(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モータはそれぞれ、出力軸と、前記出力軸に取り付けられた駆動ギヤとを有し、また各駆動ギヤは、前記リングギヤのそれぞれ1つを回転させるように配置される、請求項1に記載の多軸工作機械。
【背景技術】
【0002】
自動旋盤は、棒材を機械加工して種々の部品を作製するための工作機械である。棒材は、円形、正方形または多角形の横断面を有していてもよく、10フィート〜12フィートオーダーの軸方向長さで旋盤に供給されることができる。旋盤は通常、支持フレーム上に回転可能に取り付けられるヘッドを有する。このヘッドは、複数の一連の角度位置を通して、ヘッド軸を中心に制御可能に割出しできる。円状に間隔を置いて配置される複数のスピンドルアセンブリが、ヘッド軸を中心にヘッドと共に回転し、かつ種々の個別のスピンドルアセンブリ軸を中心にヘッドに対して回転するように、これらをヘッドに取り付けている。数本の棒材を各スピンドルアセンブリに軸方向に供給し、これらをヘッドアセンブリと共にヘッド軸を中心に回転させる。したがって、回転可能なヘッドと種々のスピンドルアセンブリに供給される棒材とは、その外観がガトリング砲に幾分似ている。ヘッドの種々の角度位置でスピンドルアセンブリのコレットによって保持され、かつこれらを越えて延びる片持ち長さの棒材(すなわち、ワークピース)に対して種々の機械加工を施すように旋盤が適合されている。
【0003】
通常、スピンドルアセンブリはそれぞれ、ヘッドに回転可能に取り付けられる外側スピンドルを有し、それ自体の個別のスピンドルアセンブリ軸に沿って延びている。いくつかのスピンドルアセンブリ軸はヘッド軸と平行である。外側スピンドルはそれぞれ、内向きかつ前向きの円錐台状のカム面を有する。内側スピンドルは、関連するスピンドルアセンブリ軸を中心に外側スピンドルと共に回転するように、外側スピンドル内に配置されており、かつ関連する外側スピンドルに対する軸方向移動の制限のために取り付けられている。スピンドル移動手段または機構が、内側スピンドルに対して力を加えて、外側スピンドルに対して1つの軸方向に内側スピンドルを制御可能に移動させるように、動作可能に配置されている。コレットは、内側スピンドルと共に動作するように、内側スピンドル上に取り付けられている。コレットは、本体から前方に延びる複数のフィンガを有する。これらのフィンガは、関連する外側スピンドル上の内向きのカム面と係合する、角度分割された外向きかつ後ろ向きの円錐台状のカム面を有する。フィンガはそれぞれ、外側スピンドルに対してかかる1つの軸方向に内側スピンドルが移動したときに、半径方向内向きに移動して、棒材の貫通部分と係合するように構成されたパッドを有する。スピンドル移動機構が内側スピンドルに加えられた力を解放すると、内側スピンドルは関連する外側スピンドルに対して反対の軸方向に移動し、またコレットフィンガは、コレットパッドが棒材と係合解除してこれを解放するように、自身の元の位置に向かって半径方向外向きに移動(すなわち、跳ね戻る)できるようになる。
【0004】
送り管(フィードチューブ)が、関連するスピンドルアセンブリ軸を中心に回転し、かつこれに対して軸方向に移動するように、各内側スピンドル内に配置される。送り管は、前記送り管内の貫通した1本の棒材と係合するように構成された、複数の送りフィンガを有する。送り管および送りフィンガが内側スピンドルに対していずれかの軸方向(すなわち、前方および後方)に選択的に往復移動するように、これを選択的に生じさせるための送り管移動手段または機構が設けられる。コレットフィンガがワークピースから半径方向に離間してコレットを開放したときに、かかる送り管の移動をコレットの動作と連携させて、送りフィンガが棒材をコレットに向かって前方に、かつこれを通して送ることができるようにしている。コレットが閉鎖すると、送りフィンガが閉鎖したコレット内に保持された棒材に沿ってスライドする状態で、送り管がコレットから後方へ離間する。
【0005】
1つの特定のタイプの旋盤として、Davenport(登録商標)製の5軸自動旋盤が挙げられる。Davenport(登録商標)は、ニューヨーク州、ロチェスター14611、エイムズ・ストリート167番地に所在し、同住所のDavenport Machine社の親会社であるBrinkman Products社の登録商標である。Davenport(登録商標)旋盤の原型は、19世紀後半から20世紀初頭に開発されたものである。多くの初期バージョンおよび再製造されたDavenport(登録商標)旋盤は今日も依然として稼働しており、最新の旋盤も販売されている。
【0006】
