特許第6794501号(P6794501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794501
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】アブソリュートエンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   G01D5/245 110L
   G01D5/245 B
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-112455(P2019-112455)
(22)【出願日】2019年6月18日
(62)【分割の表示】特願2016-231659(P2016-231659)の分割
【原出願日】2016年11月29日
(65)【公開番号】特開2019-148609(P2019-148609A)
(43)【公開日】2019年9月5日
【審査請求日】2019年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】長田 靖夫
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−77483(JP,A)
【文献】 特開昭58−75065(JP,A)
【文献】 特開2004−274804(JP,A)
【文献】 特開2002−213910(JP,A)
【文献】 特開平11−287634(JP,A)
【文献】 特開2007−78459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 7/00−7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸の複数回の回転にわたる回転量を特定するアブソリュートエンコーダであって、
前記主軸の回転に伴い回転する回転体と、
前記回転体と一体に回転するマグネットと、
前記マグネットの磁極を検知して検知信号を出力する複数の回転センサと、
を備え、
前記回転体は、前記主軸と一体に回転する第1回転体と、前記第1回転体の回転に伴い回転する第3回転体と、を含み、
前記第1回転体の回転角を検知する第1角度センサを備え、
前記マグネットは前記第3回転体に配置され、
前記回転体は、前記第1回転体と前記第3回転体の間に配置される第2回転体を含み、
前記第2回転体は、前記第1回転体に対して第1減速比で減速回転し、
前記第3回転体は、前記第2回転体に対して第2減速比で減速回転し、
前記第1回転体の回転を前記第2回転体に伝達する機構は、ウォームギア部とウォームホイール部からなるウォーム機構を含み、
前記第1回転体の回転を前記第2回転体に伝達する機構は、前記第1回転体に対して第3減速比で減速回転する中間回転体を含み、
前記第2回転体は前記中間回転体に対して第4減速比で減速回転し、
前記第2回転体の回転軸は前記第3回転体の回転軸と平行に設けられ、
前記第1回転体は、前記第2回転体の回転軸と前記第3回転体の回転軸の間に挟まれるように設けられることを特徴とするアブソリュートエンコーダ。
【請求項2】
前記第1角度センサの検知結果に応じて前記第1回転体の回転角を特定し、
前記第2回転体の回転角を検知する第2角度センサを備え、前記第2角度センサの検知結果および前記複数の回転センサからの前記検知信号に応じて前記第1回転体の回転数を特定し、
特定された前記第1回転体の回転角および前記第1回転体の回転数に応じて前記第1回転体の回転量を特定することを特徴とする請求項1に記載のアブソリュートエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸の回転量を特定するためのアブソリュートエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の制御機械装置において、可動要素の位置や角度を検出するために用いられるロータリーエンコーダが知られている。このようなエンコーダには相対的な位置又は角度を検出するインクリメンタル型のエンコーダと、絶対的な位置又は角度を検出するアブソリュート型のエンコーダがある。例えば特許文献1には、自動制御装置やロボット装置等の運動制御用の回転軸やバルブ開閉に用いる動力伝達用の回転軸等の回転量を絶対量としてデジタル的に計測するためのアブソリュート型のロータリーエンコーダが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−96019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のアブソリュートエンコーダは、多段連結されたギアそれぞれの回転軸に1ビットの回転センサを取り付けた構成を有する。このギアそれぞれが順次減速して回転することで1ビットのカウンタを構成する。このようなエンコーダでは、カウンタ数を減らすと分解能が低下するから、分解能を確保するためにカウンタの数を増やせば、エンコーダが大型化する問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、分解能を確保しつつ大型化を抑制できるアブソリュートエンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のアブソリュートエンコーダは、主軸の複数回の回転にわたる回転量を特定するアブソリュートエンコーダであって、主軸の回転に伴い回転する回転体と、回転体と一体に回転するマグネットと、マグネットの磁極を検知して、それぞれ異なる位相の正弦波状の検知信号を出力する複数の回転センサと、を備える。
【0007】
