(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成や制御(技術的特徴)、ならびに当該構成や制御によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。
【0008】
図1〜
図3に示すように、ガス遮断器1は、電路を構成する二つの接触子部として対向接触子部10と可動接触子部20とを有する。ガス遮断器1では、対向接触子部10および可動接触子部20が互いに接触された接続状態(
図1)と、対向接触子部10および可動接触子部20が互いに離間された開離状態(
図2、
図3)とが、切り替わる。接続状態の後の開離状態では、対向接触子部10および可動接触子部20の間にアーク放電が生じる。アーク放電に消弧性ガスの流れが吹付けられることにより、アーク放電は、絶縁、冷却されるとともに、電流零点で消弧され、電流が遮断される。接続状態は、接触状態とも称され、開離状態は、離間状態とも称されうる。
【0009】
図1に示すように、ガス遮断器1は、密閉容器30を有する。密閉容器30には、消弧性ガスが充填されている。密閉容器30は、例えば、金属材料や碍子などで構成され、グラウンドに接続されている。密閉容器30は、容器の一例である。
【0010】
消弧性ガスは、例えば、六フッ化硫黄ガス(SF6ガス)や、空気、二酸化炭素、酸素、窒素、それらの混合ガス、その他などの、消弧性能および絶縁性能に優れたガスである。なお、消弧性ガスは、例えば、SF6ガスよりも地球温暖化係数が低くかつ分子量が小さく、かつ少なくとも1気圧以上および摂氏20度以下で気相であるガスであってもよい。
【0011】
密閉容器30内では、対向接触子部10と可動接触子部20とが、互いに対向して配置されている。対向接触子部10および可動接触子部20は、それぞれ、円筒状または円柱状などの複数の部材を有しており、互いに中心軸Ax回りに同心に配置されている。なお、以下では、「軸方向」は中心軸Axの軸方向であり、「径方向」は中心軸Axの径方向であり、「周方向」は中心軸Axの周方向である。対向接触子部10は、対向部の一例であり、可動接触子部20は、可動部の一例である。また、以下では、便宜上、軸方向における対向接触子部10側、すなわち
図1〜
図3では左方を軸方向Aと称し、軸方向における可動接触子部20側、すなわち、
図1〜
図3では右方を軸方向Aの他方と称する。また、本実施形態では、対向接触子部10は、密閉容器30に固定されているため、固定接触子部とも称されうる。
【0012】
密閉容器30の内面からは、径方向の内方に向けて、支持部材31が突出している。対向接触子部10は、支持部材31を介して密閉容器30に固定されている。支持部材31は、密閉容器30と対向接触子部10とを絶縁している。よって、支持部材31は、絶縁支持部材とも称されうる。
【0013】
可動接触子部20は、操作ロッド40と接続されている。操作ロッド40は、中心軸Axを中心として軸方向Aに沿って延びる円筒状に構成され、中心軸Axに沿って往復動可能に構成されている。操作ロッド40は、駆動装置(図示せず)によって、軸方向Aに沿って動かされる。可動接触子部20は、操作ロッド40と連動して軸方向Aに移動する。操作ロッド40が対向接触子部10に近づく方向、すなわち、軸方向Aへ動くと、
図1に示すように、対向接触子部10と可動接触子部20とが接続状態となる。操作ロッド40が対向接触子部10から離れる方向、すなわち、軸方向Aの他方へ動くと、
図2、
図3に示すように、対向接触子部10と可動接触子部20とが開離状態となる。また、操作ロッド40は、消弧性ガスの排出管としても機能する。すなわち、消弧性ガスは、軸方向Aの端部から操作ロッド40の筒内に入り、当該筒内を経由し、開口部21bを介して密閉容器30内に流出することができる。
【0014】
対向接触子部10は、対向アーク接触子11および対向通電接触子12を有する。また、可動接触子部20は、可動アーク接触子21および可動通電接触子22を有する。対向アーク接触子11と可動アーク接触子21とが軸方向Aに互いに対向し、接続状態で電気的に接続される。また、対向通電接触子12と可動通電接触子22とが軸方向Aに互いに対向し、接続状態で電気的に接続される。なお、対向接触子部10が密閉容器30に固定されている場合、対向アーク接触子11は、固定アーク接触子とも称され、対向通電接触子12は、固定通電接触子とも称されうる。
