特許第6794466号(P6794466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794466
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】液体を蒸気に転化する装置
(51)【国際特許分類】
   F22B 27/16 20060101AFI20201119BHJP
   F22B 1/28 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   F22B27/16
   F22B1/28 Z
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-550717(P2018-550717)
(86)(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公表番号】特表2019-516055(P2019-516055A)
(43)【公表日】2019年6月13日
(86)【国際出願番号】FR2017050696
(87)【国際公開番号】WO2017178725
(87)【国際公開日】20171019
【審査請求日】2020年2月10日
(31)【優先権主張番号】1653237
(32)【優先日】2016年4月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・シャトルー
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・プランク
(72)【発明者】
【氏名】マガリ・レティエ
(72)【発明者】
【氏名】ギレム・ルー
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭40−021321(JP,Y1)
【文献】 特開昭58−128177(JP,A)
【文献】 実開昭55−145201(JP,U)
【文献】 実開昭55−025123(JP,U)
【文献】 米国特許第01679344(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 27/16
F22B 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定圧力で作動する液体(20)を蒸気(21)に転化する装置(10)であって、
−筐体(11)と、
−前記筐体(11)内に配置され、液体流路(20)を画定する下方傾斜を有する加熱面(12)と、
−液体入口(13)から導入された液体(20)が前記加熱面(12)の前記傾斜を流れるように、前記加熱面(12)の上部分に接続された液体入口ポート(13)と、
−前記筐体(11)の壁を貫通して形成された蒸気出口ポート(14)と
を含み、
前記加熱面(12)が、
−伝熱流体の流れが前記加熱面(12)を加熱することを可能にするように構成された伝熱管(16)と、
−前記伝熱管(16)のまわりに配置された半円形部分(17)と、前記筐体(11)上に開口(18)を形成する上部分(19)とを有するU字形の断面を含むコーナーピース(15)と
を含むことを特徴とする、液体を蒸気に転化する装置。
【請求項2】
前記コーナーピース(15)の前記半円形部分(17)の直径は、前記伝熱管(16)の直径に実質的に等しいことを特徴とする、請求項1に記載の液体を蒸気に転化する装置。
【請求項3】
前記コーナーピース(15)は、前記伝熱管(16)のまわりで曲げられることを特徴とする、請求項2に記載の液体を蒸気に転化する装置。
【請求項4】
前記加熱面(12)は螺旋を形成することを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の液体を蒸気に転化する装置。
【請求項5】
前記加熱面(12)は、1〜4%の範囲の傾斜を有することを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の液体を蒸気に転化する装置。
【請求項6】
