特許第6794450号(P6794450)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6794450金属又は非金属品と熱伝達流体との間の熱伝達の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794450
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】金属又は非金属品と熱伝達流体との間の熱伝達の方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/10 20060101AFI20201119BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20201119BHJP
   F28F 13/12 20060101ALI20201119BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20201119BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20201119BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20201119BHJP
【FI】
   C09K5/10 EZNM
   C09K5/14 E
   F28F13/12 Z
   F28F21/08 F
   F28F21/08 G
   B82Y30/00
   B82Y40/00
【請求項の数】22
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-532563(P2018-532563)
(86)(22)【出願日】2016年12月20日
(65)【公表番号】特表2019-508512(P2019-508512A)
(43)【公表日】2019年3月28日
(86)【国際出願番号】IB2016001779
(87)【国際公開番号】WO2017109558
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2018年8月14日
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2015/002402
(32)【優先日】2015年12月22日
(33)【優先権主張国】IB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノリエガ・ペレス,ダビド
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0312263(US,A1)
【文献】 特開2009−062612(JP,A)
【文献】 米国特許第08834739(US,B1)
【文献】 特開2013−028792(JP,A)
【文献】 RAMESH G, PRABHU NK,REVIEW OF THERMO-PHYSICAL PROPERTIES, WETTING AND HEAT TRANSFER CHARACTERISTICS OF 以下備考,NANOSCALE RESEARCH LETTERS,SPRINGEROPEN,2011年,V.6, N.1,P.334-1/15,NANOFLUIDS AND THEIR APPLICABILITY IN INDUSTRIAL QUENCH HEAT TREATMENT,URL,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21711877
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00− 5/20
C21D 1/02− 1/84
C22F 1/00− 3/02
F28F 11/00−19/06
F28F 21/00−27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属又は非金属品と、流体媒体及びナノ粒子を含む熱伝達流体との間の熱伝達の方法であって、かかるナノ粒子の厚さ/横方向サイズ比は、0.00010〜0.00040の間であり、ナノ粒子は、グラファイトナノプレートレットであり、ナノ粒子濃度が、〜12wt.%の間であり、
流体媒体が、水、エチレングリコール、エタノール、油、メタノール、シリコーン、プロピレングリコール、アルキル化芳香族化合物、液体Ga、液体In、液体Sn、ギ酸カリウム及びそれらの混合物からなる群から選択される、
方法。
【請求項2】