この態様によると、アブソリュートエンコーダにおいて、回転センサの異なる位相の正弦波状の検知信号に応じて主軸の複数回の回転にわたる回転量を特定することができる。
【0008】
本発明の別の態様もまた、アブソリュートエンコーダである。このアブソリュートエンコーダは、主軸の複数回の回転にわたる回転量を特定するアブソリュートエンコーダであって、主軸と一体に回転する第1回転体の回転角を取得する第1取得機構と、第1回転体に対して第1減速比で減速回転する第2回転体の回転角を取得する第2取得機構と、第2回転体に対して第2減速比で減速回転するマグネットの磁極を検知して、それぞれ位相が異なる複数の正弦波状の検知信号を取得する第3取得機構と、取得された第2回転体の回転角と検知信号とに応じて第1回転体の回転数を特定する第1特定要素と、取得された第1回転体の回転角と特定された第1回転体の回転数とに応じて主軸の回転量を特定する第2特定要素と、を備える。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、回転量を特定する方法である。この方法は、主軸の複数回の回転にわたる回転量を特定する方法であって、主軸と一体に回転する第1回転体の回転角を取得することと、第1回転体に対して第1減速比で減速回転する第2回転体の回転角を取得することと、第2回転体に対して第2減速比で減速回転するマグネットの磁極を検知して、それぞれ位相が異なる複数の正弦波状の検知信号を取得することと、取得された第2回転体の回転角と検知信号とに応じて第1回転体の回転数を特定することと、取得された第1回転体の回転角と特定された第1回転体の回転数とに応じて主軸の回転量を特定することと、を含む。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、分解能を確保しつつ大型化を抑制できるアブソリュートエンコーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係るエンコーダを示す斜視図である。
図2図1のエンコーダを説明するブロック図である。
図3図1のエンコーダを説明する展開図である。
図4図1のエンコーダの一部を拡大して示す斜視図である。
図5図1のエンコーダの一部を拡大して示す別の斜視図である。
図6図1のエンコーダの対応関係テーブルの動作を説明する説明図である。
図7図1のエンコーダの一部を拡大して示す正面図である。
図8図1のエンコーダの一部を拡大して示す背面図である。
図9図1のエンコーダの一部を拡大して示す平面図である。
図10】第1回転体と中間回転体の周辺を示す断面図である。
図11】第2回転体の周辺を示す断面図である。
図12】ホール素子の周辺を示す正面図である。
図13】第1回転体と中間回転体と第3回転体の周辺を示す断面図である
図14】第1変形例のエンコーダを説明する展開図である。
図15】第1変形例のエンコーダの対応関係テーブルの動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者は、アブソリュートエンコーダ(以下、単にエンコーダという)について以下のような認識を得た。エンコーダとしては、例えば主軸の1回転内の絶対回転角を検知してデジタル信号として出力する角度センサを複数組み合わせて構成することが考えられる。角度センサを複数組み合わせるエンコーダの一例として、主軸と異なる減速比で回転する第1従軸と第2従軸の3軸それぞれに別々の角度センサを設ける構成が考えられる。この構成では、主軸、第1従軸および第2従軸の3軸から検知した回転角に基づいて主軸の複数回転にわたる回転量をデジタル演算して求める。デジタル演算するとは、例えばN進法に変換した量で演算することなどが挙げられる。この構成では、回転角から回転量を算出するから、複数の角度センサで検知された回転角(以下、検知回転角)のいずれかの分解能が低いと、演算して求めた回転量の精度が低下するという課題がある。この精度を改善するために、この3軸すべてに高分解能の角度センサを取付けることも考えられるが、この場合、高価な角度センサを3個備えることでコストダウンに不利になるという課題がある。
【0014】
また、この構成では、これらの3個の角度センサがそれぞれ検知した回転角(デジタル信号)を、CPU(central processing unit)にて複雑なアルゴリズムを用いて演算して回転量を求めることになる。したがって、演算能力の低いCPUを用いると演算が追いつかずに誤動作する懸念がある。このことから、発明者は、複数の回転角を並列的に処理して回転量を特定する構成には、コストアップを抑えつつ精度を向上する観点で改善をする余地があることを認識した。
【0015】
これらを踏まえ、発明者は、主軸の複数回の回転(以下、複数回転という)にわたる回転量を、主軸の1回転内の回転角と、主軸の回転の回数である回転数とに基づき式1によって特定し得ることを見出した。
(式1) 主軸の回転量=主軸の回転角+主軸の回転数×360°
このように主軸の回転量を特定することでコストアップを抑えつつ精度を維持可能なアブソリュートエンコーダを提供することができる。
実施の形態は、このような思索に基づいて案出されたもので、以下に具体的な構成を説明する。
【0016】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施の形態、変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0017】
[実施の形態]
