特許第6794429号(P6794429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6794429FRPシートプレス成形方法及び装置、並びにFRP成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794429
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】FRPシートプレス成形方法及び装置、並びにFRP成形品
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/18 20060101AFI20201119BHJP
   B29C 70/40 20060101ALI20201119BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20201119BHJP
   B29C 69/02 20060101ALI20201119BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20201119BHJP
【FI】
   B29C43/18
   B29C70/40
   B29C70/54
   B29C69/02
   B29K105:08
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-507412(P2018-507412)
(86)(22)【出願日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】JP2017011774
(87)【国際公開番号】WO2017164324
(87)【国際公開日】20170928
【審査請求日】2018年9月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-60727(P2016-60727)
(32)【優先日】2016年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 基樹
(72)【発明者】
【氏名】林 健二
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−202692(JP,A)
【文献】 特開平05−185466(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/093572(WO,A1)
【文献】 特開平10−052901(JP,A)
【文献】 特開2011−093213(JP,A)
【文献】 特開平02−043026(JP,A)
【文献】 特開昭61−066619(JP,A)
【文献】 特開平07−266357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00 − 43/58
B29C 70/00 − 70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチックを用いてプレス成形品を成形するFRPシートプレス成形方法であって、
加熱した前記繊維強化プラスチックを、成形型を閉じてキャビティー内でプレス成形するプレス工程と、
前記成形型の閉じた状態を前記プレス工程から維持したまま、前記繊維強化プラスチックの一方の面に形成された注入部から、前記繊維強化プラスチックの内部へ樹脂を加圧注入する補充工程と、を備え、
前記繊維強化プラスチックの層同士の間に前記樹脂の層を配置した前記プレス成形品を成形するFRPシートプレス成形方法。
【請求項2】
成形型のキャビティー内でプレス成形された繊維強化プラスチックシートと、
前記繊維強化プラスチックシートの一方の面に形成された注入部から、前記繊維強化プラスチックシートの内部へ加圧注入された樹脂と、を備え、
前記繊維強化プラスチックシートにおいて、前記樹脂の層は一対の繊維強化プラスチックの層の間に配置される、FRP成形品。
【請求項3】
前記繊維強化プラスチックシートは気泡を含有し、前記樹脂は前記気泡に含浸されている、請求項2に記載のFRP成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチックを用いてプレス成形品を成形するFRPシートプレス成形方法及び装置、並びにFRP成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、FRP材料(繊維強化プラスチック)が樹脂を挟み込む3層構造の成形品について、成形技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2917372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される成形技術を実施するには、2枚のFRPシートを準備する必要があり、製造効率が悪い。
