【実施例】
【0076】
市販のキット又は試薬等を用いた部分については、特に断りのない限り添付のプロトコールに従って実験を行った。
【0077】
(実施例1:トランスファーベクタープラスミドDNAの構築)
相同組換え法により組換えワクシニアウイルスを作製するために使用するトランスファーベクタープラスミドDNAを以下の通りに作製した。
【0078】
(1)pTN−VGF−P−DsRedトランスファーベクタープラスミドDNAの構築
国際公開第2015/076422号に基づいてpUC19−VGFベクターを作製した。より具体的には、pUC19−VGFベクター作製のために、LC16mO株のゲノムDNA(Accession No.AY678277.1)を鋳型に使用し、Invitrogen社のpUC19ベクター(製品コード:54357)を使用した。作製したpUC19−VGFベクターを制限酵素AccIで切断した後、末端を平滑化した。この切断部位に、p7.5kプロモーターとDsRed断片とを含むDNA断片(配列番号22)を挿入することで、トランスファーベクタープラスミドDNAを構築した。構築したプラスミドDNAをpTN−VGF−P−DsRedと称する。
(2)pTN−VGF−SP−IL12及びpTN−VGF−SP−IL7トランスファーベクタープラスミドDNAの構築
pTagBFP−N vector(FP172、Evrogen社)のDNAを鋳型として、2つのプライマー(配列番号1及び配列番号2)によってBFP遺伝子領域を増幅した。そのPCR産物を制限酵素SfiI及びEcoRIで切断し、pTK−SP−LGベクター(国際公開第2015/076422号。但し、LC16mO株のゲノムDNA(Accession No.AY678277.1)を鋳型に使用し、Invitrogen社のpUC19ベクター(製品コード:54357)を使用した。また、pVNC110−Luc/IRES/EGFPプラスミドは国際公開第2011/125469号に記載のpVNC110−Luc/IRES/EGFPを使用した。)の同じ制限酵素部位にクローニングし、合成ワクシニアウイルスプロモーター(Journal of Virological Methods、1997、Vol.66、p.135−138)下にBFPを連結したpTK−SP−BFPを構築した。次に、pTK−SP−BFPを制限酵素SphI及びEcoRIで切断し、末端を平滑化した。こうして得られたDNA断片を、pUC19−VGFベクターを制限酵素AccIで切断し末端を平滑化した部位へクローニングすることで、pTN−VGF−SP−BFPを構築した(
図1)。次に、ヒトIL−12をコードするポリヌクレオチド(ヒトIL−12サブユニットp40、内部リボソーム導入部位及びヒトIL−12サブユニットαを含むポリヌクレオチド。配列番号7)、及びヒトIL−7をコードするポリヌクレオチド(配列番号8)(各ポリヌクレオチドは、5’側に制限酵素サイトaccggtcgccacc(配列番号16)及び3’側に制限酵素サイトgctagcgaattc(配列番号17)をそれぞれ含む)を制限酵素AgeIとNheIで切断した。各ポリヌクレオチド断片をpTN−VGF−SP−BFPの同じ制限酵素部位にクローニングすることで、トランスファーベクタープラスミドDNAを構築した。構築したプラスミドDNAをそれぞれpTN−VGF−SP−IL12及びpTN−VGF−SP−IL7と称する。
(3)pTN−O1L−SP−BFP、pTN−O1L−SP−LacZ、pTN−O1L−SP−IL12、及びpTN−O1L−SP−IL7トランスファーベクタープラスミドDNAの構築
上記(2)と同様の方法で、pTK−SP−BFPを制限酵素SphI及びEcoRIで切断し、末端を平滑化して得られたDNA断片を、pUC19−O1Lベクター(国際公開第2015/076422号。但し、pUC19−VGFベクター作製と同様に、LC16mO株のゲノムDNA(Accession No.AY678277.1)を鋳型に使用し、Invitrogen社のpUC19ベクター(製品コード:54357)を使用した。O1L遺伝子領域はpUC19ベクターのXbaIサイトに挿入した。)を制限酵素XbaIで切断し末端を平滑化した部位へクローニングすることで、トランスファーベクタープラスミドDNAを作製した(
図1)。作製したプラスミドDNAをpTN−O1L−SP−BFPと称する。次に、ヒトに対してコドンを最適化した大腸菌LacZ遺伝子を含むポリヌクレオチド(配列番号9)、ヒトIL−12をコードするポリヌクレオチド(配列番号7)、及びヒトIL−7をコードするポリヌクレオチド(配列番号8)を制限酵素AgeIとNheIで切断した。LacZ、IL−12、又はIL−7をコードする各ポリヌクレオチド断片をpTN−O1L−SP−BFPベクターの同じ制限酵素部位(AgeI部位及びNheI部位)にクローニングすることで、トランスファーベクタープラスミドDNAを構築した。構築したプラスミドDNAをそれぞれpTN−O1L−SP−LacZ、pTN−O1L−SP−IL12、及びpTN−O1L−SP−IL7と称する。
【0079】
(4)pTN−DsRed(B5R−)及びpTN−B5RΔ1−4トランスファーベクタープラスミドDNAの構築
