(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ほぼ全ての白内障患者は老眼にも苦しんでいるため、これらの両方の状態の治療に対する市場需要が集中している。白内障の治療において埋め込み可能な眼内レンズを保持させることは医師および患者の間で一般的に受け入れられているが、老眼を矯正するための同様の処置は米国白内障市場のわずか5%である。従って、人口高齢化が進む中で眼の白内障および/または老眼の両方に対処する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載される眼内レンズ(IOL)デバイスは、全体として、2つのレンズ部分を含む。好ましい実施形態では、第1のレンズ部分は、調節力(accommodative power)の全てではないが大部分を提供し、第2のベースレンズは、特定の患者によって必要とされる矯正屈折力の全てではないが大部分を提供する。第1のレンズ部分は、調節力を提供しなければならないため、眼の本来の(natural)調節能力を制御する毛様体筋の収縮および弛緩に応じて、形状変化または光軸に沿った変位のいずれかにより応答する必要がある。そのため、第1のレンズ部分は、流体またはゲルが充填されている弾性変形可能なレンズチャンバーとして提供され得る。弾性変形可能なレンズチャンバーとは対照的に、ベースレンズは、円周縁部に加わる半径方向の圧縮力に応じて、容易に変形せずまたはその曲率を変化させないように構成される。レンズチャンバーへの半径方向の圧縮力の伝達は、以下の特徴の1つ以上をIOLに組み込むことによって達成され得る:(1)レンズチャンバーの対向する側面がベースレンズと比べて減少した厚さを有すること、(2)ヒンジがベースレンズと周辺部分との間に配置されること、(3)レンズチャンバーが、ベースレンズよりも低いヤング率を有する材料で作られていること、および/または(4)ベースレンズが実質的に硬質の材料で作られていること。
【0007】
一実施形態において、眼内レンズ(IOL)デバイスが提供される。そのIOLは、1対の対向する変形可能な表面およびそれらの間に画定されたキャビティを含む、第1のレンズ直径を有する第1のレンズと、第2のレンズ直径を有する第2のレンズと、第1のレンズと第2のレンズを連結する、外周縁部を有する円周ハプティック(haptic)とを備える。主IOLキャビティは、円周ハプティック、第1のレンズおよび第2のレンズによって画定されている。そのIOLデバイスは、外周縁部に加わる半径方向の圧縮力の不在下で、そのIOLデバイスが第1の直径d
1を有することによって特徴付けられる非調節状態に弾性的に付勢される。そのIOLデバイスは、外周縁部に加わる半径方向の圧縮力に応じた、d
1>d
2である第2の直径d
2によって特徴付けられる調節状態に作動させる。
【0008】
第1の態様によれば、第1のレンズは両凸レンズである。
第2の態様によれば、キャビティは完全に密閉される。
第3の態様によれば、IOLは、キャビティ内にゲルをさらに含む。好ましくは、ゲルは、1.46以上、好ましくは1.48以上、最も好ましくは1.55以上の屈折率を有する。好ましくは、ゲルは、10psi(68.9kPa)以下、好ましくは5psi(34.5kPa)以下、より好ましくは1psi(6.89kPa)以下のヤング率を有する。特に好ましい実施形態では、ゲルは、0.5psi(3。45kPa)以下、好ましくは0.25psi(1.72kPa)以下、最も好ましくは0.01psi(0.069kPa)以下のヤング率を有する。好ましくは、ゲルは、高度分岐ポリマー、好ましくは架橋シリコーンである。
【0009】
第4の態様によれば、第2のレンズは、平凸レンズ、両凸レンズおよび正メニスカスレンズのうちの1つである。
第5の態様によれば、第2のレンズは、第1のレンズよりも実質的に硬質である。
【0010】
第6の態様によれば、IOLは、円周ハプティックと第2のレンズとの間に配置されたヒンジをさらに含む。好ましい実施形態では、周縁部への圧縮力の存在下で、ヒンジは、それらの圧縮力の大部分を第1のレンズ上へ向けて、比例減少する第1のレンズ直径において第2のレンズ直径よりも大きな比例減少を引き起こす。
【0011】
第7の態様によれば、第1のレンズの対向する変形可能な表面の各々は、第2のレンズの50%以下、好ましくは第2のレンズの25%以下、より好ましくは、第2のレンズの10%以下である厚さを有する。
【0012】
第8の態様によれば、IOLは、円周ハプティック上に配置された複数の開口部および円周ハプティック内に画定された円周チャネルの一方または両方をさらに含む。複数の開口部は主IOLキャビティと流体連通し得る。複数の開口部は円周チャネルおよび主IOLキャビティの両方と流体連通し得る。
【0013】
第9の態様によれば、IOLデバイスは複数の隆起したバンプをさらに含み、ここで、それらの複数の隆起したバンプの少なくとも1つは複数の開口部の各々に隣接して位置付けられている。
【0014】
第10の態様によれば、IOLデバイスは複数のトラフをさらに含み、それらの複数のトラフの少なくとも1つは、開口部内への流体の流れを容易にするために、複数の開口部の各々から内側へ放射状に広がっている。
【0015】
第11の態様によれば、円周ハプティックは、第2のレンズを連結する複数のラジアルアームを含み、それらの複数のラジアルアームは、主キャビティとの流体連通を可能にするためにそれらの間に開口部を画定している。
【0016】
第12の態様によれば、円周ハプティックは、主IOLキャビティの周辺部に配置された第3の円周キャビティを含む。
第13の態様によれば、円周ハプティックに沿った半径方向力の適用時に第1のレンズの対向する表面は互いから離れるように変位する。対向する表面は、中央領域および周辺領域を有し、周辺領域から中央領域へと漸増する厚さプロフィールを有する。
【0017】
もう1つの実施形態において、IOLが提供される。そのIOLは、第1のヤング率を有する変形可能な弾性材料で作られている第1のレンズと、中心光軸に沿って第1のレンズに対して離間された第2のレンズと、第1のレンズおよび第2のレンズを取り囲む、外周縁部を含む円周部分とを備える。第2のレンズの一部および円周部分の一部の少なくとも一方は、第2のヤング率を有する材料で作られている。第1のヤング率は第2のヤング率より小さい。
【0018】
第1の態様によれば、第2のレンズのみが第2のヤング率を有する材料で作られている。
第2の態様によれば、円周部分の一部のみが第2のヤング率を有する材料で作られている。