【0005】
本発明は、製造効率を向上させることが可能なFRPシートプレス成形方法及び装置、並びにFRP成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、繊維強化プラスチック(例えば、後述のシート材SM,SM1,SM2)を用いてプレス成形品(例えば、後述のプレス成形品PM)を成形するFRPシートプレス成形方法であって、加熱した前記繊維強化プラスチックを、成形型(例えば、後述の金型2,3)を閉じてキャビティー(例えば、後述のキャビティー5)内でプレス成形するプレス工程と、前記成形型の閉じた状態を前記プレス工程から維持したまま、前記繊維強化プラスチックの一方の面(例えば、後述の下面LS1)に形成された注入部(例えば、後述の注入部IP1,IP2)から、前記繊維強化プラスチックの内部(例えば、後述の内部IN1,IN2)へ樹脂(例えば、後述の溶融樹脂MP)を加圧注入する補充工程と、を備え、前記繊維強化プラスチックの層(例えば、後述の表層TL及び裏層BL)同士の間に前記樹脂(例えば、後述の樹脂PR)の層を配置した前記プレス成形品を成形するFRPシートプレス成形方法を提供する。
【0007】
このように、FRPシートプレス成形方法によれば、繊維強化プラスチック層の間に樹脂層(プラスチック層)を配置したプレス成形品を成形することができ、必要以上に繊維を使用することなく、十分な強度を有するプレス成形品を成形することが可能である。また、プレス成形品の製造効率を向上させることができる。
【0008】
あるいは、上記目的を達成するため本発明は、成形型(例えば、後述の金型2,3)を用いて、繊維強化プラスチック(例えば、後述のシート材SM,SM1,SM2)でプレス成形品(例えば、後述のプレス成形品PM)を成形するFRPシートプレス成形装置であって、前記成形型は、キャビティー(例えば、後述のキャビティー5)に繋がるスプルー(例えば、後述のスプルー7)を備え、加熱した前記繊維強化プラスチックを、前記成形型を閉じて前記キャビティー内でプレス成形してから、前記成形型の閉じた状態を維持したまま、前記繊維強化プラスチックの一方の面(例えば、後述の下面LS1)に形成された注入部(例えば、後述の注入部IP1,IP2)から、前記繊維強化プラスチックの内部(例えば、後述の内部IN1,IN2)へ前記スプルーを介して樹脂(例えば、後述の溶融樹脂MP)を加圧注入し、前記繊維強化プラスチックの層(例えば、後述の表層TL及び裏層BL)同士の間に前記樹脂(例えば、後述の樹脂PR)の層を配置した前記プレス成形品するように用いるFRPシートプレス成形装置を提供する。
【0009】
このように、FRPシートプレス成形装置によれば、繊維強化プラスチック層の間に樹脂層(プラスチック層)を配置したプレス成形品を成形することができ、必要以上に繊維を使用することなく、十分な強度を有するプレス成形品を成形することが可能である。また、プレス成形品の製造効率を向上させることができる。
【0010】
あるいは、上記目的を達成するため本発明は、成形型(例えば、後述の金型2,3)のキャビティー(例えば、後述のキャビティー5)内でプレス成形された繊維強化プラスチック(例えば、後述のシート材SM,SM1,SM2)と、前記繊維強化プラスチックの一方の面(例えば、後述の下面LS1)に形成された注入部(例えば、後述の注入部IP1,IP2)から、前記繊維強化プラスチックの内部(例えば、後述の内部IN1,IN2)へ加圧注入された樹脂(例えば、後述の溶融樹脂MP)と、を備え、前記繊維強化プラスチックの層(例えば、後述の表層TL及び裏層BL)同士の間に前記樹脂(例えば、後述の樹脂PR)の層を配置したFRP成形品を提供する。
【0011】
このように、FRP成形品によれば、繊維強化プラスチック層の間に樹脂層(プラスチック層)を配置しているので、必要以上に繊維を使用することなく製造することができ、そして、十分な強度を有することができる。また、このようなFRP成形品であれば、製造が容易であり、製造効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造効率を向上させることが可能なFRPシートプレス成形方法及び装置、並びにFRP成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るFRPシートプレス成形装置1を示す縦断面図である。
