジ14A、フランジ14B、当て板80Bは、第1挟持板40Aとフランジ14Aとの間に防振部材50Aを挟持した状態でこれらを貫通する取付ボルト62によって一体的に固定されている。取付ボルト62の両端部はそれぞれ第1挟持板40A、当て板80Bから突出し、これらの突出部分にナット51が捩じ込まれている。これにより、第1挟持板40Aとフランジ14Aの間に配置された防振部材50Aが圧縮して配置される。
【0061】
同様に、第2挟持板40Cは、下部構造体22から突設されたブラケット24のフランジ24Cに対向して配置され、第2挟持板40Cとフランジ24Cの間にはゴム製の防振部材50Cが挟持されている。また、ブラケット24におけるフランジ24Dに対向して金属製の当て板80Dが配置されている。なお、当て板80B、80Dの素材は任意とされている。
【0062】
第2挟持板40C、フランジ24C、フランジ24D、当て板80Dは、第2挟持板40Cとフランジ24Cとの間に防振部材50Cを挟持した状態でこれらを貫通する取付ボルト62によって一体的に固定されている。取付ボルト62の両端部はそれぞれ第2挟持板40C、当て板80Dから突出し、これらの突出部分にナット51が捩じ込まれている。これにより、第2挟持板40Cとフランジ24Cの間に配置された防振部材50Cが圧縮して配置される。
【0063】
第2実施形態に係る支圧板70A、70Cはブラケット14、24のフランジ14A、24Cに接合されており、これらの構成は第1実施形態に係る支圧板70Aと同様であり説明は省略する。第2実施形態においてフランジ14A、24Cにそれぞれ形成された受け板80、鉛直移動規制部材82、受け板84、水平移動規制部材86についても、第1実施形態における受け板80、鉛直移動規制部材82、受け板84、水平移動規制部材86と同様の構成とされており、説明は省略する。
【0064】
(作用・効果)
第2実施形態に係るダンパーの取付構造20によると、上部構造体12及びブラケット14と、下部構造体22及びブラケット24とがオイルダンパー32を縮ませる方向(
図4(A)の矢印の方向)へ変位すると、ブラケット14のフランジ14Aと第1挟持板40Aとの間に挟持された防振部材50Aが圧縮される。同様に、ブラケット24のフランジ24Cと第2挟持板40Cとの間に挟持された防振部材50Cが圧縮される。
【0065】
防振部材50Aが圧縮されて支圧板70Aと等しい厚みになると、ブラケット14のフランジ14Aから支圧板70Aを介して、オイルダンパー32の端部に固定された第1挟持板40Aへ支圧力が伝達される。同様に、防振部材50Cが圧縮されて支圧板70Cと等しい厚みになると、ブラケット24のフランジ24Cから支圧板70Cを介して、オイルダンパー30の端部に固定された第2挟持板40Cへ支圧力が伝達される。
【0066】
このため、フランジ14A、24Cから受ける圧縮力をオイルダンパー32へ伝達することができる。したがって、オイルダンパー32の振動減衰効果を発揮しやすい。また、防振部材50A、50Cが支圧板70A、70Cの厚み以上に圧縮されないため、防振部材50A、50Cの破損が抑制される。
【0067】
また、第2実施形態に係るダンパーの取付構造20によると、上部構造体12及びブラケット14と、下部構造体22及びブラケット24とがオイルダンパー32を伸ばす方向(
図4(A)の矢印の方向と逆方向)へ変位すると、ブラケット14のフランジ14Bから当て板80Bへ支圧力が伝達する。この支圧力は、取付ボルト62に捩じ込まれたナット51を押圧し、このナット51が取付ボルト62を引っ張ることで、オイルダンパー30の端部に固定された第1挟持板40Aへ引張力が伝達される。
【0068】
同様に、ブラケット14のフランジ24Dから当て板80Dへ支圧力が伝達する。この支圧力は、取付ボルト62に捩じ込まれたナット51を押圧し、このナット51が取付ボルト62を引っ張ることで、オイルダンパー32の端部に固定された第2挟持板40Cへ引張力が伝達される。これにより、オイルダンパー32の振動減衰効果を発揮しやすい。
【0069】
なお、本実施形態においてはブラケット14におけるフランジ14B及びブラケット24におけるフランジ24Dに、それぞれ金属製の当て板80B、80Dが接しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばフランジ14Bと当て板80Bとの間又はフランジ24Dと当て板80Dとの間に支圧板を介装してもよい。これにより、第1挟持板40Aと支圧板70Aとの間の隙間幅又は第2挟持板40Cと支圧板70Cとの間の隙間幅を調整できる。
【0070】
また、当て板80B、80Dを省略し、ナット51とフランジ14B、ナット51とフランジ24Dを、それぞれ直接当接させてもよい。これにより、部材点数が減り単純な構成となるので、施工性が向上する。