本発明の実施の形態に係るエンコーダ100について説明する。図1は、実施の形態に係るエンコーダ100を示す斜視図である。以下、XYZ直交座標系をもとに説明する。X軸方向は水平な前後方向に対応し、Y軸方向は水平な左右方向に対応し、Z軸方向は鉛直な上下方向に対応する。Y軸方向およびZ軸方向はそれぞれX軸方向に直交する。X軸方向は前方向あるいは後方向と、Y軸方向は左方向あるいは右方向と、Z軸方向は上方向あるいは下方向と表記することがある。このような方向の表記はエンコーダ100の使用姿勢を制限するものではなく、エンコーダ100は任意の姿勢で使用されうる。
【0018】
エンコーダ100は、モータ1の主軸1aの複数回転にわたる回転量を特定して出力するアブソリュート型のエンコーダである。モータ1は、一例として、ステッピングモータやDCブラシレスモータであってもよい。一例として、モータ1は波動歯車装置などの減速機構を介して産業用などのロボットを駆動する駆動源として適用されてもよい。エンコーダ100は特定した主軸1aの回転量をデジタル信号として出力する。図2はエンコーダ100を説明するブロック図である。図3はエンコーダ100を説明する展開図である。図4はエンコーダ100の一部を拡大して示す斜視図である。図5はエンコーダ100の一部を拡大して示す別の斜視図である。
【0019】
図2に示すように、エンコーダ100は、主軸1aと、第1回転体20と、中間回転体22と、第2回転体24と、第3回転体26と、角度センサAS1と、角度センサAS2と、マグネットM1と、マグネットM2と、マグネットM3と、複数の回転センサ38と、制御部40と、を含む。
【0020】
主軸1aは、モータ1の出力軸であり、エンコーダ100に回転が入力される入力軸である。第1回転体20は、主軸1aに固定され、主軸1aと一体にモータ1の軸受部材によって回転可能に支持される。中間回転体22、第2回転体24および第3回転体26は後述するシャフトによって回転可能に支持される。中間回転体22は、第1減速機構21を介して第1回転体20に駆動され、第1回転体20に対して減速比R1で減速回転する。第2回転体24は、ウォーム機構15を介して中間回転体22に駆動され、中間回転体22に対して減速比R2で減速回転する。減速比R1と減速比R2の積を減速比R12とすると、第2回転体24は、第1回転体20に対して減速比R12で減速回転する。一例として、減速比R1は1/2で、減速比R2は1/50で、減速比R12は1/100であってもよい。これらの減速比はエンコーダ100の分解能に応じて設定してもよい。第1回転体20が100回転するとき第2回転体24は1回転する。
【0021】
第3回転体26は、第2減速機構25を介して第2回転体24に駆動され、第2回転体24に対して減速比R23で減速回転する。一例として、減速比R23は1/4であってもよい。第2回転体24が4回転するとき第3回転体26は1回転する。第3回転体26は、第1回転体20に対して減速比R12に減速比R23を乗じた減速比(=1/400)で減速回転する。第1回転体20が400回転するとき第3回転体26は1回転する。つまり、第3回転体26の1回転中の回転位置を特定することで第1回転体20の400回転分(±200回転分)の絶対的な回転量を特定することができる。
【0022】
マグネットM1は、第1回転体20の回転軸方向において角度センサAS1と対向する端面に2極の磁極P1を有する。マグネットM1は第1回転体20と一体に回転する。角度センサAS1は、磁極P1から受ける磁束密度に応じて第1回転体20の回転角(=主軸1aの回転角)を検知する。
【0023】
マグネットM2は、第2回転体24の回転軸方向において角度センサAS2と対向する端面に2極の磁極P2を有する。マグネットM2は第2回転体24と一体に回転する。角度センサAS2は、磁極P2から受ける磁束密度に応じて第2回転体24の回転角を検知する。
【0024】
複数の回転センサ38は、ホール素子H1、H2(以下、各ホール素子ということがある)を含む。各ホール素子は、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウムアンチモン(InSb)などの化合物半導体またはシリコン(Si)などの単元素半導体の薄膜を含んでもよい。マグネットM3は、第3回転体26の軸方向において各ホール素子と対向する端面に2極の磁極P3を有する。ホール素子H1、H2は、電気角でπ/2離隔された位置に配置される。マグネットM3は第3回転体26と一体に回転するとき、ホール素子H1とホール素子H2は、位相差が90°である正弦波状の検知信号を出力する。なお、正弦波状の信号とは、その称呼に関わらず、振幅が経時的に徐々に変化する波状の信号をいい、振幅が急峻にまたは不連続的に変化する矩形波状の信号を含まない。正弦波状の信号には、例えば三角波と称呼されるものなど、エンコーダの精度に実質的な影響を与えない程度の高調波を含有するものを含む。
【0025】
制御部40は、角度センサAS1が検知した第1回転体20の回転角と、角度センサAS2が検知した第2回転体24の回転角と、ホール素子H1、H2からの検知信号と、とを取得する。制御部40は、取得したホール素子H1、H2からの検知信号に応じて対応関係テーブル44を参照して第2回転体24の回転数を特定する。制御部40は、取得した第2回転体24の回転角と、特定した第2回転体24の回転数から第1回転体20の回転数を特定する。第1回転体20の回転数は、例えば式2によって特定することができる。
(式2) 第1回転体20の回転数=第2回転体24の回転角/(R12×360)+第2回転体24の回転数/R12
【0026】
制御部40は、特定した第1回転体20の回転数と、取得した第1回転体20の回転角から第1回転体20の回転量を特定する。第1回転体20の回転量は、例えば式3によって特定することができる。
(式3) 第1回転体20の回転量=第1回転体20の回転角+第1回転体20の回転数×360°
主軸1aの回転量は第1回転体20の回転量に等しいから、主軸1aの回転量は例えば式4によって特定することができる。