Davenport(登録商標)製モデルBの5軸旋盤の基本構造と動作については、https://www.youtube.com/watch?v=N8hBtoNi3EIで視聴可能な「Davenport製モデルB−多軸旋盤#1(“Davenport Model B−Multi−Spindle Screw Machine #1”)」、およびhttps://www.youtube.com/watch?v=ppQydP2bd4kで視聴可能な「Davenport製モデルB−多軸旋盤#2(“Davenport Model B−Multi−Spindle Screw Machine #2”)」というタイトルの動画において示され、かつ説明されており、その開示内容全体は参照により本明細書中に引用するものとする。インデックス機構(割り出し機構)は、フレームに対する5つの一連の割出し位置(すなわち、0°、72°、144°、216°、288°、…)で、フレームに対してヘッドを制御可能に回転させるように構成されている。これらの旋盤は、フレームに取り付けられ、かつヘッドにおける角度的に離間した種々の割出し位置の各位置で、複数のスピンドルアセンブリのコレットによって保持され、かつこれらを越えて延びている片持ち長さの棒材(すなわちワークピース)と係合するように動作可能に配置されるいくつかの切削および成形工具を有する。単一のモータがギヤ列によって作動し、かつ5つのスピンドルアセンブリのそれぞれを、それら自体の個別のスピンドルアセンブリ軸を中心に、同じ角速度で同時に回転させている。切削および成形工具はモータの出力軸に機械的に連結され、かつ各ヘッド割出し位置において、ワークピースに対して(軸方向および半径方向の両方に)種々の動作を(種々のカムおよびフォロアを介して)実行するように調整されている。
【0007】
長年にわたり、これらのDavenport(登録商標)旋盤の性能は、サーボ制御の追加(例えば米国特許第6,421,895(B2)号明細書を参照)によって、マン・マシン・インターフェース制御(同書)の追加によって、ヘッドの改良によって、高精度スピンドルアセンブリ(例えば米国特許第6,817,273(B2)号明細書および米国特許第7,036,991(B2)号明細書を参照)によって、迅速交換可能なベアリングアセンブリ(例えば米国特許第7,402,927(B2)号明細書を参照)によって、大型の棒材に対応するための大型スピンドルアセンブリ(例えば2016年3月31日に出願された、米国特許出願第15/087,381号明細書を参照)によって、かつ改良されたコレット(同書)の使用などを通して、改良されてきた。実際、他者は、かかるDavenport(登録商標)旋盤に対して彼らが改良であると判断した点について、特許出願を行っている。(例えば米国特許第6,000,499号明細書、米国特許第5,356,244号明細書、および米国特許第5,205,376号明細書を参照)。これらの先行技術特許および特許出願すべての開示内容全体は、かかるDavenport(登録商標)旋盤の関連部分およびこれらに対する具体的な改良をそれぞれ説明するために、参照により本明細書中に引用するものとする。このように、機械式のDavenport(登録商標)5軸自動旋盤は、これらの種々の改良を通してそれらの機能、精度、および性能を向上させるというある種のルネッサンスを享受してきた。
【0008】
かかる工作機械の別のタイプとしてはPenta 518 5軸旋盤があり、これはインディアナ州インディアナポリス46268、ウエスト79番街4950番地に所在するZPS America社(www.zpsamerica.com)、およびチェコスロバキア、マレノヴィツェ、ティルン、CZ−76487、クベトゥナ1180、トリダ3に所在するTajmac−ZPS社(www.tajmac−zps.cz)によって製造され、販売中であるとされている。Penta518旋盤は、別の機械式多軸工作機械である。Penta518旋盤については、記事「Five−Spindle Lathe Expands CNC Multi Line」、「Production Machining」、第17巻第3号(2017年3月)に示され、かつ記載されている。
【0009】
近年、デジタル技術を使用して、種々のスピンドルアセンブリの回転を互いに独立して制御し、種々の工具の動作を制御し、かつフレームに対するヘッドの位置を高価なエンコーダによってモニタリングするための、改良されたCNC旋盤が開発されている。これらのCNC旋盤は確かに機能的であるが、購入するには高価であり、また一般にこれらをプログラムするために、特別に訓練されたオペレータを必要とする。そのため、これらのCNC旋盤は、プログラミングおよび設定により高いコストをかける効果が、製造される多数の部品に波及していく可能性がある、長期に及ぶ製造工程にとりわけ適している。現行のCNC旋盤も同様に、前述のZPS America社およびTajmac−ZPS社によって製造され販売中であるとされている。このCNC旋盤の価格は80万ドルを超えるとされている。
【0010】
しかしながら、Davenport(登録商標)5軸旋盤などの既存の機械式工作機械に追加の改良を行って、それらの精度、性能、および寿命をさらに向上させることができる。それらは一般的に、最新のCNC旋盤よりも高速であり、より生産的かつ経済的である。