前記コーナーピース(15)は、前記伝熱管(16)の一方の側に延びる少なくとも1つの溝を含むことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の液体を蒸気に転化する装置。
【請求項7】
前記コーナーピース(15)及び/又は前記伝熱管(16)は、液体に対して中性の材料、特にステンレス鋼で作られることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の液体を蒸気に転化する装置。
【請求項8】
前記筐体(11)は、断熱外側ジャケット(40)と温度制御内側ジャケット(41)とを備えることを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の液体を蒸気に転化する装置。
【請求項9】
前記伝熱管(16)は、伝熱流体を、前記コーナーピース(15)内の液体の方向とは反対の循環方向に循環させるように構成されることを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載の液体を蒸気に転化する装置。
【請求項10】
2つの部分:
−前記伝熱管(16)が前記コーナーピース(15)の前記半円形部分(17)に配置される上部分(30)と、
−前記コーナーピース(15)の前記半円形部分(17)に電気発熱抵抗器(32)が配置される下部分(31)と
を含むことを特徴とする、請求項1〜9の何れか1項に記載の液体を蒸気に転化する装置。
【請求項11】
−0〜10kg/hrの範囲の一定の液体流量を生成することができる液体流調整器と、
−前記液体流調整器に結合された入口ポートを有する、請求項1〜10の何れか1項に記載の液体を蒸気に転化する装置と、
−液体を加熱するために前記転化する装置の加熱面に十分なエネルギー量を供給することができるエネルギー源と
を含む、水発生器。
【請求項12】
前記伝熱管(16)の伝熱流体の入口ポート(23)のレベルに配置された、前記転化する装置の前記伝熱管(16)を加熱するための源(35)も含むことを特徴とする、請求項11に記載の蒸気発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発生器の分野に関し、特に、高温電気化学転化器(HTSE)に使用される蒸気発生器に関する。本発明は、より具体的には、低蒸気流量、特に10g/hr〜10kg/hrの範囲の蒸気流量を供給し、かつ一定圧力、特に大気圧又は数十bar下で作動することができる伝熱流体をエネルギーとして使用して液体を蒸気に転化する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高温水蒸気電解槽(HTSE)は、直列に電気的に接続され、かつそれぞれが2つの電極、すなわちカソード及びアノードから形成され、挿入された固体酸化物電解膜を有する電解セルのスタックに電流を印加することによって水蒸気から水素を発生させる電気化学装置である。一般に、水蒸気は、電気で駆動される各セルのカソードに導入され、水蒸気の電気化学的還元の反応により、カソード上に水素が形成される。
【0003】
一般に、電解槽の所定の動作点には、それに印加されるべき電流が存在し、電解槽に印加されるべき電流の強度に応じて、電解槽内に導入されるべき水蒸気の流量が計算される。電流強度は、一般に、電解槽の動作範囲の0〜100%の範囲内で変化し得るので、発生されるべき蒸気流もまた、その容量の0〜100%の範囲内で直線的に変化することができなければならず、また蒸気のみからなるべきである。さらに、電解槽は、電流/ガス流量の不均一性に対して非常に敏感な系であり、そのような不均一性は実際に電解槽の早期老化を引き起こす可能性がある。例えば、蒸気流量がその設定値付近で変動する場合、電解槽の動作点の不安定性が観察され得、結果としてセル電圧の変動が生じ、これが早期老化の原因となる。
【0004】
さらに、蒸気流量の強い変動は、数十又は数百mbarの圧力の変動をもたらし、これは、シールを損傷するか又は電気化学セルに亀裂を生じさえするのに十分であり得る。従って、可能な限り均一かつ規則的な蒸気流量が望ましい。
【0005】