厚さ/横方向サイズ比が、0.00015〜0.00035の間である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
厚さ/横方向サイズ比が、0.00020〜0.00030の間である、請求項に記載の方法。
【請求項4】
ナノ粒子の厚さが、1〜99.99nmの間である、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ナノ粒子の厚さが、5〜50nmの間である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
ナノ粒子の厚さが、5〜15nmの間である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
ナノ粒子の横方向サイズが、26〜50μmの間である、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ナノ粒子の横方向サイズが、35〜45μmの間である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
ナノ粒子濃度が、2〜8wt.%の間である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
ナノ粒子濃度が、4〜7wt.%の間である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
熱伝達流体が、分散剤をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
分散剤が、非表面活性ポリマー若しくは界面活性剤又はそれらの混合物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
界面活性剤が、カチオン性、アニオン性、両性又は非イオン性界面活性剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
分散剤が、ポリビニルピロリドン、ポリサッカリド、硫酸化ポリサッカリド、直鎖アルキルベンゼンスルホネート、リグニンスルホネート、ジアルキルスルホサクシネート、四級アンモニウム化合物及びステアリン酸ナトリウム並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
重量でのナノ粒子濃度/分散剤濃度比が、3〜18の間である、請求項1114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
熱伝達流体が、層流型又は乱流型である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
金属である品が、アルミニウム、鋼、ステンレス鋼、銅、鉄、銅合金、チタン、コバルト、金属複合材又はニッケルで作製される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
金属品が、熱交換器であり、熱伝達が、熱交換器の内部にある流体により実現される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
金属品が、金属基板であり、熱伝達が、熱伝達流体が金属基板に直接接触するような熱伝達である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
金属基板と熱伝達流体との間の接触が、ジェット衝突冷却、プール沸騰、噴霧冷却又はマイクロチャネル冷却により実現される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
熱伝達流体の製造のための方法であって、
A.請求項1〜15のいずれか一項に記載のナノ粒子の提供と、
B.流体媒体の提供と、
C.パーコレーションを達成するためのナノ粒子濃度の調節と、
D.前記ナノ粒子と前記流体媒体との混合とを含む方法。
【請求項22】
流体媒体とナノ粒子を含む熱伝達流体であって、かかるナノ粒子の厚さ/横方向サイズ比は、0.00010〜0.00040の間であり、ナノ粒子は、グラファイトナノプレートレットであり
ナノ粒子濃度が、〜12wt.%の間であり、
流体媒体が、水、エチレングリコール、エタノール、油、メタノール、シリコーン、プロピレングリコール、アルキル化芳香族化合物、液体Ga、液体In、液体Sn、ギ酸カリウム及びそれらの混合物からなる群から選択される、
