(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0030】
また本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0031】
さらに、実施の形態で用いる図面においては、構造物を区別するために付したハッチング(網掛け)を図面に応じて省略する場合もある。
【0032】
なお、以下の実施の形態においてA〜Bとして範囲を示す場合には、特に明示した場合を除き、A以上B以下を示すものとする。
【0033】
(実施の形態)
<超電導コイル装置>
初めに、本発明の一実施形態である実施の形態の超電導コイル装置について説明する。
図1は、実施の形態の超電導コイル装置の斜視図である。
図2は、実施の形態の超電導コイル装置の分解斜視図である。
図3は、実施の形態の超電導コイル装置の正面図である。
図4は、実施の形態の超電導コイル装置の要部断面図である。
図5は、実施の形態の超電導コイル装置の他の例の正面図である。
図6は、実施の形態の超電導コイル装置の他の例の要部断面図である。なお、
図3乃至
図6は、コイルケースの蓋部を外した状態を示し、
図4は、
図3のA−A線に沿った断面図であり、
図6は、
図5のA−A線に沿った断面図である。さらに、
図2では、理解を簡単にするために、樹脂部を形成する前の状態を示している。
【0034】
図1乃至
図4に示すように、本実施の形態の超電導コイル装置10は、コイルケース20と、超電導コイル30と、2つの電流リード40と、を有する。コイルケース20は、超電導コイル30を収容する収容部である。超電導コイル30は、コイルケース20内、即ち収容部内に収容されている。2つの電流リード40は、超電導コイル30の両端にそれぞれ接続されている。2つの電流リード40の各々は、超電導コイル装置10の外部に引き出されている。
【0035】
また、本実施の形態の超電導コイル装置10は、樹脂部50を有する。樹脂部50は、コイルケース20内に収容された超電導コイル30と、コイルケース20の内壁と、の間に充填された重合体51よりなる。重合体51は、ノルボルネン環構造を有する。即ち、重合体51は、ノルボルネン環構造を有する単量体(モノマー)が重合されてなる重合体、所謂ノルボルネン系樹脂よりなる。なお、重合体51は、超電導コイル30中に、少なくともその一部が含浸されていてもよい。
【0036】
超電導コイル30を有する超電導コイル装置10が、高磁界を発生する超電導磁石として用いられる場合を考える。このような場合、超電導コイル30自身が発生する自己磁界により超電導コイル30に印加される電磁力が、超電導コイル30単体の強度よりも大きくなることがあるため、超電導コイル30を収容するコイルケース20で電磁力を受ける必要がある。
【0037】
また、超電導コイル装置10が、例えば磁気浮上式鉄道におけるリニアモータ等、振動が加えられる用途で用いられる場合を考える。このような場合であって、コイルケース20に収容されている超電導コイル30が、コイルケース20に対して強固に固定されていない場合には、超電導コイル装置10に振動が加えられたときに、コイルケース20に対する超電導コイル30の位置ずれが発生して摩擦による発熱が発生するおそれがある。そしてその結果、超電導コイル30が超電導状態でなくなる、所謂クエンチが発生するおそれがある。
【0038】
そこで、コイルケース20の内壁と超電導コイル30との間に重合体51を充填し、充填された重合体51により、超電導コイル30をコイルケース20に対して強固に固定する必要がある。
【0039】
ここで、重合体51として、エポキシ樹脂を用いる場合を考える。そして、コイルケース20内に超電導コイル30を収容した後、コイルケース20の内壁と超電導コイル30との間に、エポキシ樹脂の原料である重合性組成物52を注入した後、例えば熱処理を行って、注入された重合性組成物52を重合及び硬化、即ち重合硬化させて重合体51を形成する場合を考える。
【0040】
このような場合、製造時には、エポキシよりなる重合体51の原料である重合性組成物52の粘度が高いために、当該重合性組成物52を、コイルケース20の内壁と超電導コイル30との間の部分のうち、幅の狭い隙間に注入することが困難であり、コイルケース20の内壁と超電導コイル30との間のボイド、即ち空隙を無くすことが困難であった。
【0041】
コイルケース20の内壁と超電導コイル30との間にボイドが残されていると、コイルケース20に収容されている超電導コイル30がコイルケース20に対して強固に固定されず、超電導コイル装置10に振動が加えられたときに、コイルケース20に対する超電導コイル30の位置ずれが発生して摩擦による発熱が発生することにより、クエンチが発生するおそれがある。
【0042】
また、エポキシよりなる重合体51を用いる場合、低温における重合体51の靭性の幅が広く、靭性が低くならないように調整することが困難である。従って、使用時には、低温における重合体51の靭性が低くなり、超電導コイル装置10を冷却する際に例えば重合体51が収縮することによって超電導コイル30に応力が加えられるか、又は、超電導コイル装置10を超電導磁石として動作させる際に超電導コイル装置10に振動が加えられることにより、重合体51よりなる樹脂部50にボイド又はクラックが発生するおそれがある。
【0043】
重合体51よりなる樹脂部50にボイド又はクラックが発生すると、コイルケース20に収容されている超電導コイル30がコイルケース20に対して強固に固定されず、超電導コイル装置10に振動が加えられたときに、コイルケース20に対する超電導コイル30の位置ずれが発生して摩擦による発熱が発生することにより、クエンチが発生するおそれがある。
【0044】
一方、本実施の形態では、重合体51として、ノルボルネン環構造を有する重合体(ノルボルネン系樹脂)を用いる。ノルボルネン環構造を有する重合体51の原料である重合性組成物52は、ノルボルネン環構造を有する環状炭化水素を含有する。また、ノルボルネン環構造を有する重合体51の原料である重合性組成物52の25℃での粘度は、例えば100mPa・s以下であり、エポキシよりなる重合体51の原料である重合性組成物52の粘度に比べ、極めて低い。
【0045】
そのため、製造時には、コイルケース20内に超電導コイル30を収容した後、コイルケース20の内壁と超電導コイル30との間に重合性組成物52を注入した場合でも、コイルケース20の内壁と超電導コイル30との間の部分のうち、幅の狭い隙間にも重合性組成物52を容易に注入することができるので、コイルケース20の内壁と超電導コイル30との間のボイド、即ち空隙を容易に無くすことができる。
【0046】
また、重合体51としてノルボルネン環構造を有する重合体を用いる場合、低温における重合体51の靭性がエポキシよりなる樹脂組成物の靭性よりも高くなるように、容易に調整することができる。
【0047】
そのため、使用時には、超電導コイル装置10を冷却する際に例えば重合体51が収縮することによって超電導コイル30に応力が加えられた場合でも、或いは、超電導コイル装置10を超電導磁石として動作させる際に超電導コイル装置10に振動が加えられた場合でも、重合体51よりなる樹脂部50にボイド又はクラックが発生すること、即ち樹脂部50が割れることを防止又は抑制することができる。従って、コイルケース20に収容されている超電導コイル30をコイルケース20に対してより強固に固定することができるので、コイルケース20に対する超電導コイル30の位置ずれが発生して摩擦による発熱が発生することを防止又は抑制することができ、クエンチが発生することを防止又は抑制することができる。
【0048】
即ち、本実施の形態の超電導コイル装置によれば、製造時に、コイルケース20の内壁と超電導コイル30との隙間に重合体51の原料を容易に注入でき、且つ、使用時に、重合体51よりなる樹脂部50にボイド又はクラックが発生することを防止又は抑制できる。なお、ノルボルネン環構造を有する重合体51の詳細については、後述する。
【0049】
コイルケース20の構造は特に限定されないが、好適には、コイルケース20は、容器本体部21と、蓋部22と、を含む。容器本体部21は、凹部23を有する。容器本体部21は、主面24を有し、凹部23は、主面24に形成され、蓋部22は、凹部23を塞ぐ。
【0050】
互いに交差、好適には直交する3つの方向を、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向とする。そして、容器本体部21が、主面24を有し、主面24が、X軸方向及びZ軸方向に沿い、Y軸方向と交差するものとする。例えば、本実施の形態の超電導コイル装置10が磁気浮上式鉄道の車両に設けられる車上コイルとして用いられる場合、X軸方向を浮上式鉄道における車両の進行方向とし、Y軸方向を磁気浮上式鉄道における車両の幅方向とし、Z軸方向を鉛直方向とすることができる。一方、超電導コイル装置10の製造工程においては、Y軸方向を鉛直方向とし、X軸方向及びZ軸方向に沿った主面24を水平面とすることができる。
【0051】
コイルケース20が容器本体部21と蓋部22とを有し、容器本体部21の主面24がY軸方向と交差し、主面24に凹部23が形成されていることにより、凹部23内に超電導コイル30を収容した後、凹部23内に重合性組成物52を容易に注入することができ、凹部23の内壁と超電導コイル30との間を重合体51よりなる樹脂部50により容易に充填することができる。なお、以下では、コイルケース20が凹部23を有する場合を例示して説明する。
【0052】
コイルケース20の材質は特に限定されないが、好適には、コイルケース20が有する容器本体部21及び蓋部22の各々は、アルミニウム合金、ステンレス鋼又はガラス繊維強化プラスチック(Glass Fiber Reinforced Plastics:GFRP)よりなる。容器本体部21及び蓋部22の各々が、アルミニウム合金よりなる場合、熱伝導性及び軽量性に優れる。容器本体部21及び蓋部22の各々が、ステンレス鋼よりなる場合、熱伝導性及び機械的強度に優れる。容器本体部21及び蓋部22の各々が、GFRPよりなる場合、機械的強度に優れる。なお、容器本体部21及び蓋部22の各々の材質が異なってもよい。
