【文献】
J. Am. Chem. Soc.,2014年,Vol.136 ,p.10557-10560
【文献】
Angew. Chem. Int. Ed. ,2013年,Vol.52 ,p.8295-8298
【文献】
ACS Chem. Biol. ,2013年,Vol.8 ,p.2117-2121
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)配列番号193のHCDR1、(b)配列番号194のHCDR2、(c)配列番号195のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号196のLCDR1、(e)配列番号197のLCDR2および(f)配列番号198のLCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む抗体サイトカイングラフトタンパク質。
前記修飾Fc領域が、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aからなる群から選択される、請求項4に記載の抗体サイトカイングラフトタンパク質。
抗体サイトカイングラフトタンパク質の重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドをコードする請求項9に記載の核酸と、場合により分泌シグナルとを含む、抗体サイトカイングラフトタンパク質の産生に適した組換え宿主細胞。
(a)配列番号193のHCDR1、(b)配列番号194のHCDR2、(c)配列番号195のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号196のLCDR1、(e)配列番号197のLCDR2および(f)配列番号198のLCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む抗体サイトカイングラフトタンパク質を含む、免疫関連障害の治療のための医薬組成物。
前記免疫関連障害が、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、乾癬、I型糖尿病、急性膵炎、ブドウ膜炎、シェーグレン病、ベーチェット病、サルコイドーシスおよび移植片対宿主病(GVHD)からなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
前記治療剤が、スルファサラジン、メサラミン、バルサラジド、オルサラジンおよび5−アミノサリチル酸の他の誘導体からなる群から選択されるアミノサリチル酸剤である、請求項15に記載の組成物。
前記治療剤が、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ブデニソニド、メサラミンおよびデキサメタゾンからなる群から選択される副腎皮質ステロイドである、請求項15に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0060】
定義
「抗体」は、四量体構造単位を含む免疫グロブリンファミリーの分子を指す。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対で構成され、各対はジスルフィド結合を通して接続された1本の「軽」鎖(約25kD)と1本の「重」鎖(約50〜70kD)を有する。認識される免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖はκまたはλとして分類される。重鎖はγ、μ、α、δまたはεとして分類され、今度はこれらがそれぞれ免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを定義する。抗体は、いずれかのアイソタイプ/クラス(例えば、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE)またはいずれかのサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2)のものであり得る。
【0061】
軽鎖と重鎖の両方が構造的および機能的相同性の領域に分割される。「定常」および「可変」という用語は構造的および機能的に使用される。各鎖のN末端は、抗原認識を主に担う約100〜110個またはそれを超えるアミノ酸の可変(V)領域またはドメインを規定する。可変軽鎖(V
L)および可変重鎖(V
H)という用語は、それぞれ軽鎖および重鎖のこれらの領域を指す。V
HとV
Lの対形成によって、単一の抗原結合部位が形成される。V領域に加えて、重鎖と軽鎖の両方が定常(C)領域またはドメインを含む。免疫グロブリンC領域の分泌型は、3つのCドメイン、CH1、CH2、CH3、場合によりCH4(Cμ)およびヒンジ領域から構成される。免疫グロブリンC領域の膜結合型も膜および細胞内ドメインを有する。各軽鎖はN末端のV
L、引き続いて他端の定常領域(C)を有する。軽鎖(CL)および重鎖(CH1、CH2またはCH3)の定常ドメインは、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合、相補的結合等などの重要な生物学的特性を与える。慣例では、定常領域ドメインの番号付けは、それらが抗体の抗原結合部位またはアミノ末端から遠位になるにつれて増加する。N末端は可変領域であり、C末端は定常領域であり;CH3およびCLドメインはそれぞれ重鎖および軽鎖のカルボキシ末端ドメインを実際に含む。VLはVHと一列に整列し、CLは重鎖の第1の定常ドメインと一列に整列する。本明細書で使用される場合、「抗体」は従来の抗体構造および抗体の変異型を包含する。よって、全長抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体およびこれらの抗体断片が本概念の範囲内にある。
【0062】
抗体は、完全免疫グロブリン鎖としてまたは種々のペプチダーゼによる消化によって産生された、いくつかの十分特徴付けられた抗体断片として存在する。本明細書で使用される「抗体断片」という用語は、抗原のエピトープと特異的に相互作用する(例えば、結合、立体障害、安定化/不安定化、空間分布により)能力を保持する抗体の1つまたは複数の部分を指す。よって、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域のジスルフィド結合下で抗体を消化して、それ自体ジスルフィド結合によってV
H−C
H1と連結した軽鎖であるF(ab)’
2、Fab’の二量体を産生する。F(ab)’
2はヒンジ領域のジスルフィド結合を破壊する温和な条件下で還元さし、それによってF(ab)’
2二量体をFab’単量体に変換することができる。Fab’単量体は本質的にヒンジ領域の一部を有するFabである。Paul, Fundamental Immunology 3d ed. (1993)。種々の抗体断片が完全抗体の消化の点で定義されているが、当業者であれば、このような断片を化学的にまたは組換えDNA方法論を用いて新規に合成することができることを認識するだろう。本明細書で使用される場合、「抗体断片」とは、結合特異性および機能的活性を保持した、抗体全体の修飾によって産生された抗体、または組換えDNA方法論を用いて新規に合成された抗体の1つまたは複数の部分を指す。抗体断片の例としては、同じ結合特異性を有するFv断片、単鎖抗体(ScFv)、Fab、Fab’、Fd(VhおよびCH1ドメイン)、dAb(Vhおよび単離CDR);およびこれらの断片の多量体版(例えば、F(ab’)
2)が挙げられる。抗体断片をサイトカイングラフトタンパク質に組み込んで、本開示で提供される結合特異性および活性を達成することもできる。
【0063】
本明細書で使用される「Fab」ドメインは、重鎖可変ドメイン、定常領域CH1ドメイン、軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常領域CLドメインを含む。ドメインの相互作用は、CH1とCLドメインとの間のジスルフィド結合によって安定化される。いくつかの実施形態では、Fabの重鎖ドメインが、N末端からC末端に、VH−CHの順であり、Fabの軽鎖ドメインが、N末端からC末端に、VL−CLの順である。いくつかの実施形態では、Fabの重鎖ドメインが、N末端からC末端に、CH−VHの順であり、Fabの軽鎖ドメインがCL−VLの順である。Fabは歴史的に完全免疫グロブリンのパパイン消化によって同定されたが、本開示の文脈では、「Fab」は典型的には任意の方法によって組換え的に産生される。各Fab断片は抗原結合に関して一価である、すなわち、単一抗原結合部位を有する。
【0064】
「相補性決定ドメイン」または「相補性決定領域」(「CDR」)は、互換的にV
LおよびV
Hの超可変領域を指す。CDRは、このような標的タンパク質に対する特異性を持つ抗体鎖の標的タンパク質結合部位である。各ヒトV
LまたはV
Hには、可変ドメインの約15〜20%を構成する3つのCDR(CDR1〜3、N末端から順次番号付け)が存在する。CDRは、標的タンパク質のエピトープと構造的に相補的であり、よって、結合特異性を直接担う。V
LまたはV
Hの残りの伸長、いわゆるフレームワーク領域(FR)は、示すアミノ酸配列の変動が少ない(Kuby, Immunology, 4th ed., Chapter 4. W.H. Freeman & Co., New York, 2000)。
【0065】
CDRおよびフレームワーク領域の位置は、当技術分野における種々の周知の定義、例えばKabat、Chothia、国際ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)およびAbM(例えば、Johnson et al., Nucleic Acids Res., 29:205-206 (2001);Chothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196:901-917 (1987);Chothia et al., Nature, 342:877-883 (1989);Chothia et al., J. Mol. Biol., 227:799-817 (1992);Al-Lazikani et al., J.Mol.Biol., 273:927-748 (1997)参照)を用いて決定することができる。抗原結合部位の定義も以下に記載されている:Ruiz et al., Nucleic Acids Res., 28:219-221 (2000);およびLefranc, M.P., Nucleic Acids Res., 29:207-209 (2001);MacCallum et al., J. Mol. Biol., 262:732-745 (1996);およびMartin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:9268-9272 (1989);Martin et al., Methods Enzymol., 203:121-153 (1991);およびRees et al., In Sternberg M.J.E. (ed.), Protein Structure Prediction, Oxford University Press, Oxford, 141-172 (1996)。
【0066】
Kabatでは、V
HのCDRアミノ酸残基を31〜35(HCDR1)、50〜65(HCDR2)および95〜102(HCDR3)と番号付けし;V
LのCDRアミノ酸残基を24〜34(LCDR1)、50〜56(LCDR2)および89〜97(LCDR3)と番号付けする。Chothiaでは、V
HのCDRアミノ酸を26〜32(HCDR1)、52〜56(HCDR2)および95〜102(HCDR3)と番号付けし;V
LのCDRアミノ酸残基を26〜32(LCDR1)、50〜52(LCDR2)および91〜96(LCDR3)と番号付けする。KabatとChothiaの両方のCDR定義を組み合わせることにより、CDRはヒトVH中アミノ酸残基26〜35(HCDR1)、50〜65(HCDR2)および95〜102(HCDR3)ならびにヒトVL中アミノ酸残基24〜34(LCDR1)、50〜56(LCDR2)および89〜97(LCDR3)からなる。
【0067】
本明細書で使用される「抗体可変軽鎖」または「抗体可変重鎖」は、それぞれV
LまたはV
Hを含むポリペプチドを指す。内因性V
Lは遺伝子セグメントV(可変)およびJ(接合)によってコードされ、内因性V
HはV、D(多様性)およびJによってコードされる。V
LまたはV
Hの各々がCDRならびにフレームワーク領域(FR)を含む。「可変領域」または「V領域」という用語は互換的にFR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4を含む重鎖または軽鎖を指す。V領域は天然、組換えまたは合成であり得る。本出願では、抗体軽鎖および/または抗体重鎖が時々、「抗体鎖」と一括して呼ばれ得る。本明細書で提供され、さらに記載されるように、「抗体可変軽鎖」もしくは「抗体可変重鎖」および/または「可変領域」および/または「抗体鎖」は場合により、CDRにグラフトしたサイトカインポリペプチド配列を含む。
【0068】
例えば、CH2およびCH3ドメインを含む、本明細書で開示される免疫グロブリン重鎖のC末端部分は「Fc」ドメインである。本明細書で使用される「Fc領域」は第1の定常領域(CH1)免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域を指す。Fcは、IgA、IgDおよびIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにIgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにこれらのドメインに対してN末端の可撓性ヒンジを指す。IgAおよびIgMについては、FcがJ鎖を含み得る。IgGについては、Fcが免疫グロブリンドメインCγ2およびCγ3ならびにCγ1とCγとの間のヒンジを含む。Fc領域の境界は変化し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Kabatら(1991, NIH Publication 91-3242, National Technical Information Service, Springfield, Va.)の通りのEU指針による番号付けを用いて、そのカルボキシ末端に対して残基C226またはP230を含むと定義されることが当技術分野で理解される。「Fc領域」は、単離におけるこの領域、または抗体もしくは抗体断片の文脈におけるこの領域を指し得る。「Fc領域」は、例えばエフェクター機能を調節する修飾を含む、例えばCH2およびCH3領域中のFc領域の天然対立遺伝子変異型を含む。Fc領域はまた、生物学的機能に対する変化をもたらさない変異型も含む。例えば、1個または複数のアミノ酸が、生物学的機能を実質的に喪失することなく、免疫グロブリンのFc領域のN末端またはC末端から欠失される。例えば、特定の実施形態では、C末端リジンが修飾、置き換えまたは除去される。特定の実施形態では、Fc領域の1個または複数のC末端残基が変化させられるまたは除去される。特定の実施形態では、Fcの1個または複数のC末端残基(例えば、末端リジン)が欠失される。一定の他の実施形態では、Fcの1個または複数のC末端残基が、代わりのアミノ酸で置換される(例えば、末端リジンが置き換えられる)。このような変異型は、活性に対してもたらす効果が最小となるように当技術分野で公知の一般的規則に従って選択される(例えば、Bowie, et al., Science 247:306-1310, 1990参照)。FcドメインはFcRなどの細胞受容体によって認識され、相補的活性化タンパク質C1 qが結合する免疫グロブリン(Ig)の部分である。CH2エクソンの5’部分にコードされる下側ヒンジ領域は、FcR受容体との結合のために抗体内の可撓性を提供する。
【0069】
「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なるもしくは変化させたクラス、エフェクター機能および/または種の定常領域、あるいはキメラ抗体に新たな特性を与える完全に異なる分子、例えば酵素、毒素、ホルモン、成長因子および薬物と結合するように、定常領域またはその一部が変化させられ、置き換えられまたは交換されている;または(b)可変領域またはその一部が、異なるまたは変化させた抗原特異性を有する可変領域を用いて変化させられ、置き換えられまたは交換されている抗体分子である。
【0070】
「ヒト化」抗体は、ヒト以外の抗体の反応性(例えば、結合特異性、活性)を保持しながら、ヒトにおける免疫原性が少ない抗体である。これは、例えば、ヒト以外のCDR領域を保持し、抗体の残りの部分をヒト対応物で置き換えることによって達成することができる。例えば、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984);Morrison and Oi, Adv. Immunol., 44:65-92 (1988);Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988);Padlan, Molec. Immun., 28:489-498 (1991);Padlan, Molec. Immun., 31(3):169-217 (1994)を参照されたい。
【0071】
「ヒト抗体」は、フレームワークとCDR領域の両方がヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体を含む。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もこのようなヒト配列、例えばヒト生殖系列配列、またはヒト生殖系列配列の変異型または例えばKnappik et al., J. Mol. Biol. 296:57-86, 2000に記載されるようなヒトフレームワーク配列解析から得られた抗体含有コンセンサスフレームワーク配列に由来する。ヒト抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダムもしくは部位特異的変異によって、またはインビボで体細胞突然変異によって、または安定性もしくは製造を促進するための保存的置換によって導入される突然変異)を含んでもよい。
【0072】
「対応するヒト生殖系列配列」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン可変領域配列によってコードされる他の全ての他の全ての公知の可変領域アミノ酸配列と比較して、基準可変領域アミノ酸配列または部分列と最も高い決定されたアミノ酸配列同一性を共有するヒト可変領域アミノ酸配列または部分列をコードする核酸配列を指す。対応するヒト生殖系列配列はまた、他の全ての評価された可変領域アミノ酸配列と比較して、基準可変領域アミノ酸配列または部分列と最も高いアミノ酸配列同一性を有するヒト可変領域アミノ酸配列または部分列も指し得る。対応するヒト生殖系列配列は、フレームワーク領域のみ、相補性決定領域のみ、フレームワークと相補性決定領域、可変セグメント(上で定義される)、または可変領域を含む配列もしくは部分列の他の組合せであり得る。配列同一性は、本明細書に記載される方法を用いて、例えばBLAST、ALIGNもしくは当技術分野で公知の別のアラインメントアルゴリズムを用いて2つの配列を整列させて決定することができる。対応するヒト生殖系列核酸またはアミノ酸配列は、基準可変領域核酸またはアミノ酸配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%配列同一性を有することができる。対応するヒト生殖系列配列は、例えば、公的に入手可能な国際ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)およびVベースを通して決定することができる。
【0073】
本明細書で使用される「価数」は、ポリペプチド中の潜在的な標的結合部位の数を指す。各標的結合部位は、1個の標的分子または標的分子上の特異的部位と特異的に結合する。ポリペプチドが2つ以上の標的結合部位を含む場合、各標的結合部位は、同じまたは異なる分子と特異的に結合することができる(例えば、異なる分子、例えば異なる抗原、または同じ分子上の異なるエピトープに結合することができる)。例えば、慣用的な抗体は、2つの結合部位を有し、二価である;「三価」および「四価」は、抗体分子中の、それぞれ3個の結合部位および4個の結合部位の存在を指す。抗体サイトカイングラフトタンパク質は一価(すなわち、1個の標的分子と結合する)、二価または多価(2個以上の標的分子と結合する)であり得る。
【0074】
「特異的に結合する」または「結合特異性」という句は、サイトカイングラフトする前後の元の抗体標的(例えば、抗原)と抗体サイトカイングラフトタンパク質との間の相互作用を記載する文脈で使用される場合。一定の指定される条件下、特定の結合特異性を有する抗体サイトカイングラフトタンパク質は、バックグラウンドの少なくとも2倍、元の標的に結合し、試料中に存在する他の標的には、有意な量で実質的には結合しない。一実施形態では、指定される条件下、特定の結合特異性を有する抗体サイトカイングラフトタンパク質が、バックグラウンドの少なくとも10倍、元の標的に結合し、試料中に存在する他の標的には、有意な量で実質的には結合しない。このような条件下での抗体サイトカイングラフトタンパク質の特異的結合は、抗体サイトカイングラフトタンパク質を特定の標的に対するその特異性について選択することを要求し得る。結合特異性を決定する方法は、例えば、タンパク質と特異的に免疫反応性の抗体を選択するために日常的に使用される固相ELISA免疫測定法である(例えば、特異的免疫反応性を決定するために使用することができる免疫測定法フォーマットおよび条件の記載については、Harlow & Lane, Using Antibodies, A Laboratory Manual (1998)参照)。
【0075】
本明細書で使用される場合、「サイトカイン受容体結合特異性」または「サイトカイン受容体特異性」は、IL10受容体に選択的に結合する抗体サイトカイングラフトタンパク質を含み、他のサイトカイン受容体スーパーファミリーメンバーと交差反応する抗体サイトカイングラフトタンパク質を含まない。いくつかの実施形態では、ヒトIL10Rに選択的に結合し、ヒト以外の霊長類IL10R(例えば、カニクイザルIL10R)と交差反応する抗体サイトカイングラフトタンパク質が選択される。いくつかの実施形態では、ヒトIL10R1に選択的に結合する抗体グラフトタンパク質が選択される。
【0076】
「平衡解離定数(K
D、M)」という用語は、解離速度定数(k
d、時間
−1)÷会合速度定数(k
a、時間
−1、M
−1)を指す。平衡解離定数は、当技術分野で公知の任意の方法を用いて測定することができる。本開示の抗体サイトカイングラフトタンパク質は、一般的に約10
−7または10
−8M未満、例えば約10
−9Mまたは10
−10M未満、いくつかの実施形態では、約10
−11M、10
−12Mまたは10
−13M未満の平衡解離定数を有する。
【0077】
「IL10」または「インターロイキン10」または「インターロイキン−10(IL−10)」という用語は、互換的に、マクロファージの活性化を下方制御すると同時に、抗原提示および樹状細胞の成熟を減少させることができる強力な抗炎症性サイトカインを指す。全長天然ヒトの残基19〜178を含むIL10がアゴニスト抗体サイトカイングラフトタンパク質の構築に利用されている。本明細書で開示されているヒトIL10は、その全長にわたって、GenBank受託番号NP_000563として公開されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%配列同一性を有する。IL10タンパク質をコードするヒトIL10核酸は、その全長にわたって、GenBank受託番号NM_000572で公開されている核酸配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%配列同一性を有する。
【0078】
「単量体IL10」または「IL10M」は、配列番号209のアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%配列同一性を有する分子を指す。いくつかの実施形態では、単量体IL10分子が配列番号209の配列を含む。いくつかの実施形態では、単量体IL10分子が配列番号209の配列からなる。
【0079】
「アゴニスト」という用語は、受容体を活性化して完全なまたは部分的な受容体媒介応答を誘導することができる抗体サイトカイングラフトタンパク質を指す。例えば、IL10RのアゴニストはIL10Rに結合し、IL10R媒介細胞内シグナル伝達および/または細胞活性化を誘導する。抗体サイトカイングラフトタンパク質は、いくつかの点で天然リガンド、ヒトIL10と同様にIL10Rを通してシグナル伝達を刺激する。hIL10とIL10Rの結合は、IκBの分解によりNFκB活性化を誘導する。いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質アゴニストが、IL10Rに結合し、STAT3リン酸化を誘導し、炎症性サイトカイン(例えば、TNFα、IL1、IL6、IL12、IFNγ)の産生ならびに/あるいはマクロファージの分化および増殖を誘導し;T細胞(例えば、CD8
+CTLまたはCD4
+Th細胞)増殖、生存、細胞溶解活性および/またはサイトカイン産生(例えば、IFNγ、IL10、IL13、TNFα)を誘導するその能力によって、あるいは本明細書に記載されるように同定され得る。
【0080】
核酸またはタンパク質に適用する場合の「単離」という用語は、核酸またはタンパク質が、自然の状態で会合している他の細胞成分を本質的に含まないことを表す。これは好ましくは均質な状態である。これは無水溶液または水溶液であり得る。純度および均質性は、典型的にはポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技術を用いて決定される。調製物中に存在する主な種であるタンパク質が実質的に精製される。特に、単離遺伝子は、その遺伝子に隣接し、対象となる遺伝子以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから分離される。「精製」という用語は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲル中に本質的に1つのバンドを生じることを表す。特に、これは、核酸またはタンパク質が少なくとも85%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、最も好ましくは少なくとも99%純粋であることを意味する。