高蒸気流量、すなわち数十kg/hrを発生させることができる、調整された流量を有する水蒸気発生器は、市販されている。このような水発生器は、一般に、要求された量の水蒸気を発生させるために蒸気流調整弁に結合された圧力下の蒸気貯蔵器から形成され、これは恒常的である。
【0006】
低流量範囲、特に約10g/hr〜10kg/hrの間に適合された水蒸気発生器もまた、市販されている。大流量用に使用される蒸気流調整弁はこの流量範囲に適合できないため、解決策は、蒸発後に生じた水蒸気が出口で所望される蒸気量に相当するように、発生器内に入る液体水の流量を調整することを含む。
【0007】
一実施形態によれば、そのような低流量発生器は、少なくとも加熱された下部を有する加熱管又は容積を使用し、ここで制御された量の水が注入され、蒸発するまで加熱される。しかしながら、このような発生器は蒸気の「パフ」を引き起こし、従って過圧を引き起こすことが観察され得る。出口での蒸気流量の規則性の制約を考慮すると、液体水の蒸発の原理はかなり複雑であるので、この解決策の難点は、液体の一部を熱すぎる領域に押しやって沸騰反応の暴走源となる水の局所的な沸騰を避けるために、水の加熱を制御することである。そのような現象の制御は特に困難であり、実際には、低流量蒸発器は一般に、乾燥蒸気、すなわち液相を有さない単一の流れを発生させるようにのみ構成され、電力及び蒸発表面積は、単一の動作点に対してのみ検討されている。
【0008】
別の実施形態によれば、低流量範囲に適合された他の蒸発器は、液体の拡散を容易にして発生した蒸気を排出することを可能にするキャリアガス、例えば窒素を使用する。しかしながら、このような解決策は、乾燥蒸気を発生させることはできるが、なぜなら、蒸気をキャリアガスから分離することは不可能であるからである。
【0009】
さらに、特許文献1は、円錐の形状をとる加熱面を覆う筐体(enclosure)を含む蒸気発生器を記載している。円錐には、円錐のまわりに重力によって液体を導くための螺旋状の溝が設けられている。加熱面は電気抵抗によって加熱され、溝内を流れる液体を蒸発させることができる。このようにして発生させた蒸気は、蒸気出口によって筐体から抽出される。
【0010】
しかしながら、このような蒸気発生器は、蒸気パフが溝内に形成される、すなわち100mbarを超える可能性がある蒸気過圧のため、規則的な蒸気発生を提供することができない。実際、加熱面は、300〜350℃の間で均一に加熱されている。液体入口ポートから導入された水滴は通常、加熱面との接触の後、10秒に近い時間にわたって蒸発する。その後、水滴は、以前の水滴によって生成された蒸気床上を摺動する。しかしながら、特定のより重い水滴は、蒸気床を横切ることによって加熱面に到達し、局所過圧を生成することによって瞬時に蒸発する。
【0011】
本発明の技術的課題は、キャリアガスの使用を必要とせずに、一定圧力で小さな蒸気流量の液体の一定の蒸気流を発生させることができる蒸気発生器を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第97/33479号(WO97/33479)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、その中に配置された伝熱管を有する液体循環コーナーピースを一体化した加熱面を使用することによるこの技術的問題の対処を提供する。従って、液体は加熱面の上部分で伝熱管を完全に覆う。それによって、本発明は、蒸気床上を摺動する水滴の現象を制限することを可能にし、液体の連続的な蒸発が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1態様によれば、本発明は、一定圧力で作動する液体を蒸気に転化する装置であって、
−筐体と、
−前記筐体内に配置され、液体流路を画定する下方傾斜を有する加熱面と、
−液体入口ポートから導入された液体が前記加熱面の前記傾斜を流れるように、前記加熱面の上部分に接続された液体入口ポートと、
−前記筐体の壁を貫通して形成された蒸気出口ポートと
を含む装置に関する。
【0015】
本発明は、前記加熱面が、
−伝熱流体の流れが前記加熱面を加熱することを可能にするように構成された伝熱管と、