(式4) 主軸1aの回転量=第1回転体20の回転角+第1回転体20の回転数×360°
【0027】
続いて、エンコーダ100の各要素について説明する。
【0028】
(制御部)
図2に示すように、制御部40は、第1回転角取得部41と、第2回転角取得部42と、ホール信号取得部43と、対応関係テーブル44と、回転数特定部45と、出力部46と、を含む。これら各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0029】
第1回転角取得部41は、角度センサAS1が検知した第1回転体20の回転角を取得する。第2回転角取得部42は、角度センサAS2が検知した第2回転体24の回転角を取得する。ホール信号取得部43は、ホール素子H1、H2からの正弦波状の検知信号を取得する。ホール信号取得部43は、例えばADコンバータを含み、アナログ信号であるホール素子H1、H2からの検知信号をデジタル検知信号に変換して取得する。
【0030】
(対応関係テーブル)
図6は対応関係テーブル44の動作の一例を説明する説明図である。対応関係テーブル44は、例えば90°の位相差を有する2つの正弦波状の信号Ha、Hbの振幅の情報と、この2つの信号の振幅に対応する角度θと、この角度θに対応する第2回転体24の回転数N2と、をテーブル形式で記憶している。対応関係テーブル44は、取得したデジタル検知信号の振幅に対応して0°〜360°の範囲で角度θを特定する。対応関係テーブル44は、特定された角度θに対応して0〜3回転の範囲で第2回転体24の回転数N2を特定する。図6に示すように、角度θが0°以上で90°未満の範囲ではN2=0回転、角度θが90°以上で180°未満の範囲ではN2=1回転、角度θが180°以上で270°未満の範囲ではN2=2回転、角度θが270°以上で360°未満の範囲ではN2=3回転と特定する。
【0031】
例えば、角度θが未知であり、信号Haの振幅が0.87で、信号Haの振幅が−0.5である場合を想定する。信号Haの振幅が0.87である角度θは60°(A1)と、120°(A2)の2つ存在する。この内、信号Hbの振幅が−0.5である角度θは120°(B2)のみに特定され、振幅が0.5である角度θ=60°(B1)は否定される。特定された角度θ=120°は、90°以上で180°未満の範囲に属するから第2回転体24の回転数N2は1回転と特定される。このように、複数の位相の正弦波状の信号の角度および振幅の情報をテーブル化して用いることで、振幅の情報から角度を特定することができる。また、その角度から第2回転体24の回転数N2を特定することができる。
【0032】
回転数特定部45は、第2回転角取得部42が取得した第2回転体24の回転角と、対応関係テーブル44を参照して特定された第2回転体24の回転数N2とから、上述の式2によって第1回転体20の回転数を特定する。出力部46は、第1回転角取得部41が取得した第1回転体20の回転角と、回転数特定部45によって特定された第1回転体20の回転数とから、上述の式4によって主軸1aの回転量を特定して出力する。
【0033】
(マグネット)
マグネットM1〜M3(以下、各マグネットと表記することがある。)は略円筒形状を有する。各マグネットは、例えばフェライト系やNdFeB系の磁石材料から形成される。各マグネットは、例えば樹脂バインダを含むゴム磁石やボンド磁石であってもよい。各マグネットの各角度センサに対向する対向面には複数(例えば、2極)の磁極が設けられる。各マグネットの磁化方向は各マグネットの対向面に直交する方向であってもよく、対向面に平行な方向であってもよい。各マグネットの内部で対向面に平行な方向で、対向面付近で対向面に直交する方向であってもよい。実施の形態では、各マグネットの各角度センサに対向する端部には2極の磁極が設けられる。
【0034】
各マグネットは、各ロータの端部に各角度センサに向かって設けられるマグネットホルダに形成された凹部に収容され、例えば接着やカシメなどによって固定されてもよい。各マグネットは着磁によって磁極が形成される。各マグネットの回転方向の磁束密度分布は台形波形状であってもよく、正弦波状や矩形波形状であってもよい。実施の形態では台形波状に着磁される。各マグネットから角度センサAS1、AS2および複数の回転センサ38(以下、各検知素子という。)までの距離を調整することで、各検知素子が受ける磁束密度の分布を変化させることができる。実施の形態では、各検知素子が受ける磁束密度の分布が正弦波状になるように、各マグネットの位置を設定している。例えば、マグネットM3を連続回転させるとき、複数の回転センサ38は正弦波状に変化する検知信号を出力する。
【0035】
(角度センサ)
角度センサAS1、AS2(以下、各角度センサと表記することがある。)は、各ロータの1回転に対応する0°〜360°の範囲の絶対的な回転角を検知するセンサである。各角度センサは検知した回転角に応じた信号(例えばデジタル信号)を制御部40に出力する。各角度センサは、一旦通電を停止して再通電をした場合にも、通電停止前と同じ回転角を出力する。このためバックアップ電源を備えない構成が可能である。図4に示すように、角度センサAS1は、第1回転体20の軸方向端面に設けたマグネットM1の磁極と隙間を介して対向する位置にて、センサ支持部に固定される。角度センサAS2は、第2回転体24の軸方向端面に設けたマグネットM2の磁極と隙間を介して対向する位置にてセンサ支持部に固定される。
【0036】