【0011】
したがって、一般にかかる機械式多軸旋盤、具体的にはDavenport(登録商標)多軸自動旋盤に対して改良を行うことが、依然として必要とされていると考えられており、これにより、(1)スピンドルアセンブリがこれらの各軸を中心に、互いに独立してヘッドに対して回転することができ、(2)フレームに対するヘッドの角度位置を高価なエンコーダなどを使用することなく求めるための、低コストでありながら効果的な手段をもたらし、(3)フレームに対してヘッドをより正確に取り付けることが可能となり、かつ(4)ワークピースに作用(action)を与えるように、フレーム上にバックラッシュゼロのツールスライドを設けることになる。
【発明の概要】
【0014】
開示している実施形態(複数可)の対応する部品、部分または表面に関して、限定することを目的としてではなく単に例示することを目的として、本発明は工作機械で使用するためのいくつかの改良を提供する。
【0015】
一態様では、本発明は、改良された多軸工作機械(20)を提供するものであり、本工作機械は概して、フレーム(22)と、部材軸(x
1−x
1)を中心に回転するように前記フレームに取り付けられる部材(21)と、前記部材軸を中心に前記フレームに対して、角度的に離間した複数の割出し位置間で順次前記部材を選択的に回転させるように、前記フレームおよび部材間に作用するインデックス機構(
23)と、前記部材と共に回転するように、前記部材に取り付けられる複数のスピンドルアセンブリ(
26)であって、各前記スピンドルアセンブリは、それ自体の個別のスピンドルアセンブリ軸を中心に前記部材に対して回転するように取り付けられている、スピンドルアセンブリ(
26)と、前記フレームに取り付けられる複数のモータ(29)と、前記部材に取り付けられ、かつ前記スピンドルアセンブリのそれぞれ1つと係合している複数のリングギヤ(30)であって、各前記リングギヤは、前記モータのそれぞれ1つによって駆動されている、リングギヤ(30)とを有し、それによって前記モータは互いに独立して作動されて、前記部材に対して前記スピンドルアセンブリをそれぞれ、所望の回転速度で選択的に回転させてもよい。
【0016】
リングギヤを、部材軸(部材軸線)に沿って軸方向に互いから離間させてもよい。
【0017】
モータはそれぞれ、出力軸と、出力軸に取り付けられる駆動ギヤとを有してもよく、また各駆動ギヤは、リングギヤのそれぞれ1つを回転させるように配置されている。
【0019】
本工作機械はDavenport(登録商標)自動旋盤であってもよく、前記部材は旋盤のヘッドであってもよい。
【0020】
インデックス機構はゼネバ(ジェネバ)インデックス機構であってもよい。
【0021】
別の態様では、本発明は工作機械(20)を提供するものであり、本工作機械は概して、フレーム(22)と、部材軸(x
1−x
1)を中心に回転するように前記フレームに取り付けられる部材(21)と、前記フレームに対して、角度的に離間した複数の割出し位置間で順次前記部材を選択的に回転させるように、前記フレームおよび部材間に作用するインデックス機構(
23)と、前記フレームに対する前記部材の角度位置を求めるためのセンサ装置(40)とを有し、前記センサ装置は、前記フレームおよび部材の一方に取り付けられ、かつ前記フレームおよび部材の他方と対面するように配置される第1の複数のセンサ(50、51、52)であって、前記センサは第1のアレイに配置されている、第1のセンサ(50、51、52)と、各割出し位置で前記フレームおよび部材の他方に設けられ、かつ前記センサと対面するように配置される第2の複数のフィーチャ(55−61)であって、前記フィーチャは第2のアレイに配置されている、フィーチャ(55−61)と、前記フレームに対して前記部材の特定の割出し位置を示すような信号を、前記センサから生成する手段(62)とを含む。
【0022】
第2の複数のフィーチャは、一部の割出し位置において第1の複数のセンサと異なっていてもよい。
【0023】
前記センサは、フェームと部材との界面を横切る材料の有無を感知するように、動作可能に配置される近接センサであってもよい。前記フィーチャは、フレームおよび部材の他方に設けられる少なくとも1つの穴を含んでいてもよい。
【0024】
前記部材は、各割出し位置にあるとき、第1のアレイが第2のアレイと対面するように配置されてもよい。
【0025】
前記部材は、複数のスピンドルアセンブリが自身に取り付けられたヘッドであってもよく、前記ヘッドはヘッド軸を有し、スピンドルアセンブリはそれぞれ個別のスピンドル軸を有し、またスピンドルアセンブリがヘッド軸を中心にヘッドと共に回転し、かつ個別のスピンドル軸それぞれを中心にヘッドに対して回転するように、これらをヘッドに取り付けている。
【0026】
本工作機械はDavenport(登録商標)自動旋盤であってもよい。
【0027】