【0053】
超電導コイル30の形状は特に限定されないが、
図2に示すように、好適には、超電導コイル30は、Y軸方向に沿った巻回軸としての軸AX1の周りに超電導線材がレーストラック状に巻回されてなる。超電導コイル30は、直線部LP1及び直線部LP2と、曲線部CP1及びCP2と、を含む。直線部LP1及び直線部LP2は、X軸方向に沿ってそれぞれ延在し、且つ、軸AX1を挟んで互いに対向配置されている。曲線部CP1は、直線部LP1のX軸方向における第1の側(
図2におけるX軸方向の矢印の向きと反対側)の端部EP11と、直線部LP2のX軸方向における第1の側の端部EP21と、を接続する。曲線部CP2は、直線部LP1のX軸方向における第1の側と反対側(
図2におけるX軸方向の矢印の向きと同じ側)の端部EP12と、直線部LP2のX軸方向における第1の側と反対側の端部EP22と、を接続する。
【0054】
これにより、例えば超電導コイル装置10が磁気浮上式鉄道の車上コイルとして用いられる場合において、直線部LP1と直線部LP2とに挟まれた部分では、超電導コイル30が発生する磁界の強度の車両の進行方向における均一性を高めることができる。
【0055】
また、超電導線材がレーストラック状に巻回されてなる場合には、超電導線材が円状に巻回されてなる場合に比べ、超電導コイル30の表面積が大きくなる場合がある。また、前述したように、エポキシよりなる重合体51の原料である重合性組成物52の粘度は、高い。そのため、重合体51としてエポキシを用いる場合には、コイルケース20内にエポキシの原料である重合性組成物52を貯留した後、貯留された重合性組成物52内に超電導コイル30を浸漬させてコイルケース20内に収容しなくてはならず、超電導コイル30の表面を重合性組成物52で完全に覆うことは、困難である。また、コイルケース20内に超電導コイル30を収容した後、コイルケース20内にエポキシの原料である重合性組成物52を注入する場合には、超電導コイル30の表面を重合性組成物52で完全に覆うことは、さらに困難である。
【0056】
一方、ノルボルネン環構造を有する重合体51の原料である重合性組成物52は、エポキシよりなる重合体51の原料である重合性組成物52の粘度よりも低い。従って、超電導線材がレーストラック状に巻回されてなる場合には、超電導線材が円状に巻回されてなる場合に比べ、前述したような、コイルケース20の内壁と超電導コイル30との隙間に重合体51の原料を容易に注入でき、重合体51よりなる樹脂部50にボイド又はクラックが発生することを、防止又は抑制できる効果が、より大きくなる。
【0057】
好適には、超電導コイル30は、複数のパンケーキコイル31を含む。複数のパンケーキコイル31は、Y軸方向に沿った巻回軸としての軸AX1の周りに超電導線材がそれぞれ渦巻き状に巻回されてなり、コイルケース20内、即ち凹部23内でY軸方向、即ち軸AX1に沿った方向に積層され、且つ、直列に接続されている。また、超電導線材として、例えば、イットリウムバリウム銅酸化物(YBa
2Cu
3O
7:YBCO)又はガドリニウムバリウム銅酸化物(GdBa
2Cu
3O
7:GdBCO)等を含む希土類バリウム銅酸化物(REBa
2Cu
3O
7:REBCO)等の高温超電導材料よりなるテープ状の超電導線材を用いることができる。
【0058】
このような場合、高温超電導材料よりなるテープ状の超電導線材が渦巻き状に巻回されたパンケーキコイル31を複数積層することにより、超電導コイル30を形成することができる。従って、例えばニオブチタン(NbTi)等の低温超電導材料よりなる超電導コイルを用いる場合に比べて、高温で超電導磁石として動作させることができ、動作時に冷凍機等を運転するために必要な消費電力を低減することができる。
【0059】
具体的には、複数のパンケーキコイル31の各々は、軸AX1の周りにレーストラック状に巻回されており、直線部LP3及び直線部LP4と、曲線部CP3及び曲線部CP4と、を含む。直線部LP3及び直線部LP4は、X軸方向に沿ってそれぞれ延在し、且つ、軸AX1を挟んで互いに対向配置されている。曲線部CP3は、直線部LP3のX軸方向における第1の側(
図2におけるX軸方向の矢印の向きと反対側)の端部EP31と、直線部LP4のX軸方向における第1の側の端部EP41と、を接続する。曲線部CP4は、直線部LP3のX軸方向における第1の側と反対側(
図2におけるX軸方向の矢印の向きと同じ側)の端部EP32と、直線部LP4のX軸方向における第1の側と反対側の端部EP42と、を接続する。
【0060】
複数のパンケーキコイル31の各々がそれぞれ有する複数の直線部LP3がY軸方向に積層され、積層された複数の直線部LP3により、超電導コイル30の直線部LP1が形成されている。複数のパンケーキコイル31の各々がそれぞれ有する複数の直線部LP4がY軸方向に積層され、積層された複数の直線部LP4により、超電導コイル30の直線部LP2が形成されている。複数のパンケーキコイル31の各々がそれぞれ有する複数の曲線部CP3がY軸方向に積層され、積層された複数の曲線部CP3により、超電導コイル30の曲線部CP1が形成されている。複数のパンケーキコイル31の各々がそれぞれ有する複数の曲線部CP4がY軸方向に積層され、積層された複数の曲線部CP4により、超電導コイル30の曲線部CP2が形成されている。
【0061】
図3及び
図4に示すように、1個のパンケーキコイル31が、1層のパンケーキコイルよりなるもの、即ちシングルパンケーキコイルであり、内側電極32と、外側電極33と、を含む場合を考える。また、
図3及び
図4に示すように、容器本体部21に形成された凹部23内に、凹部23の底部側から主面24側に向かって順に、1層目、2層目、3層目及び4層目の4個のパンケーキコイル31が積層されている場合を考える。なお、
図4では、理解を簡単にするために、4個のパンケーキコイル31が積層されている場合を例示しているが、パンケーキコイル31の積層数は限定されず、任意の複数個のパンケーキコイル31を積層することができる。
【0062】
このような場合、
図4に示すように、超電導コイル30の両端とそれぞれ電気的に接続される2個の電流リード40のうち、一方の電流リード40が、1層目のパンケーキコイル31の外側電極33と電気的に接続され、他方の電流リード40が、4層目のパンケーキコイル31の外側電極33と電気的に接続されている。1層目のパンケーキコイル31の内側電極32が、接続部材41を介して、2層目のパンケーキコイル31の内側電極32と電気的に接続されている。2層目のパンケーキコイル31の外側電極33が、接続部材42を介して、3層目のパンケーキコイル31の外側電極33と電気的に接続されている。3層目のパンケーキコイル31の内側電極32が、接続部材41を介して、4層目のパンケーキコイル31の内側電極32と電気的に接続されている。なお、同様にして、さらに1個以上のパンケーキコイル31を積層することができる。
【0063】
或いは、
図5及び
図6に示すように、1個のパンケーキコイル31が、上層及び下層の2層のパンケーキコイルが積層されてなるもの、即ちダブルパンケーキコイルであり、上層及び下層の2個の外側電極34及び35を含む場合を考える。また、
図5及び
図6に示すように、容器本体部21の主面24に形成された凹部23内に、凹部23の底部側から主面24側に向かって順に、1層目、2層目、3層目及び4層目の4個のパンケーキコイル31が積層されている場合を考える。なお、
図6では、理解を簡単にするために、4個のパンケーキコイル31が積層されている場合を例示しているが、パンケーキコイル31の積層数は限定されず、任意の複数個のパンケーキコイル31を積層することができる。また、
図6において、Y軸方向における第2の側(
図6におけるY軸方向の矢印の向きと同じ側)を上側と称し、Y軸方向における第2の側と反対側(
図6におけるY軸方向の矢印の向きと反対側)を下側と称する。
【0064】
このような場合、
図6に示すように、超電導コイル30の両端とそれぞれ電気的に接続される2つの電流リード40のうち、一方の電流リード40が、1層目のパンケーキコイル31の下層の外側電極34と電気的に接続され、他方の電流リード40が、4層目のパンケーキコイル31の上層の外側電極35と電気的に接続されている。1層目のパンケーキコイル31の上層の外側電極35が、接続部材43を介して、2層目のパンケーキコイル31の下層の外側電極34と電気的に接続されている。2層目のパンケーキコイル31の上層の外側電極35が、接続部材43を介して、3層目のパンケーキコイル31の下層の外側電極34と電気的に接続されている。3層目のパンケーキコイル31の上層の外側電極35が、接続部材43を介して、4層目のパンケーキコイル31の下層の外側電極34と電気的に接続されている。なお、同様にして、さらに1個以上のパンケーキコイル31を積層することができる。
【0065】
なお、本実施の形態では、超電導コイル装置10が、積層された複数のパンケーキコイル31を含む超電導コイル30を有するものである場合を例示して説明した。しかし、超電導コイル装置10が、超電導線材が一体的又は連続的に巻回されてなる超電導コイル30を有するものであってもよい。
【0066】
<重合体及び重合性組成物>
次に、本実施の形態の超電導コイル装置において、コイルケースの内壁と超電導コイルとの間に充填されている重合体、及び、その重合体を形成するための原料としての重合性組成物、の好適な組成について説明する。
【0067】
前述したように、本実施の形態の超電導コイル装置10において、コイルケース20の凹部23の内壁と超電導コイル30との間に充填された重合体51は、ノルボルネン環構造を有する。即ち、コイルケース20の凹部23の内壁と超電導コイル30との間に充填された重合体51は、所謂ノルボルネン系樹脂よりなる。
【0068】