【0019】
第3の態様によれば、第1のヤング率は約100psi(689.5kPa)以下である。
第4の態様によれば、第2のヤング率は約100psi(689.5kPa)以上である。
【0020】
第5の態様によれば、第2のヤング率は約150psi(1034.2kPa)以上である。
第6の態様によれば、第1のレンズは、1対の対向する変形可能な表面およびそれらの間に画定されたキャビティを含み、第1のレンズは第1のレンズ直径を有し、ここで、主IOLキャビティは、第1のレンズ、第2のレンズおよび円周部分の間に画定されている。
【0021】
第7の態様によれば、IOLは、アクティブ型光学領域の外側に第2のレンズ上に配置されたヒンジをさらに含む。
第8の態様によれば、第1のレンズは、周縁部に沿った半径方向力の適用時に互いから離れるように変位する2つの対向する表面で構成されている。それらの2つの対向する表面は各々、中央領域および周辺領域を有し、ここで、中央領域は、周辺領域の厚さよりも少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍、最も好ましくは少なくとも4倍大きい厚さを有する。
【0022】
さらなる実施形態において、IOLが提供される。そのIOLは、第1のレンズと、第1のレンズに対して離間された第2のレンズと、第1のレンズと第2のレンズを連結する円周ハプティックとを備える。第1のレンズは、対向する側面およびそれらの対向する側面の間の密閉されたキャビティを含む。対向する側面は各々、中央領域および周辺領域を有し、中央領域は光軸の周囲に配置され、周辺領域は中央領域の周囲に配置される。中央領域は、周辺領域よりも少なくとも2倍厚い。第2のレンズは、第1のレンズに対して離間され、第1のレンズの対向する側面のいずれか一方よりも大きい厚さを有する。円周ハプティックは、IOLが移植された時に眼球被膜嚢との係合のために構成された外周縁部を有する。主IOLキャビティは、円周ハプティック、第1のレンズおよび第2のレンズによって画定されている。
【0023】
第1の態様によれば、中央領域は周辺領域よりも少なくとも3倍厚い。
第2の態様によれば、中央領域は周辺領域よりも少なくとも4倍厚い。
第3の態様によれば、第1のレンズの密閉されたキャビティは、第1の屈折率を有するゲルを含む。
【0024】
第4の態様によれば、第1のレンズの対向する側面は、ゲルの第1の屈折率より小さい第2の屈折率を有する。
第5の態様によれば、ゲルはビニル末端フェニルシロキサンである。
【0025】
第6の態様によれば、ゲルは0.25psi(1.72kPa)以下、好ましくは0.01psi(0.069kPa)以下のヤング率を有する。
記載される好ましい実施形態の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、限定ではなく例示として示されるものと理解されるべきである。本発明の範囲内での多くの変更および改変がその趣旨から逸脱することなく行え、本発明はこのような全ての改変を包含する。
【0026】
本開示の例示的な実施形態は、添付図面に関連して本明細書に記載される。図面の複数の図を通して、同様の符号は同様の部分を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
ここで、本発明の具体的な限定されない実施形態を、図面を参照して説明する。そのような実施形態は、一例であり、本発明の範囲内のほんの少数の実施形態の単なる例示であると理解されるべきである。本発明が関連する当業者に自明の様々な変更および改変は、添付の特許請求の範囲でさらに定義される本発明の趣旨、範囲および企図内であるとみなされる。
【0029】
図1A〜1Bは、調節性眼内レンズ(IOL)100の実施形態の基本的な構造を示している。IOL100は、弾性変形可能なレンズチャンバー110と、ベースレンズ150と、レンズチャンバー110とベースレンズ150を連結するレンズ周辺部170とを備えたものとして示している。弾性変形可能なレンズチャンバー110は、調節中にIOL100に加わる半径方向の圧縮力に応じて変形することまたは曲率を変化させることによって、調節力の全てではないが大部分を提供する。ベースレンズ150は、特定の患者によって必要とされる矯正屈折力の全てではないが大部分を提供し、変形するまたは形状もしくは曲率を変化させる必要はない。このように、レンズチャンバー110とベースレンズ150は、患者の視力および本来の調節域の両方を回復させるために協働する。
【0030】
レンズチャンバー110は、弾性変形可能な材料で作られ、両凸の外形および内部密閉キャビティ120を画定するようにレンズチャンバー110の周辺部で接合された対向する側面(sides)112および114を含む。対向する側面112および114の各々は、中央領域112a、114aおよび周辺領域112b、114bを含み、周辺領域112b、114bから中央領域112a、114aへと放射状に増加する厚さの勾配を有する。この厚さプロフィールは、対向する側面112、114が互いから離れるように変形することを促進し、かつそれらの対向する側面が膨らみ、光軸A−Aに沿って反対方向にその曲率を増大させることを可能にし、中央領域112a、114aあたりで膜を座屈させないように意図されている。例えば、一般通念によれば、反対の厚さプロフィール(例えば、周辺領域112b、114bから中央領域112a、114aへと放射状に減少する厚さプロフィール)によってより大きな程度の変形および外側への膨出が達成されることが示唆されるが、このような厚さプロフィールは、一度患者の眼に移植されたら半径方向の圧縮力の適用時にレンズチャンバー110を中央領域112a、114aあたりで内側へ座屈または圧潰させる可能性が高い。調節中、半径方向の圧縮力の適用により、レンズチャンバー110内部で内部真空が発生し、それによって、対向する側面112、114の内側への座屈が起こる可能性がある。
【0031】
従って、特に好ましい実施形態では、対向する側面は、周辺領域112b、114bから中央領域112a、114aへと漸増する厚さを有する。好ましい実施形態では、光軸A−Aに沿って測定された中央領域112a、114aは、周辺領域で対向する側面112、114が接合する領域に直に隣接して測定された周辺領域112b、114bの厚さと比べて2倍以上、好ましくは3倍以上、最も好ましくは4倍以上である厚さを有する。もう1つの好ましい実施形態では、中央領域112a、114aの最大厚さのポイントと周辺領域112b、114bの最小厚さのポイントは、2:1以上、好ましくは3:1以上、最も好ましくは4:1以上の厚さ比を有することを特徴とする。1つの実施形態では、光軸A−Aに沿って測定された中央領域112a、114aは、約100ミクロン(100μm)、好ましくは約200ミクロン(200μm)である厚さの領域を含み、周辺領域112b、114bは、周辺領域で対向する側面112、114が接合する領域に直に隣接して測定された場合に、約50ミクロン(50μm)である厚さの領域を含む。厚さプロフィールを