別の態様では、本発明は、改良された多軸工作機械(20)を提供するものであり、本工作機械は概して、フレーム(22)と、部材軸(x
1−x
1)を中心に回転するように前記フレームに取り付けられる部材(21)と、前記部材軸を中心に前記フレームに対して、角度的に離間した複数の割出し位置間で順次前記部材を選択的に回転させるように、前記フレームおよび部材間に作用するインデックス機構(25)と、前記部材と共に回転するように、前記部材に取り付けられる複数のスピンドルアセンブリ(
26)であって、各前記スピンドルアセンブリは、それ自体の個別のスピンドルアセンブリ軸を中心に前記部材に対して回転するように取り付けられている、スピンドルアセンブリ(
26)と、前記フレームに対する前記部材の位置を前記割出し位置の各位置で制御することができるように、前記部材およびフレーム間に作用する少なくとも1つの転動体(64)ベアリングとを備える。
【0028】
本工作機械はDavenport(登録商標)自動旋盤であってもよく、前記部材は旋盤のヘッドであってもよい。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は、改良された多軸工作機械(20)を提供するものであり、本工作機械は概して、フレーム(22)と、部材軸(x
1−x
1)を中心に回転するように前記フレームに取り付けられる部材(21)と、前記部材軸を中心に前記フレームに対して、角度的に離間した複数の割出し位置間で順次前記部材を回転させるように、前記フレームおよび部材間に作用するインデックス機構(
23)と、前記部材と共に回転するように、前記部材に取り付けられる複数のスピンドルアセンブリ(
26)であって、各前記スピンドルは、それ自体の個別のスピンドル軸を中心に前記部材に対して回転するように取り付けられている、スピンドルアセンブリ(
26)と、ワークピースを保持するように、各前記スピンドルアセンブリに取り付けられるチャックと、前記スピンドルアセンブリをそれぞれ、互いに独立して所望の角速度で制御可能に回転させる手段と、前記フレームに取り付けられ、かつ各割出し位置で前記ワークピースに対して制御可能に移動するように配置される、バックラッシュゼロのツールスライド(65)と、前記ワークピース(W)に動作を付与するように、前記スライドに取り付けられるツール(72)とを備える。
【0030】
ツールスライドはボールねじを含んでいてもよい。
【0031】
ツールスライドはリニアレールを含んでいてもよい。
【0032】
本工作機械はDavenport(登録商標)5軸自動旋盤であってもよく、前記部材は旋盤のヘッドであってもよい。
【0033】
したがって、本発明の概略的な目的は、概してかかる機械式多軸旋盤に対して、具体的にはDavenport(登録商標)多軸自動旋盤に対して改良を行うことであり、これにより、(1)スピンドルアセンブリがこれらの各軸を中心に、互いに独立してヘッドに対して回転することができ、(2)フレームに対するヘッドの角度位置を高価なエンコーダなどを使用することなく決定するための、低コストでありながら効果的な手段をもたらし、(3)フレームに対してヘッドをより正確に取り付けることが可能となり、かつ/または(4)ワークピースに作用を与えるように、フレーム上にバックラッシュゼロのツールスライドを設けることになる。これらの種々の改良を単独で、または互いに組み合わせて使用してもよい。
【0034】
これらおよび他の目的および利点は、前述かつ言及中の本明細書、図面および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0036】
最初に明確に理解すべきは、類似の参照番号が、いくつかの図面を通して一貫して同一の構造要素、部分または表面を示すものであり、かかる要素、部分または表面は、本明細書全体においてさらに記載または説明されてもよく、本明細書のこの詳細な説明は不可欠な部分をなしているということである。別段の指示がない限り、図面を本明細書と共に読解する(例えばクロスハッチング、部品の配置、割合、程度など)ものとし、これらを本発明の明細書全体の一部と見なすべきである。以下の説明で使用する場合、「水平」、「垂直」、「左」、「右」、「上」および「下」という用語、ならびにその形容詞および副詞の派生語(例えば「水平に」、「右方向に」、「上方向に」など)は単に、特定の図が読み手に面した状態で、図示された構造の方向を指している。同様に、「内向きに」および「外向きに」という用語は概して、状況に応じてその延長軸または回転軸に対する表面の方向を指している。
【0037】