熱伝達流体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属又は非金属品と、流体媒体及び特定の厚さ/横方向サイズ比を有する特定のナノ粒子を含む熱伝達流体との間の熱伝達の方法に関する。特に、方法は、鋼、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、銅合金、チタン、コバルト、金属複合材、ニッケル産業、又はプラスチック等の非金属産業に適している。
【背景技術】
【0002】
エネルギー消費の削減を目的として、熱交換器システムの性能を改善し、様々な熱伝達向上技術を導入することが可能である。いくつかの技術は、電場又は磁場の印加に重点を置いている。エネルギー効率の改善はそのような観点から可能であるが、熱伝達流体に関しても改善は実現され得る。通常、水、エンジンオイル、エチレングリコール等の流体が、熱伝達流体として使用される。しかしながら、それらは、熱伝達性能が低く、したがって、必要とされる熱伝達を達成するためには、熱伝達システムの高い緻密性及び有効性が必要である。熱伝達の向上のための取組みのうち、液体への添加剤の適用がより顕著である。
【0003】
例えば、ポリオキシエチレンモノ−及びジ−グリセリドであるLEVENOL C−421等の界面活性剤が、熱伝達係数又は少なくとも熱伝導率を改善するために、水に添加され得る。しかしながら、いくつかの場合には伝導率は向上するものの、界面活性剤の存在は、泡の形成をもたらす。泡は、特に工業的規模において除去するのが実に困難であるため、泡の存在は大きな問題である。さらに、界面活性剤の存在は、熱伝達システム、特に熱伝達流体が流動するパイプの腐食を増加させる。最後に、特に熱伝達システム内にスケールが形成され得る。
【0004】
ナノテクノロジーにおける最近の調査により、ナノ粒子を含む熱伝達流体の新たなカテゴリーの開発が可能となった。「ナノ流体」とも呼ばれるそのような流体は、100nm未満の少なくとも1つの寸法を有する粒子を含有する液体懸濁液である。これらの熱伝達流体は、通常、増加した熱伝達係数を有する。
【0005】
US2014/0312263は、流体媒体と、多層グラフェンナノプレートレットからなる群から選択される材料の酸化形態とを含む熱伝達流体を開示している。この特許出願はまた、そのような流体を製造するための方法も開示している。この特許出願は、多層グラフェンナノプレートレット(GnP)の酸化が、表面上のspグラファイト層をOH、COO及びCO基に変換することを説明している。これらの基は、ナノプレートレット表面において十分な静電気帯電を形成し、これによって粒子が反発により互いに離れた状態となり、粒子の凝集及び沈降が防止される。したがって、水又はエチレングリコール/水ベース流体混合物中のグラファイトナノ流体の良好な安定性が、ひいては良好な分散が達成され得る。
【0006】
また、この特許出願は、非改質GnPを有する懸濁液が、数時間以内で沈降することを開示している。カチオン性又はアニオン性界面活性剤で安定化された懸濁液は、安定性の改善を示すが、これらの懸濁液の熱伝導率は、水と比較した有機分子の非常に低い熱伝導率に起因して、ベース流体より低い。したがって、有機界面活性剤は、水ベース懸濁液の熱伝導率に対しては、熱伝導率に有害である。したがって、ナノ粒子の分散の安定化に対する非界面活性剤的手法の使用は、GnPを個々のナノプレートレットに明確に分離するためのGnPの酸化を含む。
【0007】
最後に、この特許出願は、GnPの酸化が、全ての試験グレードにおいて、熱伝導率の向上を低減することを開示している。異なる温度に対して計算された、ナノ流体(hnf)及びベース流体(h)の熱伝達係数の比(hnf/h)は、エチレングリコール/HO冷却剤中のグラファイトナノ粒子の包含が、層流型で使用された場合、熱伝達速度の75〜90%の改善を提供し得ることを示している。乱流型における熱伝達係数は、ベース流体と比較した熱伝達の30〜40%の改善を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0312263号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、GnPの酸化又は官能化はUS2014/0312263に記載のように、強酸、例えば濃硫酸及び硝酸の混合物を使用した熱伝達流体の製造のための工程において、さらなるステップを必要とする。工業的規模において、この酸化反応は、処理が困難である廃棄物を生成する。さらに、この熱伝達流体は、非常に高い性能には到達しない。例えば、製鋼産業において、熱間圧延における冷却工程の間、ランアウトテーブルは、帯鋼を、入口での約800〜950℃から、出口での450〜600℃まで冷却する。したがって、いくつかの鋼種に対しては、高い熱伝達係数を有する熱伝達流体が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、金属又は非金属品と、熱伝達流体との間の熱伝達の実行が容易な方法であって、熱伝達流体は高い熱伝達係数を有する方法を提供することである。