【0081】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、一本鎖または二本鎖型のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)およびこれらのポリマーを指す。特に限定しない限り、この用語は、基準核酸と類似の結合特性を有し、天然ヌクレオチドと類似の様式で代謝される天然ヌクレオチドの公知の類似体を含む核酸を包含する。特に指示しない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的に修飾された変異型(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNPsおよび相補的配列ならびに明示的に示される配列を包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(または全ての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991);Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985);およびRossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。
【0082】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書において互換的に使用される。これらの用語を、1個または複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的な化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーに適用する。
【0083】
「アミノ酸」という用語は、天然および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と類似の様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物を指す。天然アミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるもの、ならびに後で修飾されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸およびO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち水素に結合したα−炭素、カルボキシル基、アミノ基およびR基を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。このような類似体は修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と類似の様式で機能する化学化合物を指す。
【0084】
「保存的に修飾された変異型」をアミノ酸配列と核酸配列の両方に適用する。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異型は、同一もしくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指す、また核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列を指す。遺伝暗号の縮重のために、多数の機能的に同一の核酸が任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全てアミノ酸アラニンをコードする。よって、アラニンがコドンによって指定される全ての位置で、コードされるポリペプチドを変化させることなく、コドンを記載される対応するコドンのいずれかに変化させることができる。このような核酸変異型は、保存的に修飾された変異型のある種である「サイレント変異型」である。ポリペプチドをコードする本明細書の全ての核酸配列は、核酸の全ての可能なサイレント変異型も記載する。当業者であれば、核酸の各コドン(通常はメチオニンについての唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾して機能的に同一の分子を得ることができることを認識するだろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異型は各記載される配列に暗示されている。
【0085】
アミノ酸配列に関して、当業者であれば、変化が化学的に類似のアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす場合、コードされる配列中の単一アミノ酸またはアミノ酸の少ない割合を変化、付加または欠失する、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失または付加が、「保存的に修飾された変異型」であることを認識するだろう。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は当技術分野で周知である。このような保存的に修飾された変異型は、多型変異型、種間ホモログおよび対立遺伝子に加えたものであり、これらを除外しない。以下の8つの群はそれぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)参照)。
【0086】
「配列同一性の割合」は、比較窓に対して2つの最適に整列した配列を比較することによって決定され、比較窓中のポリヌクレオチド配列の一部は、2つの配列の最適アラインメントのための付加も欠失も含まない基準配列(例えば、ポリペプチド)と比較して付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでよい。割合は、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両配列中に生じる位置の数を決定して、一致した位置の数を得て、一致した位置の数を比較窓の位置の総数で割って、結果に100を掛けて、配列同一性の割合を得ることによって計算される。
【0087】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における「同一」または「同一性」%という用語は、同じ配列である2つ以上の配列または部分列を指す。以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いてまたは手動のアラインメントおよび目視によって測定して最大の対応となるように比較および整列させた場合に、比較窓または指定される領域にわたって同じである(すなわち、指定された領域、または指定されていない場合、基準配列の配列全体にわたって少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性)、指定された割合のアミノ酸残基またはヌクレオチドを2つの配列が有する場合、2つの配列は「実質的に同一」である。本開示は、それぞれ本明細書で例示されるポリペプチドまたはポリヌクレオチドと実質的に同一なポリペプチドまたはポリヌクレオチドを提供する(例えば、配列番号13、配列番号14、配列番号29、配列番号30、配列番号45、配列番号46、配列番号61、配列番号62、配列番号77、配列番号78、配列番号93、配列番号94、配列番号109、配列番号110、配列番号125、配列番号126、配列番号141、配列番号142、配列番号157、配列番号158、配列番号173、配列番号174、配列番号189、配列番号190、配列番号205、配列番号206;配列番号222、配列番号223、配列番号238 配列番号239のいずれか1つに例示される可変領域;配列番号15、配列番号16、配列番号31、配列番号32、配列番号47、配列番号48、配列番号63、配列番号64、配列番号79、配列番号80、配列番号95、配列番号96、配列番号111、配列番号112、配列番号127、配列番号128、配列番号143、配列番号144、配列番号159、配列番号160、配列番号175、配列番号176、配列番号191、配列番号192、配列番号207、配列番号208、配列番号224、配列番号225、配列番号240、配列番号241のいずれか1つに例示される可変領域;配列番号13、配列番号14、配列番号29、配列番号30、配列番号45、配列番号46、配列番号61、配列番号62、配列番号77、配列番号78、配列番号93、配列番号94、配列番号109、配列番号110、配列番号125、配列番号126、配列番号141、配列番号142、配列番号157、配列番号158、配列番号173、配列番号174、配列番号189、配列番号190、配列番号205、配列番号206、配列番号222、配列番号223、配列番号238および配列番号239のいずれか1つに例示されるCDR。場合により、少なくとも約15、25または50ヌクレオチド長である領域にわたって、より好ましくは100〜500または1000以上のヌクレオチド長である領域にわたって、または基準配列の全長にわたって、同一性が存在する。アミノ酸配列に関して、少なくとも5、10、15または20アミノ酸長、場合により少なくとも約25、30、35、40、50、75または100アミノ酸長、場合により少なくとも約150、200または250アミノ酸長である領域にわたって、または基準配列の全長にわたって、同一性または実質的同一性が存在し得る。より短いアミノ酸配列、例えば20個以下のアミノ酸のアミノ酸配列に関して、本明細書で定義される保存的置換に従って、1個または2個のアミノ酸残基が保存的に置換されている場合、実質的同一性が存在する。
【0088】
配列比較のために、典型的には1つの配列が、試験配列を比較する基準配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列と基準配列をコンピュータに入力し、必要に応じて、後の座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを使用することができる、あるいは代わりのパラメータを指定することができる。次いで、配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメータに基づいて、基準配列に対する試験配列の配列同一性%を計算する。
【0089】
本明細書で使用される「比較窓」は、20〜600、通常約50〜約200、さらに通常約100〜約150からなる群から選択されるいずれか1つの数の連続する位置の(of any one of the number of contiguous positions selected from)セグメントであって、配列を、同じ数の連続する位置の基準配列と、それら2つの配列を最適に整列させた後に比較することができる、セグメントを参照することを含む。比較のために配列を整列させる方法は当技術分野で周知である。比較のための配列の最適アラインメントは、例えばSmith and Waterman (1970) Adv. Appl. Math. 2:482cの局所相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson and Lipman (1988) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444の類似性のための検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.,Madison、WIのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)または手動アラインメントおよび目視(例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (1995 supplement))によって行うことができる。
【0090】
配列同一性および配列類似性%を決定するために適したアルゴリズムの2つの例は、それぞれAltschul et al. (1977) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402およびAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410に記載されているBLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムである。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センターを通して公的に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列させた場合に、ある正の値の閾値スコアTに一致するまたはこれを満たすクエリー配列中の長さWの短いワードを同定することによって、高スコア配列ペア(HSP)を最初に同定することを含む。Tは近隣ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al.、上記)。これらの初期近隣ワードヒットが、それらを含むより長いHSPを見つけるための検索を開始するための種として作用する。累積アラインメントスコアを増加させることができる限り、ワードヒットを各配列に沿って両方向に拡張する。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(一致残基のペアについての報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基についてのペナルティスコア;常に<0)を用いて計算する。アミノ酸配列については、スコアリングマトリクスを使用して累積スコアを計算する。累積アラインメントスコアがその最大達成値から量X減った場合;1つまたは複数の負のスコアの残基アラインメントの蓄積のために累積スコアが0以下になった場合;または各配列の端に達した場合、各方向のワードヒットの拡張を停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、TおよびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値(E)または10、M=5、N=4および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長3、および期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアリングマトリクス(Henikoff and Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915参照)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=4、および両鎖の比較を使用する。
【0091】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計解析も行う(例えば、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は最小和確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然に起こる確率の指標を提供する。例えば、試験核酸と基準核酸の比較における最小和確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合に、核酸を基準配列と類似とみなす。
【0092】
2つの核酸配列またはポリヌクレオチドが実質的に同一である指標は、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが、以下に記載されるように、第2の核酸によってコードされるポリペプチドに対して生じる抗体と免疫学的に交差反応性であることである。よって、例えば、2個のペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合、ポリペプチドは第2のポリペプチドと典型的に実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一である別の指標は、2個の分子またはその相補物が以下に記載されるようなストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であるさらに別の指標は、同じプライマーを使用して配列を増幅することができることである。
【0093】
「抗体サイトカイングラフトタンパク質」または「抗体サイトカイングラフト」または「グラフトした」という用語は、少なくとも1つのサイトカインを抗体のCDRに直接組み込んで、CDRの配列を中断することを意味する。サイトカインをHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2またはLCDR3に組み込むことができる。サイトカインをHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2またはLCDR3に組み込むことができ、CDRのN末端配列に向けてまたはCDRのC末端配列に向けて組み込むことができる。CDRに組み込まれたサイトカインは抗体部分とその標的タンパク質の特異的結合を減少させることができる、または抗体サイトカイングラフトタンパク質はその標的タンパク質との特異的結合を保持することができる。
【0094】
「免疫関連障害」または「免疫疾患」とは、体の自身の免疫系が健康な組織を攻撃する免疫系の機能障害を指す。機能障害は、免疫細胞の成分にあり得、過活動免疫系と不活発免疫系の両方を含む。
【0095】
「対象」、「患者」および「個体」という用語は、互換的に哺乳動物、例えば、ヒトまたはヒト以外の霊長類哺乳動物を指す。哺乳動物は、実験室哺乳動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、ハムスターであってもよい。いくつかの実施形態では、哺乳動物が農業用哺乳動物(例えば、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ラクダ)または家庭用哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ)であり得る。
【0096】
本明細書で使用される場合、任意の疾患または障害の「治療する」、「治療すること」または「治療」という用語は、一実施形態では、疾患または障害を改善する(すなわち、疾患の発達またはその臨床症状の少なくとも1つを遅延または停止または低減する)ことを指す。別の実施形態では、「治療する」、「治療すること」または「治療」が、患者によって認識され得ないものを含む、少なくとも1つの物理パラメータを緩和または改善することを指す。さらに別の実施形態では、「治療する」、「治療すること」または「治療」が、物理的(例えば、認識可能な症状の安定化)、生理的(例えば、物理パラメータの安定化)またはその両方で、疾患または障害を調節することを指す。さらに別の実施形態では、「治療する」、「治療すること」または「治療」または「予防」が、疾患または障害の発症または発達または進行を防止するまたは遅延させることを指す。
【0097】
「治療的に許容される量」または「治療上有効用量」という用語は、互換的に所望の結果(すなわち、炎症の減少、疼痛の抑制、炎症の予防、炎症反応の抑制または予防)を及ぼすために十分な量を指す。いくつかの実施形態では、治療的に許容される量が、望ましくない副作用を誘発もせず、引き起こしもしない。治療的に許容される量は、最初に低用量を投与し、次いで、所望の効果が達成されるまで、その用量を徐々に増加させることによって決定することができる。「予防上有効投与量」および「治療上有効投与量」のIL10抗体サイトカイングラフトタンパク質は、免疫関連障害に関連する症状を含む疾患症状を、それぞれ、その開始を防止する、またはその重症度の低下をもたらすことができる。
【0098】
「同時投与する」という用語は、個体における2種(またはそれよりも多く)の活性剤の同時の存在を指す。同時投与される活性剤は同時にまたは順次送達することができる。
【0099】
本明細書で使用される場合、「〜から本質的になる」という句は、方法または組成物に含まれる活性医薬剤、ならびに方法または組成物の意図した目的のための任意の不活性担体または賦形剤の属または種を指す。いくつかの実施形態では、「〜から本質的になる」という句が、IL10抗体サイトカイングラフトタンパク質以外の1種または複数の追加の活性剤の包含を明示的に除外する。いくつかの実施形態では、「〜から本質的になる」という句が、IL10抗体サイトカイングラフトタンパク質および第2の同時投与薬剤以外の追加の活性剤の包含を明示的に除外する。
【0100】
「a」、「an」および「the」という用語は、特に文脈上明確に指示しない限り、複数指示対象を含む。
【0101】
詳細な説明
IL10抗体サイトカイングラフトタンパク質
インターロイキン−10(IL10)は、免疫刺激活性と免疫抑制活性の両方を有する多機能性ホモ二量体免疫調節性サイトカインである。IL10は、活性化単球およびマクロファージ中のいくつかの炎症性サイトカインを誘導するが、未成熟および成熟リンパ球、肥満細胞ならびにB細胞の補助刺激分子である(Mosmann, Adv. Immunol. 1994; 56:1-26;Moore et al., Annu Rev Immunol. 2001;19:683-765に概説)。抗体の相補性決定領域(CDR)にグラフトした単量体IL10を含む抗体サイトカイングラフトタンパク質が本明細書で提供される。抗体サイトカイングラフトタンパク質は、ヒト患者で使用するのに適した特性を示す、例えば、これらは天然または組換えヒトIL10と類似の免疫抑制活性を保持しているが、炎症促進効果は減少している。
【0102】
したがって、本開示は、選択的活性プロファイルを有するIL10受容体のアゴニストである抗体サイトカイングラフトタンパク質を提供する。提供される抗体サイトカイングラフトタンパク質は、免疫グロブリン重鎖配列および免疫グロブリン軽鎖配列を含む。各免疫グロブリン重鎖配列は重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH)を含み、重鎖定常領域はCH1、CH2およびCH3定常領域からなる。各免疫グロブリン軽鎖配列は軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)を含む。各抗体サイトカイングラフトタンパク質では、単量体IL10分子がVHまたはVL領域の相補性決定領域(CDR)にグラフトされている。
【0103】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が重鎖CDRにグラフトした単量体IL10を含む。特定の実施形態では、単量体IL10が重鎖相補性決定領域1(HCDR1)にグラフトされている。特定の実施形態では、単量体IL10が重鎖相補性決定領域2(HCDR2)にグラフトされている。特定の実施形態では、単量体IL10が重鎖相補性決定領域3(HCDR3)にグラフトされている。
【0104】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が軽鎖CDRにグラフトした単量体IL10を含む。特定の実施形態では、単量体IL10が軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)にグラフトされている。特定の実施形態では、単量体IL10が軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)にグラフトされている。特定の実施形態では、単量体IL10が軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)にグラフトされている。好ましい実施形態では、単量体IL10が軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)にグラフトされている。
【0105】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質がCDRにグラフトした単量体IL10を含み、IL10配列がCDR配列に挿入されている。グラフトしたIL10はCDRのN末端部分もしくはその近く、CDRの中心領域またはCDRのC末端部分もしくはその近くにあり得る。他の実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質がCDRに組み込まれた単量体IL10を含み、IL10配列がCDR配列の全てまたは一部に置き換わっている。置換はCDRの開始もしくはその近く、CDRの中央領域またはCDRの末端もしくはその近くにあり得る。置換はCDR配列のわずか1個もしくは2個のアミノ酸、またはCDR配列全体ほどであり得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、単量体IL10がペプチドリンカーなしにCDRに直接グラフトされている。
【0107】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質がIgGクラス抗体重鎖の免疫グロブリン重鎖を含む。特定の実施形態では、IgG重鎖がIgG1、IgG2またはIgG4サブクラスのいずれか1つである。
【0108】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、公知の、臨床的に利用される免疫グロブリン配列から選択される重鎖免疫グロブリン配列および軽鎖免疫グロブリン配列を含む。特定の実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、ヒト化配列である重鎖免疫グロブリン配列および軽鎖免疫グロブリン配列を含む。他の特定の実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、ヒト配列である重鎖免疫グロブリン配列および軽鎖免疫グロブリン配列を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、生殖系列免疫グロブリン配列から選択される重鎖免疫グロブリン配列および軽鎖免疫グロブリン配列を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、IL10単量体のサイトカイン受容体結合特異性とは異なる、標的に対する免疫グロブリン可変ドメインの結合特異性を有する重鎖免疫グロブリン配列および軽鎖免疫グロブリン配列を含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン可変ドメインの結合特異性がグラフトしたサイトカインの存在下で保持されている。特定の実施形態では、抗体結合特異性がヒト以外の抗原に対するものである。他の実施形態では、結合特異性がIL10療法と併せた治療上の有用性を有する標的に対するものである。特定の実施形態では、免疫グロブリンの結合特異性を調節することがIL10成分に追加の治療上の利益をもたらす。特定の実施形態では、免疫グロブリンの結合特異性が、IL10単量体との相乗的活性をもたらす。