本願明細書におけるノルボルネン系樹脂とは、ノルボルネン環構造を有する1種類の単量体(モノマー)が重合されてなる重合体(ポリマー)、又は、ノルボルネン環構造を有する複数種類の単量体(モノマー)が重合されてなる共重合体(コポリマー)を意味する。言い換えれば、本願明細書におけるノルボルネン系樹脂とは、1種類のノルボルネン系モノマーが重合されてなる重合体、又は、複数種類のノルボルネン系モノマーが重合されてなる共重合体を意味する。従って、コイルケース20の凹部23の内壁と超電導コイル30との間に充填された重合体51は、ノルボルネン系樹脂であればよく、特に限定されるものではない。
【0069】
しかし、本実施の形態の超電導コイル装置10を、品質安定性により優れたものとする観点からは、ノルボルネン系樹脂よりなる重合体51として、ノルボルネン系モノマー及びメタセシス重合触媒を含有する重合性組成物52が塊状重合により重合硬化されてなる重合体を用いることが、好ましい。また、重合性組成物52としては、ノルボルネン系モノマー及びメタセシス重合触媒を含有するものであればよく、特に限定されるものではない。しかし、増粘が抑制されコイルケース20の凹部23の内壁と超電導コイル30との間に充填しやすいことから、以下に記載するノルボルネン系モノマーと触媒液とを含有するものを用いることが、好ましい。
【0070】
ノルボルネン系モノマー、即ちノルボルネン環構造を有する単量体として、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体;ジシクロペンタジエン(シクロペンタジエン二量体)、ジヒドロジシクロペンタジエン等の三環体;テトラシクロドデセン等の四環体;シクロペンタジエン三量体等の五環体;シクロペンタジエン四量体等の七環体;等を挙げることができる。これらのノルボルネン系モノマーは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;エチリデン基等のアルキリデン基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;等の置換基を有してもよい。さらに、これらのノルボルネン系モノマーは、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、オキシ基、シアノ基、ハロゲン原子等の極性基を有してもよい。
【0071】
このようなノルボルネン系モノマーの具体例としては、ジシクロペンタジエン(DCPD)、トリシクロペンタジエン(TCPD)、シクロペンタジエン−メチルシクロペンタジエン共二量体、5−エチリデンノルボルネン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−シクロヘキセニルノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4−メタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロナフタレン、エチレンビス(5−ノルボルネン)等が挙げられる。ノルボルネン系モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
上記ノルボルネン系モノマーのうち、入手が容易であり、反応性に優れ、得られるノルボルネン系樹脂の耐熱性に優れる点から、三環体、四環体又は五環体のノルボルネン系モノマーが好ましく、三環体のノルボルネン系モノマーがより好ましく、ジシクロペンタジエンが特に好ましい。
【0073】
なお、重合体が、ノルボルネン環構造を有するか否かは、例えば核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)を用いて分析することができる。
【0074】
好適には、重合体51は、ノルボルネン環構造を有する第1モノマーと、ノルボルネン環構造を有し、且つ、第1モノマーの種類と異なる種類の第2モノマーと、が重合、即ち共重合されてなる共重合体よりなる。ここで、第1モノマーは、ジシクロペンタジエンよりなる。第2モノマーは、前記一般式(1)で示される化合物の1種以上よりなり、好ましくはノルボルネン、テトラシクロドデセン、5−エチリデンノルボルネン及び8−エチリデンテトラシクロドデセンからなる群から選択された1種以上よりなる。
【0075】
なお、前記一般式(1)において、R
1とR
2又はR
3とR
4が共同して形成するアルキリデン基の例としては、メチリデン基(=CH
2)、エチリデン基(=CH−CH
3)、及びプロピリデン基(=CH−C
2H
5)等が挙げられる。またR
1〜R
4がそれぞれ独立して形成するアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が、アリール基としてはフェニル基、2−ナフチル基等が、シクロアルキル基としてはシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0076】
重合体51が上記した種類の第1モノマーと上記した種類の第2モノマーとが重合されてなる場合、重合体51がそれ以外の種類のモノマーが重合されてなる場合に比べ、超電導コイル装置10の製造時に、重合性組成物52が硬化する際の収縮量が小さくなる。そのため、重合性組成物52の硬化後に、当該硬化に起因して超電導コイル30又は重合体51よりなる樹脂部50に印加される応力が小さくなり、重合性組成物52の重合硬化後に、重合体51よりなる樹脂部50にボイド又はクラックが発生すること、即ち樹脂部50が割れることを、防止又は抑制することができる。また、超電導コイル装置10の使用時に、超電導コイル装置10を冷却する際に超電導コイル30又は重合体51よりなる樹脂部50に印加される応力も小さくなるため、超電導コイル装置10の使用時に、重合体51よりなる樹脂部50にボイド又はクラックが発生すること、即ち樹脂部50が割れることを、防止又は抑制する効果が、より大きくなる。
【0077】
より好適には、重合体51の原料として用いられる重合性組成物52における第1モノマーの含有量と重合性組成物52における第2モノマーの含有量との合計を100質量部としたとき、重合性組成物52における第2モノマーの含有量が4質量部以上である。即ち、重合性組成物52における第1モノマーの含有量が96質量部以下である。
【0078】
重合性組成物52における第2モノマーの含有量が4質量部以上の場合、重合性組成物52における第2モノマーの含有量が4質量部未満の場合に比べ、超電導コイル装置10の製造時に、重合性組成物52が硬化する際、過剰の架橋が抑えられ収縮量がより小さくなる。そのため、重合性組成物52の重合硬化後に、当該硬化に起因して超電導コイル30又は重合体51よりなる樹脂部50に印加される応力がより小さくなり、重合性組成物52の硬化後に、重合体51よりなる樹脂部50にボイド又はクラックが発生すること、即ち樹脂部50が割れることを、より防止又はより抑制することができる。また、超電導コイル装置10の使用時に、超電導コイル装置10を冷却する際に超電導コイル30又は重合体51よりなる樹脂部50に印加される応力もより小さくなるため、超電導コイル装置10の使用時に、重合体51よりなる樹脂部50にクラックが発生すること、即ち樹脂部50が割れることを、防止又は抑制する効果が、さらにより大きくなる。かかる第2モノマーの含有量は好ましくは5質量部以上45質量部以下であり、さらに好ましくは6質量部以上40質量部以下である。
【0079】
但し好適には、重合性組成物52における第1モノマーの含有量と重合性組成物52における第2モノマーの含有量との合計を100質量部としたとき、重合性組成物52における第2モノマーの含有量が50質量部以下である。即ち、重合性組成物52における第1モノマーの含有量が50質量部以上である。さらに好適には、第2モノマーの含有量は5質量部以上45質量部以下であり、またさらに好適には、第2モノマーの含有量は6質量部以上40質量部以下である。
【0080】
重合性組成物52における第2モノマーの含有量が50質量部以下の場合、重合性組成物52における第2モノマーの含有量が50質量部を超える場合に比べ、超電導コイル装置10の製造時に、重合性組成物52が重合硬化する際に、架橋により化学構造上安定であるより好ましい重合硬化物を与える。
【0081】
なお、重合体51が、第1モノマーと第2モノマーとが重合されてなるものであること、及び、重合体51における第1モノマー及び第2モノマーの含有量については、重合体51について、例えばNMRによる分析を行って測定することができる。
【0082】
前述したように、重合性組成物52は、メタセシス重合触媒系の触媒成分を含有することが好ましい。メタセシス重合触媒は、ノルボルネン系モノマーを開環重合できるものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0083】
本発明に用いられるメタセシス重合触媒は、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオン及び/又は化合物が結合してなる錯体である。遷移金属原子としては、第5、6及び8族(長周期型周期表、以下同様)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、第5族の原子としては、たとえばタンタルが挙げられ、第6族の原子としては、例えば、モリブデンやタングステンが挙げられ、第8族の原子としては、例えば、ルテニウムやオスミウムが挙げられる。これら遷移金属原子の中でも、第8族のルテニウムやオスミウムが好ましい。すなわち、本発明に使用されるメタセシス重合触媒としては、ルテニウム又はオスミウムを中心原子とする錯体が好ましく、ルテニウムを中心原子とする錯体がより好ましい。ルテニウムを中心原子とする錯体としては、カルベン化合物がルテニウムに配位してなるルテニウムカルベン錯体が好ましい。ここで、「カルベン化合物」とは、メチレン遊離基を有する化合物の総称であり、(>C:)で表されるような電荷のない2価の炭素原子(カルベン炭素)を持つ化合物をいう。ルテニウムカルベン錯体は、塊状開環重合時の触媒活性に優れるため、得られる重合体には未反応のモノマーに由来する臭気が少なく、生産性良く良質な重合体が得られる。また、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくいので、大気下でも使用可能である。メタセシス重合触媒は、一種類のみを使用してもよく、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