【0011】
これは、請求項1に記載の、金属又は非金属品と熱伝達流体との間の熱伝達の方法を提供することにより達成される。方法はまた、単独で、又は組み合わせて考慮される、請求項2〜26の任意の特徴を含み得る。
【0012】
本発明はまた、請求項27に記載の熱伝達流体の製造のための方法を包含する。
【0013】
本発明はまた、請求項28に記載の熱伝達流体を包含する。
【0014】
以下の用語が定義される:
−ナノ粒子を含む熱伝達流体(いわゆるナノ流体)は、100nm未満の少なくとも1つの寸法を有する粒子を含有する液体懸濁液を意味し、
−層流は、約2300の臨界値未満のレイノルズ数を有する流動を意味し、
−乱流は、約4000の臨界値を超えるレイノルズ数を有する流動を意味し、
−パーコレーション閾値濃度は、それを超えるとナノ粒子が接続して長距離ネットワークを形成するナノ粒子の濃度である。熱伝達用途において、そのようなネットワークが、流体の最も熱い部分、すなわち熱が流動し始める部分、及び流体の最も冷たい部分、すなわち熱が排出される部分を接続することが適している。換言すれば、パーコレーション閾値濃度未満では、ナノ粒子は接続されない。パーコレーション閾値濃度が得られる場合、流体媒体より高い熱伝達係数を有するナノ粒子で形成されたネットワークにより、熱媒は、はるかに低い熱抵抗を有する経路をとり、したがって流体の熱伝導率、ひいては熱伝達係数を向上させることができ、
−vol.%は、体積パーセントを意味し、
−wt.%は、重量パーセントを意味し、
−グラファイトナノプレートレットは、約5〜20nmの間の厚さを有するグラフェンシートの多層系を意味し、
−数層グラフェンは、1〜5nmの間の厚さを有するグラフェンシートの多層系を意味し、
−グラフェンは、六角形配列の結合した炭素原子の単原子厚のシートを意味し、通常1nm未満の厚さを示す。
【0015】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の発明を実施するための形態から明らかとなる。
【0016】
本発明を例示するために、様々な実施形態及び限定されない例の試験が、特に以下の図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による1つのナノプレートレットの例を示す図である。
図2】本発明による多層ナノプレートレットの例を示す図である。
図3】本発明による球状ナノ粒子の例を示す図である。
図4】本発明による楕円形ナノ粒子の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、金属又は非金属品と、流体媒体及びナノ粒子を含む熱伝達流体との間の熱伝達の方法であって、かかる厚さ/横方向サイズ比は、0.00044未満であり、ナノ粒子は、カーボンナノチューブを含まない方法、に関する。
【0019】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、0.00044未満の厚さ/横方向サイズ比を有するナノ粒子を含む熱伝達流体の場合、パーコレーション閾値濃度は減少すると思われる。その結果、パーコレーション閾値濃度超ではより少ない架橋が形成され、粘度の低下がもたらされる。さらに、特に層流においては、低いナノ粒子濃度で高い熱伝導率、ひいては高い熱伝達係数を得ることが可能である。
【0020】
本発明によれば、熱伝達流体の流動は、層流又は乱流型であってもよい。層流型では、熱伝達係数は、熱伝導率に比例する。一方、乱流型では、熱伝達係数は、粘度等の1組の熱物理特性に依存する。
【0021】
好ましくは、熱伝達流体は、0.00043未満、有利には0.00010〜0.00040の間、より好ましくは0.00015〜0.00035の間、又は0.00020〜0.00030の間の厚さ/横方向サイズ比を有するナノ粒子を含む。
【0022】
有利には、ナノ粒子の厚さは、1〜99.99nmの間、好ましくは5〜50nmの間、より好ましくは5〜15nmの間である。
【0023】
好ましくは、ナノ粒子の横方向サイズは、26〜50μmの間、有利には35〜45μmの間である。
【0024】
好ましくは、ナノ粒子濃度は、0.01wt.%〜12wt.%、有利には2〜8wt.%、より好ましくは4〜7wt.%である。
【0025】