各角度センサには比較的分解能が高い磁気式角度センサを使用してもよい。磁気式角度センサは、それぞれの回転体の軸方向において、例えばマグネットの2極の磁極と隙間を介して対向配置され、これら磁極の回転に基づいてロータの回転角を特定してデジタル信号を出力する。磁気式角度センサは、一例として、磁極を検知する検知素子と、この検知素子の出力に基づいてデジタル信号を出力する演算回路と、を含む。検知素子は、例えばホールエレメントやGMR(Giant Magneto Resistive)エレメントなどの磁界検知要素を複数(例えば4つ)含んでもよい。演算回路は、例えば複数の検知素子の出力の差や比をキーとしてルックアップテーブルを用いてテーブル処理によって回転角を特定するようにしてもよい。この検知素子と演算回路とは一つのICチップ上に集積されてもよい。このICチップは薄型の直方体形状の外形を有する樹脂中に埋め込まれてもよい。各角度センサは、図示しない配線部材を介して検知した各ロータの回転角に対応するデジタル信号である角度信号を制御部40に出力する。
【0037】
特に、角度センサAS1は、第1回転体20に設けられたマグネットM1の磁極を検知して、第1回転体20の回転角を複数ビット(例えば7ビット)のデジタル信号として出力する。角度センサAS2は、第2回転体24に設けられたマグネットM2の磁極を検知して、第2回転体24の回転角を複数ビット(例えば7ビット)のデジタル信号として出力する。
【0038】
続いて、図7〜13を参照して、エンコーダ100の第1回転体20、中間回転体22、第2回転体24および第3回転体26(以下、各回転体という)とその周辺の構成を説明する。図7はエンコーダ100の正面図である。図8はエンコーダ100の背面図である。図9はエンコーダ100の平面図である。図9は後述するブラケット10や角度センサAS1などの部材の図示を省いている。図10は第1回転体20と中間回転体22の周辺を示す一部断面図である。図11は第2回転体24の周辺を示す一部断面図である。図12はホール素子H1,H2の周辺を示す正面図である。図12図7から後述するブラケット18とブラケット7などの部材の図示を省いている。図13は第1回転体20と中間回転体22と第3回転体26の周辺を示す一部断面図である。各回転体とその周辺の部材は、モータ1の上側に固定される円盤状のベース2に支持される。
【0039】
第1回転体20は、円形部材3と、マグネットM1と、を含む。円形部材3は、Z軸方向に延在し、角度センサAS1に近い側から順にマグネットホルダ3hと、駆動歯車3dと、を有する(特に図10を参照)。マグネットホルダ3hの角度センサAS1に対向する端面には凹部3kが形成される。この凹部3kは第1回転体20の回転軸方向に円形に窪む形状を有する。マグネットホルダ3hの凹部3kはマグネットM1を収容して固定する。駆動歯車3dは、その外周を24等分した位置に24個のギア歯を有する平歯車である。円形部材3のモータ1側の端部には、主軸1aが挿入固定される孔3jが形成される。
【0040】
中間回転体22は、第1回転体20と第2回転体24の間で回転を減速して伝達する要素である。中間回転体22を設けることで、第1回転体20と第2回転体24の間の減速比R12を大きくすることができる。中間回転体22の回転軸は第1回転体20の回転軸と平行にZ軸方向に伸びるように設けられる。中間回転体22は、外周面に従動歯車5eとウォームギア部5wが形成される円形部材5を含む(特に図10を参照)。円形部材5はZ軸方向に延在する。円形部材5は、ベース2にナット5nによって固定されるシャフト5sを収容する孔5jを有し、シャフト5sに回転可能に支持される。従動歯車5eは、駆動歯車3dとかみ合い、駆動歯車3dに駆動される。従動歯車5eと駆動歯車3dは第1減速機構21を構成する(特に図9を参照)。従動歯車5eは、その外周を48等分した位置に48個のギア歯を有する平歯車である。ウォームギア部5wは、従動歯車5eから上向きに伸びる円筒ウォームである。ウォームギア部5wの外周面にはねじ状の溝が例えば1条設けられる。なお、ねじ状の溝は複数条であってもよい。
【0041】
ウォームギア部5wが回転するとき、ウォームの作用により円形部材5には上向きの力が働く場合がある。そこで、実施の形態では円形部材5の上端に設けた半球型突起5cを押えるウォーム押え部19aを備える(特に図7を参照)。ウォーム押え部19aは、半球型突起5cに当接して下向きに押圧することで、円形部材5の移動を抑制する。ウォーム押え部19aは、一端がブラケット10に固定されるアングル状の板バネ19の他端側に設けられる。板バネ19は、例えばリベットやねじによってブラケット10に固定される。ブラケット10については後述する。板バネ19は、一例として板厚が0.1mm〜0.2mm程度のステンレス鋼板から形成されてもよい。
【0042】
第2回転体24は、円形部材6と、マグネットM2と、を含む。円形部材6はY軸方向に延在する(特に図11を参照)。円形部材6には、角度センサAS2に近い側から順にマグネットホルダ6hと、ウォームホイール部6wと、駆動歯車6dと、が形成される。マグネットホルダ6hは、角度センサAS2に対向する端面に凹部6kが形成される。この凹部6kは第2回転体24の回転軸方向に円形に窪む形状を有する。マグネットホルダ6hの凹部6kはマグネットM2を収容して固定する。円形部材6は、シャフト6sを収容する孔6jを有し、シャフト6sに回転可能に支持される。シャフト6sは、ブラケット7のベース2から上向きに延在する部分にナット6nによって固定される。ブラケット7はベース2の一部が上向きに切り起こされて形成される。ブラケット7はベース2と別体に形成されてもよい。ブラケット7は、例えば一端がベース2に固定されるアングル状の部材であってもよい。シャフト6sはベース2に平行なY軸方向に延伸する。
【0043】
