(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フローティング電極は、前記第1電極側の一端と前記第2電極側の他端とに少なくとも1つずつ電気的に露出した領域をそれぞれ有し、当該一端の前記領域と当該他端の前記領域同士をつなぐ少なくとも1つの薄膜抵抗体を備える
請求項2に記載の処置具。
前記第1電極と前記フローティング電極との離間距離と、前記第2電極と前記フローティング電極との離間距離とは、前記第1把持面と前記第2把持面とで前記生体組織を把持した状態での当該第1把持面と当該第2把持面との離間距離よりもそれぞれ長い
請求項5に記載の処置具。
前記第1把持面と前記第2把持面とで前記生体組織を把持した状態で当該第1把持面及び当該第2把持面の長手方向に沿って見た場合に、前記フローティング電極の長さ寸法は、当該第1把持面と当該第2把持面との離間距離よりも長い
請求項1〜6のいずれか一つに記載の処置具。
前記フローティング電極の中心位置は、前記第1把持面と前記第2把持面とを互いに対向させた状態で当該対向する方向に沿って見た場合に、前記第1電極と前記第2電極との中心位置に一致する
請求項1〜10のいずれか一つに記載の処置具。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0013】
(実施の形態1)
〔処置システムの概略構成〕
図1は、本実施の形態1に係る処置システム1を示す図である。
処置システム1は、生体組織に対してエネルギ(電気エネルギ(高周波エネルギ))を付与することにより、当該生体組織を処置(接合(若しくは吻合)及び切離等)する。この処置システム1は、
図1に示すように、処置具2と、制御装置3と、フットスイッチ4とを備える。
【0014】
〔処置具の構成〕
処置具2は、例えば、腹壁を通して生体組織を処置するためのリニアタイプの外科医療用処置具である。この処置具2は、
図1に示すように、ハンドル5と、シャフト6と、把持部7とを備える。
ハンドル5は、術者が処置具2を手で持つ部分である。そして、このハンドル5には、
図1に示すように、操作ノブ51が設けられている。
シャフト6は、
図1に示すように、略円筒形状を有し、一端(
図1中、右端部)がハンドル5に接続されている。また、シャフト6の他端(
図1中、左端部)には、把持部7が取り付けられている。そして、このシャフト6の内部には、術者による操作ノブ51の操作に応じて、把持部7を構成する第1,第2ジョー8,9(
図1)を開閉させる開閉機構(図示略)が設けられている。また、このシャフト6の内部には、制御装置3に接続された電気ケーブルC(
図1)がハンドル5を介して一端側(
図1中、右端部側)から他端側(
図1中、左端部側)まで配設されている。
【0015】
〔把持部の構成〕
なお、以下で記載する「長手方向」は、生体組織LTを把持した閉状態(第1,第2ジョー8,9を閉じた(第1,第2把持面81,91を互いに対向させた)状態)に設定された把持部7の先端と基端とを結ぶ方向を意味する。また、以下で記載する「幅方向」は、当該把持部7において、第1,第2把持面81,91に沿い、当該長手方向に直交する短手方向を意味する。
図2及び
図3は、把持部7を示す図である。具体的に、
図2は、開状態(第1,第2ジョー8,9を開放(離間)した状態)に設定された把持部7を示す斜視図である。
図3は、管腔や血管等の生体組織LTを把持した閉状態に設定された把持部7を幅方向に沿う切断面にて切断した断面図である。
把持部7は、生体組織LT(
図3)を把持して、当該生体組織LTを処置する部分である。この把持部7は、
図1ないし
図3に示すように、第1,第2ジョー8,9を備える。
第1,第2ジョー8,9は、矢印R1(
図2)方向に開閉可能にシャフト6の他端に軸支され、術者による操作ノブ51の操作に応じて、生体組織LTを把持可能とする。
【0016】
〔第1ジョーの構成〕
第1ジョー8は、第2ジョー9に対して、
図2及び
図3中、上方側に配設され、長手方向に沿って延びる略直方体形状を有する。この第1ジョー8の材料としては、高い耐熱性を有し、かつ、熱伝導率が低く、さらに、優れた電気絶縁性を有する材料、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PBI(ポリベンゾイミダゾール)等の樹脂を例示することができる。なお、第1ジョー8の材料としては、当該樹脂に限らず、アルミナ、ジルコニア等のセラミック等を採用しても構わない。また、それらに生体への非粘着性を有するPTFE、DLC(Diamond-Like Carbon)、セラミック系、シリカ系、シリコン系の絶縁性のコーティング材を付しても構わない。
そして、第1ジョー8における
図2及び
図3中、下方側の面は、第2ジョー9との間で生体組織LTを把持する第1把持面81として機能する。
【0017】
本実施の形態1では、第1把持面81は、平坦状に形成されている。
この第1把持面81において、幅方向(短手方向)の両端部側(
図2及び
図3中、左右の両端部側)に位置し、当該第1把持面81の全長(長手方向の全長、以下、同様)にわたる領域には、
図2または
図3に示すように、第1,第2電極10,11がそれぞれ埋め込まれている。
第1,第2電極10,11は、例えば、銅、アルミニウム、カーボン等の導電性材料でそれぞれ構成されている。また、第1,第2電極10,11は、長手方向に沿って延びる略直方体状の板体でそれぞれ構成され、一方の板面(
図2,
図3中、下方側の面)が第1把持面81の一部をそれぞれ構成するように(当該一方の板面が露出した状態で)当該第1把持面81にそれぞれ埋め込まれている。さらに、第1,第2電極10,11には、シャフト6の一端側から他端側まで配設された電気ケーブルCを構成する一対のリード線(図示略)がそれぞれ接合されている。そして、第1,第2電極10,11は、一対のリード線を介して制御装置3により高周波電力が供給されることで、高周波エネルギを発生し得る。第1,第2ジョー8,9(第1,第2把持面81,91)にて生体組織LTを把持した状態で高周波電力が供給されると、第1,第2電極10,11の間に高周波電位が発生するため、当該生体組織LTに高周波電流を流し得る。つまり、第1,第2電極10,11は、いずれか一方が正極で他方が負極をなす一対の電極である。