【0015】
対向アーク接触子11は、棒状の導体であり、中心軸Axを中心として軸方向Aに沿って延びている。対向接触子部10の排気筒13内には、軸方向Aと直交する円盤状の第1の遮蔽壁14が設けられている。さらに、第1の遮蔽壁14から、軸方向Aの他方に向かって、軸方向Aに沿って延びる筒状の第2の遮蔽壁15が設けられている。
【0016】
可動アーク接触子21は、筒状の導体であり、中心軸Axを中心として軸方向Aに沿って延びている。本実施形態では、一例として、可動アーク接触子21は、操作ロッド40と一体化されている。可動アーク接触子21の軸方向Aの端部には、円形の貫通孔21aが設けられている。貫通孔21aが設けられている端部は、軸方向Aに沿って延びる複数のスリット(図示せず)によって、軸方向Aに沿って延びる複数の指状電極に分割されている。複数の指状電極の端部は、対向アーク接触子11の外周面よりも狭い直径の縁に沿って並んでいる。操作ロッド40の移動に伴って、可動アーク接触子21は、対向アーク接触子11に近づき、
図1に示すように、対向アーク接触子11が貫通孔21a内に挿入される。これにより、複数の指状電極は、対向アーク接触子11の外周面に押されて径方向の外方に広がり、指状電極の弾性力によって、対向アーク接触子11の外周面と接触する。
【0017】
対向アーク接触子11および可動アーク接触子21の先端部は、絶縁ノズル50によって隙間をあけて覆われている。絶縁ノズル50は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどの耐熱性かつ絶縁性の材料で構成される。本実施形態では、一例として、絶縁ノズル50は、可動接触子部20の軸方向Aの端部に固定され、操作ロッド40およびシリンダ23と一体に軸方向Aに移動する。絶縁ノズル50は、円筒状の外面を有し、中心軸Axを中心として軸方向Aに沿って延びている。絶縁ノズル50は、ノズルの一例である。
【0018】
絶縁ノズル50には、中心軸Axを中心として軸方向Aに貫通する開口部50aが設けられている。
図1に示すように、開口部50aの軸方向Aの中間部分50mには、隙間をあけて対向アーク接触子11が挿入されうる。中間部分50mは、スロートとも称されうる。また、
図2、
図3に示すように、開口部50aの、中間部分50mと熱パッファ室25との間には、隙間をあけて可動アーク接触子21が挿入されている。この隙間によって、中間部分50mと熱パッファ室25との間の消弧性ガスの通路50pが構成されている。また、中間部分50mと、絶縁ノズル50の軸方向Aの端部との間では、当該端部に向かうにつれて直径が広がる円錐面状の拡径部が構成されている。
図3に示すように、この拡径部によって、中間部分50mと排気筒13内との間の消弧性ガスの通路50sが構成されている。開口部50aは、空間の一例である。
【0019】
対向通電接触子12は、筒状の導体であり、中心軸Axの中心として軸方向Aに沿って延びている。対向通電接触子12は、排気筒13の軸方向Aの他方の端部の外周面に接合されている。対向通電接触子12の長手方向の対向通電接触子12の開口縁は、径方向内側に突出している。
【0020】
可動通電接触子22は、筒状の導体であり、中心軸Axを中心として軸方向Aに沿って延びている。可動接触子部20は、操作ロッド40を収容する円筒状のシリンダ23を有している。可動通電接触子22は、シリンダ23の軸方向Aの端部に接合されている。操作ロッド40の移動に伴って、可動通電接触子22は、対向通電接触子12に近づき、
図1に示すように、対向通電接触子12内に挿入される。対向通電接触子12の開口縁の内径と可動通電接触子22の外径とは略一致しており、可動通電接触子22が対向通電接触子12内に挿入された状態で、対向通電接触子12と可動通電接触子22とが電気的に接続される。
【0021】
上述した構成では、接続状態の後の開離状態においては、
図2、
