特許第6794416号(P6794416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794416
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】複合ロール
(51)【国際特許分類】
   B21B 27/03 20060101AFI20201119BHJP
   C22C 29/08 20060101ALI20201119BHJP
   C22C 1/05 20060101ALI20201119BHJP
   B22F 8/00 20060101ALI20201119BHJP
   B22F 7/06 20060101ALI20201119BHJP
   B22F 5/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   B21B27/03
   C22C29/08
   C22C1/05 G
   B22F8/00
   B22F7/06 D
   B22F5/00 E
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-186460(P2018-186460)
(22)【出願日】2018年10月1日
(62)【分割の表示】特願2016-574509(P2016-574509)の分割
【原出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2019-55429(P2019-55429A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2018年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】518414476
【氏名又は名称】ハイペリオン マテリアルズ アンド テクノロジーズ (スウェーデン) アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヒューイット, スティーヴン アンドリュー
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011-206819(JP,A)
【文献】 特開平02-269515(JP,A)
【文献】 特開平02-041708(JP,A)
【文献】 特開平08-155507(JP,A)
【文献】 特開平10-076305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00〜8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合ロール(20)を形成するための方法であって、
リサイクル超硬合金並びにCo、Ni及びCrからなる群から選択されるバインダー材料からなる第1の超硬合金の粉末からコア(22)の素地を形成すること、及びコア(22)の素地を第1の焼結温度において焼結すること、並びに
Coからなるバインダー材料を含む第2の超硬合金の粉末からスリーブ(24)の素地を形成すること、及びスリーブ(24)の素地を第2の焼結温度において焼結すること
を含む第一のプロセスによりコア(22)及びスリーブ(24)を別々に形成する工程と
(a)焼結コア(22)の嵌合面(26)及び(b)焼結スリーブ(24)の嵌合面(28)の1つ又は双方を機械加工して、仕上げ面を提供する工程と
焼結コア(22)を液体窒素中に置くことにより、焼結コア(22)を収縮させること、
収縮した焼結コア(22)を焼結スリーブ(24)における開口部に押し込むこと、並びに
焼結コア(22)の熱膨張により、界面(30)に沿って、焼結コア(22)と焼結スリーブ(24)の間に機械接合を形成することであって、界面が、焼結コア(22)の嵌合面(26)の仕上げ面及び焼結スリーブ(24)の嵌合面(28)の仕上げ面を含む、形成すること
を含む、第2のプロセスにより焼結コア(22)及び焼結スリーブ(24)を接触させて組み立てられた関係にする工程と
組み立てられた関係にある焼結コア(22)及び焼結スリーブ(24)を焼結−融合技術に供して、焼結コア(22)及び焼結スリーブ(24)を共に冶金的に融合して、単一の本体(32)を形成する工程と
を含み、
焼結−融合技術が、
組み立てられた焼結コア(22)及び焼結スリーブ(24)を融合温度まで加熱することであって、融合温度が、(i)WC−Coの共晶温度より高く、かつ(ii)第1の焼結温度及び第2の焼結温度より低い、加熱すること、並びに
10分から30分の間の時間、融合温度を等温保持すること