pB5R(国際公開第2011/125469号。但し、LC16mO株のゲノムDNA(Accession No.AY678277.1)を鋳型に使用した)のDNAを鋳型として、2つのプライマー(配列番号3及び配列番号4)によってB4R遺伝子領域を増幅した。また、pDsRed−Express−N1(Clontech社)のDNAを鋳型として、2つのプライマー(配列番号5及び配列番号6)によってDsRed遺伝子領域を増幅した。前者のPCR産物を制限酵素NotI及びFspIで、後者のPCR産物を制限酵素FspI及びMfeIで切断した。この2種類のDNA断片を、制限酵素NotI及びMfeIで切断したpB5Rにクローニングすることで、トランスファーベクタープラスミドDNAを作製した。作製したプラスミドDNAをpTN−DsRed(B5R−)と称する。一方、pB5Rを制限酵素NotI及びNspIで、又は制限酵素NspI及びSacIで切断した。この2種類のDNA断片を、制限酵素NotIとSacIで切断したpB5Rにクローニングすることで、トランスファーベクタープラスミドDNAを構築した。作製したプラスミドDNAをpTN−B5RΔ1−4と称する。pTN−B5RΔ1−4には4つのSCRドメインが欠失したB5R蛋白質がコードされる。当該アミノ酸配列は配列番号18に示した配列となる。
【0080】
(実施例2:遺伝子組換えワクシニアウイルスの構築)【0081】
ワクシニアウイルスLC16mO株からVGFとO1Lの機能を欠損させた組換えワクシニアウイルス(LC16mO VGF−SP−LucGFP/O1L−p7.5−DsRedと称する)を作製した。これについて、次世代シークエンサーPacBio RSII(Pacific Bioscience社)を用いて、シークエンシングを行い、得られた配列情報から、Sprai[BMC GENOMICS. 2014 AUG 21;15:699.]ソフトウェアを利用してウイルスゲノムの再構成を行って塩基配列を決定したところ、配列番号21で示される塩基配列を有していた。また、当該塩基配列の両末端にはループ配列が付加されており、両末端ループ配列は配列番号19又は20で示される塩基配列であった。
【0082】
(1)
図2に示すウイルスゲノムを持つ組換えワクシニアウイルスを回収した。以下、回収手順について具体的に説明する。6ウェルディッシュに80%コンフルエントに培養されたCV1細胞(ATCC CCL−70)又はRK13細胞(ATCC CCL−37)にLC16mO VGF−SP−LucGFP/O1L−p7.5−DsRedをMOI(Multiplicity of infection)=0.02〜0.1で感染させ、室温で1時間吸着させた。実施例1(3)で構築したpTN−O1L−SP−BFPをFuGENE(登録商標) HD Transfection Reagent(Roche)と混合し、マニュアルに従って細胞に添加して取り込ませ、5%CO
2存在下37℃にて2〜5日間培養した。細胞を凍結融解後、ソニケーション処理し、下記操作により単一のプラークを取得できる程度にOpti−MEM(Invitrogen)にて希釈した。得られた希釈液100μLを6ウェルディッシュにサブコンフルエントになったBS−C−1細胞(ATCC CCL−26)又はRK13細胞に添加して接種した。0.8%メチルセルロース(和光純薬、136−02155)、5%ウシ胎児血清、0.225%炭酸水素ナトリウム(和光純薬、195−16411)及びGlutaMAX(TM) Supplement I(GIBCO、35050−061)含有イーグルMEM培地(ニッスイ、05900)を2mL加え、5%CO
2存在下37℃で2〜5日間培養した。培地を除き、BFP発現を指標にプラークをチップの先で掻き取り、Opti−MEMに浮遊させた。BS−C−1細胞又はRK13細胞にてさらに3回以上この操作を繰り返し、プラーク純化し、ウイルスプラークを回収した(本実施例において、以下、ここまでの手順を「回収」という。)。回収したプラークをOpti−MEMに浮遊させ、ソニケーションした。High Pure Viral Nucleic Acid Kit(Roche)を用いマニュアルに従って、前記ソニケーション溶液200μLからゲノムDNAを抽出し、PCRによるスクリーニングに供した。VGFに関しては2つのプライマー(配列番号10及び配列番号11)によって、O1Lに関しては2つのプライマー(配列番号12及び配列番号13)によって、B5Rに関しては2つのプライマー(配列番号14及び配列番号15)によってPCRを行った。所定の大きさのPCR産物が検出されたクローンのうち、PCR産物の塩基配列が正しいことをダイレクトシーケンスにより確認したウイルスクローン(LC16mO VGF−SP−LucGFP/O1L−SP−BFPと称する。
図2)を選択し、A549細胞(ATCC CCL−185)又はRK13細胞にて増殖させた後、RK13細胞にてウイルス力価を測定した。LC16mO VGF−SP−LucGFP/O1L−SP−BFP及び実施例1(4)で作製したpTN−DsRed(B5R−)を用いて、BFP発現の代わりにDsRed発現を指標に、上記と同様の方法にて組換えウイルスを回収した。回収したウイルスをLC16mO Δ−DsRed VGF−SP−LucGFP/O1L−SP−BFPと称する(