図1A〜1Bに関連して説明しているが、本明細書に示され記載されるIOLデバイスの全てに同じまたは実質的に同様の厚さプロフィールが提供され得ることは理解される。
【0032】
ベースレンズ150は、レンズ周辺部170を介してレンズチャンバー110と連結されている。ベースレンズ150は、収束力を提供する正レンズ、例えば、両凸レンズ、平凸レンズまたは正メニスカスレンズなどであり得る。あるいは、ベースレンズ150は、発散力を提供する負レンズ、例えば、両凹レンズ、平凹レンズまたは負メニスカスレンズなどであり得る。
図1A〜1Bに示すベースレンズ150は、正メニスカスレンズである。
【0033】
ベースレンズ150は、好ましくは、レンズチャンバー110の対向する側面112、114よりも硬質である。より大きな剛性は、レンズチャンバー110の対向する側面112、114の厚さよりも著しく大きい厚さを有するベースレンズ150を設けることにより付与し得る。あるいは、または、より大きな厚さを与えることに加えて、ベースレンズ150は、レンズチャンバー110と比べてより高い弾性ヤング率を有する異なるまたはより剛性の高い材料で作られ得る。ベースレンズ150は、好ましくは、レンズ周辺部170の周縁部180に適用される半径方向に圧縮する調節力に応じてその形状および曲率を実質的に変化させない。代わりに、半径方向に圧縮する調節力は、レンズチャンバー110へ伝達され、所望の変形変化を引き起こす。
【0034】
好ましい実施形態では、ベースレンズ150は、光軸A−Aに沿って測定された、レンズチャンバー110の対向する側面112、114の一方よりも実質的に厚い。好ましい実施形態では、
図1A〜1Bおよび
図9に示す光軸A−Aに沿った、レンズチャンバー110の対向する側面112、114の各々の厚さは、中心光軸A−Aでのベースレンズ150の厚さの1/2未満、好ましくは1/3未満、好ましくは1/4未満、最も好ましくは1/5未満である。ベースレンズ150は、レンズチャンバー110の対向する側面112、114のいずれか一方よりも実質的に厚いため、ベースレンズ150は、レンズチャンバー110の対向する側面112、114のいずれか一方よりも実質的に大きい有効ヤング率を有する。
図1A〜1Bおよび
図9は、IOL100についてのレンズチャンバー110の対向する側面112、114とベースレンズ150との相対的な厚さを示しているが、本明細書に開示されるIOLデバイスの全てがレンズチャンバー110およびベースレンズ150に関して同じまたは同様の厚さプロフィールを有し得ることは理解される。
【0035】
レンズチャンバー110とベースレンズ150は、レンズ周辺部170によって連結されている。レンズ周辺部170は、眼球被膜嚢の円周領域と係合するように構成された円周縁部180を含む。
図11A〜11Cに示すように、円周領域52は、被膜嚢40が小帯50と連結している場所であり、一般的に、小帯50の密度が最大である位置にある。小帯50は、次に、被膜嚢40を、調節域を提供するために収縮および弛緩する毛様体筋60と連結している。
図11Bおよび11Cは、IOL100が、眼の水晶体嚢40内でレンズチャンバー110を前方に向けて移植されている特に好ましい実施形態を示しているが、IOL100はまた、眼の水晶体嚢40内でレンズチャンバー110を後方に向けても移植し得ると理解される。
【0036】
レンズ周辺部170は、円周縁部180に加わる半径方向の圧縮力の大部分ではないがかなりの部分を、ベースレンズ150から離れてレンズチャンバー110へ伝達するために協働する半径方向部分172および円周ヒンジ174を含む。
図1A〜1Bに戻って参照すると、半径方向部分172は、レンズ周辺部170からレンズチャンバー110へと内側へ放射状に広がり、ヒンジ174はレンズ周辺部170とベースレンズ150との間に配置されている。半径方向部分172とヒンジ174の両方が協働して、周縁部180に適用される半径方向に圧縮する調節力がレンズチャンバー110へと伝達される程度を最大にする。レンズチャンバー110へ伝達される力が大きくなるほど、レンズチャンバー110の対向する側面112、114の変形および曲率の変化は大きくなる。
【0037】
レンズ周辺部170は、
図1A〜1Bおよび
図9に示すように、中実であり得、ベースレンズ150と比べて厚くしてもよい。あるいは、レンズ周辺部170は、
図2、
図3A、
図3B、
図4、
図6、
図7、および
図8に示すように、IOLの送達プロフィールを縮小するために、中空スペースまたは円周チャネルを含み得る。IOL100は比較的小さな切開部の大きさに移植されるため、切開部の大きさと少なくとも同じくらい小さい送達プロフィールをとるように丸めなければならない。
【0038】
円周ヒンジ174は、レンズ周辺部170内におよびベースレンズ150周囲に配置される薄くなったまたは溝付きの領域として設けられる。円周縁部180に適用された半径方向の圧縮力が半径方向部分172に実質的に沿って向けられ、全体として変形に耐えるように構成されたベースレンズ150に適用されるのではなく、レンズチャンバー110に適用されるように、円周ヒンジ174は、レンズ周辺部170がレンズチャンバー110に向かって内側へ放射状に旋回することを可能にする(
図11C参照)。従って、半径方向部分172は、それ自体が、半径方向の圧縮力をレンズチャンバー110へ実質的に伝達するのに十分に硬質であることが好ましい。好ましい実施形態では、ヒンジ174は、薄くなった領域としてまたは溝として、ベースレンズ150周囲に、周辺および円周方向の両方に設けられる。
【0039】
図11Bおよび11Cは、円周周縁部180に適用される半径方向の圧縮力の不在下(
図11B、非調節状態の眼)および円周周縁部180に適用される半径方向の圧縮力の存在下(
図11C、調節状態の眼)でのIOL100の構成を示している。後者では、周縁部180はヒンジ174あたりで方向Cに傾き、半径方向の圧縮力はレンズチャンバー110へ伝達され、それによって、レンズチャンバー110の対向する側面112、114は互いから離れるように変位し、曲率が増大する。