ウォームホイール部6wは、中間回転体22のウォームギア部5wとかみ合い、ウォームギア部5wに駆動される。ウォームホイール部6wは、その外周を50等分した位置に50個のギア歯を有する。ウォームホイール部6wのギア歯は斜歯歯車であってもよい。ウォームギア部5wとウォームホイール部6wとはウォーム機構15を構成する(特に図9を参照)。駆動歯車6dは、その外周を15等分した位置に15個のギア歯を有する平歯車である。第2回転体24の回転軸は、第1回転体20や中間回転体22の回転軸から90°傾斜して設けられる。
【0044】
第3回転体26は、円形部材8と、マグネットM3と、を含む(特に図13を参照)。円形部材8はY軸方向に延在する。円形部材8には、ホール素子H1、H1に近い側から順にマグネットホルダ8hと、従動歯車8eと、が形成される。マグネットホルダ8hには、ホール素子H1、H1に対向する端面に凹部8kが形成される。この凹部8kは第3回転体26の回転軸方向に円形に窪む形状を有する。マグネットホルダ8hの凹部8kはマグネットM3を収容して固定する。円形部材8は、シャフト8sを収容する孔8jを有し、シャフト8sに回転可能に支持される。シャフト8sは、ブラケット9のベース2から上向きに延在する部分にカシメなどによって固定される。ブラケット9はベース2の一部が上向きに切り起こされて形成される。ブラケット9はベース2と別体に形成されてもよい。ブラケット9は、例えば一端がベース2に固定されるアングル状の部材であってもよい。シャフト8sはベース2に平行なY軸方向に延伸する。従動歯車8eは、その外周を60等分した位置に60個のギア歯を有する平歯車である。従動歯車8eは、駆動歯車6dとかみ合い、駆動歯車6dに駆動される。従動歯車8eと駆動歯車6dは第2減速機構25を構成する(特に図9を参照)。第3回転体26は、その回転軸が第2回転体24の回転軸と平行に設けられる。
【0045】
続いて、第1センサ支持部11と、第2センサ支持部14と、ホール素子支持部17について説明する(特に図4図5図7及び図13を参照)。第1センサ支持部11は、ブラケット10と、センサホルダ13と、を含む。第2センサ支持部14は、ブラケット12と、センサホルダ16と、を含む。ホール素子支持部17は、ブラケット18を含む。ブラケット10、12、18は、アングル状の部材で、一端側がベース2に例えばリベットやねじによって固定される。センサホルダ13、16は、ブラケット10、12の他端側に形成される支持孔に嵌合する突起部と、角度センサAS1、AS2を収容する収容部と、を有する。
【0046】
ホール素子H1、H2はブラケット18の他端側に支持される。ホール素子H1、H2は、その中心がマグネットM3の輪郭線の近傍に位置するように配置される(特に図5図8及び図12を参照)。一例として、ホール素子H1は12時の位置に、ホール素子H2は9時の位置に配置される。
【0047】
円形部材3、5、6、8は、例えばポリアセタール(Polyacetal)など樹脂材料からモールド成型によって形成されてもよい。シャフト5s、6s、8sは、例えばステンレス鋼製の棒材から切削や研削あるいは転造や鍛造によって形成されてもよい。ベース2およびブラケット7、9、10、12、18は、例えば厚み1mm程度のステンレス鋼板からプレス加工によって形成されてもよい。各歯車部の潤滑には、グリスなどを塗布する湿式潤滑方式を用いてもよいが、実施の形態では乾式潤滑方式を採用している。
【0048】
続いて、エンコーダ100の特徴について説明する。
エンコーダは安価な構成で分解能を高められることが望ましい。そこで、実施の形態のエンコーダ100は、回転体と一体に回転するマグネットM3と、マグネットM3の磁極P3を検知して、それぞれ異なる位相の正弦波状の検知信号を出力する複数の回転センサ38と、を備える。この構成によれば、エンコーダ100が、複数の回転センサ38の異なる位相の正弦波状の検知信号を用いて主軸1aの回転量を特定するから、安価な構成で分解能を高めることができる。
【0049】
小型化の観点から、角度センサの数は少ない方が望ましい。そこで、実施の形態のエンコーダ100では、回転体は、主軸1aと一体に回転する第1回転体20と、第1回転体20の回転に伴い回転する第3回転体26と、を含み、第1回転体20の回転角を検知する角度センサAS1を備え、マグネットM3は第3回転体26に配置される。この構成によれば、角度センサAS1が検知した第1回転体20の回転角と、回転センサ38の検知信号を用いて主軸1aの回転量を特定できるので、角度センサの数を少なくしても、容易に所望の分解能を得ることができる。
【0050】
エンコーダは小さいことが望ましい。そこで、実施の形態のエンコーダ100では、回転体は、第1回転体20と第3回転体26の間に配置される第2回転体24を含み、第2回転体24の回転角を検知する角度センサAS2を備え、第2回転体24は、第1回転体20に対して減速比R12で減速回転し、第3回転体26は、第2回転体24に対して減速比R23で減速回転する。この構成によれば、回転体の数および角度センサの数を少なくできるから、エンコーダ100の小型化に有利である。エンコーダ100は、エンコーダ100をZ軸方向に投影した投影範囲が、モータ1をZ軸方向に投影した範囲内に収まるように構成することができる。一例として、エンコーダ100のZ軸方向の投影範囲は、1辺が42mmの正方形や直径が42mmの円の内側に収まるようにしてもよい。
【0051】
多数の角度センサを用いて高レベルの計算により回転量を求めるエンコーダでは、高速回転する場合に演算速度が追いつかず誤動作をする懸念がある。そこで、実施の形態のエンコーダ100では、角度センサAS1の検知結果に応じて第1回転体20の回転角を特定し、角度センサAS2の検知結果および複数の回転センサ38からの検知信号に応じて第1回転体20の回転数を特定し、特定された第1回転体20の回転角および第1回転体20の回転数に応じて第1回転体20の回転量を特定する。この構成によれば、回転量を特定する処理の処理量が少ないので、高速回転する場合の誤動作を減らすことができる。当該処理量が少ないので、制御装置に比較的低速なCPUを採用することが可能になり、消費電力の増大を抑制することができる。高価な角度センサの数を減らすことができるからコストダウンに有利である。