ここで図面を参照すると、本発明は工作機械に一定の改良をもたらしている。図面において、特定のタイプの工作機械を、Davenport(登録商標)5軸自動旋盤として図示している。しかしながら、この改良はかかるDavenport(登録商標)旋盤での使用に限定されず、他のタイプの多軸工作機械への一般的な適用性をも有することを、明確に理解すべきである。したがって、本明細書で使用する場合、「工作機械」という用語は、概してワークピースに動作を付与するための機械を指すものとし、また「多軸工作機械」は、部材軸を中心にフレームに対して回転運動するように「部材」(「ヘッド」または「ドラム」として知られている場合もある)に取り付けられる、複数のスピンドルアセンブリを有する工作機械を指すものとする。多くの場合、ゼネバ型機構などのインデックス機構は、角度的に離間した複数の割出し位置を通して部材を順次回転させるように、動作可能に配置されている。
【0038】
上述したように、長年にわたり、機械式多軸工作機械には一定の改良が行われ、これによってそれらの精度と機能とを向上させてきた。こうした従来技術の改良には、サーボ制御の追加によるもの、マン・マシン・インターフェース制御の追加によるもの、ヘッドの改良によるもの、高精度スピンドルアセンブリによるもの、迅速交換可能なベアリングアセンブリによるもの、大型の棒材に対応するための大型スピンドルアセンブリによるもの、および改良されたコレットの使用によるものなどが含まれている。
【0039】
本発明は、かかる機械式多軸工作機械に対して一定の付加的改良をもたらすものである。これらの改良には、(1)スピンドルがそれらの各軸を中心に、互いに独立して部材に対して回転できるようにすることと、(2)フレームに対する前記部材の角度位置を高価なエンコーダなどを使用することなく決定するための、低コストでありながら非常に効果的なセンサ装置を設けることと、(3)フレームに対して前記回転可能な部材をより正確に取り付けられるようにすることと、(4)ワークピースに動作を付与するように、フレーム上にバックラッシュゼロのツールスライドを設けることとが含まれる。これらの改良された機能については、以下に順次述べていくものとする。
【0040】
スピンドルアセンブリの独立した回転(図1から図4)
図1は、全体を20で示す、Davenport(登録商標)5軸自動旋盤の一部を表す部分正面図である。以下の説明では、明確さを期すために、「既存」の(すなわち従来技術の一部である)旋盤の部分に関する詳細な説明は省略するものとする。部材軸x
1−x
1を中心に回転するようにフレーム22に取り付けられる部材またはヘッド21を有するものとして、本旋盤を示している。ゼネバ機構などのインデックス機構23を、フレームおよびヘッド間に作用するように配置しており、これはまた、ヘッド軸x
1−x
1を中心に、角度的に離間した5つの割出し位置間で順次ヘッドを選択的に回転させるように動作可能である。
図1から
図4にはインデックス機構全体を示していないが、その従動輪24を
図5および
図6に示している。ゼネバ型インデックス機構はよく知られており、これはDavenport(登録商標)旋盤で長年使用されている。
【0041】
図1では、それぞれスピンドルアセンブリを収容するように構成された、円状に間隔を置いて配置され、かつ長手方向に延在する5つの開口部を有するものとして、ヘッド21を示している。これらの割出し位置間の回転間隔は、5軸旋盤では72°である。これら5つのヘッド開口部を各自25で示しており、文字A、B、C、DおよびEによってそれぞれ個別に特定している。スピンドルアセンブリ26自体はそれぞれが「既存」のものであり、これについては2016年3月31日に出願された、米国特許出願第15/087,381号明細書により詳細に示され、かつ記載されており、その開示内容全体は参照により本明細書中に引用するものとする
【0042】
各ヘッド開口部に1つずつ、合計5つのスピンドルアセンブリ26を設けている。添え字A〜Eによってそれぞれ、スピンドルアセンブリを個別に示している。したがって、スピンドルアセンブリ26Aをヘッド開口部25A内に動作可能に配置し、またスピンドルアセンブリ26B(図示せず)をヘッド開口部25B内に動作可能に配置し、以下同様に行っている。
図4では、かかる1つのスピンドルアセンブリ26Aを、関連部分に外側スピンドル28Aを含むものとして示している。内側スピンドル、コレット、送りフィンガ、ワークピース、およびワークピースを送り、かつ各スピンドルアセンブリのコレットを作動させる手段については、本改良を不明瞭にすることを回避するために省略している。ここでは、各スピンドルアセンブリ26を関連するヘッド開口部25内に配置し、これがそれぞれのスピンドルアセンブリ軸に沿って延在していると言及するにとどめる。
図2および
図4では、
図1および
図3の12時の位置にあるスピンドルアセンブリ26Aを、これがスピンドル軸x
A−x
Aを有するものとして示している。他のスピンドルアセンブリ(図示せず)も、それぞれのスピンドル軸x
B−x
B、x
C−x
C、x
D−x
Dおよびx
E−x
Eに沿って同様に延在している。スピンドルアセンブリ軸はそれぞれ、ヘッド軸x
1−x
1に平行である。各スピンドルアセンブリがヘッドと共に回転するように、これらをヘッドに取り付けており、かつそれ自体の個別のスピンドル軸を中心にヘッドに対して回転するように、これらをヘッドに取り付けている。