なお、第1,第2電極10,11としては、板体に限らず、第1,第2ジョー8,9の間隔に比して小さい凸部を有して埋め込まれているような丸棒等の異形状でも構わない。また、第1,第2電極10,11としては、バルクの材料である必要はなく、蒸着やスパッタリング等で形成されたプラチナ等の導電性薄膜で構成しても構わない。さらに、第1,第2電極10,11の表面は、上述したような物理的な露出のみに限らず、電気的に露出していればよい。すなわち、生体への非粘着性を有するNi−PTFE膜や導電性DLC薄膜等の導電性のコーティング材を付した状態で、その面が電極としての電位を提供しても何ら発明の意図を逸脱するものではない。
【0018】
〔第2ジョーの構成〕
第2ジョー9は、長手方向に沿って延びる略直方体形状を有する。この第2ジョー9の材料としては、第1ジョー8と同様に、PTFE、PEEK、PBI等の樹脂、アルミナ、ジルコニア等のセラミック等を例示することができる。
そして、第2ジョー9における
図2及び
図3中、上方側の面は、第1把持面81との間で生体組織LTを把持する第2把持面91として機能する。
【0019】
本実施の形態1では、第2把持面91は、第1把持面81と同様に、平坦状に形成されている。
この第2把持面91において、幅方向の中央部分(
図2及び
図3中、左右方向の中央部分)に位置し、当該第2把持面91の全長にわたる領域には、
図2または
図3に示すように、フローティング電極12が埋め込まれている。
フローティング電極12は、例えば、銅、アルミニウム、金、カーボン等の良導体である。また、フローティング電極12は、長手方向に沿って延びる略直方体状の板体で構成され、一方の板面(
図2,
図3中、上方側の面)が第2把持面91の一部を構成するように(当該一方の板面が露出した状態で)当該第2把持面91に埋め込まれている。さらに、フローティング電極12は、第1,第2電極10,11とは異なり、リード線を介して制御装置3とは接続されておらず、かつ、接地もされておらず、電気的にフローティングである。
なお、フローティング電極12としては、板体に限らず、第1,第2ジョー8,9の間隔に比して小さい凸部を有して埋め込まれているような丸棒等の異形状でも構わない。また、フローティング電極12としては、バルクの材料である必要はなく、良導体の箔・薄膜、あるいは、CVD(Chemical Vapor Deposition)等で形成された導電性DLC薄膜等で構成しても構わない。さらに、フローティング電極12の表面は、上述したような物理的な露出のみに限らず、電気的に露出していればよい。すなわち、生体への非粘着性を有するNi−PTFE膜や導電性DLC薄膜等の導電性のコーティング材を付した状態で、その面が電極としての電位を提供しても何ら発明の意図を逸脱するものではない。
【0020】
ここで、生体組織LTは、その対象部位によって、その組成の違いにより導電性が異なることが知られている。例えば、10kHzにおける体積抵抗率は、脂肪組織で30Ω・m、筋肉や肝臓組織で7Ω・m、血液で2Ω・m程度と言われている。また、その導電性は含水率によっても大きく異なっており、処置の進行により組織の乾燥が進むにつれ、導電性は急激に失われていくこともまたよく知られている。
そして、本実施の形態1では、フローティング電極12の電気抵抗値は、1Ω以下、例えば10mΩであり、フローティング電極12が接する電流経路部分の生体組織LTの電気抵抗値250Ωよりも低い。
【0021】
〔第1,第2電極とフローティング電極との位置関係〕
図4は、第1,第2電極10,11とフローティング電極12との位置関係を示す図である。具体的に、
図4は、閉状態で第1,第2
把持面81,91が互いに対向する方向(第1,第2把持面81,91の法線方向)に沿って第1,第2電極10,11とフローティング電極12とを見た図である。
フローティング電極12は、閉状態で第1,第2把持面81,91が互いに対向する方向に沿って見た場合に、
図4に示すように、第1,第2電極10,11の間に配置されている。より具体的に、フローティング電極12における幅方向の中心位置O1は、第1,第2電極10,11間の幅方向の中心位置O2に一致するように設定されている。
また、フローティング電極12における幅方向の長さ寸法W1は、
図3に示すように、第1,第2把持面81,91で生体組織LTを把持した状態での第1,第2把持面81,91間の離間距離D0よりも長くなるように設定されている。
【0022】
〔制御装置及びフットスイッチの構成〕
フットスイッチ4は、術者が足で操作する部分である。そして、フットスイッチ4への当該操作に応じて、制御装置3から処置具2(第1,第2電極10,11)への通電のオン及びオフが切り替えられる。
なお、当該オン及びオフを切り替える手段としては、フットスイッチ4に限らず、その他、手で操作するスイッチ等を採用しても構わない。
制御装置3は、CPU(Central Processing Unit)等を含んで構成され、所定の制御プログラムにしたがって、処置具2の動作を統括的に制御する。より具体的に、制御装置3は、術者によるフットスイッチ4への操作(通電オンの操作)に応じて、一対のリード線を介して第1,第2電極10,11の間に予め設定した出力の高周波電力を供給し、エネルギを適切に制御する。
【0023】
〔処置システムの動作〕
次に、上述した処置システム1の動作について説明する。
術者は、処置具2を手で持ち、当該処置具2の先端部分(把持部7及びシャフト6の一部)を、例えば、トロッカ等を用いて腹壁を通して腹腔内に挿入する。また、術者は、操作ノブ51を操作し、第1,第2ジョー8,9にて生体組織LTを把持する。
次に、術者は、フットスイッチ4を操作し、制御装置3から処置具2への通電をオンに切り替える。当該オンに切り替えられると、制御装置3は、一対のリード線を介して、第1,第2電極10,11の間に高周波電力を供給する。
【0024】