【0084】
ルテニウムカルベン錯体としては、下記一般式(2)又は一般式(3)で表されるものが挙げられる。
【0086】
上記一般式(2)及び一般式(3)において、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基;であり、これらの基は、置換基を有していてもよく、また、互いに結合して環を形成していてもよい。R
5及びR
6が互いに結合して環を形成した例としては、フェニルインデニリデン基等の、置換基を有していてもよいインデニリデン基が挙げられる。
【0087】
ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数2〜20のアルキニルオキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、カルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数1〜20のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜20のアルキルスルホン酸基、炭素数6〜20のアリールスルホン酸基、ホスホン酸基、炭素数6〜20のアリールホスホン酸基、炭素数1〜20のアルキルアンモニウム基、及び炭素数6〜20のアリールアンモニウム基等を挙げることができる。これらの、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、及び炭素数6〜10のアリール基等を挙げることができる。
【0088】
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、任意のアニオン性配位子を示す。アニオン性配位子とは、中心金属原子から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、例えば、ハロゲン原子、ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、カルボキシル基等を挙げることができる。
【0089】
L
1及びL
2は、ヘテロ原子含有カルベン化合物又はヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物を表す。ヘテロ原子含有カルベン化合物及びヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物は、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ化合物である。触媒活性向上の観点からヘテロ原子含有カルベン化合物が好ましい。ヘテロ原子とは、周期律表第15族及び第16族の原子を意味し、具体的には、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ヒ素原子、及びセレン原子等を挙げることができる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、窒素原子、酸素原子、リン原子、及び硫黄原子が好ましく、窒素原子がより好ましい。
【0090】
前記ヘテロ原子含有カルベン化合物としては、下記一般式(4)又は一般式(5)で示される化合物が好ましく、触媒活性向上の観点から、下記一般式(4)で示される化合物がさらに好ましい。
【0092】
上記一般式(4)及び一般式(5)中、R
7、R
8、R
9及びR
10は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20個の有機基;を表す。ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例は、上記一般式(2)及び一般式(3)の場合と同様である。また、R
7、R
8、R
9及びR
10は任意の組合せで互いに結合して環を形成していてもよい。
【0093】
なお、本発明の効果がより一層顕著になることから、R
9及びR
10が水素原子であることが好ましい。また、R
7及びR
8は、置換基を有していてもよいアリール基が好ましく、置換基として炭素数1〜10のアルキル基を有するフェニル基がより好ましく、メシチル基がさらに好ましい。
【0094】
前記中性電子供与性化合物としては、例えば、酸素原子、水、カルボニル類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、ホスフィナイト類、ホスファイト類、スルホキシド類、チオエーテル類、アミド類、イミン類、芳香族類、環状ジオレフィン類、オレフィン類、イソシアニド類、及びチオシアネート類等が挙げられる。
【0095】
上記一般式(2)及び一般式(3)において、R
5、R
6、X
1、X
2、L
1及びL
2は、それぞれ単独で、及び/又は任意の組合せで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成してもよい。
【0096】
また、本発明で用いるルテニウムカルベン錯体としては、上記一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物の中でも、本発明の効果がより顕著になるという点より、上記一般式(2)で表される化合物が好ましく、中でも、以下に示す一般式(6)又は一般式(7)で表される化合物であることがより好ましい。
【0099】
上記一般式(6)中、Zは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、NR
16、PR
16又はAsR
16であり、R
16は、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基;であるが、本発明の効果がより一層顕著になることから、Zとしては酸素原子が好ましい。
【0100】
なお、R
5、R
6、X
1及びL
1は、上記一般式(2)及び一般式(3)の場合と同様であり、それぞれ単独で、及び/又は任意の組み合わせで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成してもよいが、X
1及びL
1が多座キレート化配位子を形成せず、且つ、R
5及びR
6は互いに結合して環を形成していることが好ましく、置換基を有していてもよいインデニリデン基であることがより好ましく、フェニルインデニリデン基であることがさらに好ましい。また、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子又は珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、上記一般式(2)及び一般式(3)の場合と同様である。
【0101】
上記一般式(6)中、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のヘテロアリール基で、これらの基は、置換基を有していてもよく、また、互いに結合して環を形成していてもよい。置換基の例としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数6〜10のアリール基を挙げることができ、環を形成する場合の環は、芳香環、脂環及びヘテロ環のいずれであってもよいが、芳香環を形成することが好ましく、炭素数6〜20の芳香環を形成することがより好ましく、炭素数6〜10の芳香環を形成することがさらに好ましい。
【0102】
上記一般式(6)中、R
13、R
14及びR
15は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基;であり、これらの基は、置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。また、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、上記一般式(2)及び一般式(3)の場合と同様である。R
13、R
14及びR
15は、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましい。
【0103】
なお、上記一般式(6)で表わされる化合物の具体例及びその製造方法としては、例えば、国際公開第2003/062253号(特表2005−515260号公報)に記載のもの等が挙げられる。
【0106】
上記一般式(7)中、mは、0又は1である。mは1が好ましく、その場合、Qは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、メチレン基、エチレン基又はカルボニル基であり、好ましくはメチレン基である。
【0107】
【化6】
は、単結合又は二重結合であり、好ましくは単結合である。
【0108】
R
5、X
1、X
2及びL
1は、上記一般式(2)及び一般式(3)の場合と同様であり、それぞれ単独で、及び/又は任意の組み合わせで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成してもよいが、X
1、X
2及びL
1が多座キレート化配位子を形成せず、且つ、R
5は水素原子であることが好ましい。
【0109】
R
17〜R
25は、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基;であり、これらの基は、置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。また、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子又は珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、上記一般式(2)及び一般式(3)の場合と同様である。