図2)。
【0083】
(2)B5R蛋白質の4つのSCRドメインを欠失した組換えウイルスを回収した。具体的には、実施例2(1)で作製したLC16mO Δ−DsRed VGF−SP−LucGFP/O1L−SP−BFP及び実施例1(4)で構築したpTN−B5RΔ1−4を用いて、BFP発現の代わりにDsRed発現消失を指標に、実施例2(1)と同様の方法にて組換えウイルスを回収した。回収したウイルスをLC16mO ΔSCR VGF−SP−LucGFP/O1L−SP−BFPと称する(
図2)。また、作製したLC16mO ΔSCR VGF−SP−LucGFP/O1L−SP−BFP及び実施例1(1)で構築したpTN−VGF−P−DsRedを用いて、BFP発現の代わりにDsRed発現を指標に、実施例2(1)と同様の方法にて組換えウイルスを回収した。回収したウイルスをLC16mO ΔSCR VGF−p7.5−DsRed/O1L−SP−BFPと称する(
図2)。次に、作製したLC16mO ΔSCR VGF−p7.5−DsRed/O1L−SP−BFP及び実施例1(3)で構築したpTN−O1L−SP−LacZを用いて、BFP発現の代わりにBFP発現消失を指標に、実施例2(1)と同様の方法にて組換えウイルスを回収した。回収したウイルスをLC16mO ΔSCR VGF−p7.5−DsRed/O1L−SP−LacZと称する(
図2)。
【0084】
(3)
図3に示すウイルスゲノムを持つ治療遺伝子及びマーカー遺伝子を発現するSCR領域欠失組換えワクシニアウイルスを回収した。具体的には、実施例2(2)で作製したLC16mO ΔSCR VGF−p7.5−DsRed/O1L−SP−LacZ並びに実施例1(2)で構築したトランスファーベクタープラスミドDNA(pTN−VGF−SP−IL12、及びpTN−VGF−SP−IL7)をそれぞれ用いて、BFP発現の代わりにDsRed発現消失を指標に、実施例2(1)と同様の方法にて各組換えウイルスを回収した。回収したそれぞれのウイルスをLC16mO ΔSCR VGF−SP−IL12/O1L−SP−LacZ(以下、「hIL12搭載ワクシニアウイルス」と称する。)、LC16mO ΔSCR VGF−SP−IL7/O1L−SP−LacZ(以下、「hIL7搭載ワクシニアウイルス」と称する。)と称する(
図3)。精製のために、各組換えウイルスをA549細胞あるいはRK13細胞に感染させた。5%CO
2存在下37℃で2〜5日間培養した後、感染細胞を回収した。細胞を凍結融解し、ソニケーション処理した。OptiPrep(アクシスシールド社)を用いて密度勾配遠心分離法により精製した。その後、RK13細胞にて各ウイルスのウイルス力価を測定した。
【0085】
(4)
図4に示すウイルスゲノムを持つヒトIL−7をコードするポリヌクレオチド及びヒトIL−12をコードするポリヌクレオチドを発現するSCRドメイン欠失組換えワクシニアウイルスを回収した。
(4−1)具体的には、実施例2(2)で作製したLC16mO ΔSCR VGF−p7.5−DsRed/O1L−SP−BFP及び実施例1(2)で構築したトランスファーベクタープラスミドDNA pTN−VGF−SP−IL12を用いて、BFP発現の代わりにDsRed発現消失を指標に、実施例2(1)と同様の方法にて各組換えウイルスを回収した。回収したウイルスをLC16mO ΔSCR VGF−SP−IL12/O1L−SP−BFPと称する。
【0086】
(4−2)次に、実施例2(4−1)で作製したLC16mO ΔSCR VGF−SP−IL12/O1L−SP−BFP及び実施例1(3)で構築したトランスファーベクタープラスミドDNA pTN−O1L−SP−IL7を用いて、BFP発現の代わりにBFP発現消失を指標に、実施例2(1)と同様の方法にて各組換えウイルスを回収した。回収したウイルスをLC16mO ΔSCR VGF−SP−IL12/O1L−SP−IL7(以下、後記実施例において、「hIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルス」とも称する。)と称する(
図4)。各組換えウイルスを実施例2(3)の方法で精製した後、RK13細胞にて各ウイルスのウイルス力価を測定した。
【0087】
(実施例3:遺伝子組換えワクシニアウイルスの腫瘍溶解性)
実施例2で作製されたhIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスについて、各種ヒトがん細胞における溶解能力(細胞死滅能力)を評価した。また、実施例2で作製されたhIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの2種類の組合せ混合物についても、同様に各種ヒトがん細胞における溶解能力を評価した。
【0088】
具体的にはまず、96ウェルプレート(AGCテクノグラス社)に培地(10%ウシ胎児血清(GEヘルスケア社)及び1%ペニシリンストレプトマイシン(ライフテクノロジーズ社)を含有する、下記に記載の培地)で1×10