【0111】
さらに他の実施形態では、免疫グロブリンの結合特異性が、IL10グラフトサイトカインの存在下で低下している。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質がヒトIL10または組換えヒトIL10と類似の抗炎症特性を与え、グラフトタンパク質がヒトIL10または組換えヒトIL10と比較して低下した相対的炎症促進活性を与える。いくつかの実施形態では、相対的(proportional)炎症促進活性がIL10と比較して少なくとも25%低下している。いくつかの実施形態では、相対的炎症促進活性がIL10と比較して少なくとも35%低下している。いくつかの実施形態では、相対的炎症促進活性がIL10と比較して少なくとも50%低下している。いくつかの実施形態では、相対的炎症促進活性がIL10と比較して少なくとも65%低下している。いくつかの実施形態では、相対的炎症促進活性がIL10と比較して少なくとも75%低下している。いくつかの実施形態では、相対的炎症促進活性がIL10と比較して少なくとも80%低下している。いくつかの実施形態では、相対的炎症促進活性がIL10と比較して少なくとも80%低下している。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、修飾されたエフェクター機能を与える修飾されたFcを有する修飾された免疫グロブリンIgGを含む。特定の実施形態では、修飾されたFc領域が、D265A、P329A、P329G、N297A、L234AおよびL235Aの1つまたは複数から選択される突然変異を含む。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、D265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含み得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号13の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号14の軽鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。免疫グロブリン鎖は、IgG1、IgG2またはIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号29の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号30の軽鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。免疫グロブリン鎖は、IgG1、IgG2またはIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号45の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号46の軽鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。免疫グロブリン鎖は、IgG1、IgG2またはIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号61の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号62の軽鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。免疫グロブリン鎖は、IgG1、IgG2またはIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号77の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号78の軽鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。免疫グロブリン鎖は、IgG1、IgG2またはIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号93の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号94の軽鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。免疫グロブリン鎖は、IgG1、IgG2またはIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号109の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号110の軽鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。免疫グロブリン鎖は、IgG1、IgG2またはIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号125の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号126の軽鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。免疫グロブリン鎖は、IgG1、IgG2またはIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号141の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号142の軽鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。免疫グロブリン鎖は、IgG1、IgG2またはIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号157の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号158の軽鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。免疫グロブリン鎖は、IgG1、IgG2またはIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号173の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号174の軽鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。免疫グロブリン鎖は、IgG1、IgG2またはIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号189の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号190の軽鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。免疫グロブリン鎖は、IgG1、IgG2またはIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号205の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号206の軽鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。免疫グロブリン鎖は、IgG1、IgG2またはIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号222の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号223の軽鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。免疫グロブリン鎖は、IgG1、IgG2またはIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号238の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号239の軽鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。免疫グロブリン鎖は、IgG1、IgG2またはIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号15と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖と、(ii)配列番号16と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖とを含む。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号31と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖と、(ii)配列番号32と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖とを含む。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号47と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖と、(ii)配列番号48と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖とを含む。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号63と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖と、(ii)配列番号64と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖とを含む。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号79と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖と、(ii)配列番号80と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖とを含む。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号95と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖と、(ii)配列番号96と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖とを含む。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号111と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖と、(ii)配列番号112と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖とを含む。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号127と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖と、(ii)配列番号128と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖とを含む。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号143と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖と、(ii)配列番号144と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖とを含む。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号159と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖と、(ii)配列番号160と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖とを含む。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号175と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖と、(ii)配列番号176と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖とを含む。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号191と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖と、(ii)配列番号192と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖とを含む。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号207と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖と、(ii)配列番号208と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖とを含む。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号224と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖と、(ii)配列番号225と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖とを含む。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、(i)配列番号240と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する重鎖と、(ii)配列番号241と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する軽鎖とを含む。特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖が、場合によりD265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択される低下したエフェクター機能を与える突然変異または突然変異の組合せを含む。
【0144】
操作および修飾された抗体サイトカイングラフトタンパク質
抗体サイトカイングラフトタンパク質は、単量体IL10配列を免疫グロブリン足場のCDR領域にグラフトすることによって生成される。重鎖免疫グロブリンと軽鎖免疫グロブリンの両方を製造して最終的な抗体グラフトタンパク質を生成する。抗体サイトカイングラフトタンパク質はIL10の好ましい治療上の抗炎症特性を与えるが、抗体サイトカイングラフトタンパク質は、天然または組換えヒトIL10(rhIL10)と比較して低下した相対的炎症促進活性を有する。
【0145】
グラフト構築物を設計するために、全長IL10の残基19〜178および残基134と135との間の6つのアミノ酸配列を含む単量体IL10(IL10M、配列番号209)を、免疫グロブリン足場のCDRループにグラフトした。グラフト構築物は、種々の臨床設定で利用されている公知の免疫グロブリン配列、現在発見および/または臨床開発中の公知の免疫グロブリン配列、ヒト生殖系列抗体配列、ならびに新規な抗体免疫グロブリン鎖の配列のいずれかを用いて調製することができる。抗体サイトカイングラフトタンパク質は、関連する配列をコードする組換えDNAを利用する標準的な分子生物学方法論を用いて生成される。GFTX1およびGFTX3と呼ばれる2つの例示的な足場中のIL10Mの配列を表1に示す。IL10単量体の挿入点は、入手可能な構造的または相同性モデルデータに基づいてループの中心点となるよう選択したが、CDRループの一端または他端に向けて挿入点を調節してもよい。
【0146】
よって、本開示は、抗体サイトカイングラフトタンパク質を生成するために種抗体タンパク質またはポリペプチドに組換え的に挿入されたIL10Mタンパク質を含む、サイトカイン受容体がIR10Rタンパク質に特異的に結合する抗体サイトカイングラフトタンパク質またはその断片を提供する。特に、本開示は、本明細書に記載される抗体もしくは抗体の抗原結合断片、または任意の他の関連する足場抗体ポリペプチド(例えば、完全抗体免疫グロブリンタンパク質、Fab断片、Fd断片、Fv断片、F(ab)2断片、VHドメイン、VH CDR、VLドメイン、VL CDR等)および異種サイトカインタンパク質、ポリペプチドまたはペプチド、例えばIL10Mを含むグラフトタンパク質を提供する。タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを抗体または抗体断片に結合する方法は当技術分野で公知である。例えば、米国特許第5336603号明細書、第5622929号明細書、第5359046号明細書、第5349053号明細書、第5447851号明細書および第5112946号明細書;欧州特許第307434号明細書および欧州特許第367166号明細書;国際公開第96/04388号パンフレットおよび国際公開第91/06570号パンフレット;Ashkenazi et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 10535-10539;Zheng et al., 1995, J. Immunol. 154:5590-5600;およびVil et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11337-11341を参照されたい。さらに、抗体サイトカイングラフトタンパク質は、遺伝子シャフリング、モチーフシャフリング、エクソンシャフリングおよび/またはコドンシャフリング(まとめて「DNAシャフリング」と呼ぶ)の技術を通して生成することができる。DNAシャフリングを使用して、抗体サイトカイングラフトタンパク質を調製するおよび/または抗体もしくはその断片の活性を変化させることができる(例えば、高い親和性および低い解離速度を有する抗体またはその断片)。概して、米国特許第5605793号明細書、第5811238号明細書、第5830721号明細書、第5834252号明細書および第5837458号明細書;Patten et al., 1997, Curr. Opinion Biotechnol. 8:724-33;Harayama, 1998, Trends Biotechnol. 16(2):76-82;Hansson, et al., 1999, J. Mol. Biol. 287:265-76;およびLorenzo and Blasco, 1998, Biotechniques 24(2):308-313(これらの特許および刊行物はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。抗体もしくはその断片、またはコードされた抗体もしくはその断片をランダム突然変異誘発に供する、エラープローンPCR、ランダムヌクレオチド挿入または組換え前の他の方法により変化させることができる。対象となる抗原タンパク質に特異的に結合する抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを、本明細書で提供される抗体サイトカイングラフトタンパク質を調製するために、1個または複数の異種サイトカイン分子、例えばIL10Mの1つまたは複数の成分、モチーフ、セクション、部分、ドメイン、断片等で組み換えることができる。
【0147】
抗体Fabは、サイトカインタンパク質の潜在的な挿入部位として役立ち得る6つのCDRループ、軽鎖の3つ(CDRL1、CDRL2、CDRL3)および重鎖の3つ(CDRH1、CDRH2、CDRH3)を含む。どのCDRループ(複数可)にサイトカインを挿入するかを決定するために、構造的および機能的検討を考慮する。CDRループサイズおよびコンフォメーションは様々な抗体で大いに変化するので、挿入のための最適なCDRは、各特定の抗体/タンパク質組合せについて経験的に決定することができる。さらに、サイトカインタンパク質をCDRループに挿入するので、これはサイトカインタンパク質の構造にさらなる制約を課し得る。例えば、サイトカインタンパク質のアミノおよびカルボキシ末端は、空間的に比較的近くに(約25Å)限定される可能性を許すべきである。さらに、抗体サイトカイングラフトタンパク質は、生物学的活性についてオリゴマー化に依拠すべきでない。
【0148】
IL10はドメイン交換構造を使用するホモ二量体サイトカインである。天然型では、ドメイン交換構造が形成され得ない(すなわち、N末端とC末端の両方がループに束縛されている)ので、IL10は抗体グラフトに適さないだろう。しかしながら、DヘリックスとEヘリックスとの間に6個の残基配列((GGGSGG)(配列番号251))を挿入することによって作製された設計された単量体IL10(IL10M)は、EヘリックスとFヘリックス(天然二量体構造では、交換により他のIL10単量体中にある)が同じ単量体に折り重なって(Josephson et al J. Biol.Chem. 2000; 275(18) 13552-7)、
図2および
図13に示される抗体サイトカイングラフトタンパク質中に存在する構造を作り出すことを可能にする。Josephsonらは、6個のアミノ酸挿入を有するIL10単量体が野生型二量体よりも熱安定性であり、IL10受容体鎖(IL10R1)と1:1相互作用を形成することもできることを実証した。IL10Mはまた、野生型IL10より9〜18倍活性が低いが、インビトロ活性を有する。IL10Mの別の特徴は、N末端とC末端が互いに空間的に近く、これによって修飾されたサイトカインタンパク質が抗体グラフトに適したものになっているということである。
【0149】
本開示の抗体サイトカイングラフトタンパク質は、出発抗体から変化した特性を有していてもよい修飾抗体サイトカイングラフトタンパク質を設計するために、出発材料として本明細書(例えば、表1)に示されるCDRおよび/またはVHおよび/またはVL配列の1つまたは複数を有する抗体を用いて調製することができる。あるいは、任意の公知の抗体配列を足場として利用して修飾された抗体サイトカイングラフトタンパク質を設計してもよい。例えば、任意の公知の、臨床的に利用される抗体を、抗体サイトカイングラフトタンパク質を調製するための出発材料足場として利用することができる。公知の抗体および対応する免疫グロブリン配列は、例えばパリビズマブ、アリロクマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、ジヌツキシマブ、セクキヌマブ、エボロクマブ、ブリナツモマブ、ペンブロリズマブ、ラムシルマブ、ベドリズマブ、シルツキシマブ、オビヌツズマブ、トラスツズマブ、ラキシバクマブ、ペルツズマブ、ベリムマブ、イピリムマブ、デノスマブ、トシリズマブ、オファツムマブ、カナキヌマブ、ゴリムマブ、ウステキヌマブ、セルトリズマブ、カツマキソマブ、エクリズマブ、ラニビズマブ、パニツムマブ、ナタリズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、エファリズマブ、オマリズマブ、トシツモマブ、イブリツモマブチウキセタン、アダリムマブ、アレムツズマブ、ゲムツズマブ、インフリキシマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、リツキシマブ、アブシキシマブ、ムロモナブまたはこれらの修飾を含む。公知の抗体および免疫グロブリン配列はまた、生殖系列抗体配列も含む。フレームワーク配列は、生殖系列抗体遺伝子配列を含む公的DNAデータベースまたは公開されている参考文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖可変領域遺伝子および軽鎖可変領域遺伝子についての生殖系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース、ならびにKabat, E. A., et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242;Tomlinson, I. M., et al., 1992 J. fol. Biol. 227:776-798;およびCox, J. P. L. et al., 1994 Eur. J Immunol. 24:827-836に見出すことができる。さらに他の例では、早期の発見および/または薬物開発であり得る他の公知の実体からの抗体および対応する免疫グロブリン配列を同様に出発材料として適合させて、修飾された抗体サイトカイングラフトタンパク質を設計することができる。
【0150】
得られるポリペプチドがサイトカイン(例えば、IL10M)の組み込みを受け容れる少なくとも1つの結合領域を含む限り、多種多様な抗体/免疫グロブリンフレームワークまたは足場を使用することができる。このようなフレームワークまたは足場は、ヒト免疫グロブリンまたはその断片の5つの主要なイディオタイプを含み、好ましくはヒト化および/またはヒト側面を有する他の動物種の免疫グロブリンを含む。新規な抗体、フレームワーク、足場および断片が当業者によって発見および開発され続けている。
