(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794481
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】散布トレイ、三流体熱交換器、及び湿式調湿装置
(51)【国際特許分類】
F24F 3/14 20060101AFI20201119BHJP
F28C 1/02 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
F24F3/14
F28C1/02
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-20900(P2019-20900)
(22)【出願日】2019年2月7日
(62)【分割の表示】特願2017-74283(P2017-74283)の分割
【原出願日】2017年4月4日
(65)【公開番号】特開2019-90603(P2019-90603A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2020年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】504430008
【氏名又は名称】ダイナエアー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(72)【発明者】
【氏名】原田 政利
【審査官】
町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−236477(JP,A)
【文献】
特開平10−244290(JP,A)
【文献】
実開昭62−020615(JP,U)
【文献】
特許第6046294(JP,B1)
【文献】
特開2002−250543(JP,A)
【文献】
特開昭54−039379(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0261440(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/14
F28C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
散布対象の上方に設けられ、底面に複数の孔が形成されて、前記複数の孔から前記散布対象に液体を供給する散布トレイであって、
前記底面の上に、毛細管作用によって前記底面方向に前記液体を拡散させる拡散部材を有し、
前記拡散部材は、多層構造の不織布からなり、最下層に孔が形成されており、
前記散布トレイの前記孔と前記拡散部材の前記孔とは互いに重なる部分を有し、
前記拡散部材は、前記最下層より上層に最も目の細かいフィルタ構造を有する、散布トレイ。
【請求項2】
内部に熱源流体を流通させる、前記散布対象としての伝熱部材と、
請求項1に記載の散布トレイと、
気液接触手段と、
を備え、前記伝熱部材の外側に空気が供給されて、前記熱源流体と前記液体と前記空気の三流体の間で熱交換を行う三流体熱交換器。
【請求項3】
請求項2に記載の三流体熱交換器を備えた湿式調湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散布対象に液体を供給する散布トレイ、当該散布トレイを備えた三流体熱交換器、及び当該三流体熱交換器を備えた湿式調湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱源流体を内部に流通させる伝熱管の外側に対象流体を滴下して伝熱管の表面を流すことで熱媒流体と対象液体との間で熱交換を行う熱交換器が、冷凍機、空調装置等で採用されている。例えば、本出願人は、湿式調湿装置に用いる熱交換器として、伝熱管と充填材とを上下方向に繰り返し配置し、そこで空気と吸湿性液体とを接触させる熱交換器を提案している(特願2016−081871号)。この熱交換器は、熱媒流体と吸湿性液体と空気の三流体が熱交換を行う三流体熱交換器である。
【0003】
この三流体熱交換器では、対象液体である吸湿性液体が伝熱管の外表面を流れ、伝熱管の内部を流れる熱源流体と熱交換を行うことで、吸湿性液体が冷却又は加熱され、その下段の充填材で十分に空気と気液接触し、さらにその下段の伝熱管の外表面を流れることで再び冷却又は加熱され、これを繰り返すことで、水分吸収能力や水分放出能力が回復し、より効率的な水分授受ができる。
【0004】
このような伝熱管では、対象液体が十分に伝熱管の外表面に広がること(濡れ面積が広いこと)が熱交換効率の点で有利である。伝熱管の外表面において、対象液体が流れない個所があれば、その分だけ熱源流体と対象液体である吸湿性液体との熱交換率が低くなってしまう。
【0005】