4個/mLになるよう懸濁した各細胞を100μLずつ添加した。一晩培養後、1)hIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルス、及び、2)hIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとを1対1の濃度で組み合わせた混合物(以下、「hIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの混合物」と称する)を、Opti−MEM(ライフテクノロジーズ社)を用いて、それぞれ5×10
4PFU/mL、5×10
5PFU/mL、及び5×10
6PFU/mLに希釈した。各ウェルに20μLずつ各ウイルス溶液を添加して、MOI=1.0、10、100になるように感染させた。コントロールとして、細胞を添加しないウェル、及び、ウイルスの代わりにOpti−MEMを添加したウェル(MOI=0)を作製した。その後、CO
2濃度5%、37℃に設定したCO
2インキュベータにて5日間培養した。5日後の細胞生存率を、CellTiter−Glo Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社)を用いて測定した。具体的には、上記アッセイキットのプロトコールに従い、CellTiter−Glo Reagentを各ウェルに100μLずつ添加して30分静置後、全量を96ウェルブラックプレート(コーニング社)に移し、各ウェルの発光強度をEnSpire(パーキンエルマー社)を用いて測定した。各ウェルでの細胞生存率の算出においては、細胞を播種していないウェルの値を0%生存、細胞を播種してウイルスを添加していないウェルを100%生存とした。
【0089】
評価した細胞は、悪性黒色腫細胞RPMI−7951(ATCC HTB−66)、肺腺癌細胞HCC4006(ATCC CRL−2871)、肺癌細胞A549(ATCC CCL−185)、小細胞肺癌細胞DMS 53、肺扁平上皮癌細胞NCI−H226(ATCC CRL−5826)、腎癌細胞Caki−1(ATCC HTB−46)、膀胱癌細胞647−V(DSMZ ACC 414)、頭頸部癌細胞Detroit 562(ATCC CCL−138)、乳癌細胞JIMT−1(DSMZ ACC 589)、乳癌細胞MDA−MB−231(ATCC HTB−26)、食道癌細胞OE33(ECACC 96070808)、グリア芽細胞腫U−87MG(ECACC 89081402)、神経芽細胞腫GOTO(JCRB JCRB0612)、骨髄腫RPMI 8226(ATCC CCL−155)、卵巣癌細胞SK−OV−3(ATCC HTB−77)、卵巣癌細胞OVMANA(JCRB JCRB1045)、大腸癌細胞RKO(ATCC CRL−2577)、大腸癌細胞HCT 116、膵癌細胞BxPC−3(ATCC CRL−1687)、前立腺癌細胞LNCaP clone FGC(ATCC CRL−1740)、肝細胞癌JHH−4(JCRB JCRB0435)、中皮腫NCI−H28(ATCC CRL−5820)、子宮頸癌細胞SiHa(ATCC HTB−35)、及び、胃癌細胞Kato III(RIKEN BRC RCB2088)である。
【0090】
培地として、RPMI−7951、HCC4006、DMS 53、NCI−H226、Caki−1、647−V、Detroit 562、JIMT−1、OE33、U−87MG、GOTO、RPMI8226、SK−OV−3、OVMANA、RKO、HCT 116、BxPC−3、LNCaP clone FGC、JHH−4、NCI−H28、及び、Kato IIIの場合はRPMI1640培地(シグマ アルドリッチ社、R8758)を、A549及びMDA−MB−231の場合はDMEM培地(シグマ アルドリッチ社、D6429)を、SiHaの場合はEMEM培地(ATCC 30−2003)をそれぞれ使用した。結果は、
図5−1〜5−4に示される通りであった。ここでは、hIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスによる効果は、
図5−1及び5−2に分けて記載され、hIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの混合物による効果は、
図5−3及び5−4に分けて記載される。
【0091】
その結果、hIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスが、試験した全てのヒトがん細胞において、細胞を死滅する能力を有していることが明らかとなった(
図5−1及び5−2)。また、hIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの混合物についても、試験した全てのヒトがん細胞において、細胞を死滅する能力を有していることが明らかとなった(
図5−3及び5−4)。なお、
図5−1から
図5−4では、細胞株毎に左からMOI=0、1、10、100の順に腫瘍溶解性を示している。
【0092】
(実施例4:遺伝子組換えワクシニアウイルスが感染したがん細胞からの蛋白質産生)
hIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスをがん細胞に感染させた際に、がん細胞から産生されるヒトIL−7蛋白質及びヒトIL−12蛋白質の濃度を測定した。さらに、hIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの混合物についても同様に、がん細胞に感染させた際にがん細胞から産生されるヒトIL−7蛋白質及びヒトIL−12蛋白質の濃度を測定した。
【0093】
ヒトIL−7蛋白質の測定においては具体的にはまず、10%ウシ胎児血清及び1%ペニシリンストレプトマイシンを含むRPMI1640培地で1×10
4個/mLになるよう懸濁したSK−OV−3卵巣癌細胞を、96ウェルプレートに100μL播種した。一晩培養後、1)hIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルス、又は、2)hIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの混合物をOpti−MEMで調製して、MOI=1.0になるように20μLずつ添加して感染させた。その後、CO
2濃度5%、37℃に設定したCO
2インキュベータにて24時間培養し、培養上清を回収した。培養上清中に含まれる蛋白質濃度を、表1に列記したELISAキット及びEnSpireを用いて測定した。
【0094】
ヒトIL−12蛋白質の測定においては、10%ウシ胎児血清及び1%ペニシリンストレプトマイシンを含むRPMI1640培地で1×10
5個/mLになるよう懸濁したSK−OV−3卵巣癌細胞を、96ウェルプレートに100μL播種した。一晩培養後、1)hIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルス、又は、2)hIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの混合物をOpti−MEMで調製して、MOI=1.0になるように20μLずつ添加して感染させた。その後、CO
2濃度5%、37℃に設定したCO
2インキュベータにて48時間培養し、培養上清を回収した。培養上清中に含まれる蛋白質濃度を、表1に列記したELISAキット及びEnSpireを用いて測定した。
【0095】
表1:実施例4に使用したELISAキット
【表1】
【0096】
その結果、hIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスを添加した細胞、及びhIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの混合物を添加した細胞から、ヒトIL−12蛋白質及びヒトIL−7蛋白質が産生されることが明らかになった(表2−1及び2−2)。
【0097】
表2−1:培養上清中のヒトIL−12蛋白質濃度
【表2-1】
【0098】
表2−2:培養上清中のヒトIL−7蛋白質濃度
【表2-2】
【0099】
(実施例5:マウスIL−12をコードするポリヌクレオチドを搭載するトランスファーベクタープラスミドDNAの構築及びマウスIL−12をコードするポリヌクレオチドを搭載する遺伝子組換えワクシニアウイルスの構築)
(1)実施例1(2)に記載の方法に従い、トランスファーベクタープラスミドDNA pTN−VGF−SP−mIL12を構築した。実施例1(2)に記載の方法において、ヒトIL−12をコードするポリヌクレオチド(配列番号7)に代えて、マウスIL−12をコードするポリヌクレオチド(マウスIL−12サブユニットp40、内部リボソーム導入部位及びマウスIL−12サブユニットαを含むポリヌクレオチド。配列番号23)を用い、このポリヌクレオチド断片をpTN−VGF−SP−BFPにクローニングした。
(2)実施例1(3)に記載の方法に従い、トランスファーベクタープラスミドDNA pTN−O1L−SP−Luc2を構築した。実施例1(3)に記載の方法において、大腸菌LacZ遺伝子を含むポリヌクレオチド(配列番号9)に代えて、ルシフェラーゼLuc2遺伝子をコードするポリヌクレオチド(Accession No.DQ188840の100番目から1752番目)を用い、このポリヌクレオチド断片をpTN−O1L−SP−BFPにクローニングした。
【0100】
(3)実施例2(2)の方法に従い、組換えウイルスを回収した。実施例2(2)の方法において、LC16mO ΔSCR VGF−p7.5−DsRed/O1L−SP−BFPと、pTN−O1L−SP−LacZに代えて実施例5(2)で作製したpTN−O1L−SP−Luc2とを用いた。回収したウイルスをLC16mO ΔSCR VGF−p7.5−DsRed/O1L−SP−Luc2と称する(以下、本ウイルスを、「対照ワクシニアウイルス」とも称する。)。
【0101】
(4)実施例2(3)の方法に従い、組換えウイルスを回収した。実施例2(3)の方法において、LC16mO ΔSCR VGF−p7.5−DsRed/O1L−SP−LacZに代えて実施例5(3)で作製したLC16mO ΔSCR VGF−p7.5−DsRed/O1L−SP−Luc2と、pTN−VGF−SP−IL12に代えて実施例5(1)で作製したpTN−VGF−SP−mIL12とを用いた。回収したウイルスを、LC16mO ΔSCR VGF−SP−mIL12/O1L−SP−Luc2と称する(以下、「mIL12搭載ワクシニアウイルス」とも称する。)。