図3に示すように、絶縁ノズル50の開口部50a内で、対向アーク接触子11と可動アーク接触子21との間に、アーク放電Adが生じる。発生したアーク放電Adは、消弧性ガスの流れによって消弧される。以下、消弧性ガスの流れは、単にガス流とも称されうる。
【0022】
ガス流は、シリンダ23内で生成される。シリンダ23は、筒状の導体であり、中心軸Axを中心として、軸方向Aに沿って延びている。シリンダ23は、操作ロッド40と固定されている。すなわち、操作ロッド40の移動に伴って、シリンダ23も移動する。
【0023】
シリンダ23と操作ロッド40との間には、円環状の空間が設けられている。この円環状の空間が、径方向に延びる隔壁24によって軸方向Aに仕切られることにより、熱パッファ室25と、機械パッファ室26とが構成されている。アーク放電Adに吹付けられるガス流は、熱パッファ室25および機械パッファ室26において生成される。隔壁24には、複数の貫通孔24aが設けられている。消弧性ガスは、複数の貫通孔24aを介して、熱パッファ室25と機械パッファ室26との間で往来することができる。熱パッファ室25および機械パッファ室26は、蓄圧部の一例であり、蓄圧空間とも称されうる。
【0024】
熱パッファ室25では、
図2に示されるような対向アーク接触子11と可動アーク接触子21との間のアーク放電Adによって生じた熱エネルギーによって、消弧性ガスの圧力が高められる。具体的には、
図2中に矢印で示すように、アーク放電Adの熱エネルギーによって生じた圧力波が熱パッファ室25に導入され、これにより、熱パッファ室25内の圧力が高まる。
【0025】
機械パッファ室26の、隔壁24の反対側には、密閉容器30と固定されたピストン27が位置されている。ピストン27は、シリンダ23および操作ロッド40と軸方向Aに相対的にスライド可能に、シリンダ23内に収容されている。
図2、
図3を
図1と比較すれば明らかとなるように、シリンダ23および操作ロッド40が軸方向Aの他方に移動すると、隔壁24とピストン27との距離が縮まって、機械パッファ室26の容積が小さくなる。このような機械パッファ室26の容積の縮小によって、機械パッファ室26内の消弧性ガスの圧力が高められる。なお、ピストン27には、所定値以上の圧力で開弁するリリーフ弁28が設けられている。リリーフ弁28によって、機械パッファ室26内の所定値以上の圧力の上昇が抑制されている。
【0026】
図2に示すように、対向アーク接触子11と可動アーク接触子21との間にアーク放電Adが生じると、絶縁ノズル50の通路50pを介して、消弧性ガスの圧力波が熱パッファ室25へ導入され、熱パッファ室25内の圧力が高まる。また、上述したようにシリンダ23および操作ロッド40とピストン27との相対的な移動に伴って、機械パッファ室26の圧力が高まる。
図3に示すように、これらの圧力の高まりに応じて、機械パッファ室26の消弧性ガスは、貫通孔24aを介して熱パッファ室25へ流れ、熱パッファ室25内の消弧性ガスとともに、絶縁ノズル50内の通路50pを介してアーク放電Adに作用し、アーク放電Adを消弧する。
【0027】
排気筒13は、円筒部13aと、円錐部13bとを有する。円筒部13aは、排気筒13のうち軸方向A側に位置されている。また、円錐部13bは、排気筒13のうち軸方向Aの他方側に位置されている。円錐部13bは、円筒部13aから可動接触子部20側の端部13cに向かうにつれて徐々に細くなるよう構成されている。円錐部13bは、ディフューザとも称されうる。
【0028】
図1〜
図8に示すように、排気筒13内には、遮蔽部19が設けられている。遮蔽部19は、第1の遮蔽壁14および第2の遮蔽壁15を有している。第1の遮蔽壁14は、軸方向Aと直交した円盤状に構成されている。第1の遮蔽壁14は、遮蔽板とも称されうる。
【0029】
第2の遮蔽壁15は、中心軸Axを中心として軸方向Aに沿って延びた円筒状に構成されている。第2の遮蔽壁15は、第1の遮蔽壁14の径方向の外方の端部から、排気筒13の端部13cに向けて軸方向Aの他方へ延びている。第2の遮蔽壁15は、排気筒13の端部13c、すなわち、開口縁と接している。すなわち、第2の遮蔽壁15と円錐部13bとの間の空間は、端部13cでほぼ塞がれている。なお、第2の遮蔽壁15は、円筒状以外の筒状、例えば、多角形断面の筒状などであってもよい。第2の遮蔽壁15は、遮蔽筒とも称されうる。