−前記伝熱管のまわりに配置された半円形部分と、前記筐体上に開口を形成する上部分とを有するU字形の断面を含むコーナーピースと
を含むことを特徴とする。
【0016】
従って、本発明は、液体入口ポートを介して導入されて伝熱管のまわりのコーナーピース内に含まれる液体の蒸発を達成することを可能にする。この目的のために、液体は、伝熱管によって加熱され、その後、コーナーピースの開口を通して蒸気の形態で抽出される。
【0017】
伝熱管に加えられる線形熱力は、加熱面の長さと、時間とともに注入される全ての液体を蒸発させるのに必要な熱力とに応じて選択される。
【0018】
換言すると、本発明の実施は、3つのパラメータを調整することを必要とする:
−特に重力による液体の流れを保証する加熱面の傾斜。例えば、液体が、加熱による蒸発のために貯蔵されるタンクに向かう場合、生じる蒸気の量を正確に制御することは困難であることが理解されよう。流れのために、注入された液体の各容積は、「個別に」制御された様式で多量の熱を受け取る。従って、注入される液体の量に応じた発生する蒸気の量の制御が緩和される;
−伝熱管を通って流れる伝熱流体による液体の加熱力;及び
−移動の終了前に注入された液体1モルの完全な蒸発を得るための加熱面の長さ。
【0019】
従って、このような装置は、10g/hr〜10kg/hrの範囲の乾燥蒸気の一定流量を供給することができ、これは、例えば、キャリアガス又は蒸気流制御弁などの電気機械要素の何れも使用しない。この発生器に金属製のコーナーピースを使用することにより、曲げ加工による簡単な実施によって、材料コスト及び製造コストを低減することができる。
【0020】
例えば、10g/hr〜10kg/hrの範囲の蒸気流量に対して、最大印加熱力は8〜12kWの範囲であり得、移動の長さは10〜20メートルの範囲であり得る。実際には、300g/hrよりも小さい流量に対して、液体は好ましくは、滴下して注入される。例えば、10g/hr程度の流量は、13秒毎に36μlの約1滴の液体に相当する。
【0021】
一実施形態によれば、コーナーピースの前記半円形部分の直径は、伝熱管の直径に実質的に等しい。このような実施形態は、液体がコーナーピースの開口の反対側の伝熱管の上部分とのみ接触することを可能にし、それにより、蒸気パフのリスクを制限する。
【0022】
一実施形態によれば、コーナーピースは、伝熱管のまわりで曲げられる。本実施形態は、コーナーピースの半円形部分と伝熱管との間の空間を制限することを可能にする。
【0023】
一実施形態によれば、加熱面は螺旋を形成する。本実施形態は、加熱面の容積を制限し、従って、液体を蒸気に転化する装置の容積を制限することを可能にする。さらに、螺旋曲げ操作は、一方では、装置のコンパクト性を保証し、他方では、他の嵌合又は溶接作業なしに金属管をコーナーピースの後部に維持することを可能にする。
【0024】
一実施形態によれば、加熱面は、1〜4%の範囲の傾斜を有する。本実施形態は、液体の流速と蒸発速度との間の効率的なトレードオフを得ることを可能にし、液体の蒸発を実施するのに必要な加熱領域の長さを制限する。
【0025】
一実施形態によれば、コーナーピースは、伝熱管の一方の側に延びる少なくとも1つの溝を含む。本実施形態は、液体入口ポートを介して導入された液体を吸引するための毛管流路を形成することを可能にする。
【0026】
毛管現象による流れと結合された重力による流れは、特に、全移動にわたる加熱面の長い長さに沿って、低流量、特に滴下で入口ポートに注入された液体の均一な拡散をもたらす。こうして連続的な水フィラメントが形成される。加熱面上の液滴列の形成が回避されるので、不連続な水の注入の場合であっても、蒸気発生はより規則的であり、出口ポートにおける蒸気流量は一定である。
【0027】
このような解決策は、液体の非線形注入、特に滴下から規則的な蒸気流量を生成することを可能にする。勿論、液体入口はまた、溝の中への液体の毛管現象による直接注入を可能にし、液体水注入管の端部に液滴が形成されるのを回避するようなサイズであってもよい。一実施形態によれば、液体水注入管の端部はこの場合、溝に接触して配置される。
【0028】