【0043】
図1では、各自29で示し、かつ添え字A、B、…、Eによって個々に特定している複数のモータを、フレームに取り付けられているものとして示している。
図4に最もよく示しているように、各自30で示し、かつ添え字A、B、…、Eによって個別に特定している複数のリングギヤを、ヘッド軸に沿って軸方向に離間した種々の位置でヘッドに取り付けており、また各自31で示し、ここでも添え字A、B、…、Eによってそれぞれ個々に特定しているタイミングベルトを介してスピンドルアセンブリ26の関連する1つを回転させるように、これらをそれぞれ配置している。
図4は、リングギヤ30Aが中間ギヤ32Aを介して外側スピンドル
28Aに連結されているものとして、これを示している。リングギヤ30B、30C、30D、および30Eを、それぞれ同様の中間ギヤ32B、32C、32D、および32E(図示せず)を介して各自の外側スピンドル
28B、
28C、
28D、および
28E(図示せず)に同様に連結している。したがって、モータ29Aが、タイミングベルト31A、リングギヤ30Aおよび中間ギヤ32Aを介してスピンドルアセンブリ26Aを回転させるように配置され、モータ29Bが、タイミングベルト31B、リングギヤ30Bおよび中間ギヤ32Bを介してスピンドルアセンブリ29Bを回転させるように配置され、モータ29Cが、タイミングベルト31C、リングギヤ30Cおよび中間ギヤ32Cを介してスピンドルアセンブリ29Cを回転させるように配置され、モータ29Dが、タイミングベルト31D、リングギヤ30Dおよび中間ギヤ32Dを介してスピンドルアセンブリ29Dを回転させるように配置され、モータ29Eが、タイミングベルト31E、リングギヤ30Eおよび中間ギヤ32Eを介してスピンドルアセンブリ29Eを回転させるように配置されている。
【0044】
図4では、各リングギヤ30A、30B、…、30Eを、それぞれころ軸受33A、33B、…、33Eを介してヘッドに回転可能に取り付けている。これらのいくつかの中間ギヤ
32A、32B、…、32Eは、関連するスピンドルアセンブリの外側スピンドル28にそれらの内面を固定していてもよく、またそれらの外面を、関連するリング
ギヤの内面と噛み合い係合させていてもよい。
【0045】
米国特許第6,817,273(B2)号明細書および/または米国特許第7,036,991(B2)号明細書に示され、かつ記載されているような高精度ベアリングアセンブリによって、スピンドルアセンブリをヘッドに取り付けてもよい。
【0046】
モータ29はサーボモータ、またはステッピングモータなどであってもよい。種々のモータを互いに独立して作動させて、ヘッドに対してスピンドルアセンブリをそれぞれ、所望の回転速度で選択的に回転させ、これにより、各割出し位置で保持されているワークピースの回転速度を制御可能に変更するようにしてもよい。さらに、この改良により、作業中に各割出し位置でワークピースを停止させ、反転させ、かつ方向付けることができる。
【0047】
したがって、本第1の態様は、概して多軸工作機械20を提供しており、本工作機械は、フレーム21と、部材軸x
1−x
1を中心に回転するように前記フレームに取り付けられた部材22と、前記部材軸を中心に前記フレームに対して、角度的に離間した複数の割出し位置間で順次前記部材を選択的に回転させるように、前記フレームおよび部材間に作用するインデックス機構23と、前記部材と共に回転するように、前記部材に取り付けられる複数のスピンドルアセンブリ26A、26B、…、26Eであって、各前記スピンドルアセンブリは、それ自体の個別のスピンドルアセンブリ軸x
A−x
A、x
B−x
B、…、x
E−x
Eを中心に前記部材に対して回転するように取り付けられている、スピンドルアセンブリ26A、26B、…、26Eと、前記フレームに取り付けられる複数のモータ29A、29B、…、29Eと、前記部材に取り付けられ、かつ前記スピンドルアセンブリ26A、26B、…、26Eのそれぞれ1つと係合している複数のリングギヤ30A、30B、…、30Eであって、各前記リングギヤは、前記モータのそれぞれ1つによって駆動されている、リングギヤ30A、30B、…、30Eとを備え、これによって前記モータは互いに独立して作動されて、前記部材に対して前記スピンドルアセンブリをそれぞれ、所望の角速度で選択的に回転させてもよい。
【0048】
ヘッド位置センサ(図5から図6)
ここで
図5から
図6を参照すると、ゼネバ型インデックス機構23の従動輪24が、ヘッドの歯付き部分38と噛み合い係合する外側歯付き部分36を有するものとして示されている。従動輪24は、その外面上の円周方向に離間した種々の位置から半径方向内向きに延在している、複数の盲スロットを有する。ゼネバ機構の駆動輪(図示せず)に取り付けられるピン(図示せず)を収容するように、これらの盲スロットが構成される。よく知られているように、ゼネバ機構の駆動輪を回転させると、ゼネバ機構の従動輪がその軸x