【0151】
抗体は当技術分野で公知の方法を用いて生成することができる。モノクローナル抗体を調製するために、当技術分野で公知の任意の技術を使用することができる(例えば、Kohler & Milstein, Nature 256:495-497 (1975);Kozbor et al., Immunology Today 4:72 (1983);Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, pp. 77-96. Alan R. Liss, Inc. 1985参照)。単鎖抗体を製造するための技術(米国特許第4946778号明細書)を適合させて、本開示の抗体グラフトタンパク質に使用するための抗体を製造することができる。また、トランスジェニックマウスまたは他の生物(他の哺乳動物など)を使用して、霊長類化またはヒト化またはヒト抗体を発現させ、同定することができる。あるいは、ファージディスプレイ技術を使用して、抗体サイトカイングラフトタンパク質に使用するために選択された抗原に特異的に結合する抗体およびヘテロマーFab断片を同定することができる(例えば、McCafferty et al.,上記; Marks et al., Biotechnology, 10:779-783, (1992)参照)。
【0152】
ヒト以外の抗体を霊長類化またはヒト化する方法は当技術分野で周知である。一般的に、霊長類化またはヒト化抗体は、霊長類以外またはヒト以外の供給源からそこに導入された1個または複数のアミノ酸残基を有する。このような霊長類以外またはヒト以外のアミノ酸残基はしばしばインポート残基と呼ばれ、典型的にはインポート可変ドメインからとられる。ヒト化は、本質的にはヒト抗体の対応する配列の代わりにげっ歯類CDRまたはCDR配列を用いることによって、Winterおよび共同研究者の方法(例えば、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988);Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988)およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)参照)に従って行うことができる。したがって、このようなヒト化抗体はキメラ抗体(米国特許第4816567号明細書)であり、完全ヒト可変ドメインより実質的に少ないものがヒト以外の種の対応する配列によって置換されている。実際、霊長類化またはヒト化抗体は、典型的にはある相補性決定領域(「CDR」)残基およびおそらくはあるフレームワーク(「FR」)残基が元の種(例えば、げっ歯類抗体)の類似の部位の残基によって置換されて結合特異性を与える霊長類またはヒト抗体である。
【0153】
あるいはまたはさらに、ヒト以外の抗体と同じ結合特性を維持するまたはこれより優れた結合特性を提供しながら、抗体においてヒト以外の抗体可変領域をヒト可変領域で置き換えるインビボ法を利用して、ヒト以外の抗体を設計されたヒト抗体に変換することができる。例えば、米国特許出願公開第20050008625号明細書、米国特許出願公開第2005/0255552号明細書を参照されたい。あるいは、基準抗体Vセグメントの一部のみを最初にヒト配列のライブラリーによって置き換え、次いで、残りの基準抗体アミノ酸配列において結合を支持する同定されたヒト「カセット」を第2のライブラリースクリーンで組み換えて、ヒトVセグメントを完全に生成する順次カセット置換によって、ヒトVセグメントライブラリーを生成することができる(米国特許出願公開第2006/0134098号明細書参照)。
【0154】
抗体サイトカイングラフトタンパク質の調製に使用するための種々の抗体または抗原結合断片は、完全抗体の酵素的もしくは化学的修飾によって製造することができる、または組換えDNA方法論(例えば、単鎖Fv)を用いて新規に合成することができる、またはファージディスプレイライブラリーを用いて同定することができる(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554, 1990参照)。例えば、当技術分野、例えばVaughan and Sollazzo, Comb Chem High Throughput Screen. 4:417-30 2001で記載されている方法を用いて、ミニ抗体(minibody)を生成することができる。二重特異性抗体は、ハイブリドーマのグラフトまたはFab’断片の連結を含む種々の方法によって製造することができる。例えば、Songsivilai & Lachmann, Clin. Exp. Immunol. 79:315-321 (1990);Kostelny et al., J. Immunol. 148, 1547-1553 (1992)を参照されたい。単鎖抗体は、ファージディスプレイライブラリーまたはリボソームディスプレイライブラリー、遺伝子シャッフルライブラリーを用いて同定することができる。このようなライブラリーは、合成、半合成または天然および免疫適格供給源から構築することができる。よって、選択された免疫グロブリン配列を本明細書で提供される抗体サイトカイングラフトタンパク質の調製に利用することができる。
【0155】
本開示で使用する抗体または抗原結合分子は、二重特異性抗体をさらに含む。二重特異性または二官能性抗体は、2つの異なる重/軽鎖ペアおよび2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。他の抗原結合断片または抗体部分には、二価scFv(ダイアボディ)、二重特異性scFv抗体(抗体分子が2つの異なるエピトープを認識する)、単一結合ドメイン(dAb)およびミニ抗体が含まれる。選択された免疫グロブリン配列を本明細書で提供される抗体サイトカイングラフトタンパク質の調製に利用することができる。
【0156】
抗体の抗原結合断片、例えばFab断片、scFvを、抗体サイトカイングラフトタンパク質を構築するための構築ブロックとして使用することができ、これらは場合により多価フォーマットを含む。いくつかの実施形態では、このような多価分子が、抗体の定常領域(例えば、Fc)を含む。
【0157】
抗体サイトカイングラフトタンパク質は、抗体の一方または両方の可変領域(すなわち、VHおよび/またはVL)内、例えば1つまたは複数のCDR領域内の1個または複数の残基を修飾することによって設計することができ、このような適合VHおよび/またはVL領域配列を、抗体サイトカイングラフトタンパク質を調製するためのサイトカインの組み込みに利用することができる。行うことができる1つのタイプの可変領域設計はCDRグラフトである。抗体は主に6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を通して標的抗原と相互作用する。この理由のために、CDR内のアミノ酸配列はCDRの外側の配列よりも個々の抗体間で多様である。CDR配列はほとんどの抗体−抗原相互作用を担い、異なる特性を有する異なる抗体のフレームワーク配列上にグラフトした特異的抗体のCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、特異的抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現することが可能である(例えば、Riechmann, L. et al., 1998 Nature 332:323-327;Jones, P. et al., 1986 Nature 321:522-525;Queen, C. et al., 1989 Proc. Natl. Acad., U.S.A. 86:10029-10033;Winterの米国特許第5225539号明細書ならびにQueenらの米国特許第5530101号明細書;第5585089号明細書;第5693762号明細書および第6180370号明細書参照)。一定の例では、フレームワーク内の残基を突然変異させて抗体の抗原結合能力を維持または増強することが有益である(例えば、Queenらの米国特許第5530101号明細書;第5585089号明細書;第5693762号明細書および第6180370号明細書参照)。
【0158】
いくつかの態様では、「親和性成熟」として知られている、対象となる抗体の1つまたは複数の結合特性(例えば、親和性)を改善するためのVHおよび/またはVL CDR1、CDR2および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基の突然変異が、例えば、サイトカイングラフトタンパク質の状況と併せて抗体の抗原結合を最適化するのに有益となり得る。部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発を行って、突然変異(複数可)および抗体結合に対する効果を導入することができる、または対象となる他の機能的特性を本明細書に記載されるインビトロまたはインビボアッセイで評価し、実施例および/または当技術分野で公知の代替もしくは追加のアッセイで提供することができる。保存的修飾を導入することができる。突然変異はアミノ酸置換、付加または欠失であり得る。さらに、典型的にはCDR領域内の1個、2個、3個、4個または5個以下の残基を変化させる。
【0159】
設計された抗体または抗体断片は、例えば抗体の特性を改善するために、VHおよび/またはVL内のフレームワーク残基に修飾がなされたものである。いくつかの実施形態では、このようなフレームワーク修飾を行って抗体の免疫原性を低下させる。例えば、1つの手法は、1個または複数のフレームワーク残基を対応する生殖系列配列へと「復帰突然変異(backmutate)」させることである。より具体的には、体細胞突然変異を経験した抗体は、抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含む。このような残基は、抗体フレームワーク配列を抗体が由来する生殖系列配列と比較することによって同定することができる。フレームワーク領域配列をその生殖系列構成に戻すために、例えば、部位特異的突然変異誘発によって、体細胞突然変異を生殖系列配列に「復帰突然変異」させることができる。このような「復帰突然変異」抗体も本開示によって包含されることを意図している。さらなるフレームワーク修飾は、フレームワーク領域内または1つもしくは複数のCDR領域内の1個または複数の残基を突然変異させてT細胞エピトープを除去し、それによって抗体の潜在的な免疫原性を低下させることを含む。この手法はまた「脱免疫化(deimmunization)」とも呼ばれ、Carrらによる米国特許出願公開第2003/0153043号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0160】
抗体サイトカイングラフトタンパク質の調製に利用される抗体または抗体断片の定常領域は、適宜、任意のタイプまたはサブタイプであってよく、本方法によって治療される対象の種(例えば、ヒト、ヒト以外の霊長類または他の哺乳動物、例えば農業用哺乳動物(例えば、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ラクダ)、家庭用哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ)またはげっ歯類(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ))のものとなるよう選択することができる。いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質に利用される抗体がヒト化またはHumaneered(登録商標)抗体を生成するよう設計される。いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質に利用される抗体がヒト抗体である。いくつかの実施形態では、抗体定常領域アイソタイプがIgG、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4である。特定の実施形態では、定常領域アイソタイプがIgG
1である。いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質がIgGを含む。いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質がIgG1 Fcを含む。いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質がIgG2 Fcを含む。
【0161】
フレームワークまたはCDR領域内になされた修飾に加えてまたはその代わりに、抗体サイトカイングラフトタンパク質の調製に利用される抗体または抗体断片を、典型的には抗体の1つまたは複数の機能的特性、例えば血清中半減期、補体結合、Fc受容体結合および/または抗原依存性細胞傷害性を変化させるためにFc領域内に修飾を含むように設計することができる。さらに、抗体または抗体断片を化学的に修飾する(例えば、1つまたは複数の化学的部分を抗体に結合させることができる)またはそのグリコシル化を変化させるよう修飾して、抗体サイトカイングラフトタンパク質の1つまたは複数の機能的特性を同様に変化させることができる。
【0162】
一実施形態では、ヒンジ領域中のシステイン残基の数を変化させる、例えば増加または減少させるように、CH1のヒンジ領域を修飾する。例えば、Bodmerらによって米国特許第5677425号明細書にさらに記載されている手法では、CH1のヒンジ領域中のシステイン残基の数が、例えば、軽鎖および重鎖の集合を容易にする、または抗体サイトカイングラフトタンパク質の安定性を増加もしくは減少させるよう変化させられる。別の実施形態では、抗体のFcヒンジ領域が抗体サイトカイングラフトタンパク質の生物学的半減期を変化させるよう突然変異させられる。より具体的には、抗体サイトカイングラフトタンパク質が天然Fc−ヒンジドメインSpA結合に対して損なわれたブドウ球菌(Staphylococcyl)タンパク質(SpA)結合を有するように、1つまたは複数のアミノ酸突然変異がFcヒンジ断片のCH2−CH3ドメイン界面領域に導入される。この手法はWardらによる米国特許第6165745号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0163】
本開示は、インビボで延長した半減期を有するIL10Rタンパク質に特異的に結合する抗体サイトカイングラフトタンパク質を提供する。別の実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、その生物学的半減期を増加させるよう修飾される。種々の手法が可能である。インビボで増加した半減期を有する抗体サイトカイングラフトタンパク質は、1つまたは複数のアミノ酸修飾(すなわち、置換、挿入または欠失)をIgG定常ドメインまたはそのFcRn結合断片(好ましくは、FcまたはヒンジFcドメイン断片)に導入して生成することもできる。例えば、Wardらの米国特許第6277375号明細書に記載されるように、以下の突然変異の1つまたは複数を導入することができる:T252L、T254S、T256F。例えば、国際公開第98/23289号パンフレット;国際公開第97/34631号パンフレット;および米国特許第6277375号明細書を参照されたい。あるいは、Prestaらの米国特許第5869046号明細書および第6121022号明細書に記載されるように、抗体サイトカイングラフトタンパク質を、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループからとられるサルベージ受容体結合エピトープを含むようにCH1またはCL領域内を変化させる。さらに他の実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置き換えることによってFc領域を変化させて、抗体サイトカイングラフトタンパク質のエフェクター機能を変化させる。例えば、抗体サイトカイングラフトタンパク質がエフェクターリガンドに対して変化した親和性を有するが、親抗体の抗原結合能力を保持するように、1個または複数のアミノ酸を異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。親和性を変化させるエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体(FcR)または補体のC1成分であり得る。この手法は、共にWinterらによる米国特許第5624821号明細書および第5648260号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0164】
別の実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が変化したC1q結合および/または減少もしくは消滅した補体依存性細胞傷害(CDC)を有するように、アミノ酸残基から選択される1個または複数のアミノ酸を異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。この手法はIdusogieらによる米国特許第6194551号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0165】
このような突然変異を含む抗体サイトカイングラフトタンパク質は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)または補体依存性細胞傷害(CDC)をあまり媒介しないまたは全く媒介しない。いくつかの実施形態では、IgG1定常領域のアミノ酸残基L234およびL235がAla234およびAla235に置換している。いくつかの実施形態では、IgG1定常領域のアミノ酸残基N267がAla267に置換している。
【0166】
別の実施形態では、1個または複数のアミノ酸残基を変化させ、それによって抗体サイトカイングラフトタンパク質が補体を結合する能力を変化させる。この手法はBodmerらによる国際公開第94/29351号パンフレットにさらに記載されている。
【0167】
さらに別の実施形態では、Fc領域を、1個または複数のアミノ酸を修飾することによって、抗体が抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する能力を増加させるおよび/またはFcγ受容体に対する抗体サイトカイングラフトタンパク質の親和性を増加させるよう修飾する。この手法はPrestaによる国際公開第00/42072号パンフレットにさらに記載されている。さらに、FcγRl、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnについてのヒトIgG1上の結合部位がマッピングされており、結合が改善した変異型が記載されている(Shields, R.L. et al., 2001 J. Biol. Chem. 276:6591-6604参照)。
【0168】
さらに別の実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質のグリコシル化を修飾する。例えば、非グリコシル化抗体サイトカイングラフトタンパク質を作製することができる(すなわち、抗体サイトカイングラフトタンパク質がグリコシル化を欠いている)。グリコシル化を変化させて、例えば、「抗原」に対する抗体の親和性を高めることができる。このような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内のグリコシル化の1つまたは複数の部位を変化させることによって達成することができる。例えば、1つまたは複数の可変領域フレームワークグリコシル化部位の除去をもたらす1つまたは複数のアミノ酸置換を行い、それによってその部位のグリコシル化を除去することができる。このような非グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を高めることができる。このような手法はCoらによる米国特許第5714350号明細書および第6350861号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0169】
さらにまたはあるいは、変化したグリコシル化型を有する抗体サイトカイングラフトタンパク質、例えばフコシル残基の量が減少した低フコシル化(hypofucosylated)抗体サイトカイングラフトタンパク質または二分GlcNac構造が増加した抗体を作製することができる。このような変化したグリコシル化パターンは、抗体のADCC活性を増加させることが実証されている。このような炭水化物修飾は、例えば、抗体サイトカイングラフトタンパク質を、グリコシル化機構が変化した宿主細胞中で発現させることによって達成することができる。グリコシル化機構が変化した細胞は、当技術分野で記載されており、組換え抗体サイトカイングラフトタンパク質を発現し、それによってグリコシル化が変化した抗体サイトカイングラフトタンパク質を製造する宿主細胞として使用することができる。例えば、Hangらによる欧州特許第1176195号明細書は、細胞株中で発現する抗体サイトカイングラフトタンパク質が低フコシル化を示すように、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が機能的に破壊された細胞株を記載している。Prestaによる国際公開第03/035835号パンフレットは、フコースをAsn(298)結合炭水化物に結合させる能力が低下して、同様に宿主細胞中で発現する抗体サイトカイングラフトタンパク質の低フコシル化をもたらす変異型CHO細胞株、Lecl3細胞を記載している(Shields, R.L. et al., 2002 J. Biol. Chem. 277:26733-26740も参照)。Umanaらによる国際公開第99/54342号パンフレットは、設計された細胞株中で発現する抗体サイトカイングラフトタンパク質が抗体のADCC活性増加をもたらす二分GlcNac構造の増加を示すように、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するよう設計された細胞株を記載している(Umana et al., 1999 Nat. Biotech. 17:176-180も参照)。
【0170】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質の1つまたは複数のドメインまたは領域がリンカー、例えばペプチドリンカー、例えば当技術分野で周知のものを介して接続されている(例えば、Holliger, P., et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448;Poljak, RJ., et al. (1994) Structure 2:1121-1123参照)。ペプチドリンカーは長さが変化し得る、例えば、リンカーは1〜100アミノ酸長であり得、典型的にはリンカーは5〜50アミノ酸長、例えば5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50アミノ酸長である。
【0171】
いくつかの実施形態では、単量体IL10を場合により1つまたは複数のペプチドリンカー配列と共にCDR配列に組み込む。特定の実施形態では、1つまたは複数のペプチドリンカーが、(Gly
n−Ser)
m配列、(Gly
n−Ala)
m配列または(Gly
n−Ser)
m/(Gly
n−Ala)
m配列(式中、各nは独立に1〜5の整数であり、各mは独立に0〜10の整数である)の任意の組合せから独立に選択される。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーが(Gly
4−Ser)
m(式中、mは0〜10の整数である)である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーが(Gly
4−Ala)
m(式中、mは0〜10の整数である)である。リンカーの例としては、それだけに限らないが、1つまたは複数のリンカーがG
4S反復、例えばGly−SerリンカーGGGGS(配列番号252)または(GGGGS)
m(式中、mは1以上の正の整数である)を含む特定の実施形態が挙げられる。例えば、m=1、m=2、m=3、m=4、m=5およびm=6、m=7、m=8、m=9およびm=10である。いくつかの実施形態では、リンカーが、それだけに限らないが、(GGGGS)
3または(GGGGS)
4を含むGGGGS(配列番号252)の複数の反復を含む。いくつかの実施形態では、SerをAlaで置き換えることができ、これは例えば(GGGGA)(配列番号253)または(GGGGA)
m(式中、mは1以上の正の整数である)などのリンカーG/Aとなる。いくつかの実施形態では、リンカーがGGGGA(配列番号253)の複数の反復を含む。他の実施形態では、リンカーがGGGGS(配列番号252)およびGGGGA(配列番号253)の組合せおよび倍数を含む。
【0172】
さらに、抗体サイトカイングラフトタンパク質をマーカー配列、例えば抗体サイトカイングラフトタンパク質の精製を容易にするペプチドに結合することができる。好ましい実施形態では、マーカーアミノ酸配列がヘキサ−ヒスチジンペプチド、例えば中でもその多くが商業的に入手可能であるpQEベクター(QIAGEN,Inc.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、CA、91311)で提供されるタグである。例えば、Gentz et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824に記載されるように、ヘキサ−ヒスチジンはグラフトタンパク質の簡便な精製を提供する。精製に有用な他のペプチドタグには、それだけに限らないが、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質(Wilson et al., 1984, Cell 37:767)に由来するエピトープに相当するヘマグルチニン(「HA」)タグおよび「flag」タグが含まれる。
【0173】
抗体を、標的抗原の免疫測定法または精製に特に有用な固体支持体に付着させることもできる。このような固体支持体には、それだけに限らないが、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンが含まれる。
【0174】