一実施形態によれば、コーナーピース及び/又は伝熱管は、液体に対して中性の材料、特にステンレス鋼で作られる。このような実施形態は、腐食に抵抗するのに特に効率的である。
【0029】
一実施形態によれば、筐体は、断熱(insulating)外側ジャケットと温度制御内側ジャケットとを備える。本実施形態は、筐体の内壁上での凝縮物を回避することを可能にする。好ましくは、内側ジャケットは、大気圧から数十barの範囲の蒸気発生器の設計上規定された最大圧力まで動作するように、サイズ調整され修正される。
【0030】
大気圧で0〜5kg/hrの生産流量に適合する実施形態によれば、内側ジャケットは、厚さ2ミリメートルの鋼板において、470ミリメートルの高さに対して220ミリメートルの直径を有する。コーナーピース及び伝熱管は、10メートルの線形長さを有し、200ミリメートルの直径及び400ミリメートルの高さに従って曲げられる。蒸気が存在する容積は約12リットルである。
【0031】
一実施形態によれば、伝熱管は、伝熱流体を、コーナーピース内の液体の方向とは反対の循環方向に循環させるように構成される。本実施形態は、装置の上部よりも下部においてより多くの熱量を有する伝熱管を得ることを可能にする。その結果、100℃に近い温度を有する伝熱管に液体が導入され、蒸発が遅くなる。液体がコーナーピース内を流れ落ちると、伝熱管の温度並びに蒸発速度が上昇する。
【0032】
さらに、記載された装置は乾燥蒸気を発生させることを可能にするが、混合物にするために必要に応じて1つ又は複数のガスを導入することも可能である。
【0033】
この場合、蒸気への導入の前にガスの予熱が必要である。このような予熱は、例えば、ガスラインを発生器の筐体と接触させて螺旋状に巻くことを含む簡単な技術によって得ることができる。
【0034】
伝熱流体のエネルギーが必要量の蒸気を発生させるのに十分ではない特定の場合には、電力の形で補完を加えることが可能である。
【0035】
このような入力は、蒸気発生器への注入前の流体の追加の加熱であってもよい。従って、蒸気発生器に入る前に伝熱管に発熱抵抗器を加えることができ、伝熱流体の熱量が入口ポートで導入される液体を蒸発させるのに必要なエネルギー量よりも多くなることを常に保証するのに必要な温度に調整される。
【0036】
一実施形態によれば、装置は2つの部分:
−伝熱管がコーナーピースの半円形部分に配置される上部分と、
−コーナーピースの半円形部分に電気発熱抵抗器が配置される下部分と
を含む。
【0037】
従って、蒸発されるべき流量が十分に低い場合、伝熱流体によって提供されるエネルギーによって第1領域においてのみ蒸発される。流量が第1領域の蒸発能力を超える場合、それは第2領域上に到達して予熱され、電力が蒸発を達成するのに必要な入力を完了する。さらに、伝熱流体は非常に低い温度で出て、伝熱流体の熱エネルギーの大部分は使用されている。
【0038】
第2態様によれば、本発明は、蒸気発生器であって、
−0〜10kg/hrの範囲の一定の液体流量を発生させることができる液体流調整器と、
−前記液体流調整器に結合された入口ポートを有する、本発明の第1実施形態による液体を蒸気に転化する装置と、
−液体を加熱するために加熱面に十分なエネルギー量を供給することができるエネルギー源と、
を含む蒸気発生器に関する。
【0039】
本発明は、添付の図面と関連してのみ例示された以下の説明を読むことによって、より良く理解されるだろう。添付の図面において、同じ符号は、同一又は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の第1実施形態による液体を蒸気に転化する装置の簡単な図である。
図2a】曲げる前の図1の加熱面の断面の簡単な図である。
図2b】曲げた後の図1の加熱面の断面の簡単な図である。
図3】本発明の第2実施形態による液体を蒸気に転化する装置の簡単な図である。
図4】本発明の第3実施形態による液体を蒸気に転化する装置の簡単な図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下の説明において、表現「実質的に」は、±10%の許容差を意味する。
【0042】
図1に示す特定の実施形態による液体20、特に水を蒸気21に転化する装置10の構造を、以下に説明する。