【0110】
R
17は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、R
18〜R
21は、好ましくは水素原子であり、R
22〜R
25は、好ましくは水素原子又はハロゲン原子である。
【0111】
なお、上記一般式(7)で表わされる化合物の具体例及びその製造方法としては、例えば、国際公開第2011/079799号(特表2013−516392号公報)に記載のもの等が挙げられる。
【0112】
また、上記一般式(2)で表される化合物としては、上記一般式(6)又は一般式(7)で表される化合物のほか、以下の化合物(8)も好適に用いることができる。化合物(8)において、PCy
3はトリシクロヘキシルホスフィンを示し、Mesはメシチル基を示す。
【0114】
メタセシス重合触媒の含有量は、反応に使用する全モノマー1モルに対して、好ましくは0.005ミリモル以上であり、より好ましくは0.01〜50ミリモル、さらに好ましくは0.015〜20ミリモルである。
【0115】
重合性組成物には、その重合硬化後に得られる重合体とそれ以外のものとの密着性を向上させる観点から、ラジカル発生剤、ジイソシアネート化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物、及びその他の任意成分が、必要に応じて含まれていてもよい。
【0116】
重合性組成物におけるラジカル発生剤の量としては、使用する全モノマー100質量部に対して、通常、0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、ジアゾ化合物および非極性ラジカル発生剤が挙げられる。例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシドなどのジアルキルペルオキシド類;ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、1,3−ジ(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのペルオキシケタール類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナートなどのペルオキシカルボナート類;t−ブチルトリメチルシリルペルオキシドなどのアルキルシリルペルオキサシド;などの有機過酸化物、4,4'−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサノン、4,4'−ジアジドカルコン、2,6−ビス(4'−アジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4'−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4'−ジアジドジフェニルスルホン、4,4'−ジアジドジフェニルメタン、2,2'−ジアジドスチルベンなどのジアゾ化合物、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジフェニルブタン、1,4−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2,2−テトラフェニルエタン、2,2,3,3−テトラフェニルブタン、3,3,4,4−テトラフェニルヘキサン、1,1,2−トリフェニルプロパン、1,1,2−トリフェニルエタン、トリフェニルメタン、1,1,1−トリフェニルエタン、1,1,1−トリフェニルプロパン、1,1,1−トリフェニルブタン、1,1,1−トリフェニルペンタン、1,1,1−トリフェニル−2−プロペン、1,1,1−トリフェニル−4−ペンテン、1,1,1−トリフェニル−2−フェニルエタンなどの非極性ラジカル発生剤が挙げられる。
【0117】
重合性組成物へのジイソシアネート化合物の配合量は、使用する全モノマー100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部、さらに好ましくは2〜10質量部である。ジイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’−ジイソシアン酸メチレンジフェニル(MDI)、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネート、及び4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート化合物;メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、及び1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、及び水添XDIなどの脂環式ジイソシアネート化合物;などや、これらのジイソシアネート化合物と低分子量のポリオールやポリアミンを、末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマー;などが挙げられる。
【0118】
重合性組成物への多官能アクリレート化合物の配合量は、使用する全モノマー100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部、さらに好ましくは2〜10質量部である。多官能アクリレート化合物としてエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート及びネオペンチルグリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0119】
その他の任意成分としては、活性剤、活性調節剤、エラストマー、酸化防止剤等が挙げられる。
【0120】
活性剤は、上述したメタセシス重合触媒の共触媒として作用し、該触媒の重合活性を向上させる化合物である。活性剤としては、例えば、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド等のアルキルアルミニウムハライド;これらのアルキルアルミニウムハライドの、アルキル基の一部をアルコキシ基で置換したアルコキシアルキルアルミニウムハライド;有機スズ化合物等が用いられる。活性剤の使用量は、特に限定されないが、通常、重合性組成物で使用する全メタセシス重合触媒1モルに対して、0.1〜100モルが好ましく、より好ましくは1〜10モルである。
【0121】
活性調節剤は、2以上の反応原液を混合して重合性組成物を調製し、型内に注入して重合を開始させる際に、注入途中で重合が開始することを防止するために用いられる。
【0122】
メタセシス重合触媒として周期表第5族又は第6族の遷移金属の化合物を用いる場合の活性調節剤としては、メタセシス重合触媒を還元する作用を持つ化合物等が挙げられ、アルコール類、ハロアルコール類、エステル類、エーテル類、ニトリル類等を用いることができる。中でもアルコール類及びハロアルコール類が好ましく、ハロアルコール類がより好ましい。
【0123】
アルコール類の具体例としては、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。ハロアルコール類の具体例としては、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、2−クロロエタノール、1−クロロブタノール等が挙げられる。
【0124】
メタセシス重合触媒として、特にルテニウムカルベン錯体を用いる場合の活性調節剤としては、ルイス塩基化合物が挙げられる。ルイス塩基化合物としては、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイト、n−ブチルホスフィン等のリン原子を含むルイス塩基化合物;n−ブチルアミン、ピリジン、4−ビニルピリジン、アセトニトリル、エチレンジアミン、N−ベンジリデンメチルアミン、ピラジン、ピペリジン、イミダゾール等の窒素原子を含むルイス塩基化合物等が挙げられる。また、ビニルノルボルネン、プロペニルノルボルネン及びイソプロペニルノルボルネン等の、アルケニル基で置換されたノルボルネンは、モノマーとして機能すると同時に、活性調節剤としても働く。これらの活性調節剤の使用量は、用いる化合物によって適宜調整すればよい。
【0125】
エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及びこれらの水素化物等が挙げられる。エラストマーを重合性組成物に溶解させて用いることにより、その粘度を調節することができる。また、エラストマーを添加することで、得られる重合体の耐衝撃性を改良できる。エラストマーの使用量は、重合性組成物中の全モノマー100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは2〜10質量部である。
【0126】
酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、アミン系等の各種のプラスチック・ゴム用酸化防止剤が挙げられる。
【0127】
また、重合性組成物は、任意成分として、重合性組成物の粘度が後述の好適な範囲内でフィラーを含有してもよい。フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、アスペクト比が5〜100の繊維状充填材や、アスペクト比が1〜2の粒子状充填材が挙げられる。また、繊維状充填材と粒子状充填材とを組み合わせて用いることもできる。
【0128】
繊維状充填材の具体例としては、ガラス繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノライト、塩基性硫酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、テトラポット型酸化亜鉛、石膏繊維、ホスフェート繊維、アルミナ繊維、針状炭酸カルシウム、針状ベーマイトなどを挙げることができる。
【0129】