抗体サイトカイングラフトタンパク質活性についてのアッセイ
抗体サイトカイングラフトタンパク質を同定するためのアッセイは当技術分野で公知であり、本明細書に記載されている。抗体サイトカイングラフトタンパク質はIL10受容体(IL10R)に結合し、抗炎症効果ならびに免疫刺激効果をもたらす細胞内シグナル伝達を促進、誘導および刺激する。
【0175】
抗体サイトカイングラフトタンパク質とIL−10Rの結合は、当技術分野で公知の任意の方法を用いて測定することができる。例えば、IL−10Rとの結合は、限定されないが、ELISA、ウェスタンブロット法、表面プラズモン共鳴法(例えば、BIAcore)およびフローサイトメトリーを含む公知の技術を用いて測定することができる。
【0176】
IL−10Rを通した細胞内シグナル伝達は、当技術分野で公知の任意の方法を用いて測定することができる。例えば、IL−10Rを通した活性化はSTAT3リン酸化およびシグナル伝達を促進する。STAT3活性化を測定する方法は当技術分野で標準的である(例えば、STAT3タンパク質のリン酸化状態、レポーター遺伝子アッセイ、下流シグナル伝達アッセイ等)。IL−10Rを通した活性化は、炎症性サイトカインの抑制ならびにマクロファージの分化および増殖を含む抗炎症効果を有する。さらに、IL−10Rを通した活性化は、B細胞増殖、肥満細胞増殖(例えば、MC/9)およびナチュラルキラー(NK)細胞増殖の刺激ならびに一定の炎症性サイトカインの誘導を含む炎症刺激効果を有する。細胞の増殖を測定する方法は当技術分野で標準的である(例えば、
3H−チミジン組み込みアッセイ、CFSE標識)。サイトカイン産生を測定する方法は当技術分野で周知である(例えば、ELISAアッセイ、ELISpotアッセイ)。インビトロアッセイを行う場合、アゴニスト抗体サイトカイングラフトタンパク質と接触した試験細胞または試験細胞からの培養物上清を、アゴニスト抗体サイトカイングラフトタンパク質と接触させていない対照細胞または対照細胞からの培養物上清ならびに/あるいは組換えヒトIL10(rhIL10)と接触させたものと比較することができる。
【0177】
抗体サイトカイングラフトタンパク質のIL10受容体アゴニスト活性を体外および/またはインビボで測定することもできる。いくつかの態様では、未処理動物および/またはrhIL10で同様に処理した動物と比較した、抗体サイトカイングラフトタンパク質で処理した動物の体外での種々の細胞型にわたるSTAT3活性化を測定する方法を使用して、細胞型にわたる抗体グラフトタンパク質の示差活性を示すことができる。好ましい抗体サイトカイングラフトタンパク質は、単球を活性化および増殖する能力を有する。例えば、単球のインビボ活性化および増殖は、当技術分野で公知の任意の方法を用いて、例えばフローサイトメトリーによって測定することができる。抗体サイトカイングラフトタンパク質は、刺激後の炎症促進応答のレベルを抑制するのに治療上有用となり得る。炎症性サイトカインのレベルは、刺激剤(例えば、LPS)による処理前、中および/または後に、抗体サイトカイングラフトタンパク質で処理した動物から単離した試料において、当技術分野で公知の任意の方法を用いて測定することができ、結果を未処理対照動物および/または組換えヒトIL10(rhIL10)療法で同様に処理した動物と比較することができる。好ましいアゴニスト抗体サイトカイングラフトタンパク質は、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、乾癬、I型糖尿病、急性膵炎、ブドウ膜炎、シェーグレン病、ベーチェット病、サルコイドーシスおよび移植片対宿主病(GVHD)を予防、低減、阻害または排除するのに治療上有効となり得る。アゴニスト抗体サイトカイングラフトタンパク質の有効性は、治療上有効量の抗体サイトカイングラフトタンパク質を対象に投与し、抗体サイトカイングラフトタンパク質の投与前後の対象を比較することによって決定することができる。炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、乾癬、I型糖尿病、急性膵炎、ブドウ膜炎、シェーグレン病、ベーチェット病、サルコイドーシスおよび移植片対宿主病(GVHD)のための療法におけるアゴニスト抗体サイトカイングラフトタンパク質の有効性も、治療上有効量の抗体サイトカイングラフトタンパク質を試験対象に投与し、試験対象を、抗体サイトカイングラフトタンパク質を投与しなかった対照の対象と比較するおよび/またはrhIL10で同様に処理した対象と比較することによって決定することができる。
【0178】
抗体サイトカイングラフトタンパク質をコードするポリヌクレオチド
別の態様では、抗体サイトカイングラフトタンパク質の重鎖タンパク質および軽鎖タンパク質をコードする単離核酸が提供される。抗体サイトカイングラフトタンパク質は、それだけに限らないが、組換え発現、化学合成および抗体四量体の酵素的消化を含む当技術分野で公知の任意の手段によって製造することができる。組換え発現は、当技術分野で公知の任意の適当な宿主細胞、例えば哺乳動物宿主細胞、細菌宿主細胞、酵母宿主細胞、昆虫宿主細胞等からであり得る。
【0179】
配列番号109、配列番号110、配列番号205および配列番号206のいずれか1つに例示される可変領域;配列番号111、配列番号112、配列番号207、配列番号208のいずれか1つに例示される可変領域、配列番号109、配列番号110、配列番号205および配列番号206のいずれか1つに例示されるCDR;配列番号111、配列番号112、配列番号207および配列番号208のいずれか1つに例示される重鎖および軽鎖をコードするポリヌクレオチドが本明細書で提供される。
【0180】
よって、本開示は、本明細書に記載される抗体サイトカイングラフトタンパク質の重鎖および/または軽鎖ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、例えば本明細書に記載される相補性決定領域を含む重鎖または軽鎖可変領域またはセグメントをコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドが、配列番号242のポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%核酸配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドが、配列番号243のポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%核酸配列同一性を有する配列を含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドが、配列番号246のポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%核酸配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドが、配列番号247のポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%核酸配列同一性を有する配列を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、重鎖をコードするポリヌクレオチドが、配列番号244のポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%核酸配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖をコードするポリヌクレオチドが、配列番号245のポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%核酸配列同一性を有する。
【0183】
いくつかの実施形態では、重鎖をコードするポリヌクレオチドが、配列番号248のポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%核酸配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖をコードするポリヌクレオチドが、配列番号249の選択されたポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%核酸配列同一性を有する。
【0184】
ポリヌクレオチドは、抗体サイトカイングラフトタンパク質の可変領域配列をコードすることができる。これらはまた、抗体サイトカイングラフトタンパク質の可変領域と定常領域の両方をコードすることができる。ポリヌクレオチド配列のいくつかは、抗体サイトカイングラフトタンパク質の1つの重鎖と軽鎖の両方の可変領域を含むポリペプチドをコードする。いくつかの他のポリヌクレオチドは、抗体タンパク質グラフトタンパク質の1つの重鎖および軽鎖の可変領域とそれぞれ実質的に同一の2つのポリペプチドセグメントをコードする。
【0185】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドまたは核酸がDNAを含む。他の実施形態では、ポリヌクレオチドまたは核酸がRNAを含み、これが一本鎖であっても二本鎖であってもよい。
【0186】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のサイトカイングラフトタンパク質またはその断片と、場合により分泌シグナルとをコードする核酸を含む組換え宿主細胞が提供される。特定の実施形態では、組換え宿主細胞が、抗体サイトカイングラフトタンパク質またはその断片と、分泌シグナルとをコードするベクターを含む。他の特定の実施形態では、組換え宿主細胞が、抗体サイトカイングラフトタンパク質の2本の免疫グロブリンタンパク質鎖と分泌シグナルとをコードする1つまたは複数のベクターを含む。いくつかの実施形態では、組換え宿主細胞が、抗体サイトカイングラフトタンパク質の2本の免疫グロブリンタンパク質鎖と分泌シグナルとをコードする単一ベクターを含む。いくつかの実施形態では、組換え宿主細胞が、1つは抗体サイトカイングラフトタンパク質のヘテロ二量体の重鎖免疫グロブリンタンパク質鎖をコードし、もう1つは抗体サイトカイングラフトタンパク質のヘテロ二量体の軽鎖免疫グロブリンタンパク質鎖をコードし、それぞれが分泌シグナルを含む2つのベクターを含む。組換え宿主細胞は原核細胞であっても真核細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、宿主細胞が真核細胞株である。いくつかの実施形態では、宿主細胞が哺乳動物細胞株である。
【0187】
抗体サイトカイングラフトタンパク質を製造する方法がさらに提供される。いくつかの実施形態では、本方法が、(i)抗体サイトカイングラフトタンパク質の免疫グロブリンタンパク質鎖をコードする1つまたは複数のベクターを含む宿主細胞を、抗体サイトカイングラフトタンパク質の発現、形成および分泌に適した条件下で培養するステップと、(ii)抗体サイトカイングラフトタンパク質を回収するステップとを含む。
【0188】
ポリヌクレオチド配列は、新規な固相DNA合成または抗体サイトカイングラフトタンパク質のポリペプチド鎖をコードする既存の配列(例えば、本明細書に記載される配列)のPCR突然変異誘発によって製造することができる。核酸の直接化学合成は、当技術分野で公知の方法、例えばNarang et al., Meth. Enzymol. 68:90, 1979のホスホトリエステル法;Brown et al., Meth. Enzymol. 68:109, 1979のホスホジエステル法;Beaucage et al., Tetra. Lett., 22:1859, 1981のジエチルホスホロアミダイト法;および米国特許第4458066号明細書の固体支持体法によって達成することができる。PCRにより突然変異をポリヌクレオチド配列に導入することは、例えば、PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification, H.A. Erlich (Ed.), Freeman Press, NY, NY, 1992;PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al. (Ed.), Academic Press, San Diego, CA, 1990;Mattila et al., Nucleic Acids Res. 19:967, 1991;およびEckert et al., PCR Methods and Applications 1:17, 1991に記載されるように行うことができる。
【0189】
上記の抗体サイトカイングラフトタンパク質を製造するための発現ベクターおよび宿主細胞も本開示で提供される。種々の発現ベクターを使用して、抗体サイトカイングラフトタンパク質の免疫グロブリンポリペプチド鎖または断片をコードするポリヌクレオチドを発現させることができる。ウイルス発現ベクターと非ウイルス発現ベクターの両方を使用して、哺乳動物宿主細胞で免疫グロブリンタンパク質を製造することができる。非ウイルスベクターおよび系には、典型的にはタンパク質またはRNAを発現するための発現カセットを含むプラスミド、エピソームベクター、およびヒト人工染色体が含まれる(例えば、Harrington et al., Nat Genet 15:345, 1997参照)。例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞中での抗体サイトカイングラフトタンパク質ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現に有用な非ウイルスベクターには、pThioHis A、BおよびC、pcDNA3.1/His、pEBVHis A、BおよびC(Invitrogen、San Diego、CA)、MPSVベクター、および他のタンパク質を発現するための当技術分野で公知の多数の他のベクターが含まれる。有用なウイルスベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスに基づくベクター、SV40、パピローマウイルス、HBPエプスタイン・バーウイルスに基づくベクター、ワクシニアウイルスベクターおよびセムリキ森林ウイルス(SFV)が含まれる。Brent et al.,上記;Smith, Annu. Rev. Microbiol. 49:807, 1995;およびRosenfeld et al., Cell 68:143, 1992を参照されたい。
【0190】
発現ベクターの選択は、ベクターを発現させる、意図する宿主細胞に依存する。典型的には、発現ベクターは、プロモーターと、抗体サイトカイングラフトタンパク質をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結した他の調節配列(例えば、エンハンサー)とを含む。いくつかの実施形態では、誘導性プロモーターを使用して誘導条件下以外での挿入した配列の発現を防ぐ。誘導性プロモーターには、例えば、アラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモーターまたはヒートショックプロモーターが含まれる。形質転換生物の培養物を、その発現産物が宿主細胞によってよりよく耐えられるコード配列に集団を偏らせることなく、非誘導条件下で増殖させることができる。プロモーターに加えて、抗体サイトカイングラフトタンパク質の免疫グロブリン鎖または断片の効率的な発現のために他の調節要素も要求され得るまたは望まれ得る。これらの要素には、典型的にはATG開始コドンおよび隣接リボース結合部位または他の配列が含まれる。さらに、使用している細胞系に適したエンハンサーを含めることによって、発現の効率を増強することができる(例えば、Scharf et al., Results Probl. Cell Differ. 20:125, 1994;およびBittner et al., Meth. Enzymol., 153:516, 1987参照)。例えば、SV40エンハンサーまたはCMVエンハンサーを使用して哺乳動物宿主細胞中での発現を増加させることができる。
【0191】
発現ベクターはまた、抗体サイトカイングラフトタンパク質配列によってコードされる配列に加えて、異種タンパク質を形成するための分泌シグナル配列も提供することができる。しばしば、抗体サイトカイングラフトタンパク質の挿入された免疫グロブリン配列はベクターに包含される前にシグナル配列と作動可能に連結している。免疫グロブリン軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインをコードする配列を受け入れるために使用されるベクターは、定常領域またはその一部もコードする。このようなベクターは、定常領域を含む抗体サイトカイングラフトタンパク質としての可変領域の発現を可能にし、それによって完全抗体サイトカイングラフトタンパク質またはその断片の製造をもたらす。典型的には、このような定常領域はヒトである。
【0192】
抗体サイトカイングラフトタンパク質鎖を有し、発現するための宿主細胞は原核生物であっても真核生物であってもよい。大腸菌(E. coli)が本開示のポリヌクレオチドをクローニングおよび発現するための有用な1つの原核生物宿主である。使用するのに適した他の微生物宿主には、桿菌、例えば枯草菌(Bacillus subtilis)および他の腸内細菌科、例えばサルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)および種々のシュードモナス属(Pseudomonas)種が含まれる。これらの原核生物宿主では、典型的には宿主細胞と適合性の発現制御配列(例えば、複製起点)を含む発現ベクターを作製することもできる。さらに、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、β−ラクタマーゼプロモーター系またはファージλのプロモーター系などの任意の数の種々の周知のプロモーターが存在するだろう。プロモーターは、典型的には場合によりオペレーター配列と共に発現を制御し、転写および翻訳を開始および完了するためのリボソーム結合部位配列などを有する。酵母などの他の微生物を使用して抗体サイトカイングラフトタンパク質を発現させることもできる。バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞も使用することができる。
【0193】
いくつかの好ましい実施形態では、哺乳動物宿主細胞を使用して本開示の抗体サイトカイングラフトタンパク質を発現し、製造する。例えば、これらは外因性発現ベクターを有する哺乳動物細胞株であり得る。これらには、任意の正常な致死の、または正常なもしくは異常な不死の動物またはヒト細胞が含まれる。例えば、CHO細胞株、種々のCos細胞株、HeLa細胞、骨髄腫細胞株、形質転換B細胞およびハイブリドーマを含む、完全免疫グロブリンを分泌することができるいくつかの適切な宿主細胞株が開発されている。ポリペプチドを発現させるための哺乳動物組織細胞培養物の使用は、一般的に、例えば、Winnacker, From Genes to Clones, VCH Publishers, N.Y., N.Y., 1987に論じられている。哺乳動物宿主細胞のための発現ベクターは、発現制御配列、例えば複製起点、プロモーターおよびエンハンサー(例えば、Queen et al., Immunol. Rev. 89:49-68, 1986)、ならびに必要なプロセシング情報部位、例えばリボソーム結合部位、RNAスプライシング部位、ポリアデニル化部位および転写終結配列を含むことができる。これらの発現ベクターは通常、哺乳動物遺伝子または哺乳動物ウイルス由来のプロモーターを含む。適切なプロモーターは、構成的、細胞型特異的、段階特異的および/または調節可能もしくは制御可能であり得る。有用なプロモーターには、それだけに限らないが、メタロチオネインプロモーター、構成型アデノウイルス主要後期プロモーター、デキサメタゾン誘導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRP polIIIプロモーター、構成型MPSVプロモーター、テトラサイクリン誘導性CMVプロモーター(ヒト最初期CMVプロモーターなど)、構成型CMVプロモーターおよび当技術分野で公知のプロモーター−エンハンサー組合せが含まれる。
【0194】
対象となるポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入する方法は、細胞宿主型に応じて変化する。例えば、原核細胞には塩化カルシウムトランスフェクションが一般的に利用されるが、他の細胞宿主にはリン酸カルシウム処理または電気穿孔が使用され得る(一般的に上記のSambrook et al.参照)。他の方法には、例えば、電気穿孔、リン酸カルシウム処理、リポソーム媒介形質転換、注入および微量注入、衝撃法、ビロゾーム、イムノリポソーム(immunoliposome)、ポリカチオン:核酸複合体、ネイキッドDNA、人工ビリオン、ヘルペスウイルス構造タンパク質VP22へのグラフト(Elliot and O'Hare, Cell 88:223, 1997)、DNAの薬剤増強取り込み、および体外形質導入が含まれる。組換えタンパク質の長期の高収率の製造のために、安定な発現が通常望まれる。例えば、抗体サイトカイングラフトタンパク質免疫グロブリン鎖を安定に発現する細胞株は、ウイルス複製起点または内因性発現エレメントおよび選択マーカー遺伝子を含む発現ベクターを使用して調製することができる。ベクターの導入後、細胞を富化培地で1〜2日間増殖させた後、これらを選択培地に切り替える。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を与えることであり、その存在によって、選択培地中で、導入配列の発現に成功した細胞の増殖が可能になる。耐性の安定にトランスフェクトした細胞は、細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖させることができる。
【0195】
抗体サイトカイングラフトタンパク質を含む組成物
薬学的に許容される担体と併せて製剤化された抗体サイトカイングラフトタンパク質を含む医薬組成物が提供される。場合により、医薬組成物は、所与の障害を治療または予防するのに適した他の治療剤をさらに含む。薬学的に許容される担体は組成物を増強もしくは安定化する、または組成物の調製を促進する。薬学的に許容される担体には、生理学的に適合性の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などが含まれる。
【0196】
本開示の医薬組成物は、当技術分野で公知の種々の方法によって投与することができる。投与の経路および/または様式は所望の結果に応じて変化する。投与が非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、髄腔内、動脈内または皮下)による、または標的部位の近位に投与されることが好ましい。薬学的に許容される担体は、静脈内、筋肉内、腹腔内、髄腔内、動脈内、皮下、鼻腔内、吸入、脊髄または表皮投与(例えば、注射または注入による)のいずれか1つまたは複数による投与に適している。投与経路に応じて、活性化合物、例えば抗体サイトカイングラフトタンパク質を材料で保護して、化合物を不活性化し得る酸および他の自然条件の作用から化合物を保護することができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物が静脈内投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物が皮下投与のための製剤である。
【0197】
抗体サイトカイングラフトタンパク質は、単独でまたは他の適切な成分と組み合わせて、吸入を介して投与するためのエアゾール製剤に加工することができる(すなわち、これらを「噴霧する」ことができる)。エアゾール製剤は加圧された許容される噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などに入れることができる。
【0198】
いくつかの実施形態では、医薬組成物が滅菌および流体である。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散の場合、必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖、ポリアルコール(マンニトールまたはソルビトールなど)、および塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。注射組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。特定の実施形態では、適切な賦形剤(例えば、スクロース)を用いて凍結乾燥型で貯蔵するための組成物を調製することができる。
【0199】
医薬組成物は、当技術分野で周知の日常的に実施される方法に従って調製することができる。薬学的に許容される担体は、一部は、投与している具体的な組成物ならびに組成物を投与するために使用される具体的な方法によって決定される。したがって、本開示の医薬組成物の多種多様な適切な製剤が存在する。抗体サイトカイングラフトタンパク質を製剤化し、適切な投与およびスケジュールを決定するための適用可能な方法は、例えば、その各々が参照により本明細書に組み込まれる、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21
stEd., University of the Sciences in Philadelphia, Eds., Lippincott Williams & Wilkins (2005);およびMartindale: The Complete Drug Reference, Sweetman, 2005, London: Pharmaceutical Press.、およびMartindale, Martindale: The Extra Pharmacopoeia, 31st Edition., 1996, Amer Pharmaceutical Assn, and Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978に見出すことができる。医薬組成物は、好ましくはGMP条件下で製造される。典型的には、治療上有効用量または効果的用量の抗体サイトカイングラフトタンパク質が医薬組成物に使用される。抗体サイトカイングラフトタンパク質は、当業者に公知の慣用的な方法によって薬学的に許容される剤形に製剤化される。投薬レジメンは、所望の応答(例えば、治療的応答)をもたらすよう調整される。治療上または予防上有効用量を決定する場合、低用量を投与し、次いで、望ましくない副作用が最小であるまたは全くなしに所望の応答が達成されるまで、漸増することができる。例えば、単一ボーラスを投与してもよいし、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよいし、または用量を緊急の治療状況によって指示されるように相対的に減少もしくは増加させてもよい。投与の容易さおよび投薬の均一性のために親組成物を投薬単位形態に製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される投薬単位形態は、治療する対象のための一体型投薬として適した物理的に分離した単位を指す;各単位は、要求される医薬担体と合わせて所望の治療効果をもたらすよう計算された所定の量の活性化合物を含む。