図2】シート材SMの特性を示す断面図であり、(A)は加熱前の状態を示し、(B)は加熱後の状態を示す。
図3】プレス成形品PMを成形する流れを示すFRPシートプレス成形装置1の拡大図であり、(A)はシート材SMの表層TL及び裏層BLの温度が低下した状態を示し、(B)はシート材SMがプレスされた状態を示し、(C)はシート材SMの内部へ溶融樹脂MPが加圧注入される状態を示す。
図4】プレス成形品PMを成形する流れを示すFRPシートプレス成形装置1の拡大図であり、(A)はシート材SMの内部IN1へ溶融樹脂MPが加圧注入される直前の状態を示し、(B)はシート材SMの内部IN1へ溶融樹脂MPが加圧注入される状態を示す。
図5】プレス成形品PMの断面図である。
図6】プレス成形品PMの断面写真であり、(A)は縦断面図であり、(B)は(A)における矢印VIB−VIB方向に視た断面図であり、(C)は(A)における矢印VIC−VIC方向に視た断面図であり、(D)は(A)における矢印VID−VID方向に視た断面図である。
図7】2枚重ねのシート材SM1,SM2の特性を示す断面図であり、(A)は加熱前の状態を示し、(B)は加熱後の状態を示す。
図8】別のプレス成形品を成形する流れを示すFRPシートプレス成形装置1の拡大図であり、(A)はシート材SM1,SM2の内部IN2へ溶融樹脂MPが加圧注入される前の状態を示し、(B)はシート材SM1,SM2の内部IN2へ溶融樹脂MPが加圧注入された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るFRPシートプレス成形装置1を示す縦断面図である。図2は、シート材SMの特性を示す断面図である。図2(A)は、加熱前の状態を示す。図2(B)は、加熱後の状態を示す。図3は、プレス成形品PMを成形する流れを示すFRPシートプレス成形装置1の拡大図である。図3(A)は、シート材SMの表層TL及び裏層BLの温度が低下した状態を示す。図3(B)は、シート材SMがプレスされた状態を示す。図3(C)は、シート材SMの内部IN1へ溶融樹脂MPが加圧注入される状態を示す。図4は、プレス成形品PMを成形する流れを示すFRPシートプレス成形装置1の拡大図である。図4(A)は、シート材SMの内部IN1へ溶融樹脂MPが加圧注入される直前の状態を示す。図4(B)は、シート材SMの内部IN1へ溶融樹脂MPが加圧注入される状態を示す。図5は、プレス成形品PMの断面図である。図6は、プレス成形品PMの断面写真である。図6(A)は、縦断面図である。図6(B)は、図6(A)における矢印VIB−VIB方向に視た断面図である。図6(C)は、図6(A)における矢印VIC−VIC方向に視た断面図である。図6(D)は、図6(A)における矢印VID−VID方向に視た断面図である。
【0015】
図1に示すFRPシートプレス成形装置1は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)のシート材(FRP(Glass/Carbon)シート材)SMをプレス成形する等してプレス成形品(FPR成形品)PM(図5参照)を製造する際に用いられる。具体的に、FRPシートプレス成形装置1は、上下一対の金型2,3と射出成形機(図示省略)等を備えている。
【0016】
上下一対の金型2,3は、射出成形機(図示省略)によって、互いに当接させられて数百トン以上の力が掛けられる。これら上下一対の金型2,3は、互いの間に、シート材SM1をプレスする空間となるキャビティー5を構成する。下側の金型3は、キャビティー5に繋がるスプルー7を有する。キャビティー5には、シート材SMが配置されると共に、スプルー7を介して、射出成形機から溶融樹脂MPが加圧注入される。
【0017】
射出成形機(図示省略)は、上下一対の金型2,3を互いに当接させて数百トン以上の力を掛ける。この射出成形機は、上下一対の金型2,3の互いの間に構成されたキャビティー5に対し、スプルー7を介して溶融樹脂MPを加圧注入する。
【0018】
詳細は後述するが、キャビティー5に加圧注入された溶融樹脂MPは、シート材SMの一方の面である下面LS1に形成された注入部IP1から、シート材SMの内部IN1へ浸入する。すなわち、射出成形機(図示省略)は、シート材SMの下面LS1に形成された注入部IP1から、シート材SMの内部IN1へスプルー7を介して溶融樹脂MPを加圧注入する。
【0019】
このように、FRPシートプレス成形装置1は、シート材SMの表層TL及び裏層BLの間に樹脂PR(図5参照)の層を配置したプレス成形品PM(図5参照)を成形する。