【0102】
(5)実施例2(4−1)の方法に従い、組換えウイルスを回収した。実施例2(4−1)の方法において、LC16mO ΔSCR VGF−p7.5−DsRed/O1L−SP−BFPと、pTN−VGF−SP−IL12に代えて実施例5(1)で作製したpTN−VGF−SP−mIL12とを用いた。回収したウイルスを、LC16mO ΔSCR VGF−SP−mIL12/O1L−SP−BFPと称する。
さらに、実施例2(4−2)の方法に従い、組換えウイルスを回収した。実施例2(4−2)の方法において、LC16mO ΔSCR VGF−SP−IL12/O1L−SP−BFPに代えて上記で作製したLC16mO ΔSCR VGF−SP−mIL12/O1L−SP−BFPと、pTN−O1L−SP−IL7とを用いた。回収したウイルスをLC16mO ΔSCR VGF−SP−mIL12/O1L−SP−IL7と称する(以下、「mIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルス」とも称する。)。
【0103】
(実施例6:担癌ヒト化マウスにおける遺伝子組換えワクシニアウイルスの抗腫瘍効果)
hIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスについて、ヒト癌細胞を移植したヒト化マウス(重度免疫不全マウスにヒト造血幹細胞を移入することで免疫系をヒト免疫細胞に置き換えたマウス)を用いて、生体内における抗腫瘍効果を評価した。
【0104】
具体的にはまず、ヒト化マウスを作製するために、X線照射装置を用いて2.0グレイの強度でX線照射したNOGマウス(NOD/Shi−scidIL−2RγKO Jic、雌、6週齢、日本クレア株式会社)に3×10
4個のヒト臍帯血由来造血幹細胞(ロンザ社)を尾静脈より注射して移入した。移入の13週後に、PBSで3×10
7個/mLに懸濁したヒト肺癌細胞NCI−H1373(ATCC CRL−5866)をマウスの右背側皮下に100μL注射して移植した。癌細胞移植後にノギスで腫瘍径を測定し、各群の腫瘍体積(短径mm×短径mm×長径mm×0.52)の平均値が37mm
3から47mm
3になるように群分けを行った。同日に、PBSで1.0×10
8PFU/mLの濃度に希釈したhIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスを、20μL腫瘍内に注射した(表中、「hIL12及びhIL7搭載VV投与群」とする。)。PBSを腫瘍内に20μL投与した群を溶媒(PBS)投与群とした。各マウスについて2〜4日毎にノギスで腫瘍径を測定し、上記式に基づいて腫瘍体積を算出して、ウイルス投与後14日の腫瘍体積変化率(%)を、個体毎に次式により算出した(n=7〜8):
ウイルス投与後14日の腫瘍体積変化率(%)=100(%)×ウイルス投与後14日の腫瘍体積(mm
3)/ウイルス投与日の腫瘍体積(mm
3)。
ウイルス投与後14日の腫瘍体積変化率(%)の各群の平均値が100を下回り、かつ、各群のウイルス投与後14日の腫瘍体積とウイルス投与日の腫瘍体積をPaired t−testにて検定し有意差(p値<0.05を有意差ありとする)が認められる場合に、腫瘍退縮効果ありと判定した。
なお本実施例では、hIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルス(2×10
6PFU/個体)に対する比較ウイルスとして、同じ注射量(20μL)及び希釈溶液(PBS)で、対照ワクシニアウイルス(2×10
6PFU/個体)、hIL12搭載ワクシニアウイルス(2×10
6PFU/個体)、又はhIL7搭載ワクシニアウイルス(2×10
6PFU/個体)を用いた(表中、それぞれ、「対照VV投与群」、「hIL12搭載VV投与群」、「hIL7搭載VV投与群」とする。)。
【0105】
その結果、hIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスを投与した群では、ウイルス投与後14日における腫瘍体積変化率の平均値が100%未満を示した。さらに、ウイルス投与後14日での腫瘍体積とウイルス投与日の腫瘍体積をPaired t−testにて検定したところ有意差が認められたことから、腫瘍退縮効果ありと判定した(表3)。したがってhIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスの投与には腫瘍退縮効果があることが明らかになった。一方、hIL12搭載ワクシニアウイルス、又はhIL7搭載ワクシニアウイルスのいずれか一方を投与した群では、腫瘍退縮効果は確認されなかった(表3)。
【0106】
表3:hIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスの担癌ヒト化マウスにおける腫瘍体積変化率(%)
【表3】
【0107】