粒子状充填材の具体例としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、グラファイト、酸化アンチモン、赤燐、各種金属粉、クレー、各種フェライト、ハイドロタルサイト等を挙げることができる。例えば、フィラーとしてアルミナを用いると、樹脂部50の熱伝導率を改善することができる。また、フィラーとしてシリカを用いると、樹脂部50の熱収縮率を調整することができる。
【0130】
また、上記フィラーは、その表面を疎水化処理したものであることが好ましい。疎水化処理したフィラーを用いることにより、重合性組成物52中におけるフィラーの凝集及び沈降を防止でき、また、重合体51中におけるフィラーの分散を均一にすることができる。疎水化処理に用いられる処理剤としては、ビニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ステアリン酸等の脂肪酸、油脂、界面活性剤、ワックス等を挙げることができる。フィラーの疎水化処理は、重合性組成物52を調製する際に、疎水化処理剤を同時に混合することによっても可能であるが、予め疎水化処理を行ったフィラーを用いて重合性組成物52の調製を行うことが好ましい。
【0131】
<超電導コイル装置の製造方法>
次に、本実施の形態の超電導コイル装置の製造方法について説明する。
図7は、実施の形態の超電導コイル装置の製造工程の一部を示すプロセスフロー図である。
図8乃至
図10は、実施の形態の超電導コイル装置の製造工程中の要部断面図である。なお、
図8乃至
図10に示す要部断面は、
図4に示す要部断面に対応している。
【0132】
以下では、超電導コイル装置が、積層された複数のパンケーキコイルを含む超電導コイルを有するものである場合を例示して説明する。しかし、超電導コイル装置が、超電導線材が一体的又は連続的に巻回されてなる超電導コイルを有するものであってもよい。
【0133】
まず、
図8に示すように、パンケーキコイル31を作製する(
図7のステップS11)。このステップS11では、軸AX1(
図2参照)の周りに超電導線材が渦巻き状に巻回されてなるパンケーキコイル31を、作製する。パンケーキコイル31は、内側電極32と、外側電極33と、を有する。
【0134】
図8に示すように、互いに交差、好適には直交する3つの方向を、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向とする。そして、軸AX1(
図2参照)を、Y軸方向に沿った軸であるとする。例えば、超電導コイル装置の製造工程においては、Y軸方向を鉛直方向とし、X軸方向及びZ軸方向に沿った平面を水平面とすることができる。
【0135】
次に、
図9に示すように、超電導コイル30を作製する(
図7のステップS12)。このステップS12では、軸AX1(
図2参照)の周りに超電導線材が渦巻き状にそれぞれ巻回されてなる複数のパンケーキコイル31を、例えばY軸方向に積層する。そして、積層された複数のパンケーキコイル31が直列に接続されるように、積層方向で互いに隣り合う2個のパンケーキコイル31の各々がそれぞれ有する2個の内側電極32同士、及び、積層方向で互いに隣り合う2個のパンケーキコイル31の各々がそれぞれ有する2個の外側電極33同士を、電気的に接続する。また、このステップS12では、直列に接続された複数のパンケーキコイル31を有する超電導コイル30の両端に、それぞれ電流リード40を接続する。
【0136】
具体的な内側電極32同士、外側電極33同士、及び、電流リード40と外側電極33との間の接続方法は、超電導コイル装置の説明において、
図4を用いて説明した通りである。例えば、積層方向で隣り合う2個のパンケーキコイル31の各々がそれぞれ有する2個の内側電極32は、接続部材41により電気的に接続される。また、積層方向で隣り合う2個のパンケーキコイル31の各々がそれぞれ有する2個の外側電極33は、接続部材42により電気的に接続される。
【0137】
次に、
図10に示すように、コイルケース20内に超電導コイル30を収容する(
図7のステップS13)。このステップS13では、積層され、且つ、直列に接続された複数のパンケーキコイル31を有し、両端にそれぞれ電流リード40が接続された超電導コイル30を、超電導コイル30を収容するためのコイルケース20内に収容する。
【0138】
図10に示す例では、コイルケース20は、容器本体部21を含み、容器本体部21は、凹部23を有する。容器本体部21は、Y軸方向と交差する主面24を有し、凹部23は、主面24に形成されている。このような場合、ステップS13では、超電導コイル30を、コイルケース20の凹部23内に収容する。これにより、凹部23内に超電導コイル30を収容した後、凹部23内に重合性組成物52(
図4参照)を容易に注入することができ、凹部23の内壁と超電導コイル30との間を重合体51(
図4参照)よりなる樹脂部50(
図4参照)により容易に充填することができる。
【0139】
次に、
図4に示すように、コイルケース20内の大きな隙間を埋める(
図7のステップS14)。このステップS14では、コイルケース20の内壁と超電導コイル30との間の大きな隙間に、ガラス繊維、又は、ノルボルネン環構造を有する樹脂組成物を収容することにより、コイルケース20内の大きな隙間を埋める。
図4に示す例では、凹部23の内壁と超電導コイル30との間の大きな隙間を埋めることになる。
【0140】
次に、
図4に示すように、コイルケース20内に重合性組成物52を注入する(
図7のステップS15)。このステップS15では、コイルケース20内に、ノルボルネン環構造を有する重合体51の原料である重合性組成物52を注入する。
図4に示す例では、凹部23内に、重合性組成物52を注入することになる。
【0141】
このような重合性組成物52として、ノルボルネン環構造を有する環状炭化水素等のノルボルネン系モノマー、及び、メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を用いることができる。ノルボルネン系モノマー、即ちノルボルネン環構造を有する単量体、並びに、メタセシス重合触媒としては、前述したものを用いることができる。
【0142】
前述したように、コイルケース20内に超電導コイル30を収容した後、コイルケース20の内壁と超電導コイル30との間に、エポキシの原料である重合性組成物52を注入する場合を考える。このような場合、エポキシの原料である重合性組成物52の粘度が高いため、当該重合性組成物52が、コイルケース20の内壁と超電導コイル30との間の部分のうち、幅の狭い隙間には注入されず、コイルケース20の内壁と超電導コイル30との間からボイドを無くすことが困難であった。
【0143】
一方、本実施の形態の超電導コイル装置の製造工程では、コイルケース20内に超電導コイル30を収容した後、コイルケース20の内壁と超電導コイル30との間に、ノルボルネン環構造を有する重合体51の原料である重合性組成物52を注入する。
【0144】
本発明に用いる重合性組成物は、公知の方法に従って、上述の各成分を適宜混合することにより調製されるが、コイルケース20内へ、後述する開口部25や、又は後述する開口部26などから注入する直前に、2以上の反応原液を混合することにより調製してもよい。当該反応原液は、1液のみでは重合しないが、全ての液を混合すると、各成分を所定の割合で含む重合性組成物となるように、上記した各成分を2以上の液に分けて調製される。かかる2以上の反応原液の組み合わせとしては、用いるメタセシス重合触媒の種類により、下記(i)、(ii)の二通りが挙げられる。
【0145】
(i):前記メタセシス重合触媒として、単独では重合反応活性を有しないが、活性剤を併用することで重合反応活性を発現するものを用いることができる。この場合は、ノルボルネン系モノマー及び活性剤を含む反応原液(A液)と、ノルボルネン系モノマー及びメタセシス重合触媒を含む反応原液(B液)とを用い、これらを混合することで重合性組成物を得ることができる。さらに、ノルボルネン系モノマーを含み、且つメタセシス重合触媒及び活性剤のいずれも含まない反応原液(C液)を併用してもよい。
【0146】
(ii):また、メタセシス重合触媒として、単独で重合反応活性を有するものを用いる場合は、ノルボルネン系モノマーを含む反応原液(a液)と、メタセシス重合触媒を含む反応原液(b液)とを混合することで重合性組成物を得ることができる。このとき反応原液(b液)としては、通常、メタセシス重合触媒を少量の不活性溶媒に溶解又は分散させたものが用いられる。かかる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類;ジエチルエーテル、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル等が挙げられるが、芳香族炭化水素が好ましく、トルエンがより好ましい。
【0147】
ラジカル発生剤、ジイソシアネート化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物及び任意成分は、前記反応原液のいずれに含有させてもよいし、又は、前記反応原液以外の混合液の形で添加してもよい。
【0148】
上記反応原液の混合に用いられる混合装置としては、例えば、反応射出成型法で一般的に用いられる衝突混合装置のほか、ダイナミックミキサーやスタティックミキサー等の低圧混合機等が挙げられる。
【0149】
なお、重合性組成物には、重合硬化後の耐久性等を考慮し、酸化防止剤、難燃剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を適宜配合してもよい。
【0150】
重合性組成物の注入は、通常は10℃から30℃の常温で行われるが気温や重合性組成物の液温に応じて適宜上記活性調節剤を増減させてもよい。
【0151】
ノルボルネン環構造を有する重合体51の原料である重合性組成物52の25℃での粘度は、好ましくは100mPa・s以下であり、より好ましくは80mPa・s以下であり、さらに好ましくは50mPa・s以下であり、エポキシの原料である重合性組成物52の粘度に比べ、極めて低い。