【0043】
転化装置は、特に、蒸気出口ポート14と、従来の水流調整器(図示せず)に結合されるよう意図された液体入口ポート13とを備えた筐体11で形成されている。液体水流調整器は、例えば、熱質量流又はコリオリ調整器のような市販されている調整器であってもよい。
【0044】
筐体11は、断熱外側ジャケット40及び内側ジャケット41から形成され、内側ジャケット41は、筐体11内で発生した蒸気を保持し、それを使用できるように蒸気出口ポート14上に流出させることを可能にする。内側ジャケット41は、好ましくは、金属材料で作られている。内側ジャケット41は、筐体11の内壁での凝縮物の出現を回避するために、十分な温度、例えば200℃に維持されるように加熱される。内側ジャケット41はまた、蒸気発生器の最大作動圧力に耐える機能を有する。例えば、大気圧において生産流量が0〜5kg/hrである場合、内側ジャケット41は、厚さ2ミリメートルの鋼板において、470ミリメートルの高さに対して220ミリメートルの直径を有する。
【0045】
筐体11の内部容積は蒸気出口ポート14を介して外部と接続され、筐体11の内部圧力は外部圧力によって設定される。例えば、蒸気出口ポート14は、筐体11の内圧が大気圧に等しく、従って実質的に一定であるように、大気圧で作動する電解槽の入口に直接接続される。勿論、筐体11の内圧を設定する外圧は、異なってもよく、特に大きくてもよい。同様に、筐体11の内圧を直接調整して実質的に一定の圧力を得るために、圧力調整器を設けてもよい。
【0046】
コンパクト性の理由で螺旋状の開口した加熱面12が、筐体11に配置される。加熱面12は、半円形部分17と、筐体11上に開口18を形成する上部分19とを有するU字形の断面を有するコーナーピース15によって形成されている。好ましくは、コーナーピース15はステンレス鋼製であり、筐体11の支持ベース上に置かれる。特に、支持ベースは水平であり、すなわち重力方向に対して実質的に垂直である。
【0047】
加熱面12は、液体入口ポート13からの液体水20の重力による流れを許容する、例えば1〜4%の下方傾斜を有する。
【0048】
さらに、伝熱管16が、コーナーピース15の半円形部分17に配置されている。伝熱管16は、コーナーピース15の後部に最も近く配置されるように、コーナーピース15の半円形断面17に適合した円形断面を有する。伝熱管16はさらに、コーナーピース15を通って流れる液体20を加熱して、それをその蒸発温度にすることを意図している。実際には、熱エネルギーを蒸発されるべき液体に効率的に伝達するために、伝熱管16と液体20との接触表面積は大きくなければならない。8ミリメートルの直径を有する10メートルの長さの伝熱管16を含む実施形態によれば、接触表面積は12dmと推定される。
【0049】
より具体的には、図2a及び図2bに示すように、コーナーピース15は、伝熱管16のまわりで曲げられる。この目的のために、伝熱管16は、図2aに示すように、コーナーピース15の後部に挿入される。図2bに示すように、コーナーピース15の上部分19は、曲げ操作の間、方向d1及びd2に沿って狭くなるので、伝熱管16はコーナーピース15の半円形部分17に閉じ込められる。
【0050】
変形例として、コーナーピース15の下部分17は、毛管現象による液体20の流れを可能にする溝を含むことができる。毛管現象による流れは、低い液体流量20の場合、特に液体20が滴下注入される場合に特に有利である。毛管現象による流れは、実際に、液滴列を形成せずに加熱面12上で蒸発されるべき液体20を均一に拡散させることを可能にし、出力における蒸気流量の規則性を保証する。
【0051】
例えば、液体入口ポート13は、コーナーピース15及び伝熱管16と接触して配置され、液滴を形成することなくコーナーピース15への液体20の毛管現象による吸入を認めるようにサイズ調整されたステンレス鋼管であってもよい。
【0052】
勿論、液体20の注入の種類、滴下か連続的かに応じて、及び導入される液体流量に応じて、溝なしで装置を形成することが可能である。この場合、液体20は重力によってのみ流れる。
【0053】