【0040】
本明細書に記載される特徴は、半径方向の圧縮力がレンズチャンバー110へと伝達される程度を最大にし、それによって、大きな調節域を提供するように意図されている。本明細書に記載されるIOLは、さらに、変形に抵抗しないまたは低いヤング率を有することを特徴とする材料で作り得る。それらのIOLは単一の材料で作り得るし、あるいは、それらのIOLの異なる部分を、異なるヤング率を有する異なる材料で作り得る(
図10A〜10B参照)。
【0041】
1つの好ましい実施形態では、少なくとも、レンズチャンバー110の対向する側面112、114は、移植時に物理的操作に耐えるのに十分な機械的強度の材料で作られているが、変形に対する抵抗を最小にするように十分に低いヤング率のものである。好ましい実施形態では、レンズチャンバー110の対向する側面112、114は、100psi(689.5kPa)以下、好ましくは75psi(517.1kPa)以下、最も好ましくは50psi(344.7kPa)以下のヤング率を有するポリマーで作られている。1つの好ましい実施形態では、IOL100の残りの部分(例えば、ベースレンズ150、周辺部分170)は、レンズチャンバー110の壁112、114のヤング率よりも大きいヤング率を有する。レンズチャンバー110の壁112、114は、ポリマー、好ましくはシリコーンポリマー、より好ましくはフェニルシロキサン、例えば、ビニル末端フェニルシロキサンまたはビニル末端ジフェニルシロキサンなどであり得る。十分な機械的強度を付与するために、ポリマーは、架橋されていてもよく、充填剤で強化されていてもよく、またはそれらの両方であってもよい。充填剤は、ポリマーと反応するように官能化されている樹脂またはシリカであり得る。
【0042】
レンズチャンバー110の対向する側面112、114は、調節中にIOLによって提供される屈折力の範囲を増大するために、特定の物理的および化学的特性を有する流体またはゲルが充填される密閉されたキャビティ120を画定する。流体またはゲルは、レンズチャンバー110の壁112、114とともにそれが、少なくとも3ジオプターまで、好ましくは少なくとも5ジオプターまで、好ましくは少なくとも10ジオプターまで、最も好ましくは少なくとも15ジオプターまでの十分な調節域を提供する際に協働するように選択される。好ましい実施形態では、密閉されたキャビティ120には、眼球被膜嚢40へのIOL100の移植前に流体またはゲルが充填され、より好ましい実施形態では、キャビティ120には、IOL100の製造中に流体またはゲルが充填される。
【0043】
1つの好ましい実施形態では、密閉されたキャビティ120には、室温にて低粘度で、高屈折率を有する、気体または液体のような流体が充填される。好ましい実施形態では、流体は、23℃で1,000cP(1Pa・s)以下の粘度で、少なくとも1.46、1.47、1.48、または1.49の屈折率を有する液体である。流体は、ポリマー、好ましくはシリコーンポリマー、より好ましくはフェニルシロキサンポリマー、例えば、ビニル末端フェニルシロキサンポリマーまたはビニル末端ジフェニルシロキサンポリマーなどであり得る。好ましくは、流体がポリマーで作られている実施形態では、ポリマーは架橋されていないことが好ましく、その上ポリマーは直鎖状または分岐状であり得る。流体がビニル末端フェニルシロキサンポリマーまたはジフェニルシロキサンポリマーである場合、ビニル基は、架橋を形成しない他の部分を形成するために反応させることができる。
【0044】
一実施形態によれば、流体は、Teledyne Licensing, LLCの「Variable Focus Liquid−Filled Lens Using Polyphenyl Ethers」と題する米国特許第7,256,943号明細書に記載のとおり、ポリフェニルエーテル(「PPE:polyphenyl ether」)であり得、この全ての記載内容は、本明細書に完全に記載されているものとして本明細書の一部として援用される。
【0045】
もう1つの実施形態によれば、流体はフッ素化ポリフェニルエーテル(「FPPE:fluorinated polyphenyl ether」)であり得る。FPPEは、多くのポリマーでの透過性が低い化学的に不活性の生体適合性流体でありながら、屈折率の調整可能性を提供するという独特の利点を有する。調整可能性は、ポリマーのフェニルおよびフルオロ含有量の増加または減少によって提供される。フェニル含有量を増加させることによりFPPEの屈折率は効果的に増大する一方、フルオロ含有量を増加させることによりFPPEの屈折率は減少し、同時に、レンズチャンバー110の壁112、114へのFPPE流体の透過性は減少する。
【0046】
もう1つの好ましい実施形態では、密閉されたキャビティ120にはゲルが充填される。ゲルは、好ましくは、少なくとも1.46、1.47、1.48、または1.49の屈折率を有する。ゲルはまた、好ましくは、20psi(137.9kPa)以下、10psi(68.9kPa)以下、4psi(27.6kPa)以下、1psi(6.89kPa)以下、0.5psi(3.45kPa)以下、0.25psi(1.72kPa)以下および0.01psi(0.069kPa)以下のヤング率を有し得る。好ましい実施形態では、ゲルは架橋ポリマー、好ましくは架橋シリコーンポリマー、より好ましくは架橋フェニルシロキサンポリマー、例えば、架橋ビニル末端フェニルシロキサンポリマーまたはビニル末端ジフェニルシロキサンポリマーなどである。他の光学的に透明なポリマーの液体またはゲルは、シロキサンポリマーに加えて、キャビティ120に充填するために使用し得る。このようなポリマーは、分岐型、非分岐型、架橋型または非架橋型または前述のものの任意の組合せであり得る。
【0047】
ゲルは、架橋されることから分子量が拡大され、ほとんどの液体よりも自己接着性が高く、さらにレンズチャンバー110の壁または対向する側面もしくは壁112、114に付着するという利点を有する。これにより、ゲルは、レンズチャンバー110の壁112、114を通って漏出する可能性が低くなる。調節力と、レンズチャンバー110の壁112、114の湾曲の比較的小さな変形との組合せを得るために、ゲルは、低ヤング率を有することを特徴とする光学的に透明な材料で作られていながら、高い屈折率を有するように選択される。従って、好ましい実施形態では、ゲルは、1.46以上、好ましくは1.47以上、1.48以上、最も好ましくは1.49以上の屈折率を有する。同時に、ゲルは、好ましくは、10psi(68.9kPa)以下、好ましくは5psi(34.5kPa)以下、より好ましくは1psi(6.89kPa)以下のヤング率を有する。特に好ましい実施形態では、ゲルは、0.5psi(3.45kPa)以下、好ましくは0.25psi(1.72kPa)以下、最も好ましくは0.01psi(0.069kPa)以下のヤング率を有する。より低いヤング率では、ゲルは変形に対する抵抗が少なくなり、そのため、一定の単位の適用された力に対するレンズチャンバー110の壁112、114の変形が大きくなることは理解される。