伝熱管の外表面の濡れ面積を広くするための工夫として、特許文献1の吸収式冷温水機では、伝熱管の上方に、伝熱管に対象液体を均等に供給するためのトレイを設けている。トレイには、底面に複数の孔が形成されており、トレイで受けた吸収液は、孔から下方へと均一に排出(滴下)される。
【0006】
また、特許文献2に記載の吸収式冷凍機の液散布装置では、伝熱板の上方に、底部に複数の液供給口を穿孔した液溜部を設け、その液溜部の直下に、毛細管作用の大きな繊維状金属材を用いた液拡散バーを設けて、液拡散バーで液を拡散した後にその下の伝熱板に供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−236477号公報
【特許文献2】特開平10−2633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のトレイないし液溜部では、底面に形成された複数の孔から均一に対象液体を滴下するために、トレイないし液溜部において一定以上の高さの液位を確保する、すなわち液ヘッドを立てる(液溜まりが形成されて液面が底面から離れて形成されている)ことが必要になる。液ヘッドを立てることで底面全体に均一に水圧がかかって各孔から等量の対象液体が排出されるからである。しかしながら、液ヘッドを立てるために、トレイないし液溜部にはそれに応じた高さが必要となって、省スペースが困難になるという問題がある。特に、上記の三流体熱交換器のように複数段のトレイを上下方向に重なる場合には、上下方向のスペースの問題は顕著になる。
【0009】
また、上記の特許文献1のトレイ及び特許文献2の液溜部では、使用する過程においてそれらの底面に形成された孔がごみ、析出物等によって詰まってしまうという問題がある。この現象は特に、下方に設けた伝熱部材に、複数の孔によって均一かつ密に菅外流体を供給しようとする場合に顕著になる。これは、伝熱部材を管外流体によってより均等に濡らすためには、孔の数が多いほうが有利であるが、散布液量を不変とすると一定の液ヘッドを維持するためには、管外流体の液量と孔の面積の合計の関係で液ヘッドの高さが概ね決まることから(トリチェリの定理)、孔の面積の合計を合わせるために増えた孔の分だけ各孔の径を小さくする必要があるためである。
【0010】
本発明の目的は、散布対象の上方に散布トレイを設けて散布トレイの底面の孔から散布対象に液体を散布する際に、液ヘッドを立てることによる散布トレイ底面にかかる圧力の均等化の効果によることなく各孔から均等に液体を散布させることによって、液ヘッドを確保するためのスペースを無くすことである。本発明の他の目的は、散布トレイの孔の目詰まりを軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様の散布トレイは、散布対象の上方に設けられ、底面に複数の孔が形成されて、前記複数の孔から前記散布対象に液体を供給する散布トレイであって、前記底面の上に、毛細管作用によって前記底面方向に前記液体を拡散させる拡散部材を有し、前記複数の孔は、前記底面の上で、前記拡散部材によって連通している構成を有している。なお、前記拡散部材は、前記散布トレイ内に敷かれる、例えば不織布等のシート状の部材であってよい。
【0012】
この構成により、散布トレイに供給された液体は、拡散部材によって底面方向に分散されるとともに、複数の孔が拡散部材によって連通しているので、液ヘッドを立てなくても各孔から下方の散布対象に供給される液の量が均一化される。また、液体が孔から排出される前に拡散部材を通過するので、この拡散部材がフィルタとして機能して、ごみ等による孔の目詰まりを軽減できる。
【0013】
前記拡散部材は、多層構造であってよく、最下層より上層に最も目の細かいフィルタ構造を有する層を有してよい。
【0014】
散布トレイに供給された液体は、底面の複数の孔から下方に排出されるので、拡散部材の底部(散布トレイの底面付近)では、孔に向かう底面方向の流れが生じることになる。したがって、拡散部材のフィルタ構造が上部で粗く底部で細かいと、拡散部材の上部で捕捉できなかったごみが底部の孔付近で集中して補足されることになり、液体の孔への流通が妨げられることになる。一方で、拡散部材の最下層より上の層で十分に細かいごみ補足しておけば、その層のいずれかの場所で仮に目詰まりが生じたとしても、液体は拡散部材を下方に流れていくうちに底面方向に拡散され、最下層(散布トレイの底面付近)では十分な拡散効果が得られる。上記の構成では、最下層よりも上の層で細かいごみまで補足するので、拡散部材の底部の孔付近での目詰まりが軽減され、複数の孔においてより均一に液体を供給できる。
【0015】
前記拡散部材は、多層構造であってよく、最下層の前記孔に対応する位置に孔が形成されていてよい。
【0016】
この構成により、最下層は拡散層として機能するとともに、孔の位置において目詰まりが生じることを回避できる。
【0017】