(実施例7:同系担癌マウスモデルにおける遺伝子組換えワクシニアウイルスの完全寛解導入効果)【0108】
(1)mIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスについて
mIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスについて、同系のマウス癌細胞株を皮下移植したマウス(同系担癌マウス)を用いて生体における完全寛解導入効果を評価した。なお、ヒトIL−12はマウスの免疫細胞に対して反応しないことが知られているため、ヒトIL−12をコードするポリヌクレオチドに代えてマウスIL−12をコードするポリヌクレオチドを搭載した遺伝子組換えワクシニアウイルス(実施例5で作製)を用いた。
【0109】
具体的にはまず、C57BL/6Jマウス(雄、5−7週齢、日本チャールズリバー社)の右腹側に、PBSで4×10
6個/mLに調製したマウス肺癌細胞LL/2(LLC1)(ATCC CRL−1642)(以下、LLC1と称する。)50μLを皮下移植した。実施例6と同様の方法により腫瘍体積を算出し、各群の腫瘍体積の平均値が50mm
3から60mm
3になるように群分けを行った。翌日に、PBSで6.7×10
8PFU/mLの濃度に希釈したmIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスを12匹のマウスに対して30μL腫瘍内注射した(2×10
7PFU、表中、「mIL12及びhIL7搭載VV投与群」とする。)。同様のウイルスの腫瘍内注射は、初回投与の2日後、及び4日後にも実施した。ウイルスに代えてPBSを30μL腫瘍内投与した群を溶媒(PBS)投与群とした。
ノギスで腫瘍径を週に2回測定して腫瘍体積を算出した。最終的にウイルス初回投与の27日後の観察で、触診によって腫瘍が認められない場合を完全寛解と定義し、完全寛解を示した個体の数を計測した。試験期間中に群の平均腫瘍体積が1700mm
3を超えた群に関しては、動物倫理上の観点から安楽死させた。なお本実施例では、mIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルス(2×10
7PFU/回、3回投与)に対する比較ウイルスとして、同じ注射量(30μL/1回投与)及び希釈溶液(PBS)で、対照ワクシニアウイルス、mIL12搭載ワクシニアウイルス、又はhIL7搭載ワクシニアウイルス(それぞれ、2×10
7PFU/回、3回投与)を用いた(表中、それぞれ、「対照VV投与群」、「mIL12搭載VV投与群」、「hIL7搭載VV投与群」とする。)。
【0110】
その結果、mIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスを投与した群では最終的に3例の個体が完全寛解に至った。一方、比較ウイルスを投与した群では完全寛解した個体は得られなかった(表4−1)。したがって、mIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスの投与には、同系担癌マウスモデルにおいて、hIL7搭載ワクシニアウイルス又はmIL12搭載ワクシニアウイルスに比較してより高い完全寛解導入効果があることが明らかになった。
【0111】
表4−1:mIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスの投与により完全寛解に至ったマウス個体数
【表4-1】
【0112】
(2)mIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの混合物について
mIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの1対1混合物(以下、「mIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの混合物」)について、同系担癌マウスを用いて生体における完全寛解導入効果を評価した。
【0113】
(1)と同様に実施した。但し、8×10
6個/mLになるように懸濁したマウス肺癌細胞LLC1を移植した。さらに、6.7×10
8PFU/mLの濃度に希釈したmIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルス30μL(2×10
7PFU)に代えて、mIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの混合物(PBS中、それぞれのウイルスを6.7×10
8PFU/mLに希釈)30μL(各2×10
7PFUずつ/回、3回投与)を使用した(表中、「mIL12搭載VVとhIL7搭載VVとの混合物の投与群」とする。)。マウスの個体数は7匹使用した。比較ウイルスとして、対照ワクシニアウイルス(4×10
7PFU/回、3回投与)、mIL12搭載ワクシニアウイルスと対照ワクシニアウイルスの1対1混合物(各2×10
7PFUずつ/回、3回投与)、又はhIL7搭載ワクシニアウイルスと対照ワクシニアウイルスの1対1混合物(各2×10