例えば、ナノ粒子は、球状、楕円形又はナノプレートレットであってもよい。
【0026】
図1は、本発明の熱伝達流体において使用され得る1つのナノプレートレットの例を示す。この例において、横方向サイズは、図1のX軸に沿ったナノプレートレットの最大長さを意味し、厚さは、Z軸に沿ったナノプレートレットの高さを意味する。ナノプレートレットの幅は、Y軸に沿って示されている。
【0027】
図2は、本発明の熱伝達流体において使用され得る多層ナノプレートレットの例を示す。この例において、横方向サイズは、X軸に沿ったナノプレートレットの最大長さを意味し、厚さは、Z軸に沿った全ての積層されたナノプレートレットの全高さを意味する。ナノプレートレットの幅は、Y軸に沿って示されている。
【0028】
図3は、本発明の熱伝達流体において使用され得る球状ナノ粒子の例を示す。この例において、横方向サイズは、ナノ粒子の直径を意味し、厚さは、ナノ粒子の高さを意味する。
【0029】
図4は、本発明の熱伝達流体において使用され得る楕円形ナノ粒子の例を示す。この例において、横方向サイズは、ナノ粒子の最大長さを意味し、厚さは、ナノ粒子の高さを意味する。
【0030】
ナノ粒子の横方向サイズ及び厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により測定され得る。
【0031】
好ましい実施形態において、熱伝達流体は、多層ナノプレートレットであるナノ粒子を含む。実際に、いかなる理論にも束縛されるものではないが、ナノプレートレット形態を得るためには、ナノ粒子は、層間の弱い相互作用、すなわちファンデルワールス力、水素結合、機械的結合、ハロゲン結合、π積層、カチオン/アニオン−π結合、インターカレーション、塩橋及び極性−πを有する多層構造を有するべきであると思われる。この弱い結合は、ナノプレートレットの良好な熱伝導率と共に、流体の熱伝達係数を改善する可能性を増加させる。
【0032】
好ましくは、ナノ粒子は、グラファイトナノプレートレット、グラフェン、数層グラフェン、TiO、ZnO、ZnO、ホウ素−ニトリド、銅、シリカ、モンモリロナイト、ゼオライトクリノプチロライト、珪灰石、雲母、ゼオライト4A、Al、シリケート、軽石及び酸化カルシウムから選択される。
【0033】
好ましい実施形態において、熱伝達流体は、分散剤をさらに含む。分散剤は、非表面活性ポリマー、界面活性剤又はそれらの混合物であってもよい。界面活性剤は、カチオン性、アニオン性、両性又は非イオン性であってもよい。
【0034】
例えば、分散薬剤は、ポリビニルピロリドン、ポリサッカリド、硫酸化ポリサッカリド、直鎖アルキルベンゼンスルホネート、リグニンスルホネート、ジアルキルスルホサクシネート、四級アンモニウム化合物、ステアリン酸ナトリウム又はそれらの混合物であってもよい。
【0035】
好ましくは、重量でのナノ粒子濃度/分散剤濃度比は、3〜18の間である。より好ましくは、ナノ粒子濃度/分散剤濃度比は、4〜15の間、有利には4〜8の間、好ましくは4〜6の間である。
【0036】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、上記の比が制御されてパーコレーション閾値濃度に達すると、本発明による熱伝達流体は、より高い熱伝導率、ひいてはより高い熱伝達係数を可能にする。実際に、分散剤は、ナノ粒子の堆積及び凝集を回避することができる。例えば、分散剤が界面活性剤である場合、ナノ粒子は、疎水性分子のコア及び親水性分子のシェルで構成されるミセルにより封入される。そのようなミセル構造は、流体内のナノ粒子の分散を可能にする。しかしながら、パーコレーション、換言すればナノ粒子により形成された長距離ネットワークの形成を得るためには、ナノ粒子の分散度が制限される必要がある。
【0037】
好ましくは、熱伝達流体は、水、エチレングリコール、エタノール、油、メタノール、シリコーン、プロピレングリコール、アルキル化芳香族化合物、液体Ga、液体In、液体Sn、ギ酸カリウム及びそれらの混合物から選択される流体媒体を含む。ガリウム、インジウム及びスズは、特に金属品の冷却のための熱伝達流体として使用され得る。実際に、ガリウムの融点は30℃であり、インジウムの融点は157℃であり、スズの融点は232℃である。例えば、それらは、コンピュータチップ又は実験機器、例えば中性子源を冷却するために使用され得る。
【0038】
本発明によれば、熱伝達方法は、金属又は非金属品と熱伝達流体との間である。好ましくは、例えば金属基板である金属品は、アルミニウム、鋼、ステンレス鋼、銅、鉄、銅合金、チタン、コバルト、金属複合材、ニッケルで作製され、非金属はプラスチックで作製される。