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
第1の超硬合金の粉末が30重量%のバインダー及び残部の第1の超硬合金を含むこと、第1の焼結温度が1360℃であること、第2の超硬合金の粉末が6重量%のバインダー及び残部の第2の超硬合金を含むこと、並びに、第2の焼結温度が1510℃であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
融合温度が1350℃であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第2の超硬合金のバインダーがリサイクル超硬合金の添加がないことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
焼結−融合技術が、外圧の印加なしで、真空又はガス雰囲気に供する炉内で生じることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
焼結−融合技術が、界面(30)全体へのバインダー材料の短距離拡散により進行し、単一の本体(32)を形成することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
焼結−融合技術が、焼結コア(22)及び焼結スリーブ(24)の微細構造内に最小粒子成長を誘導することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
機械加工する工程の後、かつ焼結コア(22)及び焼結スリーブ(24)を接触させて組み立てられた関係とする工程の前に、焼結コア(22)及び焼結スリーブ(24)を洗浄する工程を更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
組み立てられた関係において、焼結コア(22)が焼結スリーブ(24)内に配置され、嵌合面(26)が一致することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
組み立てられた焼結コア(22)及び焼結スリーブ(24)を融合温度まで加熱することが、10℃毎分の加熱速度において生じることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
焼結−融合技術前の焼結コア(22)及び焼結スリーブ(24)の物理特性が、焼結−融合技術後の焼結コア(22)及び焼結スリーブ(24)の物理特性と同一であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、低コストの超硬合金、又は低密度の超硬合金からなる焼結された内部コアを、バージン超硬合金からなる焼結された外側リングに融合させることにより、複合ロールの粉末コストを削減する及び/又は複合ロール自体の全質量を低減する、複合ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]ロールの摩耗は、圧延機の出力を向上させるうえで重要な要因である。長い鋼材の熱間圧延の間に、ロールのパスフォーム表面は摩耗する。摩耗した各パスフォームは、再研磨した後で使用を再開させなければならない。このプロセスは、パスフォームの深さが、「スクラップ径」と呼ばれるそれ以上ロールを使用できないポイントに達するまで繰り返される。図1に示すように、ロール10のスクラップ径12は、外径14と内径16の間のほぼ中央であり、スクラップ径より下の残りの材料18(スクラップ径から内径まで)は使用されずに残る。
【0003】
[0003]バージン材料であるために、これは大きなコストに相当し、したがってロールのこの部分をもっと低コストのリサイクル材で置き換えることが可能であり、これによりロールのコストが低減されるであろう。例えば、標準的な8”径のロールは約25kgの粉末を使用するが、このうち使用されない材料の質量は約10.5kgにもなる。
【発明の概要】
【0004】
[0004]一態様では、本発明の複合ロールは、第1の超硬合金からなる焼結内部コアと、内部コアの周りに配置される第2の超硬合金からなる少なくとも一つの焼結外側スリーブとを含む。少なくとも一つの焼結外側スリーブ及び内部コアの各々は接合面を有し、内部コアと外側スリーブが組み立てられると各接合面が接触してそれらの間に結合界面が形成される。組み立てられた焼結内部コアと少なくとも一つの焼結外側スリーブとが所定の温度に加熱されると、内部コアと外側スリーブが結合界面において融合されて複合ロールが形成される。
【0005】