【0048】
特に好ましい実施形態では、ゲルは、次のように提供される4つの処方のうちの1つに基づいて生産されたビニル末端フェニルシロキサンである:
処方1:
100部20〜25モル%ビニル末端ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー(Gelest社製PDV 2335)。
【0049】
3ppm白金錯体触媒
0.35pphの水素化フェニルシロキサン架橋剤(Nusil社製XL−106)
弾性ヤング率=0.0033psi(22.75Pa)
処方2:
100部20〜25モル%ビニル末端ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー(Gelest社製PDV 2335)。
【0050】
3ppm白金錯体触媒
0.4pphの水素化フェニルシロキサン架橋剤(Nusil社製XL−106)
弾性ヤング率=0.0086psi(59.29Pa)
処方3:
100部20〜25モル%ビニル末端ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー(Gelest社製PDV 2335)。
【0051】
3ppm白金錯体触媒
0.5pphの水素化フェニルシロキサン架橋剤(Nusil社製XL−106)
弾性ヤング率=0.0840psi(0.58kPa)
処方4:
100部20〜25モル%ビニル末端ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー(Gelest社製PDV 2335)。
【0052】
3ppm白金錯体触媒
0.6pphの水素化フェニルシロキサン架橋剤(Nusil社製XL−106)
弾性ヤング率=2.6psi(17.9kPa)
レンズチャンバー110の壁112、114およびレンズキャビティ120内に含まれる流体またはゲルは、好ましくは、その流体またはゲルがレンズチャンバー110の壁112、114の外側へ移動することを防止するかまたはその可能性を低減するように選択される。従って、好ましい実施形態では、レンズチャンバー110の壁112、114および流体またはゲルの一方または両方は、レンズチャンバー110の壁112、114を超える流体またはゲルの透過性に対する抵抗性を最適化する生体適合性材料から選択される。
【0053】
キャビティ120内に含まれるゲルの、レンズチャンバー110の壁112、114を超える透過性を低下させる1つの方法は、架橋されたゲルを提供することである。しかしながら、架橋の程度は、一方で、レンズチャンバー110の壁112、114およびゲルが、レンズチャンバー110の壁112、114の変形に対する抵抗性を最小にするのに、そしてもう一方で、レンズチャンバー110の壁112、114を超えるゲルの透過を最小にするのに、十分に低いヤング率を有するように、選択し制御しなければならない。従って、好ましい実施形態では、35,000ダルトンよりも大きい、好ましくは50,000ダルトンよりも大きい、最も好ましくは、少なくとも70,000ダルトンの分子量を有するモノマーで始まる、軽度に架橋されたより長い鎖のポリマー、例えば、シリコーンゲルに使用されるものなどが望ましい。
【0054】
もう1つの好ましい実施形態では、低透過性の抽出可能物を含むゲルが使用される。このようなゲルは、分岐している長鎖ポリマーを用いて処方し得る。
好ましい実施形態では、レンズチャンバー壁112、114およびゲルの一方または両方は、フェニル置換シリコーンのホモポリマーまたはコポリマーで作られている。
【0055】
レンズチャンバー壁112、114については、架橋ホモポリマーまたはコポリマーは、好ましくは、5〜25モル%、好ましくは10〜20モル%、より好ましくは15〜18モル%のジフェニル含有量を有する。あるいは、レンズチャンバー壁112、114については、ホモポリマーまたはコポリマーは、好ましくは、10〜50モル%、好ましくは20〜40モル%、より好ましくは30〜36モル%のフェニル含有量を有する。
【0056】
ゲルについては、ホモポリマーまたはコポリマーは、好ましくは、10〜35モル%、好ましくは15〜30モル%、より好ましくは20〜25モル%のジフェニル含有量を有する。あるいは、ゲルについては、ホモポリマーまたはコポリマーは、好ましくは、20〜70モル%、好ましくは30〜60モル%、より好ましくは40〜50モル%のフェニル含有量を有する。
【0057】
特に好ましい実施形態では、レンズチャンバー壁112、114は、約15〜18モル%のジフェニル含有量または約30〜36モル%のフェニル含有量を有する架橋フェニルシロキサンで作られ、ゲルは、約20〜25モル%のジフェニル含有量または約40〜50モル%のフェニル含有量を有するフェニルシロキサンで作られている。レンズチャンバー壁112、114は、ゲルよりも架橋の程度が高いと理解される。
【0058】
特に好ましい実施形態では、レンズチャンバー壁112、114は、ビニル末端フェニルシロキサン、最も好ましくは架橋ビニル末端フェニルシロキサンで作られている。強化剤、例えば、シリカなどもまた、10〜70モル%、好ましくは20〜60モル%、最も好ましくは30〜50モル%の範囲にて含まれ得る。
【0059】
レンズチャンバー110の壁112、114およびレンズキャビティ120内に含まれる流体またはゲルはまた、好ましくは、レンズチャンバー110によって提供される調節力の範囲を増大するように選択される。1つの好ましい実施形態では、レンズチャンバー110の壁112、114は、密閉されたキャビティ中に含まれる流体またはゲルよりも低い屈折率を有する材料で作られている。1つの好ましい実施形態では、チャンバー110のレンズ壁112、114の屈折率は1.38であり、ゲルまたは流体の屈折率は1.49である。
【0060】