2−x
2を中心に、72°離間した5つの一連の角度割出し位置間で回転する。これにより、次いでヘッド21による同様の割出し動作が起こる。
【0049】
弓形ガード39をフレーム22に取り付けており、このガードはゼネバ機構の従動輪24の一部を密接に包囲している。全体を
40で示しているセンサ装置が前記ガードに取り付けられ、かつ3つの近接センサ50、51、52を備え、それらの感知ヘッドがゼネバ機構の従動輪上の協働フィーチャ(feature)に密接に面接触するように配置される。図示の実施形態では、これらのフィーチャ(特徴的構成)は、5つの割出し位置の各位置において従動輪に穿設された種々のパターンの穴である。
【0050】
ヘッド開口部25Aが12時の位置にあるとき(
図6に示すように)、近接センサ50および51は、従動輪に穿設された止まり穴53、54と半径方向に位置合わせされている。しかしながら、近接センサ52はいずれの穴とも位置合わせされず、隣接する従動輪の近接部分の存在を感知する。
【0051】
インデックス機構を作動させてヘッド開口部25Bを12時の位置に移動させると(
図6に示すように)、近接センサ51は、従動輪に穿設された止まり穴55と位置合わせされる。しかしながら、近接センサ50、52はいずれの穴とも位置合わせされず、隣接する従動輪の近接部分の存在を感知する。
【0052】
インデックス機構を作動させてヘッド開口部25Cを12時の位置に移動させると(
図6に示すように)、近接センサ50はいずれの穴とも位置合わせされず、隣接する従動輪の近接部分の存在を感知する。しかしながら、近接センサ51、52は、従動輪に穿設された止まり穴56、58とそれぞれ位置合わせされる。
【0053】
インデックス機構を作動させてヘッド開口部25Dを12時の位置に移動させると(
図6に示すように)、近接センサ50、52はそれぞれ、従動輪に穿設された止まり穴59、60と位置合わせされる。しかしながら、近接センサ51はいずれの穴とも位置合わせされず、隣接する従動輪の近接部分の存在を感知する。
【0054】
インデックス機構を作動させてヘッド開口部25Eを12時の位置に移動させると(
図6に示すように)、近接センサ52は、従動輪に穿設された止まり穴61と位置合わせされる。しかしながら、近接センサ50、51はいずれの穴とも位置合わせされず、隣接する従動輪の近接部分の存在を感知する。
【0055】
したがって、3つの近接センサ50、51、52は前記ガードに取り付けられ、かつ5つの割出し位置の各位置において従動輪上のフィーチャと相互作用するように配置される。これらのフィーチャは、各割出し位置でセンサと対面する材料の有無を近接センサがそれぞれ感知または判定できるように、単に各割出し位置で1または複数の穴の協働アレイとなっていてもよい。前記フィーチャのアレイは各割出し位置で異なるので、近接センサからの出力信号を使用して、各割出し位置でのフレームに対するヘッドの角度位置を示してもよい。この構成は安価でありながら効果的であり、CNC旋盤に一般的に見られる高コストのエンコーダまたはレゾルバの使用を回避している。
【0056】
したがって本態様は、概して工作機械20を提供し、この工作機械は、フレーム22と、部材軸x
1−x
1を中心に回転するように前記フレームに取り付けられた部材21と、前記フレームに対して、角度的に離間した複数の割出し位置間で順次前記部材を選択的に回転させるように前記フレームおよび部材間に作用するインデックス機構23と、前記フレームに対する前記部材の角度位置を求めるためのセンサ装置40とを有し、このセンサ装置40は、前記フレームおよび部材の一方に取り付けられ、前記フレームおよび部材の他方と対面するように配置され、かつ第1のアレイに配置される第1のセンサ50、51、52と、各割出し位置で前記フレームおよび部材の他方に設けられ、前記センサと対面するように配置され、かつ第2のアレイに配置される第2の複数のフィーチャ53、54、55、56、58、59、60、61と、前記フレームに対して前記部材の特定の割出し位置を示すような信号を、前記センサから生成する手段62とを含む。
【0057】
前記センサ装置においては、(上述のような)近接センサ、磁気センサ、または前記センサを従動ギヤに接触させるか、もしくは接触させない他のタイプのセンサを採用してもよい。また、前記センサ装置がヘッド自体の割出し位置を直接感知するように配置してもよい。
【0058】
改良されたヘッド装着(図4)
機械式多軸工作機械の既知の従来技術の形態では、部材(またはヘッド)は通常、外向きかつ大径の円筒面を有し、これらの円筒面は、ヘッドの円筒面と対面するように配置された内向きの円筒面を有する大径のヘッド開口部に簡単に軸支されていた。そのためヘッドは、ヘッド軸を中心に回転するように、フレーム上に簡単に軸支されていた。しかしながら、ヘッドおよびフレームの対面する円筒面間の半径方向間隙は機械加工公差に寄与し、工作機械の確度や精度を低下させてきた。