[0005]別の態様において、複合ロールを形成する方法は、超硬合金からなる焼結内部コアを提供する工程と、第2の超硬合金からなる少なくとも一つの焼結外側スリーブを提供する工程とを含む。焼結内部コア及び少なくとも一つの焼結外側スリーブは、各々が接合面を有し、少なくとも一つの焼結内部コアと外側スリーブとを組み合わせると各接合面が接触してそれらの間に結合界面(3)が形成されるように、組み合わせられる。組み立てられた焼結内部コアと少なくとも一つの焼結外側スリーブとは結合界面(30)において融合し、複合ロールを形成する。
【0006】
[0006]また別の態様では、圧延機の複合ロールは、第1の超硬合金からなる焼結内部コアと、内部コアの周りに配置されて内部コアに融合する第2の超硬合金からなる焼結された外側スリーブとを含み、ここで第1の超硬合金は第2の超硬合金とは異なる。
【0007】
[0007]本発明の複合ロールの一つの利点は、圧延機の維持費を節約できることである。内部コアのために密度の低い炭化物材料を使用することで、たとえそれがバージングレード、例えば外側については6%のバインダーグレード及び内側については10%又は15%のバインダーであったとしても、ロールの全質量が低減し、それにより圧延機のベアリング及びその他駆動ラインの付属品に掛かる負荷が低減するであろう。
【0008】
[0008]前述の概要、並びに以下の実施形態の詳細な説明は、添付図面と関連付けて読むことによってよりよく理解されるであろう。説明される実施形態は、示される厳密な構成及び手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】[0009]既知の圧延機ロールの断面である。
図2】[0010]本発明の複合ロールの斜視図である。
図3】[0011]外側スリーブの斜視図である。
図4】[0012]内部コアの斜視図である。
図5】[0013]本発明の方法の工程を示すフロー図である。
図6】[0014]接合/融合後の複合ロールの断面である。
図7】[0015](a)〜(c)は、組み立て後、融合前の本発明による複合ロールのSEM画像である。
図8】[0016](a)及び(b)は、融合後の本発明による複合ロールのSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0017]本発明の複合ロールは、第1の超硬合金からなる焼結内部コアと、内部コアの周りに配置される第2の超硬合金からなる少なくとも一つの焼結外側スリーブとを含む。少なくとも一つの焼結外側スリーブ及び内部コアの各々は接合面を有し、内部コアと外側スリーブが組み立てられると各接合面が接触してそれらの間に結合界面が形成される。組み立てられた焼結内部コアと少なくとも一つの焼結外側スリーブとが所定の温度に加熱されると、内部コアと外側スリーブが結合界面において融合されて複合ロールが形成される。
【0011】
[0018]図2に示すように、本発明の複合ロール20は、内部コア22と少なくとも一つの外側部分即ちスリーブ24を含む。コア22は、外側スリーブ24内部に挿入されると、後述するように、複式パーツ即ち複合ロールを形成する。
【0012】
[0019]内部コア22は、よりコストの低い超硬合金、即ち、固体のバージン炭化物からなるロールのコストと比較してコストの低い超硬合金、例えばリサイクル超硬合金、又はより密度の低い超硬合金、即ち、固体のバージン炭化物の密度と比較して密度の低い超硬合金からなる、第1の超硬合金又はサーメットから作製することができる。この超硬合金は、最大100重量%のリサイクル炭化物を有することができる。図示されていないが、コアは固体とすることができるか、又は任意の形状を有することができ、図示のような円筒形状若しくはリング形状に限定されない。
【0013】
[0020]外側スリーブ24は、第2の超硬合金若しくはサーメット、例えばバージン超硬合金から作製されている。本明細書に記載のように、バージン超硬合金は、再生された炭化物を含まない炭化物を指す。リサイクル超硬合金は、当業者に既知の冶金学的又は化学的手段、例えば、亜鉛回収プロセス、電解回収、及び、抽出若しくは酸化により再利用される超硬合金を指す。図には単一の外側スリーブを示すが、複合ロールは複数のスリーブを含むことができる。
【0014】
[0021]したがって、内部コア22及び外側スリーブ24は、低融点相成分と高融点相成分を含む、液相材料の圧密体からなる異なるグレードの超硬合金から作製することができる。超硬合金は通常、硬質相を有し、タングステンカーバイドと、金属相のバインダー(典型的にはコバルト、ニッケル、鉄)により結合された、一又は複数のチタン、クロム、バナジウム、タンタル、ニオブの炭化物、窒化物若しくは炭窒化物を様々な割合で含む。バインダーは約6重量%〜30重量%の範囲でありうる。第1及び第2の炭化物の各々は、バインダーを用いて結合されたタングステンカーバイドとすることができる。