前記拡散部材には孔が形成されていてよく、前記底面に形成された孔は、前記拡散部材の孔に重なる部分と前記拡散部材に重なる部分とを有していてよい。
【0018】
この構成により、底面の孔の周辺部分において液体がはじかれることなく、底面の孔に掛かっている拡散部材の孔の縁部からスムーズに底面の孔に液体が導入されて、底面の孔から滴下される。
【0019】
本発明の他の態様は、内部に熱源流体を流通させる、前記散布対象としての伝熱部材と、上記の散布トレイとを備えた三流体熱交換器であって、前記伝熱部材の外側に空気が供給されて、前記熱源流体と前記液体と前記空気の三流体の間で熱交換を行う構成を有している。
【0020】
この構成によっても、散布トレイに供給された液体は、拡散部材によって底面方向に分散されるとともに、複数の孔が拡散部材によって連通しているので、各孔から下方の伝熱部材に供給される液の量が均一化されるとともに、孔が形成された底面の上に拡散部材があるので、この拡散部材がフィルタとして機能して、ごみ等による孔の目詰まりを軽減できる。
【0021】
本発明のさらに他の態様は、上記の三流体熱交換器を備えた湿式調湿装置である。
【0022】
この構成によっても、散布トレイに供給された液体は、拡散部材によって底面方向に分散されるとともに、複数の孔が拡散部材によって連通しているので、各孔から下方の伝熱部材に供給される液の量が均一化されるとともに、孔が形成された底面の上に拡散部材があるので、この拡散部材がフィルタとして機能して、ごみ等による孔の目詰まりを軽減できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、散布トレイにおいて液ヘッドを立てなくても各孔から下方の散布対象に供給される液の量が均一化されることから液位を確保するためのスペースが不要となるとともに、拡散部材がフィルタとして機能して、ごみ、析出物等による孔の目詰まりを軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態の散布トレイを含む三流体熱交換器を備えた湿式調湿装置の断面図
【
図2】本発明の実施の形態の散布トレイの部分拡大断面図
【
図3】本発明の実施の形態の変形例の散布トレイの部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0026】
図1は、本実施の形態の散布トレイを含む三流体熱交換器を備えた湿式調湿装置の断面図である。湿式調湿装置100は、吸気口102と排気口103とを有する筐体101を備えている。排気口103は、排気用のファン104を有しており、筐体101内の空気を強制的に排気するとともに、吸気口102を通じて調湿対象空間からの戻り空気あるいは外気などの処理対象空気を筐体101内に取り込む。排気口103はダクト等を通じて調湿対象空間と接続されており、除湿された空気は排気口103から調湿対象空間に排出される。
【0027】
筐体101内には、分配管105、伝熱管106、気液接触手段を構成する複数の充填材107、各充填材107の下方であって各伝熱管106の上方に配置される散布トレイ108、及び溶液槽109を有する。複数の伝熱管106と、複数の充填材107と、複数の散布トレイ108は、三流体熱交換器110としてユニット化されている。分配管105は、三流体熱交換器110の上方に配置された管であり、その下面には、熱交換の対象液体である吸湿性液体を下方に滴下する複数の分配口が管軸方向に沿って形成されている。
【0028】
分配管105は、これらの分配口から吸湿性液体を滴下して、三流体熱交換器110の上部に吸湿性液体を供給する。三流体熱交換器110に供給された吸湿性液体は、重力による自然流下によって三流体熱交換器110内を上段から下段に向かって順次流れ、溶液槽109に落下する。ここで、自然流下とは、吸湿性液体に働く重力、表面張力等によって吸湿性液体を流すことをいい、吸湿性液体が三流体熱交換器110に供給された後はそれを流すためのポンプ等の動力源を必要としないことを意味する。溶液槽109は三流体熱交換器110を通過して落下してきた吸湿性液体を受けて一時的に保持する。
【0029】
伝熱管106は断面が円形の菅であって、内部には熱媒流体としての冷媒が流通する。冷媒は、三流体熱交換器110の下方から伝熱管106に流入し、三流体熱交換器110の上方から伝熱管106を通して排出される。なお、冷媒を三流体熱交換器110の上方から伝熱管106に導入して、三流体熱交換器110の下方から伝熱管106を通して排出するようにしてもよい。
【0030】
伝熱管106は、各段において、
図1の左右方向(水平方向)に延びる直線部分の終端が、水平面内でU字またはコの字に折り曲げられることで、複数の直線部分が水平方向に間隔をあけて配置されており、また、各直線部分は充填材107を挟んで上下方向に間隔をあけて配置されており、