【0200】
本開示の医薬組成物中の有効成分の実際の投薬レベルは、患者に有毒となることなく、特定の患者、組成物および投与様式に望ましい治療応答を達成するのに有効な量の有効成分を得るために変化させることができる。選択される投薬レベルは、使用される本開示の特定の組成物、またはそのエステル、塩もしくはアミドの特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、使用している特定の化合物の排泄速度、治療の持続期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または物質、治療している患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康状態および以前の病歴ならびに同様の因子を含む種々の薬物動態因子に依存する。
【0201】
第2の薬剤との共製剤化(co-formulation)
いくつかの実施形態では、薬理学的組成物が、抗体サイトカイングラフトタンパク質と、1種または複数の追加の薬理学的薬剤(複数可)との混合物を含む。本抗体サイトカイングラフトタンパク質との混合物に含めるための例示的な第2の薬剤には、限定されないが、抗炎症剤、免疫調節剤、アミノサリチル酸および抗生物質が含まれる。適切な選択は、好ましい製剤、投薬および/または送達方法に依存し得る。
【0202】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が抗炎症剤と共製剤化される(すなわち、混合物として提供されるまたは混合物で調製される)。特定の実施形態では、副腎皮質ステロイド抗炎症剤が抗体サイトカイングラフトタンパク質と併せて使用され得る。使用するための副腎皮質ステロイドは、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ブデニソニド、メサラミンおよびデキサメタゾンのいずれかから選択され得る。適切な選択は、製剤および送達の選択に依存する。
【0203】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が免疫調節剤と共製剤化される。特定の実施形態では、免疫調節剤が、6−メルカプトプリン、アザチオプリン、シクロスポロリンA、タクロリムスおよびメトトレキサートのいずれかから選択される。特定の実施形態では、免疫調節剤が、抗TNF剤(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ)、ナタリズマブおよびベドリズマブから選択される。
【0204】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質がアミノサリチル酸剤と共製剤化される。特定の実施形態では、アミノサリチル酸がスルファサラジン、メサラミン、バルサラジド、オルサラジンまたは5−アミノサリチル酸の他の誘導体から選択される。
【0205】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が抗菌剤と共製剤化される。例示的な抗菌剤には、限定されないが、スルホンアミド(例えば、スルファニルアミド、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルフィソキサゾール、スルファセタミド)、トリメトプリム、キノロン(例えば、ナリジクス酸、シノキサシン、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、フレロキサシン、ペルロキサシン、レボフロキサシン、ガレノキサシンおよびゲミフロキサシン)、メテナミン、ニトロフラントイン、ペニシリン(例えば、ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリンオキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、アンピシリン、アモキシシリン、カルベニシリン、チカルシリン、メズロシリンおよびピペラシリン)セファロスポリン(例えば、セファゾリン、セファレキシン、セファドロキシル、セフォキシチン、セファクロル、セフプロジル、セフロキシム、セフロキシムアセチル、ロラカルベフ、セフォテタン、セフォラニド、セフォタキシム、セフポドキシムプロキセチル、セフィブテン、セフジニル、セフジトレンピボルキシル、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフォペラゾン、セフタジジムおよびセフェピン)、カルバペネム(例えば、イミペネム、アズトレオナム)およびアミノグリコシド(例えば、ネオマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トラマイシン、ネチルマイシンおよびアミカシン)が含まれる。
【0206】
製品/キット
いくつかの態様では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が製品(すなわち、キット)で提供される。抗体サイトカイングラフトタンパク質は、一般的にバイアルまたは容器中にある。よって、製品は、容器と、容器上または容器に随伴したラベルまたは添付文書とを含む。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、溶液バッグ等が含まれる。適宜、抗体サイトカイングラフトタンパク質は液体形態または乾燥(例えば、凍結乾燥)形態であり得る。容器は、単独でまたは別の組成物と組み合わせて、免疫関連障害を治療、予防および/または改善するための組成物を調製するのに有効な組成物を保持する。ラベルまたは添付文書は、組成物が免疫関連障害を治療、予防および/または改善するために使用されることを示す。本明細書に記載される抗体サイトカイングラフトタンパク質を含む製品(キット)は、場合により1種または複数の追加の薬剤を含む。いくつかの実施形態では、製品(キット)が抗体サイトカイングラフトタンパク質と、薬学的に許容される希釈剤とを含む。いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、同じ製剤で(例えば、混合物として)、1種または複数の追加の活性剤を含む製品(キット)で提供される。いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、別個の製剤で(例えば、別個の容器で)、第2または第3の薬剤を含む製品(キット)で提供される。特定の実施形態では、製品(キット)が、抗体サイトカイングラフトタンパク質のアリコートを含み、アリコートが1回または複数回用量を提供する。いくつかの実施形態では、用量が均一であるまたは異なる複数回投与のためのアリコートが提供される。特定の実施形態では、変化する投薬レジメンは適宜、漸増または漸減投薬レジメンである。いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質および第2の薬剤の投与量が独立に均一であるまたは独立に変化する。特定の実施形態では、製品(キット)が、抗炎症剤、免疫調節剤、アミノサリチル酸および抗生物質のいずれかから選択される追加の薬剤を含む。1種または複数の追加の薬剤の選択は、投薬量、送達および治療される疾患状態に依存する。
【0207】
免疫関連障害の治療方法および免疫関連障害における抗体サイトカイングラフトタンパク質の使用
治療または予防の対象となる状態
抗体サイトカイングラフトタンパク質は、免疫関連障害の治療、改善または予防において用途を見出している。一態様では、本開示は、治療上有効量の本明細書に記載される抗体サイトカイングラフトタンパク質を個体に投与するステップを含む、治療を必要とする個体の免疫関連障害を治療する方法を提供する。本開示はまた、一態様で、治療剤として使用するための抗体サイトカイングラフトタンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、個体の免疫関連障害の治療または予防において治療剤として使用するための抗体サイトカイングラフトタンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、治療を必要とする個体の免疫関連障害を治療するための医薬品を製造するための抗体サイトカイングラフトタンパク質の使用が提供される。さらなる態様では、本開示は、治療または改善を必要とする個体の免疫関連障害の治療または改善に使用するためのこのような抗体サイトカイングラフトタンパク質を含む組成物を提供する。
【0208】
治療目的については、個体が免疫関連障害を有し得る。防止または予防目的については、個体は免疫関連障害の活性状態からの寛解にあり得る、または将来の発症が予想され得る。いくつかの実施形態では、患者が免疫関連障害を有する、免疫関連障害を有する疑いがある、または免疫関連障害からの寛解にある。抗体サイトカイングラフトタンパク質による治療の対象となる免疫関連障害は通常、本明細書に記載されるIL10受容体シグナル伝達の活性化からの利益を得る。治療の対象となる免疫関連障害には、限定されないが、症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、乾癬、I型糖尿病、急性膵炎、ブドウ膜炎、シェーグレン病、ベーチェット病、サルコイドーシスおよび移植片対宿主病(GVHD)が含まれる。
【0209】
抗体サイトカイングラフトタンパク質の投与
医師または獣医師は、所望の治療効果を達成するのに必要とされるより低いレベルで医薬組成物に使用される抗体サイトカイングラフトタンパク質の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで、投与量を徐々に増加させることができる。一般に、本開示の組成物の有効用量は、治療される具体的な疾患または状態、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の医薬品、および治療が予防的であるか治療的であるかを含む多くの異なる因子に応じて変化する。治療投与量は、典型的には安全性および有効性を最適化するために滴定を要する。抗体サイトカイングラフトタンパク質の投与のために、投薬は約0.0001〜100mg/kg、より通常は0.01〜5mg/kg宿主体重に及ぶ。例えば、投薬は1mg/kg体重または10mg/kg体重または1〜10mg/kgの範囲内にあり得る。投薬は、毎日、毎週、隔週、毎月または必要もしくは所望により多かれ少なかれ頻繁にすることができる。例示的な治療レジメンは、1週間に1回、2週間毎に1回、または1ヶ月に1回、または3〜6ヶ月毎に1回の投与を伴う。
【0210】
抗体サイトカイングラフトタンパク質は、単一用量または分割用量で投与することができる。抗体サイトカイングラフトタンパク質は通常、複数の時に投与される。単一投薬間の間隔は、必要または所望により、毎週、隔週、毎月または毎年とすることができる。間隔はまた、患者の抗体サイトカイングラフトタンパク質の血中レベルを測定することによって示されるように不規則とすることもできる。いくつかの方法では、投薬量が1〜1000μg/mlの血漿中抗体サイトカイングラフトタンパク質濃度、いくつかの方法では25〜300μg/mlを達成するように調整される。あるいは、抗体サイトカイングラフトタンパク質を徐放製剤として投与することができ、この場合、あまり頻繁でない投与が要求される。投薬量および頻度は、患者中の抗体サイトカイングラフトタンパク質の半減期に応じて変化する。一般に、抗体サイトカイングラフトタンパク質は天然サイトカイン(例えば、IL10)よりも長い半減期を示す。投薬量および投与頻度は、治療が予防的であるか治療的であるかに応じて変化し得る。一般に、予防的適用については、比較的低い投薬量が長期間にわたって比較的まれな間隔で投与される。生涯にわたって治療を受け続ける患者もいる。一般に、治療的適用については、疾患の進行が減少または停止するまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔での比較的高い投薬量がしばしば要求される。その後、患者に予防的レジメンを投与することができる。
【0211】
第2の薬剤との同時投与
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、1種または複数の追加の薬理学的薬剤と同時投与される。いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質と追加の1種または複数の薬剤が混合物として投与される。いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質と追加の1種または複数の薬剤が別個の製剤として投与される。別個の製剤が利用される特定の実施形態では、投与が同時である。別個の製剤が利用される特定の実施形態では、投与が連続的である。別個の製剤が利用される特定の実施形態では、投与が同じ経路を介する。別個の製剤が利用される特定の実施形態では、投与が異なる経路を介する。抗体サイトカイングラフトタンパク質と同時投与するための例示的な追加の薬剤には、限定されないが、抗炎症剤、免疫調節剤、アミノサリチル酸および抗生物質が含まれる。適切な選択は好ましい製剤、投薬量および/または送達方法に依存し得る。抗体サイトカイングラフトタンパク質はまた、免疫関連障害状態を治療するための追加の確立された処置、例えば外科手術との併用療法に用途を見出している。
【0212】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が抗炎症剤と同時投与される。特定の実施形態では、副腎皮質ステロイド抗炎症剤が抗体サイトカイングラフトタンパク質と併せて使用され得る。使用するための副腎皮質ステロイドは、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ブデニソニド、メサラミンおよびデキサメタゾンのいずれかから選択され得る。適切な選択は製剤および送達の選択に依存する。
【0213】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が免疫調節剤と同時投与される。特定の実施形態では、免疫調節剤が、6−メルカプトプリン、アザチオプリン、シクロスポロリンA、タクロリムスおよびメトトレキサートのいずれかから選択される。特定の実施形態では、免疫調節剤が、抗TNF剤(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ)、ナタリズマブおよびベドリズマブから選択される。
【0214】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質がアミノサリチル酸剤と同時投与される。特定の実施形態では、アミノサリチル酸剤が、スルファサラジン、メサラミン、バルサラジド、オルサラジンまたは5−アミノサリチル酸の他の誘導体から選択される。
【0215】
いくつかの実施形態では、抗体サイトカイングラフトタンパク質が抗菌剤と同時投与される。例示的な抗菌剤には、限定されないが、スルホンアミド(例えば、スルファニルアミド、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルフィソキサゾール、スルファセタミド)、トリメトプリム、キノロン(例えば、ナリジクス酸、シノキサシン、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、フレロキサシン、ペルロキサシン、レボフロキサシン、ガレノキサシンおよびゲミフロキサシン)、メテナミン、ニトロフラントイン、ペニシリン(例えば、ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリンオキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、アンピシリン、アモキシシリン、カルベニシリン、チカルシリン、メズロシリンおよびピペラシリン)セファロスポリン(例えば、セファゾリン、セファレキシン、セファドロキシル、セフォキシチン、セファクロル、セフプロジル、セフロキシム、セフロキシムアセチル、ロラカルベフ、セフォテタン、セフォラニド、セフォタキシム、セフポドキシムプロキセチル、セフィブテン、セフジニル、セフジトレンピボルキシル、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフォペラゾン、セフタジジムおよびセフェピン)、カルバペネム(例えば、イミペネム、アズトレオナム)およびアミノグリコシド(例えば、ネオマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トラマイシン、ネチルマイシンおよびアミカシン)が含まれる。
【実施例】
【0216】
実施例1:免疫グロブリン−IL10グラフト構築物の作製
単量体IL10配列を種々の免疫グロブリン足場のCDR領域中に操作することによって、グラフト構築物IgGIL10M1、IgGIL10M2、IgGIL10M3、IgGIL10M4、IgGIL10M5、IgGIL10M6、IgGIL10M7、IgGIL10M8、IgGIL10M9、IgGIL10M10、IgGIL10M11、IgGIL10M12、IgGIL10M13、IgGIL10M14およびIgGIL10M15を生成し、次いで、重鎖免疫グロブリン鎖と軽鎖免疫グロブリン鎖の両方を製造して最終的なタンパク質構築物を生成した。IgGIL10Mグラフト構築物はIL10の好ましい治療的抗炎症特性を与えるが、IgGIL10Mグラフト構築物はrhIL10と比較して低下した相対的炎症促進活性を有する。
【0217】
抗体サイトカイングラフトタンパク質を作製するために、残基134と135との間に6アミノ酸リンカーを有する全長IL10(配列番号209)の残基19〜178を含む単量体IL10(IL10M)を免疫グロブリン鎖足場の種々のCDRループに挿入した。グラフト構築物を、臨床設定で利用されている種々の公知の免疫グロブリン配列ならびに生殖系列抗体配列を用いて調製した。GFTX1およびGFTX3と呼ばれる2つの例示的な足場のIL10Mの配列を表1に示す。挿入点を、入手可能な構造的または相同性モデルデータに基づいてCDRループの中央点となるよう選択した。抗体サイトカイングラフトタンパク質を、関連配列をコードする組換えDNAを利用する標準的な分子生物学的方法論を用いて製造した。
【0218】
例えば、6つのCDRの1つに挿入されたIL10Mを含む各抗体の可変領域を合成した。可変領域をコードするDNAを、PCRを介して増幅し、得られた断片を、軽鎖定常領域または重鎖定常領域のいずれかとFc領域を含むベクターにサブクローニングした。このようにして、IL10Mの6CDR(L1、L2、L3、H1、H2、H3)の各々への挿入に対応するIL10M抗体サイトカイングラフトタンパク質を作製した。得られた構築物を表1に示す。重鎖および軽鎖ベクターの適切な組合せのトランスフェクションは、2個のグラフトIL10M分子(各Fabアーム中1個のIL10単量体)を有する組換え抗体の発現をもたらす。
図2を参照されたい。
【0219】
どのCDRをサイトカイングラフトに選択するかという選択を、必要な生物学、生物物理学特性および好ましい発達プロファイルのパラメータで選択する。この時、モデル化ソフトウェアは、どのCDRおよびCDR内のどの位置が所望のパラメータを提供するかを予測することにおいて部分的に有用であるにすぎず、そのため、6個全ての可能な抗体サイトカイングラフトを作製し、次いで、生物学的アッセイで評価する。必要な生物学的活性が達成されたら、抗体サイトカイングラフト分子の構造分析などの生物物理学的特性を解明した。
【0220】
IL10をCDRにグラフトすることによって、抗体サイトカイングラフトタンパク質の抗体部分は、以下に論じられるようにIL10受容体との結合に影響を及ぼす独特の構造を有するIL10単量体を提供する。抗体部分によるオフターゲット効果はない。さらに、抗体サイトカイングラフトタンパク質のFc部分を、ADCC(抗体依存性細胞傷害)およびCDC(補体依存性細胞傷害)に関して完全にサイレントとなるよう修飾した。
【0221】
要約すると、各CDRへの挿入点を、CDRへのグラフトがあるレベルの立体障害をIL10受容体の個々のサブユニットに提供するという仮説を用いた構造原則で選択した。どのCDRグラフトが特定のサイトカインにとって最良であるかの最終的な選択は、所望の生物学および生物物理学的特性に基づく。サイトカイン受容体の性質、サイトカイン/受容体相互作用およびシグナル伝達の機構も役割を果たし、これを、それぞれの特性について各個々の抗体サイトカイングラフト分子を比較することによって解明した。例えば、IL10の軽鎖CDR1(CDRL1)へのグラフトは、活性化単球の所望の生物学的活性をもたらしたが、NK細胞などの他の細胞についてはもたらさなかった。これは、例示的な抗体サイトカイングラフトタンパク質IgGIL10M7およびIgGIL10M13で見られた。
【0222】
【表1-1】
【0223】
【表1-2】
【0224】
【表1-3】
【0225】
【表1-4】
【0226】
【表1-5】
【0227】
【表1-6】
【0228】
【表1-7】
【0229】
【表1-8】
【0230】
【表1-9】
【0231】
【表1-10】
【0232】
【表1-11】
【0233】
【表1-12】
【0234】
【表1-13】
【0235】
【表1-14】
【0236】
【表1-15】
【0237】
【表1-16】
【0238】
【表1-17】
【0239】
【表1-18】
【0240】
【表1-19】
【0241】
【表1-20】
【0242】
【表1-21】
【0243】
【表1-22】
【0244】
【表1-23】
【0245】
【表1-24】
【0246】
【表1-25】
【0247】
【表1-26】
【0248】
【表1-27】
【0249】
【表1-28】
【0250】
【表1-29】
【0251】
【表1-30】
【0252】
【表1-31】
【0253】
【表1-32】
【0254】
【表1-33】
【0255】
【表1-34】
【0256】
【表1-35】
【0257】
【表1-36】
【0258】
【表1-37】
【0259】
【表1-38】
【0260】
【表1-39】
【0261】
【表1-40】
【0262】
【表1-41】
【0263】
【表1-42】
【0264】
【表1-43】
【0265】
【表1-44】
【0266】
【表1-45】
【0267】
【表1-46】
【0268】
【表1-47】
【0269】
【表1-48】
【0270】
【表1-49】
【0271】
実施例2:抗体サイトカイングラフトタンパク質は抗炎症活性を有する
診療所においてrhIL10の炎症促進活性の裏付けで開発されたアッセイ(Lauw et al., J Immunol. 2000; 165(5):2783-9)を用いて、ヒト全血中のIgGIL10M13の炎症促進活性を評価した。炎症促進活性を評価するために、抗体サイトカイングラフトタンパク質を、活性化一次ヒトCD8 T細胞においてインターフェロンγ(IFNγ)またはグランザイムBを誘導するその能力について特性を明らかにした。IgGIL10M13などの抗体サイトカイングラフトタンパク質が、IFNγ産生によって測定されたとき、組換えヒトIL10(rhIL10)よりも有意に低い炎症促進活性を示すことが分かった。このデータを
図3Aに示す。同様の結果が、グランザイムBを測定するアッセイ(データは示さず)ならびに他の例示的な抗体サイトカイングラフトタンパク質(IgGIL10M7)でも見られた。rhIL10と比較して有意に低下した、IgGIL10M13によって示される炎症促進活性は、IgGIL10M13をより広い用量範囲にわたって投与することができるので、IgGIL10M13が免疫関連障害を治療するのにrhIL10よりも優れていることを示している。
【0272】
抗炎症活性を調べるため、抗体サイトカイングラフトタンパク質およびrhIL10を、ヒト全血中でLPS誘導TNFαを阻害するその能力について試験した。このデータを
図3Bに示す(rhIL10またはIgGIL10M13の濃度が上昇するとTNFα産生が減少した)。rhIL10およびIgGIL10M13曲線が類似であり、両分子が強力な抗炎症活性を有していたことを示していることに留意されたい。
【0273】
要約すると、これらの結果は、抗体サイトカイングラフトタンパク質が、IL10と同様の抗炎症特性を有するが、用量制限がなく、不要な炎症促進特性もないという所望の特性を有することを示している。
【0274】
実施例3:IL10依存性シグナル伝達
ヒトPBMCおよび全血におけるインビトロシグナル伝達試験は、IgGIL10M13などの抗体サイトカイングラフトタンパク質が、rhIL10と比較するとより特異的なシグナル伝達プロファイルを有したことを示す。CyTOF、質量分析を利用するFACSに基づく方法を用いて、全血中の複数の異なる細胞集団の抗体サイトカイングラフトタンパク質シグナル伝達をpSTAT3検出によって評価した(
図4)。IgGIL10M13などの抗体サイトカイングラフトタンパク質は、μM濃度より上(最大1.8μM)で単球、マクロファージおよび形質細胞様樹状細胞上でのみpSTAT3シグナルを誘導した。これらの細胞型の全てがIL10受容体の発現増加を有することが知られている。rhIL10は、単球上だけでなく、T細胞、B細胞およびNK細胞などのさらなる細胞型上でもpSTAT3シグナルを誘導した。これは、低いnM濃度のrhIL10でさえ見られた。100nMの濃度のrhIL10で処理した全血では、pSTAT3シグナルが単球および骨髄樹上細胞で見られ、T、NK、B細胞および顆粒球のさらなる中程度の活性化が見られた。pSTAT3シグナル伝達の機能的重要性は、CD8 T細胞およびNK細胞からのIFNγおよびグランザイムBの産生増加をもたらす。rhIL10シグナル伝達に応答したB細胞の増殖も存在する。ヒト全血におけるrhIL10のこの炎症促進活性は、抗炎症IC90より上の5倍未満の曝露で観察される。IgGIL10M13などの抗体サイトカイングラフトタンパク質のより選択的な細胞プロファイルは、より優れた抗炎症有効性につながる炎症促進活性の低下をもたらした。