【0052】
回転方向が反転する際に、伝達機構のギアのバックラッシュに起因して、検知した回転角の誤差が増えることが考えられる。そこで、実施の形態のエンコーダ100では、第1回転体20の回転を第2回転体24に伝達する機構は、ウォームギア部5wとウォームホイール部6wからなるウォーム機構15を含む。この構成によれば、バックラッシュを抑制して回転角の誤差を減らすことができる。特に、第1回転体20と第2回転体24の間の減速比R12を高く設定しても、誤差の発生を抑制することができる。
【0053】
第1回転体20にウォームギアを設ける構成では、第1回転体20の端部を押さえることが望ましく、この場合は第1回転体20の端部近傍に角度センサAS1を配置しにくくなる。そこで、実施の形態のエンコーダ100では、第1回転体20の回転を第2回転体24に伝達する機構は、第1回転体20に対して減速比R1(例えば1/2)で減速回転する中間回転体22を含み、第2回転体24は中間回転体22に対して減速比R2(例えば1/50)で減速回転する。この構成によれば、中間回転体22にウォームギア部5wを形成して、その端部にウォーム押え部19aを当接させることができるので、第1回転体20の端部近傍に角度センサAS1を配置し易くなる。
【0054】
ウォーム機構を高速回転させると耐久性が低下するおそれがある。そこで、実施の形態のエンコーダ100では、ウォームギア部5wは中間回転体22に設けられる。この構成によれば、ウォームギア部5wを第1回転体20より低速で回転する中間回転体22に形成するので、ウォーム機構15の回転速度を小さくして耐久性を改善することができる。
【0055】
ウォームギア部5wが回転すると、中間回転体22に回転軸方向の力が作用して、中間回転体22が回転軸方向に移動することがある。そこで、実施の形態のエンコーダ100では、中間回転体22を当該中間回転体22の回転軸方向に押さえるように付勢する付勢部材であるウォーム押え部19aを備える。この構成によれば、中間回転体22の移動を抑制することができる。
【0056】
エンコーダは小さいことが望ましい。そこで、実施の形態のエンコーダ100では、第2回転体24の回転軸は第3回転体26の回転軸と平行に設けられ、第1回転体20は、第2回転体24の回転軸と第3回転体26の回転軸の間に挟まれるように設けられる。この構成によれば、第2回転体24と第3回転体26とを第1回転体20を囲むように配置することができるから、そうでない構成に比べてエンコーダをコンパクトにすることができる。
【0057】
複数の磁界が干渉することでセンサの検知精度が低下するおそれがある。例えば、マグネットM3の磁界がマグネットM2の磁界と干渉すると、角度センサAS2の検知精度が低下する可能性がある。そこで、実施の形態のエンコーダ100では、第2回転体24は、当該第2回転体24と一体に回転する別のマグネットM2を含み、空間を、第2回転体24の回転軸と直交すると共に第1回転体20の回転軸を含む平面によって、2つの領域に分けるとき、別のマグネットM2は、2つの領域のうちマグネットM3が配置されていない方の領域に配置される。この構成によれば、一方の領域にマグネットM3が、他方の領域にマグネットM2が配置されるから、これらのマグネットが離間して角度センサAS2の検知精度の低下を抑制することができる。
それぞれのマグネットは、磁界の向きがそれぞれ異なる方向を向くように配置されてもよい。これにより、角度センサの検知精度の低下を抑制することができる。実施の形態のエンコーダ100では、マグネットM1、M2、M3を、磁界の向きがそれぞれ異なる方向を向くように配置しているが、磁界が干渉するおそれのある近接するマグネットについてのみ、磁界の向きがそれぞれ異なる方向を向くように配置してもよい。
【0058】
エンコーダの構成が複雑になると、信頼性が低下するおそれがある。そこで、実施の形態のエンコーダ100は、主軸1aと一体に回転する第1回転体20の回転角を取得する第1取得機構(マグネットM1、角度センサAS1および第1回転角取得部41を含む)と、第1回転体20に対して減速比R12(例えば1/100)で減速回転する第2回転体24の回転角を取得する第2取得機構(マグネットM2、角度センサAS2および第2回転角取得部42を含む)と、第2回転体24に対して減速比R23(例えば1/4)で減速回転するマグネットM3の磁極P3を検知して、それぞれ位相が異なる2つの正弦波状の検知信号を取得する第3取得機構(ホール素子H1、H2およびホール信号取得部43を含む)と、取得された第2回転体24の回転角と検知信号とに応じて第1回転体20の回転数を特定する第1特定要素(対応関係テーブル44と、回転数特定部45を含む)と、取得された第1回転体20の回転角と特定された第1回転体20の回転数とに応じて主軸1aの回転量を特定する第2特定要素(出力部46を含む)と、を備える。この構成によれば、回転体の回転角を取得する要素の数が少ないから、エンコーダの構成が簡素になり信頼性の低下を抑制することができる。
【0059】