そして、第1,第2電極10,11の間に高周波電力が供給されると、第1,第2電極10,11の間に高周波電位が発生し、フローティング電極12は、第1,第2電極10,11の各電位の略中間の電位となる。その結果、第1,第2電極10,11間には、生体組織LTのみを介する経路と、生体組織LT及びフローティング電極12の双方を介する経路とに沿って高周波電流が流れる。なお、当該各経路の割合は、生体組織LTとフローティング電極12との電気抵抗値の差によって定まる。
以下では、第1,第2把持面81,91にて把持された生体組織LTにおいて、当該第1,第2把持面81,91が互いに対向する方向に沿って見た場合に、第1電極10及びフローティング電極12の間と、第2電極11及びフローティング電極12の間とに位置する組織をそれぞれ組織LT1(
図3)とし、各組織LT1に挟まれた組織を組織LT2(
図3)とする。なお、以下で記載する実施の形態2〜6でも同様である。
本実施の形態1では、上述したようにフローティング電極12として良導体を採用しているため、フローティング電極12の電気抵抗値は、生体組織LT、より具体的には組織LT2の電気抵抗値に対して圧倒的に低い。このため、高周波電流は、
図3に示すように、各組織LT1及びフローティング電極12を介する経路Paに沿って主に流れる。すなわち、各組織LT1に主にジュール熱が発生する。そして、当該ジュール熱の発生により、各組織LT1は処置される。また、組織LT2は、主に各組織LT1に発生したジュール熱からの熱伝導により処置される。すなわち、各組織LT1,LT2は、処置が行われる処置対象組織LT0である。
【0025】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果を奏する。
図5ないし
図8は、本実施の形態1の効果を説明する概念図である。具体的に、
図5及び
図6は、第1,第2把持面81,91にて生体組織LTを把持した状態で第1,第2電極10,11の間に一定の高周波電力(例えば、20W)を供給し続けた場合での当該第1,第2電極10,11間の抵抗の時間変化及び当該第1,第2電極10,11間の電圧Vpの時間変化をそれぞれ示している。なお、
図5及び
図6では、本実施の形態1とは異なりフローティング電極12を省略した従来の構成の場合を破線で示し、フローティング電極12を設けた本実施の形態1の構成の場合を実線で示している。また、
図5及び
図6の実線は、生体組織LT(組織LT2)の電気抵抗値の1/100の電気抵抗値を有し、長さ寸法W1が第1,第2電極10,11間の1/3の長さ寸法を有するフローティング電極12を設けた場合を示している。
図7及び
図8は、フローティング電極12の電気抵抗値と第1,第2電極10,11間の抵抗(生体組織LTとフローティング電極12との合成抵抗)との関係、及びフローティング電極12の電気抵抗値と第1,第2電極10,11間の電圧Vpとの関係をそれぞれ示している。
【0026】
本実施の形態1に係る処置具2では、第2把持面91には、閉状態で第1,第2把持面81,91が互いに対向する方向から見た場合に、第1,第2電極10,11の間に生体組織LT(組織LT2)の電気抵抗値よりも低い電気抵抗値を有するフローティング電極12が設けられている。このため、第1,第2把持面91にて生体組織LTを把持した状態で第1,第2電極10,11の間に高周波電力を供給した場合には、フローティング電極12は、高周波電流の経路Paの一部となる。すなわち、フローティング電極12を省略した従来の構成と比較して、第1,第2電極10,11間の抵抗(生体組織LTとフローティング電極12との合成抵抗)を低減することができる。したがって、所定の高周波電力を第1,第2電極10,11の間に供給する場合に必要な電圧を従来の構成よりも低減することができる。また、第1,第2電極10,11間の距離を短くせずにフローティング電極12を設けるだけで当該電圧を低減させることができるため、処置対象組織LT0の大きさが減少することもない。
【0027】
具体的に、
図5に示すように、処置後半(
図5中、8秒以降)では、従来の構成の場合(
図5に示した破線)では、第1,第2電極10,11間の抵抗は、1000Ωを示している。一方、本実施の形態1の構成の場合(
図5に示した実線)では、第1,第2電極10,11間の合成抵抗は、670Ω程度であり、従来の構成と比較して2/3程度になっている。これに伴い、
図6に示すように、20Wの高周波電力を第1,第2電極10,11の間に供給する場合に必要な電圧Vpは、従来の構成の場合には200Vpであるのに対し、本実施の形態1の構成の場合には164Vpであり、36Vpの低下が見られる。
【0028】
ここで、フローティング電極12による合成抵抗の低減量及び電圧低減量は、生体組織LT、より具体的には組織LT2とフローティング電極12との電気抵抗値の差によって定まる。具体的には、
図7に示すように、組織LT2の電気抵抗値が高いほど、フローティング電極12による合成抵抗の低減量は大きくなる。これに伴い、
図8に示すように、同一の高周波電力を第1,第2電極10,11の間に供給する場合に必要な電圧低減量も、組織LT2の電気抵抗値が高いほど大きくなる。また、
図7及び
図8から、フローティング電極12の電気抵抗値は、極端に低い必要がないことが見て取れる。例えば、組織LT2の電気抵抗値が1000Ωである場合、フローティング電極12の電気抵抗値が100Ωよりも極端に小さくなっても、抵抗低減量及び電圧低減量は、当該電気抵抗値が100Ωである場合とほとんど変わらない。
【0029】
また、本実施の形態1に係る処置具2では、第1,第2ジョー8,9の幅方向に高周波電流を流す幅構造を採用している。このため、処置対象組織LT0を第1,第2ジョー8,9の幅方向の中央よりに限定することができる。これにより、生体組織LTにおいて、第1,第2ジョー8,9の幅方向外側に位置し、処置対象組織LT0の周辺にある周辺組織への熱の影響を軽減し、低侵襲で処置を行うことができる。
以上のことから、本実施の形態1に係る処置具2によれば、処置対象組織LT0の大きさを減少させずに低侵襲で処置を行いつつ、当該処置に必要な電圧を低減することができる、という効果を奏する。
【0030】