【0152】
そのため、コイルケース20の内壁と超電導コイル30との間の部分のうち、幅の狭い隙間にも重合性組成物52を十分に注入することができ、コイルケース20の内壁と超電導コイル30との間から容易にボイドを無くすことができる。即ち、凹部23の内壁と超電導コイル30との間の部分のうち、幅の狭い隙間にも重合性組成物52を十分に注入することができ、凹部23の内壁と超電導コイル30との間から容易に空隙を無くすことができる。
【0153】
また、ノルボルネン環構造を有する重合体51の原料である重合性組成物52の粘度が低いため、真空脱泡を行わなくてもコイルケース20の内壁と超電導コイル30との間の部分のうち、幅の狭い隙間にも重合性組成物52を十分に注入することができる。そのため、超電導コイル装置の製造工程を、容易に簡略化することができる。
【0154】
好適には、重合性組成物52は、ノルボルネン環構造を有する第1モノマーと、ノルボルネン環構造を有し、且つ、第1モノマーの種類と異なる種類の第2モノマーと、を含有する。ここで、第1モノマーは、ジシクロペンタジエンよりなり、第2モノマーは、前記一般式(1)で示される化合物の1種以上よりなる。当該第2モノマーとしては、好ましくはノルボルネン、テトラシクロドデセン、5−エチリデンノルボルネン及び8−エチリデンテトラシクロドデセンからなる群から選択された1種以上よりなる。
【0155】
重合性組成物52が上記した種類の第1モノマーと上記した種類の第2モノマーとを含有する場合、前述したように、重合性組成物52がそれ以外の種類のモノマーを含有する場合に比べ、重合性組成物52の重合硬化後に、重合性組成物52が重合されてなる重合体51よりなる樹脂部50にボイド又はクラックが発生することを、防止又は抑制することができる。また、超電導コイル装置10(
図4参照)の使用時に、樹脂部50にボイド又はクラックが発生することを、防止又は抑制する効果が、より大きくなる。
【0156】
より好適には、重合性組成物52における第1モノマーの含有量と重合性組成物52における第2モノマーの含有量との合計を100質量部としたとき、重合性組成物52における第2モノマーの含有量が4質量部以上である。即ち、重合性組成物52における第1モノマーの含有量が96質量部以下である。
【0157】
重合性組成物52における第2モノマーの含有量が4質量部以上の場合、前述したように、重合性組成物52における第2モノマーの含有量が4質量部未満の場合に比べ、重合性組成物52の重合硬化後に、樹脂部50にボイド又はクラックが発生することを、より防止又はより抑制することができる。また、超電導コイル装置10(
図4参照)の使用時に、樹脂部50(
図4参照)にボイド又はクラックが発生することを、防止又は抑制する効果が、さらにより大きくなる。
【0158】
但し好適には、重合性組成物52における第1モノマーの含有量と重合性組成物52における第2モノマーの含有量との合計を100質量部としたとき、重合性組成物52における第2モノマーの含有量が50質量部以下である。即ち、重合性組成物52における第1モノマーの含有量が50質量部以上である。さらに好適には、第2モノマーの含有量は5質量部以上45質量部以下であり、またさらに好適には、第2モノマーの含有量は6質量部以上40質量部以下である。
【0159】
重合性組成物52における第2モノマーの含有量が50質量部以下の場合、重合性組成物52における第2モノマーの含有量が50質量部を超える場合に比べ、超電導コイル装置10(
図4参照)の製造時に、重合性組成物52が重合硬化する際に、架橋により化学構造上安定であるより好ましい重合硬化物を与える。
【0160】
図1及び
図2に示すように、好適には、コイルケース20は、開口部25と、開口部26と、を有する。開口部25は、蓋部22を容器本体部21に取り付けた状態で、容器本体部21の主面24のうち、蓋部22よりもX軸方向における第1の側(
図2におけるX軸方向の矢印の向きと反対側)の部分に形成され、且つ、凹部23と連通する。即ち、開口部25は、凹部23よりもX軸方向における第1の側に配置されている。一方、開口部26は、蓋部22を容器本体部21に取り付けた状態で、容器本体部21の主面24のうち、蓋部22よりもX軸方向における第1の側と反対側(
図2におけるX軸方向の矢印の向きと同じ側)に形成され、且つ、凹部23と連通する。即ち、開口部26は、凹部23よりもX軸方向における第1の側と反対側に配置されている。このような場合、ステップS15では、コイルケース20を傾斜させながら、コイルケース20内に重合性組成物52を注入することが好ましい。
【0161】
具体的には、まず、蓋部22を容器本体部21に取り付けることにより、凹部23を蓋部22により塞ぐ。次に、開口部25が開口部26よりも高くなるように容器本体部21の主面24を水平面に対して傾斜させた状態で、開口部25から凹部23内への重合性組成物52の注入を開始する。次に、開口部25と開口部26との高低差が減少するように容器本体部21の主面24の水平面に対する傾斜角度を徐々に減少させながら、開口部25から凹部23内に重合性組成物52を注入する。
【0162】
これにより、重力を利用して、重合性組成物52を、凹部23内でX軸方向における第1の側から第1の側と反対側に向かって一様に流動させて注入することができるので、凹部23の内壁と超電導コイル30との隙間を重合性組成物52により容易に充填することができる。また、重合性組成物52中に気泡が混入することを防止又は抑制することができる。
【0163】
次に、
図4に示すように、コイルケース20内に注入された重合性組成物52を重合硬化させる(
図7のステップS16)。このステップS16では、凹部23内に注入された重合性組成物52を重合硬化させることにより重合体51よりなる樹脂部50を形成し、形成された樹脂部50により凹部23の内壁と超電導コイル30との間を充填する。重合体51は、ノルボルネン環構造を有する第1モノマーを含む重合性組成物52が重合されてなる。重合性組成物52が第1モノマーと第2モノマーとを含有する場合、重合体51は、第1モノマーと第2モノマーとが重合されてなる。これにより、超電導コイル装置10が製造される。
【0164】
このステップS16での重合性組成物52の重合硬化は、一段階で行ってもよいが、樹脂部50におけるボイド又はクラックの発生を充分に防止又は抑制する観点から、本重合を行う前に、予備重合を行うのが好ましい。予備重合の条件としては、重合温度が、通常50℃以下、好ましくは20〜50℃であり、重合時間は、通常5分〜20時間、好ましくは10分〜10時間である。
【0165】
例えば、まず、大気圧下及び常温下で予備重合させることにより、重合性組成物52を予備硬化させる。次に、加熱処理を行って本重合させることにより、重合性組成物52を重合及び硬化、即ち重合硬化させる。この加熱処理を行う温度は、250℃以下であることが好ましい。これにより、超電導コイル30に含まれる超電導線材の超電導特性等の劣化を防止又は抑制することができる。また、超電導線材の超電導特性等の劣化を防止又は抑制しつつ効率良く重合硬化させる観点からは、加熱処理を行う温度は、50〜140℃であることがより好ましく、60〜100℃であることがさらにより好ましい。加熱処理を行う時間は、温度にもよるが、所望の温度に到達してから1分〜3時間であることが好ましく、30分〜2時間であることがより好ましい。
【0166】
予備重合及び本重合はそれぞれ、段階的に及び/又は連続的に重合温度を上昇させて行ってもよい。また、予備重合と本重合とは、段階的に及び/又は連続的に重合温度を上昇させることにより、連続的に行ってもよい。
【0167】
図11は、実施の形態の変形例の超電導コイル装置の製造工程の一部を示すプロセスフロー図である。
図12及び
図13は、実施の形態の変形例の超電導コイル装置の製造工程中の要部断面図である。なお、
図12及び
図13に示す要部断面は、
図4に示す要部断面に対応している。
【0168】
本変形例の超電導コイル装置の製造工程では、実施の形態の超電導コイル装置の製造工程と同様にステップS11を行った後、
図12及び
図13並びに
図10に示すように、超電導コイル30をコイルケース20内に収容する(
図11のステップS21)。このステップS21は、超電導線材が渦巻き状にそれぞれ巻回されてなる複数のパンケーキコイルをコイルケース20内に、即ち凹部23内に収容する工程(
図11のステップS22)を含む。
【0169】
このステップS22では、まず、
図12に示すように、最初のパンケーキコイル31を、コイルケース20内に、即ち凹部23内に収容する(
図11のステップS23)。
【0170】
このステップS22では、次に、
図13に示すように、パンケーキコイル31の収容及び接続の繰り返しを行う(
図11のステップS24)。このステップS24では、次のパンケーキコイル31をコイルケース20内に収容する工程(
図11のステップS25)と、コイルケース20内に収容されたパンケーキコイル31を、1つ前にコイルケース20内に収容されたパンケーキコイル31と電気的に接続する工程(
図11のステップS26)とを、繰り返す。これにより、ステップS22では、直前に収容されたパンケーキコイル31を、直前に収容されたパンケーキコイル31よりも1つ前に収容されたパンケーキコイル31と電気的に接続した後、次のパンケーキコイル31を収容することになる。
【0171】
また、ステップS21では、複数のパンケーキコイル31の各々の巻回軸がY軸方向に沿った状態で、ステップS22を行う。これにより、
図10に示すように、Y軸方向に沿った軸AX1(
図2参照)の周りに超電導線材がそれぞれ渦巻き状に巻回され、コイルケース20内、即ち凹部23内でY軸方向に積層され、且つ、直列に接続された複数のパンケーキコイル31を含む超電導コイル30を、コイルケース20内に、即ち凹部23内に収容することになる。
【0172】
次に、
図7のステップS14と同様の工程(
図11のステップS14)を行って、コイルケース20内、即ち凹部23内の大きな隙間を埋める。そして、