レンズチャンバー壁112、114およびチャンバー120内に含まれるゲルまたは液体によって提供される示差屈折率は、レンズチャンバー壁112、114およびゲルまたは液体に用いられる材料または材料の組成の違いによってもたらされ得る。
【0061】
一実施形態では、レンズチャンバー壁112、114およびゲルまたは液体の両方は、異なるジフェニル含有量またはフェニル含有量を有するフェニルシロキサンで作られている。好ましい実施形態では、レンズチャンバー壁112、114は、ゲルまたは液体の場合よりも低いジフェニル含有量またはフェニル含有量を有する。もう1つの好ましい実施形態では、レンズチャンバー110の壁112、114は、15〜18モル%のジフェニル含有量または30〜36モル%のフェニル含有量を有する架橋ビニル末端フェニルシロキサンで作られ得、レンズチャンバー110の壁112、114内に含まれるゲルは、20〜25モル%のジフェニル含有量または30〜36モル%のフェニル含有量を有するビニル末端フェニルシロキサンで作られ得る。
【0062】
もう1つの実施形態では、示差屈折率は、レンズチャンバー壁112、114にジメチルシロキサンを与えることによって提供され得、ゲルは、高いジフェニル含有量またはフェニル含有量を有するフェニルシロキサンであり得る。好ましい実施形態では、ジフェニル含有量は、少なくとも20モル%、少なくとも25モル%、少なくとも30モル%、少なくとも35モル%、および少なくとも40モル%である。あるいは、フェニル含有量は、少なくとも40モル%、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、および少なくとも80モル%である。
【0063】
さらなる実施形態では、示差屈折率は、架橋フルオロシロキサン、例えば、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサンなどによって提供され得、ゲルは、高いジフェニル含有量またはフェニル含有量を有するフェニルシロキサンであり得る。好ましい実施形態では、ジフェニル含有量は、少なくとも20モル%、少なくとも25モル%、少なくとも30モル%、少なくとも35モル%、および少なくとも40モル%である。あるいは、フェニル含有量は、少なくとも40モル%、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、および少なくとも80モル%である。
【0064】
ここで、
図1A〜1Bに戻ると、主キャビティ130は、レンズチャンバー110、ベースレンズ150およびレンズ周辺部170の間に画定されている。主キャビティ130は、好ましくは、流体またはゲルで充填されている。主キャビティ130中の流体またはゲルは、密閉されたキャビティ120中に含まれる流体またはゲルと同じであり得る。好ましい実施形態では、流体は生理食塩溶液であり、主キャビティ130には、眼球被膜嚢へのIOLの移植後に生理食塩溶液が充填される。
【0065】
眼球被膜嚢へのIOLの移植後に主キャビティ130に充填することにより、IOLを丸め、比較的小さな切開部から挿入し得るように、IOLは著しく小さくなった送達プロフィールをとることが可能になる。好ましい実施形態では、切開部の大きさは、6mm未満、好ましくは5mm未満、最も好ましくは4mm未満、さらに最も好ましくは3mm未満である。
【0066】
移植後に主キャビティ130に流体またはゲルが充填される実施形態では、好ましくは、移植後に主キャビティ130への流体またはゲルの注入が可能となるようにIOL上に弁(図示せず)が配置される。弁は、主キャビティ130への流体またはゲルの注入を可能にするが流体またはゲルが主キャビティ130から出るのを防止する一方向弁であり得る。弁は、好ましくは、眼に移植された後に前方向に向いているIOLの表面上に配置される。しかしながら、弁は、好ましくは、同じまたは異なる(the same of different)流体もしくはゲルを収容し得るレンズチャンバー110の完全性の破壊を回避するために、対向する側面112、114のいずれにも配置されないことは理解される。
【0067】
好ましい実施形態では、密閉されたキャビティ120および主キャビティ130それぞれの中の流体またはゲルは、相互に完全に分離される。1つの好ましい実施形態では、密閉されたキャビティ120および主キャビティ130には、異なる流体および/またはゲルを入れてもよい。もう1つの好ましい実施形態では、密閉されたキャビティ120および主キャビティ130の一方は、流体またはゲルの一方を含んでいてもよく、密閉されたキャビティ120および主キャビティ130のもう一方は流体またはゲルのもう一方を含んでいてもよい。好ましい実施形態では、密閉されたキャビティ120と主キャビティ130との間で交換される流体は存在しない。
【0068】
IOL100は、眼球被膜嚢40に移植され、光軸A−Aを中心とするように意図されている(
図11A〜11C参照)。レンズチャンバー110およびベースレンズ150は、患者の眼の光軸A−Aの周囲に画定される有効光学部(effective optical zone)B−Bにまで広がるまたはそれを超えて広がるような寸法にされている。有効光学部B−Bは、一般的に、光が眼に入ることができる通路となる可能な限り最大の開口部であり、そのため、完全散大時には瞳孔30の最大有効径によって制御される。この直径は、典型的には、約4〜9mmである。従って、好ましい実施形態では、レンズチャンバー110およびベースレンズ150の直径は、好ましくは少なくとも4mm、少なくとも5mm、少なくとも6mm、少なくとも7mm、少なくとも8mmおよび少なくとも9mmである。
【0069】
前述したように、レンズチャンバー110の密閉されたキャビティ120および/または主キャビティ130のいずれか一方または両方は、流体またはゲルで充填されている。流体は気体、液体であり得る。流体またはゲルは、好ましくは、レンズチャンバー110が対向する側面112、114の曲率の小さな変化に応じて調節域を提供するように、十分に高い屈折率を有することを特徴とする。
【0070】
IOL100は、レンズチャンバー110の対向する側面112、114が実質的に平坦であるかまたは最小曲率を有するように、弾性的に付勢されるため、対向する側面112、114の曲率の小さな変化は、レンズの屈折力では比例して大きな変化につながる。従って、レンズチャンバー110は、ベースレンズ150と組み合わせて、移植されたIOLに加わる調節力(例えば、半径方向の圧縮力)に応じて、少なくとも3ジオプターまで、好ましくは少なくとも5ジオプターまで、好ましくは少なくとも10ジオプターまで、最も好ましくは15ジオプターまでの視力の変化をもたらすことができる。