また、本実施の形態1に係る処置具2では、フローティング電極12の幅方向の長さ寸法W1は、離間距離D0よりも長く設定されている。このため、フローティング電極12の電気抵抗値を担保し、より確実に当該フローティング電極12を高周波電流の経路Paの一部とすることができる。
【0031】
また、本実施の形態1に係る処置具2では、フローティング電極12における幅方向の中心位置O1は、第1,第2電極10,11間の幅方向の中心位置O2に一致する。このため、各組織LT1の大きさを同一とし、各組織LT1を略同一の温度で処置することができる。また、各組織LT1に挟まれた組織LT2についても、各組織LT1からの熱伝導により均等に温度上昇させて処置することができる。したがって、処置対象組織LT0全体をバランスよく処置することができる。
【0032】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
本実施の形態2の説明では、上述した実施の形態1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
図9A及び
図9Bは、本実施の形態2に係る処置具2Aを構成する把持部7Aを示す図であって、
図3に対応した断面図である。具体的に、
図9Aは、処置前半での高周波電流の経路を示している。
図9Bは、処置後半での高周波電流の経路を示している。
本実施の形態2に係る処置具2Aでは、上述した実施の形態1で説明した処置具2(
図3)に対して、フローティング電極12とは材料のみが異なるフローティング電極12A(
図9A,
図9B)を採用している。
【0033】
本実施の形態2に係るフローティング電極12Aは、樹脂等の不導体にカーボンや銀等の導電性フィラーを分散させた材料、例えば、導電性ポリイミド、導電性PBI、導電性PEEK、導電性フッ素ゴム、導電性シリコン等の導電性樹脂で構成されている。このフローティング電極12Aとしては、例えば、幅寸法が1mmである場合には、生体組織LTがどの対象部位であるかにも依存するが、体積抵抗率で0.1〜10Ω・m程度が適当である。
そして、処置前の組織LT2の電気抵抗値は、例えば250Ωである。また、乾燥状態(含水率:20%程度)における組織LT2の電気抵抗値は、例えば800Ωである。すなわち、本実施の形態2では、フローティング電極12Aの電気抵抗値500Ωは、処置前の組織LT2の電気抵抗値の数分の1ないし同程度、あるいは近しいがより高抵抗であって、乾燥状態における組織LT2の電気抵抗値よりも低い。
【0034】
次に、第1,第2把持面81,91にて生体組織LTを把持した状態で第1,第2電極10,11の間に高周波電力を供給した場合での高周波電流の経路について
図9A及び
図9Bを参照して説明する。
本実施の形態2では、上述したように、フローティング電極12Aの電気抵抗値は、処置前の組織LT2の電気抵抗値の数分の1ないし同程度、あるいは近しいがより高抵抗である。このため、処置前半では、高周波電流は、
図9Aに示すように、第1,第2電極10,11間において、処置対象組織LT0(組織LT1,LT2)のみを介する経路PaA1と、各組織LT1及びフローティング電極12Aを介する経路PaA2との2つの経路PaA1,PaA2に沿って流れる。すなわち、経路PaA1に沿って流れる高周波電流により処置対象組織LT0にジュール熱が発生するとともに、経路PaA2に沿って流れる高周波電流により組織LT1にジュール熱が発生する。
また、処置対象組織LT0の処置の進行に伴い、処置対象組織LT0の電気抵抗値は高くなっていく。上述したように、フローティング電極12Aの電気抵抗値は、乾燥状態における組織LT2の電気抵抗値よりも低い。このため、処置後半では、
図9Bに示すように、高周波電流は、その多くが経路PaA2に沿い、フローティング電極12Aを介して流れるようになる。そして、フローティング電極12Aは上述した実施の形態1で説明した良導体に比して高い体積抵抗率を有することから当該フローティング電極12Aを流れる高周波電流により、フローティング電極12Aが内部発熱により温度上昇して遅発性発熱体となる。すなわち、処置後半では、遅発性発熱体となったフローティング電極12Aからの直接加熱により、処置対象組織LT0は処置される。
【0035】
以上説明した本実施の形態2によれば、上述した実施の形態1と同様の効果の他、以下の効果を奏する。
本実施の形態2に係る処置具2Aでは、フローティング電極12Aの電気抵抗値は、処置前の組織LT2の電気抵抗値の数分の1ないし同程度、あるいは近しいがより高抵抗であって、乾燥状態における組織LT2の電気抵抗値よりも低い。このため、上述したように処置を2段階で行うことができる。すなわち、第1の段階の処置(
図9A)では、上述した実施の形態1と比較して、組織LT2もジュール熱で処置することができ、処置の進行を早めることができる。また、第2の段階の処置(
図9B)では、遅発性発熱体となったフローティング電極12Aによる直接加熱によって、積極的に処置をさらに進行させることができる。特に、フローティング電極12Aを省略した従来の構成では、処置対象組織LT0の電気抵抗値が上昇し、例えば電源の電圧容量を超えるなどして高周波電流が流せなくなった時点で当該処置対象組織LT0への発熱を誘起することができない。これに対して、フローティング電極12Aを設けることにより、上記の時点以降も処置を継続して進行させることができ、処置性能をより強化することが可能となる。
【0036】
また、本実施の形態2に係る処置具2Aでは、フローティング電極12Aによる直接加熱が寄与するものの、当該直接加熱の領域は、第1,第2ジョー8,9の内部に限定されている。このため、フローティング電極12Aによる直接加熱が寄与した場合であっても、上述した実施の形態1と同様に、第1,第2ジョー8,9の幅方向外側に位置し、処置対象組織LT0の周辺にある周辺組織への熱の影響を軽減し、低侵襲で処置を行うことができる。
【0037】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
本実施の形態3の説明では、上述した実施の形態1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