変形例として、伝熱管16は、本発明を変更することなく他の形状をとってもよい。
【0054】
図3に示す本発明の別の変形例によれば、伝熱管16は、筐体11に入る前に電気加熱源35によって加熱される。相補加熱源35は、伝熱管16を取り囲む抵抗器の形態をとってもよい。
【0055】
図4に示す本発明の別の変形例によれば、加熱面12は2つの異なる加熱手段を含む。加熱面12の上部分30は、伝熱管16によって加熱され、加熱面12の下部分31は、発熱抵抗器32によって加熱される。これを達成するために、下部分31において、コーナーピース15の後部は、その中に挿入された発熱抵抗器32を有する溝を含む。この溝は、発熱抵抗器32のカシメ(caulking)による挿入と、コーナーピース15内の液体の毛管現象による流れとを可能にするように、開いており、サイズ調整されている。例えば、3.5ミリメートルの直径及び0〜5l/hrの範囲の流量を有する加熱面において、コーナーピース15は、17ミリメートルの幅に対して8.5ミリメートルの高さを有し、溝は、3.5ミリメートルの高さ及び幅を有し、ワイヤ状の電気抵抗器32のカシメを可能にする。
【0056】
発熱抵抗器32はさらに、コーナーピース15に沿って下降する間に水が蒸発するまで加熱するのに必要なエネルギーを供給するように調整された電圧源に結合される。
【0057】
発生した蒸気21はそして、流れを乱すことなく、コーナーピース15の開口18を介して周辺部に排出され、加熱動作の規則性を保証する。
【0058】
沸騰を伴って又は伴わずにコーナーピース15内に導入された全ての液体20の効果的な蒸発を確実にするために、液体20を均一に加熱することが必要である。実際には、伝熱管16の温度は、移動の終了前の全蒸発までのコーナーピース15内の所与の量の水の好ましくは規則的な温度上昇を確実にするように較正される。
【0059】
伝熱管16を流れる伝熱流体のエネルギーパワーは、コーナーピース15に沿って水を全て分配し、最小エネルギー消費で非常に安定した蒸気発生を有するように、導入される水の量に応じて最適化され得る。このような最適化は、熱損失を考慮しながら、水の加熱に、次いでその蒸発のために必要なエネルギーを計算することによって行うことができる。
【0060】
実際には、コーナーピース15内に注入される液体20の最大流量は、例えば10kg/hrと規定される。このような最大流量は、蒸発されるべき液体20の最大量を、ここでは10kgと規定する。この最大量の液体20を蒸発させるのに必要な総熱力は、勿論、液体20の初期温度及び加熱が行われる圧力を考慮して計算される。例えば、大気圧で液体水を20℃から150℃の過熱蒸気状態にするための総熱力を計算することができる。このような計算は、例えば以下の数1の関係に従って行われる。
【0061】
【数1】
【0062】
ここで、
−P:必要最小限の熱力[W];
−m(点付き):水の質量流量[2.77.10−3kg/s];
−Cp:20℃〜100℃の間の水の平均比熱[4,195J/(kg.K)];
−Cp:100℃〜150℃の間の蒸気の平均比熱[2,030J/(kg.K)];
−L:水の蒸発の潜熱[2.258.10J/(kg.K)]。
【0063】
一実施形態によれば、伝熱管16を流れる伝熱流体のエネルギーパワーは、好ましくは、蒸発指示の変化の間により良好な反応性を有するために、少なくとも30%の追加の加熱能力を有して選択される。開示された10kg/hrの蒸気生成流量の場合、面12を加熱するために推奨されるパワーは、(1.3.P)=9,732Wであり、10kWに切り上げられる。
【0064】
加熱面12の長さは、液体水への線形伝熱の効率限界内、好ましくは0.5〜1kW/mの範囲内で線形熱力を制限するように計算される。開示された10kg/hrの蒸気生成流量、すなわち10kWの総力の場合、面12を加熱するために推奨される長さは従って、10〜20mの範囲である。
【0065】
換言すれば、線形熱力を計算する方法は、特に、
−注入されるべき液体20の最大流量を規定するステップであって、このような最大流量は蒸発されるべき液体の最大量を提供する、ステップと、