【0071】
図2は、IOL200のもう1つの実施形態を示している。IOL200は、それがレンズチャンバー210と、ベースレンズ250と、レンズチャンバー210とベースレンズ250を接合するレンズ周辺部270とを含むことから、
図1A〜1BのIOL100と多くの点で類似している。レンズ周辺部270は、円周縁部280をさらに含む。IOL200は、IOL200がIOL200の上面に沿って円周方向にかつレンズチャンバー210の周囲に外部に配置された複数のホール202と、レンズ周辺部270内部に配置された円周チャネル240とを含むという点でIOL100と異なる。それらのホール202は、円周チャネル240、主キャビティ230およびIOL200外部の間での流体交換チャネルを提供するように意図されている。眼球被膜嚢の調節力によって、IOL200の半径方向の拡大および圧縮が起こり、それによって、次には、房水がホール202を通って主キャビティ230を出入りする。好ましい実施形態では、ホール202はIOL200の上面に対称に配置されている。
【0072】
図3A〜3Bは、IOL300の円周周辺部の周囲に複数のスルーホール302を含むIOL300のもう1つの実施形態を示している。スルーホール302は、スルーホールがIOL300の両面を通って設けられ、IOL300は円周チャネルを含んでいない一方で、
図2のIOL200のホール202はIOL200の上面にしか設けられていないという点で
図2のホール202と異なる。スルーホール302を設けることにより房水が主キャビティ330を出入りする効率が高まる。
【0073】
さらに、スルーホール302は、円周縁部380とレンズチャンバー310との間の空間の間に適合することができるほど大きい寸法にされている。円周周辺部のあたりに数多くの大きなスルーホール302を設けることの1つの利点は、それによってIOL300の材料の嵩が減り、移植手術時にそれを折りたたみ、眼球被膜嚢に挿入する際により小さな送達プロフィールをとることが可能になることである。従って、IOL300では、眼球被膜嚢への移植に必要な切開部は小さくなる。しかしながら、スルーホール302の間の間隔301は、円周縁部380に適用された力のレンズチャンバー310への伝達を可能にするのに十分なものでなければならないことは理解される。好ましい実施形態では、間隔301は、スルーホール302の直径の1/4以下、好ましくは1/2以下、最も好ましくは3/4以下である。
【0074】
図4は、スルーホール402が主キャビティ430とIOL400外部との間での流体交換を提供しないことを除いて、スルーホール402も含むIOL400のもう1つの実施形態を示している。従って、IOL400は、IOL400の主キャビティ430が眼球被膜嚢への移植後に充填し得るように弁が必要とされるという点で
図1A〜1BのIOL100と類似している。この実施形態のスルーホール402の主な機能は、より小さな送達プロフィールを提供するためにIOL400の嵩を減らすことである。従って、一度移植されたら、レンズキャビティ420および主キャビティ430中の流体またはゲルは入ったままであり、IOL400では、IOL400外部の流体と主キャビティ430中の流体またはゲルとの間での流体交換はなされない。
図4は、前の図(
図1〜3)に示したIOLとは、キャビティ420の対向する側面が相互から離れて膨らむように半径方向力が周縁部に適用された時のIOL400の形状をその図が示しているという点で異なる。IOL400は、レンズキャビティ420の下方の壁が、眼の調節中に予想される半径方向力の範囲内でベースレンズ450と接触しないような寸法にしなければならないことに留意されたい。
【0075】
図5A〜5Bは、複数の円弧状の切欠き502を含むIOL500のさらに別の実施形態を示している。円弧状の切欠き502は、主キャビティ530とIOL500外部との間での流体交換を提供する働きをするように構成されている。IOL500は、ベースレンズ550をレンズ周辺部570と連結し支持するために円弧状の切欠き502の間にラジアルアーム504を含む。好ましい実施形態では、ラジアルアーム504は、周辺部分570とベースレンズ550の間にヒンジを含み、このヒンジにより、円周縁部580への力の適用時にラジアルアーム504は内側への曲げまたは揺動が可能になり、その結果、その力が伝達されて、レンズチャンバー510は半径方向に圧縮される。ヒンジは、単純に、ラジアルアーム504の内部、外部のいずれか一方または内部および外部の両方の表面に配置された、材料厚さが減少した溝または領域であり得る。本明細書に記載される他のIOLと同様に、IOL500は、円周縁部580に適用される力の不在下では半径方向に展開した状態に戻る。IOL500は、眼が非調節状態である時のように、円周縁部580に加わる半径方向の圧縮力の不在下では、
図5Aに示すより平坦な構成に弾性的に付勢される。IOL500は、眼が調節状態である時のように、円周縁部580への半径方向の圧縮力の適用時には、レンズチャンバー110の全体の直径を小さくし、その結果として、レンズチャンバー510の対向する側面512、514の曲率を増大するように、半径方向に圧縮可能である。例えば、
図4参照。
【0076】
図6A〜6Bは、密閉されたキャビティ620および主キャビティ630に加えて内部円周チャネル640を含むIOL600のさらに別の実施形態を示している。円周スルーホール602は、円周チャネル640への房水の流出入を可能にし、円弧状の切欠き604は、主キャビティ630への房水の流出入を可能にする。ラジアルアーム606は、ベースレンズ650を周辺部分670と連結し、ヒンジは、ベースレンズ650と周辺部分670の間のラジアルアーム上に配置されている。また、内部円周チャネル640の存在は、材料の嵩を減らし、そうすることによって比較的小さな切開部からのIOL600の挿入が可能になるように意図されている。
【0077】
本明細書に記載されるIOLは、破嚢術の実施後に患者の眼球被膜嚢内へ移植することを目的としている。破嚢術では、被膜嚢の前方部分から円形部分が除去される。