【0275】
実施例4:種々の種における抗体サイトカイングラフトタンパク質シグナル伝達
rhIL10は、ヒト単球、PBMCおよび全血においてLPS誘導炎症性サイトカイン産生を強力に阻害する。抗体サイトカイングラフトタンパク質IgGIL10M13は、標的細胞上でpM効力を示すが、rhIL10よりも効果が10倍少ない。表2は、ヒト全血ならびに選択された毒性種の全血におけるIL10またはIgGL10M13活性についての効力比較である。
【0276】
効力計算は、マウス、カニクイザルまたはヒトからの体外全血アッセイに基づく。試験する各種について、IgGIL10M13またはrhIL10を滴定し、LPS誘導TNFα産生を阻害する能力について評価した。IC50を、全TNFαシグナルの50%阻害をもたらす分子レベルとして計算した。IC90およびIC30を、以下の式を用いて、各アッセイについてのHill勾配値を考慮して計算した:
logEC50=logECF−(1/Hill勾配)
*lob(F/100−F))(ECFは全TNFαシグナルのF%の応答を与える濃度である)。
【0277】
【表2】
【0278】
実施例5:抗体サイトカイングラフトタンパク質薬物動態の評価
rhIL10は半減期が短いため、その標的組織曝露は限定され、患者が複数回投薬を受けることが要求される。抗体サイトカイングラフトタンパク質の半減期をC57Bl/6マウスで評価した。抗体サイトカイングラフトタンパク質(例えば、IgGIL10M13)を0.2mg/kgで皮下注射し、注射5分後に開始し、注射144時間後まで血液をサンプリングした。IgGIL10M13は、約1時間の半減期を有するrhIL10(
図5A)と比較して、約4.4日の有意な半減期延長(
図5B)を有していた。
【0279】
実施例6:抗体サイトカイングラフトタンパク質薬力学の評価
半減期延長と一致して、抗体サイトカイングラフトタンパク質はまた、薬力学の改善も実証した。IL10受容体活性化およびシグナル伝達のマーカーであるホスホ−STAT3(pSTAT3)を、IgGIL10M13の皮下投与後にマウス結腸で監視した。少なくとも最大投与72時間後にpSTAT3シグナル増強が検出され、投与144時間後までには存在しなくなった。
図5Cを参照されたい。このプロファイルは、投与24時間後までにはシグナルが存在しなくなるrhIL10に対する劇的な改善である。
図5Dは、抗体サイトカイングラフトタンパク質投薬後のLPS曝露に応じた血中のTNFαの阻害によって測定されるとき、rhIL10と比較して改善したIgGIL10M13のインビボ応答の持続時間を示している。
【0280】
実施例7:マウスモデルにおける抗体サイトカイングラフトタンパク質の有効性
LPS曝露後のTNFα阻害についての有効性の直接比較を行った。C57/BL6マウスに、ビヒクル、または組換えIL10とIgGIL10M13の両方について計算した110nmol/マウスの等モルレベルのIL10を皮下投与した。次いで、マウスに腹腔内送達されるLPSを曝露して、TNFαレベルのIL10依存性阻害を評価した。IgGIL10M13は、TNFα産生によって測定されたとき、0.5時間の最初の評価時間でrhIL10に匹敵する有効性を実証したが、少なくとも投与48時間後まで、IgGIL10M13はrhIL10に対して優れた有効性を維持した。このデータを
図6に示す。
【0281】
実施例8:抗体サイトカイングラフトタンパク質は改善した曝露を有する
抗体サイトカイングラフトタンパク質のピーク血清濃度(Cmax)をC57Bl/6マウスで評価した。抗体サイトカイングラフトタンパク質を0.9%食塩水中0.2mg/kg(10ml/kg用量体積)で皮下注射し、注射1時間後に開始し、注射144時間後まで血液をサンプリングした。各時点で、全血をヘパリン処理管に回収し、4℃で10分間、12500rpmで遠心分離した。血漿上清を回収し、全時点を回収するまで−80℃で保存した。血漿中の抗体サイトカイングラフトタンパク質レベルを2つの異なる免疫測定法を用いて測定して、抗体サイトカイングラフトタンパク質のIL10と抗体ドメインの両方の検出を可能にした。
図7に示されるように、抗体サイトカイングラフトタンパク質(例えば、IgGIL10M13)は、過去100時間60%超のCmaxを維持した。対照的に、rhIL10レベルは3.5時間以内に20%未満のCmaxに低下した。
【0282】
実施例9:抗体サイトカイングラフトタンパク質はヒト患者において一定の細胞型にのみ作用する
ヒトの健康なドナーおよびクローン病の患者の免疫細胞に対して、CyTOFを前記のように実行した(実施例3ならびに以下の材料および方法参照)。
図8のグラフに示されるように、IgGIL10M13は単球のみを刺激し、pSTAT3レベルによって測定される刺激はrhIL10に匹敵する。単球はクローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症関連障害に関する標的細胞であり、非常に高レベルのIL10受容体を発現する。しかしながら、
図9はまた、rhIL10の不要な炎症促進効果、例えば、CD4 T細胞、CD8 T細胞およびNK細胞でのpSTAT3シグナル伝達増加を示す。IgGIL10M13が、正常なヒト細胞またはクローン病患者からとった細胞のいずれにおいてもこの望ましくない炎症促進効果を示さないことは注目に値する。このことは、抗体サイトカイングラフトタンパク質の投与が所望の細胞型にのみ作用し、クローン病および潰瘍性大腸炎などの免疫関連障害を悪化させるにすぎないCD8 T細胞などの他の細胞型には作用しないので、IgGIL10M13がより大きく、安全な治療指数を有することを実証している。
【0283】
実施例10:IgGIL10M13は、rhIL10と比較して低下したPHA刺激ヒト全血中での炎症促進活性を有する
遺伝的IL10欠損とIBD感受性を関連付ける広範な臨床データにもかかわらず、rhIL10はIBD臨床試験において軽度の有効性しか示さなかった(Herfarth et al., Gut 2002: 50(2):146-147)。試験データの遡及的分析は、rhIL10の有効性が、IFNγの産生増加などのその固有の炎症促進活性によって限定されることを示唆している。前に論じられるように、ヒト機能的細胞ベースアッセイで、rhIL10シグナル伝達は、T細胞およびNK細胞からのIFNγおよびグランザイムBの産生をもたらす。
【0284】
クローン病の患者から全血を採取し、rhIL10、IgGIL10M13およびPHA単独による刺激後にIFNγレベルを測定した。このデータを
図9A〜
図9Cに示す。rhIL10の用量増加はIFNγの鋭い増加を引き起こし、次いでこれが定常に達する。対照的に、IgGIL10M13によるこれらの細胞の処理では、IFNγの産生がごくわずかしか〜全く見られず、IgGIL10M13がT細胞またはNK細胞からIFNγ産生を誘導しなかったまたはごく低レベルでしか誘導しなかったことを示している。
【0285】
これらの患者ドナー試料を用いて追加の滴定実験を行った。この実験では、ドナー患者血清からのIL10レベルを測定し、これが1.5〜5フェムトモル濃度(fM)の範囲にあることを見出したが、科学文献は、患者のIL10レベルが20fMにもなり得ると報告している(Szkaradkiewicz et al., Arch. Immunol. Ther Exp 2009: 57(4):291-294)。rhIL10を2フェムトモル濃度(fM)、2pM、2nMおよび200nMの固定濃度でドナー患者細胞に投与した。これらの固定濃度のrhIL10に、増加する濃度の抗体サイトカイングラフトタンパク質IgGIL10M13を投与し、IFNγ産生をアッセイした。データを
図9Dに示す。2fMおよび2pMの固定濃度では、IgGIL10M13はrhIL10に競合し、IFNγ産生をベースラインレベルに低下させた。2nMの固定濃度では、IFNγ産生がナノモル濃度のIgGIL10M13によって減少した。最終的に、200nM rhIL10の固定過剰濃度では、IgGIL10M13によるIFNγ産生のごくわずかな減少しか見られなかった。このことは、生理学的レベルのIL10で、IgGIL10M13がIL10と競合し、IFNγの産生および不要な炎症促進効果を減少させることを示している。
【0286】
実施例11:抗体サイトカイングラフトタンパク質の凝集特性
IBDに関する臨床試験では、rhIL10が極めて短い半減期を有することが認められた;しかしながら、半減期を延ばすためのIL10二量体との単一Fc融合物は、このような分子には凝集特性があるので、追求されなかった。
図10Aは、Fcと結合したIL10野生型とFcと結合したIL10単量体の両方の凝集を示している。しかしながら、
図10Bに示されるように、抗体サイトカイングラフトタンパク質の抗体構造はIL10凝集を防ぐので、投与の容易さを促進する。さらに、凝集の低下は、治療剤に対する免疫反応および抗薬物抗体の産生を減らすという利益を有する。
【0287】
実施例12:抗体サイトカイングラフトタンパク質の保持された結合
パリビズマブは抗RSV抗体であり、これをサイトカイングラフトのための抗体構造として選択した。この抗体は公知の構造という利点を有し、その標的がヒト以外の標的であるRSVであった。ヒト以外の標的の選択は、オフターゲットヒト抗原との抗体サイトカイングラフトタンパク質結合に関連する毒性がないことを保障するためであった。IL10Mのパリビズマブへのグラフト後も、最終的なIL10抗体サイトカイングラフトタンパク質がRSV標的タンパク質に依然として結合するかどうかは不確実であった。ELISAによって分析されるように、IL10抗体サイトカイングラフトタンパク質は、IL10Mの存在にもかかわらず、RSV標的タンパク質に依然として結合していた。このデータを
図11に示す。
【0288】
実施例13:抗体サイトカイングラフトタンパク質の構造的コンフォメーションは細胞型にわたる示差的活性をもたらす
抗体サイトカイングラフトタンパク質(例えば、IgGIL10M13)では、単量体IL10(配列番号209)が抗体の軽鎖CDR1に組み込まれている(
図2)。IL10のDヘリックスとEヘリックスとの間の6アミノ酸グリシン−セリンリンカーの挿入によって、通常はヘテロ二量体の分子が、ドメイン交換二量体化できなくなる。よって、IL10Mの抗体へのグラフトによって、2個の単量体IL10分子を有する抗体サイトカイングラフトタンパク質が得られる。しかしながら、抗体Fabアームの可撓性のために、IL10単量体間の角度および距離は野生型IL10二量体のように固定されないので、IL10R1/R2受容体複合体との相互作用に影響を及ぼす。これを
図12に図表で示す。具体的には、抗体グラフトのために、グラフトIL10二量体の角度がより大きく、可変的になり、CD4およびCD8 T細胞、B細胞およびNK細胞などの炎症促進性細胞型で見られるように低いIL10R1およびR2の発現レベルを有する細胞上のシグナル伝達があまり効率的でなくなる。対照的に、抗体サイトカイングラフトタンパク質は、単球などの高いIL−10R1およびR2発現を有する細胞上でより効率的にシグナル伝達する。IgGIL10M13のクラス平均陰性株EM試験は、さらなる可撓性および単量体間のより広い角度を強調し、rhIL10と比較して幾何学が変化したことを確認している。IgGIL10M13中のIL10二量体のより制限された幾何学は、IL10R複合体との相互作用を変化させる。結果として、IgGIL10M13抗体サイトカイングラフトタンパク質の構造が、高レベルのIL10R1およびR2発現を有する細胞型上で増殖性シグナルを生成するだけであるという生物学的効果をもたらす。
【0289】
実施例14:IgGIL10M13の結晶構造
IgGIL10M13 Fabを、20mM HEPES pH8.0、150mM NaCl中16.2mg/mlに濃縮し、懸滴蒸気拡散結晶化試験に直接使用した。結晶化スクリーンを、タンパク質溶液0.2μlをリザーバー溶液0.2μlと混合し、同じリザーバー溶液50μlに対して平衡化することによって設定した。データ収集のための結晶が、20%PEG3350、200mM酢酸マグネシウム、pH7.9のリザーバー溶液から20℃で3〜4週間後に現れた。データ収集前に、結晶を、20%エチレングリコールを補充したリザーバー溶液に浸漬し、液体窒素にフラッシュ冷却した。回折データを、ADSC Quantum 315R検出器を用いてALSベースライン5.0.3で収集した。HKL2000ソフトウェアパッケージを用いてデータを索引付けおよびスケーリングした(Otwinowski and Minor. (1997) Methods in Enzymology, Volume 276: Macromolecular Crystallography, part A, p.307-326)。IgGIL10M13 Fabについてのデータを、セル寸法a=80.6Å、b=104.7Å、c=82.8Å、α=90°、β=115.3°、γ=90°の空間群P2
1中2.40Åに処理した。探索モデルとしてのパリビズマブFab構造(PDBコード:2HWZ)および単量体IL10構造(PDBコード:1LK3鎖A)により、PHASER(McCoy et al., (2007) J. Appl. Cryst. 40:658-674)を用いて分子置換によって構造を解明した。分子置換により解かれた最上位の構造(the top molecular replacement solution)は、非対称単位の2分子のIgGIL10M13 Fabを含んでいた。最終的なモデルをCOOT(Emsley & Cowtan (2004) Acta Cryst. D60:2126-2132)で構築し、PHENIX(Adams et al., (2010) Acta Cryst. D66, 213-221)で精緻化した。R
workおよびR
free値はそれぞれ18.8%および23.9%であり、理想結合長および結合角度の二乗平均平方根(r.m.s)偏差値はそれぞれ0.005Åおよび0.882°であった。
【0290】
全体構造
IgGIL10M13 Fabは、非対称単位であるが、共に類似のコンフォメーションを有する2つの分子で結晶化した。電子密度図は両分子で類似であった。全体構造(
図13A)は、Fabおよびグラフト単量体IL10(IL10M)が共線配置をとり得ることを示している(Fab軽鎖は白色、Fab重鎖は黒色、IL10Mは暗灰色)。
図13Bは、CDR−L1のグラフト点のより近い図を示している。3個の隣接CDR残基が暗灰色バーで示されている。破線は、おそらくこれらの領域の構造的可撓性による、電子密度の欠如のために、モデルに当てはまることができなかった構造の部分を示している。2つの領域は、グラフト点の直後のIL10MのN末端の6個残基およびIL10M中のヘリックス4とヘリックス5との間の8個の残基を含み、挿入された6残基リンカー(GGGSGG)(配列番号251)を包含する。グラフトIL10M分子とFab重鎖の部分との間に3対の水素結合相互作用も存在する(
図13C)。これらには、R138とN104(側鎖)、R135とD56(側鎖)、およびN38とK58(主鎖/側鎖)が含まれる。
【0291】
材料および方法
抗炎症アッセイ(LPS曝露ヒト全血)
アッセイ培地(グルタミン(Hyclone)、10%熱不活性化FBS(Omega Scientific)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、50μM 2−メルカプトエタノール(Gibco)、10mM Hepes ph7.4(Hyclone)、0.1mM非必須アミノ酸(Hyclone)、1mMピルビン酸ナトリウム(Hyclone)および1×ヒトインスリン/トランスフェリン/セレン(Gibco)を含むRPMI1640)中1000ng/mlで、10倍でIL10抗体サイトカイングラフトタンパク質を調製した。アッセイ培地中各10倍ストックのIL10抗体サイトカイングラフトタンパク質を1:3系列希釈して11点の用量滴定を作製した。
【0292】
ヒト全血をアッセイ培地中90%に希釈し、穏やかに混合した。非刺激希釈全血をn=3ウェルに蒔き(45μl/ウェル)、アッセイ培地を添加して(5μl/ウェル)、最終ウェル体積を50μlとした。リポ多糖(LPS、Invivogenストック100μg/ml)を希釈全血に220ng/mlでスパイクとして添加し、穏やかに混合した。次いで、LPSスパイク全血を蒔き、IL10タンパク質を各それぞれのウェルに添加し、次いで、穏やかに混合し、37℃インキュベーター、5%CO2中で約20時間インキュベートした。次いで、プレートを穏やかに混合し、室温で5分間、1400rpmで遠心分離し、製造業者の指示に従ってヒトTNFα HTRFキット(Cisbio(登録商標))を用いてTNFα検出するために、アッセイプレートから代用プレートに10μl/ウェル移すことによって上清を収集し、結果を、製造業者によって提供される対照を用いて作成した標準曲線と比較した。
【0293】
炎症促進アッセイ(ヒト一次CD8 T細胞活性化)
末梢血単核球(PBMC)をBlutspende Zentrum Baselのバフィーコートから単離した。バフィーコート1つ当たり8本のLeucosepチューブ(Greiner、227290)にそれぞれFicoll−Paque PLUS(登録商標)(GE Healthcare、17−1440−03)15mlを充填し、遠心分離した(1分、1000g、20℃)。バフィーコートをリン酸緩衝食塩水(PBS)pH7.4(Gibco、10010−015)に1:4希釈し、35mlを各Ficoll勾配上に置いた。遠心分離(800g、20分、20℃)後、リンパ球が白血球層に分離する。この細胞層を新しいチューブに移し、PBSで洗浄した。細胞ペレットを1チューブ当たり2mlのGeyの赤血球溶解緩衝液(155mM NH
4Cl、10mM KHCO
3、0.1mM EDTA)に再懸濁することによって、赤血球を溶解した。5分間インキュベートした後、細胞をPBSで2回洗浄した。最後の洗浄後、PBMCをT細胞培地(TCM)に再懸濁した。TCMはRPMI1640(Gibco、21875−034)、10%ウシ胎児血清(Gibco、10082147)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン(Gibco、15070063)、2mM GlutaMax(Gibco、35050−038)および50U/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシンを含んでいる。PBMCを40μmセルストレーナー(BD Falcon、734−0002)を通して濾過して単一細胞懸濁液を得て、計数した。CD8
+T細胞を、Big Easy Magnet(登録商標)(StemCell、18001)についての製造業者のプロトコルに従って、ヒトCD8
+T細胞濃縮キット(StemCell、19053)を用いてPBMCから精製した。単離後、細胞を洗浄し、計数し、TCMに1.8×10
6個細胞/mlの濃度で再懸濁した。抗CD3/CD28コーディングプレート(2.1.1節参照)を1ウェル当たり2mlのTCMで1回洗浄し、引き続いて1ウェル当たり1ml中1.8×10
6個CD8+T細胞を添加した。プレートを遠心分離し(5分、520g、20℃)、37℃、5%CO
2、湿度95%のセルインキュベーター(Binder)で3日間インキュベートした。
【0294】
IL10抗体サイトカイングラフトタンパク質による刺激
3日間のインキュベーション後、活性化CD8+T細胞を24ウェルプレートからプールし、TCMで1回洗浄した。細胞を計数し、TCMに3×10
6個細胞/mlで再懸濁し、100μl中300000個細胞/ウェルをNunclon Delta Surface(登録商標)96ウェル丸底プレート(Thermo Scientific、163320)に添加した。最終濃度の2倍のIL10抗体サイトカイングラフトタンパク質予備希釈物を、以下の濃度で別個のプレート中TCMに調製した:40、4、0.4、0.04、0.004および0nM。これらの予備希釈物100μlを、細胞懸濁液100μlに繰り返して添加して、20、2、0.2、0.02、0.002および0nMの抗体サイトカイングラフトタンパク質の最終濃度を得た。プレートを37℃で48時間インキュベートした。
【0295】
PMAおよび抗CD3刺激およびGolgistop
インキュベーション期間後、プレートを遠心分離し(2分、970g、20℃)、上清を捨てた。細胞ペレットを、2ng/ml酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA、Sigma Aldrich、79346)、2.5μg/ml抗CD3(BD、555336)および1:1500GolgiStop(BD、554724)を含むTCM200μlに再懸濁した。プレートを37℃で5時間インキュベートして細胞を再刺激した。その後、プレートを遠心分離し(2分、970g、20℃)、上清を捨て、氷冷PBS200μlを添加して細胞ペレットを洗浄した。遠心分離(2分、970g、20℃)後、PBSを除去し、細胞を、2%Triton X−100(Serva、39795)を含む氷冷200mM Tris−HCl緩衝液(pH8.1)200μlに再懸濁して細胞を溶解した。プレートを15分間氷上に放置し、遠心分離して(10分、970g、4℃)細片を除去した。上清を新たな96ウェルプレートに慎重に移し、保存のために凍結した。インターフェロン−γ(上清中のIFN−γ)を検出するために、ヒトIFN−γ DuoSet(登録商標)ELISA(R&D systems、DY285)を製造業者のプロトコルに従って使用した。2.1.5節に記載されるように得られた上清を、推奨されるアッセイ希釈剤に1:2希釈した。上清中のグランザイムB(GrzB)を検出するために、ヒトグランザイムB(登録商標)ELISA(Mabtech、3485−1H−20)を製造業者のプロトコルに従って使用した。上清を推奨されるアッセイ希釈剤に1:50希釈した。ELISAプレートの光学濃度(OD)をSpectraMax(登録商標)340PCプレートリーダー(Molecular Devices)によって取得し、自動的に作成される標準曲線に従ってSoftMax(登録商標)Proソフトウェアにより濃度に変換した。データをMicrosoft Excelにエクスポートし、ここで濃度をその希釈計数に関して逆算した。
【0296】
IL10依存性シグナル伝達
CyTOFは、単一因子による複数の細胞集団の活性化を同時に評価するためのFACS/質量分析技術である。抗体サイトカイングラフトタンパク質をヒト全血と20分間インキュベートした。刺激後、PBMCを、細胞特異的表面受容体CD14、HLA−DR、CD4、CD8、CD19、CD56およびシグナル伝達マーカーpSTAT3に対する金属コンジュゲート抗体で処理し、CyTOFによって分析した。結果は、全ての用量のIgGIL10M13が単球およびマクロファージ細胞集団を主に活性化し、T細胞、B細胞、NK細胞および樹状細胞集団の活性化はほとんどなかったことを示している。逆に、rhIL10は、試験した全ての細胞集団をある程度まで活性化した。
【0297】
薬物動態評価
抗体サイトカイングラフトタンパク質の半減期をC57Bl/6マウスで評価した。抗体サイトカイングラフトタンパク質を0.9%生理食塩水中0.2mg/kg(10ml/kg用量体積)で皮下注射し、注射1時間後に開始し、注射144時間後まで血液をサンプリングした。各時点で、全血をヘパリン処理管に回収し、4℃で10分間、12500rpmで遠心分離した。血漿上清を回収し、全時点を回収するまで−80℃で保存した。血漿中の抗体サイトカイングラフトタンパク質レベルを2つの異なる免疫測定法を用いて測定して、抗体サイトカイングラフトタンパク質のIL10と抗体ドメインの両方の検出を可能にした。第1の方法は、推奨されるように使用される商業的に入手可能なIL−10 ELISAキットを利用した(BD OptEIA(登録商標)ヒトIL10 ELISAセット、捕捉:rhIL10/検出:ビオチン−rhIL10)。第2の方法は、GyroLab(登録商標)xPワークステーション(Gyros AB Uoppsala、スウェーデン)で実行されるIL10に基づく捕捉およびFcに基づく検出免疫測定法からなっていた。具体的には、使用される試薬が、ビオチン化ヒトIL10捕捉(R&D Systems BAF217)およびAlexafluor 647ヤギ抗ヒトIgG、Fcγ特異的検出(Jackson ImmunoResearch#109−605−098)からなっていた。アッセイは、Gyros承認ウィザート法を用いて200nL CD(Gyros#P0004180)で実行した。使用した緩衝液は、標準についてはRexxip A(登録商標)(Gyros#P0004820)、検出調製については試料希釈物およびRexxip(登録商標)(Gyros#P0004825)とした。Gyrolab(登録商標)データ分析ソフトウェアを用いて結果の分析を行った。
【0298】
薬力学評価
半減期延長と一致して、抗体サイトカイングラフトタンパク質はまた、薬力学の改善も実証した。IL10R活性化のマーカーであるホスホ−stat3(pSTAT3)を、皮下投与後に標的組織(血液および結腸)で監視した。抗体サイトカイングラフトタンパク質を0.9%生理食塩水中0.2mg/kg(10ml/kg用量体積)で皮下注射した。末端全血および結腸組織(回盲連結部2cm)を、注射1時間後に開始し、注射144時間後まで採取した。全血を、1×ホスファターゼ阻害剤(Pierce Haltホスファターゼ阻害剤カクテル)を含むヘパリン処理管に回収し、ホスホ−Stat3アッセイまで氷上に保持した。結腸組織を、冷PBSおよび1×ホスファターゼ阻害剤を含むチューブに回収した。いったん全ての組織を時点で回収したら、結腸組織を、鋼ビーズならびに10μM DTT、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル、10×ホスファターゼ阻害剤カクテルおよび10×細胞溶解緩衝液(Active Motif Nuclear Extration Kit)と共にPBSを含む完全細胞溶解緩衝液700μlを含むチューブに移した。結腸組織を室温で5分間、30rpsで組織ライザーによってホモジナイズした。溶解組織を4℃で10分間14000×gで遠心分離した。上清を回収し、ホスホ−STAT3アッセイまで氷上で保存した。