図7のステップS15と同様の工程(
図11のステップS15)を行って、コイルケース20内、即ち凹部23内に重合性組成物52を注入した後、
図7のステップS16と同様の工程(
図11のステップS16)を行って、コイルケース20内、即ち凹部23内に注入された重合性組成物52を重合硬化させる。これにより、
図4に示した超電導コイル装置10が製造される。
【0173】
本変形例の超電導コイル装置の製造工程では、複数のパンケーキコイル31が互いに電気的に接続されていない状態で、複数のパンケーキコイル31を1個ずつコイルケース20内に収容することができる。そのため、コイルケース20内に収容するコイルを搬送する搬送重量を低減することができるので、コイルを搬送する搬送装置を小型化することができる。或いは、コイルケース20内、即ち凹部23内に収容する際にパンケーキコイル31を1個ずつ搬送することができるので、搬送されるパンケーキコイル31に搬送時に大きな応力が印加されることを防止又は抑制することができ、パンケーキコイル31に含まれる超電導線材の超電導特性の劣化を防止又は抑制することができる。
【実施例】
【0174】
以下、実施例に基づいて本実施の形態をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0175】
[重合性組成物の準備]
(製造例1)
製造例1では、ジシクロペンタジエンよりなる第1モノマーと、前記化合物(8)よりなるメタセシス重合触媒と、を含有する重合性組成物を準備した。得られた重合性組成物は20℃に維持した。メタセシス重合触媒の使用量は、使用した全モノマー1モルに対して0.055ミリモルであった。また、重合性組成物の25℃での粘度は、B型粘度計による測定で10mPa・s以下であった。
【0176】
(製造例2)
製造例2では、ジシクロペンタジエンよりなる第1モノマーと、5−エチリデンノルボルネンよりなる第2モノマーと、前記化合物(8)よりなるメタセシス重合触媒と、を含有する重合性組成物を準備した。得られた重合性組成物は20℃に維持した。ここで、重合性組成物における第1モノマーの含有量と重合性組成物における第2モノマーの含有量との合計を100質量部としたとき、重合性組成物における第2モノマーの含有量は6.4質量部であった。また、重合性組成物の25℃での粘度は、B型粘度計による測定で10mPa・s以下であった。メタセシス重合触媒の使用量は、使用した全モノマー1モルに対して0.055ミリモルであった。
【0177】
[重合性組成物の重合硬化の評価]
次に、製造例1及び製造例2の重合性組成物を、20℃の環境下、コイルケースを模擬した模擬ケース内に注入、樹脂流動がなくなるまで放置(予備硬化)した後、80℃の加熱温度及び1時間の加熱時間の条件で熱処理して重合硬化させることにより、製造例1及び製造例2の重合性組成物の重合硬化の評価を視認により行った。この製造例1及び製造例2のうち、製造例2の重合性組成物を重合した重合体の写真を、
図14に示す。
【0178】
図14に示すように、製造例2の重合性組成物は、上面が平坦化された状態で、容易に重合硬化したことが確認された。また、図示は省略するものの、製造例1の重合組成物も同様に上面が平坦化された状態で、容易に重合硬化したことが確認された。そのため、製造例1及び製造例2の重合性組成物のいずれも、幅の狭い隙間にも重合性組成物を十分に注入することができ、コイルケースの内壁と超電導コイルとの間から容易にボイドを無くすことができるものであることが確認された。
【0179】
詳細の説明は省略するが、5−エチリデンノルボルネンに代え、ノルボルネン、テトラシクロドデセン及び8−エチリデンテトラシクロドデセンその他の前記一般式(1)で示される化合物を用いた場合も、同様の結果が得られた。従って、重合性組成物が、ジシクロペンタジエンよりなる第1モノマーと、第2モノマーとを含む場合であって、且つ、第2モノマーが、前記一般式(1)で示される化合物の少なくとも1種類以上、好ましくはノルボルネン、テトラシクロドデセン、5−エチリデンノルボルネン及び8−エチリデンテトラシクロドデセンからなる群から選択された1種以上よりなる場合、第2モノマーがそれ以外の種類のモノマーよりなる場合に比べて、重合硬化させて形成される樹脂組成物にボイドが発生しにくく、高品質な樹脂組成物が形成されることが明らかになった。
【0180】
具体的には、第2モノマーが、前記一般式(1)で示される化合物の少なくとも1種類以上、好ましくはノルボルネン、テトラシクロドデセン、5−エチリデンノルボルネン及び8−エチリデンテトラシクロドデセンからなる群から選択された1種以上よりなる場合、第2モノマーがそれ以外の種類のモノマーよりなる場合に比べて、上面が収縮してうねった状態で重合硬化するおそれが低減し、幅の狭い隙間への重合性組成物充填が収縮の観点からより十分な状態になり、コイルケースの内壁と超電導コイルとの間に隙間やボイドが残存しにくくなる。
【0181】
[超電導コイル装置の準備]
(実施例1)
コイルケース20内に超電導コイル30を収容し、製造例2の重合性組成物52を注入した後、重合性組成物52の重合硬化の評価の際の条件と同一の条件で熱処理して重合硬化させることにより樹脂部50を形成し、形成された樹脂部50によりコイルケース20の内壁と超電導コイル30との間を充填した。これにより、
図1に示したように、実施例1の超電導コイル装置10を作製した。
【0182】
[加振試験による発熱の有無の評価]
次に、実施例1の超電導コイル装置について、加振試験装置を用いた加振試験を行い、超電導コイル装置10における振動による発熱の有無の評価を行った。
【0183】
図15は、加振試験装置の概略を示す一部切り欠き斜視図である。
図15に示すように、加振試験装置60は、真空容器61と、冷凍機62と、伝熱板63と、支持部材64と、加振機65と、加振ロッド66と、を備えている。
【0184】
真空容器61は、真空排気装置(図示は省略)により真空排気可能に設けられている。真空容器61内には、超電導コイル装置10が設置可能である。真空容器61内に設置される超電導コイル装置10は、真空容器61の内壁と接触しないように、例えば熱伝導率の小さな部材よりなる支持部材64によって、例えば真空容器61の天板67から吊持される。冷凍機62は、超電導コイル装置10を冷却する。超電導コイル装置10のコイルケース20は、伝熱板63を介して、冷凍機62と熱的に接触される。従って、冷凍機62は、伝熱板63を介した伝導冷却により、超電導コイル装置10を冷却する。伝熱板63として、例えば高純度アルミニウムよりなる金属板を積層した積層板を用いることができる。なお、超電導コイル装置10の外部に引き出された2つの電流リード40は、さらに、真空容器61の外部に引き出される。また、電流リード40は、真空容器61内で、伝熱板63を介して冷凍機62により冷却される。
【0185】
加振機65は、超電導コイル装置10に加振力、即ち振動を印加する。超電導コイル装置10のコイルケース20は、加振ロッド66を介して、加振機65と機械的に接続される。従って、加振機65は、加振ロッド66を介して、超電導コイル装置10に加振力を印加する。
【0186】
このような加振試験装置60内に、実施例1の超電導コイル装置10を設置した。そして、設置された実施例1の超電導コイル装置10を約35Kの温度まで冷却した状態で、超電導コイル30(
図3参照)に250Aの電流を通電して励磁した。この通電量は、700kAの起磁力に相当するものであった。そして、このような条件で超電導コイル30を励磁した状態で、コイルケース20が有する容器本体部21の角部に、加振機65により加振力を印加した。このとき、超電導コイル装置10の変形モードを、曲げ一次モードとし、加振周波数を、223Hzに設定した。また、加振力については、最大加速度が15Gになるように、調整した。
【0187】
このような条件で加振試験を行って、振動による発熱の有無を検証した。具体的には、加振試験を行う際の、超電導コイル装置10の温度(コイル温度)、及び、超電導コイル装置10の2つの外側電極の間の電圧(コイル電圧)の測定を行った。その結果を、
図16に示す。
図16は、実施例1の超電導コイル装置を用いた加振試験におけるコイル温度及びコイル電圧の時間変化を測定した結果を示すグラフである。
【0188】
図16に示すように、最初は、加振を行わず、静止した状態で300秒間温度を測定し、測定された温度が安定しているか確認を行った。そして、温度が安定していることを確認した後、加振を開始し、最大加速度が15Gに調整された条件で、20分間加振を行った。
【0189】
図16に示すように、加振を行う前のコイル電圧に比べ、加振を行っている間のコイル電圧には、何ら変化は見られず、励磁した状態を安定に保持していることが分かった。また、コイル温度の上昇も緩やかであり、熱負荷に換算して3W以下であった。この3W以下の熱負荷は、加振を行わず、静止した状態における熱負荷に比べ、十分に小さい値であった。従って、加振を行っている間も、コイルケース20に対する超電導コイル30(
図3参照)の位置ずれが発生せず、摩擦による発熱が発生せず、超電導コイル装置10の冷却状態に問題が無いことを、確認することができた。また、加振試験を終了し、超電導コイル装置10を室温まで昇温した後、目視による確認を行ったところ、樹脂部50(
図3参照)にはボイド及びクラックのいずれも発生していなかった。なお、詳細の説明は省略するが、第2モノマーとして、5−エチリデンノルボルネンに代え、ノルボルネン、テトラシクロドデセン及び8−エチリデンテトラシクロドデセンその他の前記一般式(1)で示される化合物を用いた場合も、実施例1と同様の結果が得られた。
【0190】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0191】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0192】
例えば、前述の各実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。