図10は、本実施の形態3に係る処置具2Bを構成する把持部7Bを示す図である。具体的に、
図10は、
図2に対応した斜視図である。
本実施の形態3に係る処置具2Bでは、
図10に示すように、上述した実施の形態1で説明した処置具2(
図2)に対して、フローティング電極12とは材料のみが異なるフローティング電極12Bを採用している。
【0038】
図11は、フローティング電極12Bを示す図である。具体的に、
図11は、フローティング電極12Bを上方側から第2把持面91の法線方向に沿って見た図である。
本実施の形態3に係るフローティング電極12Bは、
図10または
図11に示すように、不導体12Biと、薄膜抵抗パターン12Bpとを備える。
不導体12Biは、窒化アルミやアルミナ等のセラミックやポリイミド等の樹脂で構成され、上述した実施の形態1で説明したフローティング電極12と同一の形状及び大きさを有する。
薄膜抵抗パターン12Bpは、本発明に係る薄膜抵抗体に相当する部分であり、Pt、カーボン、SUS等の良導体で構成され、不導体12Biの上面に蒸着やスパッタリング等にて形成されている。
本実施の形態3では、薄膜抵抗パターン12Bpは、1ラインで構成されている。そして、薄膜抵抗パターン12Bpは、一端及び他端に設けられたパッド12Bp1,12Bp2が幅方向に対向し、一端(パッド12Bp1)から他端(パッド12Bp2)にかけて、不導体12Biの上面の外縁に倣って延在した略8の字形状を有する。これらパッド12Bp1,12Bp2には、配線等はなされていない。なお、パッド12Bp1,12Bp2は、手術中、生体組織LTが第1,第2ジョー8,9における長手方向のどこでどの大きさで把持されるかが不明であるため、
図10または
図11に示すように略直方体形状で幅方向に対向して配置されている必要はなく、幅方向の一端側に導体が露出した部分として存在し、幅方向の他端側にも同様の構造があればよい。また、導体が全て露出している必要はなく、幅方向の一端側及び他端側に少なくとも一つずつの開口さえあれば、あとはポリイミド等の絶縁性カバーで覆われていてもよい。さらに、一対の開口を介して露出した各導体同士をつなぐ薄膜抵抗体は、少なくとも一つあればよく、複数設けても構わない。また、開口を複数対設け、当該複数対の開口を介して露出した複数対の導体同士を複数の薄膜抵抗体でつないでもよい。なお、これらの電気抵抗値は、50Ω〜500Ω程度が望ましい。
【0039】
次に、第1,第2把持面81,91にて生体組織LTを把持した状態で第1,第2電極10,11の間に高周波電力を供給した場合での高周波電流の経路について
図12A及び
図12Bを参照して説明する。
図12A及び
図12Bは、
図3に対応した断面図であって、処置前半及び処置後半での高周波電流の経路をそれぞれ示している。
本実施の形態3では、上述したように、フローティング電極12Bの電気抵抗値は、処置前の組織LT2の電気抵抗値の数分の1ないし同程度、あるいは近しいがより高抵抗である。このため、処置前半では、高周波電流は、
図12Aに示すように、第1,第2電極10,11間において、処置対象組織LT0(組織LT1,LT2)のみを介する経路PaB1と、各組織LT1及びフローティング電極12Bを介する経路PaB2との2つの経路PaB1,PaB2に沿って流れる。ここで、経路PaB2は、薄膜抵抗パターン12Bpを経由しないで組織LT2中を経由する経路PaB3と、薄膜抵抗パターン12Bpを経由する経路PaB4(
図11)とを有する。すなわち、経路PaB1,PaB2に沿って流れる高周波電流により各組織LT1,LT2(処置対象組織LT0)にジュール熱が発生する。
そして、処置対象組織LT0の処置が進行し、組織LT2のインピーダンスが上昇すると、
図12Bに示すように、経路PaB1,PaB3は生じ難く、実質的に経路PaB2,PaB4が支配的になる。すなわち、処置後半には、経路PaB4に沿って薄膜抵抗パターン12Bpに高周波電流が流れることにより、薄膜抵抗パターン12Bpが内部発熱により温度上昇して遅発性発熱体となる。よって、遅発性発熱体となったフローティング電極12Bからの直接加熱により、処置対象組織LT0は処置される。
【0040】
以上説明した本実施の形態3によれば、上述した実施の形態2と同様の効果の他、以下の効果を奏する。
本実施の形態3に係る処置具2Bでは、予め信頼性の確保された抵抗体を無配線で用いることができるために、発熱部位を薄膜抵抗パターン12Bpの形状や抵抗密度によって自由に構成することができる。また、通常ヒータとして使用する場合には抵抗体への配線が2本必要になるが、それが不要になるため、第2ジョー9を小型化(把持部7Bを細径化)することも可能となる。
【0041】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
本実施の形態4の説明では、上述した実施の形態1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
図13は、本実施の形態4に係る処置具2Cを構成する把持部7Cを示す図である。具体的に、
図13は、
図3に対応した断面図である。
本実施の形態4に係る処置具2Cでは、
図13に示すように、上述した実施の形態1で説明した処置具2(
図3)に対して、フローティング電極の配設位置が異なる。
【0042】
本実施の形態4に係る第2ジョー9において、第2把持面91には、
図13に示すように、フローティング電極12が設けられていない。なお、本実施の形態4に係る第2把持面91は、フローティング電極12が設けられていないが、上述した実施の形態1と同様に、平坦形状を有する。当該第2把持面91に対して、上述した実施の形態1で説明した生体への非粘着性を有する絶縁性のコーティング材を付しても構わない。
また、本実施の形態4に係る第1ジョー8において、第1把持面81には、第1,第2電極10,11の他、フローティング電極12Cが設けられている。
【0043】
フローティング電極12Cは、上述した実施の形態1で説明したフローティング電極12と同一の材料で構成され、当該フローティング電極12と同一の形状、大きさ、及び機能(第1,第2電極10,11間での高周波電流の経路の一部となる機能)を有する。