図11Aは、破嚢術(a capsulhorexis)の実施後およびIOLの移植前の眼10を示している。眼10は角膜20を含むものとして図示し、被膜嚢40に近づくためには角膜を通って外科的切開が行われる。被膜嚢40から除去される円形部分B−Bの直径は、各人の個々の解剖学的構造に依存し、典型的には、約4mm〜約9mmの範囲内である。ここでは、被膜嚢40から除去される円形部分B−Bの直径32は、瞳孔30の直径とほぼ一致する。好ましくは、可能な限り多くの被膜嚢40とその小帯連結部50が維持される。小帯50は被膜嚢40を毛様体筋60と連結し、調節力を伝達して、被膜嚢40の曲率または形状の変化をもたらす。一度被膜嚢40から水晶体が除去されると、IOLが挿入され、被膜嚢40に結合している小帯50と円周縁部が実質的に係合するように移植され得る。加えて、IOLは、光軸A−Aに沿って実質的に中央に配置され、中央から外れる可能性を低減するためには、IOLを小帯50と係合することが好ましい。ホールおよびスルーホールを含むIOLの実施形態では、ホールおよびスルーホールが光学部B−Bの外側に位置することが好ましい。さらに、ホールおよびスルーホールは、レシピエントによるグレアの知覚を防ぐために端部を丸める必要がある。
【0078】
図7A〜7Bおよび
図8A〜8Bは、被膜嚢とスルーホール702の間に空間を作り出し、それによって、主キャビティ730および円周チャネル740への房水の自由な流出入を確保するために、スルーホール702に隣接して隆起した突起790またはトラフ795を設けて構成されたIOL700を示している。
【0079】
IOL700は、3つの密閉されたチャンバー:密閉されたレンズチャンバー720、主キャビティ730および内部円周チャネル740を含む。複数の円周方向に配置されるスルーホール702は、一方では、主キャビティ730および内部円周チャネル740の両方と、他方ではIOL700外部と、の間での流体交換を提供する大きさに作られる。レンズチャンバー720中の流体またはゲルはレンズチャンバー720に入ったままである。
【0080】
IOL700は、
図6A〜6Bに示すのと同じように、ベースレンズ750を周辺部分770と連結するように配置された、円弧状の切欠き704およびラジアルアーム706をさらに含む。IOL700の重要な特徴は、スルーホール702に隣接して隆起した突起790(
図7A〜7B)またはトラフ795(
図8A〜8B)が存在することである。隆起した突起790またはトラフ795は、主キャビティ730および円周チャネル740への房水の自由な流出入を遅らせるかまたは妨げるスルーホール702の密閉が被膜嚢により起こらないことを確実にするように構成されている。
【0081】
上述のとおり、本明細書に記載されるIOLは、円周縁部に加わる半径方向の圧縮力の全てではないが大部分をレンズチャンバーへ伝達するように構成されている。弾性変形可能なレンズチャンバーとは対照的に、ベースレンズは、円周縁部に加わる半径方向の圧縮力に応じて、変形しまたはその曲率を変化させるようには構成されていない。レンズチャンバーへの半径方向の圧縮力の伝達は、以下の特徴の1つ以上をIOLに組み込むことによって達成され得る:(1)レンズチャンバーの対向する側面がベースレンズと比べて減少した厚さを有すること、(2)ヒンジがベースレンズと周辺部分との間に配置されること、(3)レンズチャンバーおよびベースレンズについて、異なる弾性率を有する材料を利用すること、ならびに(4)レンズチャンバーの対向する側面およびそのチャンバー内に入っている流体またはゲルについて屈折率を変化させること。
【0082】
図10Aおよび10Bは、異なる弾性ヤング率を有する少なくとも2種の異なるエラストマー材料から構成されたIOL800を示し、この場合、少なくともベースレンズ850は、レンズチャンバー810よりも高いヤング率を有する材料で作られている。
【0083】
図10Aは、少なくとも5つの別々に成形された部分品、801A、802A、803A、804A、および850を組み立てることによって構築されたものとしてIOL800を示している。このように、レンズチャンバー810の2つの半部分801A、803Aに加えて、IOL800の周辺部分は、2つの環状部分802A、804Aにより与えられている。レンズチャンバー810周囲の第1の環状部分802Aは、ベースレンズ850周囲の第2の環状部分804Aよりも高い弾性ヤング率を有する。好ましい実施形態では、レンズチャンバー810の2つの半部分801A、803Aおよび第2の環状部分803Aは、100psi(689.5kPa)以下、好ましくは75psi以下、最も好ましくは50psi(344.7kPa)以下のヤング率を有し、ベースレンズ850および第1の環状部分802は、100psi(689.5kPa)より大きく、好ましくは250psi(1723.7kPa)より大きく、最も好ましくは350psi(2413.2kPa)より大きいヤング率を有する。特に好ましい実施形態では、第1の環状部分802Aのヤング率は500psi(3447.4kPa)までであり得る。
【0084】
図10Bは、少なくとも3つの別々に成形された部分品801B、802Bおよび803Bを組み立てることによって構築されたものとしてIOL800を示している。第1のレンズチャンバー810およびその周囲の周辺部分は、801Bおよび802Bを組み立てることによって与えられ、ベースレンズ部分850およびその周囲の周辺部分は、802Bの下側に803Bを組み立てることによって与えられる。組み立てられた第1のレンズチャンバー810およびその周囲の周辺部分(801B、802B)は、ベースレンズ部分850およびその周囲の周辺部分(803B)よりも低い弾性ヤング率を有する。好ましい実施形態では、部分801B、802Bは、100psi(689.5kPa)以下、好ましくは75psi(517.1kPa)以下、最も好ましくは50psi(344.7kPa)以下のヤング率を有し、ベースレンズ部分803Bは、100psi(689.5kPa)より大きく、好ましくは250psi(1723.7kPa)より大きく、最も好ましくは、350psi(2413.2kPa)より大きいヤング率を有する。特に好ましい実施形態では、ベースレンズ部分803Bのヤング率は500psi(3447.4kPa)までであり得る。
【0085】
本明細書に記載され、特許請求された本発明は、これらの実施形態が本発明のいくつかの態様の例示として意図されているように、本明細書に開示された具体的な好ましい実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際、本明細書に示され、記載されたものに加えて、本発明の様々な改変は、前述の説明から当業者に明らかになるであろう。このような改変はまた、添付の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図されている。