図1の左右端では終端が垂直方向にU字またはコの字に折り曲げられて上の段につながることで、全体として分岐せずに蛇行して延びる1本の管として構成されている。なお、伝熱管106を一本の管ではなく、複数系統にしてもよく、途中で分岐する構成にしてもよい。
【0031】
図1の矢印は空気の流れを示している。吸気口102から筐体101内に取り込まれた処理対象空気は、筐体101内を下方から上方に向かって流れて、三流体熱交換器110を通って排気口103から調湿対象空間に排出される。上述のように、吸湿性液体は三流体熱交換器110内を上方から下方に流れるのに対して、処理対象空気は三流体熱交換器110の下方から流入して上方から排出されるので、吸湿性液体と処理対象空気とは、上下方向に対向して流れることになる。
【0032】
吸気口102及び排気口103を有する筐体101と排気用のファン104とで、処理対象空気を取り込んで三流体熱交換器110の内部を通過させて調湿対象空間に排出する空気流動手段が構成される。また、分配管105は、吸湿性液体を三流体熱交換器110の上部に供給する供給手段に相当する。
【0033】
このように、三流体熱交換器110には、吸湿性液体、冷媒(熱媒流体)、処理対象空気の三流体が流入し、三流体熱交換器110内でこれらの三流体の間で熱交換が行われる。すなわち、吸湿性液体は伝熱管106の外側に接触することで伝熱管106を介して冷媒によって冷却され、処理対象空気は吸湿性液体と直接的に接触(気液接触)し、かつ伝熱管106の外側に接触することで冷却される。また、吸湿性液体は、吸湿性液体よりも高い温度の処理対象空気と接触することで、また処理対象空気中の水蒸気の吸収による吸収熱(水蒸気の凝縮熱と溶液の希釈熱)によって、温度が上昇する。このように、三流体熱交換器110は、吸湿性液体と、冷媒(熱媒流体)と、処理対象空気とを直接的または間接的に接触させる構成を有しており、三流体熱交換器110では熱と物質(水)の移動、すなわち顕熱と潜熱の両方の熱交換が行われる。
【0034】
三流体熱交換器110についてさらに説明すると、三流体熱交換器110では、散布トレイ108と、伝熱管106と、充填材107とが、上からこの順に繰り返し配置されている。散布トレイ108は側面と底面からなり、底面には所定の間隔をあけて複数の孔が形成されている。散布トレイ108は、上方から滴下される吸湿性液体を底面の上面で保持して孔から下方に滴下する。滴下された吸湿性液体が、下方の伝熱管106に供給されるように、底面の孔は、伝熱管106の上方に形成されている。すなわち、散布トレイ108が吸湿性液体を散布する対象(散布対象)は、本実施の形態では伝熱管106である。
【0035】
充填材107は、単位体積当たりの表面積を多くするため多数のフィンから構成される。各フィンは、波形の凹凸形状に加工されている。隣り合うフィン同士は、波の方向が互いに一定の角度で交差する向きに貼り合わされており、すなわち、隣り合うフィン同士は山と谷が互いに点接触するように配置されおり、この接触点で互いに接着されている。このような構成により、充填材107は、内部が多孔質とされて、単位体積当たりの表面積が広く確保されるとともに、空気の流動性も確保されている。
【0036】
充填材107は、親水性のあるセルロース系素材の他、ガラス繊維、セラミック繊維などのシートを接着して作成でき、あるいは結合剤などでセルロース、ガラス繊維、セラミック繊維などを一体化して作成できる。
【0037】
図2は、散布トレイ108の部分拡大断面図である。散布トレイ108の底面10の上には、拡散部材であるシート状の不織布11が敷かれている。不織布11は、毛細管作用によって、吸湿性液体を面方向(散布トレイ108の底面方向)に拡散させる。各散布トレイ108では、上方の充填材107から滴下された吸湿性液体が不織布11に浸透されつつ面方向に拡散して、底面10に形成された複数の孔12から下方の伝熱管106に滴下される。このとき、不織布11は、底面10に形成されたすべての孔12を、散布トレイ108の底面10の上で連通させるので、各孔12からは略等量の吸湿性液体が排出される。
【0038】
図2に示すように、不織布11は、上層111、中層112、及び下層113からなる3層構造になっている。この不織布11は、吸湿性液体に含まれるごみ等を補足するフィルタ構造を有している。この3層のうち、上層111の目が最も細かく、下層113の目が最も粗くなっており、上層111が細かいごみを補足するフィルタとして機能し、中層112及び下層113は上層111より目が粗いので実質的にフィルタ機能を有しない。
【0039】
上述のように、散布トレイ108に供給された液体は、底面10に間隔を置いて形成された複数の孔12から下方に排出されるので、不織布11の下層113(散布トレイ108の底面10付近)では、
図2に示すように、孔12に向かう底面方向の流れが生じることになる。したがって、不織布11の目が上層111で粗く下層113で細かいと、上層111で補足できなかったごみが下層113の孔12付近で集中して補足されることになり、目詰まりが生じて孔12への流通が妨げられることになる。