このフローティング電極12Cは、第1把持面81における幅方向の中央部分に位置し、当該第1把持面81の全長にわたる領域に埋め込まれている。そして、フローティング電極12Cは、第1把持面81の一部を構成する。なお、本実施の形態4に係る第1把持面81は、フローティング電極12Cが埋め込まれているが、上述した実施の形態1と同様に、平坦形状を有する。当該第1把持面81において、フローティング電極12Cの
図13中、下方側の面に対して上述した実施の形態1で説明した生体への非粘着性を有する導電性のコーティング材を付しても構わない。
ここで、本実施の形態4において、閉状態で第1,第2把持面81,91が互いに対向する方向に沿って見た場合に、第1,第2電極10,11とフローティング電極12Cとの位置関係は、上述した実施の形態1と同様である。また、第1電極10とフローティング電極12Cとの離間距離D1(第2電極11とフローティング電極12Cとの離間距離D2)は、離間距離D0よりも長くなるように設定されている(
図13)。
なお、フローティング電極12
Cとしては、板体に限らず、第1,第2ジョー8,9の間隔に比して小さい凸部を有して埋め込まれているような丸棒等の異形状でも構わない。また、フローティング電極12
Cとしては、バルクの材料である必要はなく、良導体の箔・薄膜、あるいは、CVD等で形成された導電性DLC薄膜等で構成しても構わない。
【0044】
次に、第1,第2把持面81,91にて生体組織LTを把持した状態で第1,第2電極10,11の間に高周波電力を供給した場合での高周波電流の経路について
図13を参照して説明する。
本実施の形態4に係るフローティング電極12Cは、上述した実施の形態1で説明したフローティング電極12と同様に、良導体で構成されている。このため、高周波電流は、
図13に示すように、第1,第2電極10,11間において、各組織LT1及びフローティング電極12Cを介する経路PaCに沿って主に流れる。すなわち、上述した実施の形態1と同様に、各組織LT1は、ジュール熱により処置される。また、組織LT2は、各組織LT1に発生したジュール熱からの熱伝導により処置される。
【0045】
以上説明した本実施の形態4によれば、上述した実施の形態1と同様の効果の他、以下の効果を奏する。
本実施の形態4に係る処置具2Cでは、第1ジョー8に第1,第2電極10,11及びフローティング電極12Cが設けられている。言い換えれば、第2ジョー9には、第1,第2電極10,11及びフローティング電極12Cのいずれも設けられていない。このため、第2ジョー9の構造の簡素化を図ることができ、当該第2ジョー9を小型化(把持部7Cを細径化)することも可能となる。
【0046】
また、本実施の形態4に係る処置具2Cでは、第1電極10とフローティング電極12Cとの離間距離D1(第2電極11とフローティング電極12Cとの離間距離D2)は、離間距離D0よりも長くなるように設定されている。このため、離間距離D1(D2)が離間距離D0よりも短い場合には高周波電流の経路PaCが管腔や血管等の接合すべき組織間の界面まで到達させることが難しいところ、離間距離D1(D2)を離間距離D0よりも長くすることで高周波電流の経路PaCを当該界面まで厚み方向に深く到達させることができる。したがって、処置を効果的に行うことができる。
【0047】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について説明する。
本実施の形態5の説明では、上述した実施の形態4と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
図14は、本実施の形態5に係る処置具2Dを構成する把持部7Dを示す図である。具体的に、
図14は、
図13に対応した断面図である。
本実施の形態5に係る処置具2Dでは、
図14に示すように、上述した実施の形態4で説明した処置具2C(
図13)に対して、フローティング電極の数が異なる。
【0048】
本実施の形態5に係る第1把持面81には、
図14に示すように、第1,第2電極10,11の他、複数(本実施の形態5では、2つ)のフローティング電極12Dが設けられている。
2つのフローティング電極12Dは、上述した実施の形態4で説明したフローティング電極12Cと同一の材料でそれぞれ構成され、当該フローティング電極12Cと略同一の形状及び大きさ、並びに同一の機能をそれぞれ有する。
これらフローティング電極12Dは、第1把持面81において、第1,第2電極10,11の間にそれぞれ位置し、当該第1把持面81の全長にわたる領域にそれぞれ埋め込まれている。より具体的に、これらフローティング電極12Dは、隣接する第1電極10または第2電極11、及び他方のフローティング電極12Dとの間隔が均等となるようにそれぞれ設けられている。すなわち、2つのフローティング電極12D間の幅方向の中心位置O1は、第1,第2電極10,11間の幅方向の中心位置O2に一致するように設定されている。そして、これらフローティング電極12Dは、第1把持面81の一部をそれぞれ構成する。なお、本実施の形態5に係る第1把持面81は、2つのフローティング電極12Dが埋め込まれているが、上述した実施の形態4と同様に、平坦形状を有する。当該第1把持面81において、2つのフローティング電極12Dの
図14中、下方側の面に対して上述した実施の形態4で説明した生体への非粘着性を有する導電性のコーティング材を付しても構わない。
なお、フローティング電極12Dの数は、2つに限らず、3つ以上としても構わない。また、フローティング電極12Dとしては、板体に限らず、第1,第2ジョー8,9の間隔に比して小さい凸部を有して埋め込まれているような丸棒等の異形状でも構わない。さらに、フローティング電極12Dとしては、バルクの材料である必要はなく、良導体の箔・薄膜、あるいは、CVD等で形成された導電性DLC薄膜等で構成しても構わない。
【0049】
次に、第1,第2把持面81,91にて生体組織LTを把持した状態で第1,第2電極10,11の間に高周波電力を供給した場合での高周波電流の経路について