7PFUずつ/回、3回投与)を、それぞれ30μLの注射量にて用いた(表中、それぞれ、「対照VV投与群」、「mIL12搭載VVと対照VVとの混合物の投与群」、「hIL7搭載VVと対照VVとの混合物の投与群」とする。)。
【0114】
その結果、mIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの混合物を投与した群では4例の個体が完全寛解に至った。mIL12搭載ワクシニアウイルスと対照ワクシニアウイルスとの混合物を投与した群では1例のみ完全寛解し、他の比較ウイルスを投与した群では完全寛解例はなかった(表4−2)。したがって、mIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの混合物は、同系担癌マウスモデルにおいて、hIL7搭載ワクシニアウイルス又はmIL12搭載ワクシニアウイルスのいずれか一方を含む混合物に比較してより高い完全寛解導入効果があることが明らかになった。
【0115】
表4−2:mIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの混合物の投与により完全寛解に至ったマウス個体数
【表4-2】
【0116】
(実施例8:同系担癌マウスモデルにおける遺伝子組換えワクシニアウイルスの獲得免疫効果(獲得免疫による腫瘍の拒絶効果))
(1)mIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスについて:
mIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスを処置した結果完全寛解したマウスに対して同癌細胞の再移植実験を行い、ウイルスによる獲得免疫効果を評価した。
【0117】
具体的にはまず、実施例7に従ってLLC1担癌マウスを作製し、これにmIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスを腫瘍内投与した(但し、ウイルスの腫瘍内注射は、初回投与の2日後、及び4日後の他に、1日後、3日後にも実施した(全5回)、表中、「mIL12及びhIL7搭載VV投与群」という。)。ウイルス最終投与の23日後に完全寛解したことを確認し、最終投与の51日後になお完全寛解状態が維持されている個体と、これらの個体に週齢を合わせた非ウイルス接種マウス(コントロール群)とに、PBSで8×10
6個/mLに懸濁したLLC1癌細胞を50μL皮下に移植した。実施例6に従って腫瘍体積を算出し、最終的にLLC1移植後14日目の観察で、目視及び触診により腫瘍形成が認められる個体の数を計測し、腫瘍が生着したマウスの個体数/癌細胞を接種したマウスの個体数の割合を求めた。本実施例では、コントロール群とウイルス投与群でFisherの直接確率検定を行い、有意差がある(5%未満)場合に獲得免疫効果ありと評価した。
【0118】
その結果、コントロール群では全10例中10例の全例で皮下腫瘍が形成されたが、mIL12及びhIL7搭載ウイルス投与群では全10例中6例において、再移植したLLC1癌細胞の腫瘍形成が目視でも触診でも認められなかった(表5−1)(P<0.05、Fisherの直接確率検定)。したがって本実施例により、mIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスの投与による獲得免疫効果が確認された。
【0119】
表5−1:完全寛解したマウスにおける癌細胞移植試験の結果
【表5-1】
【0120】
(2)mIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの混合物について:
mIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの混合物を処置した結果完全寛解したマウスに対して同癌細胞の再移植実験を行い、獲得免疫効果を評価した。
【0121】
具体的には(1)と同様に実施した。但し、mIL12及びhIL7搭載ワクシニアウイルスの投与により完全寛解したマウスに代えて、実施例7(2)に従ってmIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの混合物を投与(群分けの1日後、3日後、5日後、全3回)して完全寛解したマウスを使用した(表中、「mIL12搭載VVとhIL7搭載VVとの混合物の投与群」という。)。癌細胞の再移植は、ウイルス最終投与後74日後(完全寛解は最終投与の24日後に判定)に行った。
【0122】
その結果、癌細胞再移植14日後において、コントロール群では8例中全例で皮下腫瘍が形成されたが、mIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの混合物投与群では10例中8例において、再移植したLLC1癌細胞の腫瘍形成が目視でも触診でも認められなかった(表5−2)(P<0.05、Fisherの直接確率検定)。
したがって本実施例により、mIL12搭載ワクシニアウイルスとhIL7搭載ワクシニアウイルスとの混合物の投与による獲得免疫効果が確認された。
【0123】
表5−2:完全寛解したマウスにおける癌細胞移植試験の結果
【表5-2】