【0059】
図4では、本発明を、ヘッドとフレームとの間に各自63で示しているベアリングを設けるものとして示している。これらのベアリングはそれぞれ、その内側レースと外側レースとの間に配置されるローラーボール64などの少なくとも1つのローラー要素を有する。その結果として、本構成により、ヘッドがフレームに対して即座に回転できるようになり、同時にヘッドがフレーム上に単純に軸支される従来技術の構造において存在していた半径方向間隙を排除している。
【0060】
このように、本発明の本態様は、改良された多軸工作機械(20)を提供しており、本工作機械は概して、フレーム(22)と、部材軸(x
1−x
1)を中心に回転するように前記フレームに取り付けられた部材(21)と、前記部材軸を中心に前記フレームに対して、角度的に離間した複数の割出し位置間で順次前記部材を選択的に回転させるように、前記フレームおよび部材間に作用するインデックス機構(25)と、前記部材と共に回転するように、前記部材に取り付けられた複数のスピンドルアセンブリ(
26)であって、各前記スピンドルアセンブリが、それ自体の個別のスピンドルアセンブリ軸を中心に前記部材に対して回転するように取り付けられているスピンドルアセンブリ(
26)と、前記フレームに対する前記部材の位置を各割出し位置で制御することができるように、前記部材およびフレーム間に作用する少なくとも1つの転動体(64)とを備える。
【0061】
改良されたツールスライド(図7から図9)
ここで
図7から
図9を参照すると、全体を65で示している改良されたツールスライドを、機械フレーム22に取り付けられているものとして示している。ツールスライドは、再循環ボールねじ66とリニアレール68とを含む。機械フレームに取り付けられるモータMによって回転するように、ボールねじを配置している。リニアレールは、フレームに取り付けられる固定レール状部分69を有し、かつ、前記レール状部分によってガイドされ、かつボールねじによって駆動される可動部分70を有する。前記可動部分にツールホルダ71を取り付けており、ツール72を、ワークピースWに対して接近かつ離間させるように配置している。改良されたツールスライドにおいて顕著な特徴として、実質的にバックラッシュゼロでこれをワークピースに対して接近かつ離間させることができる点が挙げられる。このため、ツールの移動はボールねじモータに供給される電流の極性および大きさに実質的に比例するので、ツールの位置を電気的に制御することができるようになっている。
【0062】
必要に応じて、改良されたツールスライドをフレームに動作可能に取り付けて、ツールをワークピースに対して軸方向または半径方向に選択的に移動させることができる。
【0063】
したがって、本発明の本態様は、改良された多軸工作機械(20)を提供し、この工作機械は概して、フレーム(22)と、部材軸(x
1−x
1)を中心に回転するように前記フレームに取り付けられる部材(21)と、前記部材軸を中心に前記フレームに対して、角度的に離間した複数の割出し位置間で順次前記部材を回転させるように、前記フレームおよび部材間に作用するインデックス機構(
23)と、前記部材と共に回転するように、前記部材に取り付けられる複数のスピンドルアセンブリ(
26)であって、各前記スピンドルは、それ自体の個別のスピンドル軸を中心に前記部材に対して回転するように取り付けられている、スピンドルアセンブリ(
26)と、ワークピースを保持するように、各前記スピンドルアセンブリに取り付けられるチャックと、前記スピンドルアセンブリをそれぞれ、互いに独立して所望の角速度で制御可能に回転させる手段と、前記フレームに取り付けられ、かつ各割出し位置で前記ワークピースに対して制御可能に移動するように配置される、バックラッシュゼロのツールスライド(65)と、前記ワークピース(W)に動作を付与するように、前記スライドに取り付けられるツール(72)とを備える。
【0064】
修正
本発明においては、多くの変更および修正がなされ得ることを想定している。例えば、サーボモータなどが好ましいが、他のタイプのモータで代用してもよい。同様に、本発明はタイミングベルト駆動装置での使用に限定されない。他のタイプの駆動装置でも容易に代用できる。
【0065】
好ましい形態では、近接センサをセンサ装置の一部として使用している。しかしながら、磁気センサなどの他のタイプのセンサで代用することができる。
【0066】
特許請求の範囲におけるDavenport(登録商標)多軸旋盤への言及は、特許請求の範囲に対する限定となることを想定している。
【0067】
したがって、本発明の好ましい形態を示し、かつ記載し、そのいくつかの変更および修正について述べたが、以下の特許請求の範囲に定義され、かつ区別される本発明の趣旨から逸脱することなく、種々の変更および修正を別途なし得ることを、当業者であれば容易に理解するであろう。