図14を参照して説明する。
以下では、第1,第2把持面81,91にて把持された生体組織LTにおいて、当該第1,第2把持面81,91が互いに対向する方向に沿って見た場合に、2つのフローティング電極12D間に位置する組織を組織LT1D(
図14)とし、各組織LT1,LT1D間に位置する組織を組織LT2D(
図14)とする。
本実施の形態5では、上述したように、2つのフローティング電極12Dは、第1,第2電極10,11間で均等に配置されている。このため、第1,第2電極10,11の間に高周波電力が供給されると、2つのフローティング電極12
Dは、第1,第2電極10,11の各電位の間で均等に割り振られた電位となる。また、2つのフローティング電極12Dは、上述した実施の形態4で説明したフローティング電極12Cと同様に、良導体で構成されている。このため、高周波電流は、
図14に示すように、第1,第2電極10,11間において、各組織LT1,LT1D及びフローティング電極12Dを介する経路PaDに沿って主に流れる。すなわち、各組織LT1の他、組織LT1Dについても、ジュール熱により処置される。また、組織LT2Dは、各組織LT1,LT1Dに発生したジュール熱からの熱伝導により処置される。すなわち、各組織LT1,LT1D,LT2Dは、処置が行われる処置対象組織LT0である。
【0050】
以上説明した本実施の形態5によれば、上述した実施の形態4と同様の効果の他、以下の効果を奏する。
本実施の形態5に係る処置具2Dでは、フローティング電極12Dは、2つ設けられている。このため、第1,第2電極10,11間の合成抵抗をさらに低減させることができる。また、ジュール熱が発生する組織LT1をより多くする(発熱点を多点化する)ことができ、処置対象組織LT0をより均一に処置することができる。
【0051】
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6について説明する。
本実施の形態6の説明では、上述した実施の形態4と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
図15は、本実施の形態6に係る処置具2Eを構成する把持部7Eを示す図である。具体的に、
図15は、第1ジョー8の第1把持面81を示す図である。
本実施の形態6に係る処置具2Eでは、
図15に示すように、上述した実施の形態4で説明した処置具2C(
図13)に対して、フローティング電極の数が異なる。
【0052】
本実施の形態6に係る第1把持面81には、
図15に示すように、第1,第2電極10,11の他、複数(本実施の形態6では、20個)のフローティング電極12Eが設けられている。
20個のフローティング電極12Eは、上述した実施の形態4で説明したフローティング電極12Cと同一の材料でそれぞれ構成され、当該フローティング電極12Cと同一の幅寸法、厚み寸法及び機能をそれぞれ有する。
これらフローティング電極12Eは、同一の形状を有し、上述した実施の形態4で説明したフローティング電極12Cよりも長手方向の寸法がそれぞれ小さく設定されている。そして、これらフローティング電極12Eは、第1把持面81において、第1,第2電極10,11の間にそれぞれ位置し、長手方向に沿って並列するようにそれぞれ埋め込まれている。より具体的に、各フローティング電極12Eにおける幅方向の各中心位置O1は、第1,第2電極10,11間の幅方向の中心位置O2に一致するように設定されている。そして、これらフローティング電極12Eは、第1把持面81の一部をそれぞれ構成する。なお、本実施の形態6に係る第1把持面81は、20個のフローティング電極12Eが埋め込まれているが、上述した実施の形態4と同様に、平坦形状を有する。当該第1把持面81において、20個のフローティング電極12Eの
図15中、下方側の面に対して上述した実施の形態4で説明した生体への非粘着性を有する導電性のコーティング材を付しても構わない。
なお、フローティング電極12Eの数は、20個に限らず、2つ以上であれば、その他の数としても構わない。また、フローティング電極12Eとしては、板体に限らず、第1,第2ジョー8,9の間隔に比して小さい凸部を有して埋め込まれているような丸棒等の異形状でも構わない。さらに、フローティング電極12Eとしては、バルクの材料である必要はなく、良導体の箔・薄膜、あるいは、CVD等で形成された導電性DLC薄膜等で構成しても構わない。
【0053】
次に、第1,第2把持面81,91にて生体組織LTを把持した状態で第1,第2電極10,11の間に高周波電力を供給した場合での高周波電流の経路について
図15を参照して説明する。
以下では、第1,第2把持面81,91にて把持された生体組織LTにおいて、当該第1,第2把持面81,91が互いに対向する方向に沿って見た場合に、20個のフローティング電極12E間に位置する組織を組織LT1E(
図15)とし、各組織LT1E間に位置する組織を組織LT2E(
図15)とする。
本実施の形態6では、フローティング電極12Eは、上述した実施の形態5と同様に、複数設けられるとともに、良導体でそれぞれ構成されている。このため、高周波電流は、上述した実施の形態5と同様に、第1,第2電極10,11間において、第1電極10及びフローティング電極12E間、第2電極11及びフローティング電極12E間の他、各フローティング電極12E間に主に流れる。すなわち、各組織LT1の他、組織LT1Eについても、ジュール熱により処置される。また、組織LT2Eは、各組織LT1,LT1Eに発生したジュール熱からの熱伝導により処置される。すなわち、各組織LT1,LT1E,LT2Eは、処置が行われる処置対象組織LT0である。
【0054】
以上説明した本実施の形態6によれば、上述した実施の形態5と同様の効果の他、以下の効果を奏する。
本実施の形態6に係る処置具2Eでは、フローティング電極12Eは、長手方向に沿って並列するように、20個設けられている。このため、上述した実施の形態5と比較して、第1,第2電極10,11とフローティング電極12Eとの間隔を広げることが可能となり、電気的に安定な構造とすることができる。