【0040】
一方、上層111で十分に細かいごみ補足しておけば、上層111のいずれかの場所で仮に目詰まりが生じたとしても、吸湿性液体は不織布11を下方に流れていくうちに底面方向に拡散され、下層113(散布トレイ108の底面10付近)では十分な拡散効果が得られる。よって、上層111において目を細かくし、下層113において目を粗くすることで、下層113よりも上層111で細かいごみが補足されるので、底部の孔12付近で不織布11の目詰まりが起こることが軽減され、複数の孔12においてより均一に液体を供給できる。
【0041】
図3は、本発明の実施の形態の変形例の散布トレイの部分拡大断面図である。
図3の例では、拡散部材としての不織布11´が上層111´と下層113´からなる2層構造となっており、また、下層113´の孔12に対応する位置に、孔12より若干小さい孔114が形成されている。このように、拡散トレイ108の底面10に形成された孔12に対応する位置において下層113´に孔を形成することで、対象液体が集中的に流れる孔12付近で不織布11´が目詰まりすることを回避できる。
【0042】
不織布11´の孔114が散布トレイ108の底面10の孔12よりも小さいので、不織布11´を拡散して孔114の縁部にまで達した吸湿性液体は、その縁部からスムーズに孔12に導入され、孔12を通って下方の伝熱管106に滴下される。仮に、不織布11´の孔114が散布トレイ108の底面10の孔12より大きいと、不織布11´の孔114の縁部にまで浸透してきた吸湿性液体は、散布トレイ108の底面10の孔12の周囲で底面10に接することとなり、この部分で不織布11´の孔114の縁部から滲み出した吸湿性液体が底面10にはじかれて孔12に流れにくくなってしまう。
【0043】
なお、不織布11´の孔114は、散布トレイ108の底面10の孔12より小さい必要はなく、孔114の縁部の少なくとも一部が底面10の孔12に掛かっていればよい。この場合にも、底面10の孔12に掛かっている孔114の縁部から吸湿性液体が沁み出してスムーズに孔12に導入され、下方の伝熱管106に滴下される。
【0044】
なお、上記の実施の形態では、散布トレイ108が、湿式調湿装置の三流体熱交換器に応用される例を説明したが、底面10に複数の孔が形成されて、複数の孔から下方の伝熱部材に液体を供給する散布トレイとして、冷凍機等の他の装置にも応用が可能である。
【0045】
また、上記の実施の形態では、散布トレイ108に敷く拡散部材として不織布を採用したが、拡散部材は、不織布には限られず、毛細管作用によって散布トレイ108の底面10方向に液体を拡散させるものであればよい。例えば、スポンジ等の多孔質部材、織物、紙を拡散部材として採用してもよい。
【0046】
また、上記の実施の形態では、不織布11は3層構造ないし2層構造であったが、拡散部材はこれに限らず、1層構造であっても、より多層の構造であってもよい。また、上記の実施の形態では、不織布11はシート状の形状を有していたが、拡散部材の形状は、散布トレイ108の底面10の上で隣接する孔12どうしを連通する形状であれば他の形状であってもよい。
【0047】
また、上記の実施の形態では、散布トレイ108にて対象液体を散布する対象(散布対象)が伝熱管であったが、本発明はこれに限られず、散布トレイ108によって伝熱板等の他の形状の伝熱部材に対象液体を散布するものであってもよい。また、散布対象は、伝熱部材にも限られない。例えば、散布対象は、湿式調湿装置に用いる充填材であってもよい。また、気化式冷風機や冷却塔においても、充填材に水が供給されるが、この充填材の上方に本実施の形態の散布トレイ108を設けることで、充填材に対して、平面方向に均等に水を供給できる。さらに、本実施の形態の散布トレイ108は、植物を散布対象として、植物への散水装置に応用することも可能である。このように、散布トレイ108による対象液体の散布対象は、伝熱管に限られず、伝熱部材にも限られないものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、散布トレイにおいて液ヘッドを立てなくても各孔から下方の散布対象に供給される液の量が均一化され、かつ、拡散部材がフィルタとして機能して、ごみ等による孔の目詰まりを軽減できるという効果を有し、散布対象に液体を供給する散布トレイ等として有用である。
【符号の説明】
【0049】
10 底面
11、11´ 不織布
12 孔
100 湿式調湿装置
101 筐体
102 吸気口
103 排気口
104 ファン
105 分配管
106 伝熱管
107 充填材
108 散布トレイ
109 溶液槽
110 三流体熱交換器
111、111´ 上層
112 中層
113、113´ 下層
114 孔