【0020】
次に、図2及び図3を参照しながら、FRPシートプレス成形装置1によるFRPシートプレス成形方法について説明する。
【0021】
FRPシートプレス成形装置1によるFRPシートプレス成形方法は、シート材SMを用いてプレス成形品PMを成形する方法である。このFRPシートプレス成形方法は、プレス工程と、補充工程とを備えている。
【0022】
シート材SMは、加熱することでボイド(気泡)を発生させながら膨張し、フェルト状になって柔らかくなる(図2(A)→図2(B)参照)。
【0023】
プレス工程では、図3(A)に示すように、加熱したシート材SMを、金型2,3を閉じてキャビティー5内に配置する。シート材SMは、金型2,3に触れることで表層TL及び裏層BLの温度が下がり、表層TL及び裏層BLが収縮して固くなる。その後、図3(B)に示すように、所定の製品板厚のクリアランスまで上側の金型2を下げ、シート材SMをキャビティー5内でプレスする。
【0024】
補充工程では、図3(C)に示すように、金型2,3の閉じた状態をプレス工程から維持したまま、スプルー7を介してキャビティー5へ溶融樹脂MPを加圧注入する。これにより、シート材SMの一方の面である下面LS1に、注入部IP1となる孔が形成され、当該注入部IP1から、シート材SMの内部IN1に溶融樹脂MPが加圧注入される。すなわち、補充工程では、金型2,3の閉じた状態をプレス工程から維持したまま、シート材SMの一方の面である下面LS1に形成された注入部IP1から、シート材SMの内部IN1へ溶融樹脂MPを加圧注入する。
【0025】
溶融樹脂MPが冷えて固まることにより、シート材SMの表層TL及び裏層BLの間に樹脂PR(図5参照)の層を配置したプレス成形品PM(図5参照)が成形される。
【0026】
次に、図4を参照しながら、FRPシートプレス成形装置1によるFRPシートプレス成形方法において、注入部IP1が形成されるメカニズムについて説明する。
【0027】
プレス工程においてスプルー7を介してキャビティー5へ加圧注入された溶融樹脂MPは、図4(A)に示すように、仮に裏層LS1と下側の金型3との間に流れ込んだとしても、金型3に冷やされて固化し、裏層LS1と金型3との間における流動は止まる。
【0028】
そして、図4(B)に示すように、注入部IP1となる孔が形成され、スプルー7を介してキャビティー5へ加圧注入された溶融樹脂MPは、より抵抗の少ない方に流れていくので、流動抵抗の少ないシート材SMの内部IN1に流れ、3層構造ができる。
【0029】
次に、図5及び図6を参照しながら、FRPシートプレス成形装置1を用いて、FRPシートプレス成形方法によって成形されたプレス成形品PMの構造について説明する。
【0030】
図5及び図6に示すように、プレス成形品(FRP成形品)PMは、シート材SMの表層TL及び裏層BLの間に樹脂PRの層を配置した3層構造を有する。シート材SMは、金型2,3のキャビティー5内でプレス成形されたものである。樹脂PRは、シート材SMの一方の面である下面LS1(図1参照)に形成された注入部IP1(図1参照)から、シート材SMの内部IN1(図1参照)へ加圧注入された後に、冷やされて固化したものである。
【0031】
以上説明した本実施形態のFRPシートプレス成形方法によれば、以下のような効果を奏する。
【0032】
すなわち、FRPシートプレス成形方法は、繊維強化プラスチックのシート材SMを用いてプレス成形品PMを成形する方法であって、加熱したシート材SMを、金型2,3を閉じてキャビティー5内でプレス成形するプレス工程と、金型2,3の閉じた状態をプレス工程から維持したまま、シート材SMの一方の面である下面LS1に形成された注入部IP1から、シート材SMの内部IN1へ溶融樹脂MPを加圧注入する補充工程と、を備え、シート材SMの表層TL及び裏層BLの間に樹脂PRの層を配置したプレス成形品PMを成形する。
【0033】
このように、FRPシートプレス成形方法によれば、シート材SMの表層TL及び裏層BLの間に樹脂PR層を配置したプレス成形品PMを成形することができ、必要以上に繊維を使用することなく、十分な強度を有するプレス成形品PMを成形することが可能である。また、プレス成形品PMの製造効率を向上させることができる。
【0034】