【0030】
第2の遮蔽壁15には、貫通孔15aが設けられている。詳しくは、第2の遮蔽壁15には、複数の貫通孔15aが軸方向Aに沿って間隔をあけて設けられている。これらの複数の貫通孔15aは、軸方向Aに沿った列を構成している。本実施形態では、複数の貫通孔15aによって構成された列が、排気筒13の周方向に間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では、一例として、各例には、軸方向Aに沿って三つの貫通孔15a(貫通孔15a1,15a2,15a3)が設けられている。貫通孔15a1は、第1の遮蔽壁14と隣接して設けられている。貫通孔15a2は、貫通孔15a1よりも第1の遮蔽壁14から離れて位置され、その開口面積が貫通孔15a1よりも小さい。また、貫通孔15a3は、貫通孔15a1,15a2よりも第2の遮蔽壁15から離れて位置され、その開口面積が貫通孔15a2よりも大きい。
【0031】
図5〜
図8は、遮蔽部19の軸方向Aと直交する断面を示している。詳細には、
図5は、第1の遮蔽壁14の断面を示している。また、
図6は、第2の遮蔽壁15における貫通孔15aの部分の断面を示している。
図6は、周方向に4つの貫通孔15aが設けられた例を示している。
図7は、第2の遮蔽壁15における貫通孔15aが設けられていない部分の断面を示している。また、
図8は、第2の遮蔽壁15の排気筒13に支持された部分の断面を示している。
【0032】
図8に示すように、第2の遮蔽壁15は、排気筒13の内面から径方向内方に突出した支持部材16によって、内面と隙間G1をあけた状態で支持されている。本実施形態では、第2の遮蔽壁15は、二つの支持部材16によって支持されているが、支持部材16の数は、一つでも良いし三つ以上の複数であってもよい。また、第2の遮蔽壁15の内面の一部には、支持部材17が固定されている。この支持部材17には、対向アーク接触子11が固定されている。すなわち、対向アーク接触子11は、第2の遮蔽壁15内に収容され、支持部材17を介して第2の遮蔽壁15に支持されている。対向アーク接触子11と支持部材17とは、第2の遮蔽壁15内に少なくとも一部が収容された構造体18を構成している。第2の遮蔽壁15の内面の他部と支持部材17との間には、隙間G2が設けられている。なお、
図4では、支持部材17(支持部材16)よりも軸方向Aの側に、全ての貫通孔15aが設けられているが、いくつかの貫通孔15aは支持部材17(支持部材16)よりも軸方向Aの他方の側にあってもよい。構造体18は、収容体とも称されうる。
【0033】
図1〜
図3から明らかとなるように、絶縁ノズル50は、第2の遮蔽壁15内に挿入され、第2の遮蔽壁15内を軸方向Aに沿って移動する。また、第2の遮蔽壁15の内面と絶縁ノズル50の外面との間には、比較的狭いクリアランスが設けられている。これにより、第2の遮蔽壁15と絶縁ノズル50との間の隙間から消弧性ガスが漏れるのが抑制されている。第2の遮蔽壁15の内面は、絶縁ノズル50を案内する案内部の一例である。
【0034】
第2の遮蔽壁15には、貫通孔15aが設けられている。この貫通孔15aを介して、第2の遮蔽壁15の内側の空間と第2の遮蔽壁15の外側の空間とがつながっている。
【0035】
したがって、
図3に示すように、絶縁ノズル50からの消弧性ガスは、排気筒13内で第2の遮蔽壁15の内側の空間から、隙間G2と貫通孔15aを経由して、第2の遮蔽壁15の外側の空間へ流出する。さらに、消弧性ガスは、円筒部13aの内側の空間へ流れ、排気筒13の端部13dから密閉容器30内へ流出する。このとき、熱パッファ室25および機械パッファ室26(蓄圧部)の圧力が、絶縁ノズル50内の圧力よりも高く、かつ、絶縁ノズル50内の圧力が排気筒13内の圧力よりも高くなっている。
【0036】