−この最大量の液体を蒸発させる、すなわち、その量の液体の温度を初期温度から少なくともその蒸発温度に上昇させ、実際の蒸発を達成し、発生した蒸気を過熱するために必要な総熱力を計算するステップと、
−移動の最大長さに等しい移動長に対して生成されるべき線形熱力を計算するステップと、
を含む。
【0066】
例えば、ある量の液体20を蒸発させるのに必要な最小総加熱パワーPは、特に、この量の液体をその沸騰温度まで加熱するのに必要なエネルギーPと、実際の蒸発を行うためのエネルギーPと、発生した蒸気を過熱するためのエネルギーPとの合計によって得ることができる:
P=P+P+P
【0067】
特に、液体の所定の流量を初期温度から最終温度、例えばその蒸発温度にするのに必要なパワーの計算は、例えば、以下の数2の関係によって提供される。
【0068】
【数2】
【0069】
ここで、
−P:ワットでのパワー[W];
−m(点付き):加熱されるべき液体の流量[kg/s];
−Cp:液体の一定圧力での質量熱容量[J/(kg.K)];
−ΔT:達成されるべき最終温度と初期温度との温度差[K]。
【0070】
所定の液体流量を蒸発させるのに必要なパワーの計算は、例えば、以下の数3の関係によって与えられる。
【0071】
【数3】
【0072】
ここで、
−P:ワットでのパワー[W];
−m(点付き):加熱されるべき液体の流量[kg/s];
−L:液体の一定圧力での蒸発の質量潜熱[J/kg]。
【0073】
液体の所定の流量を初期温度から最終温度、例えば蒸発温度よりも50℃大きい温度まで過熱するのに必要なパワーの計算は、例えば、以下の数4の関係によって提供される。
【0074】
【数4】
【0075】
ここで、
−P:ワットでのパワー[W];
−m(点付き):再加熱されるべき蒸気の流量[kg/s];
−Cp:蒸気の一定圧力での質量熱容量[J/(kg.K)];
−ΔT:達成されるべき最終温度と初期温度との温度差[K]。
【0076】
勿論、この関係は、可能な熱損失を考慮して、好ましくは総パワーに30%の最小マージンを加えて重み付けすることができる。
【0077】
従って、蒸発されるべき水20は、液体入口ポート13を介してコーナーピース15内に導入され、重力及び/又は毛管現象によりコーナーピース15に流入する。水20は、蒸発するまでその降下中に加熱される。蒸気21は、流れを乱すことなくコーナーピース15の開口18を通って排出され、動作の規則性が保証される。
【0078】
変形例によれば、伝熱管16を流れる伝熱流体のエネルギーパワーの調整を提供することが可能である。例えば、温度センサを電圧調整器に結合することが可能である。温度センサ、例えば熱電対は、伝熱流体の出口ポート24のレベルで伝熱管16を流れる伝熱流体の温度を測定する。次いで、伝熱流体16の入口ポート23における伝熱流体の温度が、この測定された温度及び水を蒸発させるのに必要な熱力に対応する基準温度に応じて調整される。実際には、温度、水流量、及び供給される伝熱流体の温度の間の対応関係を与える表又は図が利用可能である。
【0079】
好ましくは、伝熱流体は、コーナーピース15における液体流20とは反対の方向で、伝熱管16を流れる。
【0080】
従って、本発明によって提供される蒸発器は、小さい蒸気流量、好ましくは10g/hr〜10kg/hrの範囲の流量で発生するように適合され、キャリアガスの使用を必要としない。
【0081】
特に、提供される蒸発器は、一定圧力での乾燥蒸気の生成を可能にし、出口ポートで所望される蒸気流量は、入口ポートで液体流量を制御することによって簡単に得られる。特に、液体の滴下注入と、規則的な蒸気流量の生成とを組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 水を蒸気に転化する装置
11 筐体
12 加熱面
13 液体入口ポート
14 蒸気出口ポート
15 コーナーピース
16 伝熱管
17 半円形部分、下部分
18 開口
19 上部分
20 液体
21 蒸気
23 伝熱流体の入口ポート
24 伝熱流体の出口ポート
30 加熱面12の上部分
31 加熱面12の下部分
32 発熱抵抗器
35 電気加熱源
40 断熱外側ジャケット
41 温度制御内側ジャケット
図1
図2a
図2b
図3
図4