次に、本発明の別の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図7は、2枚重ねのシート材SM1,SM2の特性を示す断面図である。図7(A)は、加熱前の状態を示す。図7(B)は、加熱後の状態を示す。図8は、別のプレス成形品(図示省略)を成形する流れを示すFRPシートプレス成形装置1の拡大図である。図8(A)は、シート材SM1,SM2の内部IN2へ溶融樹脂MPが加圧注入される前の状態を示す。図8(B)は、シート材SM1,SM2の内部IN2へ溶融樹脂MPが加圧注入された状態を示す。なお、本実施形態に係るFRPシートプレス成形装置1は、上述のFRPシートプレス成形装置1と同一の構成であり、上述のシート材SMに代えて、2枚重ねのシート材SM1,SM2を用いてプレス成形品(図示省略)を成形する。
【0035】
詳細は後述するが、キャビティー5に加圧注入された溶融樹脂MPは、2枚重ねのシート材SM1,SM2の一方の面である下面LS2に形成された注入部IP2から、2枚重ねのシート材SM1,SM2の内部IN2へ浸入する。すなわち、射出成形機(図示省略)は、2枚重ねのシート材SM1,SM2の下面LS2に形成された注入部IP2から、2枚重ねのシート材SM1,SM2の内部IN2へスプルー7を介して溶融樹脂MPを加圧注入する。
【0036】
このように、FRPシートプレス成形装置1は、2枚重ねのシート材SM1,SM2の間に樹脂の層を配置したプレス成形品(図示省略)を成形する。
【0037】
次に、図7及び図8を参照しながら、FRPシートプレス成形装置1によるFRPシートプレス成形方法について説明する。
【0038】
FRPシートプレス成形装置1によるFRPシートプレス成形方法は、2枚重ねのシート材SMを用いてプレス成形品(図示省略)を成形する方法である。
【0039】
2枚重ねのシート材SM1,SM2は、上述のシート材SM(図2参照)とは異なり、加熱した場合であっても、膨張することはない(図7(A)→図7(B)参照)。
【0040】
プレス工程では、図8(A)に示すように、加熱した2枚重ねのシート材SM1,SM2を、金型2,3を閉じてキャビティー5内に配置する。この際、2枚重ねのシート材SM1,SM2の下面LS2に形成された注入部IP2を、スプルー7に連続させる。
【0041】
補充工程では、図8(B)に示すように、金型2,3の閉じた状態をプレス工程から維持したまま、スプルー7を介してキャビティー5へ溶融樹脂MPを加圧注入する。これにより、2枚重ねのシート材SM1,SM2の下面LS2に形成された注入部IP2から、2枚重ねのシート材SM1,SM2の内部IN2に溶融樹脂MPが加圧注入される。すなわち、補充工程では、金型2,3の閉じた状態をプレス工程から維持したまま、2枚重ねのシート材SM1,SM2の一方の面である下面LS2に形成された注入部IP2から、2枚重ねのシート材SM1,SM2の内部IN2へ溶融樹脂MPを加圧注入する。
【0042】
溶融樹脂MPが冷えて固まることにより、2枚重ねのシート材SM1,SM2の間に樹脂(図示省略)の層を配置したプレス成形品(図示省略)が成形される。
【0043】
以上説明した本実施形態のFRPシートプレス製造方法によれば、以下のような効果を奏する。
【0044】
すなわち、FRPシートプレス成形方法は、繊維強化プラスチックの2枚重ねのシート材SM1,SM2を用いてプレス成形品(図示省略)を成形する方法であって、加熱した2枚重ねのシート材SM1,SM2を、金型2,3を閉じてキャビティー5内でプレス成形するプレス工程と、金型2,3の閉じた状態をプレス工程から維持したまま、2枚重ねのシート材SM1,SM2の一方の面である下面LS1に形成された注入部IP2から、2枚重ねのシート材SM1,SM2の内部IN2へ溶融樹脂MPを加圧注入する補充工程と、を備え、2枚重ねのシート材SM1,SM2の間に樹脂(図示省略)を配置したプレス成形品(図示省略)を成形する。
【0045】
このように、FRPシートプレス成形方法によれば、2枚重ねのシート材SM1,SM2の間に樹脂(図示省略)層を配置したプレス成形品(図示省略)を成形することができ、必要以上に繊維を使用することなく、十分な強度を有するプレス成形品を成形することが可能である。また、プレス成形品の製造効率を向上させることができる。
【0046】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 FRPシートプレス成形装置
2,3 金型(成形型)
5 キャビティー
7 スプルー
SM,SM1,SM2 シート材(繊維強化プラスチック)
LS1,LS2 下面(一方の面)
IP1,IP2 注入部
IN1,IN2 内部
TL 表層
BL 裏層
MP 溶融樹脂(樹脂)
PR 樹脂
PM プレス成形品(FRP成形品)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8