また、このとき、第2の遮蔽壁15内に流入した消弧性ガスは、対向アーク接触子11と第2の遮蔽壁15との間を超音速で通過する。より詳細には、本実施形態では、構造体18と第2の遮蔽壁15との間を超音速で通過する。そして、消弧性ガスは、対向アーク接触子11を含む構造体18と第2の遮蔽壁15との間を通過した後に、第2の遮蔽壁15内で亜音速となる。これは、第2の遮蔽壁15内の軸方向Aの領域において、構造体18が設けられた領域よりも構造体18が設けられていない領域の方が、消弧性ガスの通路となる空間の断面積が急激に増大し、その結果衝撃波が生じることで、亜音速に減速するためである。そして、亜音速となった消弧性ガスは、貫通孔15aに流入する。
図3では、消弧性ガスは、一点鎖線Bの右側では超音速で流れ、一点鎖線Bの左側では亜音速で流れる。このように、遮蔽部19(第1の遮蔽壁14および第2の遮蔽壁15)は、排気筒13内において、隙間G1、G2や貫通孔15aを介しての消弧性ガスの流れを許容している。隙間G1、G2や貫通孔15aは、消弧性ガスの通路である。なお、隙間G1は、支持部材16、第2の遮蔽壁15および排気筒13を含む構成に設けられた開口部であるということもできる。また、隙間G2は、支持部材17および第2の遮蔽壁15を含む構成に設けられた開口部であるということもできる。
【0037】
次に、貫通孔15aについて詳細に説明する。第2の遮蔽壁15に設けられた貫通孔15aの開口面積が小さすぎる場合、十分な量の消弧性ガスを、第2の遮蔽壁15の外側の空間に流出させることができない虞がある。逆に、貫通孔15aの開口面積が大きすぎると、貫通孔15aの部分で渦が生じやすくなる。渦が発生すると、渦の発生部分で流れが滞留するため、貫通孔15aの開口面積が小さい場合と同じことになり、十分な量の消弧性ガスを第2の遮蔽壁15の外側の空間に流出させることができない虞がある。
【0038】
そこで、
図9に示すように、貫通孔15aの軸方向Aに沿った長さh(高さ)が、18mm以上55mm以下となるように、貫通孔15aを設ける。これにより、渦を発生させることなく、十分な量の消弧性ガスを貫通孔15aを介して第2の遮蔽壁15の外側の空間に流出させることができる。本実施形態では、貫通孔15a1,15a2,15a3の軸方向Aに沿った長さh1,h2,h3が、それぞれ18mm以上55mm以下の範囲に設定されている。また、貫通孔15aの軸方向Aに沿った長さhは、20mm以上50mm以下とすることがより好ましい。
【0039】
ここで、
図10は、貫通孔15aの軸方向Aに沿った長さhと、圧力損失の比との相関関係を示している。
図10の横軸は、貫通孔15aの軸方向Aに沿った長さhであり、
図10の縦軸は、圧力損失の比である。圧力損失の比は、軸方向Aの長さhが20mm〜50mmの貫通孔15aの圧色損失に対する、各貫通孔15aの圧力損失の比である。
図10に示すように、貫通孔15aの軸方向Aに沿った長さhが上記の範囲の場合、圧力損失が小さくなることが判明した。すなわち、高温の消弧性ガスが貫通孔15aから円滑に遮蔽部19外へ流出することが判明した。
【0040】
次に、貫通孔15aの開口面積について
図9を参照して説明する。開口面積は、一例として、貫通孔15a1の開口端部15aaの面積である。まずは、第2の遮蔽壁15に、軸方向Aに沿って、3個の貫通孔15a1,15a2,15a3が設けられた場合の各貫通孔15a1,15a2,15a3の開口面積について説明する。貫通孔15a1の開口面積をS1、貫通孔15a2の開口面積をS2、貫通孔15a3の開口面積をS3、貫通孔15a1,15a2,15a3の開口面積S1,S2,S3の合計をSとする。このとき、各々の貫通孔15aの開口面積Si(但し、iは、1〜3の自然数)の合計面積Sに対する比Si/Sの値が、S1/S=0.45±0.05、S2/S=0.23±0.05、S3/S=0.32±0.05となるように貫通孔15aを設ける。面積比は±0.05としているとおり、5%の範囲を持たせている。このようにすることにより、渦を発生させることなく、十分な量の消弧性ガスを第2の遮蔽壁15の外側の空間に流出させることができる。
【0041】