【0299】
ホスホ−Stat3アッセイプレート(Meso Scale Discovery(登録商標)pSTAT3(Tyr705)アッセイ)を、全血および結腸組織の回収および処理と同じ日に実行した。用意した1×ホスファターゼ阻害剤2、1×ホスファターゼ阻害剤3および1×ホスファターゼ阻害剤を含む1×MSD溶解緩衝液を用いて、氷冷全血を溶解した。全血の各チューブを4℃で10分間、12500rpmで遠心分離した。血漿を回収し、捨てた。ペレット化全血をMSD溶解緩衝液+阻害剤220μlに再懸濁し、徹底的にボルテックスした。溶解した全血を50μl/ウェルでホスホ−STAT3アッセイプレートのそれぞれのウェルに蒔いた。Bradford Assay(Pierce)を用いて結腸組織上清タンパク質検出を行った。次いで、結腸タンパク質を50μl/ウェルでホスホ−STAT3アッセイプレートに蒔いた。プレートを室温で2時間インキュベートし、洗浄し、ホスホ−STAT3または全STAT3抗体(Meso Scale Discovery)で処理した。MSD Sector Imager 2400(Meso Scale Discovery)でプレートを相対蛍光単位(RFU)について分析した。全血ホスホ−STAT3 RFUを全STAT3 RFUに正規化した。結腸タンパク質ホスホ−STAT3 RFUを充填タンパク質濃度に正規化した。増強されたpSTAT3シグナルは、少なくとも最大投与72時間後に両組織で検出され、投与144時間後までに存在しなくなる。
図5を参照されたい(図示せず)。このプロファイルは、そのシグナルが投与24時間後までに存在しなくなるrhIL10に対する劇的改善である。
【0300】
体外有効性
LPS曝露後のTNFα阻害についての有効性の直接比較を行った。アッセイでは、C57/Bl6マウスにビヒクル、0.2mg/kgのIgGIL10M13(10mg/kg用量体積)または等モルレベルのrhIL10を皮下投与した。全血を投与前、投与1.5時間後および最大投与144時間後に回収した。全血をヘパリン処理チューブに回収した。血液回収前に、アッセイ培地を調製した。アッセイ培地は、10%熱不活性化FBS(Omega Scientific)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、50μM 2−メルカプトエタノール(Gibco)、10mM Hepes ph7.4(Hyclone)、0.1mM非必須アミノ酸(Hyclone)および1mMピルビン酸ナトリウム(Hyclone)を含むグルタミン(Hyclone)を含むRPMI1640を含んでいた。マウス全血を384ウェルプレート上25μl/ウェル/複製/マウスに蒔いた。アッセイ培地を非刺激対照ウェルに添加して(25μl/ウェル)、最終ウェル体積を50μlにした。LPS曝露のために、LPS(Invitrogen、ストック100μg/ml)を200ng/ml[アッセイ中100ng/ml最終]でアッセイ培地にスパイクとして添加し、穏やかに混合した。次いで、LPSスパイクBCMを、マウス全血を含む各必要なウェルに25μl/ウェルで蒔いた。プレートを穏やかに混合し、37℃インキュベーター、5%CO2で21時間インキュベートした。翌日、アッセイプレートを室温で5分間、1400rpmで遠心分離した。各ウェルからの上清を回収し、全ての時点をアッセイするまで−80℃で凍結した。いったん全時点を分析することができたら、上清をMSD V−plex(登録商標)マウス炎症性トカインアッセイプレート(Meso Scale Discovery)に蒔いた。MSD Sector Imager 2400(登録商標)(Meso Scale Discovery)でプレートをTNFα(pg/ml)について分析した。
【0301】
免疫刺激アッセイ
MC/9細胞増殖
MC/9(マウス胎仔肝に由来する肥満細胞株)細胞増殖を刺激する能力を調べることによって、IL10抗体サイトカイングラフトタンパク質の免疫刺激活性を評価した。第1に、IL10抗体サイトカイングラフトタンパク質を、T−STIMを含まない増殖培地中7×で別個の384ウェルプレートに希釈した(7×=700ng/ml)。IL−4を陽性対照として含めた(7×=1000ng/ml、[最終]=143ng/ml)。第2に、1.67×10
4個細胞/ml MC/9細胞30μlを、T−STIMを含まない培地中384ウェルTC処理プレート(500個細胞/ウェル)に蒔いた(アッセイ前の細胞の洗浄は必要なかった)。第3に、希釈IL10抗体サイトカイングラフトタンパク質5μlを細胞に添加した。プレートを、プレートミキサーを用いて手短に混合し、次いで、1000rpmでパルス回転させた。プレートをカスタム多孔質蓋で覆って細胞に通気した。第4に、プレートを37℃で72時間インキュベートした。第5に、Promega Cell Titer Glo(登録商標)30μlを細胞に添加し、室温で10分間インキュベートし、Envision(登録商標)で読み取った(0.1秒間の読み取り)。
【0302】
B細胞増殖
PBMCを上記のようにヒトバフィーコートから単離した。B細胞を単離するために、ヒトB細胞濃縮キット(登録商標)(Stemcell、19054)を、Big Easy Magnet(登録商標)(Stemcell、18001)についての製造業者のプロトコルに従って使用した。単離後、B細胞をB細胞培地(BCM)で洗浄し、計数し、4×105個細胞/mlの濃度で再懸濁した。BCMは、RPMI1640、10%ウシ胎児血清(Gibco 10082147)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン(Gibco、15070063)および2mM GlutaMax(Gibco、35050−038)、1%非必須アミノ酸(Gibco、11140035)および1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco、11360−039)、50U/mlペニシリンおよび50μg/mlストレプトマイシンを含んでいる。単離B細胞を計数し、4×10
5個細胞/mlの濃度でBCMに再懸濁した。B細胞を刺激するために、8.4μg/ml抗CD40および40U/ml組換えヒトIL−2(R&D systems、202−IL−50)を懸濁液に添加した。次いで、B細胞を100μl中4×10
4個細胞の濃度でNunclon Delta Surface(登録商標)96ウェル丸底プレート(Thermo Scientific、163320)のウェルに添加した。最終濃度の2倍でのIL10抗体グラフトタンパク質予備希釈物を別個のプレートに調製した。以下の濃度を得て、化合物の滴定を行った:40、4、0.4、0.04、0.004および0nM。これらの予備希釈物100μlを、細胞懸濁液100μlに繰り返して添加して、20、2、0.2、0.02、0.002および0nMの化合物の最終濃度ならびに4.2mg/ml抗CD40および20U/ml組換えIL−2の最終濃度を得た。プレートを細胞培養液インキュベーター(37℃、5%CO
2、湿度95%)中で5日間インキュベートした。5日間のインキュベーション後、チミジン組み込みアッセイによってB細胞の増殖を測定した。細胞に、37℃で培養期間の最後の16時間、BCM20μl中、1ウェル当たり0.5μ Ci 3H−チミジン(ANAWA、ART−178)を瞬間適用した。TomTec9600(登録商標)ハーベスターを用いて、細胞を製造業者のプロトコルに従って膜上に収穫した。膜をバッグに密封し、シンチレーション液を添加し、シンチレーションカウンターで放射活性を測定した。抗体グラフトタンパク質の各々について、20nMでの増殖の割合(「上部」)を、それぞれのバックグラウンドサイトカイン産生(「下部」)に関して、等モル量のrhIL10での増殖に対して計算した。得られた最大の%値を以下の式を用いて計算した:
最大の%=(上部
化合物−下部
化合物)/(上部
rhIL−10−下部
rhIL−10)
*100
化合物を3人以上のドナーで測定した場合、異なる実験系列の平均値を決定し、平均値の標準誤差(SEM)を計算した。
【0303】
本明細書に記載される実施例および実施形態は例示目的であること、およびこれに照らした種々の修正または変更が当業者によって示唆され、本出願および添付の特許請求の範囲の精神および範囲に含まれることが理解される。本明細書で引用される全ての刊行物、配列受託番号、特許および特許出願は、全ての目的のために全体が参照により組み込まれる。
本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
(a)相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2、HCDR3を含む重鎖可変
領域(VH)と;
(b)LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)と;
(c)前記VHまたは前記VLのCDRにグラフトしたインターロイキン10(IL10
)単量体分子と
を含む抗体サイトカイングラフトタンパク質。
[2]
前記IL10単量体分子が重鎖CDRにグラフトされている、請求項1に記載の抗体サ
イトカイングラフトタンパク質。
[3]
前記重鎖CDRがHCDR1、HCDR2またはHCDR3である、請求項2に記載の
抗体サイトカイングラフトタンパク質。
[4]
前記IL10単量体分子が前記HCDR1にグラフトされている、請求項3に記載の抗
体サイトカイングラフトタンパク質。
[5]
前記IL10単量体分子が軽鎖CDRにグラフトされている、請求項1に記載の抗体サ
イトカイングラフトタンパク質。
[6]
前記軽鎖CDRがLCDR1、LCDR2またはLCDR3である、請求項5に記載の
抗体サイトカイングラフトタンパク質。
[7]
前記IL10単量体分子が前記LCDR1にグラフトされている、請求項6に記載の抗
体サイトカイングラフトタンパク質。
[8]
組換えヒトIL10と比較すると、T細胞またはNK細胞のより少ない活性化が可能で
ある、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体サイトカイングラフトタンパク質。
[9]
rhIL10よりも長い半減期を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体
サイトカイングラフトタンパク質。
[10]
前記IL10単量体分子が配列番号209からなる、請求項1に記載の抗体サイトカイ
ングラフトタンパク質。
[11]
IgGクラス抗体重鎖をさらに含む、請求項1に記載の抗体サイトカイングラフトタン
パク質。
[12]
前記IgGクラス重鎖がIgG1、IgG2またはIgG4から選択される、請求項1
1に記載の抗体サイトカイングラフトタンパク質。
[13]
前記CDRの標的タンパク質への結合特異性が前記グラフトIL10単量体分子の存在
下で低下している、請求項1に記載の抗体サイトカイングラフトタンパク質。
[14]
前記CDRの標的タンパク質への結合特異性が前記グラフトIL10単量体分子の存在
下で保持されている、請求項1に記載の抗体サイトカイングラフトタンパク質。
[15]
前記CDRの結合特異性が前記IL10単量体分子のサイトカイン受容体結合特異性と
は異なる、請求項14に記載の抗体サイトカイングラフトタンパク質。
[16]
前記CDRの結合特異性がヒト以外の標的に対するものである、請求項14に記載の抗
体サイトカイングラフトタンパク質。
[17]
前記VHまたはVLがヒト化またはヒトである、請求項1に記載の抗体サイトカイング
ラフトタンパク質。
[18]
(i)(a)配列番号193のHCDR1、(b)配列番号194のHCDR2、(c
)配列番号195のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号196のLC
DR1、(e)配列番号197のLCDR2および(f)配列番号198のLCDR3を
含む軽鎖可変領域;
(ii)(a)配列番号97のHCDR1、(b)配列番号98のHCDR2、(c)配
列番号99のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号100のLCDR1
、(e)配列番号101のLCDR2および(f)配列番号102のLCDR3を含む軽
鎖可変領域;
(iii)(a)配列番号1のHCDR1、(b)配列番号2のHCDR2、(c)配列
番号3のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号4のLCDR1、(e)
配列番号5のLCDR2および(f)配列番号6のLCDR3を含む軽鎖可変領域;
(iv)(a)配列番号17のHCDR1、(b)配列番号18のHCDR2、(c)配
列番号19のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号20のLCDR1、
(e)配列番号21のLCDR2および(f)配列番号22のLCDR3を含む軽鎖可変
領域;
(v)(a)配列番号33のHCDR1、(b)配列番号34のHCDR2、(c)配列
番号35のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号36のLCDR1、(
e)配列番号37のLCDR2および(f)配列番号38のLCDR3を含む軽鎖可変領
域;
(vi)(a)配列番号49のHCDR1、(b)配列番号50のHCDR2、(c)配
列番号51のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号52のLCDR1、
(e)配列番号53のLCDR2および(f)配列番号54のLCDR3を含む軽鎖可変
領域;
(vii)(a)配列番号65のHCDR1、(b)配列番号66のHCDR2、(c)
配列番号67のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号68のLCDR1
、(e)配列番号69のLCDR2および(f)配列番号70のLCDR3を含む軽鎖可
変領域;
(viii)(a)配列番号81のHCDR1、(b)配列番号82のHCDR2、(c
)配列番号83のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号84のLCDR
1、(e)配列番号85のLCDR2および(f)配列番号86のLCDR3を含む軽鎖
可変領域;
(ix)(a)配列番号113のHCDR1、(b)配列番号114のHCDR2、(c
)配列番号115のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号116のLC
DR1、(e)配列番号117のLCDR2および(f)配列番号118のLCDR3を
含む軽鎖可変領域;
(x)(a)配列番号129のHCDR1、(b)配列番号130のHCDR2、(c)
配列番号131のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号132のLCD
R1、(e)配列番号133のLCDR2および(f)配列番号134のLCDR3を含
む軽鎖可変領域;
(xi)(a)配列番号145のHCDR1、(b)配列番号146のHCDR2、(c
)配列番号147のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号148のLC
DR1、(e)配列番号149のLCDR2および(f)配列番号150のLCDR3を
含む軽鎖可変領域;
(xii)(a)配列番号161のHCDR1、(b)配列番号162のHCDR2、(
c)配列番号163のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号164のL
CDR1、(e)配列番号165のLCDR2および(f)配列番号166のLCDR3
を含む軽鎖可変領域;
(xiii)(a)配列番号177のHCDR1、(b)配列番号178のHCDR2、
(c)配列番号179のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号180の
LCDR1、(e)配列番号181のLCDR2および(f)配列番号182のLCDR
3を含む軽鎖可変領域;
(xiv)(a)配列番号210のHCDR1、(b)配列番号211のHCDR2、(
c)配列番号212のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号213のL
CDR1、(e)配列番号214のLCDR2および(f)配列番号215のLCDR3
を含む軽鎖可変領域;または
(xv)(a)配列番号226のHCDR1、(b)配列番号227のHCDR2、(c
)配列番号228のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号229のLC
DR1、(e)配列番号230のLCDR2および(f)配列番号231のLCDR3を
含む軽鎖可変領域
を含む抗体サイトカイングラフトタンパク質。
[19]
(i)配列番号205を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号206を含む軽鎖可
変領域(VL);
(ii)配列番号109を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号110を含む軽鎖可
変領域(VL);
(iii)配列番号13を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号14を含む軽鎖可変
領域(VL);
(iv)配列番号29を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号30を含む軽鎖可変領
域(VL);
(v)配列番号45を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号46を含む軽鎖可変領域
(VL);
(vi)配列番号61を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号62を含む軽鎖可変領
域(VL);
(vii)配列番号77を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号78を含む軽鎖可変
領域(VL);
(viii)配列番号93を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号94を含む軽鎖可
変領域(VL);
(ix)配列番号125を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号126を含む軽鎖可
変領域(VL);
(x)配列番号141を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号142を含む軽鎖可変
領域(VL);
(xi)配列番号157を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号158を含む軽鎖可
変領域(VL);
(xii)配列番号173を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号174を含む軽鎖
可変領域(VL);
(xiii)配列番号189を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号190を含む軽
鎖可変領域(VL);
(xiv)配列番号222を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号223を含む軽鎖
可変領域(VL);または
(xv)配列番号238を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号239を含む軽鎖可
変領域(VL)
を含む抗体サイトカイングラフトタンパク質。
[20]
低下したエフェクター機能に対応する修飾Fc領域をさらに含む、請求項1から19の
いずれか一項に記載の抗体サイトカイングラフトタンパク質。
[21]
前記修飾Fc領域が、D265A、P329A、P329G、N297A、L234A
およびL235Aの1つまたは複数から選択される突然変異を含む、請求項20に記載の
抗体サイトカイングラフトタンパク質。
[22]
前記修飾Fc領域が、D265A/P329A、D265A/N297A、L234A
/L235A、P329A/L234A/L235AおよびP329G/L234A/L
235Aからなる群から選択される、請求項21に記載の抗体サイトカイングラフトタン
パク質。
[23]
配列番号193のHCDR1、配列番号194のHCDR2、配列番号195のHCD
R3、配列番号196のLCDR1、配列番号197のLCDR2、配列番号198のL
CDR3、突然変異D265A/P329Aを含む修飾Fc領域からなる抗体サイトカイ
ングラフトタンパク質であって、rhIL10と比較すると、T細胞またはN細胞の活性
化が少ない抗体サイトカイングラフトタンパク質。
[24]
前記CDRの結合特異性がヒト以外の標的に対するものである、請求項23に記載の抗
体サイトカイングラフトタンパク質。
[25]
rhIL10よりも長い半減期を有する、請求項23に記載の抗体サイトカイングラフ
トタンパク質。
[26]
(i)配列番号246の重鎖可変領域コードポリヌクレオチド配列および配列番号24
7の軽鎖可変領域コードポリヌクレオチド配列;
(ii)配列番号248の重鎖コードポリヌクレオチド配列および配列番号249の軽鎖
コードポリヌクレオチド配列;
(iii)配列番号242の重鎖可変領域コードポリヌクレオチド配列および配列番号2
43の軽鎖可変領域コードポリヌクレオチド配列;または
(iv)配列番号244の重鎖コードポリヌクレオチド配列および配列番号245の軽鎖
コードポリヌクレオチド配列
を含む単離核酸。
[27]
抗体サイトカイングラフトタンパク質の重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドをコ
ードする請求項26に記載の核酸と、場合により分泌シグナルとを含む、抗体サイトカイ
ングラフトタンパク質の産生に適した組換え宿主細胞。
[28]
前記細胞が哺乳類細胞である、請求項27に記載の宿主細胞。
[29]
請求項1から26のいずれかに記載の抗体サイトカイングラフトタンパク質と薬学的に
許容される担体とを含む医薬組成物。
[30]
治療上有効量の請求項1に記載の抗体サイトカイングラフトタンパク質を個体に投与す
るステップを含む、治療または予防を必要とする個体の免疫関連障害を治療または予防す
る方法。
[31]
前記免疫関連障害が、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、乾癬
、I型糖尿病、急性膵炎、ブドウ膜炎、シェーグレン病、ベーチェット病、サルコイドー
シスおよび移植片対宿主病(GVHD)からなる群から選択される、請求項30に記載の
方法。
[32]
前記抗体サイトカイングラフトタンパク質が別の治療剤と組み合わせて投与される、請
求項30に記載の方法。
[33]
前記治療剤が、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ、ナタ
リズマブおよびベドリズマブからなる群から選択される抗TNF剤である、請求項32に
記載の方法。
[34]
前記治療剤が、スルファサラジン、メサラミン、バルサラジド、オルサラジンおよび5
−アミノサリチル酸の他の誘導体からなる群から選択されるアミノサリチル酸剤である、
請求項32に記載の方法。
[35]
前記治療剤が、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ブデニソニ
ド、メサラミンおよびデキサメタゾンからなる群から選択される副腎皮質ステロイドであ
る、請求項32に記載の方法。
[36]
前記治療剤が抗菌剤である、請求項32に記載の方法。
[37]
請求項1から25のいずれか一項に記載の抗体サイトカイングラフトタンパク質を投与
するステップを含む、それを必要とする患者の単球を活性化する方法。
[38]
単球が活性化され、T細胞もNK細胞も活性化されない、請求項37に記載の方法。
[39]
前記抗体サイトカイングラフトタンパク質の投与がTNFα産生を減少させる、請求項
37に記載の方法。
[40]
免疫関連障害の治療における、
(i)(a)配列番号193のHCDR1、(b)配列番号194のHCDR2、(c)
配列番号195のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号196のLCD
R1、(e)配列番号197のLCDR2および(f)配列番号198のLCDR3を含
む軽鎖可変領域;または
(ii)(a)配列番号97のHCDR1、(b)配列番号98のHCDR2、(c)配
列番号99のHCDR3を含む重鎖可変領域ならびに(d)配列番号100のLCDR1
、(e)配列番号101のLCDR2および(f)配列番号102のLCDR3を含む軽
鎖可変領域
を含む抗体サイトカイングラフトタンパク質の使用。
[41]
炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、乾癬、I型糖尿病、急性膵
炎、ブドウ膜炎、シェーグレン病、ベーチェット病、サルコイドーシスおよび移植片対宿
主病(GVHD)からなる群から選択される免疫関連障害の治療における請求項40に記
載の抗体サイトカイングラフトタンパク質の使用。
[42]
前記抗体サイトカイングラフトタンパク質が別の治療剤と組み合わせて投与される、請
求項40に記載の使用。
[43]
前記治療剤が、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ、ナタ
リズマブおよびベドリズマブからなる群から選択される抗TNF剤である、請求項42に
記載の使用。
[44]
前記治療剤が、スルファサラジン、メサラミン、バルサラジド、オルサラジンおよび5
−アミノサリチル酸の他の誘導体からなる群から選択されるアミノサリチル酸剤である、
請求項42に記載の使用。
[45]
前記治療剤が、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ブデニソニ
ド、メサラミンおよびデキサメタゾンからなる群から選択される副腎皮質ステロイドであ
る、請求項42に記載の使用。
[46]
前記治療剤が抗菌剤である、請求項42に記載の使用。