【0039】
従来技術において、流体媒体として水を使用した熱伝達は、通常、2つの異なる様式で実現され得る。第1の様式は「非接触水」と呼ばれ、これは、冷却又は加熱する物体、オフガス又は流体に向かって射出されることなく水が回路内に維持されることを意味する。この様式は、特に熱交換器を通した間接的冷却若しくは加熱システム、又は非接触冷却若しくは加熱システムを使用する。第2の様式は「接触水」と呼ばれ、これは、物体と直接接触することにより物体を冷却又は加熱するために水が使用されることを意味する。
【0040】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、金属である品は熱交換器であり、熱交換は、熱交換器の内部にある流体により実現される。
【0041】
特に、製鋼産業において、熱交換器を使用した熱伝達は、コークス炉ガス処理、溶鉱炉、塩基性酸素転炉、電気アーク炉、連続鋳造、熱間圧延操作、冷間圧延操作、ボイラー、焼鈍炉、及びコーティング、酸洗又は焼結ラインにおいて実行され得る。そのような工程における冷却は、処理機器の性能を維持するために必要である。
【0042】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、品は金属基板であり、熱伝達流体はそれに直接接触する。この場合、熱伝達は、ジェット衝突冷却、プール沸騰、噴霧冷却又はマイクロチャネル冷却により実現され得る。
【0043】
例えば、製鋼産業において、接触水冷却による熱伝達は、
−連続鋳造機及び熱間圧延工程、例えばランアウトテーブル上での冷却工程の噴霧チャンバ内、
−ガス処理及びコークスの急冷のためのコークス炉内、
−溶鉱炉、塩基性酸素転炉及び電気アーク炉内でのスラグ急冷の間に実行され得る。
【0044】
熱伝達流体は、好ましくは、以下のステップにより製造される:
A.本発明によるナノ粒子の提供、
B.流体媒体の提供、
C.パーコレーションを達成するためのナノ粒子濃度の調節、
D.ナノ粒子と流体媒体との混合。
【0045】
本発明の熱伝達流体は、高い熱伝達係数及び好ましくは良好な分散を有する。
【0046】
ここで、情報提供のみを目的として行われる試験において本発明を説明する。これらの試験は限定的ではない。
【実施例】
【0047】
熱伝達係数−層流
[実施例1]
0.00025、0.001及び0.005の厚さ/横方向サイズ比を有するグラファイトナノプレートレットを水と混合することにより、試験対象1〜3を調製した。
【0048】
各試験対象に対して、試料の熱伝導率は、DTC−25熱伝導率計を使用して測定されている。熱伝導率の向上は、室温、すなわち20℃での水の伝導率に対して計算されたが、そのような条件下での水の伝導率は、0.67W/mKであった。試験対象4〜6は、それぞれ、特許出願US2014/0312263の官能化ナノ粒子を有する試料A−GnP、B−GnP及びC−GnPである。厚さ/横方向サイズ比は、それぞれ、0.001〜0.009、0.0005〜0.008及び0.00044〜0.003である。
【0049】
全ての試験対象において、層流では、熱伝達の向上は、熱伝導率の向上に比例し、したがって%での熱伝達の向上を得るには計算は必要ない。
【0050】
【表1】
【0051】
試験対象1は、試験対象2〜6と比較して高い熱伝達の向上を有する。
【0052】
[実施例2]
0.00025の厚さ/横方向サイズ比を有するグラファイトナノプレートレット及び分散剤としての1wt.%のポリビニルピロリドンを水と混合することにより、試験対象8及び9を調製した。
【0053】
試料の熱伝導率は、DTC−25熱伝導率計を使用して測定されている。熱伝導率の向上は、水の伝導率に対して計算された。層流では、熱伝達の向上は、熱伝導率の向上に比例し、したがって%での熱伝達の向上を得るには計算は必要ない。
【0054】
【表2】
【0055】
分散剤を有する試験対象8及び9は、分散剤のない試験対象7よりも高い熱伝達の向上を有している。
【0056】
[実施例3]
水で構成される試験対象1〜9及び試験対象10の冷却性能を、モデル化ソフトウェアにより計算した。この試験において、7854kg/mの密度を有する鋼スラブを、13秒間層流で冷却した。長さは5メートルであり、幅は1メートルであり、スラブ厚は10mmであった。
【0057】
スラブの初期温度は968℃であった。以下の表は、各試験対象を使用することによる冷却速度を示す。
【0058】
【表3】
【0059】
試験対象1、7、8及び9は、試験対象2〜6及び試験対象10より高い冷却速度を有する。
図1
図2
図3
図4