また、長手方向の全長にフローティング電極12,12Cが設けられた上述した実施の形態1,4と比較して、フローティング電極12Eは、小さく分離されている。このため、フローティング電極12Eを上述した実施の形態2で説明した遅発性発熱体として使用する場合には、大きなフローティング電極12,12Cでは熱が逃げ易いが、それを避けることができる。
なお、上述した実施の形態1,3と比較して、第1,第2電極10,11間の合成抵抗は高くなるが、フローティング電極12Eの体積固有抵抗が小さい材料を使用することで調整が可能である。
【0055】
(実施の形態7)
次に、本発明の実施の形態7について説明する。
本実施の形態7の説明では、上述した実施の形態1,3と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
図16は、本実施の形態7に係る処置具2Fを構成する把持部7Fを示す図である。具体的に、
図16は、
図3及び
図13に対応した断面図である。
本実施の形態7に係る処置具2Fは、
図16に示すように、上述した実施の形態1で説明した処置具2(
図3)や上述した実施の形態4で説明した処置具2C(
図13)に対して、フローティング電極の数が異なる。具体的に、本実施の形態7に係る把持部7Fは、
図16に示すように、上述した実施の形態4で説明した第1,第2電極10,11及びフローティング電極12Cが設けられた第1ジョー8と、上述した実施の形態1で説明したフローティング電極12が設けられた第2ジョー9とを組み合わせた構成を有する。
【0056】
次に、第1,第2把持面81,91にて生体組織LTを把持した状態で第1,第2電極10,11の間に高周波電力を供給した場合での高周波電流の経路について
図16を参照して説明する。
以下では、第1,第2把持面81,91にて把持された生体組織LTにおいて、2つのフローティング電極12,12C間に位置する組織を組織LT1F(
図16)とする。
本実施の形態7では、フローティング電極12,12Cは、上述した実施の形態5と同様に、2つ設けられるとともに、良導体でそれぞれ構成されている。このため、高周波電流は、上述した実施の形態5と同様に、第1,第2電極10,11間において、第1,第2電極10,11とフローティング電極12Cとの間(経路PaF1)、第1,第2電極10,11とフローティング電極12との間(経路PaF2)の他、各フローティング電極12,12Cの間(経路PaF3)に主に流れる。すなわち、各組織LT1の他、組織LT1Fについても、ジュール熱により処置される。そして、各組織LT1,LT1Fは、処置が行われる処置対象組織LT0である。
【0057】
以上説明した本実施の形態7に係る処置具2Fによれば、上述した実施の形態5と同様の効果の他、以下の効果を奏する。
本実施の形態7に係る処置具2Fでは、第1把持面81にフローティング電極12Cが設けられ、第2把持面91にフローティング電極12が設けられている。このため、各組織LT1において、第1把持面81側には経路PaF1に沿って流れる高周波電流によりジュール熱が発生し、第2把持面91側には経路PaF2に沿って流れる高周波電流によりジュール熱が発生する。すなわち、各組織LT1をより均一に処置することができる。また、各組織LT1に挟まれる組織LT1Fについても、経路PaF3に沿って流れる高周波電流により発生するジュール熱で処置することができ、処置の進行を早めることができる。
【0058】
(その他の実施形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態1〜7によってのみ限定されるべきものではない。
上述した実施の形態1〜7では、第1ジョー8を第2ジョー9に対して上方側に配設した構成としていたが、これに限らず、第1ジョー8を第2ジョー9に対して下方側に配設した構成としても構わない。また、シャフト6の中心軸を中心としてハンドル5に対して当該シャフト6(把持部7(7A〜7F))を回転可能に構成しても構わない。
【0059】
上述した実施の形態1〜7では、第1,第2把持面81,91を平坦面で構成していたが、これに限らず、処置の性能向上を目的としてその他の形状としても構わない。例えば、第1,第2把持面81,91の一方を平坦形状とし、他方を凸形状とした構成、あるいは、第1,第2把持面81,91の一方を凸形状とし、他方を凹形状とした構成を採用しても構わない。また、例えば、処置として生体組織LTの切開を効果的に行うために、第1,第2把持面81,91の少なくとも一方において、当該切開位置に対応する部分が他方の把持面に近接する断面V字形状とした構成を採用しても構わない。
【0060】
上述した実施の形態1〜7では、高周波エネルギを付与するために、第1,第2電極10,11の2つの電極を設けていたが、電極の数は2つに限らず、3つ以上設けても構わない。
上述した実施の形態1〜7において、第1,第2電極10,11及びフローティング電極12(12A〜12E)の配設位置は、上述した実施の形態1〜7で説明した配設位置に限らない。閉状態で第1,第2把持面81,91が互いに対向する方向に沿って見た場合に、第1,第2電極10,11の間にフローティング電極12(12A〜12E)が配置されていれば、その他の配設位置を採用しても構わない。例えば、上述した実施の形態1〜7では、第1,第2電極10,11は、第1把持面81に設けられていた(同一の把持面に設けられていた)が、異なる把持面にそれぞれ設けた構成を採用しても構わない。
上述した実施の形態1〜7では、処置具2(2A〜2F)は、生体組織LTに対して高周波エネルギを付与して処置を行う構成としていたが、これに限らず、生体組織LTに対して、高周波エネルギの他、熱エネルギ、超音波エネルギ、及びレーザ等の光エネルギを付与して処置を行う構成を採用しても構わない。
【0061】
上述した実施の形態4〜7では、フローティング電極12C〜12Eを良導体で構成していたが、これに限らず、上述した実施の形態2で説明したフローティング電極12A及び実施の形態3で説明したフローティング電極12Bと同様に、導電性樹脂または不導体と薄膜抵抗パターンで構成し、遅発性発熱体とする構成としても構わない。