次に、軸方向Aに沿ってn個(但し、nは、3以上の自然数)の貫通孔15aが軸方向Aの他方に向かって順に設けられた場合について説明する。貫通孔15a1の開口面積をS1、貫通孔15a2の開口面積をS2、貫通孔15anの開口面積をSnとし、貫通孔15a1〜15anの開口面積の合計をSとする。このとき、貫通孔15aが3個のときを基準として、S1はS×(0.45×3/n±0.05)とし、Snについても同様に、S×(0.32×3/n±0.05)とする。S1とSnを除いた残りの貫通孔15aについては、S2〜Sn−1は同じ開口面積とし、S×((1−2.31/n)/(n−2)±0.05)とする。各々の貫通孔15aの開口面積Siの合計面積Sに対する比Si/Sがそれぞれ、S1/S=0.45×3/n±0.05、S2/S=(1−2.31/n)/(n−2)±0.05、・・・、Sn−1/S=(1−2.31/n)/(n−2)±0.05、Sn/S=0.32×3/n±0.05となるよう貫通孔15aを設ける。面積比は±0.05としているとおり、5%の範囲を持たせている。このようにすることにより、渦を発生させることなく、十分な量の消弧性ガスを第2の遮蔽壁15の外側の空間に流出させることができる。
【0042】
ここで、
図11は、貫通孔15aの開口面積比と、遮蔽部19内の温度の比との相関関係を示している。
図11の横軸は、貫通孔15aの開口面積比を示している。開口面積比は、貫通孔15a1の開口面積S1と、貫通孔15a2の開口面積S2と、貫通孔15a3の開口面積S3との比である。
図11の孔面積比α1は、S1:S2:S3=4:3:3の場合である。
図11の孔面積比α2は、S1:S2:S3=45:23:32の場合である。
図11の縦軸は、遮蔽部19内の温度の比を示している。遮蔽部19内の温度は、一例として遮蔽部19内の平均温度である。温度の比は、孔面積比α2の場合の遮蔽部19内の温度に対する、各孔面積比α1,α2での遮蔽部19内の温度の比である。
図11に示すように、各貫通孔15a同士の開口面積の比を上記のようにすることにより、遮蔽部19内の温度が下がることが判明した。すなわち、高温の消弧性ガスが貫通孔15aから円滑に遮蔽部19外へ流出することが判明した。
【0043】
次に、第2の遮蔽壁15の内側の空間の容積に関わる寸法について
図9を参照して説明する。ここで、第1の遮蔽壁14の構造体18側の端14a(端面)と、構造体18の第1の遮蔽壁14側の端18aとの間の軸方向Aに沿った長さをL1とし、可動アーク接触子21と対向アーク接触子11とが軸方向Aに最大に開離(離間)した状態での、絶縁ノズル50の第1の遮蔽壁14(構造体18、第1の遮蔽壁14)側の端50bと、構造体18の第1の遮蔽壁14側の端18aとの間の軸方向Aに沿った長さを、L2とする。そして、L1>L2となるようにする。これにより、例えば、アーク放電Adの熱エネルギーによって熱せられた高温の消弧性ガスを低温の消弧性ガスと混合して十分に冷却するのに必要な第2の遮蔽壁15の内側の空間を確保しやすい。また、この場合、貫通孔15aの大きさや貫通孔15a間の面積比を考慮すると、L1をL2の1.2倍程度にするのが好ましい。構造体18の第1の遮蔽壁14側の端18aは、本実施形態の構成では、支持部材17の端である。なお、構造体18の第1の遮蔽壁14側の端18aが対向アーク接触子11の端となる構成であってもよい。また、支持部材17の軸方向Aの他方の側の端17aから、第2の遮蔽壁15の軸方向Aの他方の側の端15bまでの軸方向Aに沿った長さをL2として、L1>L2となるようにしてもよい。支持部材17の端17aは、支持部材17の第1の遮蔽壁14とは反対側の端ということができる。また、第2の遮蔽壁15の端15bは、第2の遮蔽壁15の第1の遮蔽壁14とは反対側の端ということができる。
【0044】
ここで、
図12は、L1/L2(長さ比)と、遮蔽部19内の温度の比との相関関係を示している。
図12の横軸は、L1/L2を示している。
図12の縦軸は、遮蔽部19内の温度の比を示している。遮蔽部19内の温度は、一例として遮蔽部19内の平均温度である。温度の比は、L1/L2=1.57の場合の遮蔽部19内の温度に対する、各L1/L2での遮蔽部19内の温度の比である。
図12に示すように、L1>L2とすることにより、遮蔽部19内の温度が下がることが判明した。すなわち、高温の消弧性ガスが低温の消弧性ガスと混合し、消弧性ガスの温度が十分に低下することが判明した。
【0045】
図13は、対向アーク接触子11付近の温度の時間履歴を示している。
図13の横軸は時間(経過時間)を示し、縦軸は、対向アーク接触子11付近の温度を示している。また、
図13は、L1がL2の1.2倍程度の場合の、遮断電流の電流値が大きい条件における対向アーク接触子11付近の温度の時間履歴の数値シミュレーションの結果である。
図13から、アーク放電Adの発生による高温状態から、消弧性ガスをアーク放電Adに吹付けて密閉容器30内に流出させることで、急激に温度が低下していることがわかる。この結果、電流が遮断される。
【0046】
また、従来のガス遮断器では、消弧性ガスが絶縁ノズル50から排気筒13内へ急激に流れ込むと、排気筒13内で消弧性ガスの圧力が急激に上昇し、圧力波が生じる虞がある。圧力波により、消弧性ガスの円滑な流れが阻害されると、消弧性ガスによるアーク放電Adの消弧が、より円滑に、あるいは確実に行われにくくなる虞がある。この点、本実施形態によれば、第1の遮蔽壁14および第2の遮蔽壁15が適宜にガス流の抵抗要素として作用するため、第1の遮蔽壁14および第2の遮蔽壁15が無い場合に比べて、排気筒13内での圧力の急激な上昇が抑制され、圧力波の発生やアーク接触子付近への伝播が緩和されうる。また、本実施形態では、第1の遮蔽壁14および第2の遮蔽壁15によって、排気筒13内に消弧性ガスの屈曲した通路が構成されている。よって、第1の遮蔽壁14および第2の遮蔽壁15は、屈曲通路構成部や、ラビリンス構成部とも称されうる。なお、板状の第1の遮蔽壁14は、その効果が得られる範囲で軸方向Aと交差していればよく、完全に直交している必要はない。また、筒状の第2の遮蔽壁15は、その効果が得られる範囲で軸方向Aに沿っていればよく、断面形状や直径が軸方向Aに沿う全範囲において一定である必要はない。
【0047】
上記構成では、絶縁ノズル50から排気筒13内に当初到来したガス流は、第2の遮蔽壁15の内側から貫通孔15aを介して、第2の遮蔽壁15の外側に流れる。本実施形態では、貫通孔15aの軸方向Aに沿った長さh(高さ)が18mmから55mmの範囲であるため、貫通孔15aの縁において、渦の発生が緩和され、渦による貫通孔15aの実質の流路断面積が減少することなく、ガス流は、貫通孔15aを介して第2の遮蔽壁15の外側へより円滑に流出することができる。よって、本実施形態によれば、消弧性ガスによるアーク放電Adの消弧が、より確実にあるいはより効率良く行われうる。
【0048】
また、遮断電流の電流値が大きい場合、熱パッファ室25と排気筒13内の間の圧力比が大きくなり過ぎ、消弧性ガスの円滑な排気が阻害される虞がある。また、絶縁ノズル50から排気筒13内へのガス流量が増大すると、第2の遮蔽壁15の内側の第1の遮蔽壁14に近い領域で圧力が高まりやすい。これに対して、本実施形態では、第2の遮蔽壁15には、n個(但し、nは、3以上の自然数)の貫通孔15aが軸方向Aに沿って間隔をあけて設けられている。そして、n個の貫通孔15aのうち第1の遮蔽壁14に最も近い貫通孔15a1の開口面積S1の、n個の貫通孔15aの各々の開口面積Siの合計(合計面積)に対する比が、0.45×3/n±0.05である。また、n個の貫通孔15aのうち対向アーク接触子11に最も近い貫通孔15a3の開口面積S3の、上記合計に対する比が、0.32×3/n±0.05である。また、n個の貫通孔15aのうち、第1の遮蔽壁14に最も近い貫通孔15a1と対向アーク接触子11に最も近い貫通孔15a3との間に設けられた貫通孔15a2の開口面積S2の、上記合計に対する比が、(1−2.31/n)/(n−2)±0.05である。これにより、ガス流は貫通孔15aを介して、第2の遮蔽壁15の外側へより円滑に流出することができる。よって、本実施形態によれば、消弧性ガスによるアーク放電Adの消弧が、より確実にあるいはより効率良く行われうる。
【0049】
また、本実施形態では、対向アーク接触子11は、第2の遮蔽壁15内に収容され、支持部材17を介して第2の遮蔽壁15に支持されている。対向アーク接触子11と支持部材17とは、構造体18を構成している。そして、第1の遮蔽壁14の構造体18側の端14aと構造体18の第1の遮蔽壁14側の端18aとの間の軸方向Aに沿った長さL1が、可動アーク接触子21と対向アーク接触子11とが軸方向Aに最大に離間(開離)した状態での、絶縁ノズル50の第1の遮蔽壁14側の端50bと構造体18の第1の遮蔽壁14側の端18aとの間の軸方向Aに沿った長さL2、よりも長い。これにより、アーク放電Adの熱エネルギーによって熱せられた高温の消弧性ガスを低温の消弧性ガスと混合して十分に冷却することができる。よって、本実施形態によれば、消弧性ガスによるアーク放電Adの消弧が、より確実にあるいはより効率良く行われうる。