【0015】
[0022]超硬合金は異なるグレードで存在する。グレードは、超硬合金の組成と粒度に依存する。例えば、高品質のグレードは、所与の応用分野において、低品質のグレードと比較して高い性能及び信頼性が定量化されうる超硬合金である。本発明により、コア及びスリーブのための他の材料、例えばサーメットが考慮されることを理解されたい。したがって、第1及び第2の炭化物は異なる超硬合金から作製することができる。
【0016】
[0023]外側スリーブ24は、Coのみからなるバインダーを有するグレードを用いて、リサイクル超硬合金を添加せずに、超硬合金のレディトゥプレスパウダー(RTP)からプレス加工することができる。平均的な開始時の、即ち、処理前の提供時の、得られた焼結スリーブのWC粒度は、約5.0〜約8.0μmの範囲とすることができる。外側スリーブと同様に、内部コア22は、超硬合金のRTPから、Co/Ni/Cr並びに超硬合金のリサイクルRTP(例えば、約25重量%の超硬合金が再利用された)からなる混合バインダーグレードを用いてプレス加工することができる。外側スリーブと同様に、内部コアの平均的な開始WC粒度は、約5.0〜約8.0μmとすることができる。
【0017】
[0024]したがって、複合ロール20は二つの部分、即ち低コスト超硬合金からなる内部コア22と、高グレード超硬合金又はバージン超硬合金からなる外側スリーブ24とを含む。複数の外側スリーブを設けることができ、本発明は二つの部分からなる複合ロールに限定されないことを理解されたい。本明細書に更に記載するように、複合ロールを生成するために、バージン品質の超硬合金からなる焼結外側スリーブとリサイクル超硬合金からなる焼結内部コアの各々は融合される。
【0018】
[0025]図3及び4に示すように、外側スリーブ24は内側に接合面26を含み、内部コア22は外側に接合面28を含む。後述するように、焼結内部コア22と少なくとも一つの外側スリーブ24は、接合面26、28において融合されて単一の本体32を形成し、第1及び第2の超硬合金の各々は異なる融点を有し、ここで、組み立てられた、少なくとも一つの焼結内部コアと少なくとも一つの焼結外側スリーブとは、焼結コアとスリーブの焼結温度の中間の温度又は焼結コアとスリーブの焼結温度のうち低い方の融点より低い温度に加熱されて、結合界面30において融合され、単一の本体32(図2)を形成する。単一の本体は、単一の一体式本体と定義される。
【0019】
[0026]図5に示す本発明の方法40によれば、複合ロールのコア22及びスリーブ24は、特定の所望の最終用途に応じて、工程42において別々に形成されて提供される。上記に規定したように、内部コア22は、超硬合金のRTPから、Co/Ni/Cr並びに超硬合金のリサイクルRTPからなる混合バインダーグレードを用いてプレス加工することができ、外側スリーブ24は、超硬合金の(RTP)から、Coのみからなるバインダーを有するグレードを用いて、リサイクル超硬合金を添加せずに、プレス加工することができる。
【0020】
[0027]次いで各々は、工程44において、その実質的に完全な密度及び硬度を得るために焼結される。コア及びスリーブは、それぞれの温度、例えば知られているように1350℃〜1520℃において、真空炉又は焼結−HIP炉内で焼結することができる。
【0021】
[0028]工程46では、コア及びスリーブの結合/接合面26、28は、それら面間に組み立て時の締り嵌めを助ける十分に滑らかな仕上げを施すために、研磨又は機械加工される。例えば、内部コア22は、液収縮させて外側スリーブ中に押し込むことができるように、つまり熱膨張の現象を利用して界面30に強力な接合を形成するために、体窒素中に約30秒間置かれた。
【0022】
[0029]焼結コア及びスリーブは、接合面にきれいな界面を提供するために、例えばアセトン洗浄液中において洗浄することもできる。その後、工程48において個々のパーツを複合ロールへと組み立てる。工程48の組み立ては、内部コア22を外側スリーブ24内に配置してコアとスリーブを組み立てられた関係に接触させ、第1の結合若しくは接合面26を第2の結合若しくは接合面28(図2)と一致させて単一の本体32を形成することを含む。図6を参照のこと。その後、本明細書に記載のように、組み立てられた関係にある部材を加熱する工程を用いて部材同士を融合させる。
【0023】
[0030]先行技術による炭化物部材の組み立ては、二又は一つの未加工部品を一つの焼結部品に同時プレスして焼結することを含むが、これら技術は、異なる収縮レベル及びより高い焼結温度が必要とされる結果、外側に、亀裂に繋がる引っ張り応力が生じるという危険をはらんでいる。本発明の焼結−融合技術は、WC−Co共晶をわずかに上回る温度と、素地に必要とされるより短い等温保持とを利用する。