高レベルの計算により回転量を特定する方法では、CPUの処理が高速になり消費電力が増えることがある。そこで、実施の形態のエンコーダ100に適用される回転量を特定する方法は、主軸1aと一体に回転する第1回転体20の回転角を取得することと、第1回転体20に対して減速比R12で減速回転する第2回転体24の回転角を取得することと、第2回転体24に対して減速比R23で減速回転するマグネットM3の磁極P3を検知して、それぞれ位相が異なる複数の正弦波状の検知信号を取得することと、取得された第2回転体の回転角と検知信号とに応じて第1回転体20の回転数を特定することと、取得された第1回転体20の回転角と特定された第1回転体20の回転数とに応じて主軸1aの回転量を特定することと、を含む。回転量を特定する処理の処理量を少なくできるので、制御装置に低速のCPUを採用することが可能になり、消費電力の増大を抑制することができる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0061】
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施の形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施の形態と重複する説明を適宜省略し、実施の形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0062】
(第1変形例)
実施の形態では、複数の回転センサ38が2個のホール素子を備える例について説明したが、これに限られない。例えば、複数の回転センサ38は3個以上のホール素子を備えてもよい。
実施の形態では、中間回転体22を備え、中間回転体22にウォームギア部5wを形成する例について説明したが、これに限られない。例えば、中間回転体22を削除し、ウォームギア部を第1回転体20に形成するようにしてもよい。エンコーダの構成が一層簡素になり小型化に有利になる。
【0063】
図14は、第1変形例に係るエンコーダ200を説明する展開図であり図3に対応する。エンコーダ200は、後述する部分で実施の形態のエンコーダ100と相違し、その他の構成は同様である。エンコーダ200は、中間回転体を削除し、ウォームギア部3wを第1回転体20に形成している。ウォームギア部3wとウォームホイール部6wとはウォーム機構15を構成する。エンコーダ200では、ホール素子H1、H2の代わりに3個のホール素子H3、H4、H5を備えている。ホール素子H3、H4、H5は電気角で2π/3離隔された位置に配置される。ホール素子H3、H4、H5は、それぞれ120°の位相差を有する3つの正弦波状の検知信号を出力する。ホール信号取得部43は、アナログ信号であるホール素子H3、H4、H5からの検知信号をデジタル検知信号に変換して取得する。第3回転体26の第2回転体24に対する減速比R23は1/6に設定される。このように形成されたエンコーダ200では、第2回転体24が6回転するとき第3回転体26は1回転するから、第1回転体20が600回転するとき第3回転体26は1回転する。
【0064】
図15は、エンコーダ200における対応関係テーブル44の動作の一例を説明する説明図である。図15図6に対応する。この対応関係テーブル44では、120°の位相差を有する3つの正弦波状の信号の振幅と、この3つの信号の振幅に対応する角度θと、この角度θに対応する第2回転体24の回転数N2と、をテーブル形式で記憶している。対応関係テーブル44は、ホール信号取得部43で取得したデジタル検知信号の振幅に対応して0°〜360°の範囲で角度θの情報を特定する。対応関係テーブル44は、特定された角度θに対応して0〜5回転の範囲で第2回転体24の回転数N2を特定する。図15に示すように、角度θが0°以上で60°未満の範囲ではN2=0回転、角度θが60°以上で120°未満の範囲ではN2=1回転、角度θが120°以上で180°未満の範囲ではN2=2回転、角度θが180°以上で240°未満の範囲ではN2=3回転、角度θが240°以上で300°未満の範囲ではN2=4回転、角度θが300°以上で350°未満の範囲ではN2=5回転と特定する。このように第3回転体26の1回転を6分割して特定することで、第2回転体24の6回転分をそれぞれ特定することができる。このように構成されたエンコーダ200は、第1回転体20の600回転分(±300回転分)の絶対的な回転量を特定することができる。
【0065】
(第2変形例)
実施の形態の説明では、マグネットM1〜M3それぞれが一体の部材である例について説明したがこれに限られない。マグネットM1〜M3それぞれは、複数のピースを組み合わせて構成してもよい。
【0066】
(第3変形例)
実施の形態の説明では、複数の回転センサ38がホール素子である例について説明したがこれに限られない。複数の回転センサはマグネットの磁極を検知して正弦波状の検知信号を出力するものであればよく、別の検知原理に基づくセンサであってもよい。
【0067】
(第4変形例)
実施の形態の説明では、各歯車を形成する円形部材3、5、6、8が樹脂材料から形成される例について説明したがこれに限られない。これらの円形部材の幾つかは金属材料やその他の材料から形成されてもよい。
【0068】
上述の変形例によれば、実施の形態に係るエンコーダ100によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。
【0069】
上述した実施の形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0070】
100・・エンコーダ、 1・・モータ、 1a・・主軸、 20・・第1回転体、 22・・中間回転体、 24・・第2回転体、 26・・第3回転体、 38・・回転センサ、 40・・制御部、 200・・エンコーダ、 AS1・・角度センサ、 AS2・・角度センサ、 H1・・ホール素子、 H2・・ホール素子、 H3・・ホール素子、 M1・・マグネット、 M2・・マグネット、 M3・・マグネット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15