【0050】
また、本実施形態では、第2の遮蔽壁15内に流入した消弧性ガスは、対向アーク接触子11と第2の遮蔽壁15との間を超音速で通過し、対向アーク接触子11と第2の遮蔽壁15との間を通過した後に第2の遮蔽壁15内で亜音速となり、貫通孔15aに流入する。これにより、消弧性ガスが亜音速で貫通孔15aに流入するので、消弧性ガスが超音速で貫通孔15aに流入する場合に比べて、圧力損失を低減することができる。よって、本実施形態によれば、消弧性ガスによるアーク放電Adの消弧が、より確実にあるいはより効率良く行われうる。
【0051】
また、本実施形態では、第2の遮蔽壁15は、絶縁ノズル50を軸方向Aに案内する案内部として機能する。よって、本実施形態によれば、絶縁ノズル50が中心軸Axから離れたり傾いたりするのが抑制されうる。また、本実施形態では、絶縁ノズル50は第2の遮蔽壁15内にクリアランスをあけて軸方向Aに移動可能に収容されている。よって、例えば、直径差で数マイクロメートルなど、クリアランスを比較的狭く設定することにより、絶縁ノズル50の外周に沿った消弧性ガスの漏れを抑制することができる。よって、本実施形態によれば、消弧性ガスによるアーク放電Adの消弧が、より確実にあるいはより効率良く行われうる。
【0052】
また、以上のような構成のガス遮断器とすることで、下記の問題を解決できる。すなわち、熱パッファ室25から下流空間にかけて、途中で圧力が大きくなるなどの圧力分布が単調な減少にならないと、アーク放電Adによって生じた圧力波の対向アーク接触子11側への伝播や消弧性ガスの逆流やよどみが生じる。これにより、消弧性ガスの流出が妨げられるといった問題が生じる場合がある。このような問題を、以上のような構成のガス遮断器とすることで、解決することができる。また、以上のような構成のガス遮断器とすることで、電流遮断時における高温ガスの円滑な流出を実現することができる。また、以上のような構成のガス遮断器とすることで、いかなる電流領域においても、優れた電流遮断性能を有したガス遮断器とすることができるようになる。
【0053】
なお、上記実施形態では、可動接触子部20のみが、密閉容器30に対して軸方向Aに移動可能に構成された例が示されたが、これに限られない。例えば、対向接触子部10も、軸方向Aに移動可能に構成されてもよい。また、熱パッファ室25と機械パッファ室26とは、一体化されてもよいし、熱パッファ室25および機械パッファ室26のうちいずれか一方のみが設けられてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、例えば、対向接触子部10を固定して、可動接触子部20のみ軸方向Aに沿って移動させるような構成の例が示されたが、これに限られない。例えば、対向接触子部10に対して可動接触子部20が相対的に移動するように、対向接触子部10も軸方向Aに沿って移動させ、相対的開極速度を向上させようとする、いわゆるデュアルモーション機構にしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、アーク放電Adの熱エネルギーの作用による蓄圧空間である熱パッファ室25と、駆動装置による機械的作用による蓄圧空間である機械パッファ室26とを隔壁24で仕切り、隔壁24に設けた貫通孔24aを介して連通する構成のガス遮断器1の例が示されたが、これに限られない。例えば、熱パッファ室25と機械パッファ室26を仕切らずに、同一のパッファ室で熱エネルギーの作用および機械的作用による蓄圧を行う構成としてもよいし、熱エネルギーの作用のみにより蓄圧する構成としてもよいし、機械的作用のみにより蓄圧する構成としてもよい。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。