【0024】
[0031]図5に示すように、工程50において、組み立てられた焼結コアとスリーブは、結合界面30において起こる粒子成長が最小となるために十分に低い温度において融合されることにより接合される。組み立てられた焼結コアとスリーブは、標準の焼結炉内に配置され、外圧の印加なしで、真空又はガス雰囲気に曝される。例えば、組み立てられた複合ロールは、室温から約1350℃の融合温度へと、最高温度において約15分のドウェル時間を用いて一分毎に約10℃で移される。このような融合時間及び加熱サイクルは、最低の融点を有する超硬合金の元の焼結温度及び加熱サイクルより低い。例えば、約10〜約30分間に約1340℃〜約1360℃、更に好ましくは約15分間に約1350℃である。
【0025】
[0032]この工程は、既に密度及び硬度の高い炭化物の部品を用いてそれらを焼結炉中に戻す。しかし、元の焼結作業のように収縮させて更に密度を高める代わりに、コア及びスリーブは本質的に同じ物理特性のまま保持される。
【0026】
[0033]図6に示すように、界面30は、内部コアと外側スリーブの間に位置し、融合で生じる。部品は、コアとスリーブの元の焼結温度のうち最低の温度を有する超硬合金の融点より低い温度で融合される。このように温度がより低く、時間が短いことにより、融合は、界面30全体へのバインダー材料の短距離拡散により進行することができ、微細構造内に最小粒子成長が誘導されるが単一本体32が形成される。
【実施例】
【0027】
[0035]複合ロールは、6%のCoバインダーグレートの外側スリーブと、30%のリサイクルNi/Co/Crバインダーグレードの内部コアとから構成されていた。コア及びスリーブの両方を、50tの手動式プレス機(Sealey Ltd、Suffolk、UK)上において、シングルエンドプレス加工を用いてプレスし、それらにそれぞれ対応する温度、即ち内部コアについては1360℃、及び外側スリーブについては1510℃で焼結した。
【0028】
[0036]表1は、焼結の前と後の、内部コア22(「内部」)及び外側スリーブ24(「外側」)の寸法及び特性を示している。表に示すように、焼結の前と後のコア及びスリーブの重量は、比較的不変である。内部コアはやや収縮し、外側スリーブはやや膨張しているが、全体的な厚みの変化は最小量であった。Hcは、粒径粗大化に起因してやや増大した。したがって、コアとスリーブの間には物理的な接触があり、融合可能である。
【0029】
[0037]
【0030】
[0038]コア及びスリーブの両方を、EDMによって切断し、ISO286−2:1988ISO寸法公差方式及びはめあい方式に従って、まず位置的締り嵌めに研磨した。内部コアを、液体窒素中に約30秒間置き、次いで、例えば焼き嵌め(焼き嵌め公差+20μm)後に、熱膨張の現象を利用して外側スリーブ中に押し込み、強い接合部を形成した。適用された公差は、位置的中間嵌めに向かって徐々に低減し、このプロセスは内部コアが外側スリーブ内部に位置するまで繰り返された。
【0031】
[0039]図7(a)〜7(c)のSEM顕微鏡写真は、融合処理に先立つ二つの部材間の接合ライン26、28を示している。図示のように、コアとスリーブは互いに接合され、融合して単一の複合ロールを形成している。
【0032】
[0040]図8(a)及び8(b)は、融合処理後のコアとスリーブの間の境界ゾーン30を示すSEM顕微鏡写真である。図示のように、若干の粒径粗大化が起こっており、内部コア材料の方がその度合いが大きいが、コアと外側スリーブの間の接合面26、28の接触面間に特異的に起こってはいない。
【0033】
[0041]異なるグレードの材料を接合させることで複合ロールの局所的特性を最適化できることが分かるであろう。したがって、例えば材料の耐摩耗性、靱性、ろう付け性、摩擦係数及び/又は立体窒化ホウ素(cBN)含有量を選択することができる。更に、コバルト又は粒径の不一致を選択して、結合金属の融合及びそれによる密度の変化を誘導することができる。これは表面に圧縮応力を誘導し、強靭化効果を付与することができる。例えば、Co含有量/Co平均自由工程/WC粒度を減少させた一又は複数の層が組み込まれる場合、耐疲労性が増大しうる。
【0034】
[0042]本実施形態は、その具体的な態様に関連して説明されているが、他の多くの変形例、修正例、その他の使用法が当業者には明白であろう。したがって、好ましくは、本開示は、本明細書の具体的